an-fo発 破に関する基礎研究(第2報)* 論文・報告 最近のプリル …
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UDC 622. 235. 24
論 文 ・報 告
AN-FO発 破 に 関 す る基 礎 研 究(第2報)*
―最近のプリル状硝安について―
正 会 員 下 村 弥 太 郎**
正 会 員 山 口 梅 太 郎***
Fundamental Studies on AN-FO Blasting (2nd Report)
•\On AN-FO blasting using the recently improved prilled AN•\
Yataro SHIMOMURA and Umetaro YAMAGUCHI
Prilled ammonium nitrate manufactured in this country has been applicable for AN-FO blasting. This
paper is the second report of fundamental studies on AN-FO blasting using the recently improved prilledAN. The studies were consisted of experimental AN-FO blasting tests in a mine formeasurements of thecap-sensitivity and the detonation valocity and laboratory tests of loading AN-FOto bore-holes by anejector type AN-FO bore-hole charger.
AN-FO tested was more cap-sensitive in comparison with the AN-FO reported in the first report. Twobound No. 6 blasting caps had a possibility to ignite 94 a 6 AN-FO charge in a sealed steel stube. Detona-tion velocities of AN-FO measured by Dautorich method were from 2,0000 to 3,000m/s.
By compressed air jet loading, AN prills were crushed and filled in a bore-hole at high density, 0.85-1.0, to the density of original AN-FO, 0.81.
The diameter and the length of loading hose, namely hose resistance, is very much effective on theloading speed of the compressed air loading system of AN-FO. The diameter of borehole is a major affectingfactor for the state of AN-FO loaded in a bore-hole such as the density. While, the loading air pressureand the distance between the top of loading hose and the face of charge in a bore-hole are minor factorsfor the state.
Loading techniques of AN-FO by compressed air system is rather experimental and should be esta-blished by practical operation in each mine.
は じ め に
37年9月 号の 日本鉱業会誌の論 文1),38年6月 に 日本
鉱業協会 を経 て発表 した実験報告2)な ど,AN-FO発 破
に関す る基礎研究 を行 なつてきている。
AN-FO用 の硝安 は,混 合 された燃料油 を長 く保 持
し,適 当な装填 密度 が得 られ るものでな くて は な ら な
い 。AN-FO発 破 の長所の1つ である現地混合の可能性
も硝安の性質が大 き く影響す る3)。従来わが国で作られ
てい た粒状硝 安は外国(ア メリカ,カ ナダ)製 品のよ う
な多孔質のプ リル状硝安a)で な く,比 較的堅硬 なもので
あつ て,こ れをべースとして燃 料油 を標準の6%混 合 し
た場合で も,十 分な吸収がな されず滲出 して くる有様で
あつた。そのためわが国の爆薬 メー カー も,ご く最近 ま
で,従 来 の粒状硝安に粉状硝安 を混ぜた もの(大 体50:
50)に 燃 料油 を混合 した粉粒混合IAN-FOを 販売 してい
た状況 であつた。
他方わが国 の硝安 メーカーで はAN-FOに 適 した多孔
質プ リル の研究 を行なつてきてお り,現 在では,か つて
発表した試験 に使用 されたものに くらべて数段進歩 した
ものが作 られ ていて,最 近 の市販AN-FOも ほ とんどこ
れ らプ リル硝安 のみを使 用してい る。 このよ うな状況の
もとで,筆 者 らは現在入手 し得 るプ リル硝安 を使用 した
AN-FOに つ いて基礎的な性能試験を行な う と共 に,
AN-FO混 合剤 の特長の1つ であ る圧気装填 に関す る試
験を行 なつた。
実験 に使用 した硝安プ リル は主 としてS社 製 の も の
で,M社 製 のものについても一部の試験 を行 なつた。ま
たN爆 薬会社の粉 粒混合AN-FOも 一部 の試験 に使用 し
た。使用 した硝安,AN-FO及 び軽 油の性質 を第1表 に
示 した。
*昭 和39年10月24日受理,昭 和39年度春季研究発表講演会において講
演**工 博 東京大学工学部教授 資源開発工学科
***工 博 東京大学工学部助教授 資源開発工学科
a)直 径1~2mmの 多孔質球形の硝安で,従 来爆薬に使用される結晶
質緻密な粒状の硝安とは異なる。高いプリル塔により製造される。
68<2> 日本 鉱 業 会 誌
下村弥太郎 ・山 口梅太郎
第1表 実験 に使用 した硝安 と燃料油
*粉:粒:油=47:47:6の ものから軽油分 を蒸発 させて測 定
3号 軽油(日 本石油):比 重(15℃)0.8180,流 動 点50%流 出247℃,95%流 出308℃
爆破実験には,日 鉄鉱業八茎鉱業所の坑内及び坑外 の
廃津 ダムを使用 させ(い ただいた。装填試験その他 の測
定 は東京大学資源開発工学科(当 時鉱 山学科)の 実験室
で行 なわれた。
なお,本 試験は38年 度文部省試験科学研究費に より行
なわれた。
1℃ 性 能 試 験
試験 の主要部分は35mm内 径 のJIS規 格32Aガ ス管
を用いた鉄管内雷管起爆感度試験 と鉄管爆速 の測定(ド
ー トリッシ ュ法)で,こ れ ら試験 に対するAN,FO混
合比の影響,水 分 の影響な どが試験 され,ま た現場 にお
けるア ノローダ装填機 による装填 の使用上の問題点が検
討 された。 粉粒混合AN-FOを 用いた根 切 り発破(サ
ブ ・レベルの下透 し発破),坑 道掘進発破 も試験的 に 行
なわれた。
1・1雷 管感度試験
長 さ50cmの 鉄管(両 端ネジ蓋)にAN-FOを 手で装
填 し,ド ー トリッシュ法 による爆速試験 も合せて,雷 管
感度試験を行 なつ た。結果は第2表,第1図 の通 りで あ
るが,一 昨年夏実験 当時,同 一条件 で完爆のために6号
雷 管10数 本を必要 としたのに くらべ,格 段 に高い雷管感
度 が得 られた2)b)。実験回 数は少ないが混合比94:6の
場合 に最 も高い感度 が得 られたのは,粉 または粒状 の硝
安 を用 いた他の研究者 の研究結果に比して興味深い4)。
なお,こ の感度が鉄管 内の感度で密閉強度 は良 く,開 放
状 態で ない ことを書 き添 えてお く必要があろ う。
第1図 雷管感度 の判定
1・2爆 速試験
50cmの 長 さの鉄管 とよ り長い鉄管 にAN-FOを 充填
して,や は りドー トリッシュ法に よつて爆速の測定を行
なつた。起爆には,6号 電管の本数 を変 えた り,プ ライ
マー として新桐ダイナマイ トを使 つた りした。結果は第
3表 に示 した通 りで,こ の場合で も混合比94:6の もの
が最 も高い爆速 を示 した。プ リル硝安 を使用 し た も の
第2表 雷管感度試験結果
平均爆速は2回 の爆破 の平均,雷 管は6号 雷管。
不 完爆の判定は,爆 速値 と鉄管 の破壊 の不十分 なこ とか ら行なった。
*1回 の爆破例 から得 た値,他 の1回 の測 定値は起爆されないためあ
るいは鉛板上に爆痕が記録されなかつたため測定不能。
**1回 の爆破例か ら得た値 。
第3表 鉄 管 爆 速試 験 結 果
(1)標 準混合比(AN:FO=94:6)の 場合,鉄 管長さ50cm
(2)鉄 管長 さ137.5cm,新 桐 ダイナマイ ト112.59で 起爆 させた場合
*鉛 板か らスケール ・アウ ト?爆 痕不詳
b)雷 管 の装着は次 のよ うに行なっ た。脚線 のっ いた6号 電気 雷管 を中
心に し,導 火線用 の6号 雷管を必要本数だけ添わせて,ビ ニール ・
テ ープで束ねてAN-FOの 中に沈め る。 脚線 を鉄管 の蓋 に明けた
小孔を通 して外へ導い てお く。
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AN-FO発 破 に関す る基礎研 究(第2報)
と,粉 粒混合硝安 を使用 したもの との比較 では,両 者の
問に差が見 られ なかつた。長 い鉄管 を使 用した場合 に,
先 の論文に発表 した爆速値 が起爆点 に比較的近い ところ
で一度低下する,と い う現 象2)は はつ き り見られ なかつ
た。爆速値がプライマーの種類 によつて変 る と い う現
象5)も,こ れだけでははつ き りしないが第3表(1)及 び
(2)を 比較 した場合,新 桐ダイナマイ トによつて起爆 し
た場合が,雷 管のみで起爆 した場合 よ り爆速値が高 い傾
向 は見 られ る。完爆 さえすれば,爆 速値はあま り差 がな
いのではなかろ うか。
1・3水 分の影響
硝安:燃 料油混合比94:6の ものに,AN-FO全 量 に
対す る百分比で,2,4,6,8%の 水を加 えて混合 しc),
その爆速値か ら水 分の影響 を測定 した。水分が6%を 超
す と,混 合 されたAN-FOは かな り湿 つた感 じとな り,
8%の 場合 には水分が吸収 され切れず浸 出して くる位 で
あつたが,い ずれ も6号 雷管10本 で完爆 した。爆速値 は
む しろ水分4%付 近で最高を示 し,あ る程度 の水分は使
用上差支えない ことが判 つた3)。 なお,爆 破 は水分を混
合 して10数 分後 に行なわれた。(第2図)
1・4実 際 発破での使用
N社 製粉粒混合AN-FOを ア ノロー ダを使用 して実際
のボア ・ホールに装填 し,新 桐 ダイナマイ トの225g薬
包 をプライマー として実際の爆破 を行 なつた。サブ ・レ
ベル の下透 し(根 切 り)発 破では,ボ ア ・ホール径 が大
き く密装填で過装薬 となつ たが,従 来 の新桐ダイナマイ
ト使 用の場合 と同様 に爆破が行な わ れ,坑 道(2×2.5
m)の 全断面 の発破で も,従 来の ダイナマイ ト使用の場
合 と同じ装薬量で,1.2mの 掘進長 を全 く同 じに掘進し
た。
1・5使 用上 の問題点
以上の実験を通 してAN-FO発 破 の実用化の上で,い
くつか問題 にな りそ うな事実を経験 した。その1つ はア
第2図 爆 速 に 対 す る水 分 の影 響
(水分0%の 点は第2表 のAN/FO=94/6,雷 管10本の値をとつた)
ノローダによる装填 につい てであ る。今回使用 したプ リ
ル状硝安 は燃料油の吸収 が非常に良 く,8%混 合の場 合
で もプ リルの流動性(free runnins)は ほとん ど変 りな
くd),永 分 を更 に6%,8%加 えては じめて,湿 つた感
じになつて くる。それ で,プ リルを使用 してアノローダ
で装填す る場合は極 めてスムーズに装填す るこ とがで き
た。これ に反 し粉粒 混合 のAN-FOで は,ア ノロー ダに
よる装填 は吸込 口がつま り,ま た,ポ リエチレン ・パ イ
プの途 中に停滞す るなど,非 常 にや りに くかつ た。
2.プ リル状 硝 安 の 破砕 性 と圧 縮
空 気 に よるAN-FOの 装 填
入茎鉱山における爆破実験 に引続いて,実 用上 の問印題
点の1つ であるAN-FOの 圧縮空気 に よ る 装填(Jet-
loading)に つ いて,プ リルの粉 砕状況や装填比重 などを
演定する実験 を行なつた。
2.1プ リル状硝安の破砕性 。
AN-FOを 圧縮空気でJet-loadingし た場合に,ど の
よ うな装填密度が得 られ るかは,硝 安 のプ リルが どの よ
うに破砕 され装填 され るか とい うことにかかつ てい る。
そこで,AN-FOの 装填試験 に先立つて,硝 安 プ リルに
落槌 を落 して破砕し,そ の強度 を求める試験や,燃 料油
を加 えていない単独 のプ リル硝 安 をボア ・ホール にJet-
loadingし て,そ の破砕粒度 を求める試験 を行なつた。
2・1・1落 槌試験による硝安プ リルの強度:第3(a)
図の ような方法で,1.629gの 落槌 を5mmご とに高 さ
を変えてプ リル の上へ落 し,落 槌 のそれぞれ の落下高 さ
ご とに,破 砕 したプ リルの粒子数 を積算グ ラフにプ ロッ
トす る(第3(b)図)。 試験 を40個 のプ リル について行な
つ たので,破 砕 した粒子の数が半分の20個 にな る落槌の
落 下高 さと重量か らそのエネルギーを求 め,プ リルの平
均破砕 エネルギー とした。その値は
E=mgh=1.629×2.05g・cm
この試験 は,落 槌の大き さも試験すべ きプ リル の 数
も,厳 密 な計画の下で定めたものではな く,落 槌 を落下
第3(a)図 落槌
試験
第3(b)図 落槌試験 に
よる硝安 プ リルの強 度
c)AN-FOを き く撹拌 しなが ら少しずつ散水して加える。霧吹 きで加
えるこ とも試みたが,時 間がかか り過 ぎて適当でない。
d)ホ ースの長さは4m,ホ ースの内径は15.7mmで あった。
e)塩 化ビニー ル ・パイプを下に向けて測面を軽 く叩 くと,装 填された
プ リルは取出せる。パイプ径が小さい場合は全量をふるい分 けし~
大 きいものにつ いては約1kgを とりふるい分 けした。
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下村弥太郎 ・山 口梅太郎
第4図AN-FO装 填試験
高 さを変えて繰返えしてプ リル の上に落しているので,
衝 撃 の繰返 えしによる破砕 の問題 も入つている等,極 め
て便宜的な ものである。 しか し,プ リルの強度を標準的
に定 めることは,破 砕 によるAN-FOの 爆発効果 と,貯
蔵 ・運搬等の点か らは破砕 しない方が良い とい う矛盾 し
た性質 を定 める上で重要なこ とであ る。そこで,こ の試
験 の ような方法,あ るいは,袋 または容器 に入れ て振動
を与 えて破砕す る試験などをプ リルの強度試験 として提
案 したい。
2・1・2空 気装填機によ り装境 されたプ リル状硝 安 の
粒 度分布:実 験室において,透 明硬質の塩化 ビニール ・
パ イプ,長 さ2mの ものを木製 の台枠の上 に設置 して,
これをボア ・ホ ール と見倣 し,三 菱金属鉱業社製 のアノ
ローダ(商 品名ベ ス ト・チ ャージャー)を 使 用 し て,
硝 安プ リル及びAN-FOの 装填試験 を行なつた(第4
図)。
内径38mmの ボア ・ホールに長 さ4m,内 径17.7mm,
外 径26.2mmの 装填ホースでプ リル硝安 を装填 し,装 填
比 重を求 めてか ら後取出しe),タ イラーの標 準ふるいで
ふ るい分けし粒度分布 を求 めた。空気圧力 を4kg/cm2と
し,装 填 ホー スの先端 と硝 安の充填面 との距 離 を20,
30,40,50cm及 び60cmに 保 ちなが ら装填 した。装填
長 さは約1rnで あつた。
粒 度分布 のグラフは第5図 である。装填前のS社 の硝
安 は主 として直径2mm前 後のプ リルか らな り,M社 の
ものは1.5mm前 後の ものか らなつ てい るが,破 砕 され
た ものでは連続的 な粒度分布 を示 してい ることが知 られ
第5図 硝安の粒度分布
第4表 硝 安の平均粒度(50%粒 度)
*ホ ース先端か ら装填面 までの距離(cm)
る。積算量 の50%に 当る粒子のサイズを50%粒 度 と
呼んで,装 填 された ものの平均粒度 としたが,ホ ース先
端 と装填面 までの距離 が小 さ くな ると,破 砕 の度合が幾
分大き くなることが知 られ る(第4表)。 いずれ も,装 填
され破砕 された ものの粒度 は,粉 粒 混合AN-FOの 粒 度
よ りも細 かい。
2・2AN-FOの 装填試験
混合比94:6のAN-FOを 作 り,上 述 の装置(塩 化 ビ
ニール ℃パ イプのボア ・ホール)に 装填 し,装 填比重,
単位 時間当 り装填量,損 失量(装 填の際に,ボ ア ・ホー
ルの外へ噴き出して しま う量),空 気消費量等 につ い て
測定を行なつ た。変化 させた条件は,ボ ア ・ホール の直
径-塩 ビ管の内径32.5,38,45,50.5mmの もの を
使用-,装 填空気圧力,装 填 ホー スの先端 とAN-FO
装填面 までの距離等であ る。装填 に使用した装填 ホース
は内径17.7mmで あ るが,内 径15.7mmの ものも一部
の試験に用 いられた。ボア ・ホール としての塩 ビ管 は水
平 に置かれたが,ボ ア ・ホール の傾斜の影響 を調 べるた
めに,30°,60°,90° の傾斜 をつ けた試験 もわず かで あ
るが行なつた。なお,装 填 ホースの長 さも,AN-FOの
装填 には,大 きな影響 を及 ぼす ものと思われるが,今 回
第6図 装填可能量最小距離
第7図 装 填 比 重
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AN-FO発 破 に関 する基礎研究(第2報)
第8図 損失量 と装填面 まで の距離(L)
の実験では,4mで 一定であつ た。
2・2・1装 填ホースの先端 と装垣面までの距離:装 填
ホー スの先端 をAN-FOの 装填面 に近づけ過 ぎる と,噴
出す る空気(及 び プ リル)に よつ てAN-FOの 装填面が
崩 され,AN-FOは ボア ・ホール の外へ吹き出されて装
填で きな くなる。第6図 は,AN-FOが 装填で きる最小
距離 を空気圧力 について求 めたものであるが,こ の場合
では最小距離 は2kg/cm2の とき20cmで,空 気圧力の
上昇 と共に,わ ずかではあるが大 きくなる。空気圧力を
一定にして(4kg/cm2),装 填 ホー スの先端 から装填 面ま
での距離を変 えて装填 されたAN-FOの 比重 を測定した
結果 を第7図 に示 したが,直 径50.5mmの ボア ・ホール
に対す るものを除 くと,装 填 面までの距離の比重 に対す
る影響は見 られ ない。
装填面までの最小距離はボア ・ホールの径 に影響 され
る。第7図 の場合で も,ボ ア ・ホール径32.5mmの 場合
は,装 填 面までの距離10cmが 装填可能であ り,内 径
38,45mmに 対 しては20cm,内 径50.5mmに 対 しては
30cmが 最小距離であつた。
AN-FOを ボア ・ホールに装填す る場合,空 気 と共 に
ボアホー ルの外へ噴 き出 して,ボ ア ・ホールの中に装填
されず失われる量 を損失量 としたが,装 填ホースを装填
面 に近付 け過 ぎると損失量は大き くなる傾向にある。損
失量 の中には,AN-FOの 細か く破砕 された ものが,粉
霧状 となつて飛散して失 われ るものも含 まれ る。第8図
は損失量 と装填面か らの距離の関係を求 めたものである
第9図 損失量 と空気圧力
第10図 装 填 比 重
第11図
装填比重 と
ボ アホール
の直径
が,損 失量の測定 は,装 填 され たAN-FOの 量を秤量
し,装 填前のAN-FOの 量 との差 を求 めて行 なつてい る
ので,精 度は非常 に低い,し たが つて,こ の測定の結果
は,単 に傾 向を示 してい るに過 ぎない と言つて良い。
(第9図)。
2・2・2ボ ア ・ホ ールの直径の影 響:実 験回数等に観
限 されて,実 験 は空気圧力4kg/cm2あ るいは装填ホー
スを先端か ら装填面 までの距離40cmの ものが多 く行な
われ た。その結果 から,装 填 比重,単位時間当 り装填 量,
損失量等,い ずれ も装填 され るボア ・ホールの直径が影
響 してい るように思われ る。装填面 までの最小距離 もそ
うで あつたが,装 填比重について もボ ア ・ホールの径 の
影響が見 られる。
装填比重はボア ・ホール の径が小 さいほど大 き くな る
こ とが第10図,第11図 よ り明 らかである。
第12図 単位時問当 り装填量
72<6> 日本 鉱 業 会 誌
下村弥太郎 ・山 口梅太郎
第13図
単位時間当 り装
填 量とボアホド
ルの直径
2・2・3装 填ホースの直径 の影響:装 填 ホースは内径
17.7mm,外 径26.2mmの ものが大部分の実験に使用 さ
れたが,内 径15.7mm,外 径21.8mmの ものも一部の実
験 に使用 された。使用 ホースの直径 の影響が顕著に現れ
たのは単位時間当 り装填量 についてで,第12図 に明 らか
な ように,内 径17.7mmの ホー スに よる単位時間 当 り装
填 量は,内 径15.7mmの それ の2倍 の値 を示 してい る。
ただ,ホ ース径17.7mmの 場合,ボ ア ・ホール径32.5
mmに 対す る装填量は,そ れ よ り大 きい直径 のボ ア ・ホ
ールに対 して はつ き りと小 さな値 を示 した。この場合の
ホース外径 とボア ・ホール内径 との差,す なわちク リア
ランスは,半 径で7.4mmあ る。 しかし,第13図 か ら
は,装 填 ホー スとボア ・ホールの クリアランスとの間に
ある関係 を求め ることはできなかつた。空気圧力の影響
も3kg/cm2以 上 ならばほ とんど見られ ない。2kg/cm2
の場合 に多少装填量が小 さ くなつている。
2・2・4ボ ア ・ホールの傾斜の影響:ボ ア ・ホールの
傾斜 の影響 を調べ るために,塩 化 ビニール 管 を30°,
60°,90° の傾斜で上 向きに設置 してAN-FOを 下か ら
上 へ向けて装填す る実験 を行なつた。ボア ・ホールの直
径 は32.5,38,45mmで,ホ ース内径は17.7mmで あ
つた。
実験 の結果か ら見 ると,装 填 されたAN-FOに ついて
み ると,傾 斜 め影響はほ とんどみ られず,ボ ア ・ホール
が水平の場合 と同 じである とい うこと が で き る。ただ
し,こ れは装填 された ものにつ いてであつて,ボ ア ・ホ
ールの傾斜 の影響は,特 にボア ・ホールの直径が大 き く
な るとAN-FOの 装填が困難 になる,と い う形 で現れ
る。 これ をま とめると第5表 になる。この場合の試験空
気圧力Pは2~6kg/cm2,装 填 ホー ス先端 と装填面 まで
の距離Lは20~100cmで あつた。
この表か ら判断す ると,ボ ア ・ホールの角度が大 き く
なると,AN-FOに 重力が作用 するので,こ れに対抗 で
きる強 さでAN-FOが ボア ・ホール に装填 され る。す な
わ ち傾斜が大 きくなる程圧 し付けて装填 され る必要があ
第5表 ボ ア ・ホ ール(ビ ュー ル管)の 傾 斜 の影 響
る。 しかし,他 方で,装 填 面が崩 されない ようにす る必
要 もある。このバ ランスが とれ ないと装填が不可能 にな
ることが考え られ る。傾斜孔の直径が大 き くなるほど,
このバ ランスはと りに くいこ とが知 られ る。
実際の岩石 のボア ・ホールに対 しては,ボ ア ・ホール
内面の平滑の度合,水 分の影響 などか ら,傾 斜 による装
填 の難易の問題 は,上 の結果 とは異 なつた ものになると
思われる。
2・2・5空 気消費量:以 上 の全実験 を通じて装填 の際
の空気消費量の測定 を行なつたが,測 定器 の容量が大 き
過 ぎて測 定の精度は低かつた。測定の精度の関係 もある
.が,空 気圧力に対す る空気消費量 が,空 気圧 力2kg/cm念
で消費量約1.1m3/min,空 気圧力が3kg/cm2か ら6kg/
cm2に 上昇する と,消費量が1.4m3/廊 登か ら1.7m3/min
に増加す る傾 向が見 られた外は,は つ き りした傾 向が見
られ なかつた。装填ホースの直径 の違いに対 しても,消
費空気量に差 が見 られなかつた。
2・3装 填試験のま とめ
実験回数の限度 などか ら,考 えられ る全ての条件 につ
いて広い実験が行なえなかつた うらみが あるが,次 のよ
うな結果を得 ることができた。
1.装 填比重 は,装 填 されるボア ・ホールの径 が小 さ
いほ ど大き くなる。
2..装 填ホースの先端 と装填面 までの距離は,空 気圧
力が低いほ ど,ボ ア ・ホールの径 が小 さいほ ど小 さくす
ができる。そして,わ ずかではあるが,こ の距離が小 さ
るこ といほ ど,硝 安 プ リルの破砕 度は大 き くな る。
3.装 填ホースの先端 と装填面 までの 距 離 が 小 さ い
程,ボ ア ・ホール の口か ら吹 き出 され て失なわれるAN-
FOの 量は多 くなる。
4.単 位時問当 りの装填量は,装 填 ホースの径 に決定
的に支配 され る。このことは,ホ ースの径が 小 さ い 場
合,長 さが長い場合,す なわ ちホースの抵抗が大きい場
合 に装填 が不可能になる とい う,現 場 での実際の使用経
験 とも関連 がある。恐 らく装填ホースの長 さも,こ れに
関係 すると考え られるが,今 回は実験 できなかつた。
5.上 向き孔の場合,特 にボ ア ・ホール の直径が大き
い場合 には,空 気圧 力の大 きさと装填 ホースの先 と装填
面 までの距離 を,う ま くバ ランスさせて装填す る必要が
Vol.8 No.921 ('65-2) 73<7>
AN-FO発 破 に関する基礎研究(第2報)
ある。
6.空 気消費量については空気消費量が,空 気圧力の
増加 と共に増大す るとい うことの他は,は つ き りした傾
向がつかめなかつた。
ボア ・ホール に装填 ホースでAN-FOを 装填す る場合
に見 られるいろい ろの現象 は,ホ ースの先端 と装薬 との
問,ホ ース とボ ア ・ホール との間の空間に生ず る空気 の
流れの問題 とな り,こ の空気 の流れによつて 運 動 す る
AN-FOプ リルの行動-移 動,破 砕,付 着,吹 き出し,
等-が 関係す る。したがつ て,こ の問題 は非常に複雑
で,実 際に使用すべきホースの径,長 さ,空 気圧力,装
填 のテ クニ ック等 は,実 験的 に定 められる性質 であ るよ
うに思われ る。
お わ り に
最近のプ リル状硝安を使用 したAN-FOに 関して,そ
の性能 と圧縮空気 による装填 の2つ の基礎 的な問題 を研
究 した。AN-FOに ついては,筆 者等 もその啓発 に微力
をつ くしてきたが6),よ うや くその良 さが認 められて き
た と思われ る。今後 は,ひ とりAN-FOの みでな く,こ
うした新技術 の長所 を活かし,発 展 させてい く態勢 を築
くよう努力しなくてはならない。
本研究に当つて,現 場実験に多大の御協力を賜つた日
鉄鉱業,西 脇三樹雄鉱山部長,塚 越正勝八茎鉱業所長は
じめ八茎鉱業所の各位,並 びにプリル状硝安の供給に御
骨折りいただいた住友化学工業,三 菱化成工業の各位
に,深甚なる謝意を表する。
併せて,東 京大学工学部資源開発工学科(当 時鉱山学
科)学 生,斎 藤真人君,下 村重孝君,同 岩石工学実験室
(当時採鉱学実験室)の 宮崎道雄君,森 田道明君の協力
を感謝する。
参 考 文 献
1) 下村 弥太郎: AN-FO発 破に関す る基礎研究, 日 本鉱業会誌・昭和
37年9月 号, 640~648頁
2) 日本 鉱業協会, 石灰石鉱業協会: AN-FOの 鉱山 にお ける発破試 験,
昭和38年3月31田
3) 山口梅太郎: ア メリカ・カナダにおけ るAN-FO混 合剤 につ いて,
鶏本鉱業会誌, 昭掬39年6月 号, 517~520頁
4) 日本産業火薬会硝油爆薬委員会: 硝油爆薬の性能 につい て, 昭 和38
年5月
工業技術院: AN-FO爆 薬に関す る試験 結果, 昭 和38年11月
5) Norman M. Junk: Research on Primers for Blasting Agen-
ts, Mining Congress Jnl., April 1964, pp.98•`101
6) 下村弥太郎: AR-FO爆 剤 とその発破法, トンネル工学 シ ジーズ2
・最近の トンネル工学, 土木学会, 昭和39年8月, 99~115頁
石炭の粉化防 止装置
チ ップ ラーで 炭 車 を 空 け る際 に,
石 炭 の 粉化 を 防 ぐ装 置 が 英 国Rh-
ymney Engineening Co.Ltd.に よ
り製 作 され た。 こ の装 置 は 溝造 が 簡
単 で360° 回転 チ ップ ラ ーに容 易 に
と りつ け る こ とが で き る。 石 炭 は炭
車 の外 へ は投 げ 出 され ず,だ ん だ ん
に チ ップ ラー シ ュー トに沿 つ て徐 々
に 降 下 す る よ うに なつ て い る。
この装 置 は 粉 化 防 止 板 の役 を す る
丈 夫 な ピボ ッ トを備 え た ピボ ッ ト ・
バ ケ ッ トか ら成つ て お り,こ れ が チ
ップ ラ 戸本体 の 一方 の側 に 取 付 け ら
れ てい る(図-1)。
粉 化 防 止板 は全 長 にわ た つ て適 当
に補 強 して あ り,自 由端 は 櫛 状 に な
つ てい る。 この板 は150mmφ 車 輪
で 弾性 的 に支 持 され て い るが,こ の
イ,停止状態
2.チップラが
90°回転 した
ときの状態
3.粉 化防止板が
チップラシュードかう
〓れようとする瞬間
4.粉 化防止板 が
シュート面より〓れ石炭が排 出される状態
車 輪 は ロ ー ラ ・ベ ア リン グ と丈 夫 な
合 成 ゴム の踏 面 を もつ てい る ので 寿
命 も長 く運 転 時 の騒 音 も少 ない 。
チ ップ ラ ーが 回転 を 始 め る と石 炭
は粉 化 防 止 板 と炭 車 の 間 に形 成 され
る ポ ケ ッ ト中 に ごぼ れ落 ち,自 由落
下 す る ことは な い(図-2)。 回転 に
つ れ て車 輪 は カ ーブ した シ ュー ト面
に 沿 つ て動 くが,石 炭 の大 部分 は 依
然 粉 化 防 止板 に支 え られ て い る。し
か し粉 炭 は この板 の櫛 状 端 の 隙 間 か
ら下 に落 ち,チ ップ ラ ーの 下 の
フ ィーダ や コンベ ヤ上 にあ らか
じ め ク ッ シ ョン を形 成 す る(図-
3)。
チ ップ ラ門 の 回転 が 進 む につ
れ て,粉 化 防 止板 は石 炭 を徐 々
に シ ュー トの方 に 下 して い く。
この 下 降作 用 は 板 が チ ップ ラシ
ュー ト面 と約90° に な る まで 行
な わ れ る 。 こ の点 以 上 に 回転 が
進 む と,板 の端 が シ ュー ト面 か
ら離 れ,石 炭 が シ ュ ー ト面 に沿
つ て す べ り落 ち る(図-4)。 こ
の粉 化 防 止板 は チ ップ ラ ーが 回
転 を完 了 す る以前 に,ガ イ ド装
置 に よ り正 常 の 引込 んだ 位 置 に
もど る(図-1)。(広 部 良 輔)
("Anti-breakage Device" Colliery
Engineering, May 1964, 194 ‚æ‚è)
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