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JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT 1 Vol.041 64 歳の男性。 2 か月前に LAD 閉塞に伴う STEMI あり他院で PCI を施行された。その際 RCA にも有意 狭窄を認めたが、高度の石灰化、屈曲あり、POBA のみ施行されていた。今回、労作性狭心 症の出現、悪化のため当科紹介となった。CAG では LAD に再狭窄ないものの、RCA に複 数の屈曲、石灰化を伴う高度狭窄(90% 以上)を認めた(Fig. 1-a, 1-b)。 はじめに PCIの標的病変(血管)の中で屈曲の強い病変(血管)は、いわゆるchallenging caseであり、バルーンが通過しても、単 独のGWを用いてDES等のdeviceを持ち込むのに難渋することが少なくない。石灰化が強い場合は、Rotablatorを用いて病 変をdebulkすることにより、この問題の解決がなされることが多い。しかしながら、Rotablator後でバルーンやIVUSが通 過できるようになっても、ある程度長い病変で屈曲を伴う場合、特に長いDESが病変にengageできないことも、しばしば 経験される。また、屈曲が高度であれば、石灰化病変であってもロータブレーター自体施行し難いことも多い。 このような症例では、いわゆる子カテを用いることが多い。従来の子カテは全てOTW(over the wire)タイプであり、止 血弁が新たに必要で、300cm長のGWを要し、手順が煩雑で、オペレーター1人では手技を施行しづらい面があった。ま た、airの引き込み、ステントの位置決めの際の造影不良も無視できない問題点であった。 GuideLinerは、その手技をより効率的に行うための初めてのRxタイプの子カテであり、既存の止血弁、通常の長さのGW でPCIが可能である。またその先端構造は、25cm長のシリコンコーティングが施してあり、非常に柔軟である。一方Inner Diameter は、0.056 inch(1.42mm)の広さをもっている。このRxタイプのGuideLinerを用いれば、より簡便に、 短時間で子カテとして病変部を通過させることが可能で、従来のOTWタイプの子カテに比し、手技の効率化は明らかであ る。またairの引き込みや、造影不良といった問題点もほぼ解消され、より安全な手技が行えるものと期待される。 一方、モノレール・カラー部分で弯曲した場合、GWの微妙なbiasによりDES等のdeviceが、この部分で不通過となる例 が報告されている。 せっかく子カテが病変を通過しても、肝心のDESが不通過となるのは、従来のOTWタイプの子カテでは想定できないこと であり、そのような事態に陥ると、患者や術者にかなりの身体的、精神的負担を強いることになる。今回我々は、このよう な想定外の状況においてトラブル・シューティングとして、有効な解決策を見出したので、報告する。 Fig. 1-a Pre-PCI(LAO view) Fig. 1-b Pre-PCI(RAO view) GuideLiner の使用と DES 留置のノウハウについて 竹村 和紀 先生、三角 和雄 先生  (社会医療法人 木 きおろしかい 下会 千葉西総合病院)

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Page 1: 41. 千葉西総合病院 Dr.三角 2版 - jll.co.jp · これら2本のGWをいずれもGuideLinerの内腔に通し、GuideLinerをガイディング・カテーテルの先端まで進めた。Trek

JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT

1

Vol.041

64 歳の男性。

2 か月前に LAD 閉塞に伴う STEMI あり他院で PCI を施行された。その際 RCA にも有意

狭窄を認めたが、高度の石灰化、屈曲あり、POBA のみ施行されていた。今回、労作性狭心

症の出現、悪化のため当科紹介となった。CAG では LAD に再狭窄ないものの、RCA に複

数の屈曲、石灰化を伴う高度狭窄(90% 以上)を認めた(Fig. 1-a, 1-b)。

はじめに

PCIの標的病変(血管)の中で屈曲の強い病変(血管)は、いわゆるchallenging caseであり、バルーンが通過しても、単独のGWを用いてDES等のdeviceを持ち込むのに難渋することが少なくない。石灰化が強い場合は、Rotablatorを用いて病変をdebulkすることにより、この問題の解決がなされることが多い。しかしながら、Rotablator後でバルーンやIVUSが通過できるようになっても、ある程度長い病変で屈曲を伴う場合、特に長いDESが病変にengageできないことも、しばしば経験される。また、屈曲が高度であれば、石灰化病変であってもロータブレーター自体施行し難いことも多い。このような症例では、いわゆる子カテを用いることが多い。従来の子カテは全てOTW(over the wire)タイプであり、止血弁が新たに必要で、300cm長のGWを要し、手順が煩雑で、オペレーター1人では手技を施行しづらい面があった。また、airの引き込み、ステントの位置決めの際の造影不良も無視できない問題点であった。GuideLinerは、その手技をより効率的に行うための初めてのRxタイプの子カテであり、既存の止血弁、通常の長さのGWでPCIが可能である。またその先端構造は、25cm長のシリコンコーティングが施してあり、非常に柔軟である。一方Inner Diameter は、0.056 inch(1.42mm)の広さをもっている。このRxタイプのGuideLinerを用いれば、より簡便に、短時間で子カテとして病変部を通過させることが可能で、従来のOTWタイプの子カテに比し、手技の効率化は明らかである。またairの引き込みや、造影不良といった問題点もほぼ解消され、より安全な手技が行えるものと期待される。一方、モノレール・カラー部分で弯曲した場合、GWの微妙なbiasによりDES等のdeviceが、この部分で不通過となる例が報告されている。せっかく子カテが病変を通過しても、肝心のDESが不通過となるのは、従来のOTWタイプの子カテでは想定できないことであり、そのような事態に陥ると、患者や術者にかなりの身体的、精神的負担を強いることになる。今回我々は、このような想定外の状況においてトラブル・シューティングとして、有効な解決策を見出したので、報告する。

Fig. 1-a Pre-PCI(LAO view) Fig. 1-b Pre-PCI(RAO view)

GuideLiner の使用と DES 留置のノウハウについて

竹村 和紀 先生、三角 和雄 先生 (社会医療法人 木きおろしかい

下会 千葉西総合病院)

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右鼠径部アプローチ(7F)にて、7F FR-4/SH Mach -1 ガイディング・カテーテル(Boston Scientific)を使用した。0.014 Sion Blue GW(Asahi Intecc)にて病変を通過させ、Mizuki-fx(Kaneka Medical)を用いて、Floppy Rotawireに交換した。1.5mm burr、次いで1.75mm burrにてRotablator(Boston Scientifi c)を施行。途中、burrを進めるにあたり、slow burping technique、sliding sheath techniqueを用い、最遠位部病変まで、回転数の低下が1,000以下になるまで、十分に切削した(Fig.2)。Rotablator後、Mizuki-fxを用いて、よりサポート性能の高い0.014 Star GW(Japan Lifeline)に交換し、Sion Blueも挿入して、double GWとした。Trek 2.5mm x 15mmバルーン(Abbot Vascular)を用い全病変を拡張した(Fig. 3)。IVUS(Terumo)にて病変を確認後、Star GWのみでXience Expedition (2.5mm x 18mm)をまず遠位部に留置した(Fig. 4)。次に、Xience Expedition(3.0mm x 23mm)をより近位部に留置しようとしたが、不通過のため、Trek 2.5mm x 15mmバルーンを用いて、GuideLinerを進め、近位部病変を通過させた。再度Xience Expedition (3.0mm x 23mm)を進めたが、途中でモノレール・カラーの部分で引っ掛かった。このため、Sion Blueを再びdouble wireとして挿入し、GuideLinerのlumenに、Star GW、Sion Blueを両方通すこととした。再びStar GWにXience Expeditionをのせて進めたところ、スムーズに病変まで到達でき、12気圧で拡張(Fig. 5)。残存狭窄0%となり、IVUS上も十分な内腔の確保を確認して手技を終了した(Fig. 6, Fig. 7)。

手技内容

Fig. 5 STENT Fig. 6 Post-PCI(LAO view) Fig. 7 Post-PCI(RAO view)Xience 3.0mm×23mm

Fig. 2 Rotablator Fig. 3 POBA Fig. 4 STENT1.5mmBurr TREK 2.5mm×15mm Xience 2.5mm×18mm

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Fig. 1 Pre-PCI Fig. 2 POBA Fig. 3 POBAOZMA 1.5mm×20mm Raiden 2.25mm×15mm

Fig. 4 STENT Fig. 5 STENT Fig. 6 Post-PCIXience 2.25mm×8mm #12 Promus 2.25mm×28mm #14

LCX遠位部のOM、PLに各々90%狭窄を認めた(Fig. 1)。6F FL-3.5/SH Mach-1ガイディング・カテーテル(Boston Scientific)をLt-TRIにて使用した。0.014 inch Sion Blue GW(Asahi Intecc)をOMに、0.014 inch Joker GW(Japan Lifeline)をPLに進め、PLにOzma 1.5mm x 20mmバルーン(Nipro)、OMにRaiden (2.25mm x 15mmバルーン(Kaneka Medical)、を進めて拡張した(Fig. 2, Fig. 3)。LCX近位部に90°近い屈曲があり、単独ではステント留置困難であったため、GuideLinerを使用した。OMにXience Expedition 2.25mm x 8mm(Abbot Vascular)、PLにPromus Premier 2.25mm x 28mm(Boston Scientific)を各々、GWを2本GuideLinerのlumenに2本通して留置する方法で病変まで進め、前者10気圧、後者11気圧で拡張した(Fig. 4, Fig. 5)ところ、残存狭窄0%となって、手技を終了した(Fig. 6)。

手技内容

73 歳の女性。高血圧、脂質異常症の既往あり。

典型的な不安定狭心症(CCS Ⅲ度)にて入院した。2

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JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT

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Fig. 2 Rotablator Fig. 3 POBA Fig. 4 STENTTREK 2.5mm×15mm1.5mmBurr Nobori 2.75mm×28mm

GL : GuideLiner

GL : GuideLiner

Fig. 5 STENT Fig. 6 Post-PCIPROMUS 3.0mm×28mm

76 歳の男性。労作性狭心症の増悪にて来院し

た。屈曲を伴う RCA に石灰化を伴う、びまん

性の有意狭窄を認めた(Fig. 1)。

Fig. 1 Pre-PCI

7FAL-1/SH Mach-1ガイディング・カテーテル(Boston Scientific)を右鼠径部アプローチにて使用し、Floppy Rotawire、1.5mm burrにてRotablator(Boston Scientific)を施行した(Fig. 2)。0.014 inch Sion Blue GW (Asahi Intecc)を使用しTrek 2.5mm x 15mmバルーン(Abbot Vascular)8気圧で病変を拡張(Fig.

3)、Nobori 2.75mm x 28mm(Terumo)を留置しようとしたが、屈曲のため病変まで到達させることができなかった。そこで、GuideLinerを使用し、Trek 2.5mm x 15mmバルーンを先進させたところ、GuideLinerが病変部を通過した。その後Nobori 2.75mm x 28mmを進めたが、GuideLinerのモノレール・カラーの部分で通過困難となった。そのためGuide Linerをいったん抜去し、0.014 inch Joker GW(Japan Lifeline)を2本目のGWとして、病変を通過させた。そこで、これら2本のGWをいずれもGuideLinerの内腔に通し、GuideLinerをガイディング・カテーテルの先端まで進めた。Trek 2.5mm x 15mmバルーンを最初から病変に通してあるSion Blueに通し、このバルーンを用いて、順序拡張させながらGuideLinerを進め病変部まで通過させた。Nobori 2.75mm x 28mmを、このSionBlueに通したところ、今度はモノレール・カラーをスムーズに通過し、病変部まで到達させることができた。2本目のGW (Joker)を抜き、GuideLinerを手元の方向に引き、Nobori 2.75mm x 28mmを十分に拡張(Fig. 4)、さらに同様の方法でPromus Premier3.0mm x 28mm(Boston Scientifi c)をNoboriの近位部に2mm程度overlapさせ留置(13気圧)した(Fig. 5)。残存狭窄0%(Fig. 6)となって、IVUS上も十分な内腔の確保を確認し、手技を終了した。

手技内容

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GL

GL

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LADにびまん性の最大75%狭窄を認め、LCXにも75%の限局性狭窄を認めた。RCAはdominantで、近位部に強い石灰化と屈曲があり、近位部に50-75%狭窄、#4AVに90%狭窄を2か所、#4PDに75-90%狭窄を2か所認めた。全体に石灰化が強く、腎移植前の血液透析が関与していたことが示唆された(Fig.1-a, 1-b)。心筋シンチでは、前壁、下壁いずれも虚血を示したが、狭窄のより高度な病変の多いRCAをまずPCI targetとした。7F AL-1/SH Mach-1ガイディング・カテーテル(Boston Scientific)を右鼠径部アプローチにて使用した。まず、#4AV側に0.014 inch Sion Blue GW(Asahi Intecc)、#4PD側に0.014 inch Joker GW(Japan Lifeline)を通した。IVUS (Terumo)を使用しようとしたが、RCA近位部の石灰化を伴う屈曲にて通過せず、まずSapphire 1.25mm x 10mmバルーン(Obus Neich)にて#4AVの2病変、#4PDの2病変を拡張(6気圧)した(Fig.2, Fig.3)。Xience Expedition 2.5mm x 12mm (Abbot Vascular)を#4AVの遠位部に留置するために進めたが、RCA近位部の石灰化を伴う屈曲のため、不通過であった。このためGuide Liner(Japan Lifeline)の内腔にこれら2本のGWを通す形で使用し、Sapphire 2.5mm x 15mmバルーンを用いて、RCAの近位部の石灰化を伴う屈曲を越えるまで進めた。そこで2本のGWを残したまま、#4AV遠位部に Xience Expedition 2.5mmx 12mm、同じく近位部にXience Expedition 3.0mm x 12mmを留置した(10気圧)(Fig.4, Fig.5)。

72 歳の男性。労作性狭心症の悪化(CCS Ⅲ度)を主訴に来院した。2 年前から歩行時に前胸

部圧迫感が出現するようになり、次第に増悪した。他院で、運動負荷心筋シンチを施行され、前壁、

下壁の虚血を認めた。精査目的に PCI 目的に当科へ紹介され、冠動脈 CT を施行したところ、

石灰化の著明な三枝病変が疑われた。既往歴としては、19 年前に腎移植を施行され、現在血清

クレアチニン 1.27mg/dl、eGFR=35ml/hr である。

手技内容

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Fig. 1-a Pre-PCI(LAO view) Fig. 1-b Pre-PCI(RAO view) Fig. 2 POBA

Fig. 3 POBA Fig. 4 Fig. 5STENT STENTSAPPHIRE 1.25mm×10mm

GL : GuideLiner

Xience 2.5mm×12mm Xience 3.0mm×12mm

SAPPHIRE 1.25mm×10mm

GL : GuideLiner

GL : GuideLinerGL : GuideLiner

GL

GL

GL

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Fig. 6 STENT Fig. 7 STENTXience 2.5mm×18mm Xience 3.5mm×15mm

Fig. 8 Post-PCI

次いで、#4PD方向には、遠位部にXience Expedition 2.25mm x 12mm、近位部にXience Expedition 2.5mm x 18mmを留置した(Fig. 6)。RCA近位部に解離を認めたため#4AVに入れたSion Blueのみを引き抜き、Xience Expedition 3.5mm x 15mmをGuideLinerを通して進め、留置(15気圧)した(Fig. 7)。残存狭窄はいずれも0-25%となって手技を成功した(Fig. 8)。この症例は、RCAの石灰化を伴う、ほぼ180°の高度屈曲病変を伴っていたため、Rotablatorを使用し難く、GuideLinerを二段ロケットの如く第二のガイディング・カテーテルとして用い、PCIに成功した一例である。

GL : GuideLiner

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術者紹介

社会医療法人 木下会 千葉西総合病院 院長心臓病センター長

三角 和雄 先生

1982 年 東京医科歯科大学医学部卒1982 年 東京医科歯科大学医学部第三内科入局1985 年 渡米。イリノイ大学シカゴ校にて心臓血管病理を研究後、 ニューヨーク医科大学、カリフォルニア大学、 ピッツバーグ大学にて内科レジデント研修、循環器臨床フェロー研修終了 UCLA グッド・サマリタン病院にて 2 年半の心血管カテーテル治療専門 フェロー研修終了。カリフォルニア州、ハワイ州医師免許取得。 アメリカ心臓学会、内科学会専門医・正会員 (F.A.C.C., F.A.C.P.)、 アメリカ胸部疾患学会正会員(F.A.C.C.P.)。医学博士。 1996 年 ハワイ大学臨床助教授。1998 年 千葉西総合病院心臓センター長・研修委員長2000 年 千葉西総合病院 副院長。2003 年 東京医科歯科大学臨床教授2004 年 千葉西総合病院 院長。日本内科学会総合内科専門医、 日本循環器学会専門医、日本心血管カテーテル治療学会専門医、 日本老年医学会専門医、日本医師会産業医。

術者紹介

社会医療法人 木下会 千葉西総合病院 循環器内科医師

竹村 和紀  先生

2012 年 秋田大学医学部卒 千葉西総合病院 循環器内科入職

モノレール・タイプの子カテであるGuideLinerはOTWタイプの子カテに比べて非常にhandyで、術者一人でも十分に操作が可能である。また、先端が非常に柔らかく、バルーンを先進させた後病変を通過させるのも容易であることが多い。さらに、造影が容易でステント等の位置確認もしやすい。反面、せっかく病変を通過してもモノレール・カラーの部分で、肝心のステントやDEBなどがひっかかり不通過となることが多い。その原因はGWのモノレール・カラーの部分でのbiasと考えられる。そこで、GWを2本double wireとして挿入し、2本ともGuideLiner内を通すことによって、ほぼその問題点は解決できる。当院では、2014年4月以来、六か月間で約150本のGuideLinerを用いているが、現在ほぼ全例でこの方法を採用しており、100%の手技成功率を達成している。一般的な子カテの条件として、①先端が柔らかく、通過性が良いこと②マーカーが見やすいこと③操作性が良いことが挙げられるが、GuideLinerはこれら三条件をいずれも十分に満たしている。また、意図的に手元のシャフトをやや扁平に太くしてあり、通常のGWとの差がよく視認され、使用GWが2本になっても、混乱することなく使用できるのも利点の一つである。

GuideLinerは現在使用できるモノレールタイプの子カテとして、最も汎用性が高いが、唯一の弱点は、モノレール・カラーの部分でのdeviceの不通過である。DESがモノレール・カラー部分でstuckし、しかも抜去困難に陥る事例が報告されている。もしDESがモノレール・カラーで通過し難いことが判明した場合、2本目のGWをbuddy wireとして進め、GuideLinerの内腔に2本とも通すと、まず不通過は解消される。しかし、3.25mm径のXienceまではこの方法で可能だが、3.5mm径のものはprofileが大きく、GW2本を通したのでは不通過となる。しかし、現実問題として、3.5mm径のXienceを冠動脈遠位部までもっていくことは少ないため、臨床上支障をきたすことはまずない。最近では、さらに新世代のモノレールタイプであるV3も導入されている。

結語

最後に

・ Mamas MA, et al. Distal Stent Delivery With GuideLiner Catheter. Catheter Cardiovasc. Interv. 2010; 76(1)102-111.

・ Kovacic JC, et al. GuideLiner Mother and Child Guide Catheter Extension: A Simple Adjunctive Tool in PCI for Balloon Uncrossable Chronic Total Occlusions. J. Int. Cardiol. 2013; 26 (4)343-350

・ De Man FHAF, et al. Usefulness and safety of the GuideLiner catheter to enhance intubation and support of guide catheters: insights from the Twente GuideLiner registry. EuroIntervention 2012;8:336-344

参考文献

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JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT

2015-05-05-02