4 穿刺局所療法 - jsh.or.jp

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4 穿刺局所療法 ●はじめに 肝細胞癌の局所療法として,最近四半世紀の間に種々の治療法が開発されてきた。 1979 年に山田らに よって肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization TAE)が開発され,これが肝細胞癌の局所療法 の有効性を明らかにした最初の治療法といえる。 次に,腹部超音波診断機器の普及と進歩とともに,1983 年に杉浦らにより経皮的エタノール注入 percutaneous ethanol injection PEI )が開発された。 PEI はその後開発された超音波映像下に行われる種々 の局所療法の原点といえる治療である。本法は手技が簡便で局注針もエタノールも安価であったため, 瞬く間に日本のみならず世界へと広がり,肝細胞癌治療の主役として高い評価を受けるようになった。 しかし,PEI はエタノールという液体を注入する治療であるため,エタノールが腫瘍内に均一に拡散せ ず,隔壁や被膜がある場合は通過できず,腫瘍の残存と局所再発の問題が残った。 こうした PEI の欠点を克服するべく,挿入した針からマイクロ波やラジオ波を発生させて腫瘍を熱凝 固させる治療法が開発された。従来から外科領域で使用されていたマイクロ波を経皮的に応用した経皮 的マイクロ波凝固療法(percutaneous microwave coagulation therapy PMCT)を 1994 年に関らが発表した。 また, 1993 年, Rossi らが小肝細胞癌に対し経皮的にラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation RFAを行い良好な治療効果を得たと報告し,にわかにラジオ波による肝細胞癌治療が注目されるようになっ た。本邦でも,1999 年以降多くの施設で施行されている。RFA PMCT より 1 回の治療あたりで獲得 する壊死範囲が大きいという理由から PMCT を凌駕する勢いで導入されてきた。RFA は本邦では平成 16 2004)年 4 月からようやく保険適用となった。本ガイドライン初版(2005 年版)の発表に前後して PEI RFA を比較したランダム化比較試験(RCT)が国の内外から発表され,いずれも RFA PEI に比 較して生命予後を延長するという結果であった。これらのエビデンスにより,現在 RFA が穿刺局所療法 のなかで標準治療とされるに至っている。 本章では,PEI PMCTRFA に関し,2011 12 月末までの段階のエビデンスをまとめた。 文献の選択 局所療法の分野を,治療法別に以下の区分に分けた。 1)経皮的エタノール注入,2)マイクロ波凝固療法,3)ラジオ波焼灼療法 それぞれに対して,1983 年以降 2011 12 月末までに,MEDLINE および医学中央雑誌に収載されて いる文献リストを作成し,ガイドラインの策定に有用と思われる文献を抽出した。さらに,それらの文 献抄録を読み,原著にさかのぼる必要のある文献をリストアップし,できるだけエビデンスレベルの高 いものを選出した。評価は論文形式,症例数,研究デザインを基に選択した。

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Page 1: 4 穿刺局所療法 - jsh.or.jp

第 4 章 穿刺局所療法

●はじめに

肝細胞癌の局所療法として,最近四半世紀の間に種々の治療法が開発されてきた。1979 年に山田らに

よって肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization;TAE)が開発され,これが肝細胞癌の局所療法

の有効性を明らかにした最初の治療法といえる。

次に,腹部超音波診断機器の普及と進歩とともに,1983 年に杉浦らにより経皮的エタノール注入

(percutaneous ethanol injection;PEI)が開発された。PEI はその後開発された超音波映像下に行われる種々

の局所療法の原点といえる治療である。本法は手技が簡便で局注針もエタノールも安価であったため,

瞬く間に日本のみならず世界へと広がり,肝細胞癌治療の主役として高い評価を受けるようになった。

しかし,PEI はエタノールという液体を注入する治療であるため,エタノールが腫瘍内に均一に拡散せ

ず,隔壁や被膜がある場合は通過できず,腫瘍の残存と局所再発の問題が残った。

こうした PEI の欠点を克服するべく,挿入した針からマイクロ波やラジオ波を発生させて腫瘍を熱凝

固させる治療法が開発された。従来から外科領域で使用されていたマイクロ波を経皮的に応用した経皮

的マイクロ波凝固療法(percutaneous microwave coagulation therapy;PMCT)を 1994 年に関らが発表した。

また,1993 年,Rossi らが小肝細胞癌に対し経皮的にラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation;RFA)

を行い良好な治療効果を得たと報告し,にわかにラジオ波による肝細胞癌治療が注目されるようになっ

た。本邦でも,1999 年以降多くの施設で施行されている。RFA は PMCT より 1 回の治療あたりで獲得

する壊死範囲が大きいという理由から PMCT を凌駕する勢いで導入されてきた。RFA は本邦では平成

16(2004)年 4 月からようやく保険適用となった。本ガイドライン初版(2005 年版)の発表に前後して

PEI とRFA を比較したランダム化比較試験(RCT)が国の内外から発表され,いずれもRFA が PEI に比

較して生命予後を延長するという結果であった。これらのエビデンスにより,現在RFA が穿刺局所療法

のなかで標準治療とされるに至っている。

本章では,PEI,PMCT,RFA に関し,2011 年 12 月末までの段階のエビデンスをまとめた。

■ 文献の選択 局所療法の分野を,治療法別に以下の区分に分けた。

1)経皮的エタノール注入,2)マイクロ波凝固療法,3)ラジオ波焼灼療法

それぞれに対して,1983 年以降 2011 年 12 月末までに,MEDLINE および医学中央雑誌に収載されて

いる文献リストを作成し,ガイドラインの策定に有用と思われる文献を抽出した。さらに,それらの文

献抄録を読み,原著にさかのぼる必要のある文献をリストアップし,できるだけエビデンスレベルの高

いものを選出した。評価は論文形式,症例数,研究デザインを基に選択した。

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CQ32 穿刺局所療法はどのような患者に行うべきか?

推 奨 穿刺局所療法の適応は,Child-Pugh 分類のA あるいはB の肝機能の症例で,腫瘍径 3 cm 以下,腫瘍数 3

個以下である。 (グレードB)

■ サイエンティフィックステートメント ミラノ基準もしくは腫瘍径 3 cm以下,腫瘍数 3 個以下の条件において,外科切除とRFA との治療成

績を比較した研究を検索したところ,25 編の論文を抽出した。表 2 ではエビデンスレベルⅠの論文 2 編

を上段に,エビデンスレベルⅡで症例数が 400 を超える論文 6 編を下段に示す。生存について,エビデ

ンスレベルⅠの論文 2 編のうち 1 編では外科切除が有意に良好で,もう 1 編では有意差を認めなかった

(L3F044141) Level 1b,L3F058462) Level 1b)。また,エビデンスレベルⅡの論文 6 編では,3 編の論文

において外科切除に優位性が示され,3 編の論文で有意差を認めなかった(L3F058923) Level 2a,

L3F058904) Level 2b,L3F033255) Level 2b,L3F058566) Level 2a,L3F017977) Level 2b,L3F058768) Level

2b)。

Murakamiらは,3 cm以下・3個以下あるいは5 cm以下単発の肝細胞癌患者のうち,RFAあるいはTACE

で加療された連続 258 人について局所再発率を検討したところ,有意に RFA が TACE に優っていた

(p=0.013)と報告している(LF118409) Level 2b)。また,PEI の局所再発率は腫瘍径 3 cmを超えると高

くなる(LF0155510) Level 2a)。

■ 解 説 肝切除,穿刺局所療法,TACE のいずれもが施行可能な患者が存在した場合,治療アルゴリズムでは

原則として,肝切除,穿刺局所療法,TACE の順に推奨されている。セカンドラインとしての穿刺局所

療法の立ち位置は,ファーストラインである肝切除,サードラインであるTACE との推定される予後の

差によって決定されるが,その予後の差は肝機能と腫瘍条件によって変化することが推定されている。

穿刺局所療法では,特にChild-Pugh 分類A で単発,2 cm 以下の症例では治療成績が良好とされる(5

年生存率:60~74%)(LF1094911) Level 2b,LF1044912) Level 2b)。しかし,このように肝予備能が良好

で早期の肝細胞癌を対象とした場合でも,穿刺局所療法が外科切除に代わって第一選択の治療となりう

るかとの問いの結論は現在も出ていない。そのため,初発肝細胞癌に対する初回治療法選択の根拠とな

るエビデンス確立の必要性から,2009 年 4 月から多施設共同による SURF 試験*が進行中である。SURF

試験はChild-Pugh score 7 点以下かつ 3 cm以下・3 個以下の腫瘍条件を満たす初発症例を対象として肝切

除とRFA の有効性を検証するRCT であり,日本発のエビデンスとしてその結果が待たれる。

外科切除と穿刺局所療法は局所コントロールを得るという目的は基本的に同じである。しかし,穿刺

局所療法では腫瘍径が大きいと焼灼マージンを十分確保することが難しくなるため,穿刺局所療法の術

者は腫瘍条件と自身の技量,症例背景を考慮して個別に適応を判断するべきであろう。適応を切除不能

な患者に限定すると,穿刺局所療法の適応は,サードラインである肝動脈塞栓術との比較で決定される。

Murakami らは,3 cm以下・3 個以下あるいは 5 cm 以下単発の肝細胞癌患者のうち,RFA あるいはTACE

で加療された連続 258 人について局所再発率を検討したところ,有意に RFA が TACE に優っていた

(p=0.013)と報告している(LF118409) Level 2b)。この範囲の腫瘍でTACE 単独と局所療法単独の生存

率を比較した RCT は存在しないが,このエビデンスをもって 3 cm 以下・3 個以下の切除不能肝細胞癌

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の治療として局所療法を推奨することとする。

3 cmを超える腫瘍に対する局所療法の適応について,PEI を対象とした多くの研究が 3 cm以下・3 個

以下をその適応としており,3 cm を超えると PEI の局所再発率は高くなると報告されている。熱凝固療

法である RFA においては,焼灼範囲は,穿刺回数を増やすことによって原理的には拡大可能であるが,

焼灼範囲,穿刺回数の増加は,合併症の増加につながることが予想される。多くのRFA 電極の焼灼範囲

が 3 cm程度であることも考慮し,RFA の適応についても 3 cm以下・3 個以下を踏襲する。

■ 参考文献 1) L3F04414 Chen MS, Li JQ, Zheng Y, Guo RP, Liang HH, Zhang YQ, et al. A prospective randomized trial

comparing percutaneous local ablative therapy and partial hepatectomy for small hepatocellular carcinoma.

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2) L3F05846 Huang J, Yan L, Cheng Z, Wu H, Du L, Wang J, et al. A randomized trial comparing

radiofrequency ablation and surgical resection for HCC conforming to the Milan criteria. Ann Surg 2010;252

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3) L3F05892 Hasegawa K, Makuuchi M, Takayama T, Kokudo N, Arii S, Okazaki M, et al. Surgical resection

vs. percutaneous ablation for hepatocellular carcinoma:a preliminary report of the Japanese nationwide survey.

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4) L3F05890 Takayama T, Makuuchi M, Hasegawa K. Single HCC smaller than 2 cm:surgery or ablation?:

surgeon’s perspective. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2010;17(4):422-4.

5) L3F03325 Liu JG, Wang YJ, Du Z. Radiofrequency ablation in the treatment of small hepatocellular

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6) L3F05856 Hung HH, Chiou YY, Hsia CY, Su CW, Chou YH, Chiang JH, et al. Survival rates are

comparable after radiofrequency ablation or surgery in patients with small hepatocellular carcinomas. Clin

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7) L3F01797 Huang J, Hernandez-Alejandro R, Croome KP, Yan L, Wu H, Chen Z, et al. Radiofrequency

ablation versus surgical resection for hepatocellular carcinoma in Childs A cirrhotics:a retrospective study of

1,061 cases. J Gastrointest Surg 2011;15(2):311-20.

8) L3F05876 Yun WK, Choi MS, Choi D, Rhim HC, Joh JW, Kim KH, et al. Superior long-term outcomes

after surgery in Child-Pugh class a patients with single small hepatocellular carcinoma compared to

radiofrequency ablation. Hepatology International 2011;5(2):722-9.

9) LF11840 Murakami T, Ishimaru H, Sakamoto I, Uetani M, Matsuoka Y, Daikoku M, et al. Percutaneous

radiofrequency ablation and transcatheter arterial chemoembolization for hypervascular hepatocellular

carcinoma:rate and risk factors for local recurrence. Cardiovasc Intervent Radiol 2007;30 (4):696‒704.

10) LF01555 Ishii H, Okada S, Nose H, Okusaka T, Yoshimori M, Takayama T, et al. Local recurrence of

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11) LF10949 Lencioni R, Cioni D, Crocetti L, Franchini C, Pina CD, Lera J, et al. Early-stage hepatocellular

carcinoma in patients with cirrhosis:long-term results of percutaneous image-guided radiofrequency ablation.

Radiology 2005;234(3):961-7.

12) LF10449 Omata M, Tateishi R, Yoshida H, Shiina S. Treatment of hepatocellular carcinoma by percutaneous

tumor ablation methods:Ethanol injection therapy and radiofrequency ablation. Gastroenterology 2004;127

(5 Suppl 1):S159-66.

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表 2 肝細胞癌に対する RFA と肝切除の生存率の比較

著者 出版年 研究デザイ

症例数(RFA/

肝切除)

条 件 生存率(%)

(RFA vs. 肝切

除)

p 値

Chen1) 2006 RCT 90/90 5 cm 以下,単

67.9 vs. 64.0

(4 年)

NS

Huang2) 2010 RCT 115/115 ミラノ基準 54.78 vs. 75.65

(5 年)

0.001

Hasegawa3) 2008 前向きコホ

ート

3,022/2,857 3 cm 以下,

3 個以下

93.0 vs. 94.5

(2 年)

NS

Takayama4) 2010 後ろ向きコ

ホート

1,315/1,235 3 cm 以下,

3 個以下

95 vs. 94

(2 年)

0.28

Liu5) 2010 メタアナリ

シス

787/735 ミラノ基準 62.5 vs. 63.6

(3 年)

NS

Hung6) 2011 後ろ向きコ

ホート

190/229 5 cm 以下 67.4 vs. 79.3

(5 年)

0.009

Huang7) 2011 後ろ向きコ

ホート

413/648 5 cm 以下,

3 個以下

53.34 vs. 76.47

(5 年)

<0.001

Yun8) 2011 後ろ向きコ

ホート

255/215 3 cm 以下 87 vs. 94

(5 年)

0.002

NS:not significant

(脚注)

*SURF試験:Efficacy of Surgery vs.Radio-frequency ablation on primary hepatocellular carcinoma

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CQ33 各穿刺局所療法の選択は,どのように行うべきか?

推 奨 穿刺局所療法としてRFA が推奨される。 (グレードA)

消化管穿孔が危惧される場合には,その他の手法(人工腹水下 RFA や PEI)は有効な選択である。

(グレードB)

■ 背 景 穿刺局所療法は 1980 年代の PEI から始まり,経皮的酢酸注入(PAI)や PMCT を経て,現在ではRFA

がその代表的治療と位置づけられている。また,これら 4 つの治療法に加えて,最近登場した凍結融解

壊死療法(cryoablation)を含む穿刺局所療法について文献検索を行った。

■ サイエンティフィックステートメント ●局所再発と生存について

2011 年 12 月 31 日までにRFA と PEI を比較したRCT が計 5 編(LF109411) Level 1b,LF104572) Level

1b,LF118693) Level 1b,LF104684) Level 1b,LF121265) Level 1b),それらのメタアナリシスが計 4 編

(L3F058516) Level 1a,L3F058677) Level 1a,L3F059168) Level 1a,L3F004009) Level 1a)報告されてい

る。メタアナリシスはほぼ同様の結果であるため,表 3 に RCT 5 編とメタアナリシスから代表して

Germani らの結果を示す。局所再発率に関して記載のない Brunello らの論文を除き,残りの 4 編すべて

において RFA は PEI よりも優れていた。生存に関しては,有意に RFA が PEI よりも優れているとする

報告が 3 編,差がないとする報告が 2 編であった。これらのメタアナリシスの結果は,局所再発につい

てはRFA の PEI に対するハザード比(95%信頼区間)が 0.27(0.16~0.45),生存についてはハザード比

0.52(0.35~0.78)と,いずれもRFA が PEI よりも優れているという結果であった。

●合併症について Bertotらが34編のRFA,PMCTおよびPEIの報告からメタアナリシスを行っている(L3F0656510) Level

1a)。穿刺局所療法の死亡率は全体で 0.16%(95%信頼区間:0.10~0.24)であり,治療別ではRFA,PMCT

および PEI について,それぞれ 0.16%(0.10~024),0.15%(0.08~0.23),0.23%(0.0~0.58)とされる。

また,重篤な合併症の発生リスクは全体で 3.29%(2.43~4.28)であり,その内訳として,播種 0.5%,

腹腔内出血 0.37%,肝膿瘍 0.32%,腹水 0.27%,治療を要する胸水 0.14%,肝梗塞 0.13%,肝不全 0.11%,

消化管穿孔 0.11%,血胸 0.09%であった。また,治療別における重篤な合併症の頻度は RFA 4.1%(3.3

~5.1),PMCT 4.6%(0.7~11.8),PEI 2.7%(0.28~7.4)と報告している。一方で,Germani らのメタア

ナリシスでは,RFA と PEI の合併症の頻度に差はないとしている(オッズ比:1.21,95%信頼区間:0.89

~1.63,p=0.22)(L3F004009) Level 1a)。

■ 解 説 PEI は技術的に確立された治療法であり,3 年生存率が 48~67%と報告されている(L3F058677) Level

1a)。しかし,腫瘍内の線維性隔壁や被膜がエタノールの拡散を障害することはよく知られており,その

ため腫瘍径が大きくなるに従い PEI の根治性が低下する傾向にある。その一方で,RFA では衛星結節が

存在する腫瘍周囲を含めて壊死を誘導することが可能であり,RFA の 3 年生存率は 63~74%と報告され

ている(L3F058677) Level 1a)。メタアナリシスからは,局所再発および生存についてRFA の優位性が

強く示唆され(L3F058677) Level 1a,L3F058516) Level 1a,L3F004009) Level 1a),さらにサブグループ

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解析では 2 cm以上の大きさで治療成績の差が大きい(L3F004009) Level 1a)。

合併症について,Bertot らによれば,治療法によって発生頻度に有意差を認めたが(L3F0656510) Level

1a),本邦も含めたアジアからの報告に関しては差がなかったと述べている。また,Bouza らや Germani

らのメタアナリシスからは,RFA と PEI の合併症の頻度に差はないとしている(L3F058516) Level 1a,

L3F004009) Level 1a)。合併症の内容や頻度自体は報告により異なるものの,検索した今回の論文からは

RFA と PEI では有意差がないとする報告が多い。しかし,肝門部近傍や肝外臓器と接するような部位は

一般的に合併症が起こりやすいとされ(L3H0004811) Level 2b),治療針の穿刺や電流出力に注意を要す

る。特に,消化管穿孔の合併症はRFA の報告に多く,術後の癒着が存在する症例では消化管穿孔の危険

性が高い(L3F065659) Level 1a)。そのため,このような条件では人工腹水下RFA(L3H0005612) Level 4)

や PEI は有効な選択である。

■ 参考文献 1) LF10941 Lencioni RA, Allgaier HP, Cioni D, Olschewski M, Deibert P, Crocetti L, et al. Small

hepatocellular carcinoma in cirrhosis:randomized comparison of radio-frequency thermal ablation versus

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2) LF10457 Lin SM, Lin CJ, Lin CC, Hsu CW, Chen YC. Radiofrequency ablation improves prognosis

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3) LF11869 Shiina S, Teratani T, Obi S, Sato S, Tateishi R, Fujishima T, et al. A randomized controlled trial of

radiofrequency ablation with ethanol injection for small hepatocellular carcinoma. Gastroenterology 2005;129

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4) LF10468 Lin SM, Lin CJ, Lin CC, Hsu CW, Chen YC. Randomised controlled trial comparing

percutaneous radiofrequency thermal ablation, percutaneous ethanol injection, and percutaneous acetic acid

injection to treat hepatocellular carcinoma of 3 cm or less. Gut 2005;54 (8):1151‒6.

5) LF12126 Brunello F, Veltri A, Carucci P, Pagano E, Ciccone G, Moretto P, et al. Radiofrequency ablation

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Gastroenterol 2008;43(6):727-35.

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7) L3F05867 Cho YK, Kim JK, Kim MY, Rhim H, Han JK. Systematic review of randomized trials for

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8) L3F05916 Orlando A, Leandro G, Olivo M, Andriulli A, Cottone M. Radiofrequency thermal ablation vs. percutaneous ethanol injection for small hepatocellular carcinoma in cirrhosis: meta-analysis of

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9) L3F00400 Germani G, Pleguezuelo M, Gurusamy K, Meyer T, Isgrò G, Burroughs AK. Clinical outcomes of

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Page 7: 4 穿刺局所療法 - jsh.or.jp

11) L3H00048 Teratani T, Yoshida H, Shiina S, Obi S, Sato S, Tateishi R, et al. Radiofrequency ablation for

hepatocellular carcinoma in so-called high-risk locations. Hepatology 2006;43(5):1101-8.

12) L3H00056 Kondo Y, Yoshida H, Shiina S, Tateishi R, Teratani T, Omata M. Artificial ascites technique for

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(10):1277-82.

表 3 肝細胞癌に対する RFAと PEIの比較

著者 出版年 研究

デザイン

治療法

(症例数)

局所再発 全生存比

ハザー

ド比*

p 値 ハザー

ド比*

p 値

Lencioni1) 2003 RCT RFA(52),PEI(50) 0.17 0.02 0.20 0.138

Lin2) 2004 RCT RFA(52),

PEI(52),

高用量 PEI(53)

0.37†

0.49‡

0.012†

0.037‡

0.34†

0.39‡

0.014†

0.023‡

Shiina3) 2005 RCT RFA(118),

PEI(114)

0.12 0.006 0.54 0.02

Lin4) 2005 RCT RFA(62),

PEI(62),

PAI(63)

0.35†

0.41§

0.012†

0.017§

0.42†

0.45§

0.031†

0.038§

Brunello5) 2008 RCT RFA(70),

PEI(69)

ND ― 0.88 0.476

Germani9) 2010 メタアナ

リシス

RFA(356),

PEI(347)

0.27¶ <0.00001 0.52 0.001

*:PEI に対するRFA のハザード比(低いほうが有利),†:RFA と PEI の比較,‡:RFA と高用量 PEI

の比較,§:RFA と PAI の比較,¶:Burunello らの論文は除く,ND:not described

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CQ34 穿刺局所療法に TACE を併用することで予後を改善できるか?

推 奨 TACE を先行したRFA では壊死範囲が拡大する。 (グレードA)

局所コントロールが得られれば良好な予後が期待できるが,先行するTACE によってRFA の予後向上に

寄与するかについて十分なエビデンスはない。

(グレードC1)

■ サイエンティフィックステートメント ●焼灼範囲について

Kitamoto らの報告では,肝動脈化学塞栓療法(TACE)+RFA 群がRFA 単独群と比べて有意に広く壊

死を誘導できた(TACE+RFA 群,RFA 単独群の焼灼範囲の長径と短径平均値:39.9 mm,32.3 mm vs. 34.6

mm,26.0 mm;p<0.05)(LF100321) Level 2b)。

Morimoto らによれば,TACE+RFA 群およびRFA 単独群で焼灼範囲の長径と短径の平均値がそれぞれ

50 mm,41 mm と 58 mm,50 mm であった(p=0.012)と報告している(L3F043252) Level 1b)。

●生存について TACE+RFA 治療とRFA 単独治療とを比較した研究を表 4 に示す(L3F043252) Level 1b,L3F043313)

Level 2a,L3F002294) Level 2b)。条件が異なるものの,TACE+RFA 治療がRFA 単独治療と比べて生存

率が良好であったとする報告が 1 編と,差を認めなかったとする報告が 2 編であった。

■ 解 説 今回の検討では,穿刺局所療法としてRFA を取り上げている研究を対象とした。また,肝動脈バルー

ン閉塞下RFA は生存について比較検討した報告が見当たらないため今回の対象に含めていない。

RFA に TACE を先行することで焼灼範囲の拡大がもたらされることは各報告の一致した見解であり,

その焼灼範囲の拡大によって治療回数や局所再発の減少に寄与するとされる。特にMorimoto らの報告に

よると,治療セッション(TACE+RFA vs. RFA:1.1 vs. 1.4,p<0.01)と局所再発(TACE+RFA vs. RFA:

6% vs. 39%,p=0.012)が有意に少なかった(L3F043252) Level 1b)。また,合併症について差がないと

する報告が多い。TACE の先行施行時期については同日から 2 カ月以内とさまざまであるが,日本から

の報告では 1 カ月以内とするものが多い。

穿刺局所療法でも,特に PEI にTACE を先行した場合に予後の改善傾向がみられたとのメタアナリシ

スが報告されているが(L3F003105) Level 1a),RFA にTACE を先行することで予後を改善できるかにつ

いては議論が分かれる。Peng らは,サブグループ解析において,5 cm以上の単発例(p=0.031)および

多発例(p=0.032)において有意に予後が改善されたと報告している(L3F002294) Level 2b)が,引き続

き検討課題と思われる。

■ 参考文献 1) LF10032 Kitamoto M, Imagawa M, Yamada H, Watanabe C, Sumioka M, Satoh O, et al. Radiofrequency

ablation in the treatment of small hepatocellular carcinomas:comparison of the radiofrequency effect with and

without chemoembolization. AJR Am J Roentgenol 2003;181(4):997-1003.

2) L3F04325 Morimoto M, Numata K, Kondou M, Nozaki A, Morita S, Tanaka K. Midterm outcomes in

patients with intermediate-sized hepatocellular carcinoma:a randomized controlled trial for determining the

efficacy of radiofrequency ablation combined with transcatheter arterial chemoembolization. Cancer 2010;116

Page 9: 4 穿刺局所療法 - jsh.or.jp

(23):5452-60.

3) L3F04331 Shibata T, Isoda H, Hirokawa Y, Arizono S, Shimada K, Togashi K. Small hepatocellular

carcinoma:is radiofrequency ablation combined with transcatheter arterial chemoembolization more effective

than radiofrequency ablation alone for treatment? Radiology 2009;252(3):905-13.

4) L3F00229 Peng ZW, Chen MS, Liang HH, Gao HJ, Zhang YJ, Li JQ, et al. A case-control study comparing

percutaneous radiofrequency ablation alone or combined with transcatheter arterial chemoembolization for

hepatocellular carcinoma. Eur J Surg Oncol 2010;36(3):257-63.

5) L3F00310 Wang W, Shi J, Xie WF. Transarterial chemoembolization in combination with percutaneous

ablation therapy in unresectable hepatocellular carcinoma:a meta-analysis. Liver Int 2010;30(5):741-9.

表 4 肝細胞癌に対する TACE+RFA治療と RFA単独治療の比較(2009 年以降)

著者

/出版年

研究

デ ザ イ

症例数

( TACE +

RFA

/RFA)

条 件 生存率(%)

(TACE+RFA vs. RFA)

p 値

1 年 3 年 5 年

Morimoto2)

/2010

RCT 19/18 ・単発,3.1

~5 cm

100 vs. 89 93 vs. 80 ―

0.369

Shibata3)

/2009

NRCT 46/43 ・1~2 個,

3 cm 以下

100 vs. 100 84.5 vs.

84.5

74.0 vs. 72.7

(4 年)

0.515

Peng4)

/2010

NRCT 120/120 ・単発,7

cm以下・2

~3 個,3

cm以下

93 vs. 89 75 vs. 64 50 vs. 42 0.045

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CQ35 造影超音波,CT や MRI との fusion image は局所療法の治療ガイドとして有用

か?

推 奨 造影超音波や fusion image は,Bモードで描出が困難な肝細胞癌に対する治療ガイドとして有用である。

(グレードB)

■ 背 景 超音波ガイドで行われる穿刺局所療法では,B モードで肝細胞癌を明瞭に描出できることが治療成功

を左右する。しかしながら,①被膜形成が不十分などで腫瘍自体の境界が不明瞭,②複数の大きな再生

結節に小肝癌が紛れている,③局所再発病変が前回治療による壊死領域と同様のエコー像を呈する,な

どによりB モードでの描出が困難な場合がある。Minami らの報告によれば,RFA を行った肝細胞癌 485

結節について 5.2%がB モードで不明瞭であった(L3H000491) Level 2b)。

■ サイエンティフィックステートメント ●造影超音波:

Maruyama らは,B モードで描出困難な多血性肝腫瘍 55 結節(平均腫瘍径:1.3±0.5 cm)において 53

結節(96%)がソナゾイド ®造影超音波にて検出可能であり,そのうちの肝細胞癌 42 結節について造影

超音波ガイドで効果的に穿刺治療できたと報告している(L3F039052) Level 4)。

Minami らは,B モードで描出不良な肝細胞癌 108 結節について,ソナゾイド ®造影超音波ガイドにて

RFA を行ったところ,平均治療セッションは 1.1±0.3 であったと報告している(L3F039103) Level 4)。

Masuzaki ら(L3F013874) Level 2b)の報告では,ソナゾイド ®造影超音波ガイドでRFA を行った 291

例について類似対照群 2,261 例と比較したところ,治療セッションが有意に少なかった(1.33 vs. 1.49,p

=0.0019)。

●Fusion image: Fusion image とは,あらかじめ取得されたCT やMRI のボリュームデータについて磁気センサーを装

着した超音波プローブと位置情報を同期することで,B モード画像と近似の multi planar reconstruction

(MPR)画像をリアルタイムに表示するシステムである。超音波と他のモダリティとの相互補完から治

療支援画像としての有用性が報告されている(L3F035175) Level 2b,L3F059056) Level 4,LF117917) Level

4)。B モードで描出不良な肝細胞癌について,Real-time Virtual Sonography(RVS)®ガイドでのRFA がB

モードガイドと比べてより効果的に治療できた(平均治療セッション:1.1 vs. 1.3,p=0.021)(L3F035175)

Level 2b)との報告がある。

■ 解 説 超音波造影剤がレボビスト ®からソナゾイド ®へ進歩したことから,①どの時相でも連続観察ができる

ため安定的に病変の描出が可能,②post vascular phase での欠損像をターゲットにすることで病変の視認

性が向上,③Defect Re-perfusion Imaging によってB モードで描出不良な肝細胞癌について局在および質

的診断が可能,などがもたらされた。そのため,レボビスト ®使用では煩雑であった造影超音波ガイド

のRFA 手技がより簡便に改善された。しかし,深部病変や硬変肝の進行した症例では,病変の描出が難

しい場合があるので注意が必要である。また,fusion image を用いることでも効果的な穿刺局所療法が可

能であり,特に造影超音波では難しい上記のような条件でも参照画像を表示できることはメリットの一

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つである。ただし,fusion image も B モード画像と必ずしも完全に一致するわけではなく,特に肝右葉

に腫瘍が存在する場合には画像のズレが大きくなる傾向にある。しかし,両者を併用した治療も可能で

あることから,造影超音波と fusion image は競合するものでなく,状況にあわせて選択もしくは併用す

ることで局所コントロールを目指すことが治療において肝心である。

■ 参考文献 1) L3H00049 Minami Y, Kudo M, Kawasaki T, Chung H, Ogawa C, Shiozaki H. Treatment of hepatocellular

carcinoma with percutaneous radiofrequency ablation:usefulness of contrast harmonic sonography for lesions

poorly defined with B-mode sonography. AJR Am J Roentgenol 2004;183(1):153-6.

2) L3F03905 Maruyama H, Takahashi M, Ishibashi H, Okugawa H, Okabe S, Yoshikawa M, et al.

Ultrasound-guided treatments under low acoustic power contrast harmonic imaging for hepatocellular

carcinomas undetected by B-mode ultrasonography. Liver Int 2009;29(5):708-14.

3) L3F03910 Minami Y, Kudo M, Hatanaka K, Kitai S, Inoue T, Hagiwara S, et al. Radiofrequency ablation

guided by contrast harmonic sonography using perfluorocarbon microbubbles(Sonazoid)for hepatic

malignancies:an initial experience. Liver Int 2010;30(5):759-64.

4) L3F01387 Masuzaki R, Shiina S, Tateishi R, Yoshida H, Goto E, Sugioka Y, et al. Utility of

contrast-enhanced ultrasonography with Sonazoid in radiofrequency ablation for hepatocellular carcinoma. J

Gastroenterol Hepatol 2011;26(4):759-64.

5) L3F03517 Minami Y, Chung H, Kudo M, Kitai S, Takahashi S, Inoue T, et al. Radiofrequency ablation of

hepatocellular carcinoma:value of virtual CT sonography with magnetic navigation. AJR Am J Roentgenol

2008;190(6):W335-41.

6) L3F05905 Minami Y, Kudo M, Chung H, Inoue T, Takahashi S, Hatanaka K, et al. Percutaneous

radiofrequency ablation of sonographically unidentifiable liver tumors. Feasibility and usefulness of a novel

guiding technique with an integrated system of computed tomography and sonographic images. Oncology

2007;72(Suppl 1):111-6.

7) LF11791 Hirooka M, Iuchi H, Kumagi T, Shigematsu S, Hiraoka A, Uehara T, et al. Virtual sonographic

radiofrequency ablation of hepatocellular carcinoma visualized on CT but not on conventional sonography.

AJR Am J Roentgenol 2006;186(5 Suppl):S255-60.

Page 12: 4 穿刺局所療法 - jsh.or.jp

CQ36 局所療法の効果判定に有用な画像診断は何か?

推 奨 局所療法の効果判定は,dynamic CT/MRI を基本とする。造影剤アレルギー,腎機能低下例などでは,

造影超音波によって代替できる可能性がある。 (グレードA)

■ 背 景 肝切除と異なり,局所療法においては,治療範囲が目的とした腫瘍全体を覆っているかを病理学的に

判定することは困難である。よって治療効果判定は治療前後の画像を比較することで行われるが,どの

画像検査を用いるのが適切かについて検討した。

■ サイエンティフィックステートメント 肝細胞癌の診断は,dynamic CT/MRI で行われるため,必然的に治療効果判定もこれらの画像検査を

用いて行われる。なかでも,可用性の高さから dynamic CT が用いられることが多く,事実上の standard

となっている。Gd-EOB-DTPA 造影 MRI は,CT と比較してマージン評価の正確さ(感度・特異度)に

おいて優れている可能性がある(L3F019631) Level 1,L3F032852) Level 1)。ソナゾイド ®を用いた造影

超音波は,dynamic CT と比較して,感度で劣るが,特異度で勝る(L3F017253) Level 1)。

■ 解 説 局所療法の効果判定にどの画像検査を用いるかを検討するにあたり,理想的な gold standard は外科切

除による病理学的評価であるが,倫理的に困難であり,次善の gold standard は経過観察による局所再発

の発生である。しかし多くの場合,明らかな残存が疑われる病変は追加治療の対象となるため,マージ

ンの有無の評価のしやすさが end-point に採用される傾向がある。今回検討した多くの研究で dynamic CT

が gold standard として用いられており,可用性の点からも dynamic CT を標準と推奨することとした。

Gd-EOB-DTPA 造影 MRI は,マージン評価のしやすさの点において CT を凌駕している可能性があり,

今後のエビデンスの集積によっては,第一に推奨される可能性がある。造影超音波を対象とした研究の

多くが第一世代のレボビスト ®を用いており,CT と同等であるという報告も散見されるものの,実際に

は欠点も多く,現在国内では使用できないため採用しなかった。第 2 世代超音波造影剤であるソナゾイ

ド ®は,レボビスト ®と比較して長時間の観察が可能であり,より治療効果判定に適しているということ

ができる。

■ 参考文献 1) L3F01963 Yoon JH, Lee EJ, Cha SS, Han SS, Choi SJ, Juhn JR, et al. Comparison of gadoxetic

acid-enhanced MR imaging versus four-phase multi-detector row computed tomography in assessing tumor

regression after radiofrequency ablation in subjects with hepatocellular carcinomas. J Vasc Interv Radiol

2010;21(3):348-56.

2) L3F03285 Hwang J, Kim SH, Kim YS, Lee MW, Woo JY, Lee WJ, et al. Gadoxetic acid-enhanced MRI

versus multiphase multidetector row computed tomography for evaluating the viable tumor of hepatocellular

carcinomas treated with image-guided tumor therapy. J Magn Reson Imaging 2010;32(3):629-38.

3) L3F01725 Shiozawa K, Watanabe M, Takayama R, Takahashi M, Wakui N, Iida K, et al. Evaluation of local recurrence after treatment for hepatocellular carcinoma by contrast-enhanced ultrasonography using

Sonazoid:comparison with dynamic computed tomography. J Clin Ultrasound 2010;38(4):182-9.