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多様なデータを測定するベクターのソリューション ホワイトペーパー

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Page 1: 多様なデータを測定するベクターのソリューション …...多様なデータを測定するベクターのソリューションMeasuring Everything 3 1 あらゆるものを、余すところなく測定する

多様なデータを測定するベクターのソリューション

ホワイトペーパー

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多様なデータを測定するベクターのソリューション

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目 次

1 あらゆるものを、余すところなく測定する .......................................................................................................................................... 3 1.1 CANape の測定コンセプト ............................................................................................................................................................. 4 1.2 レコーダーPC ハードウェア ............................................................................................................................................................. 5 2 ECU 内部データへのアクセス ........................................................................................................................................................ 6 2.1 例:ECU ........................................................................................................................................................................................ 9 2.2 例:トランスミッション ECU............................................................................................................................................................... 9 3 自動運転を目的としたセンサーデータの取得 ................................................................................................................................. 10 3.1 レーダーセンサーからの生データの取得 ....................................................................................................................................... 10 3.1.1 2GB/秒を超える実際例 ............................................................................................................................................................... 10 3.2 ビデオセンサーからのデータの取得 .............................................................................................................................................. 11 4 バスアクセス ................................................................................................................................................................................ 12 5 アナログ測定データの取得 ........................................................................................................................................................... 13 6 内燃機関の測定........................................................................................................................................................................... 14 7 DIN EN 61010 に準拠した高電圧測定 ........................................................................................................................................ 14 8 診断データ ................................................................................................................................................................................... 15 9 GPS を介したドライバーデータの取得 ........................................................................................................................................... 16 10 ビデオを使用した運転状況の記録 ................................................................................................................................................. 17 11 仮想 ECU からの測定データの取得 ............................................................................................................................................. 18 11.1 Simulink での仮想 ECU ............................................................................................................................................................. 18 11.2 CANape での仮想 ECU.............................................................................................................................................................. 19 11.3 CANoe での仮想 ECU ................................................................................................................................................................ 20 11.4 Silver での仮想 ECU .................................................................................................................................................................. 20 12 エンジニアリングサービス ............................................................................................................................................................. 21 13 用語集 ......................................................................................................................................................................................... 22

V1.0 07/2017

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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1 あらゆるものを、余すところなく測定する

1 つのアルゴリズム、またはシステム全体の機能を評価するには、それに関わる特性を測定して記録しなければなりません。これはラボやテストベ

ンチで、あるいは車両テストの間に、CANape などの測定/キャリブレーションシステムを使用して行われます。

測定データには同期的な記録が求められますが、自動車関連の領域には、以下に示すように多種多様なデータソースが存在します。

> ECU 内部値のデータ。これを収集するデータレートは ECU ごとに最大 50MB/秒に達する場合もあります

> 車両環境を完全に感知するために使用されるレーダー、LIDAR、ビデオ、超音波などのセンサー。これらのセンサーはセンサー当たり最大

100MB/秒のデータストリームを生成する場合もあります

> ECU 間の連携をモニタリングするための通信バス。これらには長い実績のある CAN、LIN、MOST、FlexRay などのシステムが使用される

ほか、新たに導入された車載 Ethernet などの使用も拡大しています

> 温度や電圧特性といったアナログ/デジタルの測定値。たとえばインバーター電圧特性を評価する際は、しばしば数百 kHz に及ぶ極めて高

いスキャンレートが高調波の検出に必要になります

> 運転状況を記録したり、ドライバーを観察したりするためのカメラ。カメラのデータレートは解像度、1 秒当たりの画像の数、使用される圧縮方

法などに大きく依存します

> 測定データと車両位置の関係を決定するための、GPS から得られる位置情報。GPS レシーバーの位置精度が上がるほど、データレートも

高くなります

> OBD インターフェイスから取得できる、車両の診断情報

こういったソースの組合せと数によっては、取得するシグナルは時に数十万個に及びます。そして、それらのインターフェイスの特性やデータソース

の時間的な挙動が持つ多様性は、同期記録を行う測定ツールにとって大きな課題となります。

この資料では、どうすれば CANape であらゆるものを余すところなく測定できるのか、そして他の製品をどのように統合すれば、完全なソリューシ

ョンを構築できるのかの概要を説明します。

図 1: CANape は幅広いソースから測定データを同期して収集します

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CANape はシグナルやメッセージの形でデータを取得し、同期を処理し、標準の ASAM 形式である MDF 形式の測定ファイルにそれらを記録し

ます。CANape 内ではこの記録は「レコーダー」を使用して管理されています。これらのレコーダーでは、イベントによるトリガーか、継続的な記録

が可能です。

さまざまな測定ソリューションの概要:

センサー測定技術:CANape を使用してレーダー、ビデオ、LIDAR などの多様なセンサーを捉え、そのデータを保存できます。データにはセンサ

ー内で処理され、一般的には XCP で測定されるデータと、センサー生データがあります。センサー生データは標準化されたプロトコルでは伝送さ

れず、そのアクセスは適合されたレコーダーを介して行われます。

バス測定技術:ベクターのインターフェイスを介して、一般的な車両バス、すなわち CAN、CAN FD、FlexRay、LIN、Ethernet を CANape に接

続します。CANape は伝送されるシグナルと完全なメッセージの両方にアクセスします。

ECU 測定技術:CCP や XCP を使用して、ECU の変数やメモリー内容への柔軟な読取り/書込みアクセスを可能にします。XCP を使用するこ

とにより、ECU 内の XCP ドライバーでデータが処理されている場合でも、あるいは測定およびキャリブレーションハードウェアの VX1000 経由で

アクセスを行う場合でも、問題なく対応できます。

アナログ測定技術:アナログ値はさまざまなインターフェイスを介して取得できます。スキャンレートへの要求は最大で数百 kHz に達する場合もあ

り、必要なデータ容量には大きな幅があります。そのため、ソリューションには CAN、USB、Ethernet などのさまざまなインターフェイスが利用さ

れています。

デジタル/アナログ入出力:DAIO インターフェイスは、ほとんどの測定ソリューションを統合できる、オープンなプログラミングインターフェイスです。

診断測定技術:ECU の診断データには KWP2000 または UDS を介してアクセスします。車両固有のデータは OBD を介して入手できます。

位置情報:路上テスト中はしばしば、車両の位置と測定値の関係を正確に把握できることが求められます。評価の際に地理的な状況を考慮できれ

ば、記録した測定データの解釈が非常にしやすくなるのです。CANape は CAN バスデータから、あるいは独立した GSP レシーバーを介して、

位置情報を記録します。

リファレンスカメラ:リファレンスカメラにはビデオカメラが使用されます。これらは一般的に USB で接続され、運転状況を記録します。ビデオベース

のセンサーはデータ処理も行いますが、リファレンスカメラはそれとは異なり、ビデオデータしか提供しません。CANape はデータを取得し、それを

他の測定ファイルと同期して、ビデオ形式(AVI)で保存します。

録音:ビデオデータ以外にも、CANape はマイクを使用してオーディオデータを記録し、測定データと同期して保存します。

1.1 CANape の測定コンセプト

各種のデータソースが記述ファイルに定義されており、それらが CANape で「デバイス」として作成されます。ユーザーが希望するシグナルとメッ

セージを記述ファイルから選択し、それらを視覚化するかどうかを選択すると、「デフォルトレコーダー」がこれらの選択を受け入れて、測定準備が

整います。

CANape では複数のレコーダーを並行して使用できます。レコーダーは測定値を測定ファイルに保存します。各レコーダーはそれぞれの測定ファ

イルに書込みを行います。基本的な測定形式である MDF には、シグナルやメッセージに応じたさまざまなバージョンが存在します。BLF はバスメ

ッセージ、AVI はビデオ/オーディオの記録にそれぞれ使用されます。

1 つの CANape プロジェクトには、最大で 16 個のレコーダーを定義できます。レコーダーは測定の開始から継続的に、あるいはトリガーイベント

ごとに測定を行います。レコーダーにはシグナルのソース/デバイスが割り当てられます。

デバイスタイプの中には、「Distributed High Performance Recording(分散型ハイパフォーマンスレコーディング)」モードへの切替えが可能

なものもあります。XCP on Ethernet でアクセスする ECU、レーダー、ビデオセンサー、リファレンスカメラなど、高いデータレートを提供するデバ

イスがこれにあたります。このモードのデバイスは、レコーダーを介してそれ独自の測定インスタンスに割り当てられます。 この測定インスタンスは

CANape と同じコンピューター上で実行させることも、CANape コンピューターに Ethernet を介して接続されている別の PC 上で実行させること

もできます。これによって負荷全体を 1 つ以上の PC に最適に分散でき、ほぼどのような量のデータも、このスケーラブルな PC クラスター、すな

わち DHPR (Distributed High Performance Recording) を使用して取得できるようになります。

インスタンスはすべて CANape 内から管理および制御されます。測定の開始/停止などのアクションのトリガーや、トリガーの開始は同期的に行

われます。

新しい DHPR モードは ADAS 技術専用に開発されたものです。ADAS センサーには生データを転送するための個々のプロトコルが装備されて

いるため、それぞれのセンサータイプを、それに合わせて適合したインスタンスを通じて統合する必要があります。DHPR アーキテクチャーにより、

異なるセンサータイプを CANape でいつでもサポートできるようになります。

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図 2: 「Distributed High Performance Recording」によるスケーラブルなソリューション

このソリューションには以下のような利点があります。

> 標準のレコーダーを使用して、1 つの測定タスク全体を分割できます。たとえばレコーダーを使用して、1 から 2 にシフトするギアシフト操作に

属するすべてのシグナルを、1 つの測定ファイルに書き込むことができます。ギアチェンジの操作前に x 秒のリードタイム、その後に y 秒のフ

ォローオンタイムを追加することもできます

> High Performance Recorder(ハイパフォーマンスレコーダー)は、センサー技術と XCP on Ethernet デバイスのための、個別のインター

フェイスを提供します。これらのレコーダーは PC 上のリソースをフル活用するだけでなく、複数のコンピューターをまたいだデジタル記録にも

利用できます

> 使用する PC の数に関わらず、必要な CANape ライセンスは 1 つのみです

> レコーダーはいずれも、それらの PC のうち 1 台にインストールされている CANape から設定されます

> トリガーイベントの同期と開始は、CANape により正確に行われます

> 各レコーダーはそのデータを独立した測定ファイルに書き込みます。その結果、個々のファイルが小さくなり、処理が簡単になります。センサ

ーのデータをメーカーや開発パートナーと共有する必要があっても、シグナルを分割して個別のファイルに保存する必要はありません

> ある測定に対する測定ファイルは、すべて同期されます

1.2 レコーダーPC ハードウェア

1 台の PC でどのようなアプリケーションにも対応できるよう、PC ハードウェアと CANape からなる完全なソリューションが用意されています。ど

ちらのコンポーネントも、エネルギー管理、ハードディスクの処理、Ethernet ポートを介した測定の実行の面で互いに協調しており、ソリューション

の最適化が図られています。そのため、この完全なソリューションでは、最大 1GB/秒の測定データの記録が可能となっています。

このソリューションには以下のような利点があります。

> CANape がインストール済みの高性能のモジュール式の PC プラットフォーム

> ハードディスク容量を、1 スロットで最大 8 個のディスクからなる RAID システムに分散(たとえば合計 16TB になる複数の SSD ディスク)

> ハードディスクのスロットは簡単にアクセスでき、交換もわずか数ステップで実行可能。それ以外の場合は、測定ファイルを迅速にダウンロー

ドするための 10GB Ethernet インターフェイス、USB 3.0 インターフェイス、独立した読出しステーションのいずれかを利用できます

> Gigabit Ethernet による VX1000 ベースモジュールの接続

> 設置が簡単な完全なシステム

> 配線のコストが少ない

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ベクターの関連製品:

製品名 機能

CANape 汎用的な測定およびキャリブレーションツール。バージョン 15.0 からは「Distributed High Performance Recording」が標準装備されています。CANape と PC プラットフォームで構成され

た完全なシステムの購入が可能です。CANape はハードウェアにあらかじめインストールされてお

り、システム全体がデータロガーとしての用途に最適化(エネルギー管理、Ethernet 設定、RAID シ

ステムなど)されています。

2 ECU 内部データへのアクセス

この章では、診断プロトコルを使用しない ECU データへのアクセスに焦点を当てます。診断データを介したアクセスについては、別途説明します。

ECU の内部データに直接アクセスするには、以下の 3 種類の方法があります。

> XCP プロトコルは ECU にドライバーとして実装されています。通信は CAN や FlexRay などのバスインターフェイスを介して行われます

> データアクセスは DAP、Autora、JTAG といったマイクロコントローラー固有のインターフェイスを介して行うこともできます。これは POD(プ

ラグオンデバイス)とベースモジュールからなる、測定およびキャリブレーションハードウェアの VX1000 を介して行われます。POD は ECUのごく近くに置かれ、インターフェイス固有のデータストリームをベースモジュールに伝送します。ベースモジュールは POD のデータストリー

ムを XCP on Ethernet に変換します

> XPOD (XCP-POD) は XCP on 車載 Ethernet データを直接配信します。そのためベースモジュールは不要で、必要になるのは車載

Ethernet から USB/Ethernet へのコンバーターのみです

図 3: PC と ECU の間のさまざまな接続

XCP とバスインターフェイスを介したアクセス方法には、量産車内の ECU データにも原則としてアクセスできるという強みがあります。ただし、そ

の測定データのスループットは最低サンプリングレートと最大データ容量の両方によって制限され、CAN であればこれは約 50kbps、最低サンプ

リングレートは 1ms になります。なお、これはその CAN バスが他のバス通信に使用されていない場合の想定値です。これ以外にも ECU の

CPU 時間やメモリーといったシステムリソースがさらに必要になります。

VX1000 ソリューションを使用すれば、はるかに高いサンプリングレートと大きなデータ容量が扱えるようになります。この場合のパフォーマンスを

決定する因子は、コントローラー固有の ECU インターフェイスです。

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表 1: 使用可能なコントローラーインターフェイスとパフォーマンスデータの一覧

コントローラーインターフェイスは POD に接続されます。これは ECU 内部か、ECU のごく近くに置かれます。POD には HSSL、POD、シリアル

の 3 種類があり、それらの名称はその POD の各接続技術に由来しています。

図 4: 各種 POD(HSSL、XPOD、シリアル)の外観の比較

HSSL-POD である VX1452 は、ECU コントローラーに搭載された Aurora、Nexus Class 3、RTP などのデータトレースインターフェイスを利用

します。最大データレートはインターフェイスに依存しますが、数十 MB/秒程度です。データはコントローラーに負荷を与えずに伝送されます。

シリアル POD である VX1544 は、コントローラーの JTAG や DAP などのシリアルインターフェイスを利用します。コントローラーから測定データ

を伝送する際にはある程度の CPU 負荷が発生します。最大データレートは数 MB/秒程度です。

これらの POD はベースモジュールに接続され、そのベースモジュールが XCP on Ethernet のデータストリームにデータを変換し、CANape、CANoe、Etas INCA といった XCP マスターがそれを利用します。

ベースモジュールには、CAN、FlexRay、Ethernet/車載 Ethernet などのインターフェイスも装備した、さまざまな設計のものがあります。

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図 5: VX1000 ベースモジュールと POD

XPOD である VX1621 は XCP on Ethernet データストリームを直接配信するため、ベースモジュールとは異なります。そのため、PC に接続す

るための VX1000 ベースモジュールは不要で、車載 Ethernet から PC インターフェイスへの物理的な変換があれば十分です。XPOD は、

VX0312 や VN5640 を使用するなどして、ベクター製ハードウェアの任意の車載 Ethernet インターフェイスに接続できます。

たとえば、VX0312 は Ethernet/車載 Ethernet を USB に変換します。CANape や CANoe を使用していれば、PC でのネットワークやファイ

アウォールの設定はいりません。そのため管理者権限がなくても、ハードウェアやデータに簡単にアクセスできます。

図 6: VX0312(USB から車載 Ethernet/Ethernet へのコンバーター)、VN5640 Ethernet(16 チャンネル)、VN5610A(Ethernet 2 チャンネル)

VX1000 に関する情報:

> Web サイト

> VX1000 システムコンポーネントチャート

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ベクターの関連製品:

製品名 機能

VX1060、VX1132、VX1135 PODデータをXCP on Ethernetに変換するベースモジュール。

VX1452 コントローラーのトレースインターフェイス(Aurora、NEXUS Cl.3、RTPなど)への高速接続

を目的としたHSSL POD。

VX1544 コントローラーのインターフェイス(JTAG、AUD、DAPなど)への高速接続を目的としたシリア

ルPOD。

VX1621A コントローラー固有のXCP on BroadR-Reachへのインターフェイスの実装を目的とした

XPOD。

VX0312 CANインターフェイスを持つUSBからEthernetへのコンバーター。ファイアウォールやネット

ワークの設定なしでCANapeおよびCANoeと連携できます。

VN5610A IEEEの標準規格である10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-Tに対応する独立した

Ethernetチャンネルを2個または16個装備。高速CAN/CAN FDチャンネルも2個装備しま

す。

VN5640 PODデータをXCP on Ethernetに変換するベースモジュール。

2.1 例:ECU

VX1000 ソリューションは電動のセクターのほかディーゼルとガソリンの両セクターに使用されます。内燃機関に携わるアプリケーションエンジニア

は、その多くが約 3,000 個から 4,000 個のシグナルと、約 3MB/秒から 5MB/秒のデータ容量を必要とします。コールドスタート測定や RAM と

フラッシュメモリーの間のページ切替えといったトピックへの対応も必要であるため、ECU は全体的に非常に複雑です。POD を ECU の傍に配置

する必要があるため、温度範囲に対する特別な要求が生じる点も考慮しなければなりません。

2.2 例:トランスミッション ECU

トランスミッション ECU がオイルパンに配置されている場合、それには伝統的に CCP もしくは XCP on CAN でしかアクセスできません。そのた

め、利用可能な測定帯域幅は大きく制限されます。

用意されている VX1000 ベースのソリューションを利用すれば、最大 5MB/秒というはるかに高いデータレートを達成できます。専用のオイルパ

ンの壁面に、延長ケーブルを使用してコントローラーインターフェイスを設置し、接続ケーブルに組み込まれている POD をオイルパンのハウジン

グにあるコネクターに接続します。

図 7: ケーブルとそれに組み込まれている POD を、専用のオイルパンに接続します

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3 自動運転を目的としたセンサーデータの取得

自動運転車には周囲の状況を検出するためのセンサーが必要で、よく使用されるのはレーダーやビデオセンサーです。 開発フェーズ中は、これ

らのセンサーデータを取得して保存しなければなりませんが、そのデータ容量は非常に大きく、最大でセンサー当たり 100MB/秒のデータが生成

されます。

ベクターの ADAS ソリューションに関する詳細情報は、Web サイトに掲載されています。

3.1 レーダーセンサーからの生データの取得

レーダーを用いた測定技術には、データ伝送に関する課題がいくつかあります。生データの取得には XCP 標準のプロトコルは使用されません。

そのため CANape は、それぞれのセンサーに合わせて正確に適合されている、High-Performance Recorder を使用します。

図 8: High-Performance Recorder を使用した、2 台のコンピューターに分散した測定設定

3.1.1 2GB/秒を超える実際例

次に紹介するのは 2 台の産業用 PC と 1 台のタブレットからなるセットアップです。これらの産業用 PC は、合計 7 台のレーダーセンサー

(VX1000 経由)、1 個の ECU(VX1000 経由)、4 台のリファレンスカメラを備えたシステム本体に接続されています。データは High-Performance Recorder (HPR) を使用して記録されます。 CANape はタブレット PC にインストールされており、これを使用してセットアップ全

体を設定および制御します。タブレットと産業用 PC の間の接続は Ethernet(無線 LAN)で行われます。HPR は制御シグナルと、1 秒当たりの

フレーム数が調整可能なビデオ画像をタブレットに配信し、ユーザーはこれを通じてシステムが稼働しているかどうかを確認できます。

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図 9: 測定データレートが 2GB/秒を超えるセットアップの概要

図 10: アルミ製のフレームを使用したセットアップ。机の上の緑の数字は現在の書込みレート、2019.893MB/秒を示しています

3.2 ビデオセンサーからのデータの取得

CANape は 2003 年からカメラの統合をサポートしており、現在では運転状況だけでなく、ドライバーの行動の記録も可能となっています。これら

のカメラは「リファレンスカメラ」と呼ばれます。詳しくは「ビデオを使用した運転状況の記録」の章を参照してください。

自動運転の分野では、リファレンスカメラとは別のカメラシステムがビデオセンサーとして使用されます。その役目は周囲の状況を記録して、画像

解析を通じてオブジェクトを特定し、たとえば交通標識を認識したり、運転状況を評価したりすることです。ビデオセンサーが画像素材を他のシステ

ムに提供することは通常はなく、配信するのは検出されたオブジェクトに関するデータです。CANape は MobileEye カメラモジュールなどのビデ

オシステムをサポートしますが、それらはオブジェクトを検出し、そのオブジェクトに関する情報を CAN シグナルとして提供します。

ベクターの関連製品:

製品名 機能

CANape CANapeはさまざまなメーカーの各種ビデオセンサーをサポートしており、その数も着実に増加

しています。

オプションドライバーアシス

タンス CANapeのオプションの機能拡張で、これを使用してADASアルゴリズムの結果を評価できま

す。車両で検出されたオブジェクトは、俯瞰視点からのグラフィックオブジェクト(矩形や線)とし

て、ビデオ画像に重ねて描画されます。

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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4 バスアクセス

ベクターは CAN、CAN FD、FlexRay、LIN、Ethernet、車載 Ethernet など、自動車分野で一般的に使用されているすべてのバス接続に対応

する物理的なインターフェイスを幅広く提供しています。

CANape はそれらの物理的なインターフェイスを、それぞれのハードウェアと記述ファイルを組み込むことによってサポートし、ユーザーがそれら

のバスデータにアクセスできるようにします。CANape はシグナル指向/メッセージ指向の両方でデータを表示し、保存します。

図 11: CANape のトレース Window での CAN バス表示

ベクターのネットワークインターフェイスに関するその他の情報は、Web サイトに掲載されています。

ベクターの関連製品:

製品名 バスシステム

VN8900 (VN8950)、VN1600ファミリー CAN、CAN FD、LIN

VN5610、VN6540、VX0312 Ethernet、車載Ethernet、CAN、CAN FD

VN8970 、 VN8972 、 VN7600 、 VN7610 、

VN7572 FlexRay、CAN、CAN FD、LIN

VX1000製品ファミリー PODのECUへのアクセス、CAN、CAN FD、FlexRay

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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5 アナログ測定データの取得

アナログの測定値はデジタル化してからでなければ記録できません。アナログ値はセンサーを使用して取得され、測定モジュールを介してメッセー

ジに変換されます。

図 12: さまざまな方法によるアナログ/デジタルの測定値の取得

CANape は、CAETEC、CSM、ETAS、HBM、Ipetronik、National Instruments をはじめとする、多様な測定技術のメーカーを多数サポート

します。一部のメーカーの測定モジュールは CANape 内から直接設定できます。CAN や XCP on Ethernet などの標準インターフェイスを使用

すれば、物理的なアクセスを直接行うことができます。

図 13: モジュールを使用した、800kHz のサンプリングレートでの測定の例

ただし、CANape はそれに限定されません。CANape には、I/O 測定技術を統合するための汎用インターフェイスが装備されています。DAIO (Digital/Analog Input/Output) インターフェイスを使用すれば、その他にも測定技術ソリューションを統合できます。必要なドライバーは、お客

様が独自に開発することも、サービスとしてベクターから購入することもできます。

詳細情報は Web サイトに掲載されています。

ベクターの関連製品:

製品名 機能

CANape さまざまなメーカーに対応した測定データの取得

vMeasure CSM CSM測定モジュールを使用するための測定ソフトウェア

vMeasure exp 任意の測定モジュールのアナログセンサーのシグナルとECUの測定値を取得するための測

定ソフトウェア

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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6 内燃機関の測定

ここには、電圧や温度で一般的に使われる測定技術のほか、排気システムで NOx やラムダなどを測定するための測定技術も存在します。

CSM の OEMkである LambdaCANc は、CAN メッセージを介してラムダ測定値を提供します。プローブには標準の量産プローブ(LSU 4.2、4.9、ADV など)を使用できます。

図 14: ラムダ測定システム

You c さらに詳しい情報は、CSM 社の web サイトでご覧ください。

7 DIN EN 61010 に準拠した高電圧測定

高電圧の車載ネットワーク、たとえば高電圧バッテリーパック、高電圧二次電池、パワーエレクトロニクスなどを直接測定するには、専用の安全策

が必要です。これにはセンサー/バッテリーからデータ取得システムまでをカバーする、高電圧下でも安全な測定チェーンも含まれます。CSM 製

の HV 測定技術には、測定モジュール、ケーブル、コネクターも含め、DIN EN 61010 に準拠した複数のレベルの安全コンセプトが装備されてい

ます。

ベクターの測定ソフトウェアにシームレスに統合できる CSM 製の測定モジュールにより、温度や電圧を測定するための、信頼性の高いソリューシ

ョンが実現します。

図 15: CSM 測定システムを使用した、HV 環境における測定セットアップの例

さらに詳しい情報は、CSM 社の Web サイトでご覧ください。

ベクターの関連製品:

製品名 機能 CANape さまざまなメーカーのソリューションに対応する、完全な測定および解析ソフトウェア

vMeasure CSM CSM 測定モジュールを使用するための測定ソフトウェア

vMeasure exp さまざまなメーカーの測定ソリューションに対応する測定ソフトウェア

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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8 診断データ

CANape では、ECU や車両内の診断データに対するシンボリックアクセスが可能です。 これらの診断データやサービスは記述ファイルで定義さ

れます。CANape は、UDS(CAN、FlexRay、Ethernet)および KWP2000(CAN、K-Line)の診断プロトコルで利用される、CDD や ODX な

どの多様な記述形式をサポートします。

CANape は ODB を使用するための記述ファイルを内部的に提供します。そのため ODB データには、OBD デバイスをデバイス設定で作成す

るだけでアクセスできます。

診断データの読取り/書込みアクセスはユーザーからは透過的に行われます。データの取得や変更に必要なサービスは CANape がバックグラ

ウンドで管理します。

シグナルやパラメーターを表示および使用するための標準の Window に加えて、診断 Window、フォールトメモリーWindow、OBD Windowといった診断固有のその他の Window も用意されています。

図 16: データ、サービス、フォールトメモリーにアクセスするための診断専用の Window

さらに詳しい情報は、Web サイトでご覧ください。

ベクターの関連製品:

製品名 機能 CANape 広範な診断機能を備えた測定およびキャリブレーションツール。

ODXStudio CANape に同梱されている ODX ファイルのビューアー。エディターとしても利用できます。

CANdelaStudio CANapeに同梱されているCDDファイルのビューアー。エディターとしても利用できます。

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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9 GPS を介したドライバーデータの取得

GPS の位置情報は、独立した GSP レシーバーまたは CAN メッセージを介して入手できます。このデータは記録して視覚化したり、オフラインの

データ解析に使用したりできます。また、OpenStreetMap などのサービスとそのデータを組み合わせることにより、テストルートや軌跡を簡単に

描画できます。

データは関数やスクリプトに使用したり、GPS Window にルートとして表示したりできるほか、表示 Window 内にシグナルとして表示することが

できます。時間同期されている Window を使用すれば、テスト走行時の時間的および空間的な概要を把握することができます。

図 17: GPS Window とグラフィック Window でのルート表示。どちらの Window でも速度が色の変化で表されます

ベクターの関連製品:

製品名 機能

CANape, vMeasure CSM, vMeasure exp

これら 3 つの製品はいずれも位置情報の記録と表示をサポートします。

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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10 ビデオを使用した運転状況の記録

リファレンスカメラからのビデオの記録は、測定データを正しく解釈するのに有効です。これらを車両に搭載して、ドライバーの行動や、車両前方ま

たは後方の運転状況を記録することができます。CANape を使用すれば、ビデオデータを他のすべての測定データと同期的に記録し、それらを

個別の AVI ファイルに保存できます。

リファレンスカメラは、さまざまな方法で CANape に統合できます。

> DirectShow:カメラにすでに DirectShow インターフェイスが装備されている場合、CANape はその画像データに直接アクセスします

> CANape で AVB (Audio Video Bridging) カメラをデバイスとして作成し、直接使用します

> ベクターが SDK(ソフトウェア開発キット)を使用してドライバーを開発し、CANape でカメラがサポートされるようにします

ドライバーが用意されている場合は、CANape のデバイスマネージャーでデバイスとしてカメラを作成し、すぐに使用することができます。

図 18: CANape でのリファレンスカメラのビデオ表示

ドライバーアシスタンスシステムの開発を目的として、CANape には、オプションドライバーアシスタンスを使用して、ビデオ画像を追加の情報と一

緒に表示できる機能が用意されています。オブジェクトを距離情報と併せて表示できる、俯瞰視点からの結果表示も可能です。

図 19: CANape でのリファレンスカメラのビデオ表示に、センサーによって検出されたオブジェクトをオーバーレイ表示。俯瞰視点での結果とビデオ画像を表示できます

その他の情報については、以下をご覧ください。

> ADAS ソリューション

> CANape オプションドライバーアシスタンス

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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ベクターの関連製品:

製品名 機能

CANape CANape は PC 上のすべてのビデオデータに、DirectShow を介してアクセスします。これに

はその他のオプションは不要です。

Driver Assistance option CANape のオプションの機能拡張で、これを使用して ADAS アルゴリズムの結果を評価でき

ます。環境の情報は、俯瞰視点からのグラフィックオブジェクト(矩形や線)として、ビデオ画像に

重ねて描画されます。

vADASdeveloper vADASdeveloper は、ドライバーアシスタンスシステムのアルゴリズム(センサーデータの統合

など)の開発に必要なインフラストラクチャーを利用可能にします。実行環境にはカメラ、レーダ

ー、CAN などからのセンサーデータが含まれ、それを取得して記録し、再生してスティミュレー

ションに利用できます。

vADASdeveloper run ランタイムライセンスでは、vADASdeveloperで開発されたすべてのアプリケーションの実行、

たとえば、多数の車両のライブデータの記録などが可能です。

11 仮想 ECU からの測定データの取得

ECU やバスシステムなどの一般的なデータソースに加え、PC ベースのランタイム環境からのデータも測定できます。このようなランタイム環境は

仮想 ECU の演算処理に使用されます。

ここで課題になるのは、CANape と仮想 ECU の間の同期です。実物の ECU はリアルタイムで動作しますが、PC ベースの環境はリアルタイム

よりも有意に速く、あるいは遅く動作する可能性があります。CANape は仮想 ECU のタイムスタンプを XCP を介して伝送し、それらを CANapeのタイムベースに使用することで、自身の動作を仮想 ECU の時間的な挙動に完全に合わせることができます。

11.1 Simulink での仮想 ECU

開発者は、コードを生成する前のフェーズで、Simulink を使用してアルゴリズムをテストします。これには以下が求められます。

> アルゴリズムをスティミュレーションする入力値が存在すること

> シグナルのシーケンスが取得され、表示されること

> パラメーター値を最適化すること

Simulink XCP サーバーを Simulink モデルに追加すると、XCP によるモデルへの直接アクセスが可能になります。このサーバーはまた、モデ

ルに含まれているオブジェクトの A2L ファイルと CANape プロジェクトも直接生成するため、CANape でシグナルシーケンスを直接測定し、パラ

メーターを調整するのに必要なものがすべて揃います。

図 20: Simulink XCP サーバーを Simulink モデルに統合すると、XCP 接続が使用可能になります

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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メリット:

> これを使用して、モデルのすべての測定値を取得できる

> XCP on Ethernet インターフェイスにより、CANape と Simulink を 2 台の異なる PC 上で実行させることができる

> マップなどのパラメーターを CANape で簡単に変更し、モデルに書き込むことができる

> 既存のパラメーターセットをモデルに簡単に読み込むことができる(MATLAB ワークスペース)

> インターフェイスを介して、データを CANape からモデルに直接伝送することもできる。そのため、モデル内で測定ファイルをどう統合するか

を気にすることなく、測定ファイルからの入力ベクトルをモデルの入力に直接リンクできます

> Simulink でモデルを視覚化するだけでなく、CANape でもモデルを表示できる

さらに詳しい情報は、Web サイトでご覧ください。

ベクターの関連製品:

製品名 機能

CANape モデルへのXCPインターフェイスをECUへのインターフェイスと同じ方法で使用するほか、

Simulinkモデルのタイミングと完全に適合して動作します。

Simulink XCP Server option CANapeとモデルとの間でXCPインターフェイスが使用できるようにします。さらに、モデル

のA2LとCANapeプロジェクトをボタン1つで生成します。

11.2 CANape での仮想 ECU

CANape は DLL を統合する機能をサポートするため、たとえばターゲットプラットフォームである CANape 用に、ネットワークノードをマッピング

するコードを Simulink モデルから生成することが可能です。これと同じ機能を、モデルベースのアプローチを使用せずに、CANape 用のコードを

使用して直接記述することもできます。

DLL は CANape にデバイスとして統合され、A2L として記述されます。CANape には XCP で DLL に直接アクセスする機能が装備されていま

す。ユーザーはモデルの入力を CANape からのシグナルに直接リンクできます。 その結果、DLL 内のアルゴリズムは演算処理に必要なデータ

を XCP 接続から受け取るようになり、ユーザーは希望する値にパラメーターを設定したり、希望するすべての値を DLL から直接測定したりできる

ようになります。

図 21: アルゴリズムデザイナーを使用して、DLL に入力シグナルを与えたり、相互にリンクしたりできます

DLL は測定中も実行されるため、ユーザーは DLL の結果を ECU の結果と並行して表示し、比較できます。これによって DLL 内の新しいアル

ゴリズムを ECU 内のアルゴリズムと比較して直接評価できるようになります。

DLL の動作時の挙動が PC のタイミングによって左右されないよう、リアルタイムプラットフォームの VN8900 を使用してこれを防ぐことができま

す。VN8900 が CANape に接続されていれば、ユーザーは DLL を移動して、VN8900 で実行されるようにすれば済みます。これによってアル

ゴリズムは、VN8900 内部のリアルタイムコア上で演算処理されるようになります。

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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ベクターの関連製品:

製品名 機能

CANape 仮想ECUのためのDLL形式のランタイム環境。開発フェーズ中であっても、実行時に仮想の測定

値とパラメーターにアクセスし、モデル内のプロセスを検査および最適化できます。

VN8900 リアルタイムプラットフォーム上の仮想ECUのためのランタイム環境。

11.3 CANoe での仮想 ECU

CANape と同様に、CANoe も DLL を統合する機能をサポートします。たとえばターゲットプラットフォームである CANoe 用に、ネットワークノー

ドをマッピングするコードを Simulink モデルから生成することが可能です。この場合、ネットワークノードは仮想 ECU であり、それが他の実際の

ECU、あるいは仮想の ECU と一緒に動作します。

コードを生成し、コンパイラーを実行すると、CANoe にシームレスに組み込むことのできる DLL が利用可能になります。コード生成プロセスの間

に、DLL に XCP インターフェイスが与えられ、実行時に CANape がそれを通じて CANoe 側の DLL と測定やキャリブレーションの接続を確立

できることが保証されます。

図 22: モデルは CANoe で実行され、CANape に直接 XCP 接続します

ベクターの関連製品:

製品名 機能

CANape 開発フェーズ中であっても、実行時にCANoe内の仮想の測定値とパラメーターにアクセスし、モデル内

のプロセスを検査および最適化できます。

CANoe CANoeは、車両ネットワーク全体および単体ECUを開発するための汎用ソフトウェアツールで、車両の

プランニングから最後のシステムテストに至る開発プロセス 全体を通して、ネットワーク設計者、開発エ

ンジニア、テストエンジニアをしっかりと支援します。

11.4 Silver での仮想 ECU

QTronic 社の Silver は、ECU コードを Windows に移植し、路上テスト、テストベンチ、HiL などの開発タスクを Windows PC に移行できるよ

うにする製品です。 これによって、シミュレーションされた車両を使い、PC 上で仮想 ECU を閉ループで操作できるようになります。

この仮想 ECU には XCP on Ethernet を介してアクセスするため、 仮想 ECU のパラメーターを直接変更し、測定を通じてその効果を直ちに記

録することが可能になります。

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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図 23: CANoe と同じく、QTronic ソリューションでも XCP を介してモデルに直接接続できます

さらに詳しい情報は、テクニカルアーティクル(PDF)でご覧ください。

12 エンジニアリングサービス

お客様が ECU のキャリブレーションに専念できるよう、ベクターは具体的なタスクに適したノウハウと、カスタマイズした完全なソリューションの両

方を提供して、お客様を支援します。

これらのサービスには以下のものがあります。

> 利用可能な機能を最適に使用し、作業プロセスの効率を高めるためのコンサルティング

> 測定データ評価の自動化

> モデルベース開発と MATLAB/Simulink の統合のサポート

> 内製ツールチェーンからベクターのソリューションへの移行

> 複雑なコンフィギュレーションの作成と保守

> FlexRay や XCP などの新技術に切り替える際の移行の支援と技術的専門知識の提供

> A2L 生成プロセスの追加

> CANape に含まれる既存のアナログ測定技術の統合

> VX1000 ファミリーを基盤とする ECU 測定技術ソリューションの ECU への統合

> 完全なバイパスソリューションの設定

> フィールドアプリケーションエンジニアによるオンサイトでのプロジェクトのサポート

> テストベンチへの統合

さらに詳しい情報は、Web サイトでご覧ください。

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多様なデータを測定するベクターのソリューション Measuring Everything

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13 用語集

ADAS Advanced Driver Assistance Systems(先進運転支援システム)。

車載 Ethernet IEEE 100Base-T1、以前のBroadR-Reach®。

オフィスでの通信に使用される Ethernet とは物理レベルが異なり、シンプルなツイストペア

ケーブルを用いた、全二重のポイントツーポイント伝送を行います。

DHPR Distributed High Performance Recording(分散型ハイパフォーマンスレコーディング)。

ADASの開発や自動運転の分野では特に、さらに大容量のデータストリームの収集と記録が

必要になる場面が増加しています。CANapeではこのようなユースケース向けに、XCP-on-Ethernetデバイスを「ハイパフォーマンスモード」で測定することが可能になりました。さらに、

この拡張を使用すれば、測定データ、ビデオストリーム、そしてレーダー生データを複数のPCで同期的に記録できます。この設定を通じて、1GB/秒を超える測定データレートを実現でき

ます。

SDK ソフトウェア開発キット(Software Development Kit)には、特定のハードウェア用のドライ

バーを開発するためのソフトウェア(ライブラリーなど)と資料が含まれています。

Virtual ECU ECUコードの演算処理がPC上で行われます。

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