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2 0 1 2 年 度 卒 業 論 文

和 歌 山 県 紀 南 地 域 で の ジ オ ツ ー リ ズ ム の 実

現 可 能 性

〜 モ デ ル ツ ア ー と ヒ ア リ ン グ 調 査 〜

和歌山大学 観光学部地域再生学科学籍番号 27031070

芳賀健人

指導教員 尾久土正己

Page 2: kushio/on-semi/resources/Theses/3... · Web view本論文はモデルツアーの結果に基づいて、ジオツーリズムのツアーの組み立てやガイドの工夫の仕方を考察する。ジオツーリズムについての先行研究の多くは地質学や地盤工学などの地学および、その関連分野からのアプローチによるもので、観光学の観点からアプローチしたもの僅少である。

要旨 本論文はモデルツアーの結果に基づいて、ジオツーリズムのツアーの組み立てやガ

イドの工夫の仕方を考察する。ジオツーリズムについての先行研究の多くは地質学や

地盤工学などの地学および、その関連分野からのアプローチによるもので、観光学の

観点からアプローチしたもの僅少である。地学系の研究者には観光の視点が無く、観

光を考える際に、彼らと一般の観光客のあいだには考え方に大きな相違があり、ガイ

ドをおこなう際の足枷になると考えた。和歌山県でのジオツアー催行する際にツアー

参加者とツアー提供者の認識のずれをなくし、観光客の満足度を上げることに寄与し

たいと思い、観光学の観点からジオツーリズムにアプローチした本論文を記した。

 本論文を記すに際しては、モデルツアーとヒアリング調査をおこなった。これによ

り、ジオツーリズムの認知度が非常に低いこと。数十万年や数億年のあいだに展開さ

れた地表活動を観光客が頭の中で地質学・地形学的な立体化したイメージをうかべな

がら、時間スケールに沿っていまの景観につながっていることを理解するのは非常に

むずかしいということ。地学的な専門知識を平易な言葉に置き換えて、ガイドするだ

けでは観光客に勉強といった印象を与えてしまうことがわかった。それを解決する策

のひとつとして、「身近なこと、万人が好きな事、誰もが興味を持っていそうなこと

に専門的な知識を加えてガイドをする。」ことが有効ではないかと考えた。そういっ

たガイドを養成するための提言も併せて記した。

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目次第一章 はじめに

-1.1 研究の背景

-1.2 研究の目的

第二章 紀伊半島のジオストーリー

第三章 ジオパーク・ジオツーリズムとは

-3.1 ジオパークとは

-3.2 ジオツーリズムとは

第四章 モデルツアーの実施

    -4.1 概要

    -4.2 事前ヒアリング

    -4.3 モデルツアー

第五章 考察

第六章 結論

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第 一 章 は じ め に

-1.1 研 究 の 背 景 近年、観光および地域振興に関連して、ジオツーリズム( ここでは「地球を知って

楽しむ観光」とする) およびジオパーク( 同じく「地球の遺産とそこで営まれている

生活・文化 をパッケージングし楽しめるようにした空間」 ) が注目されている。

2013年1 月22日現在、日本国内では25の地域が日本ジオパーク委員会に日本ジオパー

クとして認定されており、うち5 地域は世界ジオパーク認定を受けている。和歌山県

も2012年3 月6 日の県議会で仁坂知事が紀南地域の世界ジオパーク入りを目指すと宣

言し、県をあげてジオツーリズムの実施に向けて動き出すことを表明した。( 参 考 文

献 1 ) 紀南地域は橋杭岩や一枚岩に代表される保存状態のいい地質遺産が数多く存在

する地域である。また古くから地震や台風など多くの災害に見舞われてきた地域であ

り、液状化現象の跡である白浜泥岩岩脈や津波で流された多くの岩が転がる橋杭岩な

ど災害の痕跡も多く残るため、防災教育にも利用できるものが数多くある。

 

 もともと白浜以南串本に至るまでの地域には飲食店や宿泊施設も少なく、観光を売

りにした地域ではないが、海岸線には多くのジオサイト(ジオパークにおける見所)

や黒潮にもまれて育った海産物があり、ジオツーリズムを実施するには非常に恵まれ

た地域である。しかし、現在紀南地域ではジオツーリズムや、それに準ずるものは行

われておらず、これからジオパークが整備されていくのにともない実施されていくと

考えられる。

 ジオパーク・ジオツーリズムを通じた持続可能な観光を用いた地域振興をおこなう

には、行政だけでなく地域住民が自ら地域に誇りを持ってボトムアップしていかなけ

ればならない。地域住民を巻き込んだ活動がなされているかはジオパーク認定の際に

も重要視される。地域住民も協力して実際にジオツーリズムを売り出す際にガイドの

方法やジオサイトの見せ方など、どういった工夫が必要なのかを知るための情報が少

ないため、一般の人々がジオパーク・ジオツーリズムに対してどういった印象を受け

るのかを調査する必要がある。

 また和歌山大学では「和歌山大学平成24年度教育改革推進プロジェクト採択課題

現物教育プロジェクト〜この夏、和大生なら熊野で学べ〜」という「南紀熊野」を題

材とした学生の自主的な活動や研究に対する費用支援をおこなうプロジェクトがあり、

そこに応募し研究費用の支援を受けた。

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-1.2 研 究 の 目 的 現状では和歌山県でジオツーリズムは観光の目玉になるキラーコンテンツではない

ためオプショナルツアーとして売り出すのが妥当だと考えられる。そのため、ツアー

をおこなう場合に必要不可欠な観光客の意識を把握することが重要である。社会的に

地学や自然地理学に対する関心は低いため、目が向きにくいと予想されるジオツーリ

ズムに観光客を呼び込むためにはどういった工夫が必要なのかをモデルツアーを行い

参加者にヒアリング調査をおこなうことで検証する。今回の場合、事前調査でほとん

どの人がジオツーリズムを認知しておらず、アンケートを行っても知らないものには

答えることができないため、実際に観光客と同じようにツアーを体験してどういった

ものかを理解した上でヒアリングをおこなうことにした。

 この調査によって実際のツアーをおこなう際にどういったガイドを行えば観光客が

興味を持ちやすいか、ジオサイトをまわる際にどの順にまわればガイドがしやすいか、

またどういった道具を使えば観光客が解説を理解しやすいかを明らかにする。これに

より今後和歌山県でのジオツーリズム催行の際のツアー内容の組み立てや、ガイドの

工夫の仕方を考える際に少しでも役立てるようにする。現状は人を呼ぶ為に何が必要

かではなく、来ていただいたお客様をどう満足させるかと言う部分に重点を置いた調

査をおこなう。

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第 二 章 紀 伊 半 島 の ジ オ ス ト ー リ ー

付加体→付加体の 上の 盆地へ の 堆積→熊野カ ル デ ラ 火山

− 紀伊半島は 大き く 分け て こ の 3つ の 出来事に 集約さ れ

付加体

海の沖合でたまった泥や大陸近くの海底にたまる砂、暖かい海でできる珊瑚礁ででき

た石灰岩などが、プレートに載ったまま大陸へと運ばれる。そのプレートが、大陸の

プレートに衝突したところで大陸の下へ潜り込もうとするとき、プレートの上に乗っ

ている泥、砂や石灰岩などは、プレートと同じように大陸の下に沈み込むのではなく、

大陸の縁に衝突したまま、大陸の端へはぎ取られる(付加する)。このようにしてで

きた岩石帯を、付加体、と呼ぶが、日本列島の地盤の大部分はこのような付加体でで

きている。付加体は堆積後、大陸と衝突する際に大きく変形しており、大きな傾斜や

大規模な褶曲を見せる。そして1 億8000万年前にユーラシアプレートの東端に列島の

大陸側半分(内帯)ができた。1 億3000万年前に南方で生まれた列島の太平洋側半分

(外帯)がイザナギプレート(今は存在しない)に乗ってやってきて、7000万年前に

合体してできた。その後日本海が割れて、独立島となった。

紀伊半島も多くの地域は付加体でできており、天鳥の褶曲など和歌山県内各所に付加

体の痕跡が見られる。( 参 考 文 献 2 )

前弧海盆( 付加体の上の盆地への堆積)

付加体ができたあと、そのくぼみに陸から洪水など何らかの原因で供給された砂泥が

堆積する。1 度の災害で泥の層と砂の層ができ、これを砂泥互層と言う。堆積後に大

きな変形を受けていないので地層は付加体のように大規模な傾斜や褶曲はない。和歌

山県では田辺層群や熊野層群がこれにあたる。( 参 考 文 献 2 )

熊野カ ル デ ラ 火山

熊野層群や四万十帯(付加体)の中にできた大きなマグマだまりが、1400万年前に大

噴火を起こした。多量の火砕流が噴出し地表が陥没したため、巨大なカルデラが形成

された。そして、マグマ上昇の通り道となった地下の割れ目には次々とマグマが貫入

し、地下では巨大な火成岩脈が形成された。長い年月の間に風化・浸食を受けて、か

つて存在していたカルデラの地形はすっかり失われてしまったが、地下にあった火成

岩脈の一部は現在の地表に現れている。その代表が「古座川弧状岩脈」である。幅約

500 m(最大幅約800 m)、長さ約22kmの巨大な岩脈で、巨大カルデラの南のへり

を構成していたと考えられている。巨大カルデラの規模は南北径40km、東西径20k

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m。今日の串本町、古座川町、那智勝浦町、新宮市、旧本宮町、三重県南部まで広

がっていた。これは日本最大のカルデラ湖である北海道屈斜路湖(南北 20km 東西

26km )を遙かにしのぐ大きさであったことが推定されている。

 また古座川弧状岩脈は岩脈の岩石そのものが石材として利用されるなど、生活文

化との密接な関わりもあった。こういった側面も考慮され、平成21年5 月10日の

「地質の日」に、古座川弧状岩脈は日本を代表する地質遺産の一つとして和歌山県

内で唯一「日本の地質百選」に選定された。 ( 参 考 文 献 2,3 )

図 1   山 陰 海 岸 ジ オ パ ー ク HP よ り

図 2   川 崎 悟 司   オ フ ィ シ ャ ル ブ ロ グ   古 世 界 の 住 人 よ り

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第 三 章 ジ オ パ ー ク ・ ジ オ ツ ー リ ズ ム と は

-3.1 ジ オ パ ー ク と は

定義

世界ジオパークネットワーク(GGN :Global Geoparks Network )はジオパー

クを

科学的に見て特別に重要で貴重な、あるいは美しい地質遺産を複数含む一種の自

然公園であり、地質遺産を保全し、地球科学の普及に利用し、さらに地質遺産を

観光の対象とするジオツーリズムを通じて地域社会の活性化を目指すものとして

いる。

2013年1 月時点で、ジオパーク事業はUNESCO の支援を受けるという形になっ

ている。

世 界 ジ オ パ ー ク と 日 本 ジ オ パ ー ク ジオパークには2種類ある。各国内向けのもの(我が国の場合は「日本ジオパー

ク」)と世界的に価値が認められた「世界ジオパーク」である。いずれにせよ、

「ジオパーク」と名乗るためには認可を得る必要がある。

 2013 年1月現在、世界ジオパークは27 カ国88 地域、日本でも5 地域が世界

ジオパークに認定され、日本ジオパークには20 地域が認定されている。

UNESCO が 定め る ジ オ パ ーク が 備え る べ き 6つ の 要 素

深見(2010 )によるまとめを改変し、中串(2013 )が示しているものを下記に

引用する。

規模と環境

地域の地史や地質現象がよくわかる大地の遺産を多数含むだけでなく、考古学

的・生態学的もしくは文化的な価値のあるサイトも含む、明瞭に境界を定めら

れた地域である。単に地学的に重要なサイトを集めただけではジオパークとは

見なされない。

運営及び地域との関わり

公的機関・地域社会・民間団体・研究教育機関などで構成されるしっかりした

運営組織・施設と運営・財政計画を持つ。

経済開発

ジオツーリズムなどを通じて、地域の持続可能な社会・経済発展を育成する。

教育

博物館、自然散策路、ガイド付きツアー、各種媒体などにより、地球科学や環

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境問題に関する教育・普及活動をおこなう。

保護・保存

それぞれの地域の伝統と法に基づき大地の遺産を確実に保護する。従って、基

本的には鉱物や化石標本の販売などを行ってはならない。

グローバル・ネットワーク

GGN の一員として、相互に情報交換を行い、会議に参加し、ネットワークを

積極的に活性化させる。

活 動 内 容 活動内容をわかりやすくまとめると

1.大地の遺産を保全

2.子供たち=教育に活用、観光客=観光業に活用

3.ジオツーリズム=観光、経済の活性化

 この3つに集約される。

世 界 ジ オ パ ー ク 認 定 ま で の 流 れ「世界ジオパーク」と名乗るためには認可を得る必要がある。

まず、日本ジオパークネットワークに、日本ジオパークを目指す地域であることを

表明し、準会員として登録される(ここまでは敷居は低い)。並行して「ジオ」に関

する保全・研究・教育・普及活動やジオツアーを行っているという実績を積む。正会

員への審査の主な応募条件は、優れた地球遺産(地形・地質など)を持つこと、ジオ

パークを運営する組織・体制が確立済みであることである。それらが認められて初め

てJGN の正会員となれる。JGN 正会員は「日本ジオパーク」を名乗ることができる。

「世界ジオパーク」になるためには、世界ジオパークネットワーク(Global Geoparks Network; GGN への加盟が認められねばならない。GGN への加盟申請

は、各国毎年2 件しかできないことになっており、日本ジオパーク委員会の審査に

合格して初めてその「申請候補」になることができる。審査を受ける主な条件は、

既にJGN 正会員として加盟していること、「ジオ」に関する保全・研究・教育・普

及活動と、ジオツーリズムを通じた地域活性化に充分な実績があること、などであ

る。日本ジオパーク委員会から推薦されたジオパークを、GGN が審査する(書類

審査 と 現 地審査)。詳しい流れについては、次の図3 に示す。

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図 3 日 本 ジ オ パ ー ク ネ ッ ト ワ ー ク HPよ り 引 用

-3.2 ジ オ ツ ー リ ズ ム と は

定 義ジオツーリズム自体が新しいものであるため、定義自体が確立していない、ここで

は代表的なものをいくつか列挙する。

横山(2008,2010 )は

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「単なる地質現象の見学や化石採集」ではなく、「貴重なあるいは重要な地

質・地形学的景観を保全している地域における、その景観や環境を損なうこ

とのない持続可能な」ものであり、子どもから大人までの多世代の生涯学習

の場につながる観光。

深見(2010 )は

地質や地形と言った地学を導入口とし、考古学・生態学・文化的な見どころ

をジオサイトと位置づけて地学的な価値付けをおこない、人間の生活は地学

的基盤(=geo)に支えられており、地質や地形なくして自然環境と人間環

境のかかわり(生態系)は成立しないという側面を学ぶ形に徹するもの。

地球の活動が生み出した何らかの特徴的な地域「ジオサイト(geosite )」

に行って、その景観や特産物即ち「大地の遺産(geoheritage)」を楽しむ

わけであるが、旧来の観光と異なるのは、そこに地学的な情報発信が加わる

ことである。きれいな景観を眺めるだけ、化石を物珍しく見学するだけであ

ればジオツーリズムとは異なると考えるのが一般的で、子供から大人までの

多世代の生涯学習の場につながる観光。

 などとしている。( 参 考 文 献 4,5,6 )

 大地の遺産(geoheritage )を中心としたジオパークと博物館などの施設を中心とし

たジオパークがあり、代表例を次にあげる。

大地の遺産を中心とした山陰海岸ジオパーク

京都府、兵庫県、鳥取県の複数の自治体にまたがったジオパークで中核施設はなくジ

オサイトごとに複数のビジターセンターを備える。このジオパークは日本海形成に伴

う様々な地形・地質・風土に特徴づけられる多様な地質、地形があり、それらを見る

ための遊覧船でのジオツアーや山陰海岸ジオパーク110km ウォークなど数多くのジオ

ツーリズムが提供されている。

また、マレーシアのランカウイジオパークがこのタイプで、有料のツアーが多数組ま

れている。

施設を中心とした恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク

福井県勝山市全体を範囲とするジオパークで、このジオパークは自然系博物館では日

本有数の福井県立恐竜博物館を中核施設とし、この博物館のあるかつやま恐竜の森を

中心としたジオツーリズムがおこなわれている。

世界ジオパークで有名なものに3つの博物館のみで構成される中国の自貢ジオパーク

があり、ここは博物館を見るだけでジオツーリズムおこなったことになる。

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第 四 章 モ デ ル ツ ア ー の 実 施

-4.1 概 要このツアーは事前に調査などで筆者自身が多くのジオサイトを訪れた感想や事前案

調査の結果から、ジオツアーだけで旅行プランを作るのは現状では難しいと判断。熊

野カルデラの火成活動によってできた古座川弧状岩脈の一部である古座川の一枚岩、

月野瀬の牡丹岩、高池の虫喰岩、同時期の異なる火成活動によってできた鬮野川の橋

杭岩の4カ所を半日かけてまわる古座川駅発のオプショナルツアーという想定でモデ

ルツアーを作成した。

この4カ所のうち牡丹岩を除く3 カ所は国の天然記念物指定を受けており、地質鉱

物としての価値を認められたジオサイトである。この4カ所をツアー目的地とした理

由は、古座川弧状岩脈が熊野の霊場をつくった岩で紀南地域を特徴づける地質活動で

あり、この熊野カルデラ火山の名残を軸にストーリーを作り解説することで一つのス

トーリーに沿った解説をおこなうことができ、参加者の理解が容易になるのではない

かと考えたからである。

唯一、天然記念物指定を受けていない牡丹岩は、かつて熊野カルデラ火山が噴火し

た際にできた一枚岩や虫喰い岩と同じ古座川弧状岩脈の一部である。一枚岩が浸食に

よって虫喰岩のようになったという解説をする際に、一枚岩と虫喰岩をつなぐストー

リーにおいて必要だと考えツアーに組み込むことにした。

橋杭岩はこのストーリーとはすこし違った成因であるが紀南地域の有名な観光地で

あり、今回のモデルツアー以前に参加者の全員が行ったことがあったため、解説なし

で来たときと、解説ありで来たときに見え方は変わるのか、解説はあった方がいいの

かなどを聞く際に絶好の調査対象となるために組み込んだ。

またジオツーリズムの対象となる大地の遺産は、基本的には「人の手が入っていな

い」自然の景観であることが多い。手つかずのまま残っているということは、そもそ

も危険であり「行くべきところでない」ことが多い。(2013 中串)にもあるように、

自然(絶景)をコンテンツにした観光に必ず伴うリスクマネジメントの問題がある。

また交通手段も未発達であることも多い。( 参 考 文 献 7 )

今回のツアーでまわる4カ所すべてのジオサイトは目の前に無料の駐車場があり交

通アクセス面がよい。もともと観光地として整備されているため安全面も確保できて

おり、観光に伴うリスクマネジメントもしっかりできる。

さらに、一枚岩と橋杭岩には道の駅がありのジオツーリズムをおこなう際に観光客

が簡単な地学的解説を受けられる情報発信拠点としての利用も可能で橋杭岩の道の駅

(2013年3 月末迄に完成予定)は今後の世界ジオパーク認定を見据えたビジターセン

ターとしての機能も兼ね備えた道の駅になる予定である。( 参 考 文 献 8 )

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日程 2012年12月14日( 金) 〜2012年12月15日( 土)モ ニ タ ー参加者 和歌山大学生(男2・女1)・大学院生(男1)行先 和歌山県東牟婁郡串本町及び 古座川町周辺     ( 橋杭岩・一枚岩・牡丹岩・虫喰岩)

集合 12/14 17:50 和歌山駅 中央改札前

旅程 12月14日18:06 和歌山駅発 JR 特急く ろ し お 21号

20:22 串本駅着

        20:30 チ ェ ッ ク イ ン 予定 ビ ジ ネ ス ホ テ

ル 串本

   12月15日09:00 ホ テ ル フ ロ ン ト 集合

09:05 ホ テ ル 発 一枚岩へ

        09:30 一枚岩着           40分間解説・見学・ヒ ア リ ン グ

          移動の 際に 牡丹岩見学

        10:10 虫喰岩へ

        10:35 虫喰岩着           40分間解説・見学・ヒ ア リ ン グ

        11:15 橋杭岩へ

        11:35 橋杭岩着           40分間解説・見学・ヒ ア リ ン グ

        12:15 串本駅へ

        12:20 串本駅着           昼食 串本駅前

        13:31 JR 特急く ろ し お 20号で 和歌山駅へ          車内で ヒ ア リ ン グ

        15:46 和歌山駅着 解散

現物教育予算を利用し、学内で4名のモニター(ここで以降のヒアリングの結果等を

わかりやすくするため、4 人の参加者をA,B,C,D とする。)を募集し、観光学部 中

串孝志准教授の引率で実施。事前ヒアリング、インタビューを行った。

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尚、15日9時よりツアーを実施するため前日のうちに串本に到着し1泊することにし

た。

14日の夜は串本の新鮮な海の幸を食べながら、黒潮の解説をおこなった。

現物教育プロジェクトとは

和歌山大学 平成 24 年度教育改革推進プロジェクト採択課題で「南紀熊野」を題

材とした学生研究、演習の支援学生または教員、職員からの提案を募集します。南紀

熊野に実際に行って展開する学生の研究や演習を支援。内容は, 自然系、社会系、人

文系のいずれでも OK 。卒論や大学院での研究活動を南紀熊野で実現する、あるい

は, 南紀熊野を深く知り、学ぶ演習を支援する。北大和歌山研究林および古座川町を

題材とした研究の提案も歓迎する。1 件の申請上限額は30万円、応募件数にもよるが

数件の支援を目指す。採択された提案には、研究に必要な物品( 消耗品レヘル) の購

入費、交通費、その他の費用を指導教員( 学部、大学院所属) に配分。現地へ行く際

には、指導教員の引率を前提とする。なお、採択された提案には年度末までに報告書

の提出を義務づける。予算に限度があるため、応募された課題の全てをあるいは全額

の費用負担はできないかも知れないが、応募書類を審査し支援の可否と金額を決定す

る。審査では学生の熱意、実現可能性、内容レヘル( 新規性、独自性、先々の研究や

地域活動への発展性) 、学会など外部へ公表するための計画を立てられているか?地

域に喜ばれそうな提案かどうか?( 話題性) 、などを総合的にみて判断。審査者は必

ずしも応募されたテーマの専門家ではないが、「南紀熊野」ということで審査者を説

得できた提案を優先して支援する。また、紀中、紀北を題材にした応募であっても審

査者を説得できた提案には費用を支援する。というプロジェクト。( 現 物 教 育 プ ロ

ジ ェ ク ト 募 集 要 項 よ り 抜 粋 )

-4.2 事 前 ヒ ア リ ン グ12月11日、12日にひとり30分ほどで個別にヒアリングを実施。

ジオツーリズムという言葉を聞いたことがあるか。

→参加者のうちA,B のふたりが聞いたことがないと回答。C,D が聞いたことがある

と回答。

C がたまたまブックカバーにジオパーク関連の書籍の広告が書いてあるのを見ただ

けで、どういった内容のものかは知らず、言葉として聞いたことがあるだけ。

D は筆者のゼミでの発表を聞いたことがあり、ある程度の知識はあった。

 筆者が3 回生だった2011年5 月にweb アンケートを作成しfacebook 上で「ジオパー

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ク・ジオツーリズムの認知度についてのアンケート」を行った際に116 人から回答を

頂き、聞いたことがあると答えたのは全体の約6% にあたる7 名。うち内容まで知っ

ていると答えたのは2 名だけだった。しかもこの2 名のうちひとりはマレーシア人

あった。このことからも国内ではいかにジオツーリズムの認知度が低いかが分かる。

ジオパーク・ジオツーリズムと聞いてどういったものをイメージするか。

→C は景色・自然・アクティビティ・国立公園と答え、前記のweb アンケートでも

大半の人が「国立公園のようなもの」と答えていた。A とB はジオ(geo) の言葉の

意味が理解できずイメージできないと答えた。そこでgeology やgeography のgeo

だと言ってはじめて地質・化石・自然・公園・岩石といったイメージだと回答して

もらえた。D の参加者は筆者の発表を聞いて知っていた。日本では現在、ちょうど

いい訳語がないためか英語の「geo-park ・geo-tourism 」をそのまま「ジオパーク・

ジオツーリズム」と訳さずに用いているが普段聞き慣れない言葉であるため言葉だ

けを聞いても、いまいちピンと来ない人が多いようだ。

 しかし、話をしているとA は洞爺湖有珠山ジオパークのある地域。B は美祢ジオ

パークとしてジオパーク認定を目指す秋吉台・秋芳洞。C は恐竜渓谷ふくい勝山ジ

オパークにある福井県立恐竜博物館にいったことがあり、4人中3 人が知らないあ

いだにジオパークと接点を持っていた。A は話をしているうちに、「そういえばジ

オパークとか書いてあった気もする。」と言っていたが、その他のB とC は全く自

分がジオに触れていたことを知らなかった。こうしたことから、もしかすると、参

加者たちは今までにジオパーク・ジオツアーという言葉を聞いていたかもしれない

が、耳なじみのない言葉であるために忘れてしまっているのかもしれない。

 

ジオパーク・ジオツーリズムに興味があるか。

→参加者はジオパーク・ジオツーリズムに関するイメージが無いため『全国ジオ

パーク完全ガイド』( 参 考 文 献 9 ) を見せながら質問をした。B は今まで知らな

かったために興味がわかなかったが、こうして話を聞いてみて非常に興味がわき是

非行ってみたいと回答、残りのA,C,D の3 人も興味があると答えた。B は「それを

目的として行くことはないかもしれないが、旅行のオプショナルツアーとしてそう

いった選択肢があると魅力を感じ参加するかもしれない。」C は「旅行先にそう

いったものがあるなら参加したい。」と言っていた。しかし、A は「興味はあるが

まだどういったものなのかが掴みきれない」と言っていた。

実際にジオツーリズムに参加するとしたらどういったものを見たいか。

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Page 16: kushio/on-semi/resources/Theses/3... · Web view本論文はモデルツアーの結果に基づいて、ジオツーリズムのツアーの組み立てやガイドの工夫の仕方を考察する。ジオツーリズムについての先行研究の多くは地質学や地盤工学などの地学および、その関連分野からのアプローチによるもので、観光学の観点からアプローチしたもの僅少である。

→こちら側がジオツーリズムを構成する要素を選択肢として、その他を含め11個

用意し複数回答で興味のあるものを答えてもらった。これらの選択肢は『九州のジ

オパークに対する観光客のイメージ:4つのジオパークにおける観光客アンケート

調査から』深見聡・有馬貴之(2011) を参考にした。各選択肢に当てはまると答えた

参加者を書いている。

( ア) 地層の見学 A( イ) 化石C( ウ) 岩石・砂の採集

( エ) 温泉・地熱などの地下エネルギー A,B,C( オ) 火山 A,B,C,D( カ) 景勝地(海岸・滝・川)などの地形B,( キ) 動植物など生物の観察C,D( ク) 郷土料理・地産地消 A,B,C,D( ケ) 災害・防災・減災C,D( コ) 博物館・資料館B,D( サ) その他()

 この結果、やはり地層の見学や岩石・砂の採集には興味がなく、温泉・地熱など

の地下エネルギーや郷土料理・地産地消に票が集まった。旅行と言えば温泉とおい

しい食べものといったイメージが反映される結果となった。また、ふたりが災害・

防災・減災を選んでいた。理由を聞いてみるとふたりとも「2011年に東日本大

震災があり災害や防災への意識が高まっているから」と答えた。私が意外に思った

のは全員が火山を選んだことで、理由を聞いてみるC とD は「ハワイの火山などの

映像を見て一度行ってみたいと思うから」といった要旨のことを言っていた。

 ここからは今回のモデルツアーの参考としての事前質問をおこなった。

一枚岩・牡丹岩・虫喰岩・橋杭岩に行ったことがあるか。

→これはA だけがすべて行ったことがある。その他B,C,D の3 人は橋杭岩のみ行っ

たことがあると回答。

行ったことがある場合、地学的説明を受けたことがあるか。

→A,B,D の3 人が「ない」と回答。C は「あったとしても覚えていない」と回答。

解説を聞いて理解できたか。

→聞いていないため無回答。

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現地にある案内板等を見たことがあるか。

→これにはB,C,D の3人が「読んでいない。」、A が「伝説のみ見た」と回答。

案内板を見て理解できたか。

→読んでいないため無回答。

 このヒアリングでわかったのは、以前おこなったweb アンケートと同じくジオパー

ク・ジオツーリズムの非常に認知度が非常に低いこと。また、言葉だけを聞いても内

容を容易に想像できないことである。しかし、どういったものかを説明し概要を掴ん

でもらえると興味を持つ人もいるということ。

-4.3 モ デ ル ツ ア ー  モデルツアーでは各ジオサイトで30〜40分の見学をおこなったあとに全員ま

とめてヒアリングを行い、どういった印象を受けたかや解説は理解できたか、ここを

もっと詳しく解説してほしかったなど、こちらから会話のきっかけになる質問を投げ

かけながら20分程度自由に話をしてもらった。参加者には当日の朝、解説を補足す

るためのガイドブックを配布しガイドの際に見てもらうことにした。配布した資料に

ついて本稿の最後に添付する。

一 枚 岩この日は未明から早朝にかけて大雨が降っていた影響で朝霧が出て、普段は見るこ

とができない滝が姿を現していた。

 はじめに道の駅の隣から全体を見学し、その後河原に降りて一枚岩のくわしい解

説を行った。解説では1400万年前に熊野カルデラ火山が大噴火を起こして古座川弧

状岩脈ができたこと、この噴火の火砕流が東大阪まで到達し、火山灰は房総半島に

まで降り注いだことを話した。参加者にいかに大規模な噴火であったかを理解して

もらうために、富士山が噴火した場合どこまで被害が及ぶかを例に出し解説を行っ

た。河原に降りた際に一枚岩はガーネットを含む岩石で出来ていて表面は風化が進

み赤茶けているが深部には風化していない緑がかった部分があると言う話をしなが

ら、河原にある一枚岩と同じ火砕岩と呼ばれる岩石を割って風化していない部分を

見せた。

前に見たときと印象は変わったか。

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→ひとりだけ今までに大学のフィールドワークで一枚岩に来たことがあるA は「こ

んな大きかったかな、前回来たときは守り犬の伝説の話を聞いただけで地学的な解

説はなく、ただそこに大きい石があるとしか思わず、すぐに飽きてしまった。」と

言っていた。これはゆっくり時間を取って岩の前に立って指を指しながら見たこと

によって、しっかりと全体を見渡すことができたからだと考えられる。解説を耳で

聞きながら景色を眺めることで視覚から入る情報と聴覚から入る情報を同時に頭に

入れることで、景色と解説をリンクさせながら見ることができたので理解しやすく

より大きく見えたのではないか。

 今まで来たことが無かったC も「もし解説が無かったらちょっと見て満足すると

思う、今回は解説のおかげでしっかりと見ることが出来た。」と言っていた。

 D は「今回訪れるまでは、ただの大きい石だと思っていたが予想外の大きさだっ

た。解説によってなぜこのように大きい石が出来たかまで知ることが出来、よかっ

た。」と言っていた。

ジオの解説と伝説どちらがよかったか。

→ジオツアーとはいえども地質の話ばかりでは参加者も退屈してしまうので、併せ

て伝説の話もしたところの質問には全員が「伝説」と答えた。B は「伝説を聞いて、

より神秘的に見えた。」やD の「伝説が残っているのは面白い。」と言った意見も

あるなか、A の「以前来たときは伝説の話だけですぐに飽きてしまった。」という

意見もあったので地学的解説と伝説どちらか片方ではなく両方の話をすることで双

方が記憶に残るのかも知れない。

 参加者たちはそれなりに理解しているようなことを言っていたが、やはり目の前に

ある景色自体は変化しないので、解説を聞きながら自分で想像しなければならず、あ

まり理解できていない印象をうけた。

 今回は朝霧や滝が出ていたため動きのない岩石に動きが出て伝説の話もしやすくな

り、そのおかげで飽きにくかったかもしれないが朝霧や滝はいつも見られるわけでは

ないのでそういったものがなくても観光客が退屈せずに見られるのかは今後も調査を

しないといけない。

牡 丹 岩 ・ 虫 喰 岩

 一枚岩を出発し、虫喰岩に至る道中に牡丹岩に寄った。これは一枚岩と虫喰岩が

もともとはひとつながりの岩石だったことを解説するのに、あいだに牡丹岩を入れ

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ることで理解しやすくなると考えたからである。加えて、虫喰岩と牡丹岩は同じ風

化浸食によってできたため見た目が似ているが牡丹岩は解説無し、虫喰岩は解説あ

りだと似たような景色でも印象は変わるのかというのを確かめるためにまわった。

 牡丹岩ではあまり時間を取らず、これはもともと一枚岩のような姿をしていたこ

とと、浸食されているところ以外には一枚岩と同じ火砕岩であったという名残が見

て取れることだけを話し、どうしてこのような姿になったのかは解説せず虫喰岩へ

と向かった。

 虫喰岩では一枚岩も牡丹岩も虫喰岩も古座川弧状岩脈の一部であることを話し、

どうしてこのような姿になったのかを解説した。ここでも30分ほど解説をしなが

ら見学をしたり質問を受けたりしていた。

ガイドありとガイド無し違いはあったか。

→B,C は「別に大きな違いは無かった。」と答えていた。

 私たちが見学をしている間にひとりの観光客が現れ見学をしていたのだが、解説

も無しに見ていたせいか、ものの3 分で帰ってしまった。「これが普通の観光客が

奇岩を見る限界かもしれない。」とB も言っていたように、ぱっと見てすごいと

思って、写真を撮れば普通の観光客は満足してしまう。何の解説もないと「そこに

ただ単に変わった形の岩がある。それ以上何の印象も受けない」ともB は言ってい

た。

 解説なしの牡丹岩の感想を尋ねたときもD は「牡丹岩は単に穴があいているだけ

だった。」と答えた。しかし、解説をすることで「ぱっと見のすごい、解説を聞い

てなるほど、もう一度見てそういうことか」と最低3 度は楽しめるので今回途中で

現れた観光客のように3 分で帰るということはなくなると思う。B は「最終に残る

のはやっぱり自然ってすごいな。だけど、解説を受けることで何がすごいのかまで

知ることができた。」やA は「解説なしだと一瞬の感動で終わってしまう。しかし、

解説があることで深く印象に残る。覚えていられそう。」、C は「解説があること

によってより細かい所まで見る。」と言っていた。この意見からもわかるように解

説があると、解説がないときよりもしっかりと観察し「観察することの楽しさ」を

実感してもらうことができる。B は「(解説ありと無しで)大きな違いはない」と

答えていたが、その後の意見を見るとやはり違いはあったのだと考えられる。

 事後にメールで送ってもらった感想ではC が「ガイドがいることによって、疑問

に思ったことをその場で解決できるので、次々興味がわいてくる。」と書いていた。

このことからもガイドは重要だと考えられる。

あいだに牡丹岩に訪れたことについてどう思うか。

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→A は「牡丹岩があいだに入ったのはよかった一枚岩と虫喰岩(の風化浸食による

変化)をつなぐ、イメージがつながる。」、D は「(一枚岩がどのようにして風化

浸食されたのかの)時間の経過がわかりやすい。」と回答していた。あいだに牡丹

岩をはさむことによってガイドする側も話がしやすくなった。

 しかし、C は「私たちは中学・高校で理科の勉強をしていたので、解説で風化浸

食などの言葉が出てきても(言葉としては)理解できるが、言葉ではわかっても実

際に目の前にあるものは風化浸食を終えた後の姿なのでいまいちイメージがしにく

い。」、A は「言葉で聞いてもわかりにくい、ビジュアルで見たい。」と言ってい

た。こういった意見を少しでも和らげられるかと思い、あいだに牡丹岩を訪れるこ

とにしたが、それでもやはりイメージしにくいようだった。

 今回のモデルツアーの参加者ははじめに一枚岩で解説を受けていたこともあり、

このジオサイトでは「なんとなく地学者の楽しみ方がわかってきた。」と言ってい

る参加者もいた。やはり、一般の人には地学や地質学といった分野はほとんどなじ

みがなく、はじめは「難しい・自分とは関係のない」ものという認識があるが、解

説をすることによって先にも述べた「観察することの楽しさ」を知るきっかけを作

ることができれば観光客は興味を持って自ら楽しみを探すようになるのではないか。

橋 杭 岩 このツアーの最後のジオサイトである橋杭岩は参加者の全員が今までに来たこと

のある和歌山県の最も有名な観光地のひとつである。橋杭岩の前には弘法大師と天

の邪鬼の伝説と地学的解説を書いた案内板があるのだが、事前ヒアリングでその案

内板を見たことがあるかという質問を行ったところA,B,D が「見ていない。」、C

が「伝説の部分だけ見た。」と回答しており地学的解説は無いも同然の状態になっ

てしまっていた。今回まわったなかで唯一、熊野カルデラ火山とは関係のない火成

活動によってできたものであるが、ここまで山中のジオサイトが3カ所続き、すべ

て熊野カルデラ火山を軸にしたストーリーだったので参加者も飽きてくると思い、

海岸にある別の火成活動によってできた橋杭岩を選んだ。私としては火成活動に

よってできたものであるということに加え、事前調査で二人が「災害・防災・減

災」に興味があると答えていたこともあり、和歌山に近い将来訪れるであろう大地

震に伴う津波のすさまじさを過去の津波の痕跡を使って解説しようと思いツアーに

組み込んだ。

今までとは違った成因のジオサイトだがどういった印象をうけるか。

→ここまで来ると4カ所目ということもあり、B 「自然科学について軽くやったの

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で、時間がつぶせる。」、A 「まわっているうちに慣れてきてジオにも興味がわ

く。」、C 「(どのようにしてこんな形になったのかの)想像ができるようにな

る。」と言って参加者は地学的解説にも慣れてきているようだった。

 しかし一方でC の「(一度に複数をまわったので)頭の中で(解説が)ごっちゃ

になる。」という意見もあった。参加者が飽きてしまわないように古座川弧状岩脈

以外のジオサイトをツアーに組込んだのだが、同時期の火成活動によってできたも

のであったため結果的に似たような解説になり混乱させてしまうことになってし

まった。

 また、3カ所で解説を受けてきたこともあってか、B 「(海の生き物なども見た

いのに)岩だけを見なければならない感じがした。」と言う意見もあった。これで

は理科の勉強と言う印象を持たれかねないため、そういった印象を持たれないよう

にしなければならない。D の「岩の話だけでなく、海や川・動植物の話も聞きた

かった。」という意見があったことから、解説なしで自由に海や川を見せる時間を

作って河原や磯で遊んでもらうと勉強している印象が和らぐのではないか。本物の

自然を目の前に見ながらやっているので、地質的なものだけではなくジオ=地球と

して捉えてもらうことでもっと楽しんでもらえるのではないか。

津波の痕跡を見て威力を実感。

→ここでは橋杭岩の前の磯に降りて間近で見学した後、近くにある弘法大師堂とい

う小さな祠に行って上から橋杭岩全体を見渡してもらった。これは橋杭岩の周囲に

転がっている岩がすべて橋杭岩よりも陸側に転がっているのを見てもらいながらこ

れらの岩がすべて津波によって流されたということを解説し津波の威力を実感して

もらうことにした。するとD は「これは説明が無いと気付かなかった。」、B は

「津波の威力が伝わった。」と言っていた。磯で見学したときに橋杭岩の周囲に転

がっている岩の大きさを体感していたので、より一層津波の威力が伝わった。橋杭

岩ができた火成活動も前の3カ所よりもわかりやすい貫入によるものだったことに

加え、津波のことについてもD が「津波は(東日本大震災の)映像を見ているので

イメージしやすかった。」と言っていたように参加者にとっては一番理解しやすい

ジオサイトだったと言える。

ジ オ ツ ア ー を 終 え て 全 体 を 通 し て全旅程を終え帰りの電車内でインタビューをおこなった。

事前にこういう(ジオサイトを巡る)ツアーと聞いていたら参加したか。

( 参 加 者 募 集 の 時 点 で は 串 本 に 行 く モ デ ル ツ ア ー と だ け 告 知 )

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→これにはA,B,C が「来なかっただろう。」と回答。

今回のモデルツアーを経験して考えは変わったか。

→B 「オプショナルなら来てもいいなと思ったが、メンバーによる。」、C 「ジオ

ツアーとしては参加するかは怪しいが、旅行先でジオサイトのガイドがあれば聞

く。」という答えが返ってきた。

ジオサイトのまわる順番はどうだったか

→B 「よかった。」A 「最初の説明が重要だと思う。今回は最初にインパクトのあ

る所を見たので興味を持ちやすくよかった。」、B 「最初と最後のインパクトが重

要、今回はそれができていた。」D 「一枚岩と虫喰岩のあいだに牡丹岩を挟んだの

はよかった。」とまわる順番については概ね好評だった。

どういったものがあれば来るか。

→C からは「温泉、食事、アクティビティ」との答えが返ってきた。D は「そのジ

オサイト周辺の生き物や植物を観察したい。」他の参加者も「ジオだけでなく、ジ

オを含むツアーがいい」と言っていた。

 また、道具という面では「口頭のガイドだけでは理解しにくい部分を埋めるため

にiPad などを用いて図などを見せたりしてもらえるとありがたい。」とC は言って

いた。またAR アプリなどを用いることが出来れば、ガイドなしでも解説が出来る

ようになる。

A 「学校の研修旅行などで、こういった解説があれば嬉しい。」

アクティビティとはどういったものか。

→B が「カヌーやトレッキングにジオの解説を組み込むといい。」C は「カヌーだ

けしに北山村まで行った。そういったガイドがあるとさらに楽しいかも。」、D が

「もし可能であるなら、一枚岩に登って上から見下ろして大きさを実感したい。」

と言っていた。また、B は自らの海外旅行での経験から「外国人はトレッキングな

どが好きなので、うまくやれば外国人も呼べるのではないか。」と言っていた。

アクティビティ以外で何かあるか。

→D は「虫喰岩や牡丹岩はライトアップをして陰影をつけることで、より立体的に

見ええるのではないか。」や「一枚岩をスクリーンにして、そこにプロジェクショ

ンマッピングなどを用いて守り犬の伝説や熊野カルデラ火山の解説を投影してみた

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ら面白いと思う。」と言っていた。(ライトアップは橋杭岩が毎年11月上旬に行っ

ている。)

ツアーの最後に全体を通してどこが一番記憶に残っているか

→帰りの特急の中でヒアリングをおこなった。

「一枚岩の対岸で石を割りながら解説を受けたこと。」とA は回答。自ら体験して

得た知識は記憶に残りやすいということだろう。C は特定のジオサイトではなく

「最後の橋杭岩では落ちている石を見たり、地層を見て何万年前のものか考えたり

と知らない間に今までと違う視点で自然と向き合えている自分に気がついたこ

と。」と答えていた。見学後のヒアリングで「一度石の話を聞くと、石ばっかり見

てしまう。」というB の意見もあったように、各自が石を見ながら「これも同じ種

類。」や「これはどういう石ですか。」などツアーを開始したときには全く興味を

示さなかったものに興味を示していたのが印象的だった。

車内では古座川で有名である「東 うなぎ店」のうな重を食べてグルメの面からもジ

オを体感した。

全体を通しての感想

→今回のツアーでは学びの要素を意識させないように平易な言葉を使いガイドを

行ったが、それでもC からは「勉強になった!」、「自分にとって知識を得ること

は勉強なので勉強だと思った。」や「学んだという感覚」、「言われて見てたら勉

強してるイメージ。普通の観光は写真を撮ろうが、絵を描こうが自由やけど、みん

なで集まって話を聞くのは、新しい知識を入れるってことやし、勉強。興味がない

人はオプショナルでもつけない。」といった意見を頂いた。これを聞いて他の参加

者も同調し「勉強という印象を受けた。」と言っていた。第三章3 項に「学びの要

素を前面には出さず、観光客に学んでいることを意識させることなく、結果的にジ

オについての学びが達成されるような仕掛けを模索しなくてはならない。」と書い

たが、この感想を見るとそれは失敗に終わってしまったように聞こえる。

 しかしこの勉強について詳しく聞くと、C の「 “ 教科書等で学ぶ” のと“ 自分

の五感を使って学ぶ” という2 つの圧倒的な違いを感じました。」やD の「実際に

自然の中で学ぶと色々なことに興味が生まれました。」など“ 勉強” と言う言葉が

使われているが、それはネガティブなイメージではなく「知識を得る」という、い

い意味で使われているともとれる。

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 今回のモデルツアーでは、飲食費以外の交通費・宿泊費をすべて現物予算でまか

なったため、有料でツアーを行った際にはさらに厳しい意見が出てくることも考えら

れる。

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第 五 章 考 察ジオツーリズムにおいて、もっとも困難なことは、「本当の面白さ」までが遠いこ

とである。ジオサイトが内包する地球活動のストーリーを「理解」するためには、ど

うしても地球科学的解説が必要になる(従ってガイドが決定的に重要となる)。今回

のモデルツアーをから平易なガイドだけでは勉強という印象を持たれてしまうことが

わかった。旧来行われてきた自然を楽しむ観光との違いについて、深見(2010 )は

ジオツーリズムを、「地質や地形と言った地学を導入口とし、考古学・生態学・文化

的な見どころをジオサイトと位置づけて地学的な価値付けをおこない、人間の生活は

地学的基盤(=geo)に支えられており、地質や地形なくして自然環境と人間環境の

かかわり(生態系)は成立しないという側面を学ぶ形に徹する必要がある」としてい

るが、特に旅行を多くおこなう大人世代の理科離れが進む日本では、なおさらのこと

である。小学生までは国語、社会、算数よりも理科好きな生徒が多い( 参 考 文 献 10 )

のだが、高校、大学で文系・理系に分かれることで理系に進んだ人以外は理科に接点

を持つことがなくなり、その結果、理科への関心が薄くなっていくことは容易に推測

される。つまり、そのような「理科の勉強」を伴う観光が敬遠されることはほぼ明ら

かである。勉強という印象を持たれているようでは観光客を呼び込むことは容易では

ない。この点について中串(2013)は、「深見(2010 )の定義はコンテンツ提供側

の希望であり、これを前面に出す限り、ジオツーリズムの普及は見込めない。学びの

要素を前面には出さず、観光客にその目的を意識させることなく、結果的にそのよう

な学びが達成されるような仕掛けを模索しなくてはならない。」としている。

ここからは学びの要素を前面には出さず、観光客にその目的を意識させることなく、

結果的にそのような学びが達成されるような仕掛けについて考察をおこなう。

 まず、一般の観光客が旅行に学びの要素を求めているのかを考える。ヒアリングは

「旅行は癒し・娯楽を求めて行く。」という意見が見られた。また、観光庁『旅行・

観光産業の経済効果に関する調査研究』に上げられた観光の目的を見ても体験学習・

修学旅行があるのみで、個人として行く旅行で勉強を感じさせる選択肢は無い。これ

らのことから、学びを娯楽と捉える人がいるかもしれないが、観光に勉強を求めて行

く人は多くはないと考えられる。つまり、ジオツーリズムに人を呼び込むには、いか

に学びの要素を見せずに、地学的知識を交えたガイドができるかにかかっている。既

にジオパーク認定を受けている地域でも、こういったガイドの難しさというのは問題

になっておりガイド養成講座を開いているが、多くの地域では専門的な地学的解説を

平易な言葉で解説するといった講習がなされているようである。

 この点について山陰海岸ジオパークでガイドの講習などをしておられる、今井学氏

は自身のブログ『地方を元気にする方法(ジオパークでまちを元気に!!)』でジオ

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ガイドとして必要なのは「専門的なことを噛み砕いて説明する力が必要、果たしてそ

うでしょうか。実はこの考え方、正しいようでちょっと難しいんです。正確に言うな

らば、身近なこと、誰もが興味を持っていそうなことにジオパークの専門性を絡めて

お話することが大切なんです。」と言っている。例えば、その土地の食べ物がなぜお

いしいかを風土や地質から理由を探っていくと説得力が増す。( 参 考 文 献 11 ) この話

をもう少し詳しく説明すると、専門的なことをわかりやすく伝えようとしても限界が

る。専門性を噛み砕くのではなく、一般的なことにジオ的な専門性を加味することで、

ジオ的要素を誰もが気軽に扱える程度の「蘊蓄」へと昇華させるということだ。ジオ

ツアーをする際に勉強の印象を与えずにガイドをするには、この考え方は有効だ。

 筆者は“ まち歩き観光” にジオツーリズムの学びの要素を前面には出さず、観光客

にその目的を意識させることなく、結果的にそのような学びが達成されるような仕掛

けのヒントがあるのではないかと考えた。

ワールドビジネスサテライト.Log 1/12 特集,“ 街歩き” が生む新たな観光需要による

と、現在多くの地域でまち歩きガイドがまちおこしの一環として行われているという。

( 参 考 文 献 12 ) まち歩きガイドは人々の暮らしがある“ 街” を散策することで観光を

行っている。ジオツーリズムとの違いは、表面的には、ガイドの対象物が街であるか

岩石・地層であるかの違いだけである。しかし、街には人々の暮らしがあり自分たち

にも密接な関わりがあり多くの興味関心があるが、ジオサイトというのは一般的には

地学に興味が無ければ全く関係のない場所であり、そこが観光客を惹きつける上で大

きな違いを生み出す。

 しかし、まち歩きで取り組まれていることは「身近なこと、万人が好きな事、誰も

が興味を持っていそうなことに専門的な知識を加えてガイドをする。」という今井氏

の言うジオガイドに必要なことと合致する。つまり、興味のあることから専門的な知

識を加えて行くことに対して人々は勉強という印象を受けずに興味をもって訪れると

いうことである。加えて、上記の記事には「団体でパッケージツアーで旅行する時代

から、個人旅行が増えて自分のスタイルに合った楽しみ方をしたいという傾向が旅行

でも見られる。」「以前の旅の代名詞と言えばバスツアーなどの団体旅行だったが時

代の流れと共に個人旅行が人気に、さらに人とは違う楽しみを見つけるニーズが高ま

り、まち歩きに行き着いたのでは。」というリクルート 関東・東北じゃらん編集部

齋藤陽子氏の意見もある。( 参 考 文 献 12 ) ジオツーリズムも観光客が興味を持ちやす

い導入口から地学的解説をおこなうことができれば、こうしたニーズに応え観光客を

呼び込めるようになるのではないかと考える。

 深見(2010 )はジオツーリズムを地質や地形と言った地学を導入口としておこな

うものと定義していたが、ツーリズムとして成り立たせるためには、食や、カヌーや

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トレッキングといったアクティビティなど観光客それぞれの興味のあるものを導入口

とし、ゴールに地学を置くのが現実的である。

 一方で理科から興味を失ってしまう前の子供向けには、地学を導入口とし、専門知

識を小学生にも理解できるようなレヘルまで噛み砕いたガイドをすれば十分楽しめる

コンテンツになり得ると考えられる。最近は米村でんじろう氏のサイエンスショーな

ど、子供たちが実際に理科の楽しさを体験しながら学ぶことが注目されている。ジオ

ツーリズムも実際に石に触れたり、地層を見たり、好奇心旺盛な子供にとっては非常

に面白い経験になるのだろう。子供向けに、こういったジオツーリズムを通じた教育

をおこなうことで、今後の理科離れを食い止めることに一役買うことができるかもし

れない。

 こういったガイドはボランティアガイドではなく、有償ガイドとしておこなうべき

だと筆者は考える。山田(2013)によると無償ガイドがあるのは日本ぐらいで、欧米

ではガイド職は最先端の情報を提供するサービス業として平均年収より1~2割高い

そうだ。ジオツーリズムをビジネス化し、地域振興・経済活性化のために必要な戦術

として利用していくには、ガイドのクオリティを維持することが必要不可欠だ。ガイ

ドも報酬を受け取ることで責任感が芽生えより質の高いガイドが可能になる。ジオ

ツーリズムは自然を相手におこなうので、様々なリスクを伴う。そのためリスクマネ

ジメント面から見ても最低でも参加者の保険加入料は徴収すべきだ。地域再生の面で

も政策・施策・事業として観光客を呼び込むだけの非収益事業では意味がない。経済

価値を高め、域内利潤を生み出し続けるには地域住民からのボトムアップによって、

地域の経営戦略としてジオツーリズムを考える必要がある。( 参 考 文 献 13 )

 こ こ か ら は ガイド養成のために必要なことを提案する。

 まず、ガイドとして必要な能力は「ジオについての学術的知識」「危機管理能力」

「伝える能力」「接客術」最低限この4つは必要であると考える。学術知識について

は、地学に興味を持ってもらう程度でいいので、それほど高度なものは要求しない。

危機管理も各々の能力で対応できるサイトを担当すれば全員が高度なものを持つ必要

はない。

 「伝える能力」というのは「ジオについての学術的知識」を地学の知識を持たない

観光客にわかりやすく伝える能力のことである。筆者は巡検に同行し、地学の専門知

識を持つ地学者は、この「伝える能力」が欠けていることが多く、ガイドには向かな

いと感じた。一方地学の知識は持たないが、地域に暮らし、その地域のことについて

様々なことを知っている人は少なくない。

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 ガイドは観光客というお客様を相手におこなう訳であるから当然のことながら「接

客術」が重要となる。ガイディングを観光場面のサービスやホスピタリティに変わる

業務と捉えると、ガイディングに対する満足度はガイドの人間的魅力に大きく影響さ

れることになる。すなわち、ガイディングの成果はガイドの“ 全人格的資質” によっ

て左右されがちとなる。( 参 考 文 献 14 ) このことからガイディングにおける人材依存

度は極めて高くなる。接客態度がすばらしいとリピートにもつながる。しかし、逆に

接客態度が悪かった場合にはお客様の評価は非常に厳しいものになることが考えられ

る。こういったことを防ぐためにもジオの知識を伝えるだけでなく、ツアー参加者の

様子をしっかりと観察し、「あなたのために」という気持ちで接することが重要だと

考える。

 例えば、紀南の場合は漁師や熊野古道の語り部など自らの専門分野に関しては非常

に深い知識を持った人が多くいる。こういった人こそが「身近なこと、万人が好きな

事、誰もが興味を持っていそうなことに専門的な知識を加えてガイドをする。」を体

現するのに最も適している。全てのジオサイトに関する知識を身につける必要はなく、

自らの専門知識と絡めて解説するサイトと、全体としてのストーリーを理解していれ

ば十分だ。地学的知識は和歌山大学の地学教員に講習を依頼し、各自の専門知識以外

の話し方やガイドとしてのノウハウは熊野本宮語り部の会が持つ成功事例をうまく活

用したい。

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第 6 章 結 論 に か え て 本論を書いたきっかけは、和歌山県が世界ジオパーク入りを目指すと宣言し、これ

を期に和歌山にジオツーリズムという新たな観光の需要ができると考えたからである。

しかし、ジオツーリズムについての先行研究の多くは地質学や地盤工学などの地学お

よび、その関連分野からのアプローチによるもので、観光学の観点からジオツーリズ

ムについて論じているものは僅少である。筆者自身が地質巡検に参加し、地学系の研

究者には観光の視点が無く、観光を考える際に、彼らと一般の観光客のあいだには考

え方に大きな相違があると感じた。このことからも観光の視点から、ジオツーリズム

が包含する問題を調査することが必要と考えた。本論文により和歌山県でのジオツ

アー催行する際にツアー参加者とツアー提供者の認識のずれをなくし、観光客の満足

度を上げることに寄与したい。

 調査は事前ヒアリング、現物教育予算を用いたモデルツアーを実施し、ジオツーリ

ズムに実際に参加した時に一般の観光客はどのような印象を持つのか、観光客を呼ぶ

込むためにはどういった工夫が必要かを軸にヒアリングをおこなった。

 事前ヒアリングではジオツーリズムを認知しているか、ジオツーリズムに対するイ

メージ、モデルツアーの参考にする事前調査項目を聞いた。認知度は非常に低く、イ

メージも知らないためにイメージができないという答えだった。

 モデルツアーでは、熊野カルデラ火山を中心としたジオストーリーに沿ったジオサ

イトを選び、一枚岩・牡丹岩・虫喰岩・橋杭岩の4カ所を半日かけてまわった。

 ヒアリングの結果、地学的な専門知識を平易な言葉に置き換えて、ガイドするだけ

では観光客に勉強といった印象を与えてしまうことがわかった。さらに、数十万年や

何億年のあいだに展開された地表活動は、人間の歴史に比べて非常に長いスパンであ

るため、観光客にとってイメージがわきにくい。それを口頭で解説するだけでは、理

解が難しいことは容易に推測される。モデルツアーの参加者からは模型や映像を用い

た解説があれば理解しやすいという意見があった。ジオツーリズムは現状では観光客

を満足させるコンテンツとは言いがたく、オプショナルツアーでも参加してもらうの

は困難な状況である。実際に「これでは地学好きの一部の人しか来ないのでは。」と

いう意見も頂いた。

 今回の調査から観光客に少しでも興味を持ってもらい、観光客に学びの要素を意識

させることなく、結果的にジオに関する知識を深めることができるようなジオツーリ

ズムをおこなうには、「身近なこと、万人が好きな事、誰もが興味を持っていそうな

ことに専門的な知識を加えてガイドをすること」が最も有効な手段ではないかという

考えに至った。また、ガイドの質やリスクマネジメントの面から考えても、ボラン

ティアガイドではなく、有償ガイドとしておこなうべきだ。ジオツーリズムをビジネ

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ス化し、地域振興・経済活性化のために必要な戦術として利用していくには、ガイド

のクオリティを維持することが必要不可欠。ガイドも報酬を受け取ることで責任感が

芽生えより質の高いガイドが可能になる。

 また、口頭の解説だけではイメージがわきにくいという意見があった点については、

iPadやスマートフォンを使った解説や、近隣の道の駅の中にジオコーナーを作り、模

型を設置したり、映像を流すことでこういった不満を解消してほしい。

 今後和歌山県でジオツーリズムが実施される際には、この点を意識してガイドをお

こない観光客の満足度を上げてほしい。これをもって結論にかえる。

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< 参 考 文 献 >1. わかやま新報 世界ジオパーク認定目指す 和歌山県

http://www.wakayamashimpo.co.jp/2012/03/20120306_9707.html 2013.1.15

2. 愛知大学准教授古川邦之氏作成の講義資料 (personal communication)3. Mikumano Net 熊野カルデラ 熊野を知るためのキーワー

ドhttp://www.mikumano.net/keyword/caldera.html4. 深見聡 (2010) 『ジオパークとジオツーリズムの成立に関する一考察』

5. 地域総合研究 第38 巻 第1 号 63-726. UNESCO (2010) 、Guidelines and Criteria for National Geoparks seeking UNESCO's assistance to join the Global Geoparks Network (GGN)7. 中串孝志(2013 年刊行予定)「第13 章宇宙と地球の観光」大橋昭一編『現代の観光とブランド』同文舘

8. AGARA 紀伊民報 橋杭岩に「道の駅」観光振興の新たな拠

点http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=239380 2013.1.239. 中川信行 2013 全国ジオパーク完全ガイド マイナビ 

10. ヘネッセ ヘネッセ教育研究開発センター

学習基本調査・国際6都市調査報告書2006 年~2007 年

11. 今井学 地方を元気にする方法(ジオパークでまちを元気に!!)ガイドの現実

http://ameblo.jp/geopark/ 2013.1.25

http://benesse.jp/berd/center/open/report/gakukihon_6toshi/hon/hon_1_1_1.html 2013.1.28

12. ワールドビジネスサテライト.log 1.12 特集“ 街歩き” が生む新たな観光需要

http://wbslog.seesaa.net/article/180418513.html 2013.1.25

13. 山田桂一郎(2012) 「和歌山ジオツーリズム元年- 地球を感じる新しい観光

- 」12.2014. 前田勇 (2010) 改訂新版 現代観光総論 第20 章観光業の労働と人材p204

< 謝 辞 > 本研究を始めるにあたって、様々な情報や機会を提供して下さった、和歌山大学教

育学部久富邦彦教授、此松昌彦教授、愛知大学経営学部古川邦之准教授、和歌山大学

紀南サテライト古久保綾子氏に感謝の意を表したい。

 また、モデルツアーの実施に際し、モニターとして参加いただいた、岡崎准也氏、

岡本みなみ氏、多賀谷彰俊氏、吉田将義氏に厚く御礼申し上げたい。

 本研究は和歌山大学平成24年度教育改革推進プロジェクト採択課題 現物教育プロ

ジェクト予算により研究費の支援を受けた。

 最後に、所属ゼミナールにおいて尾久土正己教授、中串孝志准教授のご指導がなけ

れば、本研究を進め、本論論文を執筆することはできなかった。よって、この場をお

借りし、ご指導、ご協力いただいた全ての皆様に御礼申し上げます。ありがとうござ

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いました。

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付 録

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以下にヒアリング調査での会話の全文を記載する。

本文に登場するABCD は参加者、T は筆者、N は中串准教授である。

ヒ ア リ ン グ

一枚岩T :感想はいかがでしたか?

あ、A は一度来たことがあるんですね。

A :一度見ています。

T :今日は霧も出て前とは全然雰囲気が違ったと思いますが。

A :この前来たときより大きかったかなという印象です。

T :C はどうでしたか?

C :感想?T :単純にどう思ったかでいいです。

C :うーん、何だろう。昨日岩は止まっていると聞いていたが、滝も川もあったので

あまり退屈はしなかった。思っていたより見れた。

T :B はどうでしたか?

B :そうですねー、まあなんと言いますかタバコがあれば自然はいくらでも見ていら

れる。T の解説で数万年前にマグマが爆発してこの辺一帯が火山灰でいっぱいになっ

たという話が楽しかった。

T :ちなみに1400万年前の話です。

B :1400万年前。はぁー

C :たしかに、人が住んでいたら大変なことになっていただろうな。

和歌山真っ黒ってどうなんの?

B :古事記に載ってるでしょうね。

T :B も言っていたようにここで僕は解説をした訳ですが、A は以前なにも説明なし

で聞いていますよね?犬の伝説のみで。それで今回と前回はイメージは変わります

か?

A :だいぶ変わりました。

T :どういった風に?

A :それがあったからだと思うんですが、よりでかく見えました。

T :説明をしたらよりでかく見えた。

N:なるほど。

A :ああ、こんなでかかったんや。

前はちらって見て終わったんでなんか割と退屈なイメージだったが、経緯を知ったこ

とであ、なるほどねでかいな。

B :しかもあの中にガーネットが。掘り進めば。

あそこの一枚岩にはロマンしか無い。でかくて、夢が詰まっててしかも金持ちになれ

る。ロマンしか詰まっていない。

C :なんか地学、地学ばっかりじゃなくってそういう伝説的な話もあるやんか、この

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辺のいわれじゃないけど、どうなってそうなったかみたいなそういう伝説的なって土

地柄わかるやん、土地柄っていうか神秘的な感じ。

T :一枚岩の裏の山らへんの地名は犬鳴と言います。守り犬伝説の関係で犬鳴と言う

地名。

A :なんか犬の影が見えるんですよね?一年に何回か。

T :そうそう、9月と4月に山の陰が夕方5分ほどだけ一枚岩に映って犬の形に見え

る。

C :めっちゃ、かっこいいやん。

T :帰って画像検索してみてください。

T :今、ひと通りの説明をしましたが、わかりにくいや、もっとここを詳しく説明し

てほしいとかはありますか?

B :僕らは大学生なのである程度は理解できますが小学校向けになると、難しいかも

しれないです。

T :一応今回は自分と同年代を対象にしたツアーをおこなうというテーマで行ってい

るので

B :じゃあ、十分理解できると思います。

T :やっぱり、一度説明を受けるとさっきも言っていましたが下とか山とか見ながら

歩いてしまいますか?

B :はい。まず石を見てしまいます。

T :BCD は来たことが無かったんですよね

BCD :はい、はじめてです。

T :最初着いた瞬間見ますよね?

B :はい、わードラゴンボールやってなりました。ここラオスかってなりました。

C :なんかでも想像と違うかった。

B :ですよね。もっとショッボいもんやと思ってました。

T :最初に見た印象と説明を受けて帰りしなに見る印象は変わりましたか?

あんまりかわりませんか?ついた瞬間ぱっと見てでかって思うじゃないですか、A は

前に来たときより大きく見えたといていましたが、最初についてぱっと見て、あ、で

かってなって、説明してからもう一度みるじゃないですか?説明を受けながらで印象

とかって変わりますか?岩の

B :そんなに。

T :印象は変わらないですか?

C :印象は変わらんけど、いっぱいいろいろ考えるよな。

B :そうです。そうです。いろいろこの岩には。さっきも言いましたが僕の妄想から、

ちゃんとした科学的な話になりました。

T :正直なところ伝説の話と岩の話と両方しましたがどっちの方が興味ありますか?

B :伝説です。

C :うん。

A :伝説。

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T :やっぱり。

T :地学的な説明は無いよりはある方がわかりやすいって程度ですか?逆に伝説だけ

の説明だとどうだったと思いますか?

A :僕は前は伝説だけでした。

B :でも、それじゃ岩が小さく見えた。

A :なんかあーねって感じでした。

T :退屈?A :はー。みたいな。結構すぐに飽きて道の駅に入りました。

T :見るのめんどくさくなってしまった感じですか?

A :はー、もう結構疲れちゃってたんでもういいかなって。なんかちょっと。

今日はでかかったですね。

B :それしか言ってないやん。

A :本当にでかかったんすもん。わぁでけーって。

T :D何かありませんか?

D:こんなでかいところがあるとはって感じです。また伝説自体が残っていると言う

のは面白い。影が数年前に偶然発見されたと言うのが印象に。

これは他の一枚岩と比べてどんなぐらいなんですか?

T :他の岩の成因は知りませんが、サイズ的にはここの岩が最大クラスです。

D:へー大きいんや。

T :大きいと言われる岩でも、あれの半分ぐらいです。

B :こんなのがあるのにどうしてジオパークじゃないんですか?

T :単純にそういった動きが無かったからではないでしょうか。この川は鮎釣り等も

有名でアクティビティも楽しめます。

T :まだここだけだとわからないと思うので、あと二カ所古座川弧状岩脈由来のジオ

サイトをまわるのですが、そのつながりなども見てもらえれば感想も変わるのかなと

思います。

虫 喰 岩T :さきほど一瞬牡丹岩に寄りましたが、牡丹岩は特別説明をせずにこちらへ来まし

た。似たようなジオサイトですが向こうは説明あり、こちらは説明なし、大きさ等は

違いますが単純にこの2 カ所で印象は変わりますか?あんまり?

C :うーん、いやでも印象って難しいけど…穴空いとるってのは変わらんけど。

B :まああれが前座ってことは意味が分かりました。

C :うん、わかる。

B :ここ来た瞬間にウワァーってなりましたね。

T :何か先ほどのように、感想等はありますか?

B :解説があったからこそ深みが増しますよね、昔この辺が温暖で海面が高かったこ

とで、潮風があそこにあたってこういうことになったと。

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T :ばっちりですね。A は以前も来ていますが、以前来たときは説明はどうだったん

ですか?

A :もう全くなしです。

T :全くなしですか。となると、わぁすごいって感じで終わりですか?

A :穴空いてるーみたいな。です。

T :今回何か変わりましたか?つたない説明ではありましたが。

A :いや、ほんまにだいぶ変わりました。なんかロマンがありましたね。

T :B は?

B :たしかにアニメチックな見た目かと思いきや、地質の話を聞き始めるとやっぱり

そっちの方にのめり込んで行く。

T :ちょっとずつ地質の楽しみ方かわかってきたと言っていましたが?

B :そうですね、はい。

T :なにかわかってきたんですか?

B :そうですねー。こう見れば見るほど、どうして穴が空いてそれが広がっていって、

そしてなぜ丸くなって四角にならないのかっていうのがねーお話を聞くとどんどん深

みが増していく、そのお話を聞く事によって。自然ってすげーなーって、最後に感想

に残るのはそれです。

T :いろいろ聞いた結果、最終的には自然すげーってなると言うことですね。

B :まあそれが僕らが地質学者にならない理由なんでしょうけど。

T :でも説明なしだったら、説明なしでも自然すげーで終わるのか?

B :うーん、説明なしだとたぶん僕の場合やとあーケンシロウがんばったなみたいな。

説明があることによってやっぱり、地質学の面白さ、なんで自然がすごいんかって言

う意味の理由の部分がわかってくるんで説明が無かったらたぶん自然がすごいなって

いうのには行き着きますけど、なんですごいかっていうところに行き着かないと思う。

T :C はなにか?

C :はーい。なんかー。そのうちら研修旅行とかで橋杭岩一回行ったけどあんときも

なんかただ単になんか自然すげーみたいなんしか印象に残らんくて、こういうの改め

て解説してくれる人と行くと、なんかなんていうんやろな、なんかそこにもケータイ

の解説みたいなんもあるけど、それ聞いただけじゃわからんやん。あーゆーのって万

人に向けてつくられてるし、各々疑問に思うことは別々なんやと思うけどそれになん

で?なんで?なんで?と思ってもあーゆー機械って答えてくれへんけど、地質の知識

持った人と行ったら、うちのなんでにも答えてくれるし、B のなんでにも答えてくれ

るし、まあA のなんでにも答えてくれるからすごくいいかなって思ったんと、あと

さっきの海の海面が高くてとか風化してとか言葉は理解できるけど、なんていうかイ

メージしにくい、ちょっと、うちは。風化とか浸食とか言葉はわかるし、意味も削ら

れて言ってるんやなってのもわかるけど、よくわからんから、そういうのはなんか今

で言うiPad的なんで映像的なものがあれば映像っていうか想像図みたいな、あーゆー

のがあればよりわかりやすくなる。

T :ビジュアルで見せてくれないと言葉だと理解しにくい、ってことですよね?

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C :そう、普通の説明書きもそうちゃう?図鑑とかに載ってんのもさ、浸食されてと

か風化してとか意味は理解できんねんけど、じゃあどうなったんとか、どうなってど

うなったんって言うのがよく分かれへんから、そこで理科が好きじゃない人は楽しく

ないんじゃない。

B :さっき旅人のおじさんがいましたけど、旅人のおじさんものの3 分で帰ってった

んですけど多分まあそういう説明が無かったら多分ここが見れる限界が3 分だったん

かなーって思いますね。

A :確かにすぐ、あーすげーと思って一瞬で感動してあもういいかなって。

C :写真一枚とってな。

B :そう、説明があるからこそなんで、なんでってどんどんどんどん掘り下げてみて

いこうとは思いますけど説明が無かったらたしかにあの3 分が正しい。時間配分やと

思います。スゴ気持ち悪いで終わり。

T :D もはじめてですよね、ここは。どうですか、はじめて見た感想は?

D:その、人がこの辺に住み始めてからこの岩とかをどうやって生活に利用してたん

かなっていう。

T :その資料はC が持ってます。

B :こういうのみるとアミューズメントに投入できないかなって思いますよね。

D:どっちの方がいいのかなっていうのは、思うねんけど。たとえば、これを舞台に

バックに何かステージをつくるとかっていうのは全然可能やけどそれをすることに

よって逆にこれを見せたい、本当にみてもらいたいところっていうのがショー自体で

はなく裏側になってしまう。それよりもここを通じて例えばこういうストーリー性、

ストーリーが実際にあったってことを考えたら、そっちの部分を知ってもらった方が

楽しいかなって。ものとして見せるっていうのならそれこそ照明とかつけたら、その

方がよっぽど立体感はでるかなと。

B :いろんな分野が携わってくると楽しいですよね。

D:例えばこういう結構もろいものだったら、あのトルコのカッパドキアとかやった

ら実際にキリスト教徒が住んでたけど、日本の場合やったら住んでいないし、日本は

そういうところは少ないんかなって。

B :規模が違いますしね。

D:あーそうそう、説明を聞くことによってここから先の、ここだけしか見えてない

氷山の一角しか見えてないけど、それの氷山の輪郭が何となくわかってくるというか。

C :また下見ちゃうやつやな。

D:一枚岩とか虫喰岩とか単体で見ていったら多分得れない情報だとかわかるんで。

どうせ一個ずつ見るんだったら、まとめて見た方がやっぱ面白いなと。

B :次は空から見てみましょう。

D:空からとか見てみたい。

T :A はすべて行ったことが、一枚岩、牡丹岩、虫喰岩に行ったことがありますが、

その3つが同じ火山の噴火でできて、同じ種類の岩っていうのは知らなかったです

か?

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A :ほんとになんも知らなくて、ただそのひとつひとつの観光地に行って、あーここ

はでかいなとか、ここはなんか面白い形だなっていうただそれだけの印象だったんで、

なんかもうそんな後に残るような思い出みたいなのはそんな無かったです。なんかこ

こまで、ちょっと知識入れただけでなんか印象っていうかなんかあーこれもうこの景

色はあんま忘れられない景色になるなってのはあります。一瞬の感動で終わってたん

ですけど、なんかちょっとしてもあーこれはこういうのだって説明があったから、な

んかこういう形になってるんやなとか、結構あとなっても覚えていられそうやなって

いう。その風景を。

D:あとあの牡丹岩あれはあいだに入った方がいいかな。

T :あー、先に見せてからっていう。

D:そうそう。一枚岩はもう完璧一枚の岩っていうイメージがあって、牡丹岩はその

中間っていうか左っかわが一枚岩で右っかわが虫喰岩みたいな感じでそっから今のこ

の虫喰岩って感じがこっからこういう風になったんやなっていうのが何となくイメー

ジできる。場所によってはこうなってるっていうのがすごい説得力があった。

T :じゃあそろそろ次へ。

N:ちょっといい、あのーいろいろこう僕とT でえっとーなんていうかな五月雨式に

解説をしてたけれども、例えばここでもいいし、まあ一枚岩のときでもいいんだけど、

そういうことはよゆーてやとか、解説の順番と言う意味で何か解説に対して注文とい

うか、あれ良かったとか、あれはよくなかったとかそういうの、ある。

B :いやまあでも僕ら正味ゆーたら知識ゼロの状況から始まってますから何言われて

もあーなるほどねーしかー、はじまりがないです。

C :でもものに例えてもらえるとわかりやすいです。さっきゆーてたコーラの泡とか

玉子の殻とかイメージがつけやすいからあーなるほどねってなるし。

N:なるほど、そうなのか。

A :さっきの時間の1万年前でしたっけ、がその地質的に見たらなんか一瞬だみたい

なのを聞いて、それだったら1400 万年前っていうのもなんかあー何となくわかるっ

ていうか、その基準がわかったら結構わかりやすいなって、僕的ににもう1万年前っ

て言ったら遥か昔なんで、基準を示してくれてわかりやすかったって感じですね。

N:なるほどな。いや勉強になります。

B :順序とかはそんなに気にはならない。解説の。見せていく順番も間違っていない

と思いますし、一枚岩から牡丹になって牡丹から虫喰になってっていうのは大変わか

りやすい。

T :その3つをまわるとしたら、どっちスタートにするにしてもあいだに牡丹岩をは

さむことによってよりわかりやすくなる?

C :なんかそういう、ジオパークをまわるときの解説する人とかのちょっと仕方がま

だよくわからないんですけど、どういう風にされるのかっていうのは。まずみんなを

一カ所に集めて地質がこうこうの特徴があってこうなっているんだよっていう説明を

して、さっきみたいに例えばうちがこれなんですかって聞いたらそっちに答えたりっ

てしてくれるんですかね?それとももうなんか話すのもバラバラなんですかね?説

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明っていうか。

T :今ある感じのところでやってるのは、多分10 人ないし前後の人をひとりが案内

して、前で話しながらと言う形になると思います。あまり多いと説明しきれない。

N:熊野古道の語り部さんと思ってもらえればいい。まあでもそのークオリティをど

うやって維持するかっていうのはどこも苦労してはる。

D:一枚岩のところに道の駅あったじゃないですか、あそこになんかそういうものが

あればもっとわかりやすいかなと、あっこの段階で頭でしっかり説明しておいてそっ

から。

B :一枚岩のところに火山の模型、一枚岩と牡丹岩と虫喰岩がすべてつながっていま

すよって模型があればすごいわかりやすいかもしれないです。すごくイメージしやす

くなる。そうすると取っ付きやすいと思います。じゃないと別々のものに見えちゃう

んで。

T :今はガイドがあったから、ひと続きのものとわかったがガイドなしで来ていたら

それがひとつのものっていうのは?

B :感じれないです。

A :そうですね、前に来たときそうでしたよ、ほんとにひとつひとつの観光地って感

じで。

橋 杭 岩T :橋杭岩は先ほどまでとは違う感じのジオサイトですが、どうでしたか?さっきま

でのと橋杭岩とどちらの方が興味がわきますか?

B :あー、どう、何なんていうんですかね自然科学のことを学んでからだと、どっち

も時間はつぶせる。

N:ん、ん?どっちも実感わかへん。

T :時間がつぶせるって

N:あ、あー時間がつぶせる。はーはーはー。

T :やっぱ先に二つ見てたら結構下を向いて歩いてしまいます?

B :そーですねー、やっぱこっちのほうが石いっぱいあるんで、そう考えるとこっち

の方が。しかもスケールも壮大ですし、いっこいっこ岩を見ていったら多分相当な時

間。

T :今は、あのー先に貫入の部分を見たあとに、上から全体を見渡しましたが、順番

としてはどちらが先がいいと思いますか?全景を見てワーって言ってから、実はこれ

はと言うのがいいのか?

B :そっちの方が逆に。

T :全景見てからの方がよかったかも。

C :先にこっちかな。

T :先に。

C :先にこの地層とかを見てから、最後にあれを見る。

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T :の方がいいですか?

C :うん。

T :へー。そーですか。

C :だったここで見てるときって岩あんなにいっぱいあるって思ってなかったもん。

T :あーね。

B :あそこから見た感じだと、橋杭に見えると思いました。

A :それは思いました。

B :あー橋やって、確かにそこに橋がありました。

T :弘法大師と天の邪鬼の伝説がありますが、伝説と地学的解説、先ほども聞きまし

たがどちらがおもしろかったですか?

B :両方ですね。いやでもなんかどんどんどんどん自然には興味わいてきますよね。

T :まわってるうちに?

B :はい。最初は犬鳴きの方が面白かったかなとか思ってましたけど、やっぱり自然

の話聞いてくると、あっここもそういう仕掛けなんかとかどんどん発見があるんで、

そういった意味じゃどっちもいる。

N:だんだん慣れてきたって感じ?

B :はい。最初の説明を聞いたからこそあーここの岩もこういう仕組みなんかなって

想像ができますから。

C :ここがでも一番目に見えてわかりやすかった。イメージしやすかった。

T :ここなんかは全員来たことがありますが、前に来たときはもちろんこんな話はな

しで、今回こんな話を聞くと印象って変わりますか?

C :変わる。

B :変わります。

T :どんな風に?

B :いやまず、地層なんて見ようと思わないです。あー、なんかここ橋っぽいな、だ

から橋杭岩なんかな、で終わりです。

A :全体を見て終わるだけです。

B :写真とって橋のまねして、それで終わりなところが、今回地層まで見てどうして

こういうようなこうなっているのかっていうところまで探っていくんで、そういった

意味じゃ全然見方が変わってくるんで楽しみ方が全然変わってきます。

T :やっぱり、これを見て津波すごいなとかって思いますか?

B :思います。

C :うーん。

A :思いますね。知らなかったです、ただもともとそこに成り行きで岩があったのか

なって

T :崩れた岩がそこに転がっただけだと思っていたと。

B :上から見て思いましたがいっこいっこが車ぐらいありましたもんね。それだけで

かい岩が動く津波って、それがこっちに来たらどうなんねんっておもいますよね。

A :説明が無きゃ絶対わからん発想ですよね。

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B :そうそう。ただ上から落ちてきたんやろーなーっていう。そうじゃなくて、つな

みがここまでもってきたんやっていう、やっぱ自然すげーですよね。

C :ね。

T :さっきまでのジオサイトは想像しにくいので模型が欲しい等ありましたがここは

どうですか?

B :ここは。

C :イメージしやすかった。

B :はい。

C :けどあればあるだけいいとは思う。

D:言い方悪いけど津波はリアルに映像で見てるから、あーゆー感じがここにも来て

あれだけの力でこういう風に岩が動いたんやっていうのはすごいイメージしやすい。

T :あー、たまたま最近津波の映像を見ていたから。

D:あとー、一枚岩と虫喰岩とかとここの違いっていうのが、はじめに見た二つはひ

とつのストーリー、ここは多分いくつかのストーリーが混ざっているのでそれがたま

にごっちゃになってしまったりするかなと思います。噴火によってできたもの、もと

もとある層っていうのが

B :たしかにここを最後に持ってきたのは正解ですね。

A :ここ最初に持ってきたらこんがらがります。

C :ここはさー、ジオツーリズムで来るとしたらさ、地層のことしか説明しないんで

すか?なんか潮の満ち引きとか。

T :あー潮の満ち引きの話を入れたりしたらいいってこと?

C :うんなんか。

B :たしかに、岩だけ、このジオの話全部岩だけメイン地層メインですから。

T :それに潮の満ち引きなんかの話を入れると面白いんじゃないか。

C :うんなんか、もっと広がるかなって。せっかく海辺まで来てるのになっていう。

D:こんかいあまり言ってなかったんですが動物って、動物とかってどうかって考え

たときに、はじめの一枚岩って川なんです、んで虫喰岩のまわりはたんぼがあるんで

す。昆虫とかそんなん。で最終海なんで動物って考えても結構いろいろ話せるのか

なって思いましたね。植物もね。

C :なんかリアルでそういうのを目の前にして、自然を目の前にしてやってるから、

岩だけの説明やったら博物館とかでもいいかなっていう、最悪ネットの資料見てもい

いかなって感じ。やっぱりさわったり感じたりして。

T :やっぱり割ったりして楽しいって感じですか?

C :楽しい楽しい。

B :そうですねー、割って発見みたいな。

D:海に来ると貝殻とかたくさんあっていいんですけど。

B :生き物見ちゃいけない雰囲気ちょっとありましたもん。岩だけ見てよ感がありま

したもん。フナムシ見ちゃダメだよみたいな空気感はすごいありました。

N:あーそうか、そうだったか。

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D:そう考えるとジオ=地質って考えるんじゃ無くてジオ=地球とか自然とかって考

えた方がすんなり来るなかなっておもいますね。

C :地質って何が地質か正直わかってない。地層ぐらいしかわかってないから。

T :興味の導入にはなりましたか。

BC :はーい。

T :最初と最後で見る目は変わりましたか?

C :うん。うん。

D:なんか、さっきも話してたけど、そのー楽しみ方が増えた、自分の興味のあるこ

とだけしか見てなかった部分が新しい地質でもあーこういうことがあるんやとか身近

に化石ってなかなか見れない、まあ見ようともしないんで。

B :ヤドカリでしか遊ばんかったものが石でも遊べるようになった。

A :最初の説明って大事ですね、惹きつけるっていうか。それで惹きつけることがで

きたら、そのあともずっと興味持ってくれるだろうし。

T :てなると、最初はインパクトのあるものがいいんですかね?

A :そうですね。

B :ドカーンちゅちゅんちゅんちゅんドカーン。

全 体 を 通 し てN:まずさじゃあ、さっき今回串本行くでってだけ聞いてきた。で、えーっとこうい

う石巡りするでってゆー話やったら乗らへんかったとゆー話もあったけど、今はどう。

B :今。

N:今の気分、事前はそうだったかもしれないけど、今はどう?

B :はい。

T :もし、今回みたいなやつで他の場所に行くってなったときに。

B :あー行ってみたいですね。

C :うーん、行く人によるかも。

B :あーメンバーには、確かにメンバーには。

C :今回このメンバーで来るって言ってたし、まあいいかな、面白そうかなっていう

のはあったけど、なんかの旅行でジオだけ目的ではこーへん。オプショナルツアーで

例えばそっちの方行っとってたまたまオプショナルツアーで行けるっていうのがあっ

たりしたら行くかもしれんけど、それだけでお金払って交通費かけてていうのはなか

なかここまでは来ないかな。

B :那智の滝見てのジオオプションならわかりますけど。

N: じゃあ他に何があったら来る?

B :そうですね、やっぱり串本の方来るんでしたら、さっきみたいな那智の滝とか

そっちの方まわったり、ごはんのおいしいところつれてってもらってオプショナルツ

アーで1 時間半ほど、ついてくるみたいなのならありです。全然ありの満足感コース

やと思います。

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N:あと何があったらいいかな。やっぱり普通、今まで通りの?

T :温泉と、食べ物?

B :はい、温泉と食いもんですね。

C :でもカヌーとかするんやったらいいかも。

B :あ、それはあります。

C :なんか前に一回北山村行ったときはラフティング目的やったし。

T :だから、カヌーとかで通るところにジオのガイドを入れると面白い。

B :面白いと思います。カヌーも時間長々やらされちゃうと飽きちゃうんでそこに

ちょいちょいそういう説明があるとかなり面白い。確かに見るだけになると。

T :オプショナルツアーだったらありですか。

B :1500 円プラス。

A :観光学部の研修旅行で、ジオサイト行ってたじゃないですか橋杭岩とかそのとき

にガイドがあればいいのにと思います。せっかくジオのとこに行くならジオの説明も

あった方が。

T :あー、そういった説明ができる場所であれば、普通の伝説とかに加えてジオの説

明もしてほしい。

B :ジオをメインにするのは難しいと思います。ガイドによりけりやと思いますね。

今回はわかりやすかったので楽しめたけど。

T :三段壁とか千畳敷にフツーのツアーで行ったときに、ジオガイドがあったら楽し

いと思いますか?

B :楽しいと思います。

N:三段壁だとだいたい熊野水軍の話で終わりやもんな。

T :そういうのにプラスしていっても面白い。そういう話してくれたら聞きますか?

B :ガイドによりけりやと思います。

B :外人向けのトレッキングツアーなんかやったらいいんちゃいますかね?

T :やっぱりアクティビティとかと組み合わせるのがいいんですかね?

D:はじめ一枚岩を見に行ったときも、そんなに大きくないやろうと思ってたんです

けど、それが予想以上に大きくて、よく観光地とかで結構あるでしょあー、こんなも

んかってある中で今回はでっかった。

B :最大級。

D:個人的にはライトアップとか一枚岩に映像映したりしてみたい。

T :あー、マッピング。

B :あー。楽しそう。

N:あー、なるほど。あれをスクリーンに使って。

C :面白そう。

B :夜とか盛り上がりそうですね。

T :あー、ジオをジオとしてではなく、違った使い方をする。

B :ジオにこだわっちゃうと多分、ジオ好きじゃない人は興味ないんで僕らみたいな。

D:あっこのどったらどうなんかな。

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N:一枚岩に。

D:はい、登るか、降りるか。こないだロケみつで一枚岩アトラクションっていうア

トラクションがあって、高いところから降りたりとかすごい細いところ歩いたりとか

してたんですよ。登って上から見下ろすとかそういうアトラクションも。ウィンチで

あげてもらってもいいし

B :ジオパークっていうかパークですね。

D:今の状態を利用してできないか?

B :商業的にはそっちがプラスですよね。

T :アスレチックにしちゃう。

B :さっきのライトアップも映像流すのもそうですけど商業的にはいいんですけどね。

ジオの目指す方向性ですよね。

T :ひとを呼びたいだけならやり方はいくらでもあるけど、ジオツーリズムとしては

そういう呼び方じゃない呼び方をしないといけない。

D:動物園もそうやけど、どこまでするかが難しい。動物園は動物の生態を伝えたい

けど、それだけでは人が来ないから。ゆーても人に見てもらわなくてはその部分は伝

わらないし、その辺りのバランスっていうのが難しい。

C :ジオを娯楽目的で行くっていうのはないかな。

B :あー確かに。

C :ちょっと自分の中では結びつかんくて。普段うちらが旅行って考えて想像する旅

行は癒しと遊びとか娯楽って、温泉とかなんかそういうののイメージあるけどジオは

なんかスタディー旅行ていうか勉強旅行的なイメージに。

B :科学博物館行ってきますみたいな。

C :そーそーいうのをなかなか自分らで行くのはすごい難しい。だから、校外学習と

かで行かされる感じで、そっから人を呼び込むってなったら。

N:今日いろいろ巡ったけど、勉強したような感じはした?

C :うん、した。

B :石を割りたくなりました。

C :なんかやっぱり、話聞いてたら知識として頭に残るしそれがこれからも生かされ

ていくかなってなったら、ちょっとうち的には楽しく勉強って方ですけど、ノート

とった訳でもないし、記憶に残る部分しか残らんけどいろんなものの見方とかを勉強

できたかなっていう感じの要素の方がうちは近いかな。学ぶって感じ。普通の観光地

に行っても学ぶって要素はあんまないかなって感じですけど、そういったいみでは

やっぱり研修旅行って感じでした。

T :どこの観光地にもいわれなどを書いた看板はあるがそれを読んでも勉強だと思わ

ないが、話を聞くと勉強になるってことですか?

C :そう。言われて見てたら勉強してるイメージ。普通の観光は写真を撮ろうが、絵

を描こうが自由やけど、みんなで集まって話を聞くのは、新しい知識を入れるってこ

とやし、勉強。興味がない人はオプショナルでもつけない。

N:今回はガイドと一緒に行ったから自由度は少なくてお話を聞くと言うことになっ

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たからちょっと勉強っぽい感じがしたと、では語り部さんと熊野古道を歩いたら多分

同じことになるがそれは勉強と思うのかな?

B :思わないっすね。

C :うーーーーーん。うちは勉強。

N:悪い意味での勉強ではない?

B :そーです。

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以下には事後レポートを転載する。

事 後 レ ポ ー トA

● ジオの説明・ガイドを聞いて印象が変わったか? YES

ただし私の場合「印象」というよりは、「その観光地の見方が変わり、そして楽し

み方が増えた」といった方が正しいかと思います。地質学者は「その観光地が動いて

見える」と言うと聞きましたが、私は知識のない観光客がジオのガイドを聞いたとこ

ろで、そのレヘルの感動まで生まれるとは思いません。でもガイドがあることで、

様々なジオ観光地の見方が生まれました。見方が変わり、楽しみ方の幅が広がったの

だと思います。

● ジオツアーを行うとしてどういったものが必要だと思うか?

 スマフォのアプリなんかがあれば面白いと思います。そのアプリでジオスポットの

断面図や模型、成り立ちが360度で観察できたり、石の写真を撮ったらその石の種

類や年代が確認できたり、ジオ的な年表( 1万年単位?) が見れたりすると、さらに

観光客の楽しみの幅を広げられると思います。

● 一番記憶に残っているもの

 「一枚岩のあたりで、石を割ったら断面の色が緑っぽくなっていた」

 実際のところ、一番記憶に残っているのはこの場面です。やはり「体験」というの

は直接記憶に結びつきやすいのかもしれません。そしてジオを理解するには「体験」

が一番手っ取り早いのかなとも思いました。

●全体を通しての感想

 ジオは知ってみれば興味深く、面白いのですが、その段階に顧客を持っていくまで

が難しいと思いました。正直言って「ジオ」「ジオパーク」で観光地を売ってもあま

り成果は出ないと思います。顧客の興味をそれではそそらないからです。

 「ジオ観光地だから・・・。」という理由で来てくれる客はほとんどいないのが現

状だと思うので、何も知らない観光客をいつのまにかジオの世界に引き込めるような

ガイドでなければならないですね。でもこれって本当に難しいですよね。オプション

にジオを入れるのもいい案だと思いますが、ジオは一連のツアーで体験してこそ深く、

面白いものになるのかもなと今回のモニターで感じました。

B

楽しい旅を企画していただき誠にありがとうございました。今回の旅のテーマがジオ

と定まっていましたが、僕は関心は中ぐらいだったと思います。ジオだけに高い金を

払い、一人で参加できるほどの興味は持ち合わせていないが、今回のようにただで参

加させていただき、知り合いもいるという状況下なら楽しめるといった立場です。

 やはりジオというのは、ほとんどの方が名前の意味も知らないというのが実情であ

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ることには間違いありません。正直、論文のテーマのコアな部分、ジオをツアーを通

してどうしていくのか、参加させることが目的なのか、ジオに興味を持ってもらうこ

とが目的なのかがよくわからなかったです。興味の分野は、みんなアンテナを張って

いますので多くの情報が入ってきやすく、自分自身で深めて好きなことに挑戦してい

くとは思います。そのために金を払うこともいとわない。けれども、一番難しいのは

ゼロの状況から始まることです。ゼロはアンテナすら張っていない状況下であるので、

アンテナを動かすのではなく、ジオとはどういうものなのかアンテナを作る作業から

始まらなくてはならないと思います。作る際に、今回のように知り合いから気軽に多

くの情報を獲れる状況であるならば、まったく興味のない分野でも、アンテナを構築

してあげることが容易に感じますが、いざ、ツアーになり誰も知らない周りと、ガイ

ドがやってきたところでジオ自体に興味を持ってくれるか、ジオを理解してくれるか

は、かなりの手間暇とガイドの力量がかかってくるように思います。

 たとえ話ですが、好きな人ができればその人のことを知りたくて、その人の趣味を

学んだり、もしかしたら勝手に好きな人の趣味自体を勝手に好きになっていくかもし

れません。けれども、興味のない話で、面白くもなく見た目もよくない人に、しつこ

く押し付けされると、その分野に一線の壁を作るのが人間の価値観です。特にコアな

趣味を持っている方は、どうしてその趣味を理解してくれないかと、躍起になって趣

味の押し付けをしてきますが、その場合、その人自身とコアな趣味を押し付けられた

人は封印してしまうでしょう。

もしかしたら、フィクションの世界に位置づけするかもしれません。

 ジオの世界観に興味を、リピーターをつけるためにはそれとなくジオを伝える工夫

が要ります。さわりだけの方が、アンテナを作り上げることが可能になると思われ、

アンテナを動かすのは個々に任せてあげる方が、新しい世界だからこそ創造の楽しみ

が生まれるように思います。

 最後にリピーターやジオの世界を商品化し、興味を作っていこうというなら、僕な

ら、できるだけ見た目重視で、美女とイケメンのガイドを雇い、知識を後から賦与し

てツアーを作ります。

C

1.今回のツアーの感想

今回のツアーは「勉強になった!」の一言につきます。「ジオ」という言葉自体、

初めて聞いたし、地学の知識など皆無だったので最初に行き先を聞いたときは岩ばか

り見て何になるのかと考えていました。しかし、実際には“ 教科書等で学ぶ” のと

“ 自分の五感を使 って学ぶ” という2 つの圧倒的な違いを感じました。教科書では

トピック毎に勉強していくので学んだ知識の関連性はあまり感じられませんが、実際

に自然の中で学ぶと地層と同じ素材でできた石やそれが川の流れによって運ばれてき

たことなど、色々なことに興味が生まれました。また、ジオガイドがあることによっ

て自然に関する知識が少しでも増えると今までと違った視点から自然を考えられるよ

うになり、一度行ったことのある橋杭岩も今回は違った印象を受けました。ジオツ

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アー自体を旅行の目的にするのは少し難しいかもしれませんが、またこのような機会

があればぜひ参加してみたいと思います。 2.ジオガイドの有無

 大抵の観光地には立て看板があって、説明文は書かれているが文字だけでは分かり

にくいしそこで何か疑問に思っても質問できずに終わってしまいます。それに比べて

ガイドの人が同行してくれていれば疑問点はすぐに解消できるので、次々興味が出て

きます。自然観光地での楽しみ方が写真撮影以外にも広がると思います。 3.ジオツアーに必要なもの

 ガイドがあると良いと上記したが、口頭の説明だけでは聞き手が理解できる限界が

あると思います。実際に今回のツアーでは目の前には岩しかないのにマグマの活動で

それができたというのは少し想像できませんでした。でも、参考資料の図とか何か他

のものに例えてもらうだけで想像できる範囲が広がったように感じました。

 また、iPad などのツールを使うのもとても有効的と考えます。理由は、現在地で

はないところの情報も手に入れることができることと、図や配布資料をPDFであらか

じめ作っておけることの2 点です。情報に関して言えば、一度のツアーで見て回れる

スポットには限りがあり、人数や交通手段が整っていなければ難しい面もあると思い

ます。そのような時にインターネットに接続して似たような地層や事例のある情報を

共有できると考えます。

 

4.一番記憶に残っているもの

 今回は一枚岩→虫食い岩→橋杭岩という順番で回ったので、最後の橋杭岩では落ち

てる石を見たり、地層を見て何万年前のものか考えたりと知らない間に今までとこん

なに違う視点で自然と向き合えているなぁと実感したこと(*^^*)

D他のツアー参加者と同等にジオパークに対する予備知識をほぼ持たない状態で今回

ツアーに参加したが、一枚岩や虫喰い岩はツアーに参加する以前の想像よりも大き

く感じたことが印象に残っている。ただ、同じ和歌山県内の他の地質系遺産と比較

すると個人的にインパクトに欠けた。

〈一枚岩〉

川とのバランスが風景として良かった。また、晴天と雨天で見ることができる岩の

表情に違いがあり、またその岩に込められた物語も子供たちの興味をひく点になる

と考えられる。 一枚岩の貴重さはその大きさにあると思う。その岩の大きさを説明

し、かつその風 景を観光客の誘客に利用できる取り組みがツアーとして重要な要素

の1 つになると 思う。

〈虫食い岩〉

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想像以上に奇抜な形が印象に残った。また一枚岩と同じ岩が自然の影響を受けたこ

とにより現在の形になったという点は非常に興味深く、その変化の流れがビジュア

ルで確認できればよりイメージが湧きやすく、より地質に対して興味を持つきっか

けにつながると思う。

〈橋杭岩〉

十数回訪れたことのある橋杭岩であるが、地質学の視点からの話を聞き従来とは

違った視点で観察することができた。

〈その他〉

今回モデルツアーに参加して改めて、地球を観察することの楽しさを実感した。そ

して、その「楽しい感覚」を増幅させるための要素として、見せ方が重要であると

感じた。一方的に地質に対する価値観や情報を押し付けるのではなく、如何にツアー

参加者へスムーズに知識を浸透させ、対照に対して興味を見出せる環境を提供 でき

るかが教育的要素の強いツアーにおいてポイントになると思う。

ここからはモデルツアーに使った資料を添付する。

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