天文学概論2

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天文学概論(第3回) 太陽系 2 ~研究の最前線~ 東京工業大学 佐々木貴教

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Page 1: 天文学概論2

天文学概論(第3回)

太陽系 2~研究の最前線~

東京工業大学 佐々木貴教

Page 2: 天文学概論2

太陽系2 ~研究の最前線~

(1) 冥王星が惑星から外れた経緯(2) 月を作った巨大天体衝突(3) 太陽系外の惑星系の発見(4) 惑星探査計画 (火星探査, 月探査, 小惑星探査)

Page 3: 天文学概論2

冥王星が惑星から外れた経緯

Page 4: 天文学概論2

水金地火木土天海冥X

2006年8月24日国際天文学連合 (IAU) 総会で「惑星の定義」を決定 → 冥王星が惑星から外れ, 準惑星となる

Page 5: 天文学概論2

冥王星は“ヘン”な惑星だった

地球の月よりも小さい一方, 巨大な衛星カロンを持つ他の惑星と比べて, 軌道が大きくゆがんでいる

Page 6: 天文学概論2

冥王星は“ヘン”な惑星だった

地球の月よりも小さい一方, 巨大な衛星カロンを持つ他の惑星と比べて, 軌道が大きくゆがんでいる

~2001年カイパーベルト天体のひとつではないか?

Page 7: 天文学概論2

冥王星より大きな天体の発見

2005年冥王星より大きな天体 2003UB313 (エリス)が発見される

2400

第10惑星!?

Page 8: 天文学概論2

冥王星より大きな天体の発見

2005年冥王星より大きな天体 2003UB313 (エリス)が発見される

2400

第10惑星!?

「惑星の定義」を明確にしよう!

Page 9: 天文学概論2

12惑星案の「惑星の定義」① ほぼ球形である② 恒星の周りを回り, かつ恒星でも衛星でもない③ 共通重心が他の天体の内部にないものは, これを  衛星とは見なさず, 多重惑星とする

Page 10: 天文学概論2

12惑星案の「惑星の定義」① ほぼ球形である② 恒星の周りを回り, かつ恒星でも衛星でもない③ 共通重心が他の天体の内部にないものは, これを  衛星とは見なさず, 多重惑星とする

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#!$%&'!③ 月は衛星

カロンは惑星

Page 11: 天文学概論2

12惑星案の「惑星の定義」① ほぼ球形である② 恒星の周りを回り, かつ恒星でも衛星でもない③ 共通重心が他の天体の内部にないものは, これを  衛星とは見なさず, 多重惑星とする

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#!$%&'!③ 月は衛星

カロンは惑星

惑星が3つ増えるカロン(冥王星との二重惑星)エリス(最大のカイパーベルト天体)ケレス(最大のメインベルト小惑星)

Page 12: 天文学概論2

① ほぼ球形である② 恒星の周りを回り, かつ恒星でも衛星でもない③ 共通重心が他の天体の内部にないものは, これを  衛星とは見なさず, 多重惑星とする

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#!$%&'!③ 月は衛星

カロンは惑星

惑星が3つ増えるカロン(冥王星との二重惑星)エリス(最大のカイパーベルト天体)ケレス(最大のメインベルト小惑星)

12惑星案の「惑星の定義」

Page 13: 天文学概論2

① ほぼ球形である② 太陽の周りを回り, かつ恒星でも衛星でもない③ その軌道周辺で他の天体を一掃している

8惑星案の「惑星の定義」

Page 14: 天文学概論2

① ほぼ球形である② 太陽の周りを回り, かつ恒星でも衛星でもない③ その軌道周辺で他の天体を一掃している

冥王星, カロン, エリス, ケレスは③ の条件を満たしていない

準惑星(Dwarf Planet)① ほぼ球形である② 太陽の周りを回り, かつ恒星, 惑星, 衛星ではない③ その軌道周辺に他の天体が存在している

8惑星案の「惑星の定義」

Page 15: 天文学概論2

8つの惑星と3つの準惑星

惑星

準惑星

水 金 地 火 木 土 天 海

冥王星 エリス ケレス

Page 16: 天文学概論2

8つの惑星と3つの準惑星

惑星

準惑星

水 金 地 火 木 土 天 海

冥王星 エリス ケレス マケマケ(2008年7月)

Page 17: 天文学概論2

8つの惑星と3つの準惑星

惑星

準惑星

水 金 地 火 木 土 天 海

冥王星 エリス ケレス マケマケ(2008年7月)

ハウメア(2008年9月)

Page 18: 天文学概論2

8つの惑星と3つの準惑星

惑星

準惑星

水 金 地 火 木 土 天 海

冥王星 エリス ケレス マケマケ(2008年7月)

ハウメア(2008年9月)

X5 (今後も増える可能性あり)

Page 19: 天文学概論2

月を作った巨大天体衝突

Page 20: 天文学概論2

太陽系形成標準理論(林モデル)

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©Newton Press

Page 21: 天文学概論2

太陽系形成標準理論(林モデル)

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©Newton Press

Page 22: 天文学概論2

微惑星の合体成長数kmサイズの微惑星が形成

互いに衝突・合体を繰り返し成長

Page 23: 天文学概論2

微惑星の合体成長数kmサイズの微惑星が形成

互いに衝突・合体を繰り返し成長

暴走成長により少数の微惑星が急成長

火星サイズの原始惑星が形成

Page 24: 天文学概論2

巨大天体衝突

原始惑星同士の巨大天体衝突を繰り返し, 現在の惑星へ

Page 25: 天文学概論2

月の起源説

捕獲説

分裂説

双子説

原始地球が高速回転によりふくらみ,その一部がちぎれて月が誕生

地球軌道付近での微惑星の集積により,地球とは独立に月が形成

地球とは別の場所で作られた月が,地球の近くを通ったときに捕らえられた

Page 26: 天文学概論2

月の起源説

捕獲説

分裂説

双子説

原始地球が高速回転によりふくらみ,その一部がちぎれて月が誕生

地球軌道付近での微惑星の集積により,地球とは独立に月が形成

地球とは別の場所で作られた月が,地球の近くを通ったときに捕らえられた

分裂の力学的条件が極めて厳しい

Page 27: 天文学概論2

月の起源説

捕獲説

分裂説

双子説

原始地球が高速回転によりふくらみ,その一部がちぎれて月が誕生

地球軌道付近での微惑星の集積により,地球とは独立に月が形成

地球とは別の場所で作られた月が,地球の近くを通ったときに捕らえられた

分裂の力学的条件が極めて厳しい

月の内部構造が説明できない

Page 28: 天文学概論2

月の起源説

捕獲説

分裂説

双子説

原始地球が高速回転によりふくらみ,その一部がちぎれて月が誕生

地球軌道付近での微惑星の集積により,地球とは独立に月が形成

地球とは別の場所で作られた月が,地球の近くを通ったときに捕らえられた

分裂の力学的条件が極めて厳しい

月の内部構造が説明できない

天体を捕獲する確率は極めて低い

Page 29: 天文学概論2

月の起源説

捕獲説

分裂説

双子説

原始地球が高速回転によりふくらみ,その一部がちぎれて月が誕生

地球軌道付近での微惑星の集積により,地球とは独立に月が形成

地球とは別の場所で作られた月が,地球の近くを通ったときに捕らえられた

分裂の力学的条件が極めて厳しい

月の内部構造が説明できない

天体を捕獲する確率は極めて低い

Page 30: 天文学概論2

巨大天体衝突による月形成

Page 31: 天文学概論2

巨大天体衝突による月形成原始地球に火星サイズの原始惑星が衝突

飛び散った破片が地球の周囲に円盤を形成

円盤中で破片が集積合体により成長

↓月の誕生!

Page 32: 天文学概論2

動画①国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

(4D2Uプロジェクト)

Page 33: 天文学概論2

太陽系外の惑星系の発見

Page 34: 天文学概論2

太陽系外惑星が見つからない

Page 35: 天文学概論2

太陽系外惑星が見つからない1940~60年代: 白鳥座61番星のまわりに惑星発見? バーナード星のまわりに2つの惑星発見?

Page 36: 天文学概論2

太陽系外惑星が見つからない1940~60年代: 白鳥座61番星のまわりに惑星発見? バーナード星のまわりに2つの惑星発見?

→ 間違い   → 間違い

Page 37: 天文学概論2

太陽系外惑星が見つからない1940~60年代: 白鳥座61番星のまわりに惑星発見? バーナード星のまわりに2つの惑星発見?1989年: アメリカの観測チーム「惑星は検出できなかった」

→ 間違い   → 間違い

Page 38: 天文学概論2

太陽系外惑星が見つからない1940~60年代: 白鳥座61番星のまわりに惑星発見? バーナード星のまわりに2つの惑星発見?1989年: アメリカの観測チーム「惑星は検出できなかった」1993年: ニュージーランドの観測チーム「惑星は検出できなかった」

→ 間違い   → 間違い

Page 39: 天文学概論2

太陽系外惑星が見つからない1940~60年代: 白鳥座61番星のまわりに惑星発見? バーナード星のまわりに2つの惑星発見?1989年: アメリカの観測チーム「惑星は検出できなかった」

1995年2月:論文「太陽系は特殊で奇跡的な惑星系である」

1993年: ニュージーランドの観測チーム「惑星は検出できなかった」

→ 間違い   → 間違い

Page 40: 天文学概論2

太陽系外惑星が見つからない1940~60年代: 白鳥座61番星のまわりに惑星発見? バーナード星のまわりに2つの惑星発見?1989年: アメリカの観測チーム「惑星は検出できなかった」

1995年2月:論文「太陽系は特殊で奇跡的な惑星系である」

1993年: ニュージーランドの観測チーム「惑星は検出できなかった」

1995年8月:論文「太陽系以外に惑星は存在せず」

→ 間違い   → 間違い

Page 41: 天文学概論2

Mayor & Queloz (スイスの観測チーム)人類初の系外惑星検出!ペガサス座51番星の周りに Hot Jupiter が存在!

ところが・・・1995年10月

Page 42: 天文学概論2

太陽系外惑星が続々と見つかる

2008年10月現在すでに300個を超える!

Page 43: 天文学概論2

異形の惑星たち

Page 44: 天文学概論2

異形の惑星たち中心星のすぐそばに木星型惑星が存在

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異形の惑星たち

極端な楕円軌道を描く惑星たち

中心星のすぐそばに木星型惑星が存在

Page 46: 天文学概論2

Hot Jupiter

灼熱の惑星

昼面と夜面で激しい温度差

Page 47: 天文学概論2

Eccentric Planet

極暑・極寒を繰り返す

Page 48: 天文学概論2

Super Earth

地球

惑星質量が地球の5倍~10倍の地球型惑星

Page 49: 天文学概論2

Habitable Zone水が液体で存在できる領域

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系外惑星観測の将来計画~2008年 Super-Earthを検出 「地球」型惑星 0個

2015年?~ 地球サイズの惑星が検出

2020年頃? 大気成分の検出が可能 「第2の地球」発見!?

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惑星探査計画

Page 52: 天文学概論2

宇宙惑星探査の歴史(ハイライト)

Page 53: 天文学概論2

宇宙惑星探査の歴史(ハイライト)1959年 旧ソ連のルナ1号が月に接近1959年 旧ソ連のルナ2号が月に着陸(衝突)1961年 旧ソ連のベネラ1号が金星に接近1966年 旧ソ連のルナ9号が月面に軟着陸1967年 旧ソ連のベネラ4号が金星の大気を観測1969年 米のアポロ11号で人類が月面に降り立つ1976年 米のバイキング1, 2号が火星に着陸・探査1977年 米のボイジャー1, 2号が木星以遠の惑星を探査1997年 米のマーズパスファインダーが火星を詳細に探査2008年 米のフェニックスが火星の水の存在を探査中2015年 米のニューホライズンズが冥王星に到着予定

Page 54: 天文学概論2

動画②

Page 55: 天文学概論2

日本の宇宙惑星探査1998年 のぞみを火星へ向けて打ち上げ → 火星到着は失敗するも, 宇宙空間で様々な観測を行う2005年 はやぶさが小惑星イトカワに到着 → サンプルの回収・帰還を目指すが, 現在微妙な状況2007年 かぐやが月に到着, 現在も月面を鋭意探査中

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動画③

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連絡先❖ Sasaki Takanori Online:http://sasakitakanori.com

❖ メール:[email protected]

参考図書(ブログでも詳しく紹介してます)