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カスケード・マイクロテック社製 プローブを用いた Agilent Technologies 4291Bによるインピーダンス測定 プロダクト・ノート4291-3 Agilent Technologies 4291B RFインピーダンス/マテリアルアナライザ はじめに “RF回路の設計やICパッケージの評価 のため、高周波での狭ピッチ伝送路 のインピーダンス特性を評価した い”、“誘電体簿膜の容量特性をGHz オーダまで確度良く測定したい”等 のプローブを用いたインピーダンス 測定の要求が高まっています。この プロダクト・ノートでは、これらの 要求を満足する信頼性の高い測定シ ステム(Agilent Technologies 4291B RF インピーダンス/マテリアル・アナラ イザとカスケード・マイクロテック社 製プローブを使用したシステム)をご 紹介いたします。 Agilent Technologies 4291B の概要 4291B 1MHz-1.8GHz RFインピーダン ス/マテリアル・アナライザは、新し く開発されたRF-IV法を採用すること により、広範囲かつ高確度のインピー ダンス測定(基本測定確度:0.8%)を可 能にしました。これにより、従来のネッ トワーク・アナライザによる反射係数 法では困難だったnHオーダのインダク タやlpF程度のコンデンサ等の50Ωか ら離れたインピーダンスの測定が高確 度で行えます。Q(クオリティファク タ)に関しても、先進の校正方法によ り、Q=100を1GHzで15%(代表値) の高確度で測定できます。また、標準 装備の1.8m接続ケーブルにより、測定 確度に影響を与えることなくプローブ 近傍までテスト・ステーションを持っ てゆけるので、高確度で安定なプロー ブ・システムを容易に構築できます。 さらに、大きな誤差要因の1つである プローブの残留インダクタンス等の寄 生成分を強力な誤差補正機能を使って 取り除くことができますので、試料自 体の電気的特性を正確に評価すること ができます。

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カスケード・マイクロテック社製プローブを用いた Agilent Technologies4291Bによるインピーダンス測定

プロダクト・ノート4291-3

Agilent Technologies 4291BRFインピーダンス/マテリアルアナライザ

はじめに

“RF回路の設計やICパッケージの評価のため、高周波での狭ピッチ伝送路のインピーダンス特性を評価したい”、“誘電体簿膜の容量特性をGHzオーダまで確度良く測定したい”等のプローブを用いたインピーダンス測定の要求が高まっています。このプロダクト・ノートでは、これらの要求を満足する信頼性の高い測定システム(Agilent Technologies 4291B RFインピーダンス/マテリアル・アナライザとカスケード・マイクロテック社製プローブを使用したシステム)をご紹介いたします。

Agilent Technologies 4291Bの概要

4291B 1MHz-1.8GHz RFインピーダンス/マテリアル・アナライザは、新しく開発されたRF-IV法を採用することにより、広範囲かつ高確度のインピーダンス測定(基本測定確度:0.8%)を可能にしました。これにより、従来のネットワーク・アナライザによる反射係数法では困難だったnHオーダのインダクタやlpF程度のコンデンサ等の50Ωから離れたインピーダンスの測定が高確度で行えます。Q(クオリティファクタ)に関しても、先進の校正方法によ

り、Q=100を1GHzで15%(代表値)の高確度で測定できます。また、標準装備の1.8m接続ケーブルにより、測定確度に影響を与えることなくプローブ近傍までテスト・ステーションを持ってゆけるので、高確度で安定なプローブ・システムを容易に構築できます。さらに、大きな誤差要因の1つであるプローブの残留インダクタンス等の寄生成分を強力な誤差補正機能を使って取り除くことができますので、試料自体の電気的特性を正確に評価することができます。

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システム構成

4291Bは、カスケード・マイクロテック社製プローブと組み合わせることで、狭ピッチの伝送路等のインピーダンスを高確度で測定することができます。このシステムは、以下の機器により構築されます。

アジレント・テクノロジー製品* 4291B RFインピーダンス/マテリ

アル・アナライザ(1台)* APC7-SMAアダプタ(部品番号1250-1746,1個)

カスケード・マイクロテック社製品* サミット9000シリーズ プローブ・ステーション(1台)

* プローブ・ステーション用ポジショナ、顕微鏡(各1台)

* 4291Bテスト・ステーション取付け用アダプタ・キット(No.106-768、1台)

* SMA(M)-(F)コネクタ付きケーブル(NO.HF-502-6、長さ6インチ、50Ω、1本)

* プローブ(1台)表1参照* インピーダンス基準基板(プローブに適合したものを選択、1個)

カスケード・マイクロテック社製プローブには、表1のように大きく分けて3種類のプローブがあります。この中から、測定要求に合ったものを選択します。

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コンプライアンス・プローブ ウェハー・プローブ ファイン・ピッチ・マイクロ・(FPCシリーズ) (ACP、WPHシリーズ) プローブ(FPM-1X)

電極間隔 固定 固定 可変150-1250μmで選択 100-250μmで選択 0-18mm

主な特長

測定再現性 最良 最良 良

試料に対して約45°でコンタクトする為、ボード等に実装された試料に最適。弾力性のあるプローブ先端により平坦でない試料にプロービング可。

表1.カスケード・マイクロテック社製プローブの選択

11-15°でコンタクト。主にウェハー上の測定に適する。ACPシリーズは弾力性のあるプローブ先端でプロービングが容易。

電極ピンの間隔を任意に設定可能。数mmの段差がある試料にもプロービング可。

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システム構築及び測定手順

システム構築及び測定は以下の手順で行います。

1. 4291Bテスト・ヘッドの選択

4291Bでは、2種類のテスト・ヘッド(測定器先端部)から測定インピーダンスに適した物を選ぶことにより、より高確度なインピーダンス測定ができます。目安として、測定対象物のインピーダンスが10Ω以下の場合は低インピーダンス・テスト・ヘッド(オプション012)を使用し、10Ωより大きい場合には高インピーダンス・テスト・ヘッドを使用します。(ただし、この目安は測定周波数によっても変化しますので、詳細については4291Bデータ・シート等を参照してください。)

2. 4291Bテスト・ステーションの取り付け

4291Bテスト・ステーション取付け用アダプタ・キットをプローブ・ステーションの左後部に固定します。次に、テスト・ステーションをテスト・ステーション取付け用アダプタ・キット上に縦に置きます。その際、テスト・ヘッドとテスト位置(プローブ・ステーションのステージ上で試料を置く位置)の距離が最短になるようにします。テスト・ステーション取付け用アダプタ・キットのクランプで、テスト・ステーションをしっかり固定します。

3. 4291Bの設定

以下の測定項目等を設定します。* スタート/ストップ周波数(周波数

掃引時)* テスト信号レベル* 測定ポイント数(NOP)* ポイント・アベレージング* 補正キット用パラメータ設定

テスト信号レベルは通常はできるだけ大きく設定(1Vrms(1GHz以下の場合)、0.5Vrms(1GHz以上も測定する場合))し、S/N比が最高の状態で測定できるようにします。

測定ポイント数は、一回の掃引あたりのポイント数で、最大801まで設定可能です。より密度の高いデータを望むとき(例えば急峻な周波数特性を細かく調べたい場合)は測定ポイント数を多くし、掃引時間を短くしたい場合には測定ポイント数を少なくします。通常は201以上に設定します。

ポイント・アベレージングは、指定したアベレージング回数に基づいて、校正、補正、測定時に各周波数毎にデータの数学的な平均をとり雑音等のランダムな誤差を軽減します。トレースのノイズをできるだけ取り除くために32以上のアベレージング回数を選択します。

補正キット・パラメータは、補正に用いるインピーダンス基準基板上の各インピーダンス基準の持つ実際のインピーダンス・パラメータで、6.で行う補正をより正確に行うため4291Bに設定します。これらのパラメータ(Copen ,Lshort, Lterm)は使用するプローブおよびその電極間隔によって変化するため、プローブとともに供給されます。(ただし、FPMプローブにはパラメータは供給されないので、理想状態の数値で代用します。)表2に従ってパラメータの入力をしてください。一旦入力した値はUSER COMPEN KITとして登録しておけば、次回からはこれを指定するだけで、適切な補正データが用いられます。

4. 4291Bの校正

4291Bは、テスト・ヘッドのAPC-7端子で校正を行うことで測定確度が有効になります。4291B付属の校正キット(0Ω、0S、50Ω、低損失キャパシタ)を使用して校正を必ず行ないます。

4291Bの校正には、固定点校正(FIXEDCAL)とユーザ定義点校正(USER CAL)の2種類があります。固定点校正は、掃引周波数の全域にわたって、測定器内部であらかじめ定められた校正用周波数点で測定を行い校正用内部データを計算します。校正測定点以外の点での校正データは補間法により計算されます。測定周波数や、テスト信号レベルを変更しても測定確度の仕様を満たしますが補間誤差がでます。一方、ユーザ定義点校正では掃引周波数点と同一の点で補正測定を行い校正用内部データを計算しますので、補間誤差が発生せずより高確度で測定できます。狭ピッチの伝送路や試料のインピーダンスを高確度測定する場合には、ユーザ定義点校正を行ってください。(周波数等を変更した場合には、再度ユーザ定義点校正をする必要がありますので、注意が必要です。)

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4291B補正用入力する値

インピーダンス基準基板 理想状態の値パラメータ名

の数値(FPC,ACP,WPH) (FPM)OPEN:CONDUCT(G) 0 0CAP.(C) Copen 0SHORT:RESIST.(R) 0 0INDUCT.(L) Lshort 0LOAD:RESIST.(R) 50 50INDUCT.(L) Lterm 0

表2.補正キット・パラメータの入力

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5. 4291Bとプローブとの接続

図1をご覧下さい。APC7-SMAアダプタをテスト・ヘッドに接続します。また、APC7-SMAアダプタからカスケード・マイクロテック社製プローブへケーブルを接続します。

6. OPEN/SHORT/LOAD補正

OPEN/SHORT/LOAD補正により、テスト・ヘッドより先にあるケーブル及びプローブの残留インピーダンスを取り除きます。OPEN補正は、試料からプローブを空気中に浮かせた状態で実行します。SHORT補正は、インピーダンス基準基板をプローブ・ステーションのステージ上に置き、その基板上に作られたSHORTを用いて実行します。LOAD補正も同様にインピーダンス基準基板上の50Ωを用いて行います。(注:4291Bには、各種フィクスチャに適した電気長を設定する機能がありますが、LOAD補正を行えば位相シフトも補正されますので、今回の場合設定する必要がありません。フィクスチャを「None」モードに選択します。)

7. 試料の測定

プローブ・ステーションの金属ステージ上面に試料を置きます。測定する位置までプローブを移動させて、確実に接触させます。4291Bで測定パラメータを選択して、測定します。図2に伝送路のLs-Rs測定の結果例を示します。

図1.4291Bとプローブとの接続

図2.伝送路のLs-Rs測定

カスケード・マイクロテック社の製品についてのお問い合わせは下記までお願いいたします。

〒153-0042 東京都目黒区青葉台4-7-7住友青葉台ヒルズビルTEL.03-5478-6100

APC-7®はBunker Ramo Corporationのアメリカ合衆国内における登録商標です。

おわりに

このように4291B RFインピーダンス/マテリアル・アナライザとカスケード・マイクロテック社製プローブを使用することにより、狭ピッチの伝送路やウェハー上の微小コンデンサ等のインピーダンス測定を1.8GHzまで高確度で実現できます。