株式会社 森のともだち農園 - maff.go.jp · 料理の基礎や、郷土料理の...

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株式会社 森のともだち農園 活動のきっかけは・・・ (森 代表の食育への思い) さいさいきて屋 【団体の概要】 称:株式会社 森のともだち農園 代表者:代表取締役 智子 所在地:愛媛県今治市玉川町龍岡上363 連絡先:(0898552427 株式会社 森のともだち農園は、中山間地域で 過疎化が進む中、地域に特産品を作りたいという 思いと、地域の自然や食文化を伝えたいという思い から、平成16年に立ち上げました。 農園では、マコモタケ、ブルーべリーの栽培、 体験教室、子どもを対象とした自然体験などの活 動に取り組んでいます。 また、JAおちいまばりが運営する直売所「さい さいきて屋」の一角にあるクッキングスタジオで、 食育や料理教室をプロデュースするなど幅広く活 動しています。 JAおちいまばりは、平成 19年に、国道196号線沿 いに、地元農林水産物の 直売所「さいさいきて屋」をオープンしました。 直売所へ出荷する生産者は1300名を超え、連日、県 内外を問わず多くの来店客で賑わっています。 店舗には、地元今治産の農林水産物の直売、直売所 に持ち込まれた農林水産物を使った 食堂やカフェ、地元産品を使った加工 品等のほか、クッキングスタジオや農産 物の生産過程を直に見ることができる 農園も併設しています。 こんな活動をしています 森のともだち農園の主力品は、 「マコモタケ」と「媛ベリー」です。 地域に特産品を作りたいと取り 組んだ栽培でしたが、取組当初は、 商品化や販売方法に、かなり苦労 しました。 10年経った頃に愛媛県の地域 資源として認めていただきました。 マコモタケは、今治市が取り組む 地産地消週間と収穫期が重なるた め、地域の特産品として学校給食 の食材にも使用されています。 次世代を担う子どもたちには、食べ 物が大事だと言うこと。食べ物がきち んとしていて、小さい頃から愛情をかけて育てた 子どもは本当にいい子に育つ。少々道を外しても心 に故郷を持っていることは、食に繋がっていると 思っています。故郷を思い出すのは、お母さんが 握ってくれたおにぎりだったり。そういう心を持って いる子どもに育ててやりたいという思いがありまし た。 また、地域活性化のために10年ほどイベントなど を手がけましたが、地域に産業は育たず活性化も しませんでした。そ こで地域に突拍子も ないものを持ってく るよりも、何か地域 に根付くもので今治 が活性化しないか との思いをもって活 動を始めました。 ALT(外国語指導助手:Assistant Language Teacherの略。 小中高校などの英語の授業で日本人教師を補佐し、生きた英語を子ども たちに伝える英語を母語とする外国人。 「ものづくり・人づくり・町 づくり」を基本理念に、地域 の特産品を作りたくて始めた 農園です。 農園では、自然の中での農 産物の収穫やジャム作り体験、 子どもたちを対象として、災害 などに遭ったときに、自らが調理できる術を覚えて いてほしいとの願いから、川遊び、火おこし、かまど 作りなどの体験教室を行っています。 食文化や郷土料理などの調理体験は、さいさい きて屋のクッキングスタジオで、月15講座程度行う 講座はすべて企画し、自ら講師を務めたり、企画し た講座に合う多彩な講師(生産者、野菜ソムリエ、 食育マイスター、市内のALTなど)を迎えて開い ています。 また、地元小学校での郷土料理教室の講師や食 育講座をはじめ、地域活性化のための活動や食文 化、郷土料理をホームページで紹介し、継承して いこうという取組も始めています。 -34-

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Page 1: 株式会社 森のともだち農園 - maff.go.jp · 料理の基礎や、郷土料理の 「いわれ」などを伝授! 大人向けの講座は、魚の捌き 方など基本的なことから、四季折々の食材を用い

株式会社 森のともだち農園

☆ 活動のきっかけは・・・ (森 代表の食育への思い)

さいさいきて屋

【団体の概要】 ◆ 名 称:株式会社 森のともだち農園 ◆ 代表者:代表取締役 森 智子 ◆ 所在地:愛媛県今治市玉川町龍岡上363 ◆ 連絡先:(0898)55-2427

株式会社 森のともだち農園は、中山間地域で過疎化が進む中、地域に特産品を作りたいという思いと、地域の自然や食文化を伝えたいという思いから、平成16年に立ち上げました。 農園では、マコモタケ、ブルーべリーの栽培、体験教室、子どもを対象とした自然体験などの活動に取り組んでいます。 また、JAおちいまばりが運営する直売所「さいさいきて屋」の一角にあるクッキングスタジオで、食育や料理教室をプロデュースするなど幅広く活動しています。

JAおちいまばりは、平成 19年に、国道196号線沿 いに、地元農林水産物の 直売所「さいさいきて屋」をオープンしました。 直売所へ出荷する生産者は1300名を超え、連日、県内外を問わず多くの来店客で賑わっています。 店舗には、地元今治産の農林水産物の直売、直売所 に持ち込まれた農林水産物を使った 食堂やカフェ、地元産品を使った加工 品等のほか、クッキングスタジオや農産 物の生産過程を直に見ることができる 農園も併設しています。

☆ こんな活動をしています

森のともだち農園の主力品は、 「マコモタケ」と「媛ベリー」です。 地域に特産品を作りたいと取り 組んだ栽培でしたが、取組当初は、 商品化や販売方法に、かなり苦労 しました。 10年経った頃に愛媛県の地域 資源として認めていただきました。 マコモタケは、今治市が取り組む 地産地消週間と収穫期が重なるた め、地域の特産品として学校給食 の食材にも使用されています。

次世代を担う子どもたちには、食べ 物が大事だと言うこと。食べ物がきち んとしていて、小さい頃から愛情をかけて育てた子どもは本当にいい子に育つ。少々道を外しても心に故郷を持っていることは、食に繋がっていると思っています。故郷を思い出すのは、お母さんが握ってくれたおにぎりだったり。そういう心を持っている子どもに育ててやりたいという思いがありました。 また、地域活性化のために10年ほどイベントなどを手がけましたが、地域に産業は育たず活性化も しませんでした。そ こで地域に突拍子も ないものを持ってく るよりも、何か地域 に根付くもので今治 が活性化しないか との思いをもって活 動を始めました。

*ALT(外国語指導助手:Assistant Language Teacherの略。 ) 小中高校などの英語の授業で日本人教師を補佐し、生きた英語を子どもたちに伝える英語を母語とする外国人。

「ものづくり・人づくり・町 づくり」を基本理念に、地域 の特産品を作りたくて始めた 農園です。 農園では、自然の中での農 産物の収穫やジャム作り体験、 子どもたちを対象として、災害などに遭ったときに、自らが調理できる術を覚えていてほしいとの願いから、川遊び、火おこし、かまど作りなどの体験教室を行っています。 食文化や郷土料理などの調理体験は、さいさい きて屋のクッキングスタジオで、月15講座程度行う講座はすべて企画し、自ら講師を務めたり、企画した講座に合う多彩な講師(生産者、野菜ソムリエ、食育マイスター、市内の*ALTなど)を迎えて開いています。 また、地元小学校での郷土料理教室の講師や食育講座をはじめ、地域活性化のための活動や食文化、郷土料理をホームページで紹介し、継承していこうという取組も始めています。

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Page 2: 株式会社 森のともだち農園 - maff.go.jp · 料理の基礎や、郷土料理の 「いわれ」などを伝授! 大人向けの講座は、魚の捌き 方など基本的なことから、四季折々の食材を用い

☆ 活動のひとこま

さいさいきて屋のクッキングスタジオで取り組んでいる食育活動をご紹介します。

株式会社 森のともだち農園

心を込めて、 “むすび” ます

おむすびのご飯は、 羽釜で炊きました

キッズ 毎月発行する

企画スケジュール表

子どもたちには、農業体験や料 理の基本を中心に行います。 料理を自分で作れることを目標にしています。一年間の成長はすごいです。食をとおして子どもたちと関われることが一番の幸せです。

料理の基礎や、郷土料理の 「いわれ」などを伝授!

大人向けの講座は、魚の捌き 方など基本的なことから、四季折々の食材を用いた料理など、いろいろなジャンルの料理講習を行っています。特に、和食やハレの食事の料理講習には、季節の花木で飾り付けを行うなど、「室礼(しつらい)」にも気を配っています。 昼の大人向け講座では、託児なども行っています。

一 般 ジュニアの育成

キッズ講座を卒業して中学生になり、キッズ講座の手伝いに来てくれる子もいるようになりました。 習うだけでなく、人から親切にされた子どもは、人に親切にする術を知ります。また、教えることで、自らも習った知識をしっかりと自分のものにすることができます。ジュニアを継続して育成し、地元で活躍する人を育てたいと思っています。

講座では食事マナーや 箸の持ち方も

和菓子作り

カリスマよりもつなげていく子を! 将来楽しみな子も・・・

園児の講座

餅つき

田んぼで“芋たき”

けっこう いいじゃん!

正月の室礼講座

外国の先生による講座

春のお弁当講座

母と子の食育講座

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これからも農業を継続し ていくことと同時に、食育 活動など生産の現場と、 農や食の体験を積み重ね ていく活動を続けたいと思 います。 具体的には、農園の自然の中で、美味しさの体験をしていただけるよう工夫していくこと。 クッキングスタジオでは、女性ばかりでなく、子どもや男性など様々な年齢層の方に、食を楽しむ場を提供していくこと。 マコモタケやブルーベリーなどを、 地域の中で「みんなのものにして いく」こと。地域の活性化の活動を 30年ほど続けてきて、NPOを立ち 上げたり、「玉川ねっと」という、 町のホームページを作成。農業と共 に農村も元気になるよう、地域の食 文化や郷土料理をデータとして残し、次世代へつなげていきたいと思います。

クッキングスタジオは、集客数 も増加し、農園の自然体験教室 など参加者も増加していますが、 どんなにいい内容でも赤字だと続 かないので、いろいろな方々にこ うした活動を知っていただき、な んとか活動や事業が続いていくよ うにしなくてはいけません。 農園は、息子が帰郷し就農しま した。農業は、いいものを作って、 あまり手間をかけずに生で高く買っ ていただくことが基本だと思ってい ますが、現実は厳しく、付加価値を 付ける取組として6次産業化を図っ ています。 農業が生業になるように、事業を展開しながら、いろいろな活動ができるよう取り組んでいかなければと思っています。

☆ 活動にあたって

こんな成果が

クッキングスタジオで受講する生徒さんは、子どもから男性も含めて確実に増えています。核家族になり、昔ながらの知恵(梅干しの作り方)などを伝えてもらえないため、ここにきて教えてもらおうという人もおり、若い人が学びたいと喜んできてくれるようになっています。 また、子どもたちが習った料理を家庭で作ったり、受講生がインターネットを使い、講座の内容や感想を情報発信してくれているようで、口コミで広がりを見せていることも、成果の一つではないでしょうか。

こんな苦労が

この地域では、食べものが絡む料理教室の多くは無料で行われています。そんな中で、自主運営を続けて行くには、内容を工夫し、参加者のみなさんが満足して「また来たい」と思っていただけるような講座を作り上げることは、たいへんなことではありますが、同時にやりがいにもつながっています。

☆ これから活動を始める人へ・・・

○できるかどうかではなく、やってみること、そし て改善しながら、続けることが一番だと思います。

○食を伝えようとすると、その地域の自然や風土、 文化や歴史、高齢者の生活の知恵など、いろいろ なことにつながっていきますので、自ら勉強して おくことは大切だと思います。

○あまり先に行かず、半歩くらい先から始めないと 共感が得られません。家で包丁を持たない人に 和食のフルコースなどはできないので、理想は 高く持ち、目標は少し先に。頑張ればできるよ うになるところに設定するといいと思います。

☆ 今後の予定・活動目標

株式会社 森のともだち農園

玉川町の活性化

今治市の里山再生事業 を活用し、稲わら20アール 分を使って作ったイノシシ 「ワラシシ」です。 親は体高4.5㍍、体長8㍍あります。 休日には、県内外からの見物客で地域が賑わいました。

〈クッキングスタジオの活動から〉

料理教室で作った「おまんじゅう」や「ようかん」を持ち帰るときは、きちんと箱詰めして包装まで講義します。 ここまでやれば、市販品を買わなくても、自分で準備できて、お土産などに使うことができます。

☆ 活動から見えてきた課題・・・

農園でのブルーべリー 収穫体験

週1回 ラジオ出演

ワラシシの親子!

マコモタケです!

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