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IAS 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳 1 国際会計基準書(IAS)1号「財務諸表の表示」改訂に関する公開草案 改訂された表示 コメント募集期限 2006年7月17日

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

1

国際会計基準書(IAS)第1号「財務諸表の表示」改訂に関する公開草案

改訂された表示

コメント募集期限 2006年7月17日

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 2

はじめに

1. IAS 第1号「財務諸表の表示」の改訂に関する本公開草案は、業績報告プロジェクトの一部

として国際会計基準審議会(IASB)が公表するものである。 2. 審議会は、2001年9月に業績報告プロジェクトを議題に加えた。このプロジェクトの目的

は、損益計算書に表示される情報の有用性を高めることにあった。審議会は収益及び費用

を報告するための新しいモデル案を開発し、予備的なテストを行った。同様に、米国でも

財務会計基準審議会(FASB)が、2001年10月に業績報告に関するプロジェクトを議題に

加え、モデルを開発し、予備的なテストを行った。市場関係者は両者のモデル自体、及び

両者のモデルが互いに相違しているという事実に懸念を示した。 3. このため、2004年4月に両審議会は、業績報告に関するその後の作業を共同プロジェクト

とすることを決定した。両審議会は、このプロジェクトが損益計算書の表示のみならず、

損益計算書と併せて、完全な1組の財務諸表を構成するその他の計算書-貸借対照表、持

分変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書の表示についても取り扱うことに合意した。 4. 審議会は、このプロジェクトを2つのセグメントに分けて取り組んでいる。セグメント A

は、完全な1組の財務諸表を構成する計算書と、それらの表示が要求される会計期間の数

について取り扱う。本公開草案はセグメント A での審議会の議論を取り纏めたものであ

り、IAS 第1号を米国の基準-FASB 基準書第130号「包括利益の報告」-に概ね整合させ

ることを提案している。FASB は、セグメント A とセグメント B の問題を纏めて検討する

との決定を下したため、セグメント A の論点に関連する公開草案は公表しない予定であ

る。 5. セグメント B は共同で取り組まれており、以下のようなより根本的な論点を取り扱う予定

である。 (a) 各財務諸表において情報を集約する首尾一貫した原則 (b) 各財務諸表において報告すべき合計及び小計 (c) その他の認識収益費用の構成要素を損益に組み替えるべきか。もし組み替えるのであれば、

組み替えられるべき取引や事象の性質、及び組み替えるべき時点 (d) 営業キャッシュ・フローの表示に関して、直接法あるいは間接法のいずれがより有用な情

報を提供するか 6. 本公開草案を開発する中で、審議会は所有者との取引による持分変動の表示と認識収益費

用の表示に影響する改訂を提案している。本公開草案は、他の基準書及び解釈指針が要求

している特定の取引やその他の事象についての認識、測定及び開示の変更を提案するもの

ではない。 7. 審議会は、IAS 第1号の全ての規定を再検討してはいない。しかし、基準書がより読み易く

なるように IAS 第1号のセクションの順番を整理し直す機会と捉えた。また、基準書内又

は他の基準書と首尾一貫させるために幾つかの段落の用語についての実質的ではない変更

も行っている。例えば、「~は表示される。」という表現は、「企業は~を表示する。」

という表現に改訂されている。審議会は用語の変更によって、その意味が変更されること

を意図していない。

本公開草案の特徴

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

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8. 本公開草案は、次の点を要求する改訂を提案している。 (a) 期首時点の財政状態計算書を完全な1組の財務諸表として表示すること (b) 全ての所有者との取引による持分変動は、所有者との取引以外による持分変動とは区

分して持分変動計算書において表示すること (c) 全ての所有者との取引以外による持分変動(つまり、認識収益費用)は、1つないし

2つから成る認識収益費用計算書に表示すること。認識収益費用の構成要素を、持分

変動計算書において表示することは認められない。 (d) その他の認識収益費用の各構成要素に関連する組替修正額と法人所得税についての開

示 (e) 持分変動計算書本表若しくは注記における配当金と関連する1株当たり情報の表示

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 4

コメントの募集

審議会は、本公開草案に提案されている IAS 第1号の改訂についてのコメントを募集してお

り、特に以下に示す質問についてのコメントを募集している。コメントは次のような形式にな

っていることが、 も望ましい。 (a) 示されている質問に対するコメントであること (b) 関連する特定の段落或いは段落のグループを示すこと (c) 明確な根拠を示すこと (d) 可能であれば、審議会が検討すべき代替案を含むこと

コメント提出者は全ての質問についてコメントする必要はなく、コメントに値するとコメン

ト提出者が考える追加的な論点があればそれに言及することが奨励されている。 審議会は、本公開草案で言及していない IAS 第1号の問題についてのコメントを要求してい

ない。 コメントは、文書により、遅くとも2006年7月17日までに提出されなければならない。

質問1及び2-完全な1組の財務諸表

本公開草案は、財務諸表の名称は以下のようであるべきであると提案する。

(a) 財政状態計算書(statement of financial position)(従来の「貸借対照表」

(balance sheet))

(b) 認識収益費用計算書(statement of recognised income and expense)

(c) 持分変動計算書(statement of changes in equity)

(d) キャッシュ・フロー計算書(statement of cash flows)(従来の「キャッシュ・フ

ロー計算書」(cash flow statement))

審議会は、名称の変更を強制することは提案していない(基準案第31項及び結論の根拠 BC4項、BC5項参照)。 質問1-(企業がその財務諸表にこれらの名称を用いることを求められていないことを念頭に

おいて、)提案されている財務諸表の名称に同意するか?同意しないのであれば、なぜか? 本公開草案は、財務諸表において表示される も古い会計期間の期首時点の財政状態計算書を

表示することを要求することを提案している。そのため、注記に加えて、企業は少なくとも、

財政状態計算書を3つと、完全な1組の財務諸表を構成するその他の計算書をそれぞれ2つずつ

表示することが要求されることになる(基準案第31項、第39項及び結論の根拠 BC6項から

BC9項参照)。 質問2-期首時点の財政状態計算書を完全な1組の財務諸表の一部とすること、及びそのため、

比較情報を表示する企業は財務諸表に3つの財政状態計算書を表示することを要求することに

同意するか?同意しないのであれば、なぜか? 質問3から5-所有者との取引による持分変動と認識収益費用の報告

本公開草案は、所有者の立場としての所有者との取引に起因する持分変動(つまり、「所有

者との取引による持分変動」)は全て、その他の持分変動(つまり、「所有者との取引以外に

よる持分変動」若しくは「認識収益費用」)と区分して表示することを企業に要求することを

提案している。所有者との取引以外による持分変動は、a)単一の認識収益費用計算書か、

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

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b)2つの計算書:損益の構成要素を表示する第1計算書と、損益から始まりその他の認識収益

費用の構成要素を表示する第2計算書、のいずれかの方法によって表示されることになる。 質問3-(企業が自身の財務諸表においてその名称を用いることを求められていないことを念

頭において、)所有者との取引以外による持分変動について「認識収益費用」という名称を用

いることに同意するか?同意しないのであれば、なぜか? 企業が自身の財務諸表において他の用語を用いることが許容される場合、基準において用い

られる用語は重要か?重要であるとすれば、「認識収益費用」の代わりにどのような用語を用

いるか? 質問4-全ての所有者との取引以外による持分変動(つまり、認識収益費用の構成要素)が、

所有者との取引による持分変動と区分して表示すべきであるということに同意するか?同意し

ないのであれば、なぜか? 質問5-企業が認識収益費用の構成要素を、単一の計算書もしくは2つの計算書のいずれかによ

って表示することが認められるべきであるということに同意するか? 同意するのであれば、単一の計算書によって表示するよりも、2つの計算書によって表示す

ることが重要なのはなぜか? 同意しないのであれば、なぜか?損益に含まれない認識収益費用の構成要素をどのように表

示することを提案するか? 質問6及び7-その他の認識収益費用-組替修正額と関連する税効果

本公開草案は、その他の認識収益費用の各構成要素に関連する組替修正額の開示を求めてい

る(基準案92項から96項及び結論の根拠 BC21項から BC23項参照)。

質問6-この提案に同意するか?同意しないのであれば、なぜか?

本公開草案は、その他の認識収益費用の各構成要素に関連する法人所得税の開示を求めてい

る(基準案90項及び結論の根拠 BC24項、BC25項参照)。

質問7-この提案に同意するか?同意しないのであれば、なぜか?

質問8-1株当たり情報の表示

本公開草案は、IAS 第33号「1株当たり利益」の変更を提案していない。そのため、1株当た

り利益は、認識収益費用計算書の本表に表示される唯一の1株当たり情報でとなる。企業がそ

の他の1株当たり情報を表示する場合、その情報は、IAS 第33号に準拠して計算されることが

求められ、注記として表示することが要求される(結論の根拠 BC26項参照)。

質問8-1株当たり利益が認識収益費用計算書の本表に表示することが認められる唯一の1株当

たり情報であるべきであるということに同意するか?同意しないのであれば、どのその他の1

株当たり情報が計算書の本表に表示することが要求又は許容されるべきか?また、それはなぜ

か?

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 6

主な変更点の要約

以下の主な変更点が提案されている。

完全な1組の財務諸表

・ IAS 第1号は、完全な1組の財務諸表を構成する2つの計算書を表すものとして、「貸借対

照表(balance sheet)」及び「キャッシュ・フロー計算書(cash flow statement)」

という名称を用いている。本公開草案は、これらの計算書について「財政状態計算書

(statement of financial position)」及び「キャッシュ・フロー計算書(statement

of cash flows)」という名称を用いている。この改訂を提案する目的は、フレームワ

ークで言及された計算書の機能をより厳密に反映することである(結論の根拠 BC4項、

BC5項参照)。

・ 本公開草案は、期首時点の財政状態計算書を完全な1組の財務諸表に含めることを提案

している。IAS 第1号は、この計算書の表示を完全な1組の財務諸表に含めることを求め

ていない。この改訂を提案する目的は、企業の財務諸表を分析する上で利用者に有用な

情報を提供することである(結論の根拠 BC6項から BC9項参照)。

所有者との取引による持分変動と認識収益費用の報告

・ IAS 第1号は損益として認識された収益及び費用を損益計算書(income statement)にお

いて表示することを求めている。損益として認識されない収益及び費用のその他の構成

要素は、所有者との取引による持分変動と併せて、持分変動計算書に表示されることに

なる。本公開草案は:

・ 所有者の立場としての所有者との取引に起因する持分の変動(つまり、所有者との

取引による持分変動)を所有者との取引以外による持分変動と区別して表示するこ

とを提案している。企業が収益及び費用の構成要素(つまり、所有者との取引以外

による持分変動)を持分変動計算書に表示することは認められないことになる。

・ 収益及び費用を、所有者との取引による持分の変動と区別して、単一ないし2つの

計算書に表示することを提案している。

・ 損益及び総認識収益費用を財務諸表に表示することを提案している。

・ この改訂を提案する目的は、共有された性質に基づいて項目を集約することを求めるこ

とにより、利用者により適切な情報を提供することである(結論の根拠 BC12項から

BC20項参照)。

その他の認識収益費用-組替修正額と関連する税効果

・ 本公開草案は、企業がその他の認識収益費用の各構成要素に関連する組替修正額を開示

することを提案している。組替修正額とは、過年度にその他の認識収益費用として認識

されていたもののうち、当期において損益として組み替える金額である。この改訂を提

案する目的は、損益への組替えの影響を見積もるための情報を利用者に提供することで

ある(結論の根拠 BC21項から BC23項参照)。

・ 本公開草案はまた、企業がその他の認識収益費用の各構成要素に関係する法人所得税を

開示すべきであると提案している。IAS 第1号は、このような規定を含んでいない。この

改訂を提案する目的は、これらの構成要素に関係する税金の情報を利用者に提供するこ

とである。なぜなら、これらの構成要素については、損益に適用される税率とは異なる

税率が用いられることが多いためである。

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

7

配当金の表示

・ IAS 第1号は、株主への分配として認識された配当金の金額及び関連する1株当たり情報

を損益計算書又は持分変動計算書の本表又は注記として開示することを認めている。本

公開草案は、所有者への分配として認識された配当金及び関連する1株当たり情報が、

持分変動計算書の本表又は注記として表示されるべきことを提案している。こうした情

報の開示を認識収益費用計算書の本表で表示することは認められないことになる。

・ この改訂を提案する目的は、所有者との取引による持分変動(この場合、配当という形

での株主への分配)は、(認識収益費用計算書に表示される)、所有者との取引以外に

よる持分変動とは区別して表示することである(結論の根拠 BC28項参照)。

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 8

目 次

国際会計基準書第1号 財務諸表の表示

目的 1

範囲 2-6

定義 7-8

財務諸表の表示 9-46

財務諸表の目的 9

全般的な考慮事項 10-30

適正表示と国際財務報告基準への準拠 10-19

継続企業 20-21

発生主義会計 22-23

重要性と合算 24-26

相殺 27-30

完全な1組の財務諸表 31-46

報告の頻度 36-37

比較情報 38-44

表示の継続性 45-46

構成及び内容 47-138

はじめに 47-48

財務諸表の識別 49-53

財政状態計算書 54-80

財政状態計算書の本体に表示する情報 54-59

流動、非流動の区分 60-65

流動資産 66-68

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

9

流動負債 69-76

財政状態計算書の本体又は注記のいずれかに記載すべき情報 77-80

認識収益費用計算書 81-105

認識収益費用計算書の本体に記載すべき情報 82-87

期間の損益 88-89

期間のその他認識収益費用 90-96

認識収益費用計算書の本体又は注記のいずれかに記載すべき情報 97-105

持分変動計算書 106-110

キャッシュ・フロー計算書 111

注記 112-138

構成 112-116

会計方針の開示 117-124

見積の不確実性の原因となる主要な事項 125-133

資本 134-136

その他の開示事項 137-138

発効日 139

IAS第1号(2003年改訂)の廃止 140

付録 他の基準書の改訂 結論の根拠

IAS第1号改訂案に対する代替的見解

適用指針

新旧対比表

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 10

公開草案国際会計基準書第 1 号「財務諸表の表示(IAS 第 1 号(案))」は、第 1 項から第

140 項及び付録に示されている。すべての項は等しく権威を有するが、IASB により採用され

たものであっても IASC の基準様式をそのままとしている。IAS 第 1 号(案)は、その目的、結

論の根拠、「国際財務報告基準に関する趣意書」及び「財務諸表の作成表示に関するフレーム

ワーク」に照らして解釈すべきものである。IAS 第 8 号「会計方針、会計上の見積りの変更及

び誤謬」は、明示的な指針がない場合において会計方針の選択及び適用のための根拠を提供す

る。

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

11

国際会計基準書第1号(案)

財務諸表の表示

(改訂が提案されるパラグラフについて、新たな文章には下線を付し、削除する文章には抹消線を付して

いる。新たなパラグラフにも下線を付している。)

目 的

1. 本基準書(案)の目的は、企業自身の過年度財務諸表及び他の企業の財務諸表の双方との

比較可能性を高める確保するために、一般目的財務諸表の表示の基準を規定している。する

ことである。この目的を達成するために、本基準書(案)は、財務諸表の表示についての全

般的な規定、財務諸表の構成についての指針及びその内容についての 小限の規定を定めて

いる。(本項の残りの部分は第3項に移動している。)特定の取引及びその他事象の認識、

測定及び開示は、他の基準書及び解釈指針書で取り扱われている。

範 囲

2. 企業は本基準書(案)はを、国際財務報告基準(IFRSs)に準拠して作成表示されるすべ

ての一般目的財務諸表(以下、「財務諸表」という。)に適用しなければならない。

3. (第1項から移動)他の基準書及び解釈指針書が、特定の取引及びその他事象にに対する認

識、測定及び開示に関する規定を定めている。は、他の基準書及び解釈指針書で取り扱われ

ている。

34. (本項の冒頭は第7項に移動している。)本基準書(案)は、IAS 第34号「中間財務報

告」に従って作成される要約式中間財務諸表の構成と内容には適用されない。しかしなが

ら、第1310項から第4130項は、当該財務諸表にも適用される。本基準書(案)は、IAS 第27号

「連結及び個別財務諸表」に定義される連結財務諸表又は個別財務諸表を作成する場合も含

めて必要がある、なしにかかわらずすべての企業に等しく適用する。

4. (削除された。)

5. 本基準書(案)では、公的部門の企業を含め利益を目的としている企業に適した用語が使

用されている。非営利企業、公的部門又は政府自治体が本基準書(案)を適用しようとする

場合には、それらは、財務諸表の特定の項目又は財務諸表そのものの表記に使用される記載

を修正することが必要であるかもしれない。

6. 同様に、IAS 第32号「金融商品:表示」に定義されるような持分を有しない企業(例えば、あ

る種のミューチャル・ファンド)や株式資本が持分ではない企業(例えば、ある種の協同組合)

は、会員或いは出資単位保有者の持分の財務諸表におけるでの表示に合わせる必要があるかもし

れない。

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 12

定 義

117. 次の用語は本基準書(案)では特定の意味で用いている。

(第3項から移動)「一般目的財務諸表」(以下、「財務諸表」という。)とは、自己の特別

な情報ニーズに合うように作成された財務諸表を作成するように企業に要求する立場にない

利用者のニーズを満たすことを意図した財務諸表である。

一般目的財務諸表には、個別に表示される、又は年次報告書若しくは目論見書などの規制当

局に対する提出書類や株主への報告といった他の公開文書の中で表示される財務諸表も含ま

れる。

「実務上不可能」 企業が規定を適用するためにあらゆる合理的な努力を行った後も適用す

ることができない時、規定を適用することが実務上不可能となる。

「国際財務報告基準書(IFRSs)」とは、国際会計基準審議会が採用した基準書及び解釈指

針書をいう。国際財務報告基準書は、以下で構成される。

(a) 国際財務報告基準書;

(b) 国際会計基準書;及び

(c) 国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)あるいは旧解釈指針委員会(SIC)が組成した解

釈指針書。

「重要な」 項目の重要な脱漏又は誤表示は、利用者が財務諸表を基礎として行う経済的意

思決定に、それらが個別に又は総体として影響を与える場合に重要となる。重要性は、当該

事象が発生した状況において判断される脱漏や誤表示の大きさや性質により決定される。当

該項目の大きさや性質、又はその両方が重要性を判断する要因となり得る。

(第12項から移動) 脱漏や誤表示が利用者の経済的意思決定に影響を及ぼし、それ故に重要

であると評価するには、当該利用者の特徴を考慮しなければならない。「財務諸表の作成及

び表示に関するフレームワーク」は第25項で、「利用者は事業、経済的活動及び会計につい

て妥当な知識を持ち合わせており、合理的な勤勉さを以って情報を研究しようとする意欲を

有していると想定される」と述べている。従って、評価については、当該の属性を有する利

用者がその経済的意思決定において合理的に見てどのように影響を受けるかを考慮する必要

がある。

「注記」には、貸借対照表財政状態計算書、損益認識収益費用計算書、持分変動計算書及び

キャッシュ・フロー計算書に表示される以外の情報が表示される。注記で、これらの計算書

に計上表示されている項目の説明や個別の項目への分解及び当該計算書における認識の要件

を満たしていない項目についての情報が提供される。

「その他の認識収益費用」とは、他の基準書あるいは解釈指針書で要求または許容されてい

る、損益では認識されない費用控除後の収益の合計額(組替修正額を含む)である。

その他の認識収益費用の構成要素は、以下である。 (a)再評価剰余金の変動(IAS 第16号「有形固定資産」及び IAS 第38号「無形資産」を参照) (b)在外営業活動体の財務諸表の換算から生じる為替差額(IAS 第21号「外国為替レート変動

の影響」を参照) (c)売却可能金融資産の再測定による利得及び損失(IAS 第39号「金融商品:認識及び測定」

を参照) (d)キャッシュ・フロー・ヘッジのヘッジ手段に係る利得及び損失のうちの有効部分(IAS 第

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

13

39号参照)、及び (d) IAS 第19号「従業員給付」の第93A 項に従って認識された給付建制度 における保険数理

差損益

「損益」は、その他の認識収益費用の構成要素を除く費用控除後の収益の合計である。

「組替修正額」は、過年度においてその他の認識収益費用で認識され、当期において損益

に組み替えられた金額である。

「総認識収益費用」は、株主の立場としての株主による拠出及び株主に対する分配以外の

取引又は事象による企業の持分の当期の変動である。

総認識収益費用は、「損益」及び「その他の認識収益費用」の全ての構成要素からなる。

12. (第12項は第7項に移動した。)

8. この基準書(案)は、「その他の認識収益費用」、「損益」及び「総認識収益費用」の用

語を使用している。企業は、意味が明確であるかぎり、合計を示すために他の用語を使用す

ることができる。例えば、企業は、「損益」を示すために「純利益」の用語を使用すること

ができる。

財務諸表の表示

財務諸表の目的

79. 財務諸表は、ある企業の財政状態と財務業績を体系的に表わすものである。一般的な財

務諸表の目的は、経済的意思決定を行う広範囲の利用者にとって有用となる企業の財政状

態、財務業績及びキャッシュ・フローについての情報を提供することである。財務諸表はま

た、経営者に委託された資源に対する経営者の責務遂行の成果を示すものである。この目的

を達成するために、財務諸表には企業の次の事項について情報を記載する。 (a) 資 産; (b) 負 債; (c) 持分; (d) 利得及び損失を含む収益及び費用;

(e) その他の持分変動額株主の立場としての株主による拠出、及び株主に対する分配;並び

に (f) キャッシュ・フロー。 この情報は、注記中の他の情報と一体になって、財務諸表の利用者が企業の将来のキャッ

シュ・フロー及び、特に、キャッシュ・フローが生じる時期と確実性を予測する場合の一助

となる。

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 14

全般的な考慮事項

適正表示と国際財務報告基準への準拠

1310. 財務諸表は、企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローを適正に表示しなけれ

ばならない。適正表示では、フレームワークに定められる資産、負債、収益及び費用の定義

と認識規準に従って取引及びその他の事象の効果の適正な表示が要求される。国際財務報告

基準を適用し、必要な場合には追加的開示をすれば、適正表示をもたらす財務諸表が作成さ

れることになると推定される。 1411.財務諸表が国際財務報告基準に準拠する企業は、注記において国際財務報告基準に準拠

している旨を明示的かつ十分に記載をしなければならない。財務諸表が国際財務報告基準の

すべての規定に準拠していない限り、企業は当該財務諸表が国際財務報告基準に準拠してい

ると記載してはならない。 1512. ほとんどすべての状況において、企業は、は適用される国際財務報告基準に準拠するこ

とで適正表示を達成されする。適正表示にはまた、企業が下記の事柄を実行することが求め

られる。

(a) IAS 第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って会計方針を選択し、適

用する。IAS 第8号は、ある項目に適用する基準や解釈指針書が特に存在しない場合に経

営者が考慮しなければならない権威のある指針の序列について定めている。

(b) 目的適合的で、信頼性のある、比較可能な容易に理解できる情報が提供される方法によ

って会計方針を含む情報を表示する。

(c) 国際財務報告基準の特定の規定に準拠するだけでは特定の取引及びその他の事象や状況

が企業の財政状態や財務業績に与える影響を利用者が理解するには不十分となる時に

は、追加の開示を行う。

1613. 不適切な会計方針は、適用した会計方針の開示又は注記若しくは説明文書のいずれに

よっても救済されるものではない。

1714. 経営者が、ある基準書や解釈指針書の規定に従うと誤解を招くことになり、フレーム

ワークに定められる財務諸表の目的に反すると結論付ける極めて稀なケースにおいて、該当

する規制上のフレームワークが離脱を要求する、或いは離脱を禁じていない場合には、企業

は第1815項に定められる方法により当該規定から離脱しなければならない。

1815. 企業は、第1714項に従ってある基準書又は解釈指針書の規定から離脱する場合には、

次のことを開示しなければならない。

(a) 当該財務諸表が企業の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローを適正に表示してい

る、と経営者が結論を下した旨; (b) 適正表示を達成するために特定の基準から離脱したことを除いては、適用可能な基準書

及び解釈指針書に準拠している旨;

(c) 企業が離脱した基準書及び解釈指針書の表題、当該基準書や解釈指針書が要求したであ

ろう処理を含む離脱の内容、当該処理がその状況においては誤解を招くものでありフレ

ームワークに定められる財務諸表の目的に反することになる理由、及び採用された処

理; 並びに

(d) 掲記された各期間について、当該規定に従って報告されていたであろう財務諸表の各項

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

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目に対して当該離脱が及ぼす財務的影響。

1916. 企業が過年度に、ある基準書又は解釈指針書の規定から離脱し、当該離脱が当期の財務

諸表に計上されている金額に影響を与える場合には、企業は第1815項(c)及び第1815項(d)に

定められる開示を行わなければならない。

2017. 第1916項は、例えば、資産や負債の測定に関するある基準書の規定や解釈指針書から

過年度において離脱し、そして当該離脱が当期の財務諸表に計上されている資産や負債の変

動の測定に影響を与える場合等に適用する。

2118. 経営者が、ある基準書又は解釈指針書の規定に従うと誤解を招くことになり、フレー

ムワークに定められる財務諸表の目的に反すると結論を下すが、当該規制のフレームワーク

が当該規定からの離脱を禁止している極めて稀なケースにおいては、企業は、次の事柄を開

示することで、当該準拠により誤解を生じる局面を、 大限可能な範囲で、減少させなけれ

ばならない。

(a) 問題となる基準書及び解釈指針書の表題、その規定の内容、経営者が当該規定に準拠す

ることは当該状況においては誤解を招くことになり、フレームワークに定められる財務

諸表の目的に反すると結論を下す理由;及び

(b) 表示されている各期間について、経営者が適正な表示を達成するためには必要であると

下した財務諸表の各項目に対する調整。

2219. 第1714項から2118項においては、ある情報の項目で表示されることが意図されてい

る、或いは表示されることが期待されている取引、その他事象及び状態について当該項目が

忠実に表示しておらず、その結果、財務諸表の利用者が行う経済的意思決定に影響を与える

可能性が高くなる場合に、情報の当該項目は財務諸表の目的に反することになる。ある基準

書又は解釈指針書の特定の規定に準拠することで誤解を招くことになり、フレームワークに

定められる財務諸表の目的に反することになるかどうかを評価する場合、経営者は次の事項

を考慮する。

(a) 何故、特定な状況において財務諸表の目的が達成されないのか;並びに、

(b) 当該企業の状態が当該規定に準拠しているその他の企業の状態とどのように異なるの

か。同じような状況にあるその他の企業が当該の規定に準拠している場合には、当該規

定に準拠することは、フレームワークに定められる財務諸表の目的に反するような誤解

を招くものではないという反証可能な前提が存在する。

継続企業

2320. 財務諸表を作成するに際して、経営者は企業が継続企業として存続する能力があるかど

うかを検討しなければならない。経営者に当該企業の清算若しくは営業停止の意図がある

か、又はそうする以外に現実的な代替案がない場合以外は、企業は財務諸表はを継続企業の

前提により作成しなければならない。経営者が、この検討を行う際に、当該企業の継続企業

としての存続能力に対して重大な疑問を生じさせるような事象又は状態に関する重要な不確

定事項を発見したときは、企業はその不確定事項を開示しなければならない。企業が財務諸

表がを継続企業の前提で作成されしていない場合には、企業はその事実を財務諸表作成の基

礎及び当該企業が継続企業とは認められない理由とともに開示しなければならない。 2421. 継続企業の前提が適切かどうかを検討する際に、経営者は、将来(少なくとも貸借対照

表日報告期間の期末日から12ヵ月は必要であるが、それに限定されない)に関するすべての

入手可能な情報を検討しなければならない。検討の程度はそれぞれの場合の事実関係に左右

される。企業が収益性のある営業活動をしている歴史があり、財務資源を直ちに入手できる

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公開草案(2006年3月)

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状況にあるときには、企業は、継続企業の前提による会計処理が適切であるという結論はを

詳細な分析をしなくても得られるであろう。そうでない場合、経営者が継続企業の前提が適

切であるという確信を得るには、現在及び将来の収益性、負債返済の計画日程及び資金調達

のために可能な財源に関する広範囲の要因を検討する必要があろう。

発生主義会計

2522. 企業は、キャッシュ・フロー情報を除いて、発生主義会計により財務諸表を作成しなけ

ればならない。 2623. 発生主義会計が用いられる場合、企業は、項目はを、フレームワークに定められる定義

及び認識要件を満たす時に、資産、負債、持分、収益及び費用(財務諸表の要素)として認

識されする。

重要性と合算

2924. 企業は重要性がある類似の項目はを、財務諸表上で個別に表示しなければならない。重

要性がない場合は別として、企業は類似性を有しない性質又は機能の項目はを別個に表示す

べきであるしなければならない。 3025. 財務諸表は、その性質と機能とに従って種類ごとに合算される大量の取引又はその他事

象を処理することにより作成される。合算及び分類の 終過程は、要約され分類されたデー

タを財政状態計算書貸借対照表、損益認識収益費用計算書、持分変動計算書及びキャッシ

ュ・フロー計算書の本体の項目又は注記で表示することである。もしある表示項目が個別的

には重要性がない場合には、当該の財務諸表の本体又は注記で、他の項目と合算される。当

該の財務諸表の本体で独立して表示するほどの重要性はない項目であっても、注記では別個

に表示することが妥当であることになる重要性を有する場合がある。

3126. 重要性の原則を適用することは、情報に重要性がない場合には、企業は、ある基準書や

解釈指針書の特定の開示規定を満たす必要がないことを意味する。

相 殺

3227. 企業は、基準書又は解釈指針書で要求される、又は許容される場合を除き、資産と負

債、及びまたは収益と費用を相殺してはならない。 3328. 企業は、資産と負債及び収益と費用がを別個に報告すされることが重要である。相殺に

より取引又はその他の事象の実質が反映されることになる場合を除いて、認識収益費用損益

計算書または財政状態計算書貸借対照表における相殺は、発生した取引、その他の事象と状

態を理解し、企業の将来のキャッシュ・フローを評価する利用者の能力を損なうものであ

る。資産を評価性引当金(例えば、棚卸資産陳腐化引当金や受取勘定に対する貸倒引当金)

控除後の純額で測定することは相殺ではない。

3429. IAS 第18号「収益」では、収益を定義し、企業が、収益を、企業が許容している割引及

び数量リベートを考慮し、受領した、又は受領することになる対価の公正価値で測定するこ

とを要求している。企業は、通常の活動の過程で、収益を生み出さないが主要な収益創造活

動に付随するその他の取引を行う。企業は、そのような取引の結果をは、その表示が取引や

その他の事象の実態を反映する場合には、同じ取引について生じる収益と関連費用を相殺の

上、表示する。例えば、

(a) 企業は、投資や営業用資産などの非流動資産の処分による差損益はを、処分代金から当

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

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該資産の帳簿価額と関連売却費用とを控除して報告されする;及び

(b) 企業は、IAS 第37号「引当金、偶発債務と偶発資産」に従って認識され、第三者との契

約(例えば、仕入先の保証契約)の下、払戻される引当金に関連する費用はを当該払戻

金額と相殺することができる。

3530. さらに、企業は、類似の取引のグループから発生する差損益はを純額基準で報告されす

る。例えば、外国為替差損益又は売買目的で保有する金融商品から生ずる損益である。しか

しながら、当該差損益はが、重要である場合には、企業は個別に報告されする。

完全な1組の財務諸表の構成部分

831. 財務諸表の完全な1組の財務諸表は次の事項で構成される。

(a) その会計期間の期首の財政状態計算書貸借対照表;

(b) 損益計算書その会計期間の期末の財政状態計算書;

(c) その会計期間の認識収益費用計算書;

(cd) その会計期間の次のうちいずれかを示す持分変動計算書:

(i) 持分のすべての変動;

(ii) 株主の立場として行動する株主との取引以外から生じる持分変動;

(de) その会計期間のキャッシュ・フロー計算書; 及び

(ef) 重要な会計方針の要約及びその他の説明を行う注記情報で構成される注記。

企業は、この基準書(案)で使用されるもの以外の計算書の名称を使用することができる。

32. 企業は完全な1組の財務諸表において各計算書を同等の明瞭性をもって表示しなければな

らない。

33.第81項で認められているように、企業は損益の構成要素を認識収益費用計算書又は別の計

算書で表示することができる。損益を示す別の計算書は、完全な1組の財務諸表の一部を構

成し、認識収益費用計算書の直前に表示されなければならない。

934. 多くの企業が、財務諸表外で、企業の財務業績、財政状態及び直面する主要な不確実性

に関する主たる事項を記載し説明する経営者の財務上の検討事項を表示している。当該報告

には次の項目に関する検討事項を含むことができる。

(a) 企業が事業を営む環境の変化、その変化に対する企業の対応及びその効果及び配当政策

を含む業績の維持及び向上のための投資方針など、財務業績を左右する主要な要因と影

響 ;

(b) 企業の資金調達の源泉及び目標とする持分に対する負債の比率; 及び

(c) 国際財務報告基準に従って貸借対照表財政状態計算書には計上されない企業の資源。

1035. 多くの企業がまた、財務諸表外で、特に環境的要素が重要な産業で従業員が重要な利用

者グループと考えられる場合に、環境報告書や付加価値計算書などの報告者や計算書を表示

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している。財務諸表外で表示される報告書や計算書は、国際財務報告基準の範囲外となる。

報告期間の頻度

4936. 企業は完全な1組の財務諸表(比較情報を含む)はを少なくとも年に1回は表示しなけ

ればならない。企業の報告期間の期末日貸借対照表日が変更され、年次財務諸表が1年より

も長い期間又は短い期間について作成されるときには、企業は財務諸表の対象期間に加え

て、次の事項を開示しなければならない。

(a) 1年よりも長い期間もしくは短い期間が使用されている理由; 及び

(b) 損益認識収益費用計算書、持分変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、及び関連する

注記の比較数値が完全に比較可能とはならない旨。

5037. 通常は、企業は財務諸表はを継続的に1年間について作成されする。しかしながら実務

上の理由から、例えば52週間について報告することを選択する企業もある。これにより

作成される財務諸表が1年間について提示されたであろう財務諸表と大きな差異がある

とはいえないので、本基準書(案)ではこのような実務を排除しない。

比較情報

3638. 基準書又は解釈指針書が許容している又は要求していない場合は別として、企業は、当

期の財務諸表中のすべての金額について、前期との比較情報を開示しなければならない。比

較情報は、当期の財務諸表を理解という目的に適合する場合には、企業は、文章による説明

的情報に含めなければならない。

39. 第31項での完全な1組の財務諸表の説明の基礎として、比較情報を開示する企業は、

低限、3つの財政状態計算書、2つの他の各計算書、及び関連する注記を表示しなければな

らない。企業は以下の時点での財政状態計算書を表示する。

(a) 当期末;

(b) 前期末(これは、当期の期首と同じである); 及び

(c) 前期の期首

3740.過年度の財務諸表に記載された文章による情報は、当期においても引き続き目的に適合

している場合がある。例えば、企業は、前年度の貸借対照表日時点で直前報告期間の期末日

で結果が不確定であり、今も未解決な係争事件の詳細をは、当期に開示されする。前年度の

貸借対照表日直前報告期間の期末日に存在した未確定事項及びその未確定事項を解決するた

めに当期中にとられた措置についての情報は、利用者にとって役に立つものとなる。 3841. 財務諸表中の項目の表示又は分類が変更訂正される場合には、組替えが実行不可能でな

い限り、企業は比較金額はを組み替えなければならない。比較金額が組み替えられる場合に

は、企業は以下の事項を開示しなければならない。

(a) 組替えの内容;

(b) 組み替えられた項目又は項目分類の金額;及び

(c) 組替えの理由。

3942. 比較金額を組み替えることが実行不可能な場合には、企業は以下の事項を開示しなけ

ればならない。

(a) 金額を組み替えない理由;並びに

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

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(b) 金額が組み替えられていたならば行われていたであろう修正の内容。

4043. 情報の期間間の比較可能性を向上させることは、特に予測を行う上で、財務情報の傾

向の評価ができるようになり、利用者が経済的意思決定を行う時の一助となる。状況によっ

ては、当期との比較可能性を達成するために、過去の年度の比較情報を組み替えることは実

行不可能となる。例えば、企業は、過年度においては、組替を可能にするような方法でデー

タが収集しされていなくて、情報を作り直すことは実行不可能かもしれない。

4144. IAS 第8号は、企業が会計方針の変更、又は誤謬の訂正の場合に要求される比較情報に

対する修正について述べている。

表示の継続性

2745. 企業は、財務諸表上の項目の表示と分類をは、次の場合を除いて、ある期から次の期へ

と継続しなければならない。

(a) 企業の事業内容の重大な変化又は財務諸表の表示の再検討により、IAS 第8号に定めら

れる会計方針の選択と適用の要件に関して別の表示或いは分類の方がより適切であるこ

とが明らかな場合; 又は

(b) ある基準書又は解釈指針書が表示の変更を求めている場合。

2846. 例えば、重大な買収若しくは処分、又は財務諸表の表示の再検討により、財務諸表を異

なった形で表示する必要が出てくるかもしれない。変更された表示により財務諸表の利用

者に信頼のおける、そしてより目的適合となる情報が提供されることになり、改訂後の表

示形式が継続され、それにより比較性が損なわれない場合のみ企業はその財務諸表の表示

を変更する。そのような表示の変更を行う場合には、企業は第3841項及び3942項に従って

比較情報を組み替える。

構成及び内容

はじめに

4247. 本基準書(案)は、特定の開示を貸借対照表財政状態計算書、損益認識収益費用計算書及

び持分変動計算書の本体で行うことを要求し、また、その他の表示項目を財務諸表の本体又

は注記で開示することを要求している。IAS 第7号は、キャッシュ・フロー計算書情報の表示

に関する規定を定めている。

4348. 本基準書(案)では、開示という用語は広い意味で使用されることがあり、注記に記載さ

れる項目及び貸借対照表財政状態計算書、損益認識収益費用計算書、持分変動計算書及びキ

ャッシュ・フロー計算書の本体に記載される項目も包含している。開示は他の基準書や解釈

指針書でも要求される。本基準書(案)又は他の基準書で反する規定がない限り、そのような

開示は貸借対照表財政状態計算書、損益認識収益費用計算書、持分変動計算書やキャッシ

ュ・フロー計算書(いずれでも適切となるもの)の本体又は注記のいずれかで行われる。

財務諸表の識別

4449. 企業は財務諸表はを明瞭に識別されし、同じ公表書類中の他の情報と区別しなければな

らない。

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 20

4550. IFRS は財務諸表に対してのみ適用するものであり、必然的に、年次報告書、規制当局

に対する提出書類、及びその他の文書中に記載される他の情報に対しては適用しない。従っ

て、利用者が、IFRS を用いて作成する情報と利用者にとって有益かもしれないが基準の対象

とはならない他の情報とを、区別できるようにすることは重要である。 4651. 企業は各財務諸表及び注記の各構成部分はを明瞭に識別されていしなければならない。

さらに、企業は、次の情報はを目立つように表示し、表示されている情報が正しく理解され

るために必要となる場合には、反覆しなければならない。

(a) 報告企業の名称又は他の識別手段、及び直前の貸借対照表日報告期間の期末日からの当

該情報の変更;

(b) 財務諸表の対象は個別企業の財務諸表か、企業集団の財務諸表か;

(c) 貸借対照表日報告期間又は各財務諸表又は注記の対象期間の終了日うち、財務諸表の当

該構成部分にとって適切なもの;

(d) IAS 第21号「外国為替レート変動の影響」に定義される表示通貨; 及び

(e) 財務諸表中の金額を表示するのに使用される表示単位。 4752. 企業は、第4651項の規定はを、通常は財務諸表の各ページ、計算書、注記、頭書き等ご

とに適切な表題と各欄の簡略な頭書きとを記載することにより解決される満たす。こうした

情報の 善の提供方法を決定するには判断が必要である。例えば、企業が財務諸表がを電子

的に表示されする場合には、個別のページ区分が必ずしも行われる訳ではない。その場合に

は企業は上記の項目はが、財務諸表に含まれる情報が確実に理解されるように、十分な頻度

をもって表示されるする。

4853. 企業が財務諸表はを、表示通貨について千又は百万単位で情報を表示するすることによ

り一層理解し易くなるすることもが多い。このことは、企業が表示単位がを開示されし、重

要性のある情報が脱漏していない限り、許容される。

貸借対照表財政状態計算書

貸借対照表財政状態計算書の本体に表示する情報

6854. 貸借対照表財政状態計算書の本体には、第68A 項に従って掲記されていない限り少なく

とも次の金額を表す項目を掲記しなければならない。

(a) 有形固定資産;

(b) 投資不動産

(c) 無形資産;

(d) 金融資産(下の(e)、(h)及び(i)で示される金額を除く);

(e) 持分法で会計処理されている投資;

(f) 生物資産;

(g) 棚卸資産;

(h) 営業債権その他の受取勘定;

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

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(i) 現金及び現金同等物;

(j) (第68A 項から移動) 売却目的保有に分類される資産及び IFRS 第5号「売却目的保有の

非流動資産と廃止事業」に従って及び売却目的保有に分類される処分グループに含まれ

る資産の総額

(jk) 営業債務その他の支払勘定;

(kl) 引当金;

(lm) 金融債務(上の(jk)及び(kl)で示される金額を除く);

(mn) IAS 第12号「法人所得税」に基づく当期税金の対象となる負債及び資産;

(no) IAS 第12号に基づく繰延税金負債及び繰延税金資産;

(p) (第68A 項から移動) IFRS 第5号に従って売却目的保有に分類される処分グループに含

まれる負債

(oq) 持分に表示される少数株主持分;及び

(pr) 親会社の株主に帰属する発行済資本金及び剰余金。

68A.(第54項に移動)

6955. 企業は、追加的な表示項目、見出し及び小計の表示が企業の財政状態を理解するのに

目的適合的となるときには、それらを貸借対照表財政状態計算書の本体上に表示しなければ

ならない。

7056. 企業が流動・非流動資産及び流動・非流動負債を貸借対照表財政状態計算書の本体上

に別個の分類として表示する場合、繰延税金資産(負債)については流動資産(負債)とし

て分類してはならない。

7157. 本基準書(案)は、企業が項目を表示する順序や様式を規定するものではない。第6854

項は、性質又は機能がかなり異なっているために貸借対照表財政状態計算書の本体上で別個

に表示するのが当然な項目のリストを示したに過ぎない。さらに、

(a)ある表示項目又は類似の項目を合算した場合の金額の大きさ、性質又は機能により、個

別に表示することが企業の財政状態を理解するのに目的適合的となる場合の表示項目につ

いても表示する; そして

(b) 項目又は類似の項目の合算の表記及び記載順序は、その企業の財政状態を理解するのに

目的適合的となる情報を提供するために、企業及びその取引の性質に従って修正すること

ができる。例えば、IAS 第30号のより具体的な規定を適用するために、銀行は上記の表記

を修正する。

7258. 企業は、追加の項目を別個に表示するか否かの判断はを、次の事項の検討に基づくいて

判断する。

(a) 資産の内容及び流動性;

(b) 企業内における資産の機能;そして

(c) 負債の金額、内容及び返済時期。

7359. 異なる種類の資産について異なる測定方法を使用することは、内容又は機能が異なって

いること、そしてそれゆえに個別の項目として企業はそれらを表示しなければならないとい

うことを示唆している。例えば、異なる種類の有形固定資産については、IAS 第16号「有形

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 22

固定資産」に従って取得原価又は再評価金額で計上することができる。

流動、非流動の区分

5160. 企業は、流動性を基にした表示が信頼のおける、より目的適合となる情報を提供するこ

とになる場合は別として、第5766項から第6776項に従って貸借対照表財政状態計算書の本体

上で、流動資産と非流動資産、流動負債と非流動負債を、別々の区分として表示しなければ

ならない。流動性基準が適合する例外的な場合には、企業は全ての資産及び負債をおおむね

流動性の順序に従って表示しなければならない。

5261. どちらの表示方法を採用したとしても、企業は回収又は決済される予定の金額が混在し

ている各資産及び負債の表示科目について、12ヵ月より後に回収又は決済される予定の金額

を開示しなければならない。

(a) 貸借対照表日報告期間の期末日から12ヵ月以内、

(b) 貸借対照表日報告期間の期末日から12ヵ月より後に回収又は決済される予定の金額が混在

している各資産及び負債の表示科目について、企業は12ヵ月より後に回収又は決済される

予定の金額を開示しなければならない。 5362. 企業が明瞭に識別可能な営業循環期間の中で商品又はサービスを提供している場合に

は、貸借対照表財政状態計算書の本体上で流動・非流動の資産及び負債を区分することは、

運転資本として継続的に循環している純資産を企業の長期の事業活動に使用されている純資

産と区別することにより、有用な情報を提供する。それはまた、営業循環期間内に実現する

予定の資産及び同期間内に決済期限の到来する負債をも明瞭にする。

5463. 金融機関等を始めとする一定の企業は、明確に識別できる営業活動の循環をもって商

品又はサービスを提供するのではないので、流動性の増加又は減少の順序で資産や負債を表

示することは、流動・非流動別の表示より信頼性のおける又目的適合的となる情報を提供す

ることになる。

5564. 第5160項を適用する時、企業は、より信頼性のおける又目的適合的となる情報を提供

できる場合には、一部の資産と負債については流動・非流動の区分により、その他について

は流動性の順序に従って表示することを許容される。混合様式で表示する必要性は、企業が

多様な営業活動を行っている場合に生じる可能性がある。

5665. 資産及び負債の実現日に関する情報は、企業の流動性と支払能力を検討する際に有用で

ある。IFRS 第7号「金融商品:開示」により、金融資産と金融負債の双方の満期日の開示が

要求されている。金融資産には営業債権とその他の受取勘定が含まれ、金融負債には営業債

務とその他の支払勘定が含まれる。資産と負債が流動・非流動いずれに分類されているかに

かかわらず、棚卸資産や引当金などの非貨幣性資産及び負債の回収又は決済の予定日につい

ての情報も有用である。例えば、企業は、貸借対照表日報告期間の期末日より1年を超えた

後に回収予定となる棚卸資産の金額を開示する。

流動資産

5766. 企業は資産はを、下記の要件のどれかに該当する場合には、流動資産として分類しなけ

ればならない。

(a) 企業が、企業の通常の営業循環期間において、資産を実現されさせる予定であるか又は

その間に販売若しくは消費する目的で保有されしている場合; 又は

(b) 企業が、主として売買目的で資産を保有されしている場合;

(c) 企業が、貸借対照表日報告期間の期末日から12ヵ月以内に資産を実現されせる予定であ

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

23

る場合; 又は

(d) 貸借対照表日報告期間の期末日から少なくとも12ヵ月の間に債務を決済するために交換

される又は使用されることが制限されている場合は別として、資産が現金又は現金同等

物(IAS 第7号「キャッシュ・フロー計算書」に定義)である場合。

企業は、これら以外の資産はを、すべて非流動資産として分類しなければならない。 5867. 本基準書(案)では、“非流動”という用語を長期の有形資産、無形資産、及び金融資産

を含めて使用している。意味が明瞭であれば、代替表現を使用することも許される。

5968. 企業の営業循環期間とは、加工に向けて資産を取得し、それが現金又は現金同等物とし

て実現するまでの期間をいう。企業の通常の営業循環期間が明確に識別できない場合には、

その期間は12ヵ月の期間と想定する。流動資産には、貸借対照表日報告期間の期末日から12

ヵ月以内に実現するとは予想されていなくとも通常の営業循環過程の一環として販売・消

費・実現される資産(棚卸資産及び営業債権等)が含まれる。流動資産には、売買目的で本

来保有される資産(本カテゴリーの金融資産は、IAS 第39号「金融商品:認識及び測定」に

従って売買目的で保有される金融資産として分類される)及び非流動金融資産で1年以内に

実現すると予想される部分が含まれる。

流動負債

6069. 下記の事項の各一のどれかに該当する場合には、企業は負債を流動負債に分類しなけれ

ばならない。

(a) 企業が負債を企業の通常の営業循環期間において決済すされる予定である場合;

(b) 企業が、元々、売買目的でその負債を保有されしている場合;

(c) 負債は、貸借対照表日報告期間の期末日から12ヵ月以内に決済されることになっている

場合;又は

(d) 企業が貸借対照表日後報告期間の期末日から少なくとも12ヵ月間、負債の決済を繰延べ

ることのできる無条件の権利を有していない場合。

企業は、これら以外他のすべての負債はを非流動負債に分類しなければならない。 6170.流動負債には、営業債務、人件費その他の営業費用の未払額などのように、通常の営業

循環において使用される運転資本の一部を構成するものもある。そのような営業関連項目

は、決済期限が貸借対照表日報告期間の期末日から12ヵ月超経過後であっても企業は流動負

債に分類されるする。企業の資産と負債の分類には同じ通常の営業循環を適用しなければな

らない。企業の通常の営業循環期間が識別可能ではない場合、その期間は12ヵ月と想定され

る。

6271. 他の流動負債は、現在の営業循環の一部としては決済されないが、その決済期限が貸借

対照表日報告期間の期末日から12ヵ月以内のものであるか、又は売買目的で元々保有されて

いるものである。例えば、IAS 第39号に従って売買目的で保有されるものとして分類される

金融負債、当座借越、非流動金融負債の1年以内の返済部分、未払配当金、未払税金、その

他の非営業債務などである。長期間(すなわち、通常の営業循環期間内に使用される運転資

本の一部ではないもの。)にわたって資金を提供する金融負債でその決済期限が貸借対照表

日報告期間の期末日から12ヵ月以内でないものは、第6574項及び6675項に従って非流動負債

である。

6372. 企業は、長期の金融負債は、下記に該当する場合でも、その期限が貸借対照表日報告期

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 24

間の期末日から12ヵ月以内の場合には、流動に分類しなければならない。

(a) 当初の期限が12ヵ月超であり;かつ

(b) 長期での再融資契約又は返済計画変更契約が貸借対照表日報告期間の期末日以降に、そ

して財務諸表の公表が承認される以前に締結されている。

6473. 企業が既存の融資枠に従って、貸借対照表日報告期間の期末日以降少なくとも12ヵ月

間、債務の借換え又はロールオーバーが予定されているか、又はその裁量権を有している場

合には、企業はそれより短い期間に決済期限を迎えることになっても、当該の債務を非流動

として分類する。しかしながら、借換えやロールオーバーが企業の裁量によるものでない場

合(例えば借換えの契約がない場合)には、借換えの可能性については考慮せず、企業は当

該負債はを流動に分類されする。

6574. 企業が貸借対照表日報告期間の期末日以前に長期借入契約の取決めに違反し、当該の取

決めの効果によりその負債の返済が求められるか、又は要求払となる場合には、貸借対照表

日報告期間の期末日後財務諸表の公表が承認される以前に、貸し手が違反の結果として返済

を要求しないことに合意したとしても、企業は負債はを流動として分類されする。貸借対照

表日報告期間の期末日において、企業は貸借対照表日報告期間の期末日後少なくとも12ヵ月

間、その決済を繰延べできる無条件の権利を有していないので、企業は当該負債はを流動と

して分類されする。

6675. しかしながら、企業が違反を是正し、貸し手が即時の返済を求めることのできない貸

借対照表日報告期間の期末日後の少なくとも12ヵ月の猶予期間を与えることに合意している

場合には、企業は負債はを非流動として分類されする。

6776. 流動負債として分類される融資に関し、貸借対照表日報告期間の期末日と財務諸表の

公表が承認される日との間に次の事象が発生する場合、当該の事象は、IAS 第10号「後発事

象」に従って非修正事象としての開示の要件を満たすことになる。

(a) 長期での借換;

(b) 長期借入契約の違反の是正;及び

(c) 貸借対照表日報告期間の期末日後少なくとも12ヵ月で終了する長期借入契約の違反を是

正するための猶予期間を貸し手から得た場合。

貸借対照表財政状態計算書の本体又は注記のいずれかに記載すべき情報

7477. 企業は、貸借対照表財政状態計算書の本体又は貸借対照表注記のいずれかで、企業の営

業活動について適切と思われる方法で分類された各表示項目のより詳細な内訳を開示しなけ

ればならない。

7578.小分類でどの程度詳細に示すかは、国際財務報告基準書の規定並びに関係する金額の大

きさ、内容及び機能に左右される。企業は、また、第7258項に示された諸要因はを、小分類

の基準を決定するのにも使用される。開示は個々の項目によって異なる。例えば、

(a) 有形固定資産は、IAS 第16号に従って、各々の種類に分類される;

(b) 受取勘定の金額は、取引先に対する売掛金、関連当事者からの債権、前払金及びその他

の金額に分類される;

(c) 棚卸資産は IAS 第2号「棚卸資産」に従って、商品、製造用貯蔵品、原材料、仕掛品及

び製品などに小分類される;

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

25

(d) 引当金は、従業員給付及びその他の項目の引当金に小分類される;及び

(e) 株式資本及び剰余金は、払込資本、株式プレミアム及び剰余金等様々な種類に小分類さ

れる。 7679. 企業は、貸借対照表財政状態計算書又は持分変動計算書の本体又は注記のいずれかで次

の事項を開示しなければならない。

(a) 株式資本の種類ごとに:授権株式数

(i) 全額払込済みの発行済株式数及び未払込額のある発行済株式数;

(ii) 1株当たりの額面金額又は無額面である旨;

(iii) 期首と期末の社外流通株式数の調整;

(iv) その種類の株式に付されている権利、優先権及び制限(配当支払及び資本の払戻し

の制限を含む);

(v) 自己株式及び子会社又は関連会社保有の自社株式; そして;

(vi) オプション契約による発行に向けての留保株式、及び売渡契約のための留保株式及

びそれらについての契約条件、金額等;

(b) 株主持分の各種剰余金ごとの内容及び目的。

7780. パートナーシップや信託などのように株式資本のない企業では、第7679項(a)で要求さ

れた情報に相当する情報を、持分の各項目ごとに期中の変動並びに持分の各項目に付随して

いる権利、優先権及び制限を表示し、開示しなければならない。

損益認識収益費用計算書

81. 企業は、以下により、期間に認識された収益費用の全ての構成要素を表示しなければなら

ない。

(a) 単一の認識収益費用計算書;

(b) 2つの計算書。即ち、損益の構成要素を表示する計算書、及び損益から開始しその他の

認識収益費用の構成要素を表示する第2の計算書。

認識収益費用損益計算書の本体に記載すべき情報 8182. 低限、損益認識収益費用計算書の本体には、少なくとも会計期間における次の金額を

表す表示項目を記載しなければならない。

(a) 収益;

(b) 金融費用;

(c) 持分法により会計処理される関連会社及びジョイント・ベンチャーの損益に対する持

分;

(d)税金費用;

(e)以下の単純合算額

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 26

ⅰ)廃止事業の税引後損益;

ⅱ)廃止事業を構成する資産又は処分グループについて除売却費用を差し引いた公正

価値での測定によって認識された利得又は損失の税引後金額;並びに

(f) 損益

(g) 内容により分類されたその他の認識収益費用の各構成要素((h)の金額を除く);

(h) 持分法により計算された関連会社及びジョイント・ベンチャーのその他の認識収益費

用の持分;

(i) 認識収益費用の合計額。

8283. 企業は次の項目のについては期間の損益の配分として認識収益費用計算書財務諸表の

本体に以下の項目を開示しなければならない。;

(a)以下少数株主持分に帰属する当期損益;

(i) 少数株主持分;及び

(ii) 親会社の株主。

(b)親会社の株主に帰属する損益以下に帰属する当期の総認識収益費用

(i) 少数株主持分;及び

(ii) 親会社の株主。

84. 企業は、第82項(a)から(f)の項目及び第83項(a)の開示項目を別個の損益計算書の本体に

表示することができる(第33項参照)。

85. 企業の財政状態財務業績を理解するのに目的適合的となる場合には、企業は追加的な表

示項目、見出し及び小計を損益認識収益費用計算書の本体上に表示しなければならない。

8486. 企業の各種の事業活動、取引及び他の事象の影響は、頻度、差損益の潜在的可能性及

び、予測可能性によって異なってくるので、財務業績の構成要素を開示することは、達成さ

れた財務業績の理解と将来の成果財務業績の予測の一助となる。企業は財務業績の構成要素

を説明するのに必要な場合には、損益認識収益費用計算書の本体上で表示項目を追加し、科

目表記と項目の順序も修正する。考慮に入れなければならない要因は、収益と費用の各種構

成要素の重要性、内容及び機能などであるを含む要因を企業は考慮する。例えば、金融機関

は、金融機関の業務の目的に適合するような情報を提供するために、科目表記を修正するこ

とができる。企業は、収益と費用はを、第3227項の要件が満たされる場合は別として、相殺

しない。

8587. 企業は、収益と費用のいかなる項目をも特別損益項目として損益認識収益費用計算書

の本体又は注記のいずれにも表示してはならない。

当期損益

7888. 企業は、ある期間に認識される収益と費用のすべての構成要素項目はを、ある基準書又は

解釈指針書が別途要求している、または許容している場合は別として、損益として計上されなけ

ればならないに含めなければならない。

7989. 通常、ある期間に認識される収益と費用のすべての項目は損益として計上される。これに

は会計上の見積りの変更の影響額も含まれる。しかしながら、特定の項目については当期の損益

から除外できる状況が存在する。ある会計基準では、企業が特定の構成要素を当期損益以外で認

識するという状況を規定している。IAS 第8号はそうした2つの状況、すなわち誤謬の訂正及び会

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

27

計方針の変更の影響を規定している。について取り扱っている。別の会計基準では、収益及び費

用に関するフレームワークの定義を満たしているが、損益から除外されるその他認識収益費用の

構成要素を要求している(第7項参照)。

80. その他の基準書は、収益や費用に関するフレームワークの定義を満たしているが通常損

益から除外される項目について扱っている。例えば、再評価余剰金(IAS 第16号を参照)、

在外営業活動体の財務諸表の換算により生じる特定の差損益(IAS 第21号を参照)、及び売

却可能金融資産の再測定による利得及び損失(IAS 第39号を参照)である。

期間のその他認識収益費用

90. 企業は、組替修正額も含むその他認識収益費用の各構成要素に関連する法人所得税の額

を、認識収益費用計算書の本体又は注記のいずれかにおいて表示しなければならない。

91. 企業は、その他の認識収益費用の構成要素を以下のいずれかで表示することができる。

(a) 関連する税効果考慮後の純額;または

(b) 税効果考慮前の金額とし、構成要素に関連する法人所得税の合計額を単一の金額で示

す。

92. 企業は、その他認識収益費用の各構成要素に関連する組替修正額を開示しなければならな

い。

93. 他の基準書が以前にその他認識収益費用で認識された金額を損益に組み替えるかどうか、

及びいつそれを行うかを規定している。そのような組替えをこの基準書(案)では組替修正

と呼ばれている。組替修正額は、修正額が損益に組み替えられる期間に、その他認識収益費

用の関連構成要素として含められる。例えば、売却可能金融資産の処分による実現益は当期

の損益に含められる。この金額は、当期又は前期に未実現益としてその他認識収益費用で認

識されていたかもしれない。それら未実現利益は、それらを総認識収益費用に2回含まれる

のを避けるため、実現益が損益に含められた期間にその他認識収益費用から控除されなけれ

ばならない。

94. 企業は、組替修正額を、認識収益費用計算書の本体又は注記により表示することができ

る。注記に組替修正額を表示している企業は、関連する組替修正を行ったあとのその他認識

収益費用の構成要素を表示する。

95. 例えば、在外事業体の処分(IAS 第21号参照)、売却可能金融資産の消滅の認識(IAS 第

39号参照)、及び、キャッシュ・フロー・ヘッジに関連する IAS 第39号第100項に従いヘッ

ジ対象となった予定取引が損益に影響を与えるときに、組替修正が生じる。

96. 再評価剰余金の変動や、IAS 第19号の第93A 項に従って認識された給付建制度での保険数

理差損益については組替修正は生じない。これらの構成要素はその他認識収益費用で認識さ

れ、その後の会計期間において損益に組み替えられることはない。再評価剰余金の変動は、

その後、資産が使用される又は消滅が認識された期間において利益剰余金に振り替えること

ができる(IAS 第16号及び IAS 第38号参照)。保険数理差損益は、その他認識収益費用とし

て認識された期間に、利益剰余金の中に報告される(IAS 第19号参照)。

損益認識収益費用計算書の本体又は注記のいずれかに記載すべき情報

8697. 収益と費用の項目構成要素が重要な場合には、企業は、その内容及び金額を個別に開

示しなければならない。

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 28

8798. 収益と費用の項目について個別に開示しなければならない状況には次のようなものが

ある。

(a) 棚卸資産の正味実現可能価額への評価減、又は有形固定資産の回収可能金額への評価減

並びに当該の評価減の戻入;

(b) 企業の活動の再構築及び再構築費用の引当金の戻入;

(c) 有形固定資産の項目の処分;

(d) 投資の処分;

(e) 廃止事業;

(f) 訴訟の解決;並びに

(g) 引当金のその他の戻入。

8899. 企業は、信頼度の高いより目的適合的な情報を提供することになるように、費用の性質

又は企業内における機能に基づく分類を用いて、損益に含まれる費用の内訳を表示しなけれ

ばならない。 89100. 企業は、第8899項の分析を損益認識収益費用計算書の本体に記載することを奨励され

る。

90101. 費用は、頻度、損益の潜在的可能性及び予測可能性の異なる財務業績の構成要素が強

調できるように、さらに小分類する。この情報は2つの様式のうちの1つの様式を用いて提

供する。

91102. 分析の第1の様式は“費用性質”法と呼ばれる。企業は、損益に含まれる費用はを損

益計算書上ではその性質に従って集計されし(例えば、減価償却費、材料仕入高、運送費、

従業員給付、広告費)、そして企業内の多様な機能に再配分されすることはない。この方法

は、費用を機能的分類により配分する必要がないので、採用が容易となる。費用性質法を使

用した分類の一例は次のとおりである。

収 益 ×

その他の収益 ×

製品及び仕掛品棚卸増減高 ×

原材料及び消耗品消費高 ×

従業員給付費用 ×

減価償却費及び償却費 ×

その他の費用 ×

費用合計 (×)

利益 ×

92103. 分析の第2の様式は、“費用機能”法又は“売上原価”法と称され、費用をその機能

に従って、例えば売上原価の一部として、又、販売又は管理活動費に分類する。この方法で

は、少なくとも、企業は売上原価をその他の費用項目とは別個に表示する。この表示は、利

用者に対し費用性質による分類よりも目的適合性の高い情報を与えるが、原価を機能別に配

分する際に恣意的になる可能性があり、多くの判断を要する。費用機能法による分類の一例

は次のとおりである。

収 益 ×

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

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売上原価 (×)

売上総利益 ×

その他の収益 ×

販 売 費 (×)

管 理 費 (×)

その他の費用 (×)

利益 × 93104. 費用を機能によって分類している企業は、減価償却費、償却費、従業員給付費用など

の費用の内容に関して追加情報を開示しなければならない。 94105. 費用機能法と費用性質法の選択は、歴史的要因及び業界の要因並びに企業の性質に左

右される。どちらの方法によっても、直接又は間接に企業の売上高又は生産高に応じて変化

すると思われる費用を示すことができる。これらの表示方法は、異なる種類の企業に対し、

それぞれ長所を有しており、本基準書(案)は、経営者が も目的適合的で信頼できる表示

を選択することを要求している。しかしながら、費用の性質に関する情報は将来のキャッシ

ュ・フローを予測するのに有用なので、費用機能法による分類が行われる場合には追加的開

示が必要となる。第93104項の「従業員給付」は IAS 第19号「従業員給付」と同じ意味を有

する。 95. (第107項へ移動)企業は、損益計算書又は持分変動計算書の本体又は注記のいずれか

で、期中の株主への分配として認識された配当金額及び1株当たりの金額を、開示しなけれ

ばならない。

持分変動計算書

96106. 企業は、本体に、次の事項を示す持分変動計算書を表示しなければならない。

(a) 当期損益;

(b) 他の基準書又は解釈指針書の規定により、直接に持分に計上された当期の収益及び費用

の各項目及びその合計;

(c) (a)親会社の株主と少数株主持分に帰属する合計金額を個別に表示している当期の総認

識収益費用(上記の(a)と(b)の合計として計算);

(d) (b)持分の各構成要素について、IAS 第8号に従って認識される会計方針の変更及び誤謬

の訂正の影響額。

(c)(第97項(a)から移動)株主からの拠出と株主への分配を別個に示している、株主の立

場としてのおいて行動している株主との取引の金額;及び

(d) (第97項(b)及び(c)から移動)持分の各構成要素について、各種類別の拠出資本及び

各種剰余金の期首残高及び期末残高、並びに各変動についての個別の開示。

これらの項目のみにより構成される持分変動計算書は認識収益費用計算書の名称とされな

ければならない。

97107. 企業は持分変動計算書の本体又は注記のいずれかで、次の事項についても当期に株主

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 30

への分配として認識された配当額や関連する1株あたりの金額を表示しなければならない。

(a) 株主への分配を別個に示している、株主としての資格において行動している株主との取

引の金額;

(b) 利益剰余金(すなわち、累積損益)の期首残高及び期末残高並びに期中の変動; 並び

(c) 各種類別の拠出資本、及び各種剰余金の調整金額の期首及び期末残高とその間の変動

額。

108. 第106項においては、持分の構成要素には、例えば、各種類別の拠出資本、その他認識収

益費用の各種類別の累積額及び利益剰余金を含む。

109. 報告期間の2つの貸借対照表日期首日と期末日の間の企業の持分の増減は、当該期間の

純資産の増減を表わす。株主の立場において活動しているとしての株主との取引(株式出

資、企業の自己株式の再取得及び配当等)から生じる変動と当該取引に直接関係する取引費

用は別として、期中の、全ての持分変動は、(収益及び費用の項目が損益として計上される

又は持分の変動に直接計上されるに関係なく)企業の期中の活動により生じた差損益を含む

収益と費用の合計額を表す。

99. 本基準書に従って、他の基準書や解釈指針書が別途要求していない限り、ある期中に認識

されたすべての収益及び費用の項目は、その期の損益として計上しなければならない。他の

基準書では、一定の利得及び損失(再評価による増減額、一定の外国為替差額、売却可能金

融資産の再評価による利得及び損失及び関連する当期の税金と繰延税金の金額)について

は、直接に持分の増減として認識しなければならないとしている。企業の2つの貸借対照表

日の間の財務状態の変動を評価するには、収益及び費用のすべての項目を考慮に入れること

が重要であるので、本基準書は、直接に持分に計上された損益を含めて企業のすべての収益

と費用の合計金額を表示している持分変動計算書の表示を要求する。

100110 IAS 第8号により、他の基準書又は解釈指針書の経過規定が別途要求する場合は除い

て、実務的に可能な範囲について、会計方針の変更を有効とするための遡及的修正が要求さ

れる。さらに IAS 第8号は、誤謬を訂正するための修正再表示は、実務的に可能な範囲につ

いて、遡及して行うことを要求している。ある基準書又は解釈指針書が持分の別の構成要素

に関する遡及的修正を要求している場合は別として、遡及的修正と遡及的修正再表示は利益

剰余金の残高に対して行う。第96106項(d)は、持分変動計算書に、会計方針の変更及び誤謬

の訂正から持分の各構成要素に対し生じる修正額の合計を個別に開示することを要求してい

る。当該修正額は、各過年度のものと期首の時点のものについて開示する。

101. 第96項及び97項の規定を満たす方法はいくつかある。一つの例は多欄形式で、持分の各

項目の期首と期末の残高の調整を行うものである。代替的方法としては、第96項に定められ

る項目のみを持分変動計算書に表示することである。この手法では、第97項に示されている

項目は注記に表示されることになる。

キャッシュ・フロー計算書

102111. キャッシュ・フロー情報は、財務諸表の利用者に対し、当該企業の現金及び現金同

等物を生み出す能力並びにそのキャッシュ・フローを利用する企業のニーズを評価するため

の基礎を提供する。IAS 第7号「キャッシュ・フロー計算書」では、キャッシュ・フロー計算

書及びそれに関係する開示事項キャッシュ・フロー情報の表示及び開示についての規定が示

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

31

されている。

注記

構 成

103112. 注記は、次の事項を実行するものでなければならない。

(a) 財務諸表作成の基本となる事項並びに第108117項から115124項に従って用いる特定の会

計方針の表示;

(b) 貸借対照表財政状態計算書、損益認識収益費用計算書、持分変動計算書又はキャッシ

ュ・フロー計算書の本体に表示されない国際財務報告基準に従って要求される情報の開

示; 並びに

(c) 貸借対照表財政状態計算書、損益認識収益費用計算書、持分変動計算書又はキャッシ

ュ・フロー計算書の本体に表示されないが、それらを理解する目的に適合する追加情報

の提供。 104113. 企業は、注記はを実務的に可能な限り、体系的に記載しなければならない。企業は、

貸借対照表財政状態計算書、損益認識収益費用計算書及びキャッシュ・フロー計算書本体上

の各項目をには、注記における関連情報と相互参照できるようになっていしなければならな

い。 105114. 企業は、注記はを、通常、次の順序で記載され、利用者が財務諸表を理解し、他の企

業の財務諸表と比較するときの一助となるよう、通常、次の順序で記載する。

(a) 国際財務報告基準に準拠している旨の記述(第1411項を参照);

(b) 適用している重要な会計方針の要約(第108117項を参照);

(c) 貸借対照表財政状態計算書、損益認識収益費用計算書、持分変動計算書及びキャッシ

ュ・フロー計算書の本体に表示されている項目について、各計算書及び各表示項目が表

示されている順序での裏づけとなる情報; 並びに

(d) その他の開示事項(以下の項目を含む):

(i) 偶発債務(IAS 第37号)及び未認識契約、コミットメント;及び

(ii) 非財務開示事項。例えば、企業の財務リスク管理目標及び方針(IAS 第32号を参

照)

106115. 一定の状況においては、注記の個別項目の順序を変更することが必要である又は望ま

しい場合もある。例えば、損益として認識されている公正価値の変動に関する情報は、損益

認識収益費用計算書に関する開示であり、金融商品の満期日に関する情報は貸借対照表財政

状態計算書に関係するものであるが、企業は両者をまとめて記載することもできる。しか

し、実務的に可能な限り、企業は注記の体系的な構成はをそのまま継続する。

107116. 企業は、財務諸表作成の基礎及び個別の会計方針に関する情報を提供している注記は

を、財務諸表の別個の構成部分部分として表示することもできる。

会計方針の開示

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 32

108117. 企業は、重要な会計方針の要約に、次の事項を開示しなければならない。

(a) 財務諸表の作成に際して使用された測定基礎; 及び

(b) 財務諸表を理解する目的に適合するその他の会計方針。 109118. 企業が利用者がに財務諸表に使用された測定基礎(例えば、取得原価、現在原価、

正味実現可能価額、公正価値又は回収可能額)を知らせることは重要である。なぜなら、企

業が財務諸表がを作成されるする基準は、利用者の分析を大きく左右するからである。企業

が財務諸表で複数の測定基礎がを使用されしている場合、例えば、特定の種類の資産が再評

価される場合、それぞれの測定基礎が適用される資産及び負債の分類を示せば十分である。

110119. ある特定の会計方針を開示すべきかどうかを決定するに当たって、経営者は、その開

示が、取引、その他の事象や状況が業績や財務状態の報告にどのように反映されているかを

利用者が理解するのに役立つかどうかを検討する。特定の会計方針の開示は、当該方針が基

準書又は解釈指針で認められている代替処理方法から選択される場合には、利用者にとって

特に役に立つ。例としては、共同支配企業が比例連結法又は持分法(IAS 第31号「ジョイン

ト・ベンチャーに対する持分」)のどちらを使用して共同支配の事業体への持分を認識して

いるかどうかの開示がある。ある基準書は特に、特定の会計方針を開示することを要求して

おり、その中には、許容されている会計方針の中で経営者が選択したものも含まれている。

例えば、IAS 第16号は、有形固定資産の各種類に対し用いた測定基礎の開示を要求してい

る。IAS 第23号「借入費用」は、借入費用を即座に費用として認識しているのか、或いは適

格資産の費用の一部として資産化しているのかどうかの開示を求めている。

111120. 各企業は、当該種類の企業について開示されるであろうと財務諸表の利用者が期待す

る営業活動及び会計方針の内容について検討する。例えば、法人税の対象となる企業は、繰

延税金負債及び繰延税金資産を含む法人所得税に関する会計方針を開示することを期待され

るであろう。企業が重要な在外営業活動体を有している又は外貨建て取引を実行している場

合には、為替差損益の認識に関する会計方針の開示が期待される。企業結合が発生した場合

には、のれん及び少数株主持分の測定に使用された方針が開示される。

112121.当期及び過年度について計上された金額が重要でないとしても、ある会計方針が企業

の営業活動の性質上重要となる場合がある。国際財務報告基準書では特に要求されていない

が、IAS 第8号に従って選択され、適用される重要な各会計方針を開示することが適切であ

る。

113122. 企業は、重要な会計方針の要約又は注記で、見積り(第116125項を参照)を伴う判断と

は別に、経営者が財務諸表に計上されている金額に も大きな影響を持つ当該企業の会計方針を

適用する過程で行った判断について開示しなければならない。

114123. 企業の会計方針を適用する過程で、経営者は、見積りを伴う判断とは別に、財務諸表に

計上されている金額に大きく影響する様々な判断を行う。例えば、経営者は次の事項を決定する

場合に判断を行う。

(a) 金融資産が満期保有目的の投資かどうか;

(b) 実質的に金融資産及びリース資産の保有による重要なリスクと経済的価値のすべてがそ

の他の企業にいつ移転されるか;

(c) 実質的に特定の財貨の販売が金融の取決めであり、従って収益を生み出さないものかど

うか;及び

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

33

(d) 企業と特別目的会社との関係の本質が、特別目的会社が企業によって支配されているこ

とを示すものであるかどうか。

115124. 第113122項に従って行われる開示のいくつかは、その他の基準書でも要求される。例え

ば、IAS 第27号は、直接的に又は子会社を通じて間接的に議決権又は潜在的議決権の過半数が所

有されていても、子会社に該当しない被投資企業に関し、企業の所有持分がなぜ支配を構成しな

いか、その理由を企業が開示することを求めている。IAS 第40号は、不動産の分類が困難なとき

に、企業が自己使用不動産及び企業の通常の事業の過程で販売目的で保有される不動産から投資

不動産を区別するために設けた要件の開示を求めている。

見積りの不確実性の原因となる主要な事項

116125. 企業は注記に、翌会計年度において資産や負債の帳簿価格に重要な修正を加える原因と

なる重要なリスクを伴う将来に関するしてなされた重要な主要な想定事項及び貸借対照表日報告

期間の期末日におけるその他の見積りの不確実性に関する主要な重要な情報を開示しなければな

らない。当該の資産及び負債に関し、注記には次の事項の詳細について記載しなければならな

い。

(a) その内容;並びに

(b) 貸借対照表日報告期間の期末日における帳簿価額。

117126. 資産と負債の帳簿価額を決定するには、貸借対照表日報告期間の期末日において当該の

資産と負債に対し影響を与える将来の不確実な事象について見積りを行うことが要求される。例

えば、次の資産と負債を測定するのに使用できる直近に観察された市場価格が存在しない場合、

有形固定資産の各種類についての回収可能額、棚卸資産に対する技術的陳腐化の影響、進行中の

係争に関する将来の結果に対する引当金及び年金債務などの長期従業員給付債務を測定するの

に、将来に向けた見積りが必要となる。当該見積りは、キャッシュ・フローや使用される割引率

に対するリスク調整、将来における賃金の変動及び将来におけるその他の費用に影響を与える価

格の変動などの項目についての想定を伴う。

118127. 第116125項に従って開示される主要な想定事項と見積りの不確実性の原因となる主要な

事項は、経営者の も困難で、主観的又は複雑な判断を要求する見積りと関連がある。不確実性

事項の将来における解消に影響を与える変数や想定事項の数が増えれば、経営者の判断はより主

観的で複雑となり、その結果、資産及び負債の帳簿価格への重要な修正の可能性についても同様

に増すことになる。

119128. 第116125項の開示は、貸借対照表日報告期間の期末日で、直近に観察された市場価格に

基づく公正価値(公正価値について重要な変動が翌会計年度に生じる可能性があるが、当該変動

は貸借対照表日報告期間の期末日の想定事項や見積りの不確実性の原因となるその他の事項から

生じるものではない)で測定されているのであれば、翌会計年度に帳簿価額が大きく変動する可

能性がある重要なリスクを伴う資産及び負債について要求されるものではない。

120129. 企業は、第116125項の開示はを、将来について及び見積りの不確実性の原因となる主要

な事項について経営者が行う判断を財務諸表の利用者が理解するのに一助となる方法で表示す

る。提供される情報の内容と範囲は、想定事項やその他の状況の内容に応じて変わってくる。開

示の例としては次のようなものがある。

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 34

(a) 想定事項又はその他の見積りの不確実性の内容;

(b) 帳簿価額の計算の基礎となる方法、想定事項及び見積りに対する感応度及びその感

応度の理由;

(c) 不確実性について予測される解決方法及び影響を受ける資産及び負債の帳簿価額に

関し翌財務年度に生じる結果の合理的な可能性の範囲;

(d) 不確実性が解決されないままである場合に、当該資産と負債に関する過去の想定事

項に対して行われた変更事項についての説明。

121130. 企業は、第116125項の開示を行うにあたって、予算情報や予測を開示する必要はないこ

とは要求されない。

122131. 貸借対照表日報告期間の終了時点で重要な想定事項や見積りの不確実性の原因となる他

の主要な事項が与える影響の可能性の範囲について開示することが実務上不可能である場合に

は、企業は、既に持っている知識を基に、翌会計年度内において、想定事項と異なる結果によ

り、影響を受ける資産や負債の帳簿価額に重要な修正を行う合理的な可能性があることを開示す

る。すべての場合において、企業は想定事項により影響を受けることになる特定の資産又は負債

(又は、資産又は負債の種類)の内容と帳簿価額を開示する。

123132. 第113122項で述べられている、企業が会計方針を適用する過程で経営者が行う特定の判

断の開示は、第116125項で述べられている見積りの不確実性の原因となる主要な事項の開示に関

連するものではない。

124133. 第116125項に従って要求されることになるであろう主要な想定事項のいくつかについて

の開示はを、その他の基準書でも要求されるは要求している。例えば、IAS 第37号は、特定の状

況において、各種引当金に影響を与える将来事象に関する主要な想定事項の開示を要求する。

IFRS 第7号は、公正価値で計上されている金融資産及び金融負債の公正価値を見積るために適用

される重要な想定事項の開示を要求する。IAS 第16号は、再評価された有形固定資産項目の公正

価値を見積もるのに適用される重要な想定事項の開示を求める。

資本

124A134. 企業は、財務諸表の利用者が企業の目的、方針及び資本運営のプロセスを評価すること

を可能とする情報を開示しなければならない。

124B135. 第124A134項に従うため、企業は以下を開示する。

(a) 企業の目的、方針及び資本運営のプロセスについての質的情報は以下を含む(ただし、

以下に限定されるわけではない)。:

(i) 企業が資本として運営しているものについての説明;

(ii) 企業はいつ外部から強制される資本規制の対象となるか、それら規制の性質、及び

それら規制が資本の運営にどのように取り込まれているか;

(iii) 企業が資本運営の目的をどのように満たしているか

(b) 企業が資本として運営しているものについて要約した量的データ。企業のなかにはある

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

35

金融負債(例えば、劣後負債のうちある形態のもの)を資本の一部とみなしている。別の

企業は、持分のある構成要素(例えば、キャッシュ・フロー・ヘッジから生じる構成要

素)を除外して資本とみなしている。;

(c) (a)及び(b)の中での直前の期間からの変更

(d) 当期に、企業が対象となる外部より強制される資本規制に従ったかどうか

(e) 企業が、そのような外部より強制される資本規制に従っていない場合、そのように規制

に従わないことによる影響

企業は、これら開示はを企業の主要経営陣に対して内部で提供される情報にに基づかなければな

らない基づいて行う。

124C136. 企業は、多くの方法で資本を運営することができ、多くの異なる資本規制の対象となっ

ている。例えば、複合企業は、保険活動や銀行活動を行っている企業を含んでいるかもしれず、

それら企業は、複数の国で営業を行っているかもしれない。資本規制や資本がどのように運営さ

れているかの開示を纏めて行うことが有用な情報を提供しない場合、又は、企業資本の源泉に対

する財務諸表利用者の理解をゆがめる場合、企業はその企業が対象となっている各資本規制に対

する個別の情報を開示しなければならない。

その他の開示事項

125137. 企業は注記に下記の事項を開示しなければならない。

(a) 財務諸表の公表が承認される前に提案又は宣言されたが、期中において株主への配分と

して認識されていない配当の金額及び関連する 1 株当たり金額;及び

(b) 認識されていない累積優先配当の金額。

126138. 企業は、財務諸表とともに公表される情報のどこにも開示されていない場合には、次

の事項を開示しなければならない。

(a) 当該企業の本拠地及び法的形態、設立された国並びに登記上の本社の住所(又は登記住

所と異なる場合の主要な事業所の所在地);

(b) 当該企業の事業内容及び主要な活動に関する記述;及び

(c) 親企業の名称及びグループの 終的な親会社の名称。

発 効 日

127139.企業は本基準書(案)を、2005年1月1日(日付は公表後挿入される)以後に開始する年

度について適用しなければならない。早期適用は奨励される。企業が2005年1月1日(日付

は公表後挿入される)以前に開始される期間について本基準書(案)を適用する場合に

は、その事実を説明しなければならない。

127A 企業は、2006年1月1日以後開始する事業年度から第96項の改訂を適用する。企業は、

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 36

IAS 第19号「従業員給付」での保険数理差損益、グループ・プラン及び開示を早期に適用

する場合、その変更は早期に適用される。

127B 企業は、2007年1月1日以後開始する事業年度に第124A 項から第124C 項の規定を適用す

る。早期適用が奨励される。

IAS 第1号(19972003年改訂)の廃止

128140. 本基準書(案)は19972003年に改訂された IAS 第1号「財務諸表の表示」に置き換わ

る。

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

37

結 論 の 根 拠

本結論の根拠はIAS第1号に付随するものであるが、その一部となるものではない。

はじめに

BC1. 本結論の根拠は、IAS第1号「財務諸表の表示」の改訂に係る公開草案の結論に至るまでの、

国際会計基準審議会の検討内容をまとめている。審議会メンバーの重点の置き方は要素により

異なった。 BC2. このIAS第1号改訂案は、業績報告プロジェクトのセグメントAに関する審議会の審議の成果

である。セグメントAでは、完全な一組の財務諸表を構成する各計算書を取り扱っている。同

プロジェクトのセグメントBでは、財務諸表上の情報の表示に関連する、より根本的な問題点

を検討することになる。 BC3. 審議会は、IAS第1号における財務諸表の表示に関する規定の全文を見直すことを意図して

いない。したがって、本結論の根拠は、IAS第1号の規定のうち審議会が見直しを行わなかった

ものについては論じない。

完全な1組の財務諸表

完全な1組の財務諸表の名称及び構成

BC4. 審議会は、財務諸表の名称及び完全な1組の財務諸表の構成を、次のように変更することを

提案している。 (a) 貸借対照表を、財政状態計算書と呼ぶ; (b) 期末における財政状態計算書に加えて、期首の財政状態計算書も含める(BC6項-BC9項参

照); (c) 持分変動計算書に、全ての持分変動を表示するよう要求する(BC11参照); (d) 認識収益費用計算書を要求する(BC12項-BC16項参照); (e) キャッシュ・フロー計算書の名称を ’cash flow statement’ から、’statement of cash flows’

に変更する。 審議会は、名称に関する変更を強制することを提案していない。

BC5. 審議会は、「財政状態計算書」という名称が当該計算書の機能をより良く表現し、フレーム

ワークとも整合するものと結論付けた。フレームワークの第12項には、財務諸表の目的は、企

業の財政状態、業績、及び財政状態の変動に関する情報を提供することにあると指摘している。

第19項は、財政状態に関する情報は、主として貸借対照表において提供されると述べている。

審議会は、「貸借対照表」では単に複式簿記が貸借同額の仕訳を要求していることを反映して

いるにすぎないと指摘した。「貸借対照表」では、計算書の内容や目的が明らかにならない。

審議会は、「財政状態」がよく知られ一般に認められた用語であることを指摘した。それは、

監査人の意見書において、20年以上にわたって、「貸借対照表」が表すものを説明する用語と

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 38

して国際的に用いられてきた。審議会は、計算書の名称をその内容及び監査人の表明する意見

の双方に合わせることは、財務諸表の利用者の役に立つと判断した。

期首の財政状態計算書

BC6. IAS第1号は、企業に、完全な1組の財務諸表の形式で財務情報を表示することを要求して

いる。審議会は、完全な1組の財務諸表には、期首における財政状態計算書を含めるべきだと

判断した。それは、期首の財政状態計算書が、期中の企業の業績に関する情報を投資家及び債

権者が評価する基礎を提供するからである。アナリストがしばしば用いる指標の計算には、期

首及び期末の企業に関する情報が必要である。したがって、注記に加えて、比較情報を表示す

る企業は、少なくとも財政状態計算書を3つと、他の計算書を2つ表示することが必要となる。 BC7. IFRSは、超インフレ経済下の通貨が機能通貨である企業、及び、IAS第8号「会計方針、会

計上の見積りの変更と誤謬」に定義された会計方針の変更、誤謬の修正を行う企業に、過年度

の財務諸表を修正することを要求している。さらに、基準の中には、初度適用時及び会計基準

の変更時には、遡及適用が要求されるものがある。期首の財政状態計算書におけるこれらの修

正の効果は開示されるものの、計算書全体が表示されれば財務諸表の利用者にとって便利であ

る。 BC8. 審議会は、期首の財政状態計算書は財務諸表にとって不可欠な要素だと考えた。すなわち、

完全な1組の財務諸表を構成する他の財務諸表、言い換えれば、認識収益費用計算書、持分変

動計算書、キャッシュ・フロー計算書の作成にとって不可欠だということである。ゆえに、期

首の財政状態計算書を提示することによって、財務諸表の作成者に追加的なコストは発生しな

いことになる。 BC9. よって、審議会は、期首の財政状態計算書の表示を要求することは、(a)財務諸表の理解可

能性を向上させ、(b)投資家及び債権者が財務諸表を分析するのに役立つと結論付けた。

同等の明瞭性

BC10. 企業の財務業績は、単一の財務諸表やある財務諸表内の単一の測定値によって評価される

ものではないことを指摘した。審議会は、企業の財務業績は財務諸表の全ての側面を考慮に入

れ、財務諸表全体が理解されてはじめて評価され得るものと考えている。よって、審議会は、

財務諸表利用者が企業の財務業績を包括的に理解するのに役立てるには、完全な1組の財務諸

表中の各財務諸表が、同等の明瞭性をもって表示されなければならないと判断した。

所有者との取引による持分変動の報告

BC11. 審議会は、共通の性質に基づいて財務諸表の情報を集約することは有用であると述べた。

例えば、ある期において、所有者の立場としての所有者との取引から生ずる企業の持分(純資

産)の全ての変動(すなわち、所有者との取引による全ての持分変動)を、その他の持分の変

動(すなわち、所有者との取引以外による持分変動)と区別することは有用である。このこと

を念頭に、審議会は、所有者との取引による全ての持分変動を、所有者との取引以外による持

分変動と区別して、持分変動計算書上に提示すべきだと判断した。

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

39

認識収益費用の報告

認識収益費用計算書

BC12. 所有者との取引による全ての持分変動を独立した財務諸表に計上すべきと判断したことを

受けて、審議会は、次に所有者との取引以外による全ての持分変動を、単一の計算書で表示す

べきか、2つの計算書で表示すべきかを検討した。2つの計算書による表示方法では、一方の

計算書に、損益として認識された収益及び費用が表示され、もう一方の計算書には、国際財務

報告基準が損益の外側で認識することを要求する収益及び費用の項目が表示される。これらの

項目は、所有者の立場としての所有者との取引から生ずるのではない。そのような項目には、

たとえば、在外営業活動に関連する為替換算差額や、売却可能金融資産に係る利得又は損失が

含まれる。 BC13. 審議会は、所有者との取引以外による全ての持分変動を、単一の計算書に表示する方を選

好した。所有者との取引以外による全ての持分変動は、フレームワークの収益及び費用の定義

に合致する。フレームワークは、損益について定義していないし、損益に含まれる項目の性質

を、損益に含まれない項目の性質と区別する規準も提供していない。したがって、審議会は、

各項目をいずれかの計算書に振り分けるために用いることができる明確な原則や共通の性質が

ない以上、企業が所有者との取引以外による全ての持分変動(すなわち、ある期において認識

された全ての収益及び費用)を、単一の計算書で表示することは、概念的に正しいことだと判

断した。 BC14. しかし、審議会と市場関係者との議論において、多くの者が、単一の計算書という概念に

強く反対していることが明白であった。彼らは、単一の計算書の 終行に、必要以上に焦点が

あたると主張した。さらに、多くの者は、審議会が、表示に関する他の側面について審議しな

いうちに、すなわち、どのようなカテゴリーや行項目を認識収益費用計算書上に表示すべきか

を決定しないうちに、単一の計算書による収益及び費用の表示が財務報告の改善につながると

結論付けるのは時期尚早だと主張した。 BC15. これらの見解に照らし、審議会は単一の計算書を選好しているものの、ある期において認

識された全ての収益及び費用を、単一の計算書又は2つの計算書のいずれによって表示するの

かについては、企業に選択権を与えることにした。企業が収益及び費用(所有者との取引以外

による持分変動)の構成要素を、持分変動計算書に表示することは禁止されている。審議会は、

単一の計算書による表示は、所有者との取引以外による全ての持分変動を、所有者との取引に

よる持分変動とは区別して表示すべきだとする審議会の根本的な決定ほど重要ではないと結論

付けた。審議会は、所有者との取引による持分変動と所有者との取引以外による持分変動の表

示を区別することは、財務報告の著しい改善につながると考えている。審議会は、プロジェク

トのセグメントBにおいて、単一の計算書による収益及び費用の表示を、表示についての他の

側面と併せて議論する予定である。 BC16. 審議会は、また、企業が収益及び費用を2つの計算書で表示する場合には、損益計算書を

認識収益費用計算書の直前に表示しなければならないものとした。審議会は、これが、収益及

び費用の表示に係る同等の明瞭性についての目的を達成する 善の方法だと結論付けた。

総認識収益費用

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公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 40

BC17. 公開草案は、「総認識収益費用」すなわち、株主の立場としての株主による拠出及び株主

に対する配分以外の取引及びその他の事象から生ずる企業のある期の持分変動に関する定義を

導入することを提案している。「総認識収益費用」という用語は、IAS第1号では定義されてい

ない。 BC18. 審議会は、公開草案で「包括利益」という用語を用いないこととした。「包括利益」は、

米国財務会計基準書第130号(SFAS130)「包括利益の報告」において、株主による拠出及び

株主に対する配分以外の取引並びにその他の事象及び状況から生ずる持分変動を説明するもの

として用いられている。審議会は、「総認識収益費用」を用いることは、現行の基準と整合し

ているばかりでなく、収益費用を定義しつつも包括利益を定義していないフレームワークとも

整合していると結論付けた。 BC19. しかし、審議会は、「総認識収益費用」という用語を強制することは提案していない。

損益を示す小計

BC20. 審議会は、引続き認識収益費用計算書上に、損益を示す小計を要求することとした。審議

会は、損益に含められる項目は、その他認識収益費用に含められる項目との区別を可能にする

ような固有の性質を有しないものと認めた。しかし、審議会及びその前身は、一部の項目につ

いて損益の外側で認識することを要求しており、損益を表示する慣習は深く現行実務に浸透し

ている。審議会は、プロジェクトのセグメントBにおいて、収益及び費用の構成項目をどのよ

うに認識収益費用計算書において表示すべきかを審議するつもりである。

組替修正額

BC21. 審議会は、企業は組替修正額、すなわち過年度にその他認識収益費用として認識し当期に

損益に組み替えた金額を、区分して表示すべきだと判断した。このような組替修正は、国際財

務報告基準に則って損益に組み替えられるときに、総認識収益費用に二重に計上されることを

避ける上で必要である。 BC22. 審議会は、組替修正額の区分表示が、2つの異なる期間に計上された収益及び費用―過年

度にその他認識収益費用として認識され、当期に損益として認識された収益及び費用―の金額

を、利用者に明瞭に伝えるのに必要不可欠であると考えている。そうした情報がなければ、利

用者にとって、損益への組替えの効果を評価したり、売却可能金融資産、キャッシュ・フロ

ー・ヘッジ、在外営業活動の換算又は処分に関連する利得又は損失を計算したりすることが困

難になる可能性がある。 BC23. 公開草案では、認識収益費用計算書上か注記によって、組替修正額を表示することが認め

られている。審議会は、財務諸表に組替修正額を表示することは重要であるが、必ずしもそう

した表示を認識収益費用計算書上に要求する必要はないと考えた。

その他認識収益費用-関連する税効果

BC24. その他認識収益費用の構成項目は、関連する税効果考慮前の金額によって表示しても、税

効果考慮後の金額によって表示してもよい。税効果考慮前の金額による表示によれば、損益の

構成項目が一般に税引前の金額で表示されるため、その他認識収益費用から損益への組替修正

額の追跡が容易になることになる。税効果考慮後の金額による表示によれば、持分変動計算書

上の金額が一般に税引後で表示されるため、その他認識収益費用が持分を変動させる金額が明

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IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

41

瞭に示されることになる。いずれの方法にも長所があるため、審議会は、その他認識収益費用

の構成項目は、(a)関連する税効果考慮後の金額、(b)その他認識収益費用に関連する法人所得

税の総額を単一の金額で示した上での税効果考慮前の金額、のいずれの表示によることもでき

るとした。 BC25. 審議会は、また、表示が税引前によるのか税引後によるのかに関わらず、その他認識収益

費用の各構成項目に関連する法人所得税に関する開示を行わなければならないものと結論付け

た。審議会は、その他認識収益費用の構成項目に適用される税率が損益に適用されるものとは

多くの場合異なるために、財務諸表の利用者がその他認識収益費用の構成項目に関連する税額

についてより詳細な情報を要求することが多いことを指摘した。したがって、その他認識収益

費用の各構成項目に関連する法人所得税の表示を要求することにより、利用者による財務諸表

の分析が容易になることになる。審議会は、また、財務諸表の作成者はそうした税金に関する

情報を持っており、ゆえに財務諸表の作成者において追加的な負担は生じないだろうと指摘し

た。

1株当たり指標の表示

BC26. 公開草案は、IAS第33号「1株当たり利益」の規定を変更することを提案していない。審議

会は、それらの規定の変更は、プロジェクトのセグメントAの範囲を超えるものと結論付けた。

ただし、審議会は、1株当たり指標の変更及び改善を、プロジェクトのセグメントBの一部とし

て議論するつもりである。

キャッシュ・フロー計算書

BC27. 審議会は、間接法によるキャッシュ・フロー計算書の営業活動の部を、IAS第7号「キャッ

シュ・フロー計算書」で求めているように損益から始めるのではなく、総認識収益費用から始

めるべきか否かを検討した。その他認識収益費用が非現金項目である場合、営業活動からのキ

ャッシュ・フローにおいては調整項目となり、情報量の増加を伴わないでキャッシュ・フロー計

算書に項目を増加させることになる。それらが現金項目である場合、総認識収益費用から始め

ることは、キャッシュ・フローの表示には何ら影響を与えない。したがって、審議会は、プロ

ジェクトのセグメントAにおいては、IAS第7号の改訂は必要ないと結論付けた。

配当の表示

BC28. 審議会は、配当とは所有者の立場としての所有者に対する分配であるから、所有者との取

引による持分変動を表す持分変動計算書又は注記に表示しなければならないものとした。審議

会は、認識収益費用計算書は、所有者との取引以外による持分変動を表すものであるため、配

当を認識収益費用計算書上に表示すべきではないものと結論付けた。

他の基準書の改訂

IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」

Page 42: IAS 第1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳...IAS 第1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳 3 8. 本公開草案は、次の点を要求する改訂を提案している。

公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 42

BC29. 審議会は、国際財務報告基準の初度適用者が 初の財務諸表に、従前の一般に認められた

会計原則で報告されていた直近期の総認識収益費用(あるいは相当額)から国際財務報告基準

に基づく同期間の総認識収益費用への調整表を含めることを要求することとした。国際財務報

告基準第1号では、損益に関してそのような調整表を要求している。国際財務報告基準第1号の

当該結論に至るにあたり、審議会は、利用者が国際財務報告基準への移行の効果及び影響を理

解し、国際財務報告基準に基づき表示された情報を 大限活用できるように分析モデルをどの

ように変更する必要があるか理解するためには、そのような開示が必須であると述べた。 BC30. 審議会は、収益及び費用の表示に関するIAS第1号の改訂によって、利用者が、分析モデル

を、損益として認識された収益及び費用と損益の外側で認識された収益及び費用の双方を含む

よう変更しなければならなくなる恐れがあると考えた。よって、審議会は、損益として認識さ

れた収益及び費用だけでなく全ての収益及び費用に関して、国際財務報告基準への移行の効果

及び影響についての情報を提供することが、財務諸表の利用者に役立つと結論付けた。 BC31. 審議会は、他の国における一般に認められた会計原則には、総認識収益費用の概念がない

可能性があることを認めた。よって、審議会は、企業が従来の一般に認められた会計原則にお

いて総認識収益費用に相当する額を、国際財務報告基準に基づく総認識収益費用に調整すべき

こととした。従来の一般に認められた会計原則における相当額は、損益である可能性もある。

IAS第34号「中間財務報告」

BC32. 審議会は、IAS第34号第8項(すなわち中間財務報告の 低限の構成要素)に、完全な1組の財務諸表に期首の財政状態計算書を含めることを要求するとの決定を反映させないこととし

た。完全な1組の財務諸表に関して、この規定は、年次財務諸表においては3つ目の財政状態計

算書を表示させることになる。しかし、IAS第34号は、中間報告に期首からの累計アプローチ

を採用しており、IAS第1号の比較情報に関する規定を繰り返し述べてはいない。したがって、

期首の財政状態計算書についての規定を追加することが中間報告の内容を変えることにはなら

ない。審議会は、中間財務報告の規定を変えないのにIAS第34号を改訂することは、混乱を招

くことになる判断した。審議会は、IAS第34号の比較情報に関する規定の変更は、本公開草案

の範囲を超えているものと判断した。

Page 43: IAS 第1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳...IAS 第1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳 3 8. 本公開草案は、次の点を要求する改訂を提案している。

IAS 第 1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳

43

IAS 第1号「財務諸表の表示」改訂案に対する代替的見解

AV1. IAS第1号「財務諸表の表示」改訂案の公開草案の公表にあたっては、5人の審議会メンバ

ーが反対した。彼らの代替的見解は以下に示されている。

4人の審議会メンバーからの代替的見解

AV2. 4人の審議会メンバーは、認識収益費用の全項目を、所有者の立場としての所有者との取引

から生ずる純資産の変動とは別に報告することを要求する提案に同意している。そのような区

別をすることは、明らかに、財務報告の著しい改善である。 AV3. しかし、この審議会メンバー達は、企業が認識収益費用計算書を2つの別個の計算書に分

割することを認めることとした決定は、概念上不合理であり、賢明ではないと考えている。 AV4. フレームワークは、損益ないしは純利益を定義していない。また、損益に含めるべき認識

収益費用の項目と、そうすべきでない項目との識別に用いるべき規準も示していない。場合に

よっては、同一の取引について、損益の内側でも外側でも認識することが可能である。実際、

BC13項では、審議会はこれらの事実を認め、単一の計算書によることが概念的に正しい方法

であるとの考えから、認識収益費用の全ての項目を単一の計算書で報告することを選好すると

している。この審議会メンバー達は、場合によって損益計算書を通らない認識収益費用の項目

も、企業の業績の評価にあたっては、損益計算書に含まれる項目と同程度に重要になり得ると

考えている。ある項目を損益として報告するのか、その外側で報告するのかを決定するための

概念上の区別が開発されるまでは、全ての項目を単一の計算書で報告しない限り、財務諸表が

中立性や比較可能性を欠くことになる。そうした単一の計算書によった場合、現行の慣習を反

映し、損益を小計として示すことができる。 AV5. この審議会メンバー達は、財務諸表の利用者が、認識収益費用の全ての項目を含む、業績

に係る単一の計算書を一貫して求めてきたことを指摘している。こうした要請は10年以上も前

からなされており、この審議会メンバー達は、会計基準設定主体がそれに応える時期に来てい

ると考えている。 AV6. この審議会メンバー達は、また、本公開草案には、表示方法について企業に選択肢を与え

ている点で欠陥があるとも考えている。審議会は、国際財務報告基準における選択肢を削減し

たいという願望を表明してきた。「国際財務報告基準書に関する趣意書」第13項は、「IASBは会計処理に選択肢を許容する意図はなく・・・、選択肢の数の削減を目的として、国際会計

基準が会計処理上の選択肢を認めている取引や事象を・・・引続き見直していくつもりであ

る」と述べている。趣意書は、この目的を会計処理と報告の双方に拡張している。同項は、

「IASBの目的は、同種の取引や事象には同種の会計処理及び報告を要求し、異なる取引や事

象には異なる会計処理及び報告を要求することにある」(強調筆者)と述べている。今回選択肢

を許容したことにより、IASBはこの原則を放棄したことになる。

Page 44: IAS 第1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳...IAS 第1 号「財務諸表の表示」改訂案 和訳 3 8. 本公開草案は、次の点を要求する改訂を提案している。

公開草案(2006年3月)

○c Copyright IASCF 44

AV7. 後に、この審議会メンバー達は、今回の表示に関する選択肢の許容が実務に浸透すること

により、業績報告に関する長期プロジェクトが進行する上で、概念的に正しい表示を達成する

ことがより困難になると考えている。

5人目の審議会メンバーからの代替的見解

AV8. 5人目の審議会メンバーは、「貸借対照表」及び「損益計算書」という名称の変更に関する

提案に同意できないことから、改訂案の公表に反対した。両者とも、財務報告の も中心的な

部分をなす2つの計算書に対する的確な名称として、広く用いられ一般に受け入れられている。

この審議会メンバーの見解によれば、これらの名称は時代遅れなどではなく、名称の変更によ

って財務報告に対する理解が一層促進されるわけでもなく、むしろ、市場関係者を混乱させ、

誤解される危険性を高めることになる。 AV9. 「財政状態計算書」という名称は、直感として「貸借対照表」と同義ではない。提案された

新しい用語は、多くの者にとって、流動性や支払能力といった企業の状況の異なる側面を示唆

する可能性がある。「認識収益費用計算書」には曖昧さはないが、日々の使用には面倒である。 AV10. この審議会メンバーの見解では、現在の名称のもつ意味は、財務関係の事柄にそれほど親

しんでいない人でさえも十分に理解している。当該変更に関する提案は、新しい用語法に慣れ

ることを市場関係者に強いるという不必要な重荷を課すことになり、この問題は100か国以上

で新しい名称を翻訳しなければならないために増幅されることになる。 AV11. 審議会は、基準の起草にあたっては平易な言葉を用いたいという願望を表明してきた。こ

の審議会メンバーの見解によれば、提案された変更はこの目的に合致していない。