lesson 1lesson 1 目的 3 水質汚濁防止法は,昭和23...
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第 1 章 ■ 水質汚濁防止法 2
法律の目的法律の目的は,下記の 4点に集約されます。
① 公共用水域に排出される水の排出の規制
② 特定地下浸透水の浸透の規制
③ 生活排水対策の実施の推進
④ 損害賠償についての責任を定める
公共用水域への排出水と,特定地下浸透水は規制的手段によって抑制
します。一方,生活排水は対策の推進となっています。これらの推進によ
って,国民の健康保護と生活環境保全を実現することが目的となります。
(目的)第 1条 この法律は,工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制するとともに,生活排水対策の実施を推進すること等によって,公共用水域及び地下水の水質の汚濁(水質以外の水の状態が悪化することを含む。以下同じ。)の防止を図り,もって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し,並びに工場及び事業場から排出される汚水及び廃液に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより,被害者の保護を図ることを目的とする。
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水質概論 資料編『水質関係法令』には水質汚濁防止法をはじめとする法令が掲載されています。本テキストで解説している条文には目を通しておきましょう。
補 足Supplemental
出題傾向
Lesson 1
出 題 頻 度
高中低
水質汚濁防止法 第1章Lesson 1
目的
低
水質概論において,水質汚濁防止法の目的がそのまま出題された例は少ない。しか
し,法律の目的は,用語の定義と合わせて,基本的な事項を整理する上で重要な項目
である。出題傾向にかかわらず理解しておかなければならない。
Check*法律の目的が示されている第 1条には規制の対象が明記されている。
*それは,「公共用水域への排出水」「特定地下浸透水」「生活排水」の 3項目である。
*それぞれ用語の定義も踏まえて理解することが重要である。
記憶のポイント
#水質02_水質概論.indb 2 2018/12/28 13:40
Lesson 1 ■ 目的 3
水質汚濁防止法は,昭和 23年の「水質保全法」「工場排水規制法」
のいわゆる水質二法を起源にもつ公害関連法である(昭和 45年に
成立)。
本法の基本的枠組は,第一に事前届出制度による施設稼働前の
審査・指導,第二に日常的な測定による排出の監視である。ここ
では基準値を超えた場合の直罰が汚染防止を担保している。これ
らに加えて,立入検査によって汚染の可能性が疑われる場合の改
善命令なども重要である。
主な改正の経過をたどると,昭和 53年に有機物の総量規制導入,
昭和 60年に窒素・りんの規制導入,平成元年に地下水対策導入,
平成 2年に生活排水対策導入,という流れがみえてくる。特に近
年は有害物質による汚染よりも富栄養化の方が深刻化しており,
今後の水質対策もこれが重要な課題になってくると考えられる。
かつて水域の富栄養化対策は,流入する有機物が対象であった。
しかし,窒素・りんが規制の対象に加わったことからも分かるよ
うに,水域での内部生産(水域内部で有機物が生産されること)
にも注目が集まっている。つまり,環境汚染は排水対策だけの問
題ではなく,水域の生態系全体に関わる問題であるとの認識が広
がっている。これは,平成 15年に始まった亜鉛の環境基準値(水
生生物保全)の設定にもつながっている。
コラム
水質汚濁防止法
#水質02_水質概論.indb 3 2018/12/28 13:40
第 1 章 ■ 水質汚濁防止法 4
特定施設/特定事業場① 特定施設:汚水や廃水を排出する施設で政令で定めるもの
② 特定事業場:特定施設が設置されている事業場
規制の対象となる水① 排出水:特定事業場から公共用水域に排出される水。
② 特定地下浸透水:有害物質使用特定事業場から地下に浸透する汚
水等を含む水。特定事業場のうち,有害物質を使用するものだけが
対象となります。
③ 生活排水:人の生活に伴い公共用水域に排出される水(①を除
く)。
排出水と汚水① 汚水等:特定施設(届出義務あり)から排出される汚水又は廃
液。汚水には直接規制はかかりません。公共用水域に排出された場
合には「排出水」となり規制がかかります。
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3
特定施設についてはLesson 3で解説。
参 照Reference
定義は第 2条に定められています。
参 照Reference
指定施設:有害物質を貯蔵・使用,指定物質を製造・貯蔵・使用・処理する施設で排水規制の対象とはなりませんが,事故時の措置や構造基準の対象となります。特定施設との違いなどを理解しておきましょう(詳しくは,Lesson 7地下浸透水 /構造基準,Lesson 8事故時の措置 /緊急時の措置を参照)。
補 足Supplemental
出題傾向
Lesson 1
出 題 頻 度
高中低
水質汚濁防止法 第1章Lesson 2
定義
中法律の目的と同様に,使用されている用語の定義は,他の多くの問題を解く上で基
本となる事項である。ここをおろそかにすると理解できない問題が出てくるため,ま
ずはしっかりと理解する必要がある。
Check*排出水,特定地下浸透水,生活排水の定義をしっかりと理解する。*特定施設,特定事業場の定義も把握。*公共用水域の範囲を覚える。
記憶のポイント
#水質02_水質概論.indb 4 2018/12/28 13:40
Lesson 2 ■ 定義 5
公共用水域① 河川・湖沼・港湾・沿岸海域・公共溝渠(排水路)・かんがい用
水路等
② 下水処理場(終末処理場)に接続する下水路(公共下水道・流域
下水道)は除きます。
図2−1 定義のまとめ
特定事業場
特定地下浸透水
公共用水域(河川など)
特定施設汚水等
特定事業場
特定施設汚水等有害物質を含む
規制
規制
排出水
地下
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水質汚濁防止法に関する記述として,誤っているものはどれか。⑴ 汚水等とは,特定施設から排出される汚水又は廃液をいう。⑵ 有害物質使用特定事業場から水を排出する者(特定地下浸透水を浸透させる者を
含む。)は,有害物質を含むものとして環境省令で定める要件に該当する特定地下浸透水を浸透させないよう努めなければならない。
⑶ 排出水を排出する者は,その汚染状態が当該特定事業場の排水口において排水基準に適合しない排出水を排出してはならない。
⑷ 排出水とは,特定施設(指定地域特定施設を含む。)を設置する工場又は事業場から公共用水域に排出される水をいう。
⑸ 生活排水対策推進市町村は,生活排水対策重点地域における生活排水対策の実施を推進するための計画を定めなければならない。
排出水等の規制に関する問題です。第 2条の定義をしっかりと理解することが重要です。定義以外の記述も含まれていますが,このように試験問題は広い範囲から出題されますので,必
過去問題にチャレンジ 難 易 度【平成20年・問3】 初級
S T E P 1
貯油施設等:重油などの油を貯蔵又は油を含む水を処理する施設。事故時の措置の対象となります
(詳しくは,Lesson 8事故時の措置 /緊急時の措置を参照)。
補 足Supplemental
指定地域特定施設:指定地域(総量規制のかかる地域)内に設置されている施設で,現在政令で「処理対象人員が 201~500人のし尿浄化槽」が指定されています。総量規制の対象となります(詳しくは,Lesson 5総量規制を参照)。
補 足Supplemental
#水質02_水質概論.indb 5 2018/12/28 13:40
第 1 章 ■ 水質汚濁防止法 6
ず 1回は法律そのものに目を通しておくことが重要です(資料編『水質関係法令』参照)。
有害物質を含む特定地下浸透水の規制は,「浸透させないよう努めなければならない」ではなく,「浸透させてはならない」と定められています(第 12条の 3)。つまり,禁止事項となっているため,⑵の「努めなければならない」という努力義務のような表現は誤りとなります。地下浸透水については Lesson 7を参照してください。
⑴は第 2条第 7項,⑶は第 12条,⑷は第 2条第 6項,⑸は第 14条の 9で規定されています。これらの選択肢に誤りはないことから,正解は⑵になります。⑸の生活排水対策については,Lesson 9を参照してください。
─────────────────────────────────── ●正解 ⑵
S T E P 2
S T E P 3
ステップアップ演習
公共用水域には,沿岸海域が含まれるか。
含まれる。
公共用水域には,流域下水道が含まれるか。
含まれない。
補 足 と 説 明
法律の問題においては,この問題のように規制の強さや罰則について,法律の言い回しに十分な注意を払わないと見過ごしてしまう場合があります。一語一語注意しながら条文を読み込むことが必要です。なお,法律では一般的に,「努めなければならない」という用語を用いた規定は,訓示規定といって規定に違反しても効力に影響がないものであり,「しなければならない」という用語を用いた規定は,義務規定といって違反すると罰則が科せられます。
#水質02_水質概論.indb 6 2018/12/28 13:40
Lesson 3 ■ 特定施設 7
特定施設の定義特定施設とは,水質汚濁法止法の規制対象となる施設です。下記の①
又は②の要件を備える水を排出する施設が該当します。
① 人の健康被害を生ずるおそれのある物質(政令指定 28項目=健
康項目と呼ぶ)を含むこと。
② 生活環境に被害を生ずる状態(熱によるもの(温排水)を含む)
(政令指定 12項目=生活環境項目と呼ぶ)。特定地下浸透水の対象
にはなりません。また,排出水量 50 m3 /日未満の事業場は対象に
なりません。
特定施設の種類特定施設は施行令別表第一により施設が指定されています。
施設の種類は「知識強化のための補足」に掲載しました。
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排出水量の把握は,実測又は水道水の使用量から算出します。
要件を備えていれば公共用水域に排出していなくても特定施設に該当します。
健康項目と生活環境項目については,Lesson 4の「知識強化のための補足」を参照。
補 足Supplemental
補 足Supplemental
特定施設と公害防止管理者や特定工場の関係については,「知識強化のための補足」参照。
ココが重要Important
参 照Reference
出 題 頻 度
高中低
出題傾向
Lesson 1 水質汚濁防止法第1章Lesson 3
特定施設
特定施設の対象施設に関する問題は,他の問題との関連性も強いため,定義からしっ
かりと理解することが重要である。対象となる施設の種類を直接問う問題は少ないが,
代表的な施設名を押さえておくことは重要である。
Check*特定施設及び特定事業場の定義を理解する。*特定施設のリストを参考に,どのような種類の施設が規制対象に該当するかを確認する。
記憶のポイント
低
#水質02_水質概論.indb 7 2018/12/28 13:40
第 1 章 ■ 水質汚濁防止法 8
水質汚濁防止法に規定する特定施設に該当しないものはどれか。⑴ 飲料製造業の用に供する原料処理施設⑵ 冷凍調理食品製造業の用に供する湯煮施設⑶ 合成樹脂製造業の用に供する遠心分離機⑷ 金属製品製造業又は機械器具製造業(武器製造業を含む。)の用に供する成型機⑸ 下水道終末処理施設
特定施設は施行令の別表で詳細に定められています。該当する施設の種類については,おおまかであれ把握しておくことが必要です。
水質汚濁防止法の特定施設は,製造工程において水を使用し,その結果,人の健康に影響のある有害物質や生活環境に影響のある有機物などを排水中に排出する施設が該当します。したがって,水を使用しない施設を探すのが正解への近道になります。ここでは,⑷が該当するので正解となります。
施行令別表第 1の 63において,金属製品製造業又は機械器具製造業(武器製造業を含む。)の用に供する施設については,焼入れ施設,電解式洗浄施設等が定められていますが,成型機は含まれません。
─────────────────────────────────── ●正解 ⑷
過去問題にチャレンジ 難 易 度【平成23年・問3】 中級
S T E P 1
S T E P 2
S T E P 3
#水質02_水質概論.indb 8 2018/12/28 13:40
Lesson 3 ■ 特定施設 9
ステップアップ演習
水質汚濁防止法に規定する特定施設に該当する施設は次のうちどれか。
⑴ ボイラー ⑵ 旅館業の入浴施設 ⑶ ガスタービン ⑷ 活性炭製造の反応炉
⑵ 旅館業の入浴施設* 本法では,工場及び事業場を対象としており,旅館やレストランなどの関連施設も対象となっています。
水質汚濁防止法に規定する特定施設に該当しない施設は次のうちどれか。
⑴ 一般廃棄物処理施設の焼却施設 ⑵ グラビア印刷の乾燥施設 ⑶ 木材チップ製造業用湿式バーカー ⑷ セメント製品製造業用の成型機
⑵ グラビア印刷の乾燥施設
#水質02_水質概論.indb 9 2018/12/28 13:40