1 2005.08.01 21:00 ~ 08.02 9:00...

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マシンスタディ報告書 テーマ 線型加速器短バンチビーム入射 責任者 庄司善彦 参加者 松原貴裕 * 、庄司善彦、鈴木伸介、久岡義典 * 、三井貴之 * 、増田貴士 * *NS学生) 実施日時 2005.08.01 21:00 ~ 08.02 9:0010hr)および 08.04 20:00 ~ 08.05 10:0014hr1シフト目(2005.08.01 21:00 ~ 08.02 9:00目的 線型加速器のパラメータを変えてNSに短バンチを入射し、 lowαモードにて短バンチを数十ターン周回させ る。前回のスタディではシケインを消磁し、 ECS後段の加速管でビームにエネルギー勾配をつけることで入射 ビームを約13psまで圧縮することに成功した。さらにlowαモードで入射を行うことで約50turn短バンチを保持 することに成功した。今回のスタディではlinacの加速管を1台新たに立ち上げし、 2台の加速管で前回よりさら にエネルギー勾配をつけることで入射ビームのバンチ長10ps以下を目標にスタディを行った。 結果 Linac調整、入射ビーム計測結果 LinacM10加速管を新たに立ち上げて加速に加え、シケイン部のBMを消磁した状態でBT調整を行った。 Linacのパラメータとして、M10M20(ECS後段の加速管、通常は 0phase付近でエネルギーモジュレーション 用に使用)でビームをクレストに乗せて1.0GeVまでの加速に使用した。今回はM18192台は0phase付近に乗 せてエネルギー勾配をつけた。 NSをα=~0 (QM n-MK30)の状態にして入射ビームの計測を行った結果をFig.1 に示す。Fig.1は入射20回分の積算である。リング入射直後のlinacビームのバンチ長は 15psであった。 Fig.1 リング入射直後のLinacビームの計測結果。計測結果は入射20回分の積算である。右のグラフは入射点 での強度分布を縦軸に投影した結果である。 次にLinacM1819加速管のphaseを約180deg変え、M1819でのエネルギーモジュレーションをFig.1と反 転させた状態で計測を行った。結果をFig.2に示す。バンチ長の計測結果は 8.1psであった。しかし、1pulseたりの光量が弱かったため、 Fig.2ではGunからの電流値をあげるためにパルス電圧を110kVから150kVに上げ、 バイアス電圧を200kVから120kVに下げた。Fig.260shot の積算である。Fig.2の状態でNSのαを前回のスタデ ィで入射後最も短バンチが保持された設定(α=~-0.06QMMK33)にして計測を行ったが、CODがずれ、 光軸がずれていたためか入射ビームを観測することができなかった。 10 μs 50 ps 入射点 100 150 200 250 300 350 400 450 0 10 20 30 40 50 count

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  • マシンスタディ報告書

    テーマ : 線型加速器短バンチビーム入射 責任者 : 庄司善彦 参加者 : 松原貴裕*、庄司善彦、鈴木伸介、久岡義典*、三井貴之*、増田貴士*(*:NS学生)

    実施日時 : 2005.08.01 21:00 ~ 08.02 9:00(10hr)および 08.04 20:00 ~ 08.05 10:00(14hr)

    1シフト目(2005.08.01 21:00 ~ 08.02 9:00) 目的 線型加速器のパラメータを変えてNSに短バンチを入射し、lowαモードにて短バンチを数十ターン周回させる。前回のスタディではシケインを消磁し、ECS後段の加速管でビームにエネルギー勾配をつけることで入射

    ビームを約13psまで圧縮することに成功した。さらにlowαモードで入射を行うことで約50turn短バンチを保持することに成功した。今回のスタディではlinacの加速管を1台新たに立ち上げし、2台の加速管で前回よりさらにエネルギー勾配をつけることで入射ビームのバンチ長10ps以下を目標にスタディを行った。

    結果 Linac調整、入射ビーム計測結果 LinacのM10加速管を新たに立ち上げて加速に加え、シケイン部のBMを消磁した状態でBT調整を行った。Linacのパラメータとして、M10、M20(ECS後段の加速管、通常は 0phase付近でエネルギーモジュレーション用に使用)でビームをクレストに乗せて1.0GeVまでの加速に使用した。今回はM18、19の2台は0phase付近に乗

    せてエネルギー勾配をつけた。NSをα=~0 (QM:n-MK30)の状態にして入射ビームの計測を行った結果をFig.1に示す。Fig.1は入射20回分の積算である。リング入射直後のlinacビームのバンチ長は 15psであった。

    Fig.1 リング入射直後のLinacビームの計測結果。計測結果は入射20回分の積算である。右のグラフは入射点

    での強度分布を縦軸に投影した結果である。 次にLinacのM18、19加速管のphaseを約180deg変え、M18、19でのエネルギーモジュレーションをFig.1と反転させた状態で計測を行った。結果をFig.2に示す。バンチ長の計測結果は 8.1psであった。しかし、1pulse当たりの光量が弱かったため、Fig.2ではGunからの電流値をあげるためにパルス電圧を110kVから150kVに上げ、

    バイアス電圧を200kVから120kVに下げた。Fig.2は60shotの積算である。Fig.2の状態でNSのαを前回のスタディで入射後最も短バンチが保持された設定(α=~-0.06、QM:MK33)にして計測を行ったが、CODがずれ、光軸がずれていたためか入射ビームを観測することができなかった。

    10 µs

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    入射点

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  • Fig.2 リング入射直後のLinacビームの計測結果。計測結果は入射60回分の積算である。 LinacはFig.2の設定のままNSをNormalαに戻し、入射位相を調整した後でlinacビームのエネルギー分布の計測を行った。LinacビームのエネルギーがはNSよりも0.3%低かったため、リング磁場を下げてエネルギーマッ

    チングをとった。Fig.3 計測時のNSの加速電圧は300kVである。Linacビームのエネルギー幅は全幅で±0.15%であった。

    Fig.3 リング入射直後のLinacビームの計測結果。計測結果は入射20回分の積算である。右のグラフは入射点から1/4周期だけシンクロトロン振動したところでの強度分布の計測結果である。

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    ΔE/E (%) Fig.3 入射ビームのエネルギー分布構造の計測結果。

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    count

    After 1/4 oscillation period

  • まとめ 本スタディではlinacのシケインを消磁し、さらにM10加速管を新たに立ち上げてlinacビームのバンチ長圧縮を行った。2台の加速管によってエネルギー勾配をつけることで、入射ビームのバンチ長を8psまで圧縮できた。このときのストリークカメラによる入射ビームのエネルギー幅の計測結果は±0.15%であった。low αでの計

    測は入射電荷量のリミットに達してしまい、カメラなどの調整が不十分であったために今回は計測することが

    できなかった。また、入射ビームのバンチ長が8psの設定ではリングに入るビームが少なく(入射効率が低い)、linacのgunからの電流量を増やさなければ計測を行うことができなかった。

    2シフト目(08.04 20:00 ~ 08.05 10:00) 目的 本スタディでは線型加速器のパラメータを変え、NewSUBARUに極短バンチビーム入射を行う。前回(2005 /

    08 / 01)のスタディではlinacシケイン部のBMの消磁、M10加速管の立ち上げなどを行い、全幅8psまでバンチ長を圧縮することに成功した。今回はシケインを通過させたビームに対して後段の加速管(M20)でエネルギーモジュレーションをかけ、加速管のpowerに対するバンチ長変化の様子を確認する。また、NSをlow αモードに

    して極短バンチビームを入射し、短バンチを数十ターンに渡って保持されるような技術を構築する。

    結果 1、linac通常運転時の設定における計測結果 Linac通常利用運転時の設定でNewSUBARUに入射された直後のlinacビームのバンチ長をストリークカメラで観測した。Buncher位相を数deg変更し、バンチ長が最短となったときのストリークカメラによる観測結果を

    Fig.1に示す。Fig.1は入射40回分の重ね書きであり、縦軸、横軸のフルスケールはそれぞれ50ps、10μsである。また、NewSUBARUは通常の利用運転時の設定(α1=0.0013)である。入射ビームのバンチ長は約 13.6 psであった。

    Fig.1 linac通常運転時の設定(ECS acc.(M20) att. 4.7dB、位相243.3deg、buncher位相34.9deg)における入射ビームの計測結果。Fig.1は入射40回分の重ね書きであり、縦軸、横軸のフルスケールはそれぞれ50ps、10μsである。NewSUBARUは通常の利用運転時の設定(α=0.0013)である。

    10 µs

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    Tim

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  • 2、ECS加速管の電界強度を変えた計測 前回のスタディ(2005 / 08 / 01)ではlinacのシケイン部のBMを消磁した状態でlinacビームのバンチ長圧縮を行った。しかし、ビームのエネルギー広がりによるL4BT部でのバンチ長の変化とシケイン部での変化がそれぞれ打ち消し合う方向であることから、今回のスタディではシケイン部を通過させた状態でECS後段の加速管

    の電界強度を変えてバンチ長の圧縮を試みた。ECS後段の加速管(M20)の電界強度をアテネータ4.7dB(通常運転時の設定)の状態から1.7dBに変え、NS入射直後のlinacビームのバンチ長を計測した。結果をFig.2に示す。Fig.2は入射20回分の重ね書きである。計測の結果、linacビームのバンチ長は10.4psであった。

    Fig.2 linac ECS acc.(M20) att. 1.7dB、位相270.0deg、buncher位相36.9deg における入射ビームの計測結果。

    ・Single shot計測

    Fig.2計測後にlinacのエネルギースリットを広げ(マイナス側-5mm、プラス側+10mm)、入射電荷量を増やしたところ、1shot計測(積算無し計測)が可能になった。1shot計測を数回行ったところ、計測毎に入射ビームの縦軸における位置のずれ(ストリークカメラの掃引電圧位相のずれ)が見られた。数回にわたる1shot計測

    結果をFig.3、Fig.4に示す。Fig.3(a)~(e)は数秒おきに入射したものを連続的に計測したもので、(a)から時系列に並べたものである。これに対し、Fig.4はFig.3から約45分後(SR入射後)に同じLinacパラメータのもとで計測した結果である。入射ビームの掃引タイミングはFig.3では一方向にドリフトする形でずれており、5shotで重

    心の位置は約6psずれている。これはストリークカメラの掃引電圧位相のドリフトが原因である可能性が高い。これに対してFig.4のずれは連続ではなく、linacの入射タイミングのずれと掃引電圧位相のドリフトの二つが同時に起こっている可能性がある。1shotでのバンチ長の計測結果は約3~6psと短かった。

    Fig.3 Fig.4 linac ECS acc.(M20) att. 1.7dB、位相36.9deg、buncher位相34.9degにおける入射ビームの計測結果。Fig.3、4ともは1shotの計測結果であり、(a)より入射毎の計測結果を時系列に並べている。Fig.4はFig.3計測から

    10 µs

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    t(100

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    div.

    )

    Time (ps)

    Injection point (1shot)Linac beam

    (a)

    (b)

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    01020304050

    coun

    t (10

    0 co

    unt /

    div

    .)

    Time (ps)

    Injection point (1shot)Linac beam

    (a)

    (b)

    (c)

    (d)

  • 45分後の計測結果である。

    Fig.3、4の1shot計測で入射ビームのバンチ長が数psまで圧縮できていることが分かった。この状態でLinacのエ

    ネルギー分布の様子を確認した。結果をFig.6に示す。Linacビームのエネルギー幅は全幅で±0.2%であった。

    Fig.6 linac ECS acc.(M20) att. 1.7dB、位相36.9deg、buncher位相34.9degにおける入射ビームの計測結果。Fig.6

    は入射10回分の積算結果である。右のグラフは1/4周期だけシンクロトロン振動したところで、横軸12channelをスライスし、強度分布をとったもの。

    3、 NewSUBARU Lowαモードでの計測 NewSUBARUの四極、六極電磁石の設定を変更し、αを0付近に設定した。前回のスタディでは四極、六極電磁石を変更後、ビーム入射、蓄積ができなくCODの補正ができなかったため、今回のスタディでは事

    前にNormalαモードでビーム入射(5×33bunch fill、~0.01mA)を行い、四極、六極電磁石変更とα=~0でCOD補正(fRFを調整)を行った。

    ・linacビームパルス幅250psでの計測 lowα設定と同時にlinacを250psのシングルバンチに設定して計測を試みた。しかし、gunにかける電圧の250psゲート幅のばらつきによってlinacからNewSUBARUに入射されるビームのマクロパルス中のバンチ構

    0

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    coun

    t

    Time (ps)

    Injection point (10shot)

    Fig.5 linacを Fig.3、4と同様の設定で計測したときの計測結果。計測結果は 10shotの重ね書きである。バンチ長は 12.0psであった。

    50 µs

    500

    ps

    Injection point After 1/4 oscillation

    0 50 100 150 200

    0

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    500

    Tim

    e (p

    s)

    Full width :190 ps ΔE/E = ±0.2%

  • 造が入射毎で異なっていることが分かった(Fig.7)。このため、以下のlowαモードによる計測は1nsのゲート

    幅に戻して行った。1nsの設定ではバンチ構造は安定した状態であった。

    0 500 1000 1500 2000

    coun

    t(100

    cou

    nt /

    div.

    )

    Time (ps)

    Injection point (1shot)Linac beam

    (a)(b)(c)

    (d)(e)

    Fig.7 Linacのビームパルス幅を250psに設定したときの計測結果。横軸(ストリークカメラ縦軸)はフルスケール2nsである。グラフは数秒おきの入射ビームの計測結果を(a)から時系列に並べたものである。

    ・lowαモードでの入射ビーム計測結果 四極、六極電磁石の設定を変更し、α1=~-0.06、α2=~0(QM:n-MK34、SX:a2=0 for MK12、SF=10.95 )に設定してビーム入射を行い、入射ビームを計測した。LinacのBuncher位相を調整し、最もバンチ長が短く、長時

    間にわたって短バンチが保持された時の計測結果をFig.8に示す。Fig.8は1shotの計測結果である。入射点でのバンチ長は約7.4psでバンチ長10ps以下が入射後20μs(約50turn)まで保持されている。LinacをFig.8の状態に固定しても、入射ビームのバンチ長には数psのばらつきが見られた。

    Fig.8 Linacをlinac ECS acc.(M20) att. 1.7dB、位相36.9deg、buncher位相34.9deg(Fig.3、4計測時の設定)に設定

    し、さらにNSをα1=~-0.06、α2=~0(QM:n-MK34、SX:a2=0 for MK12、SF=10.95 )に設定して入射ビームを計測したときの計測結果。Fig.8は1shotの計測結果である。右のグラフは横軸5usごとに30channel(2.3us、6revolutios)をスライスし、強度分布をとったもの。縦軸、横軸はカメライメージの縦軸、横軸に対応している。

    まとめ

    50 µs (126 revolutions)

    50 p

    s

    Injection point

    0 10 20 30 40

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    Time (µs)

    Tim

    e (p

    s)

  • 本スタディでは線型加速器のパラメータを変え、NewSUBARUに極短バンチビーム入射を行った。今回はシ

    ケインを通過させたビームに対して後段の加速管(M20)でエネルギーモジュレーションをかけ、バンチ入射ビームのバンチ長を確認した。今回のスタディではlinacのエネルギースリットを広げ、1shot計測を行うことができた。これによって、1shot計測でバンチ長が10ps以下まで圧縮されていることが確認できた。また、NSをlow

    αモードにしたときの計測結果では約50turnにわたって10ps以下の短バンチが保持されていることが確認できた。 今回のスタディで

    1、 入射ビームの計測タイミング(ストリークカメラ掃引電圧位相)のずれ 2、 Shot毎のlinacビームのバンチ長のばらつき 3、250psゲート幅の安定性

    などの問題が明らかとなり、これらを解決することが今後の課題である。