ap shuntとの鑑別診断...16 微小肝細胞癌の診断 - ap shuntとの鑑別-...

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15 肝細胞癌の診断, 経過観察にはダイナミックCTが施行されることが 多いが, 血流による診断のため, 本症例のように経皮的治療が施行された 場合にはshuntを生じることが多く , 診断に苦慮することも少なくない. SPIO造影MRIで病変の同定が可能な場合もあるが, ダイナミックCT あるいは細胞外液性ガドリニウム造影剤によるMRI と併せての診断と なる. EOB ・プリモビスト造影MRI 1回の検査で血流情報と肝細胞 の情報を得ることが可能であり, 再発の有無などの診断を迅速に行う ことが可能である. また, 肝細胞造影相ではCTで指摘できない小さな 病変を指摘できることも多く , 有用な検査である. 従来のダイナミックMRIではダイナミックCT と同様, 動脈相(造影早期 相)の濃染像だけでは, shuntなど偽病変と肝細胞癌再発との鑑別が 困難な症例が臨床上少なくない. エコー検査では近傍に既治療痕が ある場合, 病変の描出, 同定が困難となることが多い. 本症例ではエコー検査やダイナミックCTでは診断に至らなかったが, EOB ・プリモビスト使用のMRI 検査で肝細胞癌再発の診断が可能で あった. 本症例のように, EOB ・プリモビスト使用のMRI検査では治療を要 する腫瘍と要さない偽病変の鑑別がより明確になることが多い. この検査 による病変検出能・質的診断能向上が治療方針決定へ与えるインパクトは 大きく , 今後も有用性が高まると考えられる. また, 必要以上の頻回の経過 観察検査や治療を避けることにもつながることから, 患者の負担軽減の 観点でもメリットがあると思われる. EOB ・プリモビストの診断へのインパクト 再発肝細胞癌と AP shunt との鑑別診断 動脈相(a)では12mm大の早期濃染を認める(  )が, 平衡相(bでは病変指摘が困難である. 経皮的治療を施行されていることもあり, shuntによる変化との鑑別は困難である. MDCT MRI 明石市立市民病院 放射線科 鷲尾 哲郎 先生(現 姫路医療センター 第二放射線科) , 杉浦 一弘 先生, 門澤 秀一 先生 肝臓内科 森川 輝久 先生(現 医療法人 仁愛会 田畑胃腸病院 消化器内科) , 奥野 道子 先生 【症例背景とMRI検査の目的】 60歳代 男性. 本症例は, B型肝硬変に伴う肝実質エコーの粗雑化と肝細胞癌に対するPEIT, RFAによる既治療痕によりエコー検査での病変同定が 難しく , またダイナミックCTでも早期濃染のみ認められ, shunt等の偽病変か肝細胞癌再発かの鑑別が困難であったため, CT検査より約1カ月後, EOB ・プリモビストを用いたMRI検査を施行した. EOB ・プリモビスト造影MRI 動脈相(e)では濃染を認め, 投与後3分(f)では周囲肝実質より低信号となっている( . 投与後20分の肝細胞造影相(g)でも低信号となっており( , 肝細胞癌の再発と診断できる. CTで指摘された病変と一致してT2強調画像(c)で高信号, T1強調画像 d)で低信号の領域を認める(  ) . EOB ・プリモビストの治療へのインパクト a)動脈相 b)平衡相 cT2強調画像 d)造影前T1強調画像 e)動脈相 f)投与後3g )肝細胞造影相(投与後20分)

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Page 1: AP shuntとの鑑別診断...16 微小肝細胞癌の診断 - AP shuntとの鑑別- 動脈相(a)では, 肝S4に5cm大の増強される腫瘤が認められる( ).中心部には壊死や瘢痕と思われる低吸収域を伴う

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原発性肝癌

原発性肝癌

転移性肝癌

良性病変

補 

 肝細胞癌の診断, 経過観察にはダイナミックCTが施行されることが多いが, 血流による診断のため, 本症例のように経皮的治療が施行された場合にはshuntを生じることが多く, 診断に苦慮することも少なくない. SPIO造影MRIで病変の同定が可能な場合もあるが, ダイナミックCTあるいは細胞外液性ガドリニウム造影剤によるMRIと併せての診断となる. EOB・プリモビスト造影MRIは1回の検査で血流情報と肝細胞の情報を得ることが可能であり, 再発の有無などの診断を迅速に行うことが可能である. また, 肝細胞造影相ではCTで指摘できない小さな病変を指摘できることも多く, 有用な検査である.

 従来のダイナミックMRIではダイナミックCTと同様, 動脈相(造影早期相)の濃染像だけでは, shuntなど偽病変と肝細胞癌再発との鑑別が困難な症例が臨床上少なくない. エコー検査では近傍に既治療痕がある場合, 病変の描出, 同定が困難となることが多い. 本症例ではエコー検査やダイナミックCTでは診断に至らなかったが, EOB・プリモビスト使用のMRI検査で肝細胞癌再発の診断が可能であった. 本症例のように, EOB・プリモビスト使用のMRI検査では治療を要する腫瘍と要さない偽病変の鑑別がより明確になることが多い. この検査による病変検出能・質的診断能向上が治療方針決定へ与えるインパクトは大きく, 今後も有用性が高まると考えられる. また, 必要以上の頻回の経過観察検査や治療を避けることにもつながることから, 患者の負担軽減の観点でもメリットがあると思われる.

EOB・プリモビストの診断へのインパクト

再発肝細胞癌とAP shuntとの鑑別診断

動脈相(a)では12mm大の早期濃染を認める(  )が, 平衡相(b)では病変指摘が困難である. 経皮的治療を施行されていることもあり, shuntによる変化との鑑別は困難である.

MDCT MRI

明石市立市民病院放射線科 鷲尾 哲郎 先生(現 姫路医療センター 第二放射線科), 杉浦 一弘 先生, 門澤 秀一 先生肝臓内科 森川 輝久 先生(現 医療法人 仁愛会 田畑胃腸病院 消化器内科), 奥野 道子 先生

【症例背景とMRI検査の目的】60歳代 男性. 本症例は, B型肝硬変に伴う肝実質エコーの粗雑化と肝細胞癌に対するPEIT, RFAによる既治療痕によりエコー検査での病変同定が難しく, またダイナミックCTでも早期濃染のみ認められ, shunt等の偽病変か肝細胞癌再発かの鑑別が困難であったため, CT検査より約1カ月後, EOB・プリモビストを用いたMRI検査を施行した.

EOB・プリモビスト造影MRI

動脈相(e)では濃染を認め, 投与後3分(f)では周囲肝実質より低信号となっている(  ).投与後20分の肝細胞造影相(g)でも低信号となっており(  ), 肝細胞癌の再発と診断できる.

CTで指摘された病変と一致してT2強調画像(c)で高信号, T1強調画像(d)で低信号の領域を認める(  ).

EOB・プリモビストの治療へのインパクト

a)動脈相 b)平衡相 c)T2強調画像 d)造影前T1強調画像

e)動脈相 f)投与後3分 g)肝細胞造影相(投与後20分)

Page 2: AP shuntとの鑑別診断...16 微小肝細胞癌の診断 - AP shuntとの鑑別- 動脈相(a)では, 肝S4に5cm大の増強される腫瘤が認められる( ).中心部には壊死や瘢痕と思われる低吸収域を伴う

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微小肝細胞癌の診断 - AP shuntとの鑑別 -

動脈相(a)では, 肝S4に5cm大の増強される腫瘤が認められる(  ). 中心部には壊死や瘢痕と思われる低吸収域を伴う.肝S3背側には辺縁部に斑状の増強域を複数示す結節があり(  ), 肝S5被膜下には楔状の小さな増強域がみられる(  ).平衡相(b)では, 肝S4の腫瘤は全体に低吸収を呈している(  ). 一方, 肝S3背側の結節は全体が淡い高吸収域として描出される(  ).肝S5被膜下の増強域は肝実質と比較して等吸収となり, 検出できない.これらの所見から, 肝S4の腫瘤は肝細胞癌(  ), 肝S3背側の結節は血管腫(  )と診断されたが, 動脈相にて描出された肝S5被膜下の増強域は, 肝細胞癌とAP shuntとの鑑別が困難である(  ).

MDCT

MRI

九州大学臨床放射線科 西江 昭弘 先生, 田嶋 強 先生(現 東京女子医科大学 画像診断学・核医学講座), 石神 康生 先生牛島 泰宏 先生(現 国立国際医療研究センター 放射線科), 柿原 大輔 先生, 岡本 大佑 先生(現 済生会福岡総合病院 放射線科), 本田 浩 先生消化器・総合外科 武冨 紹信 先生 / 形態機能病理 藤田 展宏 先生

【症例背景とMRI検査の目的】80歳代 男性. 動悸の精査中に偶然, 超音波検査にて肝腫瘤が指摘された.慢性肝炎の既往はなかった. 肝細胞癌が疑われ, CT検査より3日後に術前のstagingを目的としてEOB・プリモビスト造影MRI検査を施行した.

T2強調画像(c)では, 肝S4の腫瘤は肝実質よりやや高信号を呈し(  ), 中心部には壊死や瘢痕と思われる高信号域を伴う.肝S3背側の結節は強い高信号を呈している(  ). 肝S5被膜下には明らかな異常信号域は認めない.拡散強調画像(d)では, 肝S4の腫瘤, 肝S3背側の結節ともに高信号域として描出される(  ,  ). 肝S5被膜下には高信号域は認めない.動脈相(e)では, 肝S4の腫瘤は中心部を除いて増強される(  ). 肝S3背側の結節にも辺縁部を中心とした斑状の増強域がみられる(  ). 肝S5被膜下にもdynamic CTと同様に楔状の小さな増強域がみられる(  ).肝細胞造影相(f)では, 肝S4の腫瘤, 肝S3背側の結節ともに明瞭な低信号域として描出される(  ,  ). 肝S5被膜下にも境界明瞭な小低信号域を認める(  ).これらの所見から, MDCTの結果と同様に肝S4の腫瘤は肝細胞癌(  ), 肝S3背側の結節は血管腫(  )と診断され, 動脈相にて描出された肝S5被膜下の高信号域は肝細胞癌と診断できる(  ).

スライス断面①

a)動脈相 b)平衡相

EOB・プリモビスト造影MRIc)T2強調画像 d)拡散強調画像 e)動脈相 f)肝細胞造影相

Page 3: AP shuntとの鑑別診断...16 微小肝細胞癌の診断 - AP shuntとの鑑別- 動脈相(a)では, 肝S4に5cm大の増強される腫瘤が認められる( ).中心部には壊死や瘢痕と思われる低吸収域を伴う

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原発性肝癌

原発性肝癌

転移性肝癌

良性病変

補 

 本症例は1箇所の肝内転移(肝S5被膜下)を伴った肝細胞癌(肝S4)の症例であった. Dynamic CTでみられた右葉の2箇所の早期濃染域の質的評価に, 肝細胞造影相が非常に有用であった症例である. すなわち, 肝S5被膜下の病変は明瞭な結節状のEOB・プリモビストの取り込み低下域として描出され, 肝内転移と診断されるのに対して, 右葉上部の早期濃染域にはEOB・プリモビストの取り込みがみられ, AP shuntと診断される. 実際に肝S5被膜下の病変は病理学的に肝細胞癌と診断され, 術中USでは右葉上部に結節を指摘できなかった.

 EOB・プリモビスト造影MRIは, dynamic CTで診断が難しい小病変の質的診断に大きな役割を担い, 適切な術式の選択に寄与するものと考えられる. 一方, 肝S3の病変は血管腫である. 本症例のようにEOB・プリモビスト投与後の動脈相や門脈相で典型的な造影パターンを示す場合は診断が容易であるが, 肝細胞造影相では大部分が低信号を呈するため, この相のみでは他の腫瘍と鑑別することができない. そのためT2強調画像の信号を参照しながら評価をする必要がある.

まとめ

スライス断面②(スライス断面①よりも頭側の断面)

動脈相(a)では右葉上部にも小さな結節状の早期濃染域がみられるが(  ), 平衡相(画像未提示)では等吸収であった.これらの所見からは, 肝細胞癌とAP shuntとの鑑別は、困難である.

MDCT

MDCTの動脈相(a)にて右葉上部にみられた小さな早期濃染域に一致した低信号域は, EOB・プリモビスト造影MRIの肝細胞造影相(b)を含むいずれのダイナミック相でも認められない. したがって、 AP shuntと診断できる.

EOB・プリモビスト造影MRI

a)動脈相

b)肝細胞造影相

各矢印とMRI所見による診断結果

: 肝細胞癌, : 肝細胞癌, : 血管腫, : AP shunt

■ 使用上の注意4. 高齢者への投与 一般に高齢者では生理機能が低下しているので , 患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること .

Page 4: AP shuntとの鑑別診断...16 微小肝細胞癌の診断 - AP shuntとの鑑別- 動脈相(a)では, 肝S4に5cm大の増強される腫瘤が認められる( ).中心部には壊死や瘢痕と思われる低吸収域を伴う

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 その後, 手術により肝S8の腫瘍は中分化型肝細胞癌と診断された. また, 術中超音波による検索では肝S7/8の末梢に腫瘤は認められなかった. EOB・プリモビスト投与後のダイナミック検査では血流動態を把握することができる. 典型的な肝細胞癌では早期濃染と後期相の洗い出し(washout)が特徴的であり, 本例でもこれらの所見が認められた. さらに肝細胞造影相の追加により病変が明瞭な低信号として描出され, 検出能の向上につながると考えられる.

 一方, 肝細胞癌の診断においては血流異常などの偽病変が問題となる. EOB・プリモビストは肝細胞に取り込まれるため, 血流動態だけでは判断に苦慮した偽病変の除外が可能となった. 以上のように, EOB・プリモビストは今後の肝腫瘤診断におけるgold standardの造影剤として期待される.

まとめ

肝細胞癌と血流異常との鑑別診断

動脈相(a)において肝S8(  )に径約2cm大の濃染する腫瘤が認められた. 肝S7/8末梢(  )には楔状の濃染域がみられた.平衡相(b)では, 肝S8の腫瘤は造影効果のwashoutが認められ肝細胞癌と診断された. 肝S7/8末梢部分にはwashoutが認められず血流異常が疑われたが, 手術を考慮し精査が必要と考えられた.

MDCT

MRI

山口大学大学院医学系研究科放射線医学 田辺 昌寛 先生, 藤田 岳史 先生, 松永 尚文 先生

【症例背景とMRI検査の目的】70歳代 男性. C型慢性肝炎があり, PIVKA-Ⅱ上昇(7,900mAU/mL)が認められ, 超音波検査で肝S8に径約2cm大の腫瘤が指摘された. 肝細胞癌の病期分類のため, CT検査およびMRI検査を実施した. CT検査とMRI検査の間隔は18日であった.

EOB・プリモビスト造影MRI

肝S8の腫瘤(  )は, EOB・プリモビスト造影MRIの動脈相(e)で周囲肝実質よりも強く染まり, 門脈相(f)から平衡相(g)にかけてwashoutされた. 肝細胞造影相(h)では信号が著しく低下し, 周囲との境界が明瞭になった.一方, 肝S7/8末梢において, 動脈相(e)で楔状の濃染域(  )がみられるが, 肝細胞造影相(h)では周囲肝実質と同程度の信号を呈し, 血流異常と診断できた.

肝S8の腫瘤(  )は, 造影前のT1強調画像(c)では低信号である. また, T2強調画像(d)において腫瘤は周囲肝実質と比較して高信号で, 内部はやや不均一であった.

a)動脈相 b)平衡相

c)造影前T1強調画像 d)T2強調画像FSE

e)動脈相 f)門脈相 g)平衡相 h)肝細胞造影相

■ 使用上の注意4. 高齢者への投与 一般に高齢者では生理機能が低下しているので , 患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること .

Page 5: AP shuntとの鑑別診断...16 微小肝細胞癌の診断 - AP shuntとの鑑別- 動脈相(a)では, 肝S4に5cm大の増強される腫瘤が認められる( ).中心部には壊死や瘢痕と思われる低吸収域を伴う

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原発性肝癌

原発性肝癌

転移性肝癌

良性病変

補 

 日本ではCT機器の高い普及率から, 造影ダイナミックCT検査が施行されることが多く, 日常診療では特に慢性肝疾患を背景とした多血性結節の鑑別を行うことが多い. 多血性結節のうち, 動脈相/平衡相で濃染/washoutを示す典型的な肝細胞癌や楔形濃染, 末梢門脈枝早期描出などを示すAP shuntではその診断は問題とはならないが, 円形濃染を示し, 平衡相でwashout所見のはっきりしない多血性結節の診断は苦慮する場合が多く, 経過観察や生検精査になる結節も少なくない. EOB・プリモビスト造影MRIでは, 動脈相で多血性結節を鋭敏に検出することに加えて, 肝細胞造影相で非常に高い特異度の存在診断能を有するため, 両者の鑑別に有用性が高い.

 本症例でも, 経過観察をすることなく, 両者を明確に鑑別することが可能であったため, 早期に治療を開始することができた. EOB・プリモビストの投与量(体重別投与あるいは最大量投与), 投与速度, 撮影タイミング(fluoro-trigger法併用等)などの至適撮像法についてはさらに検討していく必要があるが, MRIでは被曝がない, EOB・プリモビスト造影では上記のように血流に影響されない高い特異度の存在診断能を有する, 高分化型肝細胞癌がCTAPで所見を示すより早期に低信号結節として描出されるなどの様々な利点があることから, 今後は慢性肝疾患の精密検査の第一選択となる可能性がある.

まとめ

肝細胞癌とAP shuntの鑑別

動脈相(a)では, 肝S7辺縁に濃染を示す長径17mm大の多血性結節(  )を認める. 平衡相(b)では, 同結節は周囲肝とほぼ等吸収を示し, washout所見ははっきりしない. なお, 背景肝には肝左葉外側区腫大, 肝縁鈍化, 肝表面凹凸不整, 脾腫などの肝硬変による一連の所見がみられる.

MDCT

MRI

杏林大学医学部付属病院放射線科 原留 弘樹 先生, 似鳥 俊明 先生

【症例背景とMRI検査の目的】60歳代 男性. 慢性C型肝硬変経過観察中の定期造影ダイナミックCT検査にて, 肝S7に動脈相で濃染する多血性結節を認めたが, 平衡相でのwashout所見がはっきりしないため, AP shuntと肝細胞癌の鑑別目的にて, EOB・プリモビスト造影MRI検査を施行した.

EOB・プリモビスト造影MRI

肝S7辺縁部の結節(  )は, EOB・プリモビスト造影ダイナミックMRIの動脈相(f)では濃染し, 肝細胞造影相(g)では明瞭な低信号を示していることから, 肝細胞癌と診断できる. また, 拡散強調画像で疑われた肝S4の結節(  )は, 動脈相(f)で上記結節と同様に濃染を示すが, 肝細胞造影相(g)では周囲肝と等信号となっていることから, AP shuntと診断できる.

T1強調画像(c)では, 結節は指摘できない. T2強調画像(d)では, 肝S7辺縁部にごくわずかに高信号を示す結節(  )がみられ, 拡散強調画像(e)では, 同結節(  )が異常信号(高信号)を示している. また, 拡散強調画像(e)では, 肝S4にも長径4mm大の異常信号(高信号)結節(  )が疑われる.

a)動脈相 b)平衡相

d)T2強調画像 e)拡散強調画像(白黒反転表示)

f)動脈相 g)肝細胞造影相

メディカルサテライト八重洲クリニック放射線科 田渕 隆 先生

c)造影前T1強調画像