(2)農業水利と水循環 - maff.go.jp · 2019. 4. 12. · - 16 - ピーク流量の比較...
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図 23.用排水系統のイメージ
※ 還元
浸透
深部浸透
供 給 流 出 等
浸透・・・・・・・・・・・・・1440(53%)(深部浸透=360・地表水還元=1080)
蒸発散・・・・・・・・・・・・600(22%)地表流出・・・・・・・・・・660(24%)
計 2700
降雨・・・・・・・900用水・・・・・・1800
計 2700
(単位:mm)
ダム
溜池
国営地区の用排水系統事例
1215ha
頭首工掛
排水路
用水路
排水路から用水路へ反復利用
(2)農業水利と水循環
農業用水は、上流の農地で利用された後、排水路や河川に流出し、その下流の
農地で再利用される(図 23)。また、降雨、地区内の渓流水、排水路からの反復
水等を有効に利用し、不足する水量を河川やダムに依存している。写真9は、排
水路の水位を堰で上げ、用水路に入れることで反復利用している例である。
図 24 は水収支のイメージであり、かんがい期間中に降雨や用水から約 2,700mm
が水田に供給され、その約2割が水田や水稲からの蒸発散として消費されるが、
約6割が排水路を通じて河川に還元され、約1割が地下水を涵養している。
また、図 25 に示すように、水田は、畦畔で囲まれて排水口が狭いことから、一
時的に雨水を貯留し、時間をかけて流下することによって、降雨時の河川のピー
ク流量を低減する機能を有している。
さらに、農業用水は、地下水の重要な供給源となっている。図 26 は、農業用水
の取水量と地下水位との関係を示したものである。各地下水観測地点において、
取水が開始されると地下水位が上昇し、取水が停止された後は、徐々に地下水位
が低下していることがわかる。
このように、農業用水は、農地を面的に潤しながら、地下水を涵養し、河川に
還元されるなど水循環系を構築し、自然の水循環の中にあって自然と融合した形
で利用されているところに大きな特徴がある。
写真9.地区内の反復 利用の例
図 24.水収支のイメージ
資料:「水のはなしⅢ(技報堂出版)
高橋裕編」
かん
かん
ため池
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ピーク流量の比較
(資料:農林水産省HP抜粋(一部改編))
降雨
けいはん
畦畔
せきいた
堰板
水の出口田面
水田による雨水貯留機能のメカニズム
水田は出口が狭く、堰板がある。堰板で降雨を貯留し堰板を超える量の降雨も出口が狭いため、一時貯留機能を発揮する。
(3)農業用水の地域用水機能
農業用水は、長い歴史の中で、食料生産に不可欠なかんがい用水に加え、集落
の飲雑用水として一体的に共同利用されながら農村特有の良好な水環境を生み出
してきた。集落内に導かれた農業用水は、農作物や農器具の洗浄水、防火用水等
として利用され、宅地内の池に引き入れられた用水は、鯉等の飼育や家畜の飲み
水、植木等のかん水等に利用された。また、上水道が普及する以前は、炊事や風
呂の水としても利用されていた。
今日においても、農業用水は、かんがい用水としての利用のほか、送水する過
程において、生活用水、防火用水、消流雪用水、景観保全・親水空間の確保など、
地域用水としての機能を発揮している。
図 25.雨水貯留機能
図 26.地下水涵養機能
かん
・水田の排水口には、一般的に堰板がある。 ・堰板を超えて流出する量は、出口が狭いために制限され、
降雨は一時的に水田に貯留される。
資料:農村振興局調べ
平成 19 年度農業用水の流域水循環に関する分析調査より
地下水位の変動状況
取水停止
農業用水の取水を停止しても地下水位は時間
をかけ て低下
取水開始
- 取水量Q1氏家地下水位
坂本地下水位
15
10
5
0
かんがい期代掻き期
0
20
40
60
80
100100
50
0
降雨(mm)
市の堀幹線水路からの取水量 Q1
坂本井戸
五行川
氏家井戸
市の堀幹線水路からの取水量 Q1
坂本井戸
五行川
氏家井戸
鬼怒川
Q1取水口
用水路
取水方向
農業用水の取水を停止すると、地下水位は時間をかけて低下
資料:農林水産省 HP「農業・農村の多面的機能,洪水防止機能」より抜粋(一部改編))