電気機器Ⅱ - nihon...
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電気機器Ⅱ
電気電子工学科 乾成里
出典
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6.7 誘導電動機の運転
6.7.1 始動法 P.206
Induction Motor(誘導電動機)
【利点】 定速度
ブラシ・整流子が不要
→ 構造が簡単 → 安価
→ 静穏
→ 耐久性
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【欠点】 始動時に、
電流大,トルク小 (図6.28 速度特性)
始動時の対策を考えましょう。
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(1)全電圧始動,直入ぢかいれ
図6.28 速度特性
→負荷トルクが小さいなら、これで動いちゃう。
電源に余裕があれば。
200V以下,5kW以下の小さいモータ
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(2)Y-Δ始動
3.7~10kW程度のモータ
切り替えは,図6.36
始動時 運転時
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電流1/3
トルク1/3
出典:
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(3)始動補償器
3年生のエネルギー機器実験で現用。
単巻変圧器 図5.46(p.197)低電圧で始動後に定格電圧に。
τ ∝ V2
大容量(15kW以上), 高圧機
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(4)インバータ
3年生のエネルギー機器実験でやる(かも)。
現在,普及している方法。
6.5.3の周波数特性を活用。(図6.31)
電流が大きく変化しない → トルクがほぼ一定。
インバータ(可変電圧,可変周波数の電源)利用。
V /f を一定に維持して,電圧Vをゆっくり上げる。
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クローリング crawling
始動時の異常現象
回転数が上昇せず,大電流が流れ続ける
→ 焼 損
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トルク曲線の鞍部に落ち着いてしまう。
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対策:斜めスロット(スキュー skew)
隙間は鉄心
図6.3 2次導体と短絡環(ショートリング)
これの左右のリングをネジって,導体を斜めにする。
(P.199)
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こんな具合に。
図6.1(p.173)
提供:
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6.7.2 可変速運転 p.208
回転速度 N =(1-s)Ns [rpm]
120f同期速度Ns =
p
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N を変えるために,極数p ,周波数f, すべりs
V12 τ
すべりs …… 負荷トルク=発生トルクτ
V12 に比例
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(1)極数切替え式 P.208
120fN ≒ Ns =
p p 可変
但し,極数pは連続値ではない。
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(2)電圧制御方式 P.208
電圧 低 → 電流 小 → トルク 小
なので,可変範囲は狭い。
(一方、直流電動機では.....)
電圧可変方法
・単巻変圧器(P.166)・サイリスタ(図6.37)
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モータへ供給電源電圧 される電圧
図6.38 サイリスタによる位相制御 P.209
実効値 式6.63
αが 0→T/2 と大きくなると,V が小さくなる。
(電圧波形の面積が小さくなる。)
V = V mT2 T/2
αsin yt 2dt
TT/2TT/2
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(3)周波数制御方式 P.208図6.31を利用。
インバータが安価になってきたので,現在の主流。
120f f 可変N ≒ Ns =
p
整流 インバータDC AC
AC 50, 60 [Hz] f, V が任意V=100, 200, …[V]
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図6.30 V 一定 (p.201)
f 高 → τmax 低下
図6.31 V/f 一定(f高 → V高)
f 高 → τmax ほぼ一定
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(4)3相インバータの例 P.209
図6.39 P.211
トランジスタ2個 → 1相
3相 → 合計6個
T1~T6の ON/OFF タイミングで
a相巻線b相巻線 各々に,どちら向きの電流を流すか。c相巻線
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図6.40 P.211
(a)T1~T6 ON/OFF のタイミング
120°ずつ順番に
(b)Va ,Vb ,Vc a相,b相,c相の相電圧
120°の位相差
(c)Vab,Vbc,Vca 直流電源の電圧が
そのまま線間電圧
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(d)Vab 線間電圧の基本波
Vbc 線間電圧の基本波 位相差120°
Vca 線間電圧の基本波 の交流
階段状の電圧波形 図6.40(c)→巻線の電流は高調波成分が低減され,
正弦波に近くなる。
∵巻線(コイル)は,インダクタンスを持つ。
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☆巻線は,インダクタンスを持つので,
→電流断時に高電圧を発生。
→トランジスタが壊れる。
フライホイールダイオードが,
→スイッチング素子を保護する。
→巻線が自ら電流を流して,トルクを確保する。
☆PWMインバータ
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6.7.3 電気制動と誘導発電機 P.210
・急停止
・ブレーキをかけながら,ゆっくり動かす。
・機械的ブレーキ…減速。止めておく。
電気的には,
SM, StM 定点保持可能通電要
IM 閉ループ制御
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(1)プラッギング
回転磁界の回転方向を逆転
(U,V,Wのどれか2線を入替)
Ns → -Ns 逆相
逆方向のトルクが発生し,ブレーキになる。
速度0になったら,すぐに電源OFF。
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(2)発電制動
直流 DC(f=0Hz)印加
回転エネルギー↓
電気エネルギー↓
2次側で熱になる。
直流磁界内で導体が動く→渦電流が発生
電流と磁界でブレーキ力
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(3ー1)誘導発電機
N>Ns になると,誘導発電機*2になる。
*2:誘導発電機 風力発電(小形)などで便利に使える。
系統連係が容易。(vs. 系統の安定性…)
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(3ー2)回生制動 (インバータドライブにおける電気制動)
N>Nsとなるように,周波数fを低下 → 発電
回転エネルギーで発電
電源へ返す→他の負荷で使う。
抵抗で熱にする。
キャパシタ(コンデンサ)に蓄えて,始動時に利用。
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発電制動に比較して,エネルギーの有効利用になる。
受け取ってくれる負荷が都合良くあれば,良いけど。
コンデンサ:価格,経年劣化,…
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6.7.4 制御 P.212
ベクトル制御
インバータ制御の高性能化
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☆他励直流モータ(直流分巻電動機)では,
界磁電流→界磁磁束トルク
電機子電流
個別に与える
M
+
--
+
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☆誘導モータでは,
界磁電流と電機子電流のどちらも一次電流に含む。
→負荷変動時など,速応性が悪い。
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I1=I0+I2’ 機械的な慣性などのため,. . .
応答が遅い。
V1 I1
. .
ゆっくり変化
I1
.
(a)電源電圧一定 出典 海老原:電気機器,共立出版, Fig.6.47, p.187
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V1
.
V1
.
I1
.
(b)電圧が変化 出典 海老原:電気機器,共立出, Fig.6.47, p.187
必要な(目標の)I0とI2’のベクトル合成I1を流そう。. . .
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出典 海老原:電気機器,共立出版, Fig.6.51, p.190
1d一定
1q
変化
大
小
トルク
↓ 1q
1d↓
→ 1
磁束を発生(励磁)
トルクを発生
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出典 海老原:電気機器,共立出版,
Fig.6.52,p.191
t1<t2≪t3
ゆっくり変化
すばやく変化
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ベクトル制御により
・速応性(過渡特性)が向上する。
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制御で使いやすいモータの設計
動作原理: 一般のモータと同じ。
慣性 小となるように設計
トルク 大
慣性を小さく。
細く。
空心にして軽く(トルクは低下するけど)。トルクを確保。
回転しを長くして,ギャップ面積(一次側と二次側が対向する面積)を広く。
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図6.41
AC DC AC IM指令
インバータ
制御部回転数,角度,トルクセンサ
f=50, 60Hz f, V:任意
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・IMには,すべりsがある。しかし,回転数Nが,
まったく変化しないように,
フィードバック制御をかけたりする。
・トルクτが,思い通りになるように,
フィードバック制御をかけたりする。
・回転角度(位置)が,思い通りになるように,
フィードバック制御をかけたりする。
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・暴れるモータでも、制御をかけて押さえ込むことは
できる。
でも、
・元々のスペックが、お望みのスペックに近いと、
制御が軽くなる。
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6.8 特性の改善
P.212
かご形IM
利点 ほぼ定速
簡単な構造 →安価,軽量,小型,堅牢
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欠点 始動特性(Is大,τs小)
↓
改善 等価回路(図6.25, p.196)の r2
始動時 大きく
運転時 小さく
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Isの低下 τsの増加
図 特性の改善
出典 海老原:電気機器,共立出版, Fig.6.60, p. 196
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深みぞ形 と 二重かご形
始動時 外側導体…高抵抗(Is小,τs大)
運転時 内側導体…低抵抗
巻線形では,外部抵抗で実現
始動時は,N=0,s=1
→ f2=f1 ∴f2高
∵f2=s×f1
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(1)深みぞ形
図6.42
スロット内漏れリアクタンスによる表皮効果
始動時 f2高 → δ小 → 外側に二次電流
→ 二次抵抗が高くなる。
運転時 f2低 → δ大 → 内側にも2次電流
→ 二次抵抗が低下する。
二次導体
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(2)二重かご形
図6.43外側 R大
内側 R小,リアクタンス大
始動時 f2高 → リアクタンスが支配的
∴外側に2次電流
運転時 f2低 → リアクタンス小,Rが支配的
∴抵抗の小さい内側に2次電流
二次導体
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6.9 単相誘導電動機
P.213
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3相交流の利点
3つの電源 … 6線
中央の3本をまとめる … 中性線
電流の和=0 ∴電線が不要
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3つの電源 … 3線
三相三線式
三相の利点
・3線ですむ。2線→3線と1線増えると3倍のエネルギーを送ることができる。
・回転磁界 …四相以上でも回転磁界は発生するが,三相でも発生するので,これで充分。
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でも,一般家庭などでは,三相は無いよね。
単相交流だけ。
単相2線式
単相3線式
なんとかならないかなぁ。
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2線 ≠ 単相(一相) … 単相は,二相ではない。
単相では
振動磁界
図6.45
回転磁界 にはならない。
↓誘導電動機にならない(トルクが発生しない)。
ところが,……
Φ
s[rpm]
φ( ) 振動磁界
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振動磁界は,2つの逆向き回転磁界の合成
(式 6.64~ 6.69)
= + ベクトルの足し算をします。
↑ ↑ ↑図6.45 図6.44(a) 図6.44(b)
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図 6.46 P.215
+
=
/80 /4 3 /8 /2 5 /8 3 /4 7 /8
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振動だと思っていたら,実は
回転が二つ入っていた!
6.9.2 単相誘導電動機のトルク特性 P.215
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図6.47
P.216
出典 海老原:電気機器,共立出版,Fig.6.59, p.19
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τaを発生する回転磁界 s=1(静止時)では,
τbを発生する回転磁界 τa+τb=τ=0
τ=0 なので,始動できない。
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6.9.3 単相誘導電動機の始動方法 P.215
しかし,
何らかの方法で s≠1 になれば |τ|>0 となり,
その方向へ回転し始める。
始動方法 …手で回してもいいんだよ。
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(1)隈取りコイルモータ 図6.48(a)くま ど
コイルに電流が流れる。→位相がずれた磁束
τs小,η低,逆転不可,簡単
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出典 ,p.20
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(2)分相始動モータ 図6.48(b)
リ Aアクタンス大(位相ずれ)の補助巻線 Aスイッチで始動後に切り離す。
A: Auxiliaryτs大,Is大
欠点「機械的スイッチ」のメンテナンス
せっかく,IMはブラシなどの接触が無いのに...
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(3)コンデンサモータ 図6.48(c)
補助巻線にコンデンサを入れて,
さらに大きな位相ずれを。
・コンデンサを入れっぱなし。
・コンデンサを始動時のみ。
・始動時と運転時でコンデンサの容量を変える。
利点力率改善(巻線で遅れ vs. コンデンサで進み)欠点コンデンサやスイッチの劣化
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(4)反発始動 図6.48(d)
ブラシと整流子があり,始動時は直巻モータ。τS大。
始動後は,遠心スイッチで整流子が短絡され,巻線型
誘導モータとなる。
3年生のエネルギー機器実験で使う単相誘導モータ:
現在は、このタイプ。
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6.10 リニア誘導モータ
Linear Induction Motor (LIM)リニア誘導モータ、リニア誘導電動機
6.10.1 LIMの構造と動作原理 P.217
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図6.49
切り広げて平らにするとリニアモータになる.
,τ
固定子,電機子ギャップ
回転子
巻線
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6.2構造と動作原理は と同じ。
6.3
三相交流電流 → 回転 進行磁界 うず電流
推力
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6.10.2 リニアモータの特徴 P.218
回転モータ →変換→直線運動
リニアモータ → 直線運動
運動変換機構なしで,直線運動。
損失無し。 世の中では,回転運動
高速,高精度,など だけが必要なのではない
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一次側 と 二次側 のどちらが動いてもいい。
(電機子) (界磁) →回転子と固定子可動子
表6.4 誘導電動機の構成 P.218
固定子 回転子/移動子
回転電機子 2次導体
モータ
リニア 電機子 2次導体モータ 2次導体 電機子
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6.10.3 リニアモータの応用例 P.218
これらの特長を生かして:
交通,搬送,ステージ,プロッタ(製図機),…
歯ブラシ,シェーバー,マッサージャー,…
コンプレッサ,エレベータ,ポンプ,…
:
:
LIM,LSM,LDM,LStM 他
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例えば,工場の生産機械では,
・ワイヤ・ボンディング
・ピック・アンド・プレース
(プリント基板への部品の挿入,など)
・液晶パネルや半導体の製造装置
・工作機械
・などなど。
多自由度モータ
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(1)地下鉄
図6.50 推力:LIM
支持・案内:鉄車輪
一次側(電機子)=可動子
図6.51
回転形 LIM
車高:低 → トンネル:小 → 建設コスト:低
【例】地下鉄大江戸線(東京),鶴見緑地線(大阪),…
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(2)高速鉄道
・高速だと,車輪は,空転する。
→リニアモータ
・高速だと,車輪は,耐えられない。
→磁気浮上→非接触で力を伝えるには,
・高速だと,パンタグラフは,耐えられない。
→車上のモータ(電機子)へ電力を供給できない。↓
地上に電機子
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リニアモーターカーの例:
中央新幹線[LSM]JR東海,鉄道総研
2027年 東京-名古屋
2045年 名古屋-大阪
出 典 :
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:JR_Central_SCMaglev_L0_Series_Shinkansen_201408081006.jpg
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HSST 名鉄,(JAL)→愛知高速鉄道 Linimo
出典:http://www.chubu.jida.or.jp/stock/topics/image_/seminar_linimo/linimo_sharyographic.jpg
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Trans Rapid ドイツの技術
中国・上海 空港のアクセス
出典:
https://commons.wikimedia.org/wiki
/File:Transrapid-emsland.jpg
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Swiss(減圧トンネル)KoreaUS
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(3)エレベータ
屋上に機械室なし
図6.52
従来のエレベータ リニアエレベータ
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LIMは非接触。力を伝えるのに「摩擦」は不要。車輪では空転するような,急勾配でも可。
垂直にすると,ロープレスエレベータ・エレベータシャフトと床面積
→1シャフトに多くの"のりかご(客室)"
図6.53
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・ロープ自体の重量で,ロープが切れないように → さらに太いロープを。
エレベータのワイヤーロープは,
50kmが自重の限度だそうです。
日本大学新聞 2008.12.20, p.2
図6.54
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(4)ポンプ
二次側は導体 → 熔融金属や海水ようゆう
リニア電磁ポンプ
Linear Electromagnetic Pump(LEP)
機械式ポンプとは異なり,
ポンプが高温液体に触れない。高信頼性
可動部品がない。
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適用例:
☆製鉄
「熔融した鉄」を攪拌する。ようゆう こうはん
☆ジェット推進船
交流モータ LEPで海水を噴射
直流モータ フレミングの左手則で海水を噴射
噴射の反動で推進。
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☆液体ナトリウムのポンプ
・パイプの外側にトロイダルコイル。
・パイプの断面形状を変えないので
→応力腐食の心配が減る。
・モータの発熱をナトリウムへ回収
→η向上
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☆はんだポンプ(自動はんだ付け装置) 図6.55
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☆板ガラス製造 図6.56
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☆強化ガラスの製造 図6.57
高温ガラスを急冷
熔融錫
錫:冷却能は高いが,スズ
ガラスに弾かれる。
どうやって沈めるか。
-錫に働く下向きの重力を打ち消すように上向きの力をかける。→ 軽くなる。
-ガラスは絶縁物なので、 沈む。LIMから力(推力)を受けない。
ガラス
LIM錫(スズ)
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試験,がんばって。