yokohama - 横浜市消防団の現況 ④ 特集 消防団の取組 震災に ......51...

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50 調査季報 vol.180・2017.3 ■ 29 15 20 24 70 23 25 12 27 28 27 86 29 93 27 14 22 22 12 18 20 《7》 資料1 写真1

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  • 50 調査季報 vol.180・2017.3 ■

    化を図ることを目的として女

    性消防団員を採用していて、

    平成29年2月現在、1,18

    8名(全団員の約15%)の女

    性消防団員が活躍しており、

    全国でも非常に高い割合と

    なっています。

     

    消防団の業務は、災害時に

    おいては、消火、救助、住民

    の避難誘導等に関する業務、

    平常時においては、地域住民

    の方に対する訓練や防災指導

    など様々です。これらの活動

    に対し、平成20年度から消防

    団員個人に対し、一年間の活

    動に対しての「年額報酬」と、

    火災出場や地域住民への訓練

    指導等に従事した場合の「出

    動報酬」の支給を開始しまし

    た。また、組織の新陳代謝・

    活性化を図るため、平成24年

    3月の条例改正により、70歳

    定年制を導入しています。

    ❸消防団を取り巻く環境の変

    化 

    平成23年3月の東日本大震

    災では、水門の閉鎖や住民の

    避難誘導を行っていた多くの

    消防団員が津波被害により命

    を落とされました。それらの

    教訓を踏まえ、議員立法とし

    て平成25年12月に公布、施行

    された「消防団を中核とした

    地域防災力の充実強化に関す

    る法律」では、「消防団が地

    域防災の中核的な存在であ

    り、代替性のない存在であ

    る」とされ、国と地方公共団

    体はその抜本的な強化に必要

    な措置を講ずるものとされま

    した。以降、全国で消防団の

    充実強化に向けた取組が始ま

    る大きな転換期となり、本市

    においても、消防団員確保の

    推進、活動拠点である器具置

    場の更新整備、また、消防団

    積載車等の更新整備を強力に

    進めることになりました。そ

    のため、27年度から消防局に

    消防団課を、28年度から各消

    防署に消防団係を新設して、

    消防団業務を着実に推進する

    体制としています。

    ❹消防団員の確保対策

     

    消防団員の人数は全国的に

    減少(資料1)しており、本

    市においても同様でした。災

    害対応力の強化には、消防局・

    消防署と消防団とが連携した

    消防団員確保対策が重要であ

    ることから、全消防団から代

    表者を募り、全市版の消防団

    員募集のリーフレットや広報

    用動画を消防団員の方々の視

    点から作成しました。また、

    これらを用いて市内各地で実

    施するイベント時に広報して

    団員募集を実施するととも

    に、特に動画については、横

    浜スタジアムでのプロ野球開

    催時に広報用ビジョンでも放

    映し、広く市民の皆様に本市

    消防団をPRしました(写真

    1)。

    ❺取組状況と今後

     

    消防団の充実強化を図るた

    め、様々な取組を行った結

    果、27年4月には7,164

    名(充足率86・2%)であっ

    た市内消防団員数は、29年2

    月には7,751名(充足率

    93・3%)と587名増加し、

    全国的に消防団員が減少傾向

    である中、横浜市は増員と

    なっており、取組の効果が出

    た非常に顕著な成果となって

    います。これは、各地域の実

    横浜市消防団の現況

    ❶横浜市消防団の歴史

     

    横浜市消防団は、明治27年

    5月消防組として発足。その

    後、昭和14年4月の「警防団

    令」の公布により、警防団に

    統合され、昭和22年5月の「消

    防団令」の公布による改組ま

    で存続しました。昭和22年12

    月には、「消防組織法」が制

    定され、現在の横浜市消防団

    の第一歩が始まりました。消

    防団は、生業のかたわら郷土

    愛護の精神に立脚した「義勇

    消防」の性格と、消防組織法

    に基づく「非常勤公務員」と

    しての性格を有しています。

    ❷消防団の組織、任務

     

    本市消防団は、市内18区に

    20消防団(中区は3団)・1

    08分団で組織されていま

    す。消防団員の定員は、条例

    により8,305名と定めら

    れ、各消防団ごとの定員は、

    規則により定められています。

     

    本市では、平成9年度から

    消防団の活性化と消防力の強

    特集

    《7》 

    自助・共助・公助に関する取組〜地域での活動

    ④ 

    消防団の取組

    震災に対する横浜の備え

    三村 英明

    消防局消防団課消防団係長

    三浦 大

    戸塚消防署担当課長(消防団担当)

    執筆

    資料1写真1

  • 51■ 特集・震災に対する横浜の備え

    情に精通した消防団が、自ら

    の問題として消防団員確保を

    進めていただいたことと、各

    消防団を担当する消防署担当

    者の弛まぬ努力が実を結んだ

    ものです。

     

    本市の消防団員確保の取組

    は、総務省消防庁からも注目

    されており、27年度に大幅に

    消防団員が増えた山手、旭、

    戸塚の三消防団に対して、28

    年12月に総務大臣感謝状が授

    与されました。

     

    結びになりますが、地域に

    精通し、地域実情を良く知

    る、共助と公助の橋渡し的な

    存在である消防団は地域防災

    に欠かすことができない存在

    です。首都直下地震などの大

    規模地震発生時には消防隊だ

    けでは甚大な被害に対応する

    ことができないことは明らか

    です。いざというときに備え

    て、消防局は消防団の皆様と

    ともに消防団の災害対応力の

    向上に、引き続き取り組んで

    いきます。

    横浜市戸塚消防団につい

    て!

    ❶戸塚消防団の構成

     

    戸塚区を管轄区域とする戸

    塚消防団は、消防団本部のも

    と7つの分団と34の班で構成

    され、平成29年2月1日現

    在、実員数770名(定数7

    60名)で、そのうち98名が

    女性団員であり、市内最大の

    団員数で活動しています。主

    な装備としては、消防団活動

    を行うための積載車31台、消

    火活動に使用する可搬式小型

    動力ポンプ41台のほか、消火

    活動用の装備(防火衣、防火

    帽)及び救助活動に用いる資

    機材(�

    チェーンソー、油圧

    ジャッキ、エンジンカッ

    ター、可搬ウインチ、油圧切

    断機)等が配備されています。

    ❷消防団の活動

     

    消防団員の多くは地元住民

    で構成され地域の一員として

    の役割を担い、そして消防団

    の活動としては、地域住民へ

    の防災指導、救命講習等を

    行っています。また消防団は、

    日頃から消防署と連携し災害

    発生時に備えた各種訓練(写

    真2)を行っていますが、そ

    の代表的な訓練に、「小型ポ

    ンプ操法」があります。本市

    では、2年に一度市内20消防

    団の参加により消防操法技術

    訓練会が開催されており、平

    成27年10月の訓練会では戸塚

    消防団第六分団が優勝し、平

    成28年7月に行われた神奈川

    県消防操法大会に横浜市の代

    表として出場しています(写

    真3)。惜しくも優勝を逃し

    たもののチームでの優秀賞及

    びポンプ操作員が最優秀賞を

    受賞することができました。

    地域の一員である消防団が、

    このような訓練を通じて、自

    らの知識、技術を向上させな

    がら、各種講習会や防災訓練

    等を通して防災の知識・技術

    を住民に伝えることで、地域

    との絆が深まり新たな共助が

    生まれ地域防災力は確実に高

    まると考えられます。

    ❸消防団員充足率向上への取

    組 

    現在は、団員定数充足率1

    00%ですが、平成27年4月

    の時点では、実員数711名

    (充足率93・5%)と49名が

    不足していました。そこで、

    団員の充足率100%を目標

    に掲げ、平成27年6月から9

    月までを「消防団員確保強化

    期間」と位置付けて消防団と

    協力し、入団促進のため様々

    な取組を行いました。主な取

    組は、①区内事業所及び地元

    商店街での説明会、②消防団

    PRイベントの開催、③区内

    に230ある自治会・町内会

    に対するリーフレットの班回

    覧(7000班)、④大規模

    集合住宅へのリーフレット配

    付、⑤ラジオ番組(FMとつ

    か)による広報等です。消防

    団PRイベントでは、8月に

    シンガーソングライターの白

    井貴子さんを一日消防団長と

    して迎え、「消防団フェスタ」

    を戸塚公会堂において開催

    し、消防団の活動を紹介する

    トークショーやミニコンサー

    トで会場を盛り上げ消防団員

    の加入促進を図りました。ま

    た、事業所で行った説明会で

    は、戸塚区内で飲料を販売す

    るY事業所の7か所ある宅配

    センターから計25名の女性が

    入団することになりました。

    Y事業所の方は、業務を通じ

    て地域事情に詳しく、日頃か

    らお客さんと顔の見える関係

    を築いており、地域防災のた

    めにも大変重要な力となるこ

    とが期待されます。このよう

    な取組の結果、新たに49名(男

    性21名、女性28名)の方が入

    団することとなり、平成27年

    10月に団員定数充足率10

    0%を達成することができま

    した。

    ❹今後の取組

     

    全国的に団員

    の確保が課題と

    なる中、近年、横

    浜市内の消防団

    では女性の入団

    者が増えており、

    大規模地震が起

    こった際の活躍

    等に期待が寄せられていま

    す。一方で女性団員は、これ

    まで防災指導や救命講習を中

    心に活動しており、火災現場

    等では比較的安全な後方支援

    活動が多かったことから、今

    後は実践的な訓練を数多く

    行っていく必要があります。

    また、今年度は各分団の女性

    団員代表者により女性が輝き

    活躍できる体制作りに向けた

    検討会を行い、様々な意見交

    換を行っています。そうした

    中、年齢層も幅広く消防団活

    動はもとより私生活における

    相談もできるようになり、さ

    らに子育て世代の女性団員に

    対しては、土日に行っていた

    訓練を平日に行うことや託児

    所を設けるなど参加しやすい

    ように工夫しています。今後

    も団員の意見を取り入れなが

    ら活動しやすい体制づくりを

    目指し、消防団の活性化に繋

    げるとともに、地域防災体制

    の一層の充実を図っていきた

    いと考えています。

    写真2

    写真3