熊本中央病院 close-up

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2017 JUNE Dual Energy 120kVp Yttrium raw 120kVp 40keV 200keV 1keV Dual Energy IQon Spectral CT Dual Energy Dual Energy Dual Energy 120kVp Dual Energy Dual Energy Dual Energy 調使最新式“2層検出器搭載CT ”が実現する 多彩なスペクトラル画像獲得 解析 新たな 画像診断 可能性 を拓き始めた 熊本中央病院は、昨秋、画期的と称してよい最新型マルチスライス CT を導入し、現在、フル稼働中である。 機種名は「IQon Spectral CT(アイコン・スペクトラル CT)」。フィリップス社製の最新、かつ意欲的モデルだ。 同院に導入されたのは国内1号機であり、すでに 2017 年4月末時点で 4000 例もの検査を実施したというが、 放射線科スタッフは当然、他診療科、そして検査を依頼する院外の医師たちも、そのパフォーマンスを高く評価する。 その名が広く知られる同院放射線診断科部長である片平和博氏に、同 CT 導入の経緯と有用性について話を聞いた。 熊本中央病院 熊本県 1965 年福岡県生まれ。1990 年熊本大学医学部卒。下関厚生病院、人吉総合病院、 熊本整形外科病院、国立熊本病院放射線科、熊本大学医学部附属病院放射線科 助手を経て、2000 年熊本中央病院放射線科勤務。2005 年から同医長、10 年から放 射線診断科部長として現在に至る Close-Up 片平和博(かたひら・かずひろ)氏 I n t e r v i e w 16 50 60 30 40 50 IQon Spectral CT IQon Spectral CT NanoPanel Prism IQon Spectral CT 熊本中央病院。1997 年に現在の地に移転。熊本地震でも大きな被害を受けず、地 域医療を支えている (    ) 80 新 医 療 2017年6月号 (    ) 81 新 医 療 2017年6月号

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Page 1: 熊本中央病院 Close-Up

2 0 1 7 J U N E

他社製のCTで見られるようなX線管球

側のエネルギー切り替えによるD

ual Energy

撮影とは異なり、120kVp

による

通常のプロトコールのまま撮影を実施し、

検出器側で低エネルギーと高エネルギー

に分けてデータを取得することができる。

 

検出器は、材質にY

ttrium

を用いた低

エネルギーのデータを取得する層とGO

Sを用いた高エネルギーのデータを取得

する層の2層構造となっており、1回の

曝射で低・高エネルギーそれぞれのデー

タをraw

データとして保存。通常画像は、

低・高エネルギーを合わせたデータを用

いて再構成され、必要に応じて画像処理

を行うことで、任意の仮想単色X線画像

を作成できる。

 

2種のデータは、時間的・空間的にも

ズレがなく、全ての検査で120kVp

画像

データと、ミスレジストレーションのな

い40keV

から200keV

までの仮想単色X

線画像を1keV

単位で作成・取得するこ

とが可能である。

 

従来のD

ual Energy

撮影の問題点と、

「IQon Spectral CT

」導入の経緯について、

片平氏はつぎのように話す。

「Dual Energy

撮影は、従来装置では事前

にDual Energy

撮影を実施するか否かを

判断する必要がありました。加えて、

Dual Energy

撮影を実施した際には、診

断のスタンダードである120kVp

の通常

画像が同時に取得できません。また、メー

カーによってはD

ual Energy

データの位

置ずれや時相のずれが発生してしまい、

画質に影響してしまうなどの問題点もあ

りました。

 

このように、D

ual Energy

撮影は独特

な検査であること、また通常画像を取得

できないために以前の検査画像との比較

読影がしづらいことなど、臨床で役立て

るには障害が多く、研究面ではともかく、

臨床で活用している施設は決して多くな

いのが現状です。私もD

ual Energy

撮影

に興味はありましたが、臨床が中心の当

院では利用が難しいだろうと考えていま

した。

 

そこへ、フィリップスが2層検出器を

搭載した新型CTを発売したことを耳に

し、早速、検討してみたのですが、非常

に優れた装置であると判断し、院長ら病

院上層部を説得して、CTの更新時に合

わせて導入が可能となりました」

 

このCTの最大の特徴は、全ての症例

において通常画像とスペクトラル画像の

両方の画像を1回の検査で同時に取得す

ることができる点にある、と片平氏は強

調する。

「日常のワークフローを全く変えることな

く、通常画像に加え、必要に応じてスペ

クトラル画像を作成することができる点

が、従来の装置と比較して画期的である

と言えます。

 

また、撮影自体は従来と全く変わらな

いので、撮影プロトコールも変更するこ

となく検査することができます。当院は

フィリップス製のCTを従来から使って

いたので、診療放射線技師たちも特別な

研修等を行うことなく対応でき、当直業

務も問題なく実施できています」

最新式“2層検出器搭載CT”が実現する多彩なスペクトラル画像の獲得と解析が新たな画像診断の可能性を拓き始めた熊本中央病院は、昨秋、画期的と称してよい最新型マルチスライス CT を導入し、現在、フル稼働中である。機種名は「IQon Spectral CT(アイコン・スペクトラル CT)」。フィリップス社製の最新、かつ意欲的モデルだ。同院に導入されたのは国内1号機であり、すでに 2017 年4月末時点で 4000 例もの検査を実施したというが、放射線科スタッフは当然、他診療科、そして検査を依頼する院外の医師たちも、そのパフォーマンスを高く評価する。その名が広く知られる同院放射線診断科部長である片平和博氏に、同 CT 導入の経緯と有用性について話を聞いた。

熊本中央病院熊本県

1965 年福岡県生まれ。1990 年熊本大学医学部卒。下関厚生病院、人吉総合病院、熊本整形外科病院、国立熊本病院放射線科、熊本大学医学部附属病院放射線科助手を経て、2000 年熊本中央病院放射線科勤務。2005 年から同医長、10 年から放射線診断科部長として現在に至る

Close-Up

片平和博(かたひら・かずひろ)氏

国家公務員共済組合連合会

熊本中央病院

放射線診断科 部長

片平和博氏に聞く

In

te

rv

ie

w

 

熊本中央病院における放射線科は、診

断科と治療科に分かれており、医師6名、

診療放射線技師16名が画像診断・血管内

治療、放射線治療に従事している。

 

保有する主なモダリティは、CTが今

回、旧機から更新した2層検出器搭載の

スペクトラルCTと256スライスCT

の各1台、MRIは1・5テスラと3テス

ラの装置が各1台、血管撮影装置2台、

RI1台などである。なお、検査件数は

CT2台で1日50~60件ほど、MRI2

台で1日30~40件で、それに加えて各医

療機関からの紹介検査は年間2000件

を数える。画像診断は検査後、すぐに実

施するという迅速な体制を敷いており、

画像診断管理加算2も取得している。

 

また、同院ではオンラインで画像情報

を他施設と共有する医用画像ネットワー

ク「くまちゅう画像ネット」を2012

年から運用している。その結果、CT、

MRI、RIに心カテに加え、内視鏡、

超音波などの検査において、検査後、短

時間で紹介元病院の専用端末で画像およ

びレポートを閲覧することが可能である。

「くまちゅう画像ネット」には50施設を超

える医療機関が参加しており、特にCT

とMRIの紹介件数の7割以上が同ネッ

トからの紹介だという。

 

昨年、熊本地震を経験した同院だが、

被害は幸い軽微だったと放射線診断科部

長である片平和博氏は話す。

「放射線診断科への影響は、安全点検のた

めにMRI検査を1週間停止したくらい

で、他の装置には何の被害もなく、診療

への影響は少なかったですね」

 

2016年8月、同院では国内1号機

となる2層検出器搭載のフィリップスの

新型CT「IQ

on Spectral CT

」を導入した。

「IQon Spectral C

T

」は、N

anoPanel Prism

という名称の、画期的な2層検出

器を搭載した128スライスCTである。

従来のワークフローを変えることなく

通常画像とスペクトラル画像を描出

2層検出器搭載「IQ

on Spectral C

T

熊本中央病院。1997 年に現在の地に移転。熊本地震でも大きな被害を受けず、地域医療を支えている

(    )80新 医 療 2017年6月号

P.80

(    )81 新 医 療 2017年6月号

P.81

Page 2: 熊本中央病院 Close-Up

     

「IQon Spectral C

T

」は、40keV

から

200keV

までの仮想単色X線画像を1keV

単位で作成することができることから、

低エネルギー画像および高エネルギー画

像、それぞれの臨床上のメリットを享受

できると片平氏は話す。

「このCTはメリットが多すぎて、その有

用性を一言で言い表すことはできません。

まず、造影検査に注目して言うと、CT

の造影検査では、造影剤の注入タイミン

グが難しいのですが、低エネルギーによ

る仮想単色X線画像による造影効果を高

めることができます。ワークフローを変

えることなく検査できると前述しました

が、造影検査も実施しやすくなったこと

から、診療放射線技師にとって“やさしい”

CTであると言えます」

 

同CTで描出される低エネルギーレベ

ルでの仮想単色X線画像では、従来の低

管電圧撮影で実施されていた造影剤のC

T値上昇以上の効果を再現することがで

き、造影効果の向上とノイズ低減効果を

得ることが可能である。造影効果につい

て、片平氏はつぎのように話す。

「低エネルギーレベルの画像で造影効果を

高めることができるので、良好なコント

ラストを保ったまま、造影剤量を最大4

分の1程度にまで減らすことが可能です。

 

最近は、心臓病の患者さんや高齢の患

者さんなど、腎機能が低下している患者

さんも多く、造影剤の量を減らすことが

できる点は、このCTの大きな優位点の1

つです。先ほど、診療放射線技師にとっ

て“やさしい”CTと称しましたが、それ

よりももっと重要である、患者さんにとっ

ても“やさしい”CTであると言えます」

「IQon Spectral CT

」は、造影剤量低減だ

けでなく、逆に造影効果を高めることも

できると片平氏は話す。

「造影剤の量を4分の1に減らせるという

ことは、裏返すと従来の造影効果を最大

4倍までに増強することも可能というこ

とです。それゆえ、造影効果が低い腫瘍

であっても良好な造影効果を得ることが

でき、診断能を高めることが可能です。

 

造影剤減量プロトコールで撮影した患

者さんたちの腎機能について造影CT検

査の前後で比較したのですが、造影前後

の腎機能は統計学的有意差がなく、軽微

な変化にとどまる場合がほとんどでした。

つまり、造影剤が少量であれば比較的安

心して造影剤を使用可能であることが言

えると考えています。

 

従来は腎機能が悪いため、造影剤を使

いたくても使えない患者さんが多かった

のですが、腎機能を保っても、正しい診

断ができなければ命に関わるケースもあ

ります。しかし、この『IQ

on Spectral CT

』によって、そのような患者さんに対

しても造影CT検査が可能となる場合も

出てきており、しかも腎機能への影響は

最小限であるというメリットは、大きな

福音であると考えています」

 

前立腺がんの治療実績が豊富であるな

ど、泌尿器科領域の診療を医療の柱の1

つとする同院だが、泌尿器科領域でも同

CTの性能が期待されている。

「更新した『IQ

on Spectral CT

』は、H

U

attenuation curve

の作成も容易で、物質

弁別が可能です。例えば、腎結石の治療

について薬で溶解させることが可能なの

か、超音波で破砕しなければならないの

かを検討、分析できますし、胆石の組成

なども解析可能です」

 

整形領域でも「IQ

on Spectral CT

」は

大いに役立っていると片平氏は話す。

「高エネルギー画像によって金属アーチ

ファクトを低減させることができますし、

低エネルギー画像では軟部コントラスト

の上昇により、椎間板ヘルニアや脊柱管

狭窄の程度が以前のCTより診断しやす

くなっています」

 

また、片平氏は通常の検査ばかりでな

く、脳卒中や救急医療においても臨床上

大いに役立つと話す。

「また、低エネルギーの画像のノイズ低減

効果によって、頭部CTでは従来骨に囲

まれた部分のビームハードニングアーチ

ファクトが軽減して白質と灰白質のコン

「IQon Spectral CT」のコンソール。従来の撮影条件と同じプロトコールによる撮影で通常の 120kVp 画像と同時に仮想単色 X 線画像を取得することが可能であることから、同CT 操作のための特別な研修等が不要であったという

「IQon Spectral CT」の画像解析を行う片平氏。専用解析ワークステーション「Spectral Viewer」により、仮想単色 X 線画像の作成や、物質同定のための Energy Map や Iodine Map 等を作成することができる

「 I Q o n S p e c t r a l C T 」 の 臨 床 画 像 ①「 I Q o n S p e c t r a l C T 」 の 臨 床 画 像 ②

造影効果を高めることにより

造影剤量低減化と高画質化を実現

2層検出器搭載CTの有用性①

泌尿器領域で物質弁別を実現

アーチファクト低減が整形領域に有用

急性脳梗塞や絞扼性イレウス等、

救急領域での診断にも有用性を発揮

2層検出器搭載CTの有用性②

2層検出器搭載CTの有用性③

図 1 結石成分解析を施行した膀胱結石2例。図 1-1、1-2 シュウ酸カルシウム結石(赤矢印)、図 1-3、1-4 尿酸結石(青矢印)、図 1-1、図 1-3 は通常 CT 画像、図 1-2、図 1-4 は実効原子番号画像、尿酸結石は実効原子番号が低い

図 2 90歳代女性、臨床的に重篤感がなかった絞扼性イレウス(手術で確認された)。図 2-1 通常CT像では虚血腸管がわかりづらいが、図 2-2 ヨード画像では造影不良である絞扼腸管(矢印)が明瞭化している

(    )82新 医 療 2017年6月号

P.82

(    )83 新 医 療 2017年6月号

P.83

Page 3: 熊本中央病院 Close-Up

  

をセットとして検査することが多いが、

「IQon Spectral CT

」では造影CT検査画

像から仮想的な単純CT画像も描出でき

る(V

irtual non contrast image

)ことか

ら、単純CTを省く検査も可能であると

いう。

 

同院では、もう1台のCTとして、フィ

列数で分類すると64列CTに属する装置

ですので、64列を超える超多列CTと比

較すれば心臓CT等で若干長めの息止め

時間を要します。しかし、256スライス

CTによる心臓CT撮影は3、4秒程度で、

スペクトラルCTは7、8秒程度と数秒の

違いでしかありません。

 

この違いをどう考えるかがポイントと

なりますが、造影検査での有用性や、ス

ペクトラル画像を容易に取得できること

を考えると、『IQ

on Spectral CT

』の方が

使い勝手のよい装置であると言えるのでは

ないでしょうか。

 

64列を超える超多列CTは、主に心臓

CT検査をターゲットにしていますが、

『IQon Sectral CT

』はオールマイティな

CTとして普及していくと思いますし、

そうなることを確信しています」

 

高性能モダリティを多数保有している

同院だが、「IQ

on Spectral CT

」は十分採

算が取れる装置であると片平氏は話す。

「特別な検出器を搭載していますから、価

格的には決して安くはない装置ですが、

他社のフラッグシップCTと同じ程度で

あり特別高価な装置ではありません。当

院では、検査件数も多いので十分採算を

取ることができています。

 

検査画像の質も高いので院内外の評価

は高く、“新しい装置で検査してください”

と検査が集中してしまうのがむしろ課題

ですね。

 

なお、新しいCTが稼働して、すでに

4000件以上の検査を実施しましたが、

全ての検査でスペクトラル画像を取得で

きますから、全てが貴重な研究の対象と

なり得ます。

 

CT画像のスペクトラル解析を行う装

置としては使いやすい装置であると言え

るでしょう」

 

今後のCTの進化の展望について、片

平氏はつぎのように話す。

「今までのCTは、撮影速度の速さや、空

間分解能をどれだけ高めるかに注力して

開発されてきました。その結果、最も高

速で、空間分解能を極めているのが、現

在の各社のフラッグシップCTです。

 

一方、MRIはコントラストに見られ

るように濃度分解能に優れ、病変の成分

や変化、物質の弁別などを得意としてき

ました。そのような観点から、新しい『IQ

on Spectral CT

』は、CTとしての高分解能・

高速撮影を維持しつつ、MRIの長所で

ある画像のコントラストについても優れ

た画像を描出する“MRIみたいなCT”

と言えます。

 

今後の画像診断は、各モダリティで得

られた画像データを如何に解析するかが

問われる時代となってくるでしょう。

『IQon Spectral CT

』は、その先鞭をつけ

るCTと言えるのではないでしょうか」

トラストがより明瞭になるので、急性脳

梗塞等の診断にも役立ちます。

 

また、ヨード造影剤を特に強調した画

像を描出できるので、救急搬送時におけ

る腸閉塞や絞扼性イレウスの診断もしや

すくなっていますね。

 

救急医療など、どのような所見が得ら

れるかわからない患者さんのCT検査で

は、大きな力になるCTです」

 

また、同院のCT検査では、造影剤を

注入せずに検査する単純CTと造影CT

リップス製256スラ

イスCT「Brilliance

iCT

」が稼働している

が、「IQon Spectral

CT

」との使い分けにつ

いて、片平氏はつぎの

ように話す。

「256スライスCT

はより短時間で広い範

囲を撮影することがで

きる装置なので、息止

めが困難な患者さんな

どでの検査には256

スライスCTを優先し

ています。

 

逆に、腎機能が落ち

ている患者さんや、救

急搬送された患者さん

など、スペクトラル画

像が必要になりそうな

症例には『IQ

on Spectral CT

』を優先しています。

『IQon Spectral CT

』は

「IQon Spectral CT」を囲んで片平和博氏と放射線科のスタッフの皆さん。放射線科では画像管理加算 2を取得し、「くまちゅう画像ネット」等、多施設の紹介検査も積極的に受け入れている

―病院の沿革と概要からお聞かせください。

 1951(昭和 26)年 4 月に「非現業共済組合連合会 熊本

共済診療所」として開設されたのが嚆矢です。1958 年に現在

の「国家公務員共済組合連合会 熊本中央病院」と改称し、現

在の地に移ってきたのは1997 年ですので、移転よりちょうど

20 年目に当たります。

 病床数は 361床、17 診療科を有し、地域の診療所および

病院と相互に協力・連携しながら、入院を中心とした急性期医

療を展開する病院として、地域医療支援病院にも認定されてい

ます。

 外来患者数は1日当たり500 名程度ですが、私たちが重要

視しているのは病診連携で、紹介件数は 1ヵ月に 1100 ~

1200 件、紹介元医療機関は約 400 施設に及びます。私自身

も熊本市医師会の副会長を務めており、開業医の先生方との

緊密な連携を図るよう努めています。

―熊本市内は病院も多いですが経営状況はいかがでしょうか。

 近隣には名だたる病院も多く、なかなか大変ですが、循環器・

呼吸器・整形・泌尿器領域を中心に機能分化を進め、ある程

度競争を繰り広げる中で勝ち残っていると自負しています。

 今述べた4つの診療領域を柱として、今後は他の診療科も増

やしていきたいですね。

 なお、本部から健全経営を維持するよう指示されていますが、

「質の高い誠実な医療による地域への貢献」という病院の理念

を守りつつ、患者さんと紹介元の開業医の先生方が満足しても

らえるような効率的、効果的な医療を続けていきたいですね。

―熊本地震の影響はいかがでしたか。

 建物は建築して約 20 年ですが、十分な耐震性を確保してい

たので病院に大きな被害は出ませんでした。また、地震の際、

当院は避難所も兼ね、200 名以上の方々が避難されてきました。

私は地震の被災者でもある職員が疲弊しないように気を配りま

した。

―高性能なモダリティの導入と、画像連携にも積極的でいらっ

しゃいます。

 放射線診断科には CTとMRIを各 2 台ずつ導入しています。

いずれもフィリップス製の装置ですが、質の高い画像診断を提

供してくれていると院内外の評価も高いようです。

 なお、当院では地域医療画像連携ネットワークシステムとして

「くまちゅう画像ネット」を運用しており、50 ~ 60 の医療機関

と連携して画像提供サービスを提供しています。

 以前の紹介検査であれば、予約、検査、診断それぞれのた

めに患者さんが何回も来院しなければならなかったのですが、「く

まちゅう画像ネット」により、紹介元の先生はインターネットを

介して簡単に検査予約をすることができ、紹介患者さんが検査

のために来院され、検査が済み、当院から帰る頃には読影レポー

トまでできあがっているという仕組みです。

 また、私は泌尿器科医ですが、泌尿器科では、放射線科と

連携して 3 テスラ MRIを活用した MRI ガイド下前立腺生検を

実施しており、国内でも有数の症例数を誇ります。この生検を

受診するため、熊本だけでなく、全国から患者さんが来院され

ます。遠くは青森県から来院されたケースもあります。

 以上述べたとおり、画像診断は先端医療を実施する上で重要

です。今回、新しく導入した CT でも、腎結石の物質分析がで

きると聞いています。高機能の画像診断装置は決して安価では

ありませんが、画像診断の評価が高いこともあって検査件数は

多く、新しい CT によって紹介検査件数増も見込めますし、病

院としても相乗効果が見込めます。

 フィリップスの装置は大きなトラブルもなく順調に稼働してお

り、サポート体制も充実し、また、しっかりしているので、助かっ

ています。

―今後の展望についてお聞かせください。

 今後の戦略としては、患者数と手術件数を増やすため、病院

の機能の拡充を進めています。

 まずはハイブリッド手術室の設置、そして今年度中に透析室

の施設拡充を図る予定です。

 加えて、乳腺外科を当院に新設し、患者さんを増やしていき

たいですね。

 熊本市の人口も減ってきています。地域医療構想の中、ベッ

ド過剰時代に生き残るためにいろいろなことに取り組み、また

地域の開業医の先生たちの意見やニーズを考えながら、今後の

病院の在り方を考えていきたいと思っています。

熊本中央病院院長である濱田泰之氏に、同院の診療の現況と熊本地震の影響、同院における放射線科の位置づけなどを聞いた。

I n t e r v i e w

国家公務員共済組合連合会 熊本中央病院院長

濱田泰之氏に聞くはまだ・やすゆき

互いの長所を生かしたオーダ峻別

1日50~60件のCT検査を実施

256列CTとの併用

“MRIみたいなCT”として

「IQon S

pectral CT

」に期待

全症例でスペクトラル画像を

臨床だけでなく研究にも貢献

2層検出器搭載CTの有用性④

CTの進化の展望

1953 年熊本市生まれ。1977 年熊本大学医学部卒。1980 年熊本中央病院泌尿器科勤務、1989 年同泌尿器科主任医長、2003 年同泌尿器科部長。2008年同副院長、2009 年より同院長。

(    )84新 医 療 2017年6月号

P.84

(    )85 新 医 療 2017年6月号

P.85