市会ジャーナル 第183 号 - yokohama...2019/03/13  · 8 3...

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上 AI活用の必要性 国の方針・取組 横浜市の方針・取組及び他都市における取組 特集2 「生産性向上」を実現する中小企業支援 日本の労働生産性 国の施策・法律 横浜市及び他都市の取組 写真:AI運行バス(経済局提供(カメラマン名:植村 忠透)183 平成 30 年度 Vol.政策調査レポート 市会ジャーナル 発行:横浜市会議会局 政策調査課

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Page 1: 市会ジャーナル 第183 号 - Yokohama...2019/03/13  · 8 3 デジタル・ガバメント実行計画 9 4 未来投資戦略 2018 -「 Society 5.0 」「データ駆動型社会」への変革-

特集1 AIを活用した行政サービスの向上

AI活用の必要性

国の方針・取組

横浜市の方針・取組及び他都市における取組

特集2 「生産性向上」を実現する中小企業支援 日本の労働生産性

国の施策・法律

横浜市及び他都市の取組

写真:AI運行バス(経済局提供(カメラマン名:植村 忠透))

第 183 号 平成 30 年度 Vol.9

政策調査レポート

市会ジャーナル

発行:横浜市会議会局 政策調査課

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市会ジャーナル 第 183 号 平成30年度 Vol.9

政策調査レポート

特集1 AIを活用した行政サービスの向上

はじめに 1

第1部 AI活用の必要性 3

1 AI活用の必要性~自治体戦略 2040 構想研究会報告書より~ 3

(1) 我が国の人口の動向 4

(2) スマート自治体への転換 5

第2部 国の方針・取組 7

1 官民データ活用推進基本法 7

2 世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画 8

3 デジタル・ガバメント実行計画 9

4 未来投資戦略2018

-「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革-

9

5 地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及び

AI・ロボティクスの活用に関する研究会(総務省)

10

6 自治体行政スマートプロジェクト(総務省重点施策 2019) 10

第3部 横浜市の方針・取組 11

1 横浜市官民データ活用推進計画の策定 11

2 チャットボットを活用した「イーオのごみ分別案内」(資源循環局) 13

(1) 利用イメージ 13

(2) 特徴 14

(3) 実績・費用 14

(4) 今後の方向性 14

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3 「AI運行バス」の実証実験

~観光客向けオンデマンド乗合交通システム~(経済局)

15

(1) AI運行バスの利用 15

(2) 実証実験の概要

16

(3) AI運行バスの乗降ポイント

16

(4) 今後の動向

16

第4部 他都市の取組

17

1 道路管理システムへのAIの活用 ~“My City Report”実証実験~(千葉市)

17

(1) “My City Report”の概要

17

(2) 今後の動向

18

2 職員の業務支援におけるAIの活用~職員の知恵袋~(大阪市)

19

(1) 対象業務の選定

19

(2) AIサービスの概要

19

(3) 今後の動向

20

3 「RPAを活用した定型的で膨大な業務プロセスの自動化」 共同研究(つくば市)

21

(1) RPAの適用イメージ

22

(2) 主な実績

23

(3) 今後の動向

23

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特集2 「生産性向上」を実現する中小企業支援

はじめに

24

第1部 日本の労働生産性

25

1 世界における現在地

25

2 国際比較から見る労働生産性の推移

26

3 国内中小企業の労働生産性の変化

27

第2部 生産性革命~国の新たな施策・新たな法律~

28

1 新しい経済政策パッケージ(平成 29 年 12 月8日 閣議決定)

28

(1) 生産性革命

28

(2) 生産性革命に向けた予算 ~経済産業省平成 30 年度当初予算及び平成 29 年度補正予算~

29

2 生産性向上特別措置法(平成 30 年6月6日 施行)

30

(1) 制定の趣旨

30

(2) 主な措置事項

31

(3) 関連する法律(産業競争力強化法等の一部を改正する法律)

32

第3部 「生産性向上」を実現する中小企業支援~横浜市・他都市~

34

1 横浜市の取組

34

(1) 中小製造業設備投資等助成制度(設備投資型)

34

(2) 横浜市 loT 導入スタートアップ補助制度

34

(3) 中小企業新技術・新製品開発促進事業(SBIR)

35

(4) 販路開拓支援事業(SBIR)

35

(5) 中小企業女性活躍推進助成金

36

(6) 横浜ワークスタイルイノベーション推進事業

36

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2 他都市の取組

37

(1) 小規模企業者を対象とする補助金

37

(2) 多様な業種を対象とする補助金

37

(3) loT 化による上乗せのある補助金

38

<参考1> 横浜市中小企業振興基本条例

39

(1) 横浜市中小企業振興推進会議の設置

39

(2) 中小企業振興施策の取組状況報告書

39

(3) 中小企業の振興に関する施策

39

(4) 平成 30 年度予算編成

39

<参考2> 市内中小企業の状況

40

1 事業所数及び従業者数

40

(1) 総数

40

(2) 産業大分類別

41

2 売上金額・付加価値額

42

3 市内企業の設備投資動向

43

(1) 設備投資の実施状況、予定(2018 年 4 月~2021 年 3 月)

43

(2) 設備投資額

44

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

1

我が国は既に 2008 年から人口縮減期に入っており、今後の労働力の深刻な供給制約は、

もはや避けがたい状況であるといえます。しかし、労働力人口の減少が進む中でも、地方自

治体が安定的に行政サービスを提供し続けることは、市民生活や地域経済を支えるために欠

かすことはできません。

このような背景の中、近年、人手不足を補いながら生産効率、事務効率を上げるための手

段として、AI(Artificial Intelligence:人工知能)※1やRPA(Robotic Process Automation:ロボッ

トによる業務自動化)※2といった先端技術が注目を集めており、地方自治体において、行政事

務の効率化やサービス向上を目的に、AI等を活用した取組が広がっています。

国においても、総務省の「自治体戦略 2040 構想研究会」は、AI等の技術を積極的に活用し

て、自動化・省力化を図り、より少ない職員で効率的に事務を処理する体制の構築が欠かせ

ないと提言しています。また、同省では、地方自治体における AI・ロボティクスの活用について

実務上の課題を整理するため、「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及び

AI・ロボティクスの活用に関する研究会」を立ち上げ、検討を始めています。

そこで、この特集では、行政事務へのAI等活用の必要性、国の方針、本市や他都市におけ

る取組事例をご紹介します。

AIを活用した行政サービスの向上

特集 1

※1 AI (Artificial Intelligence:人工知能)

AIは、技術水準が向上しつつあるのみならず、既に様々な商品・サービスに組み込まれ

て利活用がはじまっています。身近なところでは、インターネットの検索エンジンやスマート

フォンの音声応答アプリケーションである米 Appleの「Siri」、Google の音声検索や音声入力

機能、各社の掃除ロボットなどが例として挙げられます。また、ソフトバンクロボティクスの人

型ロボット「Pepper(ペッパー)」のように、AIを搭載した人型ロボットも実用化されています。

なお、このAIという言葉の定義については、研究者によって異なっている状況にあり、確

立した学術的な定義や合意はありません。その背景として、そもそも『知性』や『知能』自体

の定義がないことから、人工的な知能を定義することもまた困難である事情が指摘されて

います。このような事情をふまえ、総務省の「平成 28 年版情報通信白書」では、AIを「知的

な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と一般的に説明するにとど

めています。

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

2

※2 RPA (Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)

RPAの“ロボット”とは、工場で従事する産業用ロボットとは異なり、これまで人間が行って

きた定型的なパソコン操作をソフトウエアのロボットにより自動化するものです。具体的に

は、表計算ソフトやメールソフトなどのアプリケーションを使用した、帳簿入力や伝票作成、

ダイレクトメールの発送業務、経費チェック、顧客データの管理など、主に事務職が携わる

定型業務があげられます。

<RPAが適用可能な機能例>

・アプリケーションの起動や終了

・ID やパスワードなどの自動入力

・スケジュールの設定と自動実行

・蓄積されたデータの整理や分析

・キーボードやマウスなど、パソコン画面操作の自動化

・ディスプレイ画面の文字、図形、色の判別

・別システムのアプリケーション間のデータの受け渡し

【参考・出典】 ・総務省 「自治体戦略 2040 構想研究会」第一次報告及び第二次報告

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/jichitai2040/index.html ・総務省 平成 28 年版情報通信白書 「IoT・ビッグデータ・AI ~ネットワークとデータが創造する新たな 価値~」

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/h28.html

・総務省 メールマガジン「M-ICT ナウ」 Vol21 2018 年5月第2号 ICTトピック「RPA(働き方改革:業務 自動化による生産性向上)」

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000043.html

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

3

AI活用の必要性

~自治体戦略 2040 構想研究会報告書より~

総務省の「自治体戦略 2040 構想研究会 ※(P6参照)」が、新たな自治体行政の基本的な考え方の

1つとして、今後の労働力人口の減少に伴い、自治体の経営資源が制約される中、法令に基づく

公共サービスを的確に実施するためには、AI等の技術を積極的に活用して、自動化・省力化を図

り、より少ない職員で効率的に事務を処理する体制の構築が欠かせないと提言しています。

<新たな自治体行政の基本的考え方(一部抜粋)>

1 AI活用の必要性

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

4

(1) 我が国の人口の動向

○ 我が国は、少子化による急速な人口減少と高齢化という未曾有の危機に直面している。

○ 総人口は既に減少局面に入っている。10 年前(2008 年)の 1 億 2,808 万人をピークに減少

し始め、人口減少のスピードは加速し、国立社会保障・人口問題研究所の出生中位・死亡中

位推計(平成 29 年推計)によれば、2040 年には 1 億 1,092 万人となる。その頃には毎年 90

万人程度減少すると見込まれている。

○ 2040年には、団塊の世代(出生数 260~270万人/年)及び団塊ジュニア世代(出生数 200

~210 万人/年)が高齢者となっており、我が国の人口ピラミッドはいわゆる棺おけ型になる。

(図1)

○ 近年の出生数は、年間 100 万人に満たない。2040 年にはこの世代が 20 歳代となる。

図1 人口ピラミッド

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

5

(2) スマート自治体への転換

○ 年齢別地方公務員数をみると団塊ジュニア世代が相対的に多く、山となっているが(図2)、

2040 年頃には団塊ジュニア世代が 65 歳以上となる一方、その頃に 20 歳代前半となる者の

数は団塊ジュニア世代の半分程度にとどまる(団塊ジュニア世代の出生数:200~210 万人、

平成 29 年出生数:95 万人)(図3)。

図2 年齢別地方公務員数(2016 年)

図3 出生数の推移

(人)

(年齢)

(万人)

(年)

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

6

○ 今後、自治体においては、労働力の厳しい供給制約を共通認識として、2040 年頃の姿から

バックキャスティングに自らのあり方を捉え直し、将来の住民と自治体職員のために、現時点

から、業務のあり方を変革していかなければならない。

○ 労働力制約への対処は、官民問わず、新たな発展のチャンスとなる。我が国が世界に先駆

けてあらゆる分野で破壊的技術(AIやロボティクスなど)を導入していくならば、戦後の焼け

野原からの最新の工場設備の投資が高度経済成長を生み出したように、新たな飛躍の絶好

の機会となり得る。

○ とりわけ、これは自治体が新たな局面を切り拓く好機である。従来の半分の職員でも自治

体として本来担うべき機能が発揮でき、量的にも質的にも困難さを増す課題を突破できるよ

うな仕組みを構築する必要がある。

○ 上記のような仕組みを構築するためには、全ての自治体で業務の自動化・省力化につなが

る破壊的技術(AIやロボティクスなど)を徹底的に使いこなす必要がある。AI・ロボティクスが

処理できる事務作業は全てAI・ロボティクスによって自動処理することにより、職員は企画立

案業務や住民への直接的なサービス提供など職員でなければできない業務に注力するスマ

ート自治体へと転換する必要がある。

○ スマート自治体への転換は、自治体職員が本来の機能を発揮し、地域に必要とされる役割

を果たす好機である。スマート自治体への転換に当たり、職員に求められる能力は変容する。

高い専門性や企画調整能力、コミュニケーション能力が必要になることを踏まえ、組織に必

要な人材を確保する観点から、長期的な視点で職員の能力開発や教育・訓練が求められ

る。

※自治体戦略 2040 構想研究会

高齢者人口が最大となる 2040 年頃の自治体が抱える行政課題を整理した上で、今後の自治体

行政のあり方を展望し、早急に取り組むべき対応策を検討することを目的とした、総務大臣主催の

研究会。平成 30 年4月に第一次報告、同年7月に第二次報告をまとめ、AI等を活用した「スマート

自治体への転換」や、個々の市町村を超えた圏域単位での行政をスタンダードにする「圏域マネジ

メント」、都道府県・市町村の「二層制の柔軟化」、医療・介護サービス供給体制等の調整を図る「東

京圏のプラットフォーム」等を提言。

【参考・出典】 ・総務省 「自治体戦略 2040 構想研究会」第一次報告及び第二次報告

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/jichitai2040/index.html

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

7

2 国の方針・取組

AI等の先端技術に関する国の方針・取組についてご紹介します。

官民データ活用推進基本法

平成28年12月7日に成立した「官民データ活用推進基本法」は、インターネットその他の高度情

報通信ネットワークを通じて流通する多様かつ大量の情報を活用することにより、急速な少子高

齢化の進展への対応等の我が国が直面する課題の解決に資する環境をより一層整備することが

重要であることに鑑み、官民データの適正かつ効果的な活用の推進に関し、基本理念を定め、国

等の責務を明らかにし、並びに官民データ活用推進基本計画の策定その他施策の基本となる事

項を定めるとともに、官民データ活用推進戦略会議を設置することにより、官民データ活用の推進

に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって国民が安全で安心して暮らせる社会及び快

適な生活環境の実現に寄与することを目的としています。 官民データ活用推進基本法の基本理念の1つには、官民データ活用の推進に当たって、AI、Io

T、クラウド等の先端技術を活用する ことが掲げられています(第3条第8項)。

<官民データ活用推進基本法制定の背景>

出典:首相官邸 IT戦略本部 第9回新戦略推進専門調査会(平成 29 年3月 27 日)

【資料1】 官民データ活用推進基本法について

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon/dai9/index.html

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

8

世界最先端デジタル国家創造宣言 ・ 官民データ

活用推進基本計画

官民データ活用推進基本法の規定(第8条第1項)に基づき、官民データ活用の推進に関する

基本的な計画として、「世界最先端デジタル国家創造宣言 ・ 官民データ活用推進基本計画」を

策定しています(平成 30 年6月 15 日改訂)。

この計画の重点取組の1つである「地方のデジタル改革」の取組として、「RPA等を活用したデ

ジタル自治体行政の推進」を掲げており、生産年齢人口が減少する中、地方公共団体内の限ら

れた財源と人的資源を地域住民への行政サービス向上に資する業務に振り向けるため、ICTを活

用して自治体業務の在り方を抜本的に見直す必要があり、様々な業務プロセスについて、団体間

比較を通じて自動化・省力化できる部分を抽出し、同プロセスの標準化とRPAツール・AI導入を

並行して進め、業務効率の飛躍的向上につなげていく。加えて、地方公共団体内部におけるビッ

グデータの利活用を推進することにより、データに基づいた効果的な政策立案、住民サービスの

向上等が期待されるため、データ利活用人材の育成や事例の創出をノウハウ面で支援し、地方

公共団体が保有するデータを部局・分野横断的に活用するためのガイドを平成30年度内に策定

し、データ活用の全国展開を進めるとしています。

<重点取組 -地方のデジタル改革- イメージ図>

出典:首相官邸 IT戦略本部 第74回会合(平成 30 年6月 15 日)

【資料1-1】 「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(案)(概要)」

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai74/gijisidai.html

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

9

デジタル・ガバメント実行計画

平成30年7月20日に改定された「デジタル・ガバメント実行計画」は、官民データ活用推進基本

法等に示された方向性を具体化し、実行することによって、安心、安全かつ公平、公正で豊かな

社会を実現するための計画であり、また、電子行政分野を深掘りし、詳細化した計画です。

この中の「地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進」の取組の1つとして、「地方公共

団体におけるAI・RPA等による業務効率化の推進」が位置付けられています。本格的な人口減

少社会となる 2040 年(平成 52 年)頃を見据え、希少化する人的資源を本来注力するべき業務に

振り向けるために、自治体の業務のあり方そのものを刷新することが必要であると考え、窓口業

務等に限定せず、自治体行政の様々な分野で、団体間比較を行いつつ、ICT や AI 等を活用した

標準的かつ効率的な業務プロセスを構築し、2018 年度(平成 30 年度)以降、順次、構築に向けた

取組を推進する ことを掲げています。

出典:政府CIOポータル デジタル・ガバメント実行計画 https://cio.go.jp/node/2422

未来投資戦略2018

-「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革-

平成30年6月15日に閣議決定された未来投資戦略2018では、「デジタル革命」が世界の潮流で

あるという基本的な考え方の中で、日本の強みである豊富な「資源」と「課題先進国」という面を生

かし、「Society 5.0※」で実現できる新たな国民生活や経済社会の姿を具体的に提示して、従来型

の制度・慣行や社会構造の改革を一気に進める仕組みの導入を図るとしております。 この中の具体的施策に、「AI・RPAを活用した業務改革」が位置付けられており、行政の様々

な業務への人工知能技術導入による高度化・効率化について検討し、取組を行うことや、住民・

企業の負担軽減や地域課題の解決、地方公共団体の業務システムの標準化・業務効率化のた

め、平成 32 年度末までにAI・RPA(自動処理)等の革新的ビッグデータ処理技術を活用する地

域数 300 を実現するとともに、本年度中に「自治体データ庁内活用ガイド(仮称)」を策定する こと

を掲げています。

※ Society 5.0…サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることにより、地域、年齢、性別、言語等によ

る格差なく、多様なニーズ、潜在的なニーズにきめ細やかに対応したモノやサービスを提供することで経済

的発展と社会課題の解決を両立し、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる、人間

中心の社会。

出典:首相官邸 日本経済再生本部 未来投資戦略 2018 -「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革-

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

10

地方自治体における業務プロセス・システムの

標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する

研究会 (総務省)

○今後の労働力の供給制約の中、地方自治体が住民生活に不可欠な行政サービスを提供し

続けるためには、職員が、企画立案業務や住民への直接的なサービス提供など職員でなけ

ればできない業務に注力できるような環境を作る必要がある。

○地方自治体の情報システムは、これまで各自治体が独自に発展させてきた 結果、システム

の発注・維持管理や制度改正による改修対応など各自治体が個別に対応せざるを得なかっ

たが、クラウド化等を通じたシステム標準化や業務プロセス見直しにより、職員負担が軽減さ

れ、住民や企業の利便性向上にもつながる ことが考えられる。

○近年の技術発展により、実証的にAI・ロボティクスの導入を進める企業や自治体も出てきつ

つある。

総務省では、こうした状況を踏まえて、地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及

び地方自治体におけるAI・ロボティクスの活用について実務上の課題を整理する目的で、平成 30

年9月から開催しています。

出典:総務省 地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及び AI・ロボティクスの活用に関する

研究会 開催要項 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/process_ai_robo/index.html

自治体行政スマートプロジェクト

(総務省重点施策 2019)

総務省では、本格的な人口減少社会となる 2040年頃には、官民を問わず、労働力の供給制約

に直面するため、従来の半分の職員でも自治体として本来担うべき機能が発揮できる仕組み(=

スマート自治体への転換)が必要であるという考えのもと、AI・ロボティクスが処理できる事務作業

は AI・ロボティクスによって自動処理するスマート自治体への転換を図るため、自治体行政の

様々な分野で、団体間比較を行いつつ、AI・ロボティクス等を活用した標準的かつ効率的な業務

プロセスを構築するプロジェクトを創設する方針 です。

出典:総務省 落ち着いて、やさしく、持続可能な社会の実現(総務省重点施策 2019)

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kanbo05_02000105.html

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

11

AI等の先端技術の活用に関する横浜市の推進体制と計画、具体的な取組事例についてご紹

介します。

横浜市官民データ活用推進計画の策定

平成 28年 12月の「官民データ活用推進基本法」の成立を受け、平成 29年3月には官民データ

の活用に関する条例としては全国の市町村で初めてとなる「横浜市官民データ活用推進基本条

例」を制定しました。また、AI などの先端技術の進展により社会の多様化が進むなか、社会的課

題の解決や新しい価値の創造に向け、これまで以上にデータ活用や公民連携の取組を効果的に

行う場が必要という考えに基づき、これらを庁内横断的に検討・推進する場として、新たに「オープ

ンイノベーション推進本部」を平成 29 年4月に設置しました。

そして、平成 30 年5月に、官民データ活用の推進に関する施策や推進体制に関する基本的な

事項を定めた「横浜市官民データ活用推進計画」を策定しました。その中の1つとして、効果的か

つ効率的な市政運営に向け、データを重視した政策形成を推進するとともに、本市の強みである

企業等との協働・共創の取組により、AI など先端技術やデータの積極的な活用を進めるとしてい

ます。

<オープンイノベーション推進本部の体制>

3 横浜市の方針・取組

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

12

<「横浜市官民データ活用推進計画」の概要>

目 的

本市における官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、

施策や推進体制に関する基本的な事項を定め、着実に取組を進めることで、横浜市官民デー

タ活用推進基本条例に掲げる理念である、効果的かつ効率的な市政運営、市内経済の活性

化、市民が安全で安心して暮らせる快適な生活環境の実現につなげること。

期 間

平成 30 年度から平成 33 年度までの4か年

ポイント

【協働・共創】

IoT、AI 等先端技術やデータを活用した取組やデータ活用に関する調査研究を本市の強

みである協働・共創によって推進すること。

【大学連携】

平成 30 年度にデータサイエンス学部を開設した横浜市立大学をはじめとした大学・研究

機関と連携すること。

【データを重視した政策形成】

市職員のデータの有用性に関する意識醸成を進め、各区局の政策形成におけるデータ

活用を一層推進すること。

【参考・出典】

・横浜市政策局 記者発表 データ活用と公民連携をより一層進めるため、「オープンイノベーション推進本部」を立ち上げ(4/19) http://www.city.yokohama.jp/ne/news/press/201704/20170419-037-25277.html

・横浜市官民データ活用推進計画

http://www.city.yokohama.lg.jp/seisaku/seisaku/oisuishin/

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

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チャットボット※を活用した「イーオのごみ分別案内」

(資源循環局)

「イーオのごみ分別案内」はAI技術を使い、ごみの出し方を会話形式で案内するサービスで

す。

公民連携の提案窓口である「共創フロント」を通じて株式会社NTTドコモから提案があり、共同

開発のうえ、平成29年3月6日から実証実験を行い、平成30年4月から本格実施しています。

開発の背景として、家庭から出される燃やすごみの中に本来分別しなければならない資源物

が15%混入しているという状況があり改善が求められていました。また、市内への転入者が年間

約14万人いることや、大学が28校あり、若い単身者が多いという特徴があることから、横浜市の

分別をより分かりやすく周知案内する必要がありました。

そこで、より分かりやすい案内の可能性を探るとともに、スマートフォンなどを使ったコミュニケ

ーションに慣れた若年層などにも、分別に協力してもらうきっかけとなることを目指し、開発したも

のです。

※ チャットボット…チャット(インターネットを利用したリアルタイムコミュニケーション)とボット(ロボットの略で、

人間に代わって一定のタスクや処理を自動化するためのプログラム)を組み合わせた言葉で、

人工知能を活用した「自動会話プログラム」のこと。

(1) 利用イメージ

「横浜市資源循環局ホームページ」又は

「横浜市ごみ分別アプリ」からアクセス

ごみの名前などを話しかけると、イーオが分別

方法などを答えます。

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

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(2) 特徴

ア AIの自然言語処理によって、会話文の中から

利用者の意図を汲み取り、回答まで導きます。

イ 2万語のデータベースから、あらかじめ用意した回答を、

パターンに沿って返答することで、正確な分別案内を

行います。

ウ 回答ができない場合でも、会話を通じて

出したいごみを特定し、回答まで導きます。

エ 分別案内だけでなく、粗大ごみの料金を案内できま

す。また、特定の質問に対してユーモアのある回答

やクイズを出すことができます。

(3) 実績・費用

ア 実績(H29 年度)

・質問数 216 万件

・コールセンター営業時間外(8 時~21 時年中無休)の利用数が約3割

イ 費用

・開発費はNTTドコモが負担。

・本市は、チャットボットサービス利用料として年間約 96 万円を負担。(平成 30 年度)

(4) 今後の方向性

市民サービス、利便性向上の観点から機能向上を図っていきます。

機能向上を検討している内容は以下のとおりです。

・多言語化

・画像認識機能や音声認識機能の追加

・行政からの情報発信

・粗大ごみの申込や申請手続きに対応

【参考・出典】

・横浜市資源循環局HP AIを活用したチャットボット「イーオのごみ分別案内」 http://www.city.yokohama.lg.jp/shigen/sub-shimin/study-event/chatbot.html

・総務省HP ICT地域活性化事例 100 選 AIを活用したチャットボット「イーオのごみ分別案内」

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/jirei/2017_097.html

▲会話から品目を絞り込んで回答

につなげる

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

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「AI運行バス」の実証実験~観光客向けオンデマンド

乗合交通システム~ (経済局)

横浜市と株式会社 NTT ドコモと株式会社未来シェアは、IoT等による新ビジネス創出を促進す

る「I・TOP 横浜」の取組として、街の回遊性を向上させ、周辺施設への送客効果による経済の活

性化、賑わいの創出に寄与することを目指し、「まちの回遊性向上プロジェクト」を立ち上げまし

た。

本プロジェクトの一環で、平成 30 年 10 月5日より、みなとみらい 21・関内地区において、オンデ

マンド乗合交通システム「AI運行バス」の実証実験を行いました。この実証実験は、観光客(来街

者)に対する”もう一つの移動手段の選択肢”として、既存交通が対応しづらい潜在的なニーズを

掘り起こし、街の回遊性向上を目指すものです。

(1) AI運行バスの利用

「AI 運行バス」は、利用者が乗りたいときに、行きたい場所までダイレクトに運んでくれるオン

デマンドの乗合型公共交通サービスです。「スマートフォンアプリ※1」または商業・観光施設、宿

泊施設、鉄道駅などに設置された「まちかど端末※2」でバスを呼ぶことができるので、ルートや

ダイヤを自身で探す必要がありません。また、AI により、利用者の多様な移動ニーズをリアルタ

イムに処理し、最適配車・最短ルートで、目的地に到着するため、自身のペースで観光スポット

間を移動できます。

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

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(2) 実証実験の概要

実施期間 平成 30 年 10 月5日(金)から 12 月 10 日(月)まで

※ただし、10 月 28 日(日)は横浜マラソン開催のため、運行休止

実施エリア みなとみらい 21 および関内エリア

乗車料金 無料

運行時間 10:00~21:00

車両台数 10 台(4~6 人乗客定員のタクシー車両)

ターゲット 観光客を中心とする来街者

(3) AI運行バスの乗降ポイント

(4) 今後の動向

本実証実験の結果を検証し、プロジェクトに参画されている事業者と共に更なる議論・検討を進

め、必要に応じ新たな連携先を求めながら、次の段階の実証を市内で行うなど、具体的な交通サ

ービスとしての商用化に向け支援を行っていきます。

I・TOP横浜のまちの回遊性向上プロジェクトでは、こうした実証実験を今後も積み重ね、来街者

の回遊性を高め、経済の活性化、賑わいの創出に寄与する新しい交通サービスを創出することを

目指します。

【参考・出典】

・横浜市経済局記者発表資料 I・TOP 横浜「まちの回遊性向上プロジェクト」始動!「AI運行バス」の実証実験を開始します~観光客向けオンデマンド乗合交通システム~ (平成 30 年 10 月5日) http://www.city.yokohama.lg.jp/keizai/happyou/h30/20181005180831.html

・AI運行バスHP

https://yokohama.ai-bus.jp/index.html

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

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AIやRPAを活用した他都市の取組事例についてご紹介します。

道路管理システムへのAIの活用

~“My City Report”実証実験~ (千葉市)

千葉市は、東京大学を主体に他の自治体や民間事業者等の参画の下、道路維持管理業務の

高度化・効率化を目指し実施されている、「次世代型市民協働プラットフォーム“My City Report”

実証実験」に参画しています。この実証実験は、「ちばレポ ※」をベースにしつつもさらに機械学習、

IoTや最適資源配分等の機能を組み込んだオープンソースベースの次世代型の市民協働プラット

フォームを開発し、全国の地方自治体に展開を目指す“My City Report”の開発・実証を、自治体

の関係部署や住民の参画により行っていくものです。(実証実験期間:平成 28 年 11 月~平成 30

年度末)

※ ちばレポ(ちば市民協働レポート)

千葉市内で起きている様々な課題(たとえば道路が傷んでいる、公園の遊具が壊れているといった、地域で

の困った課題)を、ICT を使って、市民がレポートすることで、市民と市役所(行政)、市民と市民の間で、それら

の課題を共有し、合理的、効率的に解決することを目指す仕組み。

(1) “My City Report”の概要

従来の「ちばレポ」にあった、市民協働での道路管理に加え、公用車の車載カメラで撮影した

画像と自治体ごとの管理水準から道路舗装の損傷を機械学習により、自動抽出し、サーバに

送信する機能を追加しています。これまでは職員が道路パトロールにより行っていた、道路損

傷の発見、損傷程度の判定・補修の優先順位付けの作業を、AIが行うことを目指します。これ

により、より効率的な道路管理及び、職員の業務量の削減が期待されます。

4 他都市の取組

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

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<機械学習による道路損傷の自動抽出(イメージ図)>

Copyright(C) 2017 Sekimoto lab Institute of Industrial Science, University of Tokyo

(2) 今後の動向

実証実験終了後は、“My City Report”のサービスを本格的に提供していくため、共同運営コ

ンソーシアムを設立し、平成 31 年 4 月から運用を開始する予定です。また、今後、参加自治体

が増加すれば、蓄積されるデータも増加し、AIの精度が高まることが期待されます。

【参考・出典】 ・千葉市 次世代ちばレポ“My City Report”実証実験を開始しました

https://www.city.chiba.jp/shimin/shimin/kohokocho/chibarepo_kyoudoukenkyu.html ・総務省 地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査等 地方公共団体における行政改革の取組事例 (平成 30 年 3 月 28 日公表)

http://www.soumu.go.jp/iken/02gyosei04_04000088.html

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職員の業務支援におけるAIの活用

~職員の知恵袋~ (大阪市) 区役所において、業務に精通したベテラン職員の大量退職、職員数の削減、人事交流の活発

化による短いサイクルでの人事異動、雇用形態の多様化による再任用職員、嘱託職員、臨時任

用職員、窓口業務委託事業者からの派遣職員の増加等を背景に、次世代を担う人材の育成、即

戦力不足が大きな課題となっています。

そこで、銀行窓口業務や保険業務におけるサポートセンターの業務支援など、AIが人間に代わ

って業務を行う実績が出てきたことから、区役所の職員に対して担当業務に必要となる知識をサ

ポートする AI を導入することで、業務効率化と市民サービスの質の向上を図るとともに、ベテラン

職員がこれまで培った知識・技術の継承を支援できないかと実証することとしました。

(1) 対象業務の選定

今回の AI 活用について対象とする区役所業務を検討し、まずは制度が比較的安定しており、

ノウハウが蓄積されている戸籍業務にスポットをあてました。戸籍業務では、事務処理に要す

る時間や手間が専門知識や経験の多寡に左右されることが多く、これまで特に業務従事年数

の浅い職員は、関係法令や戸籍実務書等の紙ベースによる調べもの、管轄法務局等への問

い合わせに時間と労力をかけて対応していました。AI を活用することで、業務の経験年数を問

わず、職員の知識サポートを行い、市民対応の時間短縮と正確性向上を図り、業務の効率化と

市民サービスの向上につながることを期待しています。

(2) AIサービスの概要

この取組は、平成 29 年 6 月に AI サービスの構築事業者を公募し、8月に委託事業者(富士

通株式会社)を決定しました。学習データの準備・AI への投入・学習を経て、試作品を構築し、

平成 30 年3月から2区役所(東淀川区と浪速区)で AI サービスのモデル運用を開始しました。

運用内容については、市民からの届出や問い合わせに対して、職員が端末に質問を入力し、

戸籍関連の通達、先例、専門書籍等の大量の文献データからAIが質問の文意に近いものを提

示し、職員の審査や判断をサポートするものです。

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<利用イメージ>

<画面イメージ>

(3) 今後の動向

平成30年度においては、2区役所でモデル運用を継続し、AIの有効性について評価・検証を

進めるとともに、利用者からのフィードバックをもとに AI の再学習(チューニング)を行っていく予

定です。今後、戸籍業務支援 AI の全区役所への展開や他業務への適用等について、調査・検

討していくところです。

【参考・出典】 ・大阪市 職員の業務支援におけるAIの活用事業について -職員の知恵袋-

http://www.city.osaka.lg.jp/ictsenryakushitsu/page/0000444170.html

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「RPAを活用した定型的で膨大な業務プロセスの

自動化」共同研究 (つくば市) 市役所の業務には、単純で定型的な作業ではあるが、量が多いため多くの労働時間を費やし

ているものがあります。特に確定申告時期の税務処理には多くの時間外労働が担当課職員に

課せられている状況にあります。

茨城県つくば市では、平成29年12月から平成30年5月に、これらの課題に対して、RPAを活用

した「作業時間の短縮(効率化)」と「ミスの少ない正確で的確な処理」の実現を検証するために、

NTTデータグループ(株式会社NTTデータ、株式会社クニエ、日本電子計算株式会社)との共同

研究を行いました。

本研究では、行政における「働き方改革」の実現を念頭に、RPA を活用した業務プロセスの見

直しによる生産性の向上、RPA の効果的な導入に必要な環境整備のほか、具体的な指標を設

定して、RPA 導入による職員の業務時間の削減効果を算出しました。また、単なる業務時間の

削減ではなく、定形作業の負荷軽減・効率化を行い、市民からの相談や窓口業務等に職員がより

時間を割り当てることで、市民サービス向上を目的としています。

<行政課題の解決イメージ>

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(1) RPAの適用イメージ

(事例:市民窓口課 異動届受理通知業務)

市民窓口課においては、住民からの届出に基づき住所変更の手続きを行った際、本人確認

書類が不足している届出者について、本人の意思に相違がない届出であるかを確認するため、

変更前の住所地に「受理通知」を送付しています。

住民異動が集中する 3 月中旬から 4 月中旬の繁忙期には、大量な処理が発生しています。

繁忙期においては、日中の窓口業務が多忙で、住民異動届の件数も多く、通常業務時間帯中

に異動届受理通知業務が完了せずに、時間外勤務時間帯に対応する傾向があります。

そこで、異動届出受理通知業務の中で実施している発送簿の作成をRPAに代行させるシナ

リオを検討したものです。

<異動届受理通知業務の流れ(RPA導入後)>

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特集1 AIを活用した行政サービスの向上

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<図1:個人住民税・法人市民税 RPA計測対象

5業務の計測結果合計>

<図2:異動届出受理通知業務の計測結果>

(2) 主な実績

ア 市民税課 (5業務)

新規事業者登録や電子申告の印刷作業等の全5業務にRPAを導入し、結果として、3カ

月で約116時間の削減、年間換算で約336時間の削減見込み。(図1)

イ 市民窓口課 (1業務)

異動届受理通知業務にRPAを導入し、結果として、3カ月で約21時間の削減、年間換算で

約71時間の削減見込み。(図2)

(3) 今後の動向

・共同研究成果を踏まえ、平成 30 年 10 月にRPAを導入しました。

・今年度(平成 30年度)は、市民税課・市民窓口課に加え、納税課・資産税課へ導入し、効果測

定を行いながら、来年度以降効果が見込まれる部署を対象に順次導入を行う予定。

・例えば、市民税課業務全体の5%にRPAが適用できた場合、年間で約 1,400 時間の作業時

間が削減でき、約 370 万円相当の時間外勤務手当が削減できる見込み。

【参考・出典】 ・つくば市 記者発表資料 自治体で全国初:RPAで働き方改革 対象業務で約8割の時間削減

~ 「RPA を活用した定型的で膨大な業務プロセスの自動化」共同研究~ (平成 30 年 5 月 10 日) http://www.city.tsukuba.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/854/rpa_pr0510_vo2.pdf

・つくば市 「RPA を活用した定型的で膨大な業務プロセスの自動化 共同研究実績報告書」

http://www.city.tsukuba.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/854/rpa_report0510.pdf

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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出典:公益財団法人日本生産性本部「生産性とは」https://www.jpc-net.jp/movement/productivity.html

「生産性」の定義

生産性とは、生産要素(機械設備や原材料、労働力)を投入することによって得られる産

出物(製品・サービスなどの生産物/産出)との相対的な割合のことをいいます。

こうした生産性の種類の中で最もよく用いられるのが労働生産性です。「労働生産性が

向上する」ということは、同じ労働量でより多くの生産物をつくりだしたか、より少ない労働量

でこれまでと同じ量の生産物をつくりだしたことを意味します。

※付加価値額…営業利益+(給与総額+福利厚生費)+動産・不動産貸借料+租税公課+減価償却費

横浜市の人口は、2019 年にピークを迎え、いよいよ減少期に入ると推計されています。

人口減少が見込まれる中、経済を成長させていくためには、生産性を高め、稼ぐ力を強化

していくことが重要です。

近年、IoTやビッグデータ、人工知能など、ICT 分野における急速な技術革新の進展によ

り、日本経済を取り巻く環境が著しく変化しています。

こうした変化に対応し、世界に先駆けて革命的に生産性を押し上げる「生産性革命」を実現

させるべく、政府は、2017 年 12 月に「新しい経済政策パッケージ」を取りまとめました。

さらには、その中で、2020 年度までを「生産性革命・集中投資期間」として、あらゆる政策を

総動員することとしていることを受け、2018年 5月 16日に「生産性向上特別措置法」などが成

立し、横浜市をはじめとする各自治体は、これらに基づき、産業の生産性を短期間に向上さ

せることが期待されています。

日本経済の基盤を支えているのは、全国で約 381 万者と企業数全体の 99.7%を占め、従

業者数は約 3,361 万人と雇用全体の7割を創出している中小企業です。

そこで、この特集では、今後の中小企業支援のキーワードとなる「生産性向上」に関する、

横浜市や他都市の現在の取組等についてご紹介します。

「生産性向上」を実現する中小企業支援

特集 2

物的生産性 付加価値生産性

1人あたり

生産量労働者数

付加価値額※

労働者数

1時間あたり

生産量労働者数×労働時間

付加価値額※

労働者数×労働時間

生産量資本ストック量

付加価値額※

資本ストック量

生産量(労働+資本+原材料等)合成投入量

付加価値額※

(労働+資本+原材料等)合成投入量

労働

資本

全生産要素

         産出物生産要素

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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中小企業を中心とする日本の労働生産性について、国際比較などを通して分析します。

世界における現在地

2016 年の OECD 加盟諸国中における 日本の労働生産性(表 2-1)は、35 加盟国中第 21 位

で OECD 平均を下回っており 、首位のアイルランドのおよそ半分程度の水準となっています。

また 、日本の労働生産性上昇率(表 2-2)は +0.6%となっており、OECD 加盟 35 カ国中 22 位

で、同じく OECD 平均を下回っています。なお、労働生産性、同上昇率ともに日本を下回っている

のは3カ国のみです。

1 日本の労働生産性

表 2-1 OECD加盟諸国の労働生産性

(2016 年・就業者 1 人当たり)

日本

表 2-2 OECD加盟諸国の労働生産性

上昇率(2010~2016 年・就業者 1 人当たり)

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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国際比較から見る労働生産性の推移

日本の労働生産性はこのところ米国の 2/3 程度の水準で推移していますが、これは 1980 年代

半ばとほぼ同じ水準にあたり、1990 年代初頭に 3/4 近い水準まで日米の差が接近して以降、日

米生産性格差は長期的な拡大傾向にあります。

労働生産性とは、GDPなどで表される成果を分子とし、就業者数や就業時間を分母とする計算

式で表される指標であり、これまで日本は、分母を小さくすることで労働生産性を向上させてきま

した。現在も、日本では省力化・自動化投資が活発化しており、こうしたイノベーションや設備投資

が生産性を大きく引き上げる可能性を秘めているものの、米国をはじめとする主要先進国との差

を縮めるには、そうした国々と同様に、分子となる付加価値の拡大も重要だと考えられます。

出典(表 2-1、2-2、2-3):公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較」

https://www.jpc-net.jp/movement/productivity.html

表 2-3 米国と比較した主要国の就業者 1 人当たり労働生産性の推移

日本

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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国内中小企業の労働生産性の変化

2003 年から 2016 年までの企業規模別従業員一人当たりの付加価値額(労働生産性)の推移

(表2-4)を確認すると、大企業は、リーマン・ショックの後大きく落ち込みましたが、その後は総じ

て回復傾向にあることが分かります。

一方、中小企業は、一貫して横ばいで推移しており、2009 年以降は大企業と中小企業の従業

員一人当たり付加価値額の格差は広がり続けています。

国際比較で決して高くない日本の労働生産性において、国内の事業所数、従業員数の大部分

を占める中小企業の労働生産性向上は喫緊の課題といえます。

出典(表 2-4):中小企業庁「中小企業白書 2018 年版」

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/PDF/h30_pdf_mokujityuu.htm

表 2-4 企業規模別従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)の推移

【参考・出典】

・公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較」

https://www.jpc-net.jp/movement/productivity.html ・中小企業庁「中小企業白書 2018 年版」

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/PDF/h30_pdf_mokujityuu.htm

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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「生産性革命」に向けた国の施策、法律について、ご紹介します。

新しい経済政策パッケージ

(平成 29 年 12 月8日 閣議決定) 持続的な経済成長の実現に向けて、「生産性革命」と「人づくり革命」を車の両輪として、少子高

齢化という最大の壁に立ち向かうために閣議決定されました。

ここでは、新しい経済政策パッケージのうち、「生産性革命」の概要についてご紹介します。

(1) 生産性革命

近年のIoT、ビッグデータ、ロボット、人工知能などの新しいイノベーションの登場は、エネルギ

ー環境制約など様々な社会課題の解決を可能とし、これまでにない革新的なビジネスやサービス

を次々と生み出しており、「革命的」に生産性を押し上げる大きな可能性を秘めています。

世界で胎動しつつある、この 「生産性革命」を日本が世界に先駆けて実現することを目指し、

2020 年までの3年間を「生産性革命・集中投資期間」として、大胆な税制、予算、規制改革等の

施策を総動員します。

これにより、

① 日本の生産性を 2015 年までの5年間の平均値である 0.9%の伸びから倍増させ、年2%向上

② 2020 年度までに対 2016 年度比で日本の設備投資額を 10%増加

③ 2018 年度以降3%以上の賃上げ

といった目標の達成を目指して 「生産性革命」を実現し、日本の潜在成長率の向上と国際競争力

の強化を実現します。

中小企業・小規模事業者等の生産性革命に向けては、中小企業・小規模事業者の投資促進を

強力に後押しするため、固定資産税の負担減免や「ものづくり・商業・サービス補助金」等の予算

措置を拡充・重点支援するほか、賃上げの環境の整備に向けた措置等を講じます。

2 生産性革命~国の新たな施策・新たな法律~

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

29

(2) 生産性革命に向けた予算 ~経済産業省関係 平成 30 年度当初予算及び平成 29 年度補正予算~

中小企業等における「生産性革命」の実現を柱の一つとする平成 30年度当初予算及び平成 29

年度補正予算が平成 30 年3月 28 日に成立しています。

出典:経済産業省関係 平成 30 年度当初予算及び平成 29 年度補正予算のポイント http://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2018/index.html

中小企業等における「生産性革命」の実現に関する予算の一部を抜き出してご紹介します。

(括弧内は平成 29 年度当初予算額。再掲を含む。内数はカウントせず。)

ア 中小企業・小規模事業者の抜本的な生産性向上 【補正】1,514 億

<ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業>

○第4次産業革命への対応も視野に、専門家の指導・支援の活用を含め、革新的サービス開

発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援 【補正】1,000 億

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

30

<サービス等生産性向上 IT 導入支援補助金>

○生産性向上効果の高い IT ツールを「見える化」しつつ、中小企業のバックオフィス業務の効

率化や売上向上に資する IT ツール(クラウド型サービス等)の導入を支援 【補正】500 億

○モノ・資金の流れの一体的管理が可能な ITシステム(EDI)の実証 【補正】4億

○中小企業の共同利用が見込まれる先端設備(IoT 等)の公設試等への導入 【補正】10 億

イ 事業承継・再編・統合による新陳代謝の促進 69 億(61 億) 【補正】50 億

○事業引継ぎ支援センターの人員拡充による相談窓口の強化、財務上の問題を抱えている事

業者への再生計画策定支援 等 69 億(61 億)

○廃業リスクの高い事業者に対するプッシュ型の事業承継診断、経営者の世代交代等をきっ

かけに経営革新・事業転換を図る中小企業の設備投資等を支援 【補正】50 億

ウ 小規模事業者対策、人材確保、金融支援、下請対策 351 億(348 億)【補正】252 億

○小規模事業者に対する事業計画策定等の伴走型支援、無担保無保証での低利融資

92 億(92 億)

○小規模事業者が商工会・商工会議所と一体となって取り組む販路開拓、生産性向上等 の

取組を支援(持続化補助金、展示会出展・商談会開催の支援 等) 【補正】120 億

○中小企業への人材マッチング(女性、高齢者、ミドル人材、外国人等)やその後の定着化に向け

た専門家の助言、IoT 等を用いた経営課題解決を図る専門家派遣 等 19 億(17 億)

○政策金融・信用保証による金融支援、認定支援機関による経営改善支援

227 億(226 億)【補正】132 億

○下請かけこみ寺の運営など下請事業者の取引条件改善に向けた取組 14 億(14 億)

生産性向上特別措置法(平成 30 年6月6日 施行)

(1) 制定の趣旨

近年の情報技術分野における急速な技術革新の進展による産業構造及び国際的な競争条件

の変化等に対応し、日本の産業の生産性向上を短期間に実現するためには、革新的な技術やビ

ジネスモデルを用いた事業活動による生産性向上に関する施策等を、集中的かつ一体的に講ず

ることが必要です。

このため、新しい経済政策パッケージ・生産性革命の「集中投資期間(3年間)」に合わせ、革新

的事業活動実行計画(施策の基本方針、目標、内容、期間等をとりまとめ)を策定・実施するとと

もに、中小企業者の生産性の向上を図ります。

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

31

(2) 主な措置事項

ア プロジェクト型「規制のサンドボックス」

革新的な技術やビジネスモデルの実証計画について 、主務大臣が革新的事業活動評価

委員会に意見を聴いた上で認定します。

参加者や期間を限定すること

等により、既存の規制にとらわれ

ることなく実証が行える環境を整

備します。(必要に応じて、規制

の特例措置を講じます。)

主務大臣は、基本方針適合性、

法令適合性等を確認のうえ、評

価委員会の意見を踏まえ、実証

計画を認定し、実証後、規制の

見直しを検討します。

イ データの共有・連携のための IoT 投資の減税等

データを収集・共有・連携する事業者の取組について、IoT 投資に対する減税措置等を講

じます。(IoT 設備投資(センサー・ロボット等)を行った場合、特別償却 30%又は税額控除 3%

(賃上げを伴う場合は 5%)を措置します。)

あわせて、協調領域のデータを収集・共有する事業者(データ共有事業者)であり、一定レ

ベルのセキュリティ対策が確認できた事業者については、国や独法等に対しデータ提供を要

請できる手続を創設します。

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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ウ 中小企業の生産性向上のための設備投資の促進

中小企業の「生産性革命」の実現のため、市町村の認定を受けた中小企業の設備投資を、

固定資産税の減免等により支援します。

なお、以下の基準を満たす設備投資が対象となります。

・市町村の導入促進基本計画に基づき計画認定を受ける

・導入により、労働生産性が年平均3%以上向上

・企業の収益向上に直接つながる 等

併せて、「ものづくり・商業・サービス補助金」等の予算措置を拡充・重点支援することで、

国・市町村が一体となって、中小企業の生産性の向上を強力に後押しします。

(3) 関連する法律(産業競争力強化法等の一部を改正する法律)

新しい経済政策パッケージに基づき、生産性向上特別措置法と同日に成立した産業競争力強

化法等の一部を改正する法律について、参考までにご紹介します。

ア 改正の趣旨

産業の新陳代謝を活性化し、日本の産業の持続的な発展を図るため、業種を超えた事業再

編や事業ポートフォリオの組み換えによる経営資源集中に係る支援、競争力の源泉たる情報

の適切な管理の促進、研究開発成果の事業化や新事業の創出によるイノベーションの促進、

情報技術の発達に対応した経営手法の導入支援、円滑な事業承継及び企業再生に係る支援、

中小企業倒産防止共済制度の拡充による連鎖倒産の防止のための措置等を講じます。

イ 主な措置事項

株式会社産業革新機構の組織・運営の見直しや、事業者の技術等の情報の管理措置(漏え

い防止の措置)に係る認定制度を創設等と併せて、中小企業・小規模事業者関連措置として次

の措置を講じます。

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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(ア) 事業承継や創業の促進による新陳代謝の加速化

a 再編による事業承継加速化

再編統合による事業承継を後押しするため、「経

営力向上計画」の対象に、M&A 等による再編統合

を新たに追加します。

計画の認定を受けた事業者は、登録免許税や不

動産取得税の軽減、各種許認可の承継といった支

援措置が受けられます。

b 親族外承継時の資金ニーズへの対応

親族外承継の増加に対応するため、代表者に就任した者に加え、代表者に未就任の後

継予定の者も金融支援の対象に追加します。

c 創業の普及啓発による次世代の担い手確保

創業関心者が少ないという課題の解消のため、市町村が策定する「創業支援事業計画」

の対象に、創業の普及啓発の取組を追加します。

(イ) 時代に対応した経営支援体制の基盤強化

a 経営基盤強化のための支援能力確保

中小企業のための、経営支援能力の維持・確保の観点から、経営革新等支援機関の

認定制度に更新制等を導入します。

b IT 導入の加速化のための支援体制整備

中小企業の IT 導入を促進するため、

IT ベンダー等を情報処理支援機関として

認定し、IT ツールや IT ベンダーを見える化

します。

c IT 化に対応したセーフティネットの整備

中小企業の IT 活用の高まりを見据え、連鎖倒産防止のための共済金貸付事由に、電

子記録債権に係る取引停止を追加します。

【参考・出典】

・内閣府:新しい経済政策パッケージ https://www5.cao.go.jp/keizai1/package/20171208_package.pdf

・経済産業省:法律概要(生産性向上特別措置法、産業競争力強化法等の一部を改正する法律

http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/seisanseisochihoukyoukahou/pdf/gaiyou-1.pdf

経済産業省関係 平成 30 年度当初予算及び平成 29 年度補正予算のポイント

http://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2018/index.html

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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中小企業の「生産性向上」に関する、横浜市と他都市の現在の取組について、ご紹介します。

(平成 30 年度事業であるため、募集期間の終了している事業が含まれています。)

横浜市の取組

(1) 中小製造業設備投資等助成制度(設備投資型)

概 要 経営改善や競争力強化のために行う、高効率な生産設備の導入などに対し、経

費の一部を助成します。

対象者

主な対象要件は次のとおり

①中小企業で、製造業を営み 12 月を経過していること

②市内に立地する工場への投資であること

支援内容

支援規模

ア 補助率

10%~30%

イ 補助限度額

1,000 万円

ウ 対象経費の下限

100 万円以上

(2) 横浜市IoT 導入スタートアップ補助制度

概 要 中小企業が生産性向上のために導入する IoT 等の費用に対して助成します。

対象者 中小企業者(製造業に限りません。個人事業主は除きます。)

支援内容

支援規模

ア 補助対象経費

センサー及びデバイス、データを送受信するための装置、ソフトウェア、デー

タを蓄積・分析するためのクラウド費用、コンサルタント委託経費、リース料

イ 補助率

2分の1

ウ 補助限度額

10 万円

エ 対象経費の下限

なし

3 「生産性向上」を実現する中小企業支援 ~横浜市・他都市~

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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(3) 中小企業新技術・新製品開発促進事業(SBIR)

概 要 新技術・新製品開発を行う市内中小企業に対し、事前調査、研究、開発までの段

階に応じて必要な経費への助成を行います。

対象者

主な対象要件は次のとおり

①中小企業者、中小企業組合、技術研究組合であること

②市内において引き続き一年以上事業を営んでいること

③市内に事業計画を実施するための拠点を有するもの

支援内容

支援規模

ア 補助対象経費

原材料・副資材費、機械装置費、外注・委託費、産業財産権経費、技術指導

導入費、直接人件費、調査費、クラウド利用費

イ 補助率

3分の2以内

ウ 補助限度額

開発可能性調査:100 万円

研 究:1,000 万円

開 発:1,500 万円

(4) 販路開拓支援事業(SBIR)

概 要 優れた商品・技術を生産又は保有する市内中小企業を販路開拓支援の対象事業

者として認定し、販売促進活動に対する助成などの支援を行います。

対象者

主な対象要件は次のとおり

①中小企業者、中小企業組合、技術研究組合であること

②市内において引き続き一年以上事業を営んでいること

③市内に事業を実施するための拠点を有するもの

支援内容

支援規模

【対象商品等】

◆トライアル発注型:市政での活用が見込まれる販売開始から5年以内の新商品

◆販促活動支援型:社会課題解決に資する商品又は技術

【認定後の支援メニュー】

◆展示会出展等、販促活動への助成(助成限度額:100 万円、助成率:対象経費の 2/3 以内)

◆工業技術見本市「テクニカルショウヨコハマ2019」横浜ものづくりゾーンへの無料出展

◆販路開拓・PRのコンサルタントを派遣

◆商品等に係る資金調達の支援:横浜市中小企業融資制度「よこはまプラス資金

(公的事業タイアップ)」※融資の実行を約束するものではありません。

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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(5) 中小企業女性活躍推進助成金

概 要 中小企業が、女性の活躍を推進する社内環境づくりに取り組む費用の一部を助

成します。

対象者 市内に本社を置き、常時雇用する従業員が 2 名以上の中小企業

支援内容

支援規模

ア 助成対象事業

女性活躍推進のための社内研修、業務改善プログラム策定のためのコン

サルティング、就業規則等の変更、労務管理・制度改革、システム整備、女

性専用設備の設置、テレワーク導入整備

イ 助成率

2分の1以内

ウ 助成限度額

40 万円(就業規則の変更等のソフト整備)

50 万円(更衣室設置、システム構築等のハード整備)

50 万円(テレワーク導入の構築、整備)

(6) 横浜ワークスタイルイノベーション推進事業

概 要 市内中小企業等や市民を対象に、多様で柔軟な働き方の創出に向けた普及・啓

発セミナー等を開催するとともに、相談窓口を設置します。

対象者 市内中小企業等や市民

支援内容

支援規模

【ワークスタイルプロモーション事業】

市内中小企業等や市民を対象に、多様で柔軟な働き方や在宅勤務(テレワー

ク・クラウドソーシング)に関する普及・啓発セミナー及び研修会等を実施します。

また、多様で柔軟な働き方に取り組んでいる企業や、その導入のポイント等を紹

介する冊子を作成し、市内中小企業等へ配布します。

【ワークスタイル相談事業】

人手不足解消や労働生産性向上等を目指す市内中小企業の経営者や人事・労務

担当者等を対象に、多様で柔軟な働き方の創出に向けた相談窓口を設置します。

【参考・出典】

・横浜市経済局:平成 30 年度事業概要

http://www.city.yokohama.lg.jp/keizai/torikumi/unei/pdf/30jigyougaiyou.pdf

事業者の皆さまへ-補助金・助成金 http://www.city.yokohama.lg.jp/keizai/hojo/

ウーマンポート横浜 http://www.city.yokohama.lg.jp/keizai/shien/womanport/

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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他都市の取組

中小企業者が行う設備投資を対象とする特徴的な取組を行っている事例をご紹介します。

(1) 小規模企業者を対象とする補助金

名 称 小規模企業生産性向上設備投資補助金

自治体名 愛知県名古屋市

概 要 小規模企業者の生産性向上による経営基盤の強化を図るため、設備投資に対し

て助成します。

対象者 名古屋市内で営利を目的とした事業を概ね5年以上継続的に営む小規模企業者

支援内容

支援規模

ア 補助対象経費

固定資産課税台帳(償却資産)に登載された機械・設備等の取得額

イ 補助率

補助対象経費の 10%以内

ウ 補助限度額

1 企業・個人あたり 300 万円以内

エ 対象経費の下限

300 万円以上(商業、サービス業は 150 万円以上)

(2) 多様な業種を対象とする補助金

名 称 中小企業振興助成金

自治体名 愛知県豊橋市

概 要 中小企業の近代化及び合理化を促進するため、中小企業者が行う近代化・合理化

設備の取得に対して補助します。

対象者

主な対象要件は次のとおり

①中小企業基本法に規定する中小企業者のうち、次の事業を主たる事業として営む者

〔鉱業、建設業、製造業、運輸業、卸売業、サービス業、小売業 等〕

②当該事業を 2 年以上継続して本市に有する工場又は事業所において営んでいる者

③市税の滞納がないこと。

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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支援内容

支援規模

ア 補助対象

事業の近代化・合理化のために取得した、直接事業の用に供する機械、装置

イ 補助率

市の償却資産課税台帳に登録された課税標準額の4.2%以内

ウ 補助限度額

1事業者につき 300 万円

エ 対象経費の下限

100 万円以上(卸売業、サービス業、小売業は 30 万円以上)

(3) IoT 化による上乗せのある補助金

名 称 生産性向上設備投資支援補助金

自治体名 福井県福井市

概 要

労働生産性の向上を図ることを目的として、福井市内の自社工場等に設備等を導

入する中小企業者に対して、経費の一部を補助します。

(導入設備の IoT 化を図る場合は、IoT 化に係る費用を含む。)

対象者

次の条件を満たすもの

①福井市内に本店を有し、自ら使用する事業所等に当該設備を設置すること

②補助対象経費(設計費、設備費、工事費等)が 300 万円以上(小規模企業者は

100 万円以上)の事業であること

③福井市内において1年以上継続して事業を営んでいること

④公的機関から同種の補助金を受けていないこと

⑤申請した年度内に事業が完了すること

支援内容

支援規模

労働生産性の向上に資する新規設備の導入または既存設備を更新する事業に対

し、補助。

ア 補助率

対象経費の3分の1

イ 補助限度額

130 万円(内 30 万円は IoT 化分)

ウ 対象経費の下限

300 万円以上(小規模企業者は 100 万円以上)

【参考・出典】

・中小企業庁:ミラサポ未来の企業★応援サイト https://www.mirasapo.jp/subsidy/guide/about.html

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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中小企業の振興について、横浜市の責務、市内中小企業者の努力、大企業者の役割等を明ら

かにするとともに、市の施策の基本となる事項等を定めることにより、中小企業の振興に関する施

策を総合的に推進し、市内経済の発展及び市民生活の向上に寄与するために、議員提案により

成立し、平成 22 年 4 月 1 日から施行されました。

(1) 横浜市中小企業振興推進会議の設置

中小企業振興施策の検討・推進体制を強化するため、中小企業振興を担当する副市長を会長

とし、全市的、総合的に取組を進めています。

(2) 中小企業振興施策の取組状況報告書

経営基盤の強化、経営の革新につながる多様な中小企業振興施策の実施状況に加え、市内

中小事業者の受注機会増大に向けた取組について掲載した総合的な年次報告書を発行してい

ます。

報告書については、市内中小企業者に対して広く公表するとともに、横浜商工会議所、(一社)

横浜建設業協会、神奈川県中小企業家同友会への説明・意見交換会を実施しています。

(3) 中小企業の振興に関する施策

条例の趣旨に基づき、中小企業の振興に関する施策を実施しています。

平成 30年度は、経営基盤の強化につながる 41の事業、経営の革新につながる 30の事業、区

の取組による 29 の事業を実施しています。

(4) 平成 30 年度予算編成

平成 30 年度予算編成にあたり、全市的な中小企業振興の取組を進めるため、各区局の予算

に条例の趣旨を反映させることを周知・徹底し、中小企業振興施策の充実を図りました。具体的

には、基礎的な支援機能の根幹となる相談対応やコンサルティングなどの支援の充実、人材確保

や事業承継の取組を拡充しました。

また、「I・TOP 横浜」「LIP.横浜」の2つのプラットフォームにより、IoT等を活用し、新たな製品・

サービス開発にチャレンジする企業の支援や、健康・医療分野における新技術・新製品の創出支

援を拡充しました。

そのほか、平成 29 年度補正予算を含めて、市内中小企業への発注が中心である公園や道路

の維持・修繕、学校施設の営繕などについて、事業費を最大限確保しました。

<参考1> 横浜市中小企業振興基本条例

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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今後の施策の参考資料として、市内中小企業の事業所数、従業者数、産業大分類別の特徴、

設備投資動向を分析します。

事業所数及び従業者数

(1) 総数

平成 28 年の民営の事業所数は 115,641 事業所、従業者数は 1,491,654 人でした。

ここ数年は、事業所数はやや減少傾向、従業者数はやや増加傾向です。

また、他の大都市と比較すると、事業所数では大阪市、名古屋市、従業者数では大阪市に次

いで規模が大きいことが分かります。

<参考2> 市内中小企業の状況

表 2-6 事業所数及び従業者数(平成 28 年 大都市比較)

表 2-5 事業所数、従業者数の推移

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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(2) 産業大分類別

産業別でみると、中小企業者の構成比は高い順に「卸売業・小売業」、「宿泊業、飲食サービス

業」、「建設業」でした。(表 2-7)

一方、従業者の構成比は高い順に「卸売業・小売業」、「製造業」、「サービス業(他に分類され

ないもの)」でした。(表 2-8)

表 2-7 中小企業者・小規模企業者数(平成 26 年 産業大分類別)

表 2-8 中小企業者・小規模企業者の従業者数(平成 26 年 産業大分類別)

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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売上金額・付加価値額

平成 24 年の売上(収入)金額は、多い順に「製造業」、「卸売業・小売業」、「サービス業」でした。

付加価値額は、多い順に「サービス業」、「製造業」、「卸売業・小売業」でした。

出典(表 2-5~2-9):横浜市経済局「データで見る横浜経済 2017」

http://www.city.yokohama.lg.jp/keizai/toukei/yokohamakeizai/index.html

表 2-9 売上(収入)金額及び付加価値額(平成 24 年 産業大分類別)

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特集2「生産性向上」を実現する中小企業支援

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市内企業の設備投資動向

(1) 設備投資の実施状況、予定(2018 年 4 月~2021 年 3 月)

国が「生産性革命・集中投資期間」とする3年間と重なる時期に、「すでに実施した」「予定して

いる(既に実施し追加予定がある場合を含む)」「実施を検討中」の企業は、全体の 59.0%となって

います。業種別では、製造業の 60.6%、非製造業の 57.9%でした。

表 2-10 設備投資の実施状況、予定

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(2) 設備投資額

設備投資(予定)額について、全産業でみると、「1,000 万円以上 5,000 万円未満」(50.5%)が

最も多く、次いで「100 万円以上 500 万円未満」(39.7%)の順となっています。

一方で、製造業の 20.7%は 100 万未満となっています。

出典(表 2-10、2-11):横浜市経済局「横浜市景況・経営動向調査第 106 回(特別調査)」

http://www.city.yokohama.lg.jp/keizai/toukei/keikyo/tokubetsu/106-keikyo-tokubetsu-report.pdf

表 2-11 設備投資額について

【参考・出典】

・横浜市経済局「横浜市中小企業振興基本条例に関する取組」

http://www.city.yokohama.lg.jp/keizai/shinko/

・横浜市経済局「データで見る横浜経済 2017」

http://www.city.yokohama.lg.jp/keizai/toukei/yokohamakeizai/index.html

・横浜市経済局「横浜市景況・経営動向調査第 106 回(特別調査)」

http://www.city.yokohama.lg.jp/keizai/toukei/keikyo/tokubetsu/106-keikyo-tokubetsu-report.pdf