8 neuroimaging & rehabilitation 思い通りの旋律を...

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18 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 19NCNP ANNUAL REPORT 2015-2016

リファレンス

2016年3月6日NHK EテレのサイエンスZEROにて研究紹介

脳病態統合イメージング

センター(IBIC®)

◦先進脳画像研究部

tDCS(経頭蓋直流電気刺激)による局所性ジストニアの治療研究に携わる、花川隆先進脳画像研究部長(人物右)2mAという微弱な直流電流を脳に流しながらリハビリテーションを行うことで、症状が改善するかどうかを測定している

■ 局所性ジストニアの脳機能異常の同定に成功

 非侵襲脳刺激法(TMSやtDCS)は、神経疾患による局所神経回路の機能異常を評価したり、機能異常を正常化したりすることが可能な技術として、注目されています。局所性ジストニアによる脳機能異常については、これまで様々な知見が報告されてきましたが、多彩な症状を示す局所性ジストニアにおいて、どの脳機能異常がどの症状と関連があるかは明らかではありませんでした。私たちは、TMSと運動機能検査を用いて、局所性ジストニアにみられる特定の巧緻運動機能低下と関連する脳神経機能異常(大脳皮質運動野の興奮性の異常)を世界で初めて同定しました。

■ 局所性ジストニアを克服せよ

 局所性ジストニアは意図せぬ動きや姿勢の異常を引き起こす運動障害であり、書字、描画、スポーツや楽器演奏など正確性の高い動きの長期反復に伴って発症し、職業生命を脅かすことがあります。局所性ジストニアの病態は解明されておらず、治療法も乏しいのが現状です。私たちは、TMSやMRI(磁気共鳴画像)を用いた局所性ジストニアの早期診断法の開発に取り組み、運動障害の発現に関わる脳の機能異常を発見しました。またtDCSとリハビリテーションを組み合わせた音楽家ジストニアの治療法開発にも取り組んでいます(開発者である上智大学音楽医科学センター古屋晋一准教授との共同研究)。

■ 体を傷つけない方法を用いての研究推進

 現在、国内外を問わず、生体を傷付けずに脳の機能異常を評価する研究が盛んになっています。私たちは、TMSやtDCSなどの介入手法とMRIや脳波などの計測法を組み合わせ、非侵襲で脳の機能や構造異常を評価し、脳神経の異常な可塑的変化と症状の発現との間にある因果関係を明らかにすることを目指しています。さらに行動検査を組み合わせることにより、多角的に局所性ジストニアを含む精神・神経疾患の病態を理解し、安全かつ高精度な診断法の開発や、予後の評価・機能回復法の開発に取り組んでいます。

研究成果

思い通りの旋律を取り戻すために音楽家やスポーツ選手などの反復練習に伴って発症し職業生命をも脅かす「局所性ジストニア」の新たな治療法を脳情報伝達網の理解に基づいて開発。

演奏中の動作を光信号で計測する

TMS(経頭蓋磁気刺激)による検査の様子。急激な磁場変化による誘導電流で神経細胞を興奮させる

MRI装置内で楽器演奏をしながら脳の状態を調べる

脳の機能画像

MRIによる検査の様子

◦局所性ジストニア不随意で持続的な筋肉収縮を単一の身体部位に引き起こす脳神経疾患

◦TMS(経頭蓋磁気刺激)磁場の変化を引き起こして大脳皮質のニューロン群を非侵襲的に興奮させる方法

◦tDCS(経頭蓋直流電気刺激)微弱な直流電流を用いて大脳皮質興奮性を増減させる非侵襲的手法

◦非侵襲皮膚の切開や体内への器具の挿入等を用いず、生体を傷つけない方法

用語解説

担当組織の特色 脳における情報伝達網は、複雑な神経機能や「こころ」を生み出す基盤です。そして精神・神経疾患や発達障害の病態の背景には、この情報伝達網の不調があります。私たちは、さまざまな画像手法を効率よく組み合わせる「統合的イメージング」を用いて、精神・神経疾患の情報伝達網の不調を解明し、新しいリハビリテーション法を開発することを目指しています。

Cutting-Edge Research & Practice研究と医療 最前線8 Neuroimaging & Rehabilitation

神経画像とリハビリテーション

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