蚊やダニが媒介する感染症

大阪府立公衆衛生研究所

弓指孝博

平成26年度生活環境部会平成27年2月19日

ー デング熱とSFTS（重症熱性血小板減少症候群） ー

蚊が媒介する感染症について

ダニが媒介する感染症について

蚊

マダニダニが媒介する他の病気

前半

後半

デング熱

SFTS

蚊が媒介する主な感染症

感染症 病原体

マラリア

リンパ管フィラリア症

日本脳炎

デング熱

ウエストナイル熱

黄熱

ジカ熱

マレーバレー脳炎

セントルイス脳炎

東部馬脳炎

西部馬脳炎

原虫(熱帯熱、三日熱、四日熱、卵形マラリア原虫)

糸状虫(バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫)

ウイルス(日本脳炎ウイルス)

ウイルス(デングウイルス1〜4型)

ウイルス(ウエストナイルウイルス)

ウイルス(黄熱ウイルス)

ウイルス(ジカウイルス)

ウイルス(マレーバレー脳炎ウイルス)

ウイルス(セントルイス脳炎ウイルス)

ウイルス(東部馬脳炎ウイルス)

ウイルス(西部馬脳炎ウイルス)

チクングニヤ熱 ウイルス(チクングニヤウイルス)

ベネズエラ馬脳炎 ウイルス(ベネズエラ馬脳炎ウイルス)

・ ・・ ・

ロスリバー熱 ウイルス(ロスリバーウイルス)

蚊が媒介する感染症の現状蚊が媒介する感染症の現状

わが国に存在するもの

日本脳炎

輸入感染症・侵入が危惧されるもの

デング熱

チクングニヤ熱

ウエストナイル熱

マラリアコガタアカイエカ

ヒトスジシマカ

アカイエカ

シナハマダラカ

ジカ熱

ロスリバー熱

蚊以外の昆虫によって媒介される主な感染症

媒介節足動物 感染症 病原体

ハエ

アブ

ブユ

サシガメ

リーシュマニア症アフリカ・トリパノソーマ症

フィラリア症(ロア糸状虫症)

フィラリア症(オンコセルカ症)

アメリカ・トリパノソーマ症

リーシュマニア属の原虫ネズミマクムシ属の原虫

ネズミマクムシ属の原虫

ロア糸状虫

回旋糸状虫

ノミ

シラミ

発疹熱

腺ペスト

発疹チフス

塹壕熱

回帰熱

発疹熱リケッチア

ペスト菌

発疹チフスリケッチア

塹壕熱バルトネラ

回帰熱ボレリア

デング熱

(デングウイルス1〜4型)

デング熱 (Dengue Fever)

デング出血熱 (Dengue Hemorrhagic Fever)

デングショック症候群 (Dengue Shock Syndrome)

デング熱の症状

デング熱 (Dengue Fever)

デング出血熱 (Dengue Hemorrhagic Fever)

デングショック症候群 (Dengue Shock Syndrome)

発熱、頭痛、眼窩痛、発疹、間接痛、筋肉痛・・・

一週間ほどで回復

点状出血〜出血斑

血管透過性の亢進による血漿の漏出 ・・・ヘマトクリットの上昇

点状出血

血小板減少

白血球減少

胸水、腹水等

DIC

国立感染症研究所ウイルス第一部第２室(www0.nih.go.jp/vir1/NVL/NVL.html),WHOの資料を元に作成

シンガポール

タイ

インド

フィリピン

カンボジア

スリランカ

マレーシア

ミャンマー

デング熱患者の渡航先

トンガ王国

パプアニューギニア

ドミニカ共和国

バングラディッシュ

ベトナム

フィジー

タヒチ

東チモール

ニューカレドニア

ケニア

タンザニア

サウジアラビア

ラオス

オーストラリア

モルジブ

パラグアイ

中国

台湾

出国日本人の動向（2012年） BEST15

1. 米国 3,698,073人

2. 韓国 3,518,792人

3. 中国 3,518,153人

4. 台湾 1,432,315人

5. タイ 1,373,716人

6. 香港 1,254,602人

7. グァム 929,229人

8. シンガポール 757,116人

9. ドイツ 734,475人

10. フランス 732,283人

11. ベトナム 576,386人

12. マレーシア 470,008人

13. インドネシア 450,687人

14. フィリピン 412,474人

15. マカオ 395,989人

インド 220,015人

カンボジア 179,327人

ミャンマー 47,690人

スリランカ 26,085人

（日本政府観光局（JNTO）作、出典:UNWTO、PATA、各国政府観光局、各国統計局による）

中国でも・・・

台湾でも・・・

広東省で 3,0325人のデング熱患者が発生

南部の高雄市を中心に 1,2837人のデング熱患者が発生

（広東省政府・衛生和計画生育委員会の発表による）

死者も 6人

（台湾政府・衛生福利部疾病管制署の発表による）

（2014年1/1〜10/12）

（2014年1/1〜11/22）

2014年は

2005

デング熱

チクングニヤ熱

20082005

2009

(邦人で3人目の症例)

2011

輸入感染症の感染推定国（大阪府）

2008

2009

2012

2009

2010

2011

1994

1996

1994

1997

2007

1998

1999

0

50

100

150

200

250

300

350

199

9

200

0

200

1

200

2

200

3

200

4

200

5

200

6

200

7

200

8

200

9

201

0

201

1

201

2

201

3

201

4

デング熱症例数の推移（1999〜2014）

国立感染症研究所ウイルス第一部第２室(www0.nih.go.jp/vir1/NVL/NVL.html)のデータを元に作成

Dr.OKUNOより

点状出血

Tourniquet test（止血帯テスト）

毛細血管透過性亢進の有無をみる

駆血帯で腕を圧迫し、点状出血の増加をみる

2.5cm2あたり10個以上の点状出血を観察した場合を陽性とする

（最高血圧と最低血圧の中間の強さで圧迫する）

［方法］

［判定］

［解熱鎮痛剤の禁忌］

・アスピリン、イブプロフェン、ロキソニンは使わない

血管の透過性を亢進する（血小板の働きを抑える）恐れがある

アセトアミノフェンを使用する

治療について

［対症療法が中心］

・補液療法（生理食塩水、リンゲル乳酸液、リンゲル酢酸液等）

・デング出血熱・デングショック症候群の時は血小板輸血も考慮

・・・・今のところ有効な抗ウイルス薬、ワクチンはない

去年、日本でデング熱が流行した

東京都の代々木公園などで蚊に刺されてデング熱になるヒトが次々に発生した

www.eurosurveillance.orgより

代々木公園

新宿中央公園

神宮外苑

外濠公園

都立青山公園

台東区

隅田公園

中目黒公園

上野公園

不明

西宮市

128

11

1

1

1千葉市

1

1

1

1

1

1111

デング熱の感染推定場所

デング熱国内感染患者の居住地

東京都 107

神奈川県 13

埼玉県 12

千葉県 7

茨城県 2

山梨県 2

静岡県 2

新潟県 3

大阪府 3

北海道 1

青森県 1

岩手県 1秋田県 1

群馬県 1愛媛県 1

高知県 1

山口県 1

兵庫県 1

「デングウイルス」ってどんな形?

膜（エンベロープ）を持った小型の球形ウイルス

膜

殻50nm

※ 日本脳炎ウイルスの電子顕微鏡像

デングウイルスの構造

デングウイルス

遺伝子(RNA)・・・設計図

C PreM E NS1 NS2a NS2b NS4a NS4b NS55’ 3’NS3

形（構造）を作るタンパク質の遺伝子

酵素の働きを持ったタンパク質などの遺伝子

細胞の中でのデングウイルスの増え方

細胞

核

デングウイルス

タンパク質(NS1抗原)

C PreM E NS1

NS2a NS2b NS4a NS4b NS55’ 3’NS3

何（臨床材料）を用いて患者の検査をするのか?

血液を用いる

回復期の血清

遺伝子検査 抗体検査

NS1抗原検査

ウイルス分離

急性期の血液・血清

急性期 : 高熱、しんどい時期、 回復期 : 解熱、治ってきた時期

遺伝子検査の実施例1

RT-PCR法

デング共通 primer デング型特異 primer

(電気泳動法で検出)

（デングウイルス1〜4型全てを検出） （あるデングウイルスの型だけを検出）

500bp

簡易キットによる抗原検査 (NS1抗原検出)

デングウイルス

NS1抗原

陽性(+) 陽性(+) 陰性(-)

細胞

核

ウイルスが増えるときに作られるタンパク質(NS1抗原)を検出する

15分で判定

より正確なNS1抗原検査 (ELISA)

迅速キットよりも高い精度で検出できる

数時間かかり高価

陰性 (-)

陽性 (+)

陽性 (+)

他の抗体測定法（中和法）

ウイルスと患者が持っている抗体を反応させてから培養細胞へ接種する

特異性が高く優れた方法だが、検査に１〜２週間ほど必要

デングウイルスによって培養細胞上にできたプラーク

（ウイルスは目で見えないが、プラークによってウイルスの存在がわかるようになる）

ウイルス分離

培養細胞に血液をかけて直接ウイルスを増殖させる

対照細胞

分離陽性細胞(デング１型)

究極の検査法

・必ず成功するわけではない

・分離するまで１〜２週間以上かかる

犯人の逮捕 →

検査のタイミング(検出可能な期間)

感染 発病

(潜伏期 : 3〜7日)

IgG抗体

IgM抗体

NS1抗原

ウイルス

遺伝子検査

抗原検査抗体検査（IgM）

1週間 2週間

(急性期)

(回復期)

抗体検査（IgG）

0

2

4

6

8

10

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

日本脳炎患者の推移（2004〜2013）

国立感染症研究所ウイルス第一部第２室(www0.nih.go.jp/vir1/NVL/NVL.html)のデータを元に作成

少しデング熱以外の蚊媒介性感染症について紹介します

チクングニヤ熱

（デング熱と似たパターンでかかる病気）

チクングニヤ熱の症状

・突然の発熱、発疹、頭痛、筋肉痛、関節痛

・時に激しい関節痛を伴う

・後遺症として、長期間の関節痛・関節炎

0

2

4

6

8

10

12

14

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

チクングニヤ熱の輸入症例の推移

ジカ熱（Zika Fever）にも注意

・ フランス領ポリネシアのボラボラ島

ジカ熱の症状

発熱、頭痛、眼球結膜充血、皮疹、筋肉痛、関節痛

（デング熱と比較して軽症）

2013年12月 : 男性（27歳）、女性（33歳）の2症例

・ タイ、サムイ島

2014年7月 : 男性（41歳）の1症例

病原体の Zika virus は1947年ウガンダ（Zika Forest）のアカゲザルから分離された。

（フラビウイルス科フラビウイルス属）

IASR Vol.35 p.243-244 (2014)

IASR Vol.35 p.45-46 (2014)

邦人の輸入症例

ロスリバー熱（Ross River Fever）にも注意

・ オーストラリア メルボルン、タスマニア

ロスリバー熱の症状

多発関節痛、発熱、筋肉痛、倦怠感、皮疹、リンパ節腫脹

（デング熱と比較して軽症）

2013年2〜3月 : 女性（31歳）の1症例

病原体の Ross river virus は1959年オーストラリア（Ross River）河口のハマベヤブカから分離された。

（トガウイルス科アルファウイルス属）

IASR速報(2013/9/17)より

邦人の輸入症例

ウエストナイル熱

（わが国には入ってきてないが、アメリカでは大流行）

ウエストナイル熱の症状

・突然の発熱、頭痛、筋力低下

・高齢者等では脳炎に至ることがある

・後遺症として、麻痺が残ることがある

ウエストナイルウイルスの感染環

蚊

蚊

垂直感染(経卵感染)

ヒトやウマ(終宿主)

鳥類

吸血嗜好性

ウエストナイル熱の米国における患者発生状況

死者

患者

ＣＤＣ Webページより

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

0

50

100

150

200

250

300

350

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

マラリア

フィラリア症

デング熱

古くから「おこり」「かわらやみ」などと呼ばれ全国的に発生していた。

1903年の年間患者数は約20万人を超え、1959年まで発生した。

古くから「草ふるい」などと呼ばれ全国的に発生していた。

1978年まで患者が発生していた。

第二次世界大戦中に、東京、大阪、神戸、広島、長崎などの都市部で流行した(約20万人)。

(三日熱マラリア)

ここからは、蚊について少しお話します

世界には約3520種以上は、いる

日本でも15属127種は、いる

蚊の種類数は、

（でも、私たちに関係ある種はそんなに多くない）

一口に蚊といっても私たちがおそらく一生出会わない種もいる

吸血嗜好性だけをみてもほ乳類の血を吸うもの以外に鳥類、は虫類、両生類の血を吸うものなどがいる。

ユスリカ

カ (カ科)

ブユ アブ

ナガサキニセケバエハエ

コバエ

ガガンボ

双翅目（カ・ハエ）のなかま

蚊は人の何に誘引されて寄ってくるのか?

温度(体温)

吐く息 (二酸化炭素)

汗 (乳酸、酪酸等)

代謝の活発な状態は刺されやすい

服装は 長袖・長ズボン・靴下 > 短パン・タンクトップ・サンダル

蚊はこれらに敏感なセンサーを持っている

蚊のライフサイクル

吸血後 （3日） 卵

（百数十個）

幼虫（ボウフラ）

（2日）

蛹（オニボウフラ）

（7〜14日） 4回脱皮する

（2〜3日）

成虫

（約1ヶ月生存）

動き回れる

卵舟

蚊の口は針みたいになっているが、あれが私たちの皮膚に入るの?

まず、蚊に刺されて感染するしくみについて

蚊はどうやって血を吸っているのか?

皮膚

血管

吻

短時間で血管を探り当てて吸血する

大腮（大顎）

小腮（小顎）

上唇

下唇（外から見えている部分）

下咽頭（唾液管）

唇弁下唇

上唇

大腮

下咽頭

小腮

蚊の口の構造

蚊に刺されたら血を吸われるのに、どうしてウイルス（病原体）が入ってくるの?

ところで

蚊は吸血する時に唾液を出す

デングウイルス

もし蚊がウイルスを持っていると一緒にウイルスも入り込む

唾液

皮膚

血管

デングウイルス

皮膚

血管

逆にもし蚊が患者（急性期）の血を吸うと一緒にウイルスを取り込む

蚊の唾液に含まれる成分

アピラーゼ

ATP,ADP

AMP

（ADP : 血小板の粘着集合を誘導）

ATP,ADP,AMP

吸血刺激物質

蚊の種類について紹介します

アカイエカ、チカイエカ

Culex pipiens pallens/molestus

アカイエカとチカイエカ

アカイエカ チカイエカ

(見た目では区別できない)

血を吸って卵を産む 一回目は血を吸わなくても卵を産める

休眠する(冬はいない) 休眠しない(冬でも飛んでいる)

広い所がないと交尾できない

狭い所でも交尾できる

鳥が好き 哺乳類が好き

(国立感染研 澤辺ら)を改変

(米国型)

媒介蚊防除の基本

発生源対策（ボウフラの駆除）

薬剤による成虫の駆除 個人・家庭レベルでの防除

対策の基本

(緊急時の対策に不可欠)

薬剤による防除

成虫対策

幼虫対策

効果が一時的で、効率が悪いが感染症発生時のウイルス保有蚊対策には必要

環境への配慮が必要

発生源が水系なので駆除しやすい

有機リン系殺虫剤、昆虫成長制御剤

蚊の薬剤抵抗性の問題

発生源対策（環境整備）

アカイエカ （道路側溝、雨水枡等）

チカイエカ

（ビルの汚水槽・湧水槽、浄化槽、汚水処理場）

ヒトスジシマカ

（公園、墓地、藪、手水鉢、竹の切り株、古タイヤ等）

昆虫成長制御剤(IGR)の種類

メトプレン(アルトシッド)

ピリプロキシフェン(スミラブ)

ジフルベンズロン(デミリン)

シロマジン(ネポレクス)

トリフルムロン(ヨモベット)

ルフェルノン(プログラム)

テフルベンズロン(ラルバノール)

薬剤名(商品名)

幼若ホルモン様物質

幼若ホルモン活性物質

作用

幼虫のクチクラ硬化

キチン形成阻害

キチン形成阻害

キチン形成阻害

キチン形成阻害

有機リン系

ピレスロイド系

ネオニコチノイド系

フェニトロチオン(スミチオン)

その他の殺虫剤

エトフェンプロックス(レナトップ)

ジノテフラン(ボンフラン)

白っぽい服を着る（黒っぽい色のほうによってくる）

ぴったりした服よりもゆったりした服を着る

蚊に刺されないためにはどうすればいいのか?

寝るときは?

蚊帳を使う(海外に行った時等)

風通しをよくする

蚊取り線香、電子蚊取り器

虫よけスプレー

忌避剤(虫よけスプレー 、DEET)

ﾚｼﾞｬｰ(ｷｬﾝﾌﾟ、釣り､ｺﾞﾙﾌ等)

お墓参り

ｶﾞｰﾃﾞﾆﾝｸﾞ、家庭菜園

天然の忌避物質

ピレスロイド(除虫菊)

ハーブ、香油植物

蚊蓮草、ゼラニウム(シトロネラ)、ユーカリ、ベルガモット、レモングラス、松、樟脳、・・・

ヒトスジシマカ

アカイエカ

鳥が好き・・・

行動範囲が広い（数kmは飛ぶ）

ヒトが好き

行動範囲が狭い（数百m程度）

もちろんヒトにもくるが・・・

数m内でまとわりついてくるのはこちら

ダニが媒介する病気

後半

ツツガムシ（幼ダニ）

マダニ（若ダニ、成ダニ）

種類や数の多さからみて地球上で繁栄を極めている生き物の一つ

ダニとは

昆虫ではなくクモに近い仲間

・土の中にはたくさんの自由生活性のダニ(ササラダニ)がいる

・水の中や海で暮らす種類(ミズタニ、ウシオダニ)もいる

・植物の葉にはハダニがいる

・家の中には寝具などにチリダニ、ツメダニがいる

・皮膚のニキビの中にはニキビダニがいることがある

・皮下の角質層で暮らすダニがいる(カイセンダニ)

・乾燥食品類(乾物・穀粉)にはコナダニがいる

ダニが媒介する主な感染症

感染症 病原体

ツツガムシ病

日本紅斑熱

ロシア春夏脳炎

クリミア・コンゴ出血熱

ライム病

野兎病

バベシア症

ツツガムシ病リケッチア

日本紅斑熱リケッチア

ロシア春夏脳炎ウイルス

クリミア・コンゴ出血熱ウイルス

ライム病ボレリア

野兎病菌

バベシア原虫

ヨーロッパ中央ダニ脳炎 ヨーロッパ中央ダニ脳炎ウイルス

跳躍病 ルーピングイルウイルス

ポワッサン脳炎 ポワッサンウイルス

ロッキー山紅斑熱 ロッキー山紅斑熱リケッチア

・ ・

・ ・

・ ・

恙虫病

ライム病

野兎病

ロシア春夏脳炎

バベシア症

わが国に存在するダニ媒介性感染症

ツツガムシ

マダニ

日本紅斑熱

SFTS

ツツガムシ病リケッア

日本紅斑熱リケッア

Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome

2009年に中国で患者発生

(重症熱性血小板減少症候群)

SFTSの病原体

ブニヤウイルス科 (Bunyaviridae)

フレボウイルス属 (Phlebovirus)

クリミア・コンコ出血熱、腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群

(３分節を持つ1本鎖RNAウイルス)

リフトバレー熱、サシチョウバエ熱

2011年に中国で特定された。

・ 38 度以上の発熱

・ 消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)

[血液検査所見]

・ 血小板減少(10 万/mm3 未満)

・ 白血球減少(4000/mm3 未満)

・ 血清酵素(AST、ALT、LDH )の上昇

［他の症状］

・神経症状(意識障害、痙攣、昏睡)

・筋肉痛

・頭痛

・リンパ節腫脹

・出血症状(紫斑)

・呼吸器症状(咳、咽頭痛)

これまでにSFTSの患者が報告されている地域 (1月7日現在)

山口県 8名

愛媛県 20名宮崎県 19名

広島県 8名

長崎県 7名

高知県 14名

佐賀県 3名

鹿児島県 9名

熊本県 5名徳島県 9名

(※ 韓国でも報告されている。)

患者:113名

(死者:37名)

岡山県 4名

和歌山県 2名

島根県 1名

※ 各県の公表データ等を元に作成

兵庫県 2名

大分県 2名

0

10

20

30

40

50

60

SFTS患者の報告数

※ 各県の公表データ等を元に作成

山口県感染症情報センター集計（http://kanpoken.pref.yamaguchi.lg.jp/jyoho/page9/sfts_1.php）より

山口県感染症情報センター集計（http://kanpoken.pref.yamaguchi.lg.jp/jyoho/page9/sfts_1.php）より

マダニからSFTSV遺伝子検出

※ IASR 2013.8.29 2014.2.25を元に作成

患者発生県

SFTS以外にダニが媒介する病気について

0

200

400

600

800

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

恙虫病

0

50

100

150

200

日本紅斑熱

0

20

ライム病

今年は200名を超えている

「ツツガムシ病」を漢字で書くと・・・

「恙虫病」

「つつがなくお過ごしのことと存じます・・・」

ツツガムシ病

Recent Advances in Studies of Tsutsugamushi Disease in Japan (Tamiya et.al.,medical culture inc.,tokyo. 1962 より)

過去の記録(恙虫病or発疹熱?)

1987年 6 月 1名

大阪府内のリケッチア症2004

・1964年と1966年)に届出記録(詳細は不明)

・淡輪熱

淡輪

1988年 11月 1名1994年 11月 2名

2004年 12月 1名

1988

1994

1987

1995年 9 月 1名

1996年 1名

1999年 1名

1998年 11月 1名

2001

推定感染地(韓国)の症例(1995)

推定感染地(広島県)の症例(1998)

推定感染地(三重県)の症例(2006)

推定感染地(高知県)の症例(2008)

恙虫病

恙虫病

恙虫病

恙虫病

恙虫病

2001年 9月 1名

2006年 10月 1名

2008年 4月 1名

恙虫病

日本紅斑熱

日本紅斑熱

日本紅斑熱

2010年 10月 1名

2010

日本紅斑熱

恙虫病

2014

2014年 11月 1名

・リケッチアを持つツツガムシに刺されてから、およそ10日前後の潜伏期の後、急に発熱し、倦怠感や頭痛、などを伴って発病する。

・テトラサイクリン系の抗生物質が著効を示すが、現在、一般に広く使用されているβラクタム系やセフェム系の抗生物質は全く効かず、適切な治療がなされないとDICや脳炎などに陥って死亡に至ることもある。

ツツガムシ病の症状

・40℃近い高熱の持続、発疹の出現、局所リンパ節の腫脹、食欲不振などが現れる。

・ツツガムシに刺された部位は黒色痂皮を形成し、いわゆる刺し口と呼ばれる特徴的な形態をとることが多い(頭部や陰部など見つけにくい部位にあったり不明の場合もある)。

刺し口*

発疹*

*茨城県における恙虫病実態調査報告(茨城県衛生部)1987より

ツツガムシ病の病原体

リケッチアは、一般に人工培地では増殖せず細胞内でのみ増殖する(塹壕熱群リケッチアは例外)。

約0.5～2.0μmの球・短桿菌状の細胞内寄生性小型細菌

ツツガムシ病の発生時期

ツツガムシ幼虫に刺されて感染するため、ツツガムシ幼虫が出現する春・秋に患者が発生する。

ツツガムシ(幼虫)の大きさ

0.3-0.5mm

ホットスポットの存在

有毒ツツガムシ(リケッチア保有)

ツツガムシの（吸血）

皮膚 組織液を吸う

0.3-0.5mm

日本紅熱斑

・悪寒や頭痛を伴った急な発熱と40℃近い高熱の持続、発疹、倦怠感など、その主な症状はツツガムシ病によく似ているが、潜伏期が2～8日とやや短い。

1984年にわが国で初めて患者が報告された。

・マダニに刺された部位にできるいわゆる刺し口はツツガムシ病に比べて小さく見つからないことも多い。

・中枢神経系の合併症を呈した例もある。

日本紅斑熱の症状

マダニに刺されて感染し、主に夏期(春〜秋)に患者が発生する。

・発疹は比較的早くから見られ、ツツガムシ病が体幹部に多いのに対し、日本紅斑熱では四肢末端の手足まで広がる傾向があり、出血性となる例も多い。

媒介の容疑者

マダニ (Tick)

中国では

・フタトゲチマダニ (Haemophysalis longicornis)

・オウシマダニ (Rhipicephalus microplus)

からSFTSウイルスが分離されている

(日本には少なくとも2科8属47種以上のマダニが生息)

媒介の容疑者

※ 山口県では患者に付いていたタカサコキララマダニ(Amblyomma testudinarium)からSFTSV遺伝子の検出が報告された。

幼ダニ

若ダニ

成ダニ

マダニの発育期

幼ダニ若ダニ

成ダニ

大阪府に生息するマダニの種類

ヒゲナガチマダニ (Haemaphysalis kitaokai)

フタトゲチマダニ (Haemaphysalis longicornis)ヤマトマダニ (Ixodes ovatus)

アカコッコマダニ (Ixodes turdus)

オオトゲチマダニ (Haemaphysalis megaspinosa)

キチマダニ (Haemaphysalis flava)

タカサコキララマダニ (Amblyomma testudinarium)

タイワンカクマダニ (Dermacentor taiwanensis)

ヤマアラシチマダニ (Haemaphysalis hystricis)

タカサコチマダニ (Haemaphysalis formosensis)

チマダニ属 (Haemaphysalis)マダニ属 (Ixodes)

キララマダニ属 (Amblyomma)

カクマダニ属 (Dermacentor)

マダニの姿は大きく変化する 1

吸血前

吸血後

マダニの姿は大きく変化する 2

吸血前

吸血後

ヒトに付いていたタカサコキララマダニ雌

ハーラー器官

爪間体

マダニは足音、吐く息、体臭、体温などを感知する

マダニはガラス壁も登れる。

人の体表を歩いていても気づかれにくい。

第1脚は触角(アンテナ)のように使う

蚊の吸血の仕方を思い出してみると

皮膚 血管を探り当て、直接吸血

(Solenophage)

マダニの吸血はどのようにするの?

皮膚 血溜まりを作り、そこから吸血

(Telmophage)

セメント物質

(blood pool)

マダニの頭部側断面図

(北岡、1992、「ダニと病気のはなし」技報堂、より)

マダニによる吸血の特徴

血液濃縮

基節腺、唾液腺等から余分な水分、塩分を放出する

1m四方の布

地面を引きずって歩く

布に付いたマダニを採集

マダニの採集法

マダニはこんなところに・・・

野山へ出かける時の注意

・ 長袖、長ズボン、長靴 (肌の露出を避ける)

・ 生地がツルツルの服、白っぽい色の服

・ 帰宅後必ず入浴して点検 「できもの」と間違えられることあり。

・ もしマダニを発見したら自分でとらずに皮膚科を受診する。(無理に引っ張るとダニの口が残る)

・ 患者が多発している地域に出かけるときに注意する。

・ 野山へ出かけてから一週間くらいたって、急に高熱がでたり、

発疹がでた場合は、医療機関を受診し、野山に出かけたことを申告する。

マダニの除去 1

マダニと周辺組織の外科的切除

マダニの除去 2

ワセリン

局所麻酔後、眼科用剪刀で口器下面を押し広げ、マダニをピンセットで採取する。

ワセリンでマダニを被い、30分放置。

※ 馬原の方法(1990,皮膚臨床32:1918-1919)

マダニとりグッズ

マダニ刺症例にみる口下片の有無

早いうちにに取る

十分に吸血(飽血)

ロシア春夏脳炎

1993年に北海道で発生

ダニ媒介性脳炎 (Tick-borne encephalitis)

ロシア春夏脳炎

中央ヨーロッパ型ダニ脳炎

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ライム病 野兎病 バベシア症

2

3

1

3

1

1

国立感染症研究所感染症情報センター感染症発生動向調査データを元に作成

細菌、原虫による感染症(2000年以降)

Q熱

回帰熱

(ヒトアナプラズマ症)