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1 CFDと3Dプリンタによる 熱流体機械の最適化設計手法 大阪工業大学 工学部 機械工学科 特任教授 宮部 正洋 【別紙5平成31年2月28日

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1

CFDと3Dプリンタによる熱流体機械の最適化設計手法

大阪工業大学 工学部 機械工学科

特任教授 宮部 正洋

【別紙5】

平成31年2月28日

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従来技術とその問題点①

【開発スピード】

従来利用されている熱流体機器の設計技術には、長年に渡って積み上げられた実績による経験式が組み込まれた信頼性の高い設計手法があるが、実績でカバーできる範囲外の性能要求に対して迅速に対応することができない。

3

新技術の特徴・従来技術との比較①

• 数値流体力学(CFD)を最適化フレームワークに組み込むことで設計パラメータの最適な組み合わせを迅速に決定することができる。

従って、期限内に従来の2倍、3倍の設計パラメータについて検討することができる。

4

従来技術とその問題点②

【三次元的な設計対応】

ターボ機械の羽根車は未だ二次元あるいは準三次元手法を用いて設計されることが多いが、実際の流れは三次元であり、過去の実績を上回る高性能な要求に対しては二次流れの抑制などを考慮する三次元的な設計を行う必要がある。

5

新技術の特徴・従来技術との比較②

• CFDを用いて三次元流れ場を詳細に分析することができるため、導き出された最適な解から設計に関する重要な情報を読み取ることができる。

• 読み取った情報を設計ノウハウとしてデータベース化し、他の製品開発に展開できる。

6

従来技術とその問題点③

【開発コスト】

• 従来手法では検証実験用の装置を製作するために多くの時間、労力と費用を要する。

• 従来は高価な専用ソフトウェアを用いて計算することが必要であった。

7

新技術の特徴・従来技術との比較③

• 本技術では3Dプリンタを利用するため安価に製作でき、素早く検証実験を行うことができる。

• 本技術では無償のソフトウェアを利用することで、ライセンス費用が削減できる。

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想定される用途

• 本技術の特徴を生かすためには、ターボ機械の羽根車などの三次元設計に適用することで開発リードタイム削減のメリットが大きいと考えられる。

• 上記以外に、設計ノウハウの共有化の効果が得られることも期待される。

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適用事例■ガスタービン翼のフィルム冷却効率向上

設計パラメータが非常に多く、どう組み合わせたら良いかわからない

フィルム冷却孔配置の最適化を行う

システム全体の熱効率を向上させるため、ガスタービンの主流温度は益々高温になっている。

翼端壁を保護するため、効率的に冷却する必要がある。

冷却用空気を送る孔の配置や向きは非常に重要である。

冷却効率コンター図

最適化前 最適化後

10

最適化対象と手順

NASAのE3ガスタービン

上流のフィルム冷却が

下流に影響を及ぼす

3つの領域に分割。上流から順に、それぞれの領域の最適化を行い、全体の最適化を行う流れ

①②

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実験装置

実験装置 3Dプリンタ

サーモグラフィ

直ぐに製作し、

検証実験ができる

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初期設定

著名な論文*を基に初期のフィルム冷却孔を配置(Case1)

油膜法による馬蹄渦の可視化

参考文献*

馬蹄渦の模式図

S. Friedrichs ,The Design of an Improved EndwallFilm-cooling Configuration,1998

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翼端壁冷却孔の配置最適化

最適化前 最適化後

η

0

1.0

正圧面側増加率

負圧面側増加率

馬蹄渦により流れが偏る

翼列中央の密度を上げて均一化

応答曲面

目的関数の設定

14

翼面冷却孔の最適化

η

0

1.0

解析結果 実験結果最適化形状

S1 P3P2P1

S1 P1

P2 P3

感度チャート

馬蹄渦に近いほどピッチ方向角度よりも

翼面位置が重要となる

15

翼端壁部フィルム冷却孔の最適化

η

0

1.0

実験結果解析結果

最適化後

実験結果解析結果

初期

パラメータ数を減らすため

曲線に沿って移動させた

平均値が約20%向上

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適用事例■インデューサ付き遠心ポンプの性能向上

性能バランスの良いポンプを開発するために設計パラメータをどう組み合わせたら良いかわからない

多目的最適化を行う

ポンプ効率を低下させずにキャビテーション性能を向上させたい。

ポンプ効率とキャビテーション性能はトレードオフの関係にある。

動翼形状

インデューサ インペラ

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設計パラメータの設定

インデューサの設計パラメータ インペラの設計パラメータ

rs

18

チャートの分析

応答曲面感度チャート

設計パラメータの目的関数に対する寄与度

2つの設計パラメータの最適な組み合わせが分かる

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ベースラインポンプ

効率

キャビテーション性能

チャートの分析

20

最適化形状の分析

最適化前 最適化後

キャビテーションによる流路閉塞が改善された

インデューサ

インペラ

21

実験装置

可視化位置 キャビテーションの可視化と流れの計測

直ぐに製作し、

検証実験ができる

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ポンプ効率はほぼ変わりなく、キャビテーション性能が約15%向上

実験結果

最適化前

最適化後

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FreeCADによる3Dモデル作成事例

遠心渦巻きポンプ 多段タービンポンプ 軸流ポンプ

ライセンスフリーソフトの活用

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OpenFOAMによる流体機械解析事例

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実用化に向けた課題

• 現在、無償ソフトウェアについて最適化フレームワーク(DAKOTA)と流体解析(OpenFOAM)が連携可能なところまで開発済み。しかし、CAD(FreeCAD)と流体解析ソフトウェアの自動的な連携が未解決である。

• 今後、ポンプ、圧縮機や風車の羽根車に適用する場合の条件設定を行っていく。

• 水処理設備についてのプロジェクトが進行中。

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企業への期待

• 未解決のCADと流体解析の自動的な連携については、pythonによるソフトウェアの技術により克服できると考えている。

• 最適化システムの効果を試したい企業との共同研究を希望。

• また、熱流体機械の性能予測手法を開発中の企業には、流体解析ソフトOpenFOAMのカスタマイズ技術の導入が有効と思われる。

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お問い合わせ先

大阪工業大学 研究支援・社会連携センター

TEL 06-6954-4140 (ダイヤルイン)

FAX 06-6954-4066

e-mail OIT.Kenkyu@josho.ac.jp