an-fo発 破に関する基礎研究(第2報)* 論文・報告 最近のプリル …

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UDC 622. 235. 24 論文 ・報 告 AN-FO発 破 に関 す る基 礎 研 究(第2報)* 最 近 のプ リル状 硝安 につい て― 郎** 郎*** Fundamental Studies on AN-FO Blasting (2nd Report) •\ On AN-FO blasting using the recently improved prilled AN•\ Yataro SHIMOMURA and Umetaro YAMAGUCHI Prilled ammonium nitrate manufactured in this country has been applicable for AN-FO blasting. This paper is the second report of fundamental studies on AN-FO blasting using the recently improved prilled AN. The studies were consisted of experimental AN-FO blasting tests in a mine formeasurements of the cap-sensitivity and the detonation valocity and laboratory tests of loading AN-FOto bore-holes by an ejector type AN-FO bore-hole charger. AN-FO tested was more cap-sensitive in comparison with the AN-FO reported in the first report. Two bound No. 6 blasting caps had a possibility to ignite 94 a 6 AN-FO charge in a sealed steel stube. Detona- tion velocities of AN-FO measured by Dautorich method were from 2,0000 to 3,000m/s. By compressed air jet loading, AN prills were crushed and filled in a bore-hole at high density, 0.85 - 1.0, to the density of original AN-FO, 0.81. The diameter and the length of loading hose, namely hose resistance, is very much effective on the loading speed of the compressed air loading system of AN-FO. The diameter of borehole is a major affecting factor for the state of AN-FO loaded in a bore-hole such as the density. While, the loading air pressure and the distance between the top of loading hose and the face of charge in a bore-hole are minor factors for the state. Loading techniques of AN-FO by compressed air system is rather experimental and should be esta- blished by practical operation in each mine. 37年9月 号 の 日本 鉱 業 会 誌 の論 文1),38年6月 に 日本 鉱 業 協 会 を経 て発 表 した 実 験報 告2)な ど,AN-FO発 に 関 す る基礎 研 究 を行 なつ て き て い る。 AN-FO用 の硝 安 は,混 合 され た燃 料 油 を 長 く保 持 し,適 当な装填 密度 が得 られ るものでな くて は な ら な い 。AN-FO発 破 の長 所 の1つ である現地混合の可能性 も硝 安 の 性 質 が大 き く影 響 す る3)。 従 来 わ が 国 で 作 られ てい た粒 状硝 安 は外 国(ア メ リカ,カ ナ ダ)製 品のよう な多 孔 質 の プ リル状 硝 安a)で な く,比 較 的 堅硬 な も ので あつ て,こ れ を べ ー ス と して燃 料油 を標 準 の6%混 合し た場 合 で も,十 分 な吸 収 が な され ず 滲 出 して くる有 様 で あ つ た 。 そ の た めわ が 国 の爆 薬 メー カー も,ご く最近 ま で,従 来 の粒 状 硝 安 に粉 状 硝 安 を混 ぜ た もの(大 体50: 50)に 燃 料油 を混 合 した粉 粒 混 合IAN-FOを 販 売 し てい た状 況 で あつ た 。 他 方 わ が国 の硝 安 メー カ ーで はAN-FOに 適 し た多 孔 質 プ リル の研 究 を行 な つ て き てお り,現 在 で は,か つて 発 表 し た試 験 に使 用 され た も の に くらべ て数 段 進 歩 した もの が 作 られ てい て,最 近 の市 販AN-FOも ほ とん ど こ れ らプ リル 硝 安 のみ を使 用 し てい る。 この よ うな状 況 の も とで,筆 者 らは 現 在 入手 し得 るプ リル硝 安 を使 用 した AN-FOに ついて基礎的な性能試験を行な う と共 に, AN-FO混 合 剤 の特 長 の1つ で あ る圧 気 装 填 に関 す る試 験 を行 なつ た 。 実験 に使 用 した 硝 安 プ リル は主 とし てS社 製のもの で,M社 製のものについても一部の試験を行なつた。ま たN爆 薬 会 社 の粉 粒混 合AN-FOも 一部 の試 験 に使 用 し た 。使 用 した 硝 安,AN-FO及 び軽 油 の性 質 を第1表 示した。 *昭 和39年10月24日受理,昭 和39年度 春季研究発 表講演会において講 **工 東 京大学工学部教授 資源開発工学科 ***工 東 京大学工学部助教授 資源開発工学科 a)直 径1~2mmの 多孔質球形の硝安で,従 来爆薬に使用される結晶 質緻密な粒状の硝安とは異なる。高いプリル塔により製造される。 68<2> 日本鉱業会誌

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UDC 622. 235. 24

論 文 ・報 告

AN-FO発 破 に 関 す る基 礎 研 究(第2報)*

―最近のプリル状硝安について―

正 会 員 下 村 弥 太 郎**

正 会 員 山 口 梅 太 郎***

Fundamental Studies on AN-FO Blasting (2nd Report)

•\On AN-FO blasting using the recently improved prilled AN•\

Yataro SHIMOMURA and Umetaro YAMAGUCHI

Prilled ammonium nitrate manufactured in this country has been applicable for AN-FO blasting. This

paper is the second report of fundamental studies on AN-FO blasting using the recently improved prilledAN. The studies were consisted of experimental AN-FO blasting tests in a mine formeasurements of thecap-sensitivity and the detonation valocity and laboratory tests of loading AN-FOto bore-holes by anejector type AN-FO bore-hole charger.

AN-FO tested was more cap-sensitive in comparison with the AN-FO reported in the first report. Twobound No. 6 blasting caps had a possibility to ignite 94 a 6 AN-FO charge in a sealed steel stube. Detona-tion velocities of AN-FO measured by Dautorich method were from 2,0000 to 3,000m/s.

By compressed air jet loading, AN prills were crushed and filled in a bore-hole at high density, 0.85-1.0, to the density of original AN-FO, 0.81.

The diameter and the length of loading hose, namely hose resistance, is very much effective on theloading speed of the compressed air loading system of AN-FO. The diameter of borehole is a major affectingfactor for the state of AN-FO loaded in a bore-hole such as the density. While, the loading air pressureand the distance between the top of loading hose and the face of charge in a bore-hole are minor factorsfor the state.

Loading techniques of AN-FO by compressed air system is rather experimental and should be esta-blished by practical operation in each mine.

は じ め に

37年9月 号の 日本鉱業会誌の論 文1),38年6月 に 日本

鉱業協会 を経 て発表 した実験報告2)な ど,AN-FO発 破

に関す る基礎研究 を行 なつてきている。

AN-FO用 の硝安 は,混 合 された燃料油 を長 く保 持

し,適 当な装填 密度 が得 られ るものでな くて は な ら な

い 。AN-FO発 破 の長所の1つ である現地混合の可能性

も硝安の性質が大 き く影響す る3)。従来わが国で作られ

てい た粒状硝 安は外国(ア メリカ,カ ナダ)製 品のよ う

な多孔質のプ リル状硝安a)で な く,比 較的堅硬 なもので

あつ て,こ れをべースとして燃 料油 を標準の6%混 合 し

た場合で も,十 分な吸収がな されず滲出 して くる有様で

あつた。そのためわが国の爆薬 メー カー も,ご く最近 ま

で,従 来 の粒状硝安に粉状硝安 を混ぜた もの(大 体50:

50)に 燃 料油 を混合 した粉粒混合IAN-FOを 販売 してい

た状況 であつた。

他方わが国 の硝安 メーカーで はAN-FOに 適 した多孔

質プ リル の研究 を行なつてきてお り,現 在では,か つて

発表した試験 に使用 されたものに くらべて数段進歩 した

ものが作 られ ていて,最 近 の市販AN-FOも ほ とんどこ

れ らプ リル硝安 のみを使 用してい る。 このよ うな状況の

もとで,筆 者 らは現在入手 し得 るプ リル硝安 を使用 した

AN-FOに つ いて基礎的な性能試験を行な う と共 に,

AN-FO混 合剤 の特長の1つ であ る圧気装填 に関す る試

験を行 なつた。

実験 に使用 した硝安プ リル は主 としてS社 製 の も の

で,M社 製 のものについても一部の試験 を行 なつた。ま

たN爆 薬会社の粉 粒混合AN-FOも 一部 の試験 に使用 し

た。使用 した硝安,AN-FO及 び軽 油の性質 を第1表 に

示 した。

*昭 和39年10月24日受理,昭 和39年度春季研究発表講演会において講

演**工 博 東京大学工学部教授 資源開発工学科

***工 博 東京大学工学部助教授 資源開発工学科

a)直 径1~2mmの 多孔質球形の硝安で,従 来爆薬に使用される結晶

質緻密な粒状の硝安とは異なる。高いプリル塔により製造される。

68<2> 日本 鉱 業 会 誌

下村弥太郎 ・山 口梅太郎

第1表 実験 に使用 した硝安 と燃料油

*粉:粒:油=47:47:6の ものから軽油分 を蒸発 させて測 定

3号 軽油(日 本石油):比 重(15℃)0.8180,流 動 点50%流 出247℃,95%流 出308℃

爆破実験には,日 鉄鉱業八茎鉱業所の坑内及び坑外 の

廃津 ダムを使用 させ(い ただいた。装填試験その他 の測

定 は東京大学資源開発工学科(当 時鉱 山学科)の 実験室

で行 なわれた。

なお,本 試験は38年 度文部省試験科学研究費に より行

なわれた。

1℃ 性 能 試 験

試験 の主要部分は35mm内 径 のJIS規 格32Aガ ス管

を用いた鉄管内雷管起爆感度試験 と鉄管爆速 の測定(ド

ー トリッシ ュ法)で,こ れ ら試験 に対するAN,FO混

合比の影響,水 分 の影響な どが試験 され,ま た現場 にお

けるア ノローダ装填機 による装填 の使用上の問題点が検

討 された。 粉粒混合AN-FOを 用いた根 切 り発破(サ

ブ ・レベルの下透 し発破),坑 道掘進発破 も試験的 に 行

なわれた。

1・1雷 管感度試験

長 さ50cmの 鉄管(両 端ネジ蓋)にAN-FOを 手で装

填 し,ド ー トリッシュ法 による爆速試験 も合せて,雷 管

感度試験を行 なつ た。結果は第2表,第1図 の通 りで あ

るが,一 昨年夏実験 当時,同 一条件 で完爆のために6号

雷 管10数 本を必要 としたのに くらべ,格 段 に高い雷管感

度 が得 られた2)b)。実験回 数は少ないが混合比94:6の

場合 に最 も高い感度 が得 られたのは,粉 または粒状 の硝

安 を用 いた他の研究者 の研究結果に比して興味深い4)。

なお,こ の感度が鉄管 内の感度で密閉強度 は良 く,開 放

状 態で ない ことを書 き添 えてお く必要があろ う。

第1図 雷管感度 の判定

1・2爆 速試験

50cmの 長 さの鉄管 とよ り長い鉄管 にAN-FOを 充填

して,や は りドー トリッシュ法に よつて爆速の測定を行

なつた。起爆には,6号 電管の本数 を変 えた り,プ ライ

マー として新桐ダイナマイ トを使 つた りした。結果は第

3表 に示 した通 りで,こ の場合で も混合比94:6の もの

が最 も高い爆速 を示 した。プ リル硝安 を使用 し た も の

第2表 雷管感度試験結果

平均爆速は2回 の爆破 の平均,雷 管は6号 雷管。

不 完爆の判定は,爆 速値 と鉄管 の破壊 の不十分 なこ とか ら行なった。

*1回 の爆破例 から得 た値,他 の1回 の測 定値は起爆されないためあ

るいは鉛板上に爆痕が記録されなかつたため測定不能。

**1回 の爆破例か ら得た値 。

第3表 鉄 管 爆 速試 験 結 果

(1)標 準混合比(AN:FO=94:6)の 場合,鉄 管長さ50cm

(2)鉄 管長 さ137.5cm,新 桐 ダイナマイ ト112.59で 起爆 させた場合

*鉛 板か らスケール ・アウ ト?爆 痕不詳

b)雷 管 の装着は次 のよ うに行なっ た。脚線 のっ いた6号 電気 雷管 を中

心に し,導 火線用 の6号 雷管を必要本数だけ添わせて,ビ ニール ・

テ ープで束ねてAN-FOの 中に沈め る。 脚線 を鉄管 の蓋 に明けた

小孔を通 して外へ導い てお く。

Vol.81 No.921 ('65-2) 69<3>

AN-FO発 破 に関す る基礎研 究(第2報)

と,粉 粒混合硝安 を使用 したもの との比較 では,両 者の

問に差が見 られ なかつた。長 い鉄管 を使 用した場合 に,

先 の論文に発表 した爆速値 が起爆点 に比較的近い ところ

で一度低下する,と い う現 象2)は はつ き り見られ なかつ

た。爆速値がプライマーの種類 によつて変 る と い う現

象5)も,こ れだけでははつ き りしないが第3表(1)及 び

(2)を 比較 した場合,新 桐ダイナマイ トによつて起爆 し

た場合が,雷 管のみで起爆 した場合 よ り爆速値が高 い傾

向 は見 られ る。完爆 さえすれば,爆 速値はあま り差 がな

いのではなかろ うか。

1・3水 分の影響

硝安:燃 料油混合比94:6の ものに,AN-FO全 量 に

対す る百分比で,2,4,6,8%の 水を加 えて混合 しc),

その爆速値か ら水 分の影響 を測定 した。水分が6%を 超

す と,混 合 されたAN-FOは かな り湿 つた感 じとな り,

8%の 場合 には水分が吸収 され切れず浸 出して くる位 で

あつたが,い ずれ も6号 雷管10本 で完爆 した。爆速値 は

む しろ水分4%付 近で最高を示 し,あ る程度 の水分は使

用上差支えない ことが判 つた3)。 なお,爆 破 は水分を混

合 して10数 分後 に行なわれた。(第2図)

1・4実 際 発破での使用

N社 製粉粒混合AN-FOを ア ノロー ダを使用 して実際

のボア ・ホールに装填 し,新 桐 ダイナマイ トの225g薬

包 をプライマー として実際の爆破 を行 なつた。サブ ・レ

ベル の下透 し(根 切 り)発 破では,ボ ア ・ホール径 が大

き く密装填で過装薬 となつ たが,従 来 の新桐ダイナマイ

ト使 用の場合 と同様 に爆破が行な わ れ,坑 道(2×2.5

m)の 全断面 の発破で も,従 来の ダイナマイ ト使用の場

合 と同じ装薬量で,1.2mの 掘進長 を全 く同 じに掘進し

た。

1・5使 用上 の問題点

以上の実験を通 してAN-FO発 破 の実用化の上で,い

くつか問題 にな りそ うな事実を経験 した。その1つ はア

第2図 爆 速 に 対 す る水 分 の影 響

(水分0%の 点は第2表 のAN/FO=94/6,雷 管10本の値をとつた)

ノローダによる装填 につい てであ る。今回使用 したプ リ

ル状硝安 は燃料油の吸収 が非常に良 く,8%混 合の場 合

で もプ リルの流動性(free runnins)は ほとん ど変 りな

くd),永 分 を更 に6%,8%加 えては じめて,湿 つた感

じになつて くる。それ で,プ リルを使用 してアノローダ

で装填す る場合は極 めてスムーズに装填す るこ とがで き

た。これ に反 し粉粒 混合 のAN-FOで は,ア ノロー ダに

よる装填 は吸込 口がつま り,ま た,ポ リエチレン ・パ イ

プの途 中に停滞す るなど,非 常 にや りに くかつ た。

2.プ リル状 硝 安 の 破砕 性 と圧 縮

空 気 に よるAN-FOの 装 填

入茎鉱山における爆破実験 に引続いて,実 用上 の問印題

点の1つ であるAN-FOの 圧縮空気 に よ る 装填(Jet-

loading)に つ いて,プ リルの粉 砕状況や装填比重 などを

演定する実験 を行なつた。

2.1プ リル状硝安の破砕性 。

AN-FOを 圧縮空気でJet-loadingし た場合に,ど の

よ うな装填密度が得 られ るかは,硝 安 のプ リルが どの よ

うに破砕 され装填 され るか とい うことにかかつ てい る。

そこで,AN-FOの 装填試験 に先立つて,硝 安 プ リルに

落槌 を落 して破砕し,そ の強度 を求める試験や,燃 料油

を加 えていない単独 のプ リル硝 安 をボア ・ホール にJet-

loadingし て,そ の破砕粒度 を求める試験 を行なつた。

2・1・1落 槌試験による硝安プ リルの強度:第3(a)

図の ような方法で,1.629gの 落槌 を5mmご とに高 さ

を変えてプ リル の上へ落 し,落 槌 のそれぞれ の落下高 さ

ご とに,破 砕 したプ リルの粒子数 を積算グ ラフにプ ロッ

トす る(第3(b)図)。 試験 を40個 のプ リル について行な

つ たので,破 砕 した粒子の数が半分の20個 にな る落槌の

落 下高 さと重量か らそのエネルギーを求 め,プ リルの平

均破砕 エネルギー とした。その値は

E=mgh=1.629×2.05g・cm

この試験 は,落 槌の大き さも試験すべ きプ リル の 数

も,厳 密 な計画の下で定めたものではな く,落 槌 を落下

第3(a)図 落槌

試験

第3(b)図 落槌試験 に

よる硝安 プ リルの強 度

c)AN-FOを き く撹拌 しなが ら少しずつ散水して加える。霧吹 きで加

えるこ とも試みたが,時 間がかか り過 ぎて適当でない。

d)ホ ースの長さは4m,ホ ースの内径は15.7mmで あった。

e)塩 化ビニー ル ・パイプを下に向けて測面を軽 く叩 くと,装 填された

プ リルは取出せる。パイプ径が小さい場合は全量をふるい分 けし~

大 きいものにつ いては約1kgを とりふるい分 けした。

70<4> 日本 鉱 業 会 誌

下村弥太郎 ・山 口梅太郎

第4図AN-FO装 填試験

高 さを変えて繰返えしてプ リル の上に落しているので,

衝 撃 の繰返 えしによる破砕 の問題 も入つている等,極 め

て便宜的な ものである。 しか し,プ リルの強度を標準的

に定 めることは,破 砕 によるAN-FOの 爆発効果 と,貯

蔵 ・運搬等の点か らは破砕 しない方が良い とい う矛盾 し

た性質 を定 める上で重要なこ とであ る。そこで,こ の試

験 の ような方法,あ るいは,袋 または容器 に入れ て振動

を与 えて破砕す る試験などをプ リルの強度試験 として提

案 したい。

2・1・2空 気装填機によ り装境 されたプ リル状硝 安 の

粒 度分布:実 験室において,透 明硬質の塩化 ビニール ・

パ イプ,長 さ2mの ものを木製 の台枠の上 に設置 して,

これをボア ・ホ ール と見倣 し,三 菱金属鉱業社製 のアノ

ローダ(商 品名ベ ス ト・チ ャージャー)を 使 用 し て,

硝 安プ リル及びAN-FOの 装填試験 を行なつた(第4

図)。

内径38mmの ボア ・ホールに長 さ4m,内 径17.7mm,

外 径26.2mmの 装填ホースでプ リル硝安 を装填 し,装 填

比 重を求 めてか ら後取出しe),タ イラーの標 準ふるいで

ふ るい分けし粒度分布 を求 めた。空気圧力 を4kg/cm2と

し,装 填 ホー スの先端 と硝 安の充填面 との距 離 を20,

30,40,50cm及 び60cmに 保 ちなが ら装填 した。装填

長 さは約1rnで あつた。

粒 度分布 のグラフは第5図 である。装填前のS社 の硝

安 は主 として直径2mm前 後のプ リルか らな り,M社 の

ものは1.5mm前 後の ものか らなつ てい るが,破 砕 され

た ものでは連続的 な粒度分布 を示 してい ることが知 られ

第5図 硝安の粒度分布

第4表 硝 安の平均粒度(50%粒 度)

*ホ ース先端か ら装填面 までの距離(cm)

る。積算量 の50%に 当る粒子のサイズを50%粒 度 と

呼んで,装 填 された ものの平均粒度 としたが,ホ ース先

端 と装填面 までの距離 が小 さ くな ると,破 砕 の度合が幾

分大き くなることが知 られ る(第4表)。 いずれ も,装 填

され破砕 された ものの粒度 は,粉 粒 混合AN-FOの 粒 度

よ りも細 かい。

2・2AN-FOの 装填試験

混合比94:6のAN-FOを 作 り,上 述 の装置(塩 化 ビ

ニール ℃パ イプのボア ・ホール)に 装填 し,装 填比重,

単位 時間当 り装填量,損 失量(装 填の際に,ボ ア ・ホー

ルの外へ噴き出して しま う量),空 気消費量等 につ い て

測定を行なつ た。変化 させた条件は,ボ ア ・ホール の直

径-塩 ビ管の内径32.5,38,45,50.5mmの もの を

使用-,装 填空気圧力,装 填 ホー スの先端 とAN-FO

装填面 までの距離等であ る。装填 に使用した装填 ホース

は内径17.7mmで あ るが,内 径15.7mmの ものも一部

の試験に用 いられた。ボア ・ホール としての塩 ビ管 は水

平 に置かれたが,ボ ア ・ホール の傾斜の影響 を調 べるた

めに,30°,60°,90° の傾斜 をつ けた試験 もわず かで あ

るが行なつた。なお,装 填 ホースの長 さも,AN-FOの

装填 には,大 きな影響 を及 ぼす ものと思われるが,今 回

第6図 装填可能量最小距離

第7図 装 填 比 重

Vol.81 No.921 ('65-2) 71<5>

AN-FO発 破 に関 する基礎研究(第2報)

第8図 損失量 と装填面 まで の距離(L)

の実験では,4mで 一定であつ た。

2・2・1装 填ホースの先端 と装垣面までの距離:装 填

ホー スの先端 をAN-FOの 装填面 に近づけ過 ぎる と,噴

出す る空気(及 び プ リル)に よつ てAN-FOの 装填面が

崩 され,AN-FOは ボア ・ホール の外へ吹き出されて装

填で きな くなる。第6図 は,AN-FOが 装填で きる最小

距離 を空気圧力 について求 めたものであるが,こ の場合

では最小距離 は2kg/cm2の とき20cmで,空 気圧力の

上昇 と共に,わ ずかではあるが大 きくなる。空気圧力を

一定にして(4kg/cm2),装 填 ホー スの先端 から装填 面ま

での距離を変 えて装填 されたAN-FOの 比重 を測定した

結果 を第7図 に示 したが,直 径50.5mmの ボア ・ホール

に対す るものを除 くと,装 填 面までの距離の比重 に対す

る影響は見 られ ない。

装填面までの最小距離はボア ・ホールの径 に影響 され

る。第7図 の場合で も,ボ ア ・ホール径32.5mmの 場合

は,装 填 面までの距離10cmが 装填可能であ り,内 径

38,45mmに 対 しては20cm,内 径50.5mmに 対 しては

30cmが 最小距離であつた。

AN-FOを ボア ・ホールに装填す る場合,空 気 と共 に

ボアホー ルの外へ噴 き出 して,ボ ア ・ホールの中に装填

されず失われる量 を損失量 としたが,装 填ホースを装填

面 に近付 け過 ぎると損失量は大き くなる傾向にある。損

失量 の中には,AN-FOの 細か く破砕 された ものが,粉

霧状 となつて飛散して失 われ るものも含 まれ る。第8図

は損失量 と装填面か らの距離の関係を求 めたものである

第9図 損失量 と空気圧力

第10図 装 填 比 重

第11図

装填比重 と

ボ アホール

の直径

が,損 失量の測定 は,装 填 され たAN-FOの 量を秤量

し,装 填前のAN-FOの 量 との差 を求 めて行 なつてい る

ので,精 度は非常 に低い,し たが つて,こ の測定の結果

は,単 に傾 向を示 してい るに過 ぎない と言つて良い。

(第9図)。

2・2・2ボ ア ・ホ ールの直径の影 響:実 験回数等に観

限 されて,実 験 は空気圧力4kg/cm2あ るいは装填ホー

スを先端か ら装填面 までの距離40cmの ものが多 く行な

われ た。その結果 から,装 填 比重,単位時間当 り装填 量,

損失量等,い ずれ も装填 され るボア ・ホールの直径が影

響 してい るように思われ る。装填面 までの最小距離 もそ

うで あつたが,装 填比重について もボ ア ・ホールの径 の

影響が見 られる。

装填比重はボア ・ホール の径が小 さいほど大 き くな る

こ とが第10図,第11図 よ り明 らかである。

第12図 単位時問当 り装填量

72<6> 日本 鉱 業 会 誌

下村弥太郎 ・山 口梅太郎

第13図

単位時間当 り装

填 量とボアホド

ルの直径

2・2・3装 填ホースの直径 の影響:装 填 ホースは内径

17.7mm,外 径26.2mmの ものが大部分の実験に使用 さ

れたが,内 径15.7mm,外 径21.8mmの ものも一部の実

験 に使用 された。使用 ホースの直径 の影響が顕著に現れ

たのは単位時間当 り装填量 についてで,第12図 に明 らか

な ように,内 径17.7mmの ホー スに よる単位時間 当 り装

填 量は,内 径15.7mmの それ の2倍 の値 を示 してい る。

ただ,ホ ース径17.7mmの 場合,ボ ア ・ホール径32.5

mmに 対す る装填量は,そ れ よ り大 きい直径 のボ ア ・ホ

ールに対 して はつ き りと小 さな値 を示 した。この場合の

ホース外径 とボア ・ホール内径 との差,す なわちク リア

ランスは,半 径で7.4mmあ る。 しかし,第13図 か ら

は,装 填 ホー スとボア ・ホールの クリアランスとの間に

ある関係 を求め ることはできなかつた。空気圧力の影響

も3kg/cm2以 上 ならばほ とんど見られ ない。2kg/cm2

の場合 に多少装填量が小 さ くなつている。

2・2・4ボ ア ・ホールの傾斜の影響:ボ ア ・ホールの

傾斜 の影響 を調べ るために,塩 化 ビニール 管 を30°,

60°,90° の傾斜で上 向きに設置 してAN-FOを 下か ら

上 へ向けて装填す る実験 を行なつた。ボア ・ホールの直

径 は32.5,38,45mmで,ホ ース内径は17.7mmで あ

つた。

実験 の結果か ら見 ると,装 填 されたAN-FOに ついて

み ると,傾 斜 め影響はほ とんどみ られず,ボ ア ・ホール

が水平の場合 と同 じである とい うこと が で き る。ただ

し,こ れは装填 された ものにつ いてであつて,ボ ア ・ホ

ールの傾斜 の影響は,特 にボア ・ホールの直径が大 き く

な るとAN-FOの 装填が困難 になる,と い う形 で現れ

る。 これ をま とめると第5表 になる。この場合の試験空

気圧力Pは2~6kg/cm2,装 填 ホー ス先端 と装填面 まで

の距離Lは20~100cmで あつた。

この表か ら判断す ると,ボ ア ・ホールの角度が大 き く

なると,AN-FOに 重力が作用 するので,こ れに対抗 で

きる強 さでAN-FOが ボア ・ホール に装填 され る。す な

わ ち傾斜が大 きくなる程圧 し付けて装填 され る必要があ

第5表 ボ ア ・ホ ール(ビ ュー ル管)の 傾 斜 の影 響

る。 しかし,他 方で,装 填 面が崩 されない ようにす る必

要 もある。このバ ランスが とれ ないと装填が不可能 にな

ることが考え られ る。傾斜孔の直径が大 き くなるほど,

このバ ランスはと りに くいこ とが知 られ る。

実際の岩石 のボア ・ホールに対 しては,ボ ア ・ホール

内面の平滑の度合,水 分の影響 などか ら,傾 斜 による装

填 の難易の問題 は,上 の結果 とは異 なつた ものになると

思われる。

2・2・5空 気消費量:以 上 の全実験 を通じて装填 の際

の空気消費量の測定 を行なつたが,測 定器 の容量が大 き

過 ぎて測 定の精度は低かつた。測定の精度の関係 もある

.が,空 気圧力に対す る空気消費量 が,空 気圧 力2kg/cm念

で消費量約1.1m3/min,空 気圧力が3kg/cm2か ら6kg/

cm2に 上昇する と,消費量が1.4m3/廊 登か ら1.7m3/min

に増加す る傾 向が見 られた外は,は つ き りした傾 向が見

られ なかつた。装填ホースの直径 の違いに対 しても,消

費空気量に差 が見 られなかつた。

2・3装 填試験のま とめ

実験回数の限度 などか ら,考 えられ る全ての条件 につ

いて広い実験が行なえなかつた うらみが あるが,次 のよ

うな結果を得 ることができた。

1.装 填比重 は,装 填 されるボア ・ホールの径 が小 さ

いほ ど大き くなる。

2..装 填ホースの先端 と装填面 までの距離は,空 気圧

力が低いほ ど,ボ ア ・ホールの径 が小 さいほ ど小 さくす

ができる。そして,わ ずかではあるが,こ の距離が小 さ

るこ といほ ど,硝 安 プ リルの破砕 度は大 き くな る。

3.装 填ホースの先端 と装填面 までの 距 離 が 小 さ い

程,ボ ア ・ホール の口か ら吹 き出 され て失なわれるAN-

FOの 量は多 くなる。

4.単 位時問当 りの装填量は,装 填 ホースの径 に決定

的に支配 され る。このことは,ホ ースの径が 小 さ い 場

合,長 さが長い場合,す なわ ちホースの抵抗が大きい場

合 に装填 が不可能になる とい う,現 場 での実際の使用経

験 とも関連 がある。恐 らく装填ホースの長 さも,こ れに

関係 すると考え られるが,今 回は実験 できなかつた。

5.上 向き孔の場合,特 にボ ア ・ホール の直径が大き

い場合 には,空 気圧 力の大 きさと装填 ホースの先 と装填

面 までの距離 を,う ま くバ ランスさせて装填す る必要が

Vol.8 No.921 ('65-2) 73<7>

AN-FO発 破 に関する基礎研究(第2報)

ある。

6.空 気消費量については空気消費量が,空 気圧力の

増加 と共に増大す るとい うことの他は,は つ き りした傾

向がつかめなかつた。

ボア ・ホール に装填 ホースでAN-FOを 装填す る場合

に見 られるいろい ろの現象 は,ホ ースの先端 と装薬 との

問,ホ ース とボ ア ・ホール との間の空間に生ず る空気 の

流れの問題 とな り,こ の空気 の流れによつて 運 動 す る

AN-FOプ リルの行動-移 動,破 砕,付 着,吹 き出し,

等-が 関係す る。したがつ て,こ の問題 は非常に複雑

で,実 際に使用すべきホースの径,長 さ,空 気圧力,装

填 のテ クニ ック等 は,実 験的 に定 められる性質 であ るよ

うに思われ る。

お わ り に

最近のプ リル状硝安を使用 したAN-FOに 関して,そ

の性能 と圧縮空気 による装填 の2つ の基礎 的な問題 を研

究 した。AN-FOに ついては,筆 者等 もその啓発 に微力

をつ くしてきたが6),よ うや くその良 さが認 められて き

た と思われ る。今後 は,ひ とりAN-FOの みでな く,こ

うした新技術 の長所 を活かし,発 展 させてい く態勢 を築

くよう努力しなくてはならない。

本研究に当つて,現 場実験に多大の御協力を賜つた日

鉄鉱業,西 脇三樹雄鉱山部長,塚 越正勝八茎鉱業所長は

じめ八茎鉱業所の各位,並 びにプリル状硝安の供給に御

骨折りいただいた住友化学工業,三 菱化成工業の各位

に,深甚なる謝意を表する。

併せて,東 京大学工学部資源開発工学科(当 時鉱山学

科)学 生,斎 藤真人君,下 村重孝君,同 岩石工学実験室

(当時採鉱学実験室)の 宮崎道雄君,森 田道明君の協力

を感謝する。

参 考 文 献

1) 下村 弥太郎: AN-FO発 破に関す る基礎研究, 日 本鉱業会誌・昭和

37年9月 号, 640~648頁

2) 日本 鉱業協会, 石灰石鉱業協会: AN-FOの 鉱山 にお ける発破試 験,

昭和38年3月31田

3) 山口梅太郎: ア メリカ・カナダにおけ るAN-FO混 合剤 につ いて,

鶏本鉱業会誌, 昭掬39年6月 号, 517~520頁

4) 日本産業火薬会硝油爆薬委員会: 硝油爆薬の性能 につい て, 昭 和38

年5月

工業技術院: AN-FO爆 薬に関す る試験 結果, 昭 和38年11月

5) Norman M. Junk: Research on Primers for Blasting Agen-

ts, Mining Congress Jnl., April 1964, pp.98•`101

6) 下村弥太郎: AR-FO爆 剤 とその発破法, トンネル工学 シ ジーズ2

・最近の トンネル工学, 土木学会, 昭和39年8月, 99~115頁

石炭の粉化防 止装置

チ ップ ラーで 炭 車 を 空 け る際 に,

石 炭 の 粉化 を 防 ぐ装 置 が 英 国Rh-

ymney Engineening Co.Ltd.に よ

り製 作 され た。 こ の装 置 は 溝造 が 簡

単 で360° 回転 チ ップ ラ ーに容 易 に

と りつ け る こ とが で き る。 石 炭 は炭

車 の外 へ は投 げ 出 され ず,だ ん だ ん

に チ ップ ラー シ ュー トに沿 つ て徐 々

に 降 下 す る よ うに なつ て い る。

この装 置 は 粉 化 防 止 板 の役 を す る

丈 夫 な ピボ ッ トを備 え た ピボ ッ ト ・

バ ケ ッ トか ら成つ て お り,こ れ が チ

ップ ラ 戸本体 の 一方 の側 に 取 付 け ら

れ てい る(図-1)。

粉 化 防 止板 は全 長 にわ た つ て適 当

に補 強 して あ り,自 由端 は 櫛 状 に な

つ てい る。 この板 は150mmφ 車 輪

で 弾性 的 に支 持 され て い るが,こ の

イ,停止状態

2.チップラが

90°回転 した

ときの状態

3.粉 化防止板が

チップラシュードかう

〓れようとする瞬間

4.粉 化防止板 が

シュート面より〓れ石炭が排 出される状態

車 輪 は ロ ー ラ ・ベ ア リン グ と丈 夫 な

合 成 ゴム の踏 面 を もつ てい る ので 寿

命 も長 く運 転 時 の騒 音 も少 ない 。

チ ップ ラ ーが 回転 を 始 め る と石 炭

は粉 化 防 止 板 と炭 車 の 間 に形 成 され

る ポ ケ ッ ト中 に ごぼ れ落 ち,自 由落

下 す る ことは な い(図-2)。 回転 に

つ れ て車 輪 は カ ーブ した シ ュー ト面

に 沿 つ て動 くが,石 炭 の大 部分 は 依

然 粉 化 防 止板 に支 え られ て い る。し

か し粉 炭 は この板 の櫛 状 端 の 隙 間 か

ら下 に落 ち,チ ップ ラ ーの 下 の

フ ィーダ や コンベ ヤ上 にあ らか

じ め ク ッ シ ョン を形 成 す る(図-

3)。

チ ップ ラ門 の 回転 が 進 む につ

れ て,粉 化 防 止板 は石 炭 を徐 々

に シ ュー トの方 に 下 して い く。

この 下 降作 用 は 板 が チ ップ ラシ

ュー ト面 と約90° に な る まで 行

な わ れ る 。 こ の点 以 上 に 回転 が

進 む と,板 の端 が シ ュー ト面 か

ら離 れ,石 炭 が シ ュ ー ト面 に沿

つ て す べ り落 ち る(図-4)。 こ

の粉 化 防 止板 は チ ップ ラ ーが 回

転 を完 了 す る以前 に,ガ イ ド装

置 に よ り正 常 の 引込 んだ 位 置 に

もど る(図-1)。(広 部 良 輔)

("Anti-breakage Device" Colliery

Engineering, May 1964, 194 ‚æ‚è)

74<8> 日本 鉱 業 会 誌