mizuho china monthly · 1.2016年の中国経済は緩やかな減速にとどまる...

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MIZUHO CHINA MONTHLY みずほ チャイナ マンスリー 2017 2 月号 中国経済 1 2016 年の中国経済の評価と 2017 年の見通し ~緩やかな減速にとどまるも、金融リスク防止の必要性は高まる~ 産業・地域政策 5 省エネ・排出削減 5 カ年計画の策定動向と将来展望 ―環境政策統合の推進と環境産業発展促進への展望― 中国戦略 10 2016 年度「中国のつながる消費者」調査 ―進化するモバイル―(2) 法務 17 2016 年の重要立法を振り返る(下) 税務会計 27 増値税の会計処理(その 2) 税務会計 33 アジアにおける税制 チャイナ・プラス・ワン 香港 -その日本及び中国本土との比較– みずほ銀行 中国営業推進部 みずほ銀行(中国)有限公司 中国アドバイザリー部 みずほ銀行の中国情報ホームページ ~中国の経済、市場動向、規制と人民元取引に関する最新情報~ http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/world/info/cndb/index.html

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MIZUHO CHINA MONTHLY

みずほ チャイナ マンスリー

2017 年 2 月号

中国経済 1

2016 年の中国経済の評価と 2017 年の見通し

~緩やかな減速にとどまるも、金融リスク防止の必要性は高まる~

産業・地域政策 5

省エネ・排出削減 5カ年計画の策定動向と将来展望

―環境政策統合の推進と環境産業発展促進への展望―

発展促進への展望―

中国戦略 10

2016 年度「中国のつながる消費者」調査 ―進化するモバイル―(2)

法務 17

2016年の重要立法を振り返る(下)

税務会計 27

増値税の会計処理(その 2)

税務会計 33

アジアにおける税制 チャイナ・プラス・ワン 香港

-その日本及び中国本土との比較–

みずほ銀 行 中国営業推進部

みずほ銀行(中国)有限公司 中国アドバイザリー部

みずほ銀行の中国情報ホームページ

~中国の経済、市場動向、規制と人民元取引に関する最新情報~

http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/world/info/cndb/index.html

- Executive Summary -

中国経済 2016年の中国経済の評価と 2017年の見通し

2016 年の中国経済は緩やかな減速にとどまり、成長率目標を達成。ただし、政策の下支えによるところが大きく、

自律的な回復力は依然として弱い。2017 年も過剰生産能力業種における資本ストック調整や住宅市場の調整を

背景に緩やかな減速が続く見通し。金融リスクの防止が経済運営の鍵に。

産業・地域政策 省エネ・排出削減 5 カ年計画の策定動向と将来展望

発展促進への展望― 新 5 ヵ年計画期における中国の省エネ・排出削減計画の策定動向と主旨内容を紹介し、また同計画と表裏一体

にある省エネ・環境保護産業の新 5 ヵ年計画の強調点と方向性を取り上げたうえ、中国の省エネ・排出削減の新

5 ヵ年事業プランの実現可能性と課題を検討。前号に続いて、技術革新と新産業革命の機運増強による中国の

省エネと環境ビジネスの市場展望を試みる。

中国戦略 2016 年度「中国のつながる消費者」調査(2)

KPMG 中国ではグローバル消費動向調査の一環として、定点観測的に中国の e-コマース・m-コマースの動向を

消費者サーベイと業界関係者のインタビューから調査・分析し、「中国のつながる消費者」報告書として継続的に

発表している。その結果を数回に分けて紹介する。今回は購入までのプロセスの特徴にフォーカスする。

法務 2016年の重要立法を振り返る(下)

本稿では、前回に続いて、2016 年に公布または施行された主な法令のうち、インターネット、独占禁止法、知的財

産法、不動産登記に関連する重要立法を取り上げて解説する。

税務会計 増値税の会計処理(その 2)

今回は増値税の会計処理のうち、輸出税金還付、サービスの差額課税、簡易税額計算、月末処理と納付減免税

処理、未納税金費用の財務諸表項目の表示について紹介する。特に、日本企業にとって関心の深い輸出税金還

付の会計処理は免税控除還付方法と免税還付方法等に区分されており、サービスの差額課税方式も独特な会

計処理となっている。

税務会計 アジアにおける税制 チャイナ・プラス・ワン 香港

税制は各国・地域により、様々な観点から多くの点で異なっていると同時に、その国・地域間の制度設計

において一定の共通性も多く見られる。従って、一国だけでは見えなかった各国独自の税制が、共通性ま

たは相違性をみることにより初めて理解できるものとなる。今回は、香港における個人所得税及び社会保

険制度について、日本及び中国本土の制度との比較を含めてみていきたい。

中国経済

1 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

2016年の中国経済の評価と 2017年の見通し~緩やかな減速にとどまるも、金融リスク防止の必

要性は高まる~

1.2016 年の中国経済は緩やかな減速にとどまる

(1)「+6.5~7.0%」の成長率目標を達成

中国の 2016 年 10~12 月期の実質 GDP 成長率は、前年比+6.8%と前 3 四半期(同+6.7%)

から小幅に上昇し、下げ止まり感を示した。2016 年通年では同+6.7%と前年(同+6.9%)か

ら緩やかな減速にとどまり、通年の目標である「+6.5%~7.0%」の成長を達成した。

主要経済指標をみると、投資の動きを表す固定資産投資の実質伸び率は、2016年 1~3月期に

加速した後、徐々に減速した(図表 1)。2016 年初頭の投資加速の主因は、2015 年後半以降、

一部都市で住宅購入規制が緩和されたことなどによる不動産開発投資の盛り上がりだ(図表 2)。

しかし、不動産市況の過熱感の高まりに対する懸念から住宅購入規制を導入する都市が次第に

増えたため、4~6 月期以降は不動産開発投資の伸び拡大にも歯止めがかかった。インフラ投資

は、公共施設管理や道路建設を中心に増加し、景気下支えに貢献したが、年後半には息切れ感も

みられた。一方、製造業投資は資本ストック調整圧力や先行き不透明感の高まりなどにより減速

傾向をたどっていたが、10~12 月期には専用機械や通信・電子機器など機械類、化学や非鉄金

属などの素材類の投資を中心に持ち直し、投資全体への寄与度を高めた。

消費動向を示す社会消費品小売総額の実質伸び率は、前年比+9%台で安定的に推移した。

2015年 10月から小型車減税が導入されたことにより乗用車販売の伸びが加速したほか、住宅販

売の盛り上がりを受けて家電・家具・建材など住宅関連消費も総じて好調だった。

貿易動向に関しては、輸出が持ち直し傾向を示した。世界経済が緩やかに持ち直しつつあるこ

とや ITサイクルの回復などが寄与した模様だ。輸入も、在庫調整の進展などを受けて伸びが高

まった。ただし、輸入の伸びが輸出より高かったため純輸出の実質 GDP成長率に対する寄与度は

2016年通年で▲0.46%PTとマイナスとなった。

図表 1 GDP・主要経済指標 図表 2 固定資産投資(業種別)

(注)社会消費品小売総額は小売物価指数、固定資産

投資は固定資産価格指数で実質化。輸出は輸出

価格指数で実質化(みずほ総合研究所推計値)。

(資料)中国国家統計局、海関総署、CEIC Dataより、

みずほ総合研究所作成

(注)固定資産価格指数で実質化。

(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合

研究所作成

▲ 4

▲ 2

0

2

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10

▲ 10

▲ 5

0

5

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15

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25

12 13 14 15 16

実質GDP成長率(右目盛)

社会消費品小売総額(左目盛)

固定資産投資(左目盛)

輸出(左目盛)

(前年比、%) (前年比、%)

(年)

▲ 2

0

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8

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12

14

16

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14 15 16

その他 鉱業

第1次産業 インフラ

不動産 製造業

固定資産投資

(前年比、%)

(年)

みずほ総合研究所

アジア調査部 中国室

主任エコノミスト 玉井芳野

[email protected]

中国経済

2 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

2016 年は成長率目標を達成したものの、積極財政によるインフラ投資増加や、緩和的な金融

環境を背景とした不動産市況の回復、小型車減税策など、政策の下支えによるところが大きく、

自律的な回復力は依然として弱いと考えられる。不動産バブルに対する警戒感や人民元安進行

に対する懸念から金融緩和の余地が狭まったため、特に財政政策への依存度が高まった。現在公

表されている 2016年の財政赤字は予算(2.18兆元、対 GDP比 3.0%)と同程度とみられ1、昨年

(1.62兆元、対 GDP比 2.4%)より拡大した模様だ。財政部は、各地方政府に財政余剰金の活用

を促したため、地方政府債務を積み増すことなく財政赤字の規模を予算と同程度に抑制できた

としている。

(2)「サプライサイドの構造改革」は前進するも、課題は残る

2016 年は、中国政府が「サプライサイドの構造改革」というスローガンを掲げ、その推進に

取り組んだ年でもあった。具体的には、①過剰生産能力の削減、②不動産在庫の解消、③デレバ

レッジ(債務の圧縮)、④企業コスト軽減、⑤有効供給の拡大(新たな財・サービスの供給拡大

による需要の充足・喚起)という 5つの重要任務に着手した。中国国家統計局は記者会見で、関

連する指標を挙げながらこれらの任務の効果が現れ始めたとしている2。改革を前進させたこと

は評価できるが、以下のような課題も残されている。

まず、①の過剰生産能力の削減に関しては、削減対象となっていた鉄鋼・石炭ともに通年の目

標を達成したが(図表 3)、その中には長期にわたり生産停止・遊休状態にあった設備の淘汰が

多く含まれており、生産能力淘汰が本格的に進んだとは言えない状況だ。

図表 3 生産能力淘汰実績・目標 図表 4 住宅仕掛在庫面積

(対住宅販売面積比)

(注)鉄鋼の生産能力は、中国鋼鉄工業協会による。石

炭の生産能力は、国家発展改革委員会の連維良

主任による。生産量は国家統計局による。過剰生

産能力=(生産能力)-(生産量)。稼働率=生産

量÷生産能力。鉄鋼の 2016年の淘汰実績は報道

による。石炭の 2016年の淘汰実績は中国石炭工

業協会による。いずれも暫定値。

(資料)中国国務院、中国鋼鉄工業協会、国家発展改革

委員会、中国国家統計局、各種報道より、みず

ほ総合研究所作成

(注)1.仕掛在庫面積=施工面積-竣工面積-予約販

売面積。

2.1級都市は、北京、上海、広州、深圳の 4

都市。2級都市は、南京、杭州、合肥、寧

波、アモイなど 20都市。3 級都市は、海口、

貴陽、昆明、銀川、ウルムチの 5都市。

(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合

研究所作成

1 財政部「财政部有关负责人就 2016 年财政赤字有关问题答记者问」2017年 1月 24日。3 月の全人代で、正式な数値が公表

される。現時点では一般公共予算収入・支出から計算される財政赤字のみ入手可能で、予算安定化基金や財政余剰金を含

めた財政赤字はまだ公表されていない。 2 中国网「国新办就 2016 年国民经济运行情况举行发布会」2017年 1月 20日。

鉄鋼 石炭

生産能力 12億トン 57億トン

生産量 8億トン 37億トン

過剰生産能力 4億トン 20億トン

稼働率 67% 65%

2016年の淘汰目標 4,500万トン 2.5億トン以上

2016年の淘汰実績 7,000万トン以上 3億トン前後

中期的な淘汰目標

2016年から5年間で1~1.5億トン(生産能力の約8~13%)

2016年から3~5年間で5億トン以上(生産能力の約9%以上)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

08 09 10 11 12 13 14 15 16

全国

1級都市

2級都市

3級都市

(倍)

(年)

中国経済

3 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

②の不動産在庫の解消については、販売面積対比でみた住宅在庫面積の水準は低下傾向をた

どっている(前頁図表 4)。ただし、3級都市の住宅在庫は依然として高水準にあり、引き続き

在庫削減に向けた取り組みが必要であることが示唆される。

③のデレバレッジに関しては、鉱工業企業の負債比率は低下したものの、債務残高の対 GDP比

率は企業部門を中心に増加傾向が続いており、取り組みは道半ばとの評価が妥当だろう。

④の企業コストの削減に関して、企業経営者に対するアンケート調査3では、税負担について

は「減少した」との回答が「増加した」との回答をわずかに上回ったが、非税負担については「増

加した」との回答の方が依然として多く、コスト負担が軽減されたとは判断しにくい。

⑤の有効供給の拡大に関しては、国家統計局は環境分野や水利管理、農業での投資が高い伸び

を示したこと、宇宙ステーション・スーパーコンピューターなどのイノベーション進展、起業の

増加などを挙げている。長期的な取り組みが必要な課題であり、新たな発展の原動力とみなせる

ほどの大きな需要を喚起できるようになるにはまだ時間を要するとみられる。

2.2017 年の中国経済の見通し

(1)緩やかな減速が続く見通し

足元では製造業・非製造業 PMIともに景況感の回復を示しているが(図表 5)、これは主に在

庫調整の進展やそれに伴う素材価格の上昇などを反映した動きと考えられ、持続性には乏しい

とみられる。2017 年の中国経済は、引き続き過剰投資・債務の調整圧力が下押し要因となり、

景気減速傾向が続くだろう。

また、2016 年に減速ペースを和らげる要因となっていた住宅市場の過熱感が徐々に収まるこ

とも、成長率を押し下げると考えられる。三浦(2014)によると、住宅市場は、販売面積の前年

比伸び率の動向が販売価格の同伸び率に先行し、図表 6 のように反時計回りに循環する傾向が

ある4。この循環に照らすと、2016 年第 4四半期は販売面積・価格ともにプラス圏の「第 1象

図表 5 製造業・非製造業PMI 図表 6 住宅市場の循環

(資料)中国国家統計局、財新、CEIC Data、Windより、

みずほ総合研究所作成

(注)新築商品住宅の指標。販売価格は 70都市平均値、

販売面積は全国の値(後方 3カ月移動平均)。

(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合

研究所作成

3 中国企业家调查系统「企业家对宏观形势及企业经营状况的判断、问题和建议」(『管理世界』2016 年第 12期) 4 三浦祐介「中国不動産市場の底入れはいつか~住宅市場の循環に基づく考察と今後の展望~」(みずほ総合研究所『みずほ

インサイト』2014 年 10月 23日)

44

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12 13 14 15 16

製造業

非製造業

(年)

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製造業

非製造業

(年)

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▲ 6

▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8

10

12

▲ 20 ▲ 10 0 10 20 30 40 50販売面積(前年比、%)

販売価格(前年比、%)

第1象限

第4象限

第2象限

第3象限

2016.4Q

2015.1Q

2012.1Q

2013.1Q2014.1Q

2016.1Q

中国経済

4 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

限」にあったが、2017 年中にも「第 2 象限」、すなわち販売の伸びがマイナスに転じ販売価格

の伸びも鈍化する局面に入る可能性がある。住宅市況の調整は、住宅開発投資や住宅関連消費、

地方税収、金融と幅広いセクターに影響をもたらすため、その調整テンポには注視が必要だ。

ただし、景気全体の減速ペースは緩やかなものにとどまる見込みだ。2017 年の経済政策方針

を定める中央経済工作会議で、経済・社会の「安定」を前提として改革を推進することが強調さ

れているからだ5。成長率目標については 3 月の全国人民代表大会を待たねばならぬが、中央経

済工作会議で安定成長が強調されていることや第 13 次五カ年計画で 2020 年までに GDP を 2010

年対比で倍増させるという中期目標が定められていることを踏まえると、2017年は 2016年から

成長目標が引き下げられたとしても、前年比+6.5%程度の成長を目指した経済運営が行われる

と考えられる。金融政策は不動産バブル抑制などを目的にやや引き締め気味の運営となる見込

みだが6、財政政策は「積極的かつ効果的」に実施するという方針が示されており、2017年も政

策による景気下支えが続く見通しだ。

また、2017年は「サプライサイドの構造改革を深化させる年」と位置付けられている。1で述

べた 5つの重要任務を引き続き推進するとともに、農業セクターの改革やイノベーション推進、

不動産市場の安定化などが重点として掲げられている。2017 年は党大会を控え党内政治に注力

せざるを得ないため、改革のペースが遅れるのではとの見方も根強いが、今回の中央経済工作会

議の議事概要では、部門間協力や地方政府の積極性促進、共産党幹部への改革履行の要求など、

改革の実行力を高めるための方針も示されており、改革実行への意欲は低くないとみられる。

(2)金融リスクの防止が経済運営の鍵に

2017 年のリスクとして中国政府が重要視しているのは、金融リスクだ。中央経済工作会議で

は、「金融リスクの防止をより重要な位置づけとして、決心を固めて一連のリスク材料を処理し、

資産バブルの防止に注力する。監督管理の能力を向上、改善し、金融のシステミックリスクが確

実に発生しないようにする」とされ、前回の中央経済工作会議のとき以上に金融リスクへの対応

が重要な政策課題とされている7。また、銀行業監督管理工作会議でも、「システミックリスクを

発生させないことを最低ラインとし、重点領域のリスクを防止・抑制すること」が重要課題とさ

れ、①不良債権のリスク、②流動性リスク、③入り組んだ金融リスク(金融機関間での相互取引

におけるリスクなど)、④地方政府融資平台の貸出リスク、⑤インターネット金融のリスク、⑥

違法な資金集めのリスクの 6つの金融リスクを厳しく管理する方針が示された。

「サプライサイドの構造改革」のメニューの 1 つであるデレバレッジの推進は中長期的にみ

た成長の持続性を高める上で不可欠だが、短期的にはデフォルトの増加を引き起こし、金融リス

クが高まりやすくなる。その推進により銀行の自己資本比率が著しく低下した場合、銀行のリス

クテイク能力の低下を受けた設備投資の減退、金融システム不安の高まりによる個人消費の停

滞などを通じ、景気が下振れる可能性が高い。安定成長の必要性と構造改革の必要性がともに高

まる中で、金融リスクをいかにコントロールできるかが 2017 年の経済運営の鍵となるだろう。

以 上

5 2016 年の中央経済工作会議の詳細については、玉井芳野「2017 年の中国の経済政策方針~中央経済工作会議で示された

『安定の中での前進』」(みずほ総合研究所『みずほインサイト』2016 年 12月 22日)を参照。 6 2017 年の金融政策については、三浦祐介「中国人民銀行の政策運営の展望~『緩和』から『中立』に移行しつつ安定維持

に腐心~」(みずほ総合研究所『みずほインサイト』2016年 12月 22日)を参照。 7 脚注 6参照。

産業・地域政策

5 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

省エネ・排出削減 5 カ年計画の策定動向と 将来展望―環境政策統合の推進と環境産業

発展促進への展望―

1.はじめに

中国では、新 5ヵ年計画の始動にあたり、昨年末か

ら環境保護関連計画の重要な一環として、省エネ・排

出削減関連の政策制定が強化され、一連の関連 5カ年

計画と事業方案が公表されている(表 1)。中でも、⑫

「“13・5”省エネ・排出削減工作方案」が具体的な地

域・業界目標を明記した形で公表され、最も基本的・

重要な政策プランと考えられる。「“13・5”省エネ・環

境保護産業発展計画」(同⑦)や「エネルギー技術革新

“13・5”計画」(⑨)も同時に発表され、エネルギー

分野の構造転換とイノベーションの促進による環境

情勢の改善と持続可能な経済発展の政策スタンスが

鮮明になってきた。

本稿では、新 5ヵ年計画期における中国の省エネ・

排出削減計画の策定動向と主旨内容を紹介し、また同計画と表裏一体にある省エネ・環境保護産

業の新 5 ヵ年計画の強調点と方向性を取り上げたうえ、前号に続いて、中国の省エネ・排出削減

の新 5 ヵ年事業プランの実現可能性と課題を検討し、技術革新と新産業革命の機運増強による中

国の省エネと環境ビジネス市場を展望する。

2.新 5 ヵ年計画期の省エネ・排出削減関連計画

の策定動向

2017年 1月 5日、国務院は「“13・5”省エネ・

排出削減総合工作方案」(総合事業プラン。以下

「工作方案」)(表 1 の⑫)を公布し、第 13次 5

ヵ年計画期(2016~2020)における中国全国及

び各地域におけるエネルギー消費節約と環境汚

染物質排出の規制目標などが盛り込まれた政府

計画として注目された。

その冒頭において、資源節約と環境保護の基

本国策を実行し、エネルギー利用効率の向上と

生態環境の質的改善を目標とし、供給サイド構

造改革の推進と革新〈イノベーション〉駆動の

発展戦略実施を原動力とし、政府主導、企業主

体、市場駆動、社会参加を堅持し、資源節約型

の環境にやさしい社会の建設を加速すると謳っ

ている。2020年までに国内総生産(GDP)1万元

みずほ銀行

中国営業推進部

研究員 邵 永裕 Ph.D.

[email protected]

No. 環境対策名称(計画・通達など) 公布機関 公布年月

①2016年各省(自治区・市)石炭発電超低排出と省エネ改造目標任務

国家エネルギー局、環境保護部

2016年8月

② “13・5”温室ガス排出抑制工作方案 国務院 2016年10月

③ 全国生態保護 “13・5”計画 環境保護部 2016年11月

④環境保護 “13・5”科技発展綱要(2016~2020)

環境保護部、 科技部

2016年11月

⑤ “13・5”生態環境保護計画(2016~2020) 国務院 2016年11月

⑥ 汚染物質排出抑制許可制実施方案 国務院 2016年11月

⑦ “13・5”省エネ環境保護産業発展計画(2016~2020)

国務院 2016年12月

⑧ エネルギー発展“13・5”計画(2016~2020)発改委、国家エネルギー局

2016年12月

⑨エネルギー技術革新 “13・5”計画(2016~2020)

国家エネルギー局

2017年1月

⑩ “13・5”全国民省エネ行動計画(2016~2020)

発改委、科技部など8部署

2017年1月

⑪ 生産者責任延伸制度実施方案発改委、環境保護部など

2017年1月

⑫ 省エネ排出削減総合プラン(2016~2020) 国務院 2017年1月

⑬ 節水型社会建設“13・5”計画(2016~2020)発改委、水利部、住宅建設部

2017年1月

表1 2016年以降中国省エネ・排出削減主要政策の展開

資料)中国政府関連機関WEBサイトより作成。注)本表は地域版を除く主要な省エネ・排出削減計画・方案を対象としており、すべての関連政策が網羅されるとは限らない。

2015年

実績値 目標値変化幅/変化比率

- - - [-18%]

g標準炭/千Wh 315 306 -9千g標準炭 572 560 -12

千g標準炭/トン 112 105 -7千Wh/トン 13350 13200 -150

千g標準オイル/トン

65 63 -2

千g標準炭/トン 816 790 -26千g標準炭/トン 1331 1300 -31千g標準炭/トン 530 480 -50

億㎡ 12.5 17.5 5億㎡ 1 2 1

% 20 50 30

t標準炭/

百万換算トンキロ

- - - [-6.5%]

- - - [-6%]

千g標準炭/トンキロ

0.433 <0.415 >[-4%]

リットル/百キロ 6.9 5 -1.9

千g標準炭/㎡ 20.6 18.5 [-10%]

千g標準炭/人 370.7 330 [-11%]

% 70 75 5% 70 75 5

>55kW % 15 30 1555kW~220kW % 8 13 5<220kW % 5 8 3

% 0.1 10 9.9% 22.6 50 27.4% 98.3 99 0.7% 93.7 98 4.3

都市部公共建築省エネ改築累計面積

紙及び紙製品の製造

エチレン生産アンモニア生産

建築部門:

都市部既存住宅の省エネ改築累計面積

指  標  区  分 単 位2020年

表2 第13次5ヵ年計画期中国主要業界・部門省エネ目標

火力発電鉄鋼生産

原単位工業生産(規模以上企業)のエネルギー消費量

都市部新築グリーン建築標準実施比率

2級以上効率家庭用ガス温水器の市場シェア

2級以上効率ルームエアコンの市場シェア

資料)国務院「省エネ排出削減総合プラン(2016~2020)」より作成。[ ]内は変化比率。

鉄道運輸総合エネルギー消費量

交通輸送部門:

4.71 4.47

営業車両の単位当り輸送のエネルギー消費量削減率

営業船舶の単位当り輸送のエネルギー消費量削減率

民用航空の単位当り輸送のエネルギー消費量

新規生産の乗用車の平均的エネルギー消費量

公共機関:

公共機関の単位当り建築面積のエネルギー消費量

[-5%]

石炭燃料工業ボイラーの運転効率

末端消費設備:

公共機関の1人当たりエネルギー消費量

2級以上効率電気冷蔵庫の市場シェア

モーターの運転効率

1級省エネ効率 空 気 圧 縮機の市場シェア

2級効率電力変圧器の市場シェア

工業部門:

アルミナ生産

石油精製

セメント生産

産業・地域政策

6 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

当たりエネルギー消費を 2015 年より 15%削減し、エ

ネルギー消費総量を標準炭換算 50 億 t 以内に抑制す

る。全国の化学的酸素要求量(COD)、アンモニア性窒

素、二酸化硫黄、窒素酸化物の排出総量をそれぞれ

2,001万 t、207万 t、1,580万 t、1,574万 t以内に抑

制し、それぞれ 2015年に比べ 10%、10%、15%、15%

削減。全国の揮発性有機物排出総量を 2015 年に比べ

10%以上削減するとの目標を掲げている(表 2)。

特に、多くの地域におけるエネルギー消費と汚染物

質排出量の目標策定についって、第 12 次五ヵ年計画

に続く形で詳細な指標値が明示され、数量規制の性格

付けがはっきりなされた格好である(表 3、表 4)。

「工作方案」では、特に強調される省エネ・排出削

減に対する主な取組みとして 11 項目が挙げられてい

る(表 5)。主なものとしては、①産業とエネルギーの

構造を最適化し、伝統産業のタイプ転換・

高度化を促進し、新興産業の発展を加速し、

石炭消費の比率を引き下げる。②重点分野

の省エネを強化し、工業、建設、交通、商

業・貿易、農村、公共機関、重点エネルギー

使用機関のエネルギー効率水準を高める。

③主要汚染物質の排出削減を進め、単に行

政区域を単位として総量抑制指標を配分す

るやり方を改め、汚染物質排出許可制の実

施を通じ、企業・事業所別総量抑制制度を

確立、整備し、重点流域と工業、農業、生

活、移動汚染源の汚染物質排出を抑制する。

④循環型経済を発展させ、産業パーク循環

化改造を推進し、都市廃棄物処理と大口固

体廃棄物総合利用を強化する。⑤省エネ、

循環型経済、主要大気汚染物質・主要水戦

略物質排出削減などの重点プロジェクトを

実施する。などとなっている。

また「工作方案」は、従前の 5 ヵ年計画

と同様に新 5 カ年計画期のエネルギー消費

総量と GDP 原単位当たりのエネルギー消費抑制目標を各地域(省・市・自治区)に割り当てる形

で、主要業種・部門の省エネ目標を策定し、各地域の COD、アンモニア性窒素、二酸化硫黄、窒素

酸化物、重点地区の揮発性有機物の排出総量抑制計画を明記し、各地域、各部門に省エネ・排出

削減の重要性と緊急性を十分認識し、組織指導を強化し、目標に対する責任を明確にし、貫徹・

実行に力を入れ、審査・責任を強化し、目標の達成を確実にしなければならないと要求している。

“十三五”エネルギー原単位

消費量

2015年エネルギー総消費量

“十三五”エネルギー消費量増加数

削減目標(%) (万t標準炭)抑制目標

(万t標準炭)北 京 17 6,853 800天 津 17 8,260 1,040河 北 17 29,395 3,390山 西 15 19,384 3,010内蒙古 14 18,927 3,570遼 寧 15 21,667 3,550吉 林 15 8,142 1,360黒龍江 15 12,126 1,880上 海 17 11,387 970江 蘇 17 30,235 3,480浙 江 17 19,610 2,380安 徽 16 12,332 1,870福 建 16 12,180 2,320江 西 16 8,440 1,510山 東 17 37,945 4,070河 南 16 23,161 3,540湖 北 16 16,404 2,500湖 南 16 15,469 2,380広 東 17 30,145 3,650広 西 14 9,761 1,840海 南 10 1,938 660重 慶 16 8,934 1,660四 川 16 19,888 3,020貴 州 14 9,948 1,850雲 南 14 10,357 1,940西 蔵 10 — —陝 西 15 11,716 2,170甘 粛 14 7,523 1,430青 海 10 4,134 1,120寧 夏 14 5,405 1,500新 疆 10 15,651 3,540

資料)国務院「省エネ排出削減総合プラン(2016~2020)」より引用。

表3 第13次5ヵ年計画期における中国各地域のエネルギー消費量と省エネ目標値の設定

指 標

地 域

2015年排出量

2020年削減比

2020年重点事業削

減量

2015年排出量

2020年削減比

2020年重点事業削

減量

2015年排出量

2020年削減比

2020年重点事業削

減量

2015年排出量

2020年削減比

2020年重点事業削

減量

(万t) (%) (万t) (万t) (%) (万t) (万t) (%) (万t) (万t) (%) (万t)

北 京 16.2 14.4 2.33 1.6 16.1 0.24 7.1 35 1.8 13.8 25 0.7

天 津 20.9 14.4 2.47 2.4 16.1 0.38 18.6 25 2.8 24.7 25 3.5

河 北 120.8 19 16.14 9.7 20 1.59 110.8 28 18.4 135.1 28 19.9

山 西 40.5 17.6 4.75 5 18 0.61 112.1 20 22.4 93.1 20 16.3

内蒙古 83.6 7.1 5.19 4.7 7 0.28 123.1 11 13.5 113.9 11 12.5

遼 寧 116.7 13.4 8.41 9.6 8.8 0.85 96.9 20 14.4 82.8 20 14.9

吉 林 72.4 4.8 2.32 5.1 6.4 0.2 36.3 18 5.2 50.2 18 9

黒龍江 139.3 6 7.33 8.1 7 0.48 45.6 11 4.3 64.5 11 7.1

上 海 19.9 14.5 2.72 4.3 13.4 0.53 17.1 20 3.4 30.1 20 5.2

江 蘇 105.5 13.5 10.39 13.8 13.4 1.25 83.5 20 13.3 106.8 20 18.7

浙 江 68.3 19.2 7.64 9.8 17.6 0.85 53.8 17 9.1 60.7 17 10.3

安 徽 87.1 9.9 7.7 9.7 14.3 1.07 48 16 5.2 72.1 16 9

福 建 60.9 4.1 2.14 8.5 3.5 0.3 33.8 — 3.5 37.9 — 4.6

江 西 71.6 4.3 2.73 8.5 3.8 0.32 52.8 12 6.3 49.3 12 5.9

山 東 175.8 11.7 13.3 15.3 13.4 1.49 152.6 27 35 142.4 27 31

河 南 128.7 18.4 16.98 13.4 16.6 1.93 114.4 28 20.5 126.2 28 15.8

湖 北 98.6 9.9 8.25 11.4 10.2 1.02 55.1 20 10.9 51.5 20 5.9

湖 南 120.8 10.1 10.49 15.1 10.1 1.41 59.6 21 8.5 49.7 15 6.3

広 東 160.7 10.4 11.06 20 11.3 1.54 67.8 3 2 99.7 3 3

広 西 71.1 1 0.35 7.7 1 0.08 42.1 13 4.5 37.3 13 3.3

海 南 18.8 1.2 0.16 2.1 1.9 0.04 3.2 — 0.4 9 — 1.2

重 慶 38 7.4 2.36 5 6.3 0.32 49.6 18 8.1 32.1 18 2.8

四 川 118.6 12.8 14.09 13.1 13.9 1.74 71.8 16 11.2 53.4 16 3.7

貴 州 31.8 8.5 2.77 3.6 11.2 0.41 85.3 7 6 41.9 7 2.9

雲 南 51 14.1 5.85 5.5 12.9 0.67 58.4 1 0.6 44.9 1 0.4

西 蔵 2.9 - - 0.3 - - 0.5 — — 5.3 — —

陝 西 48.9 10 2.63 5.6 10 0.38 73.5 15 11 62.7 15 9.4

甘 粛 36.6 8.2 2.4 3.7 8 0.28 57.1 8 4.6 38.7 8 3.1

青 海 10.4 1.1 0.07 1 1.4 0.01 15.1 6 0.9 11.8 6 0.7

寧 夏 21.1 1.2 0.1 1.6 0.7 0.01 35.8 12 4.3 36.8 12 4.4

新 疆 56 1.6 0.71 4 2.8 0.09 66.8 3 2 63.7 3 1.9

新疆生産建設兵団

10 1.6 0.04 0.5 2.8 - 11 13 0.9 9.9 13 1.3

資料)国務院「省エネ排出削減総合プラン(2016~2020)」より作成。

二酸化(SO2)硫黄排出量 窒素酸化物排出量

 表4 第13次5ヵ年計画期中国各地域における汚染物質排出総量規制計画目標窒素・アンモニア排出量COD排出量

指標

地域

産業・地域政策

7 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

また重点領域の省エネについては、工業、交通運

輸、商業・流通サービス(小売・卸売り、飲食、宿、

物流など)、農業・農村、公共機関、重点的エネル

ギー消費業者に対する考課と評価の強化、重点的エ

ネルギー消費設備の省エネ管理の強化などが提起

されているほか、主要汚染物質の排出削減について

重点区域(首都圏、長江デルタ、珠江デルタ、東北

など)における排出の規制強化が強調されている。

3.第 13 次 5 カ年計画期の省エネ・排出削減政策の強

調点と主な特徴

今期の「工作方案」は、冒頭で提起されているよ

うに、「中国製造 2025」の実施を進化させるべく、

伝統産業の構造転換とグレードアップ(製造業とイ

ンターネットの融合によるハイエンド

化、知能化、グリーン化、サービス化)

と戦略的新興産業の育成加速、エネルギ

ー構造の最適化が提起され、また各方面

に関する事業推進について詳細に該当

の政府機関や部署名が挙げられ、責任の

明確化が印象的である。また、表 6 に示

す重点推進事業や省エネ・排出削減に関

する目標の監督監査や責任分担につい

てもそれぞれ明確に中央省庁の政府機

関名が言及されるなど、以前に無かった

特徴が見られる。

何よりも、省エネ・排出削減のより有

効な手段として循環型経済や省エネ環

境保護産業の発展の推進が重要視され

た点、「工作方案」と並行的に策定され

た「“13・5”省エネ環境産業発展計画」

(以下「環境産業計画」)ではより具体

的に主なエネルギー高消費産業と産廃

処理に対する新技術と材料の採用促進

に言及されている(表 7)ことに留意す

べきであろう。実際、第 12 次 5 カ年計

画期にも製造業の主要分野で省エネ・排

出削減の具体的取り組みが展開され、2010~2014 年の間にも大きな省エネ効果を挙げた(表 8)。

国家発展改革委員会直属のエネルギー研究所も、専門研究レポートで、新 5 ヵ年計画期の工業

表5 第13次5ヵ年計画の省エネ・排出削減の主な取組み手法①産業とエネルギーの構造を最適化し、伝統産業のタイプ転換・高度化を促進し、新興産業の発展を加速し、石炭消費の比率を下げる。②重点分野の省エネを強化し、工業、建設、交通、商業・貿易、農村、公共機関、重点エネルギー使用機関のエネルギー効率水準を高める。③主要汚染物質の排出削減を進め、単に行政区域を単位として総量抑制指標を配分する方式を改め、汚染物質排出許可制の実施を通じ、企業・事業所別総量抑制制度を確立、整備し、重点流域と工農業、生活、移動汚染源の汚染物質排出を抑制。④循環型経済を発展させ、産業パーク循環化改造を推進し、都市廃棄物処理と大口固体廃棄物総合利用を強化する。⑤省エネ、循環型経済、主要大気汚染物質・主要水戦略物質排出削減などの重点プロジェクトを実施する。⑥省エネ・排出削減に対する技術サポート・サービス体系づくりを強化し、地域、都市・町、産業パーク、エネルギー使用機関などのシステム的エネルギー使用と省エネを推進する。⑦省エネ・排出削減を支える価格・料金、財政・租税インセンティブ、グリーンファイナンスなどの政策を整える。⑧省エネ・排出削減の市場化メカニズムを確立・整備し、契約エネルギー管理、グリーン表示認証、環境汚染の第三者による是正、電力需要側の管理などを進める。⑨省エネ・排出削減目標に対する責任を明確にし、評価・審査を強化する。⑩省エネ・環境保護の法律、法規、基準を整え、監督・検査を厳格にし、管理サービスレベルを高める。⑪省エネ・排出削減に社会全体を動員し、グリーン消費を推進し、社会の監督を強化する。

資料)国務院「省エネ排出削減総合プラン(2016~2020)」より抜粋。

表6 第13次5カ年計画期の省エネ・排出削減重点推進事業と対策措置[省エネ重点事業]石炭燃料ボイラーと電機システムの省エネ環境保護レベルアップの実施と余熱による暖房供給、グリーン照明の促進、省エネ技術設備産業化パイロット事業の実施、エネルギー系統の最適化、石炭消費の節減と代替、重点的石炭消費業者の総合的エネルギー利用効率の向上、契約エネルギーーの管理推進、都市化に伴う省エネ改築、天然ガス分散式電源のパイロットなどの省エネ事業推進、エネルギーの総合的段階的有効利用の推進などにより、期間内に3億トン規模の省エネ能力を形成し、2020年までに省エネサービス産業の売上げ高を2015年より2倍増を実現。[主要な大気汚染物質の重点的排出削減事業]石炭燃料発電所の超低排出と省エネ改築事業を重点的に実施し、期間内に5.8億kW発電ユニットの超低排出任務を完遂し、2000万kW相当の劣後・要求基準未達成発電設備の淘汰実施。電力、鉄鋼、セメント、石化、板ガラス、非鉄金属などの重点業界での全面的な合格排出事業の実施。京津冀(首都圏)、長山角(長江デルタ)、珠山角(珠江デルタ)等の諸地域における石炭ガス替え事業、石炭電気替え事業の実施と都市部石炭使用禁止地域の面積拡張、区域天然ガス輸送パイプ、都市ガス配管、農村輸送電網の建設整備、天然ガス貯蔵タンクと都市部ピーク調節センター貯存タンクのインフラ建設加速、新たに石炭ガス替え工事ガス使用量450億立米増やし、石炭ボイラー18.9万トン相当分を代替させる。石化、化工、工業塗料、包装印刷などの揮発性有機物の整理工事などの実施。[主要な水汚染物質の重点的排出削減事業]都市部、県庁所在地都市とその他建制鎮の生活汚染排出施設の建設推進、都市部汚水、工業団地の汚水、汚泥処理施設の建設と改築事業の実施、再生水の再利用施設の建設実施。獣禽類の規模的飼育地区の汚染処理加速、75%以上の養殖場の付設固形廃棄物と汚水処理施設の建設。[循環的経済重点事業]工業園区の循環化改造、資源の循環的利用のパイロット事業基地の建設、農工複合型循環経済試験区の建設、京津冀固形廃棄物の協同処理、”インタネット+資源循環”、再生産品と再製造品の推奨などの特別アクション実施、100の資源循環利用産業パイロット基地と50の工業廃棄物総合利用産業基地、20の農工複合型循環経済パイロット地区の建設、生産と生活の系統的な循環連結の推進によりグリーン低炭素の循環的産業体系を構築し、2020年までに再生資源代替原生資源量が13億トン、資源循環利用産業の売上げは3兆元に達する。[省エネ・排出削減関連の共通重要技術の開発普及推進事業の加速]超高超臨界圧発電、低品位余熱発電、小型ガスタービン、石炭のクリーン高効率の利用、微細顆物質の防除、揮発性有機物の対応、自動車排気ガスの浄化、原油と石油製品埠頭のオイル・ガスの回収、ごみ滲出液の処理、複数汚染物協同処理などの新型技術設備の研究開発と産業化促進。高効率煙気の除塵と余熱回収の一体化や高効率ポンプ、半導体照明、廃棄物循環利用などの成熟技術の普及推進など。[価格体系に基づく料金政策]各地域に対する差別電気価格と懲罰性電気価格政策の実施を監督し、地方による違法的なエネルギー高消費企業への優遇電気価格の採用を厳格に処理する。取水枠超過累進用水追加価格制度を実施する。各地域に対し、厳格にセメント、電解アルミなどの業界の累進追加電気価格政策を実施し、省エネ効果を高める。天然ガスの価格政策を研究し、住民に対する電気階級価格制度(石炭電気替えの場合除く)を改善し、全面的に住民へのガス階級価格、水階級価格制度の適用を推進するなど。[財政税収による奨励政策]特別の関連資金を計画手配し、省エネ排出削減重点事業の実施と能力整備と広報活動を支援し、財政資金を創出し省エネ排出削減の重点事業やプロジェクト運営方式を支援し、財政資金のレバレッジ機能を発揮させる。省エネ環境保護サービスの政府調達を広げ、政府調達のグリーン化を推進し、省エネ環境保護製品の政府調達義務付けと政府優先調達政策の改善と不合理な化石燃料の補助金の取り消しを実施し、省エネ排出削減任務達成の良好な地域と企業を褒章するなど。[グリーン金融体制の整備充実]銀行業、金融機関が省エネ排出削減重点事業の実施に多元的な融資支援を行うことを奨励する。市場化グリーンボンドの担保体制を健全化させ、グリーンボンドの利用をする業者に対し、規定に基づいて財政補助を行う。銀行機関に対しグリーンランク付けを行い、グリーン融資制度の健全化をはかり、エネルギー使用権、炭素排出権、省エネ項目収益権などを抵当(質権)にされることを支持する。グリーンボンドの市場発展を促進し、金融機関によるグリーン金融債券の発行や企業によるグリーンボンドの発行を推進する。

 資料)国務院「省エネ排出削減総合プラン(2016~2020)」より抜粋。

産業・地域政策

8 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

部門の省エネルギー成果について主要な省エ

ネ方策に分けて成果を予測している(表 9)1。

4.第 13 次 5 カ年計画期の省エネ・排出削減計

画の実現可能性と今後の展望(結びに代えて)

エネルギー消費の産業的特徴と省エネの成

果達成の手法などを重要視した「工作方案」

は、これまでの 5 ヵ年計画よりも実効性が高

いと考えられ、中国の持続的な経済発展と低

炭素社会構築のための環境づくりに重要な意

義と役割を果たすことが期待される。また、並

行して公表された「“13・5”省エネ・環境保護

産業発展計画」(以下「環境産業計画」)は、「工

作方案」実現をサポートすべく詳細に新 5 ヵ

年計画期の省エネ環境保護産業の発展を展望

している。「環境産業計画」も、これまでの同

計画に比べてはるかに詳細で突っ込んだ政策

措置を記載した内容である。紙幅の関係で詳

しく取り上げることはできないが、主な強調点を

見ると、既に GDPの 3%を占めるようになった省

エネ環境保護産業を、国民経済の「一大支柱産業」

として築き上げていくことが謳われている。発展

の重点として、技術設備の供給水準を引き上げ、

省エネ技術設備、工業ボイラー、電機システム、

エネルギーのシステム化・循環的利用、余熱の回

収、コージェネレーション、リサイクル、再製造

などの推進に加え、環境ビッグデータの発展によ

る市場調査と分析などが提起されている。また、

具体的な保障措置や有力な手段として、財政価格

による政策支援とグリーン金融システムの整備、

排出権取引の推進、PPP方式による環境ビジネス

の実施支援、国際協力による省エネ・環境保護事

業の推進、省エネ・環境保護産業におけるイノベ

ーションの支援などが強調されている。

更に注目に値するのが、今年に入って公表された「エネルギー技術革新“13・5”計画」(表 1の

⑨)である。これは以前には見られなかった計画名称で、エネルギー革命の情勢下において「エ

ネルギー発展“13・5”計画」や「省エネ・排出削減プラン」などの実効性を保障・支援するもの

と受け止められる。同技術革新 5ヵ年計画では、2020年にかけて力を結集し、重要・キーテクノ

1 同調査レポートは、非常にまとまった内容になっており、工業分野だけでなく、交通、民生などの部門に関しても総合的な

予測をしており、また同期間の経済成長水準に関してもいくつかのシナリオを出している。

省エネ潜在的効果

(24684万t標準炭)

従来素材の代替、工程 鉄鋼、製紙、アルミナ、アン

改良及び製品回収・再 モニアなどの諸業種 871万t標準炭

利用

先進的な省エネ技術 鉄鋼、建材、非鉄金属、石油

の普及 化学、製紙等のエネルギー高 7842万t標準炭

消費業種

2020年までに各主要なエネ

劣後生産設備の廃棄 計画期間中の淘汰設備: エネルギー高消費業界の

淘汰の実施 鉄鋼5500万t、セメント1.65万t、 2000年以降導入設備の割

アルミナ220万t、板ガラス6千万 合は設備全体の90%以上、

重量箱など。 2006年以降導入分は全体

の70%を上回る見込み。

バリューチェーンの拡張、 医薬、機械、交通運輸設備など

高付加価値製品の生産 の諸業種 4173万t標準炭

拡大

表9 第13次5ヵ年計画期中国工業部門主要省エネルギー成果予測

資料)発展計画委能源研究所「中国“十三五”省エネルギー計画研究」(レポート)より作成。

エネルギー高消費

ネルギー非高消費

工業の構造調整 主要な方策 主要な工業業界

表7 第13次5カ年計画期中国導入推進予定の重点省エネ技術                       <主要業界>[鉄鋼業界]熱態スラグ余熱の回収と資源化利用技術、複合製鉄コークス技術、換熱式二段コークス炉技術などの開発と一缶貫徹式鉄水供給、焼結煙気循環、高温高圧の乾式コークスなどの新技術の普及推進。[非鉄金属]アルミ電解槽の大型化・知能化技術、連続・半連続マグネシウム精錬技術などの開発とアルミ液の直接供給と新型構造アルミ電解槽、高効率高強度バイヤー法アルミナ生産、酸素富化溶錬、粗銅連続ブローイング精錬などの技術の普及促進。[石油化学と化学工業]石油製品と大口の化工原料のグリーン製造技術、石油化学装置の熱変換システムの知能制御などの技術の開発。精錬化工のエネルギー使用システムの最適化、オレフィン原料の軽質化、高効率クリーン先進的ガス化などの技術の普及拡大。[建材業界]セメント製造全工程の情報化ファジー制御方策、板ガラス省エネ窯炉新技術、フロートガラス生産過程のデジタル化スマート制御・管理技術などの開発。高効率の熟料煅焼、ガラス溶窯の純低温余熱発電、セラミック薄形化及びウェットドライ変換などの技術の普及拡大。[石炭化学工業]大力大いにコークス炉ガス、石炭发展焦炉煤气、コールタール、カーバイド尾気などの副産物の高効率利用技術の開発推進。

資料)国務院「“13・5”省エネ・環境保護産業発展計画(2016.12)」より作成。

                      <産廃処理利用>[赤泥]重点的に低コストの赤泥デ・ベース技術、高鉄含有赤泥及び赤泥の鉄精鉱物の深度還元技術、赤泥による路肩固結材料の開発推進と赤泥を主要原料とするバブルガラス、循環流化床脱硫剤、環境修復材料、化学結合セラミック(CBC)複合材料の開発など。[精錬スラグ]膨張型充填採鉱専用膠着材料技術の重点的開発、多種類可変成分の総合回収などの技術の開発研究。[副産物石膏]重点的にエネルギー低消費のリン石膏による硫酸カリウムの副産物塩化アンモニウムと副産物石膏による土壌改良や脱硫石膏の品質のオンラインモニターリングなどの技術のブレークスルーを遂げ、リン石膏、不溶性含カリウム頁岩による製酸シリコン発生カルシウム・マグネシウム肥料製造技術の普及推進。[粉石炭灰]石炭灰の分質・分級による再利用の系統的技術と石炭灰からのアルミナと高付加価値元素採取の技術、石炭灰による繊維パルプや超細繊維などの製造技術の普及推進、石炭灰からのFe2O3、フローティングビーズ、カーボン粒子などの多重可変成分の採取技術の研究開発及びアルミ石炭灰のエネルギー低消費シリコンアルミ合金、石炭灰による環境保護素材、石炭灰コンクリートの路面用材料技術の獲得。

業  種

2010~14年原単位エネル

ギー消費量低下比率(%)

エネルギー節約量(百万ト

ン石油)

エネルギー支出節約金額(百万

USドル)

セメント 7.5 48.6 7,547火力発電 4.5 44.5 6,905粗鋼 3.4 11.7 1,815アルミナ 11.0 2.3 358板ガラス 21.0 2.1 322石油精製 11.0 1.7 265苛性ソーダ 18.4 1.6 249エチレン 9.0 1 150アンモニア 1.7 0.9 143炭酸ナトリウム 4.5 0.3 41カーバイド 0.8 0.1 21

合  計 - 115 17,816

表8 第12次5ヵ年計画期における中国の主要工業分野の省エネ成果

資料)IEA中国特刊より引用。期間は2010~14年間のもの。

産業・地域政策

9 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

ロジー、中核素材・設備のブレークスルーを達成し、エネルギー産業の自主イノベーション能力

と国際競争力の大幅向上を実現し、エネルギーイノベーション体制づくりの初期完成を目指すこ

とを謳っている。具体的に「集中突破類技術 70 項目」、「試験示範類技術 48 項目」、「応用普及類

技術 31項目」を列記し、それぞれに類別水準の目標を設置。化石燃料のクリーン化、新エネ技術

のシステム化、原子力技術の安全化などに注力し、技術・設備の水準向上とイノベーション促進

によるエネルギー生産供給の効率化と構造の適正化を

図ろうとする政策指向が顕著になっている。

省エネ事業は排出削減や汚染防除以上に社会や企業、消

費者に便益を与ることや、過去の中国の省エネ事業が大き

な成果を挙げてきたことなどから(図 1)2、新 5ヵ年計画

期における目標実現は楽観的とみられ、政府系シンクタン

クによる第 13次 5ヵ年計画期の省エネ・排出削減の成果

予測(図 3)も目標達成をうかがわせるものである。

汚染物質の削減は、様々な重点事業の推進(表 4、表 6)

により実現しなければならないことを考えれば、中国にお

ける 3Eのトリレンマ(環境・エネルギー・経済発展の

共立問題)の対応は新 5 ヵ年計画期を通してもなお残

される長期的な問題であることは間違いない。しかし、

中国が今期の環境保護と省エネ・排出削減の関連計画

と政策の策定に関して、これまでに無かった「環境政

策統合」への着意重視とエネルギー生産・消費構造を

転換させようとする新エネルギーの発展推進で大きな

成果を挙げていることなどを考えれば、今後の持続可

能な経済発展と他の関連新興産業の連動発展とイノベ

ーションによるエネルギー革命(特に多くの科学分野

と強い関連があるクリーンエネルギー技術)の推進に

とって、非常に有利な市場ポテンシャルと産業技術と

製品及び環境サービスの需要余地があることは間違い

ない。今後 5年ないし 10年において、省エネ・環境保

護産業への企業参入やビジネスチャンスの展開が今ま

でにない規模で拡大すると考えられる。

新 5カ年計画の実施に向け、1月上旬に「“13・5”

全民省エネ行動計画」(表 1 の⑩)に加え、「節水型

社会建設“13・5”計画」(同⑬)も制定・公布され

た。各種の新エネ・再生エネルギーの新 5ヵ年発展

計画の策定実施とあわせ、省エネ・排出削減に関す

る取組みは、パリ協定発効後の中国内外の地球温暖化に向けての非常に重要で前向きな政策布陣

であることは間違いなく、その効果的な実施と実り豊かな政策効果が期待されている。 以 上

2 第 12次 5ヵ年計画期の省エネ・排出削減の成果が大きいのは同期の経済成長鈍化とも無関係ではない。エネルギー消費弾性値も大きく低下した(2015年にこれまで最低の 0.145に下がり、石炭の消費弾性値は 2014 年からマイナス値に)ことがこれ

を明確に示しているが、石炭消費がピークアウトに入ったことが(図 2)エネルギー消費構造の改善に大きな意義があると言

える。

図3 GDP成長率が6.8%から6.4%へ低下する場合の第13次5カ年計画の省エネ・排出削減シナリオ

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

2005年 2010年 2013年 2015年 2020年

原単

位G

DPの

エネ

ルギ

ー消

費量

とC

O2排

出量

0

5

10

15

20

25CO2の削減比率

原単位GDPエネルギー消費量(t標準炭/万元)

原単位GDPの二酸化炭素排出量(トンCO2/万元)5ヵ年CO2削減率(%)

資料)表7?表記の国家発展改革委員会エネルギー研究所の専門調査報告により作成。

図2 第11次~第12次5ヵ年計画期の中国エネルギー消費量

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

400,000

450,000

500,000

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

エネ

ルギ

ー総

消費

量と

石炭

消費

量(万

t標準

炭)

-3%

-1%

1%

3%

5%

7%

9%

11%

13%

15%

エネ

ルギ

ー総

消費

量と

石炭

消費

量の

前年

エネルギー総消費量(万t標準炭) 石炭消費量(万t標準炭)エネルギー総消費量前年比 石炭消費量前年比

資料)国家統計局公表データより作成。前年比は計算値。

図1 第12次5ヵ年計画期中国原単位エネルギー消費量推移

0

5

10

15

20

25

30

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 5年実績 5年目標

前年比削減率

(%

原単位GDPエネルギー消費量の削減率

原単位工業付加価値エネルギー消費量の削減率

資料)[付表]を含め中国工業省エネ・クリーン生産協会「中国節能與清潔生産」2016年11月第5期(総第29期)より作成。

目標項目区分COD排出量

SO2排出量

アンモニア性窒素排出

窒素酸化物排出量

“12・5”計画期削減目標(%)

8 8 10 10

同年間平均削減比率目標(%)

1.6 1.6 2 2

2015年削減実績(%) 3.1 5.8 3.6 10.9“12・5”計画期削減達成実績(%)

12.9 18 13 18.6

[付表] 12次5ヵ年計画期環境汚染物質排出削減実績

中国戦略

10 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

2016 年度「中国のつながる消費者」調査 ―進化するモバイル―(2) ―進化するモバイル―(2)

KPMG 中国の定点観測調査、「中国のつながる消費者」の結果のご紹介、連載二回目の今回は

購入までのプロセスの特徴にフォーカスします。

準備とリサーチ

中国の消費者は、オンラインでリサーチと商品購入を頻繁に行いますが、同時に日ごろから実

店舗にも足を運んでいます。そのため、企業はオンラインとオフライン両方のプラットフォーム

に力を入れ、真の意味で一体化されたオムニチャネルのショッピング体験を形成する必要性を

次第に認識するようになりました。

調査結果を見ると、中国の消費者は購入のためのリサーチを行うとき、圧倒的な比率でオンラ

イン検索を選択しています。調査回答者の約六割は、商品のリサーチを行うときに、レビューや

おすすめをオンラインで検索します。また、非常に多くの消費者が、その会社のウェブサイトを

訪れています(図 2.1参照)。これに対し、英国と米国の調査回答者で、オンライン検索を行っ

ている人はそれぞれ五割と四割でした。一方、インドでは 63.6%、アジア全体では 65.6%と、

中国より高い数字になっています。重要なのは、アジアの消費者が最終的に実店舗で商品を購入

したとしても、大多数は購入前にウェブサイトを検索し、オンラインで価格を比較しているとい

うことが調査結果からわかったということです。

図 2.1: 商品リサーチの際、オンラインでレビューやおすすめを検索した消費者

出所: KPMGの調査分析(2016 年)

さらに、オンライン検索を行う場所は家庭や職場だけとは限りません。実際に中国の回答者の

70%近くが、実店舗にいるときにスマートフォンやタブレットで商品を調べています。オンライ

ンとオフラインの世界の融合がさらに裏付けられた形です。この結果は世界の平均的な流れに

KPMG Advisory (China)編

厚谷 禎一 監訳

www.kpmg.com.cn

www.kpmg.or.jp/jp/china

中国 世界

米 国 英 国 西ヨーロッパ

インド アジア

中国戦略

11 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

沿っていますが、中国では、実店舗にいるときにスマートフォンで商品を検索する消費者が 2015

年よりも増えています(図 2.2参照)。

図 2.2: 実店舗来店中にスマートフォンで商品を調べる消費者

出所: KPMG の調査分析(2016 年)

中国では、デジタル世界のショッピングチャネルと実世界のショッピングチャネルが融合し

つつあります。従って、ブランド企業や小売企業が変化する消費者の嗜好に適応し、競争力を維

持するためには、オンライン(インターネット)とオフライン(実世界)を結ぶ有効な O2O戦略

を考え出す必要があります。オンライン要素とオフライン要素を併せ持つプラットフォームを

開発した小売企業は、最高の消費者体験を提供するという意味で有利な位置に立っています。イ

ンターネットショッピングのほうが便利だと考える消費者は、オンラインプラットフォームで

ショッピングの全てのプロセスを補完することができます。一方、実際に商品を購入する前に商

品を試す目的で実店舗を訪れる際に、情報源としてあるいは価格比較のためにオンラインプラ

ットフォームをよく利用する買い物客もいます。

購入

今回の調査では、中国の消費者が商品購入の意思決定をする際には、オンラインとオフライン

の両方の要素に影響されるという結果が出ています。したがって、総合的な O2O戦略を立てるこ

とは非常に重要です。オンラインショップで商品を見かけて購入した消費者は、2015年の 19%

から 42.6%に増加しました(図 3.1参照)。同様に、消費者の 31.1%は実店舗で目にしたこと

をきっかけに商品を購入しています。ちなみに 2015年は 24%でした。これらの結果から、ブラ

ンド企業はオンラインプラットフォームの開発に集中するだけでなく、しっかりした物理的存

在、つまり買い手が、商品に触れ、商品を体験し、商品の実感を持てる場所を確立しなければな

らないという点が浮き彫りにされました。2015 年のレポートでも強調しましたが、こうした傾

向を証明する現象として、多数のオンラインプラットフォームがショッピングモールにポップ

アップストアを立ち上げたり、実店舗と協力して買い手に商品を実体験させたりしています。

中国 アジア

中 国

米 国 北 米

世界 西ヨーロッパ

中国戦略

12 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

図 3.1: 中国国内にみるオンライン購入の主なきっかけ

出所: KPMGの調査分析(2016年)

今、小売市場では大規模な混乱が起きている。モバイル技術の進歩、ビッグデータ分析の力、人

口統計学的変動は、多くの企業がついて行けないような速さで市場と競争状況を再形成してい

る。ブランド企業は、オンラインプラットフォームの開発に集中するだけでなく、買い手が商品

に触れ、商品の感触を知り、商品を体験できるポップアップストアのようなしっかりした物理的

存在を確立しなければならないという点が、調査結果から浮き彫りにされた。小売企業が第一線

に立つためには、デジタル主導・顧客中心の完全一体型オムニビジネスへと会社を変革するため

の対策を講じる必要がある。

アンソン・ベイリー KPMG中国 コンシューマー・マーケット担当責任者(香港)

2016 年オンライン

2015 年オンライン

2016 年オフライン

2015 年オフライン

オンラインショップで

見かけたから

実店舗で見かけたから

友達が持っているのを

見たから

オンライン・レビューで

知ったから

友達との会話で

話題に上ったから

オンライン広告で

見たから

ソーシャルメディアの投

稿やブログで初めて見た

から

印刷物で初めて見たから

中国戦略

13 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

図 3.2: オンライン購入のきっかけトップ 3 の地域別比較

出所: KPMGの調査分析(2016年)

友達が持っているのを見たから

インド

中国

英国

世界

実店舗で見かけたから

中国

アジア

インド

英国

オンラインショップで見かけたから

中国

世界

インド

アジア 英 国

世界 米 国

米 国

アジア

米 国

中国戦略

14 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

次に商品の購入についてみることにしましょう。調査結果によれば、中国の消費者は、オンラ

インで買い物をする際に最も重視する要素として、価格、広告宣伝、利便性、優れた配送方法、

返品の選択肢、多彩な品揃えを挙げています。(図 3.3、3.4参照)また、購入前に商品について

の情報をできるだけ多く知りたいと考え、どこで購入するかを選択する際にはサービス、体験、

雰囲気を重視します。

図 3.3:中国の消費者が実店舗に行かずにオンラ

インで商品を購入する理由トップ 3

365日 24時間いつでも買える

オンライン・セール/値下げ

実店舗訪問の手間が省けて便利

出所: KPMGの調査分析(2016年)

バラエティ/品揃えが豊富

時間が節約できる

出所: KPMGの調査分析(2016年)

配送/集か品の選択肢が最も多い店またはサイトで購入

オンラインで購入するのは安いから

図 3.4:中国の消費者がオンラインで商品を購入する際

のキードライバー

小規模・国内ブランドよりグローバルな

大手ブランドを信頼

価格を比較できる

バラエティ/品揃えが豊富

時間が節約できる

実舗訪問の手間が省けて便利

透明で詳細な商品情報が提供されている商品しか買わない

購入場所選択の最重要検討事項はサー

ビス/体験/雰囲気

配送/集荷か返品の選択肢が最も多い店またはサイトで購入

オンラインで購入するのは安いから

小規模・国内ブランドよりグローバルな

大手ブランドを信頼

365日 24時間いつでも買える

オンライン・セール/値下げ

中国戦略

15 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

オンラインでの購入に最もよく使われるデバイスは相変わらずラップトップ PCまたはデスク

トップ PCですが、携帯電話の人気が高まっています。中国の消費者の 25%近くがオンラインシ

ョッピングに携帯電話を好んで使用しています。ちなみに、米国と全世界ではそれぞれ 5.2%と

8.5%にとどまります(図 3.5参照)。実際に中国の回答者の 90%以上が、過去 1年の間にスマ

ートフォンを使ってオンラインショッピングをしたことがあると答えています。

ラップトップPCまたは

デスクトップPC

西ヨーロッパ ―――――

北米 ―――――――――

アジア ――――――――

アメリカ ―――――――

世界 ―――――――――

中国 ―――――――――

西ヨーロッパ ――――――

北米 ――――――――――

アジア ―――――――――

アメリカ ――――――――

世界 ――――――――――

中国 ――――――――――

どちらでもよい

携帯電話

西ヨーロッパ ――――――

北米 ――――――――――

アジア ―――――――――

アメリカ ――――――――

世界 ――――――――――

中国 ――――――――――

図 3.5: オンラインでの購入に使用したいデバイス

出所: KPMGの調査分析(2016年)

ラップトップPCまたは

デスクトップPC

携帯電話

西ヨーロッパ ――――――

北米 ――――――――――

アジア ―――――――――

アメリカ ――――――――

世界 ――――――――――

中国 ――――――――――

中国戦略

16 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

この調査について

KPMG インターナショナルは、イントゥイット・リサーチに委託し、現在および将来のオン

ラインショッピング行動と嗜好について、全世界の消費者を対象としたオンライン調査を実

施しました。合計 1万 8,340件の有効な調査回答が集まりました。

回答者は 56カ国以上に居住しています。また、各回答者は過去 1年間にオンラインで少な

くとも 1回、消費者製品を購入しています。

全世界の調査回答のうち 2,560 件が中国です。このレポートでは、これらの回答者のみの

結果を分析しています。

この調査では、回答者のオンラインショッピングでの行動と意思決定プロセスを検証する

と同時に、将来のオンライン購入計画、好んで使う決済方法、購入先企業に対する姿勢に影

響を及ぼす要因も併せて検討しました。

厚谷 禎一 KPMG Advisory (China) Limited ディレクター

東京工業大学理学部卒業・同大学理工学部修士課程修了(情報科学専攻)

米国ペンシルバニア大学ウォートン校経営学修士(財務専攻)

これまで 20 年以上にわたり、日本、米国、カナダ、英国、韓国にて経営コンサル

ティング会社及び会計事務所に勤務、各国企業顧客に戦略・M&A・オペレーション

等の分野でのアドバイザリー・サービスを提供。

2003年より KPMG LLP(米国)ニューヨーク事務所に勤務、主に日本企業顧客に対

して事業デュー・ディリジェンスを中心とした M&A支援サービスを提供。

2008 年より現職、KPMG 中国の上海事務所にて同じく日本企業顧客に対して M&A

支援サービスを提供。

専門は市場評価、事業計画の精査、M&A 実施後の統合支援等を含む事業デュー・

ディリジェンスだが、日本企業顧客に対しては広く、財務・税務デュー・ディリジ

ェンス、企業価値評価、不正調査、リストラクチャリング支援等を含む、M&A支援

サービス全般のプロジェクト・マネジメント・サービスを提供する。

+86 10 8508 7111

[email protected]

法務

17 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

2016 年の重要立法を振り返る(下)

前回(2016 年 12 月号)に引き続き、今回は、インターネット、独占禁止法、知的財産法、不動

産登記に関連する重要立法を取り上げます。

1. インターネット関連

① 「中華人民共和国インターネット安全法」(全人代常務委員会 2016 年 11 月 7 日公布、2017

年 6 月 1 日施行)

中国の全国人民代表大会の常務委員会は、2016 年 11 月 7 日に、インターネット上の監督管理及

び個人情報保護等を規定した「インターネット安全法」(以下「ネット安全法」といいます)を公布

し、2017年 6月 1日から施行します。ネット安全法は、2014年 4月 15日に開催された中央国家安

全委員会において、習近平国家主席が確立した「総体国家安全観」(中国国外と中国国内の安定・維

持を重視すべきとする考え)の一環として、公布された法令です。

ネット安全法は、インターネット上での言論を厳しく取り締まることが狙いとみられ、ユーザの

インターネット実名登録の義務化、当局によるネット検閲の合法化等を規定しています。また、国

家の安全を脅かす重大事件が発生したと政府が判断した場合、政府がインターネット通信を制限で

きるとし、更に、ネット運営者に対し犯罪捜査のための技術協力を要求し、違法な情報を削除した

り通信を遮断したりすることなどを義務付けています。概要は以下のとおりです。

(1) 三大基本原則

ネット安全法において確立された三大基本原則は下表のとおりです。

基本原則 条文規定

1 ネット空間での国家主権原

立法目的:ネットセキュリティ、ネット空間での国家主権及び国家

安全等を守るため

適用範囲:中国国内におけるネットの構築、運営、メンテナンス及

び使用、並びにネットセキュリティの監督管理に適用

2

インターネットセキュリテ

ィ及び情報化の発展を重視

する原則

方針:ネットセキュリティと情報化の発展のいずれも重視する方針

を堅持

3 官民の共同管理原則

政府部門、ネット構築者、ネット運営者、ネットサービス提供者、

ネット業界の関連組織、学校及び社会公衆等は、各自の役割に応じ

てネットセキュリティを管理

西村あさひ法律事務所

弁護士 野村 高志

弁護士 早川 一平

弁護士 木下 清太

法務

18 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

(2) 監督部門

国家インターネット情報部門:ネット安全及び関連監督管理を統括

電信主管部門(工業及び信息化部)、公安部等:ネット安全のための監督管理

(3) 規定内容

① インターネット運営者1の主な規制

義務 国家のネットセキュリティ・レベル保護制度に従い、セキュリティを実施する義務2

(第 21条)

提供した製品やサービスに不備・欠陥等のリスクが存在する場合、ユーザ及び関連主

管部門に報告する義務(第 22条)

一部の運営者(ユーザにインターネット接続、固定電話、モバイル電話等のインター

ネット接続手続等を行う者)がユーザと契約を締結する場合又はサービスの提供を

確認する場合に、ユーザに真正な個人情報の提供を要求する義務(第 24条)

ネットセキュリティ事件の緊急対応案の制定義務(第 25条)

公安機関、国家安全機関が国家安全を守る場合、犯罪行為を捜査する場合の技術サポ

ート及び協力提供義務(第 28条)3

罰則 第 21条、第 25条違反の場合:主管部門が是正を命じ、警告する。是正しない場合又

はネット安全を害する場合、インターネット運営者に対し、1 万元以上 10 万元以下

の過料に処し、直接責任を負う主管者に対し、5千元以上 5万元以下の過料に処する。

第 22 条違反の場合:主管部門が是正を命じ、警告する。是正しない場合又はネット

安全を害する場合、インターネット運営者に対し、5 万元以上 50 万元以下の過料に

処し、直接責任を負う主管者に対し、1万元以上 10万元以下の過料に処する。

第 24条違反の場合:主管部門が是正を命じる。是正しない場合又は情状が重い場合、

5万元以上 50 万元以下の過料、関連業務の一時停止、休業整理、ホームページ閉鎖、

関連する業務の資格又は営業許可の取消等に処し、直接責任を負う主管者に対し、1

万元以上 10万元以下の過料に処する。

② 重要情報インフラ運営者4のネットセキュリティに関する主な規制

義務 専門セキュリティ管理機構及び担当者を設置、定期的に従業員を研修、重要システ

ム・データのバックアップを実施、及びネットセキュリティ事件の緊急対応案の制定

義務(第 34条)

インターネット製品・サービスを購入する場合、関連規定に従い、提供者との間に安

1 インターネット運営者とは、インターネットの所有者、管理者及びネットサービス提供者をいいます。 2 ⅰ内部セキュリティ管理制度及び操作規定の制定・セキュリティ責任者の選定、ⅱネットセキュリティへの危害を防止するた

めの技術的な措置、ⅲネット運行状況、ネットセキュリティ事件を監視測定・記録する技術的措置を講じ、関連 Network Log

を 6ヶ月以上保存、ⅳデータ分類、重要データをバックアップ等。 3 第 28条違反について、ネット安全法上の罰則は規定されていない。 4 重要情報インフラの範囲については、国務院が別途作成予定であるが、現時点において、公布されていない。

法務

19 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

全秘密保持契約を締結し、安全及び秘密保持の義務・責任を明確にする必要がある

(第 36条)

中国で収集された又は生じた個人情報及び重要データは、中国国内で保存する必要

があり、国外に提供する必要がある場合、関連規定に従い、セキュリティ評価を行う

必要がある(第 37条)

罰則 第 34条、第 36条違反の場合:主管部門が是正を命じ、警告する。是正しない場合又

はネット安全を害する場合、重要情報インフラ運営者に対し、10 万元以上 100 万元

以下の過料に処し、直接責任を負う主管者に対し、1 万元以上 10 万元以下の過料に

処する。

第 37 条違反の場合:主管部門が是正を命じ、警告し、違法所得を没収する。重要情

報インフラ運営者に対し、5 万元以上 50 万元以下の過料、関連業務の一時停止、休

業整理、ホームページ閉鎖、関連する業務の資格又は営業許可の取消等に処し、直接

責任を負う主管者に対し、1万元以上 10万元以下の過料に処する。

③ 個人情報5保護に関する主な規制

義務 使用目的の明示等

ネット運営者は、収集したユーザの情報を厳密に保護し、健全なユーザ情報保護シ

ステムを構築すべきであり、ユーザの個人情報を収集・使用する場合、合法・正

当・必要の原則に基づき、収集・使用に係る規定を公開し、個人情報の収集・使用

の目的、方法及び範囲を明示し、個人情報の主体の同意を取得すべきである。(第

41条)

個人情報の安全確保、救済措置

ネット運営者は、収集した個人情報を漏洩、改ざん、破損してはならず、被収集者

の同意を得ず、第三者に個人情報を提供してはならない。収集した個人情報のセキ

ュリティを確保し、個人情報の漏洩、破損、紛失等が発生する又は発生する恐れが

ある場合、直ちに救済措置を取るものとし、個人情報主体及び関連主管部門の規定

に基づき報告すべきである。(第 42条)

個人情報の削除、修正請求

個人は、ネット運営者が法令又は双方間の約定に違反して個人情報を収集・使用し

ていることを発見した場合、ネット運営者に対して個人情報の削除を求めることが

でき、また、ネット運営者が収集、保存した個人情報にミスがあることを発見した

場合、ネット運営者に対し、修正を求めることができる。(第 43条)

第三者への個人情報提供禁止規定の例外

5 個人情報とは、電子又はその他の方式により記録された単独で又はその他の情報と結合して自然人個人の身分を識別できる各

種情報であり、自然人の姓名、生年月日、身分証明書番号、個人生物識別情報、住所、電話番号等を含むがこの限りでないと定め

られています。

法務

20 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

処理を行い特定の個人を識別できず、かつ回復できないものについて、被収集者の

同意がなくても、第三者に個人情報を提供することができる。(第 42条)

罰則 他人の個人情報に関連する権利を侵害した場合、関連部門が是正を命じ、情状に基づき警

告し、違法所得を没収し、違法所得の 1 倍以上 10 倍以下の過料に単独又は併せて処し、

違法所得がない場合、100 万元以下の過料に処する。また、直接責任を負う主管人員とそ

の他の直接責任者については 1 万元以上 10 万元以下の過料に処し、情状が重い場合、関

連業務の一時停止、休業整理、ホームページ閉鎖、関連する業務の資格又は営業許可の取

消等を命じる。

2. 独占禁止法関連

2016年は、独占禁止に関連して、下表のガイドラインの原案に対するパブリックコメントの募集

手続が実施されました。

公表日

知的財産権の濫用に関する独占禁止ガイドライン 2015年 12 月 31日6

水平的カルテル事件のリニエンシー制度適用ガイドライン 2016年 2 月 3 日

独占禁止事件事業者承諾ガイドライン 2016年 2 月 3 日

知的財産権の濫用に関する独占禁止法執行ガイドライン(第 7稿) 2016年 2 月 4 日

自動車産業に関する独占禁止ガイドライン 2016年 3 月 23 日

カルテルの適用除外に係る一般的な条件及び手続に関するガイドライン 2016年 5 月 12 日

独占行為の違法所得の認定及び罰金の確定に関するガイドライン 2016年 6 月 17 日

これらのガイドラインは、現時点で未施行ですが、パブリックコメントの募集手続において公開

された原案は、当局の考えを知る上で重要な資料であると思われます。

特に、2015 年 12 月 31 日に公表された「知的財産権の濫用に関する独占禁止ガイドライン」(以

下「本知財ガイドライン」といいます)の原案は、2015年 8月 1日に施行された「知的財産権の濫

用による競争の排除又は制限行為の禁止に関する規定」(以下「本知財規定」といいます)を補充し

て、独占禁止法上、問題になり得る各行為類型の違法判断の考慮要素を明記する等、実務上、留意

すべき条項が多く規定されています。

また、2016 年 6 月 17 日に公表された「独占行為の違法所得の認定及び罰金の確定に関するガイ

ドライン」の原案は、現行法上、明確ではなかった、カルテル等の独占合意に係る罰金の算定方法

を詳細に規定する等、実務上、有用な情報が多く含まれています。

① 「知的財産権の濫用に関する独占禁止ガイドライン」(国家発展改革委員会、2015 年 12 月 31

日公表)

独占禁止の管理監督部門である国家発展改革委員会が公表した本知財ガイドラインの原案は、知

6 パブリックコメントの募集手続は、2016 年 1月 1日に開始されました。

法務

21 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

的財産分野の独占禁止に関する基本的な考え方、知的財産権に関する競争排除・制限協定、支配的

市場地位の濫用行為に関して、本知財規定を補充しており、特に、技術市場におけるシェア値の算

定方法を規定した点、実務上多くみられる独占的グラントバック/アサインバックについて違法判

断の考慮要素を規定した点、及び競争制限・排除協定のセーフハーバーを本知財規定よりも引き下

げた点が注目されます。

(1) 技術市場におけるシェア値の算定方法

本知財ガイドライン一(三)1.は、技術市場におけるシェア値は、事例に応じて下記の数値を考

慮して算出する旨を規定しています。

関連する知的財産権の使用許諾料による収入の関連市場における使用許諾料総収入に

占める割合

関連する知的財産権を利用して提供した商品の川下市場におけるシェアの割合

代替性を有する全ての知的財産権における、関連する知的財産権の数量の割合

(2) 独占的グラントバック/アサインバックの違法判断の考慮要素

本知財規定二(二)2.は、許諾者が被許諾者に対し、被許諾者が開発した改良技術について、独

占的ライセンスをする義務を課すことは、許諾者が改善、又は新たな成果を得ることを抑制し、被

許諾者のイノベーションの原動力を低下させ、競争を排除、制限する恐れがあるとし、このような

独占的グランドバックが、競争を排除、制限するかを判断するために、下記の要素を考慮しなけれ

ばならないと規定しています。

許諾者が独占的グラントバックについて実質的な対価を払っているか

許諾者と被許諾者がクロスライセンスにおいて相互に独占的グラントバックを認めて

いるか

独占的グラントバックが知的財産権に係る改善、又は新たな成果が単一の事業者に集

中することで、その者が関連市場に対する支配を獲得又は強化していないか

独占的グラントバックが改善に対する被許諾者の積極性を損なっていないか

また、許諾者が被許諾者に対し、被許諾者が開発した改良技術について、許諾者又は許諾者が指

定する事業者にその権利を帰属させる義務を課す場合も、このようなアサインバックが競争を排除、

制限するかを判断するため、上記の要素を同様に考慮しなければならないと規定しています。

(3) 競争制限・排除協定のセーフハーバー

本知財規定二(三)は、協定を締結した事業者のシェア値に応じて以下のセーフハーバーを規定

しています7。

7 なお、本知財規定第 5条は、知的財産権に関する競争排除・制限協定のセーフハーバーとして、競争事業者間の場合は合算で

20%以下、非競争事業者間の場合は、それぞれ 30%以下と規定しており、仮に本知財ガイドラインが本文記載のセーフハーバーを

最終的に採用する場合、本知財規定が定めるセーフハーバーとの関係も問題となります。この点、本知財ガイドラインの最終版

において規定される可能性もありますが、現時点では明確ではありません。

法務

22 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

協定の当事者が競争関係を有する場合

当事者の関連市場におけるシェアが合計 15%以下の場合、独占禁止法第 15 条に

よる独占合意禁止の適用除外を推定する。

ただし、協定が、独占禁止法 13 条で規定された価格・数量、市場分割カルテル、

新技術・新設備の購入及び新技術・新製品の開発制限、共同ボイコットに該当す

る場合、その他の価格制限に関するものである場合は、この推定規定は適用され

ない。

協定の当事者が競争関係を有しない場合

事業者が、取り決めが及ぶ関連市場上の市場シェアが、いずれも 25%以下の場合、

独占禁止法第 15 条の独占合意禁止の適用除外を推定する。

ただし、独占禁止法 14 条で明確に列挙された再販売価格の拘束に該当する場合、

その他の価格制限に関するものである場合は、この推定規定は適用されない。

② 「独占行為の違法所得の認定及び罰金の確定に関する指針」(国家発展改革委員会、2016 年 6

月 17 日公表)

中国の独占禁止法は、カルテル等の独占合意に対する罰金の額は、前年度売上高の「1%以上 10%

以下」と規定しています。もっとも、「1%以上 10%以下」の算定率は、どのような事情を考慮して

決定されるかは、現行法上、明確ではありません。本罰則等ガイドラインはこの点に関して、以下

を規定しています。

(1) 基準値

本罰則等ガイドライン第 21 条は、独占合意の行為類型ごとに罰金の算定率の基準値を規定して

おり、価格・数量、市場分割カルテルについては、一般的に競争に与える損害が大きいこと等を考

慮して、各行為類型の中で最も高い数値である 3%が基準値として設定されています。

(2) 違法行為の継続期間による調整

本罰則等ガイドライン第 23 条は、違法行為の継続期間に応じて罰金の算定率が増加することを

規定しており、具体的には、1年を基準値とし、1年延長するごとに、罰金の算定率は 1%増加(端

数については、6ヶ月未満の延長は 0.5%増加、6ヶ月超 1年未満の延長は 1%増加)すると規定し

ています。

法務

23 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

(3) 情状による調整

本罰則等ガイドライン第 25条乃至第 27条は、事業者ごとの情状による罰金の算定率の加減を規

定しています。具体的な加減事由・率は下表のとおりです。

加重事由 加重率

独占行為において主要な働きをした場合

他の事業者を脅迫、欺罔して独占行為を行わせ、又は他の事業者の独占行為の

停止を妨害した場合

多数の独占行為を実施した場合

行政機関等の組織が行政権力を濫用して競争を制限・排除することを主体的に

促進した場合

1%

当局が停止命令を出した後も独占行為を継続して実施した場合

その他の加重すべき事情がある場合

0.5%

減軽事由 減軽率

他の事業者に脅迫されて独占行為を行った場合

行政機関等に強制、脅迫されて独占行為を行った場合

行政機関による違法行為の調査処分に協力した場合

主体的に違法行為の弊害を除去した場合

1%

主体的に違法行為の弊害を減少させた場合

主体的に他の事業者の当該案件以外の独占禁止法違反に関する証拠を提供した

場合

その他の減軽すべき事情がある場合

0.5%

(4) 市場競争と消費者の利益に与えた損害の程度等による最終調整

本罰則等ガイドライン第 28 条は、独占行為の違法の程度が重大といえる場合は、罰金の算定率

は、最低でも 6%を下回らないように調整し、他方、独占行為の違法の程度が軽微といえる場合は、

3%を上回らないように調整すると規定しています。独占行為の違法の程度は、主に競争と消費者

の利益に与えた損害の程度を考慮して判断するとされ、具体的な考慮事情として、事業者の市場占

有率、当該市場への新規参入の難易度、当該市場の集中率・競争の程度、違法行為の地理的範囲、

関連商品の価格変動の状況等が挙げられています。

3. 知的財産法関連

① 「特許権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈(二)」(最高

人民法院法釈[2016]1 号、2016 年 3 月 21 日公布、2016 年 4 月 1 日施行)

最高人民法院は、2016年 4月 1日に「特許権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若

干問題に関する解釈(二)」(以下「本司法解釈」といいます)を施行しました8。本司法解釈は、「特

許権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」(最高人民法院法釈

8 最高人民法院が公布する司法解釈は法的拘束力を有し、裁判実務における規範となります。

法務

24 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

[2009]21 号、2010 年 1 月 1 日施行)が施行された後の、近年の特許権侵害紛争に係る裁判実務を

踏まえ、権利範囲の解釈規定、間接侵害に関する規定等を新設しています。従前から中国の特許権

侵害案件における問題として指摘されていた損害額の立証難・低額化の問題との関係では、以下の

規定が特に注目されます。

本司法解釈第 27 条は以下の旨の規定を新設し、侵害者に対する資料等の提供命令制度を導入す

るとともに、命令に従わない場合、侵害者が得た利益額により損害額を認定することを認めていま

す。

侵害行為に起因して被った実質的な損害の確定が困難である場合、人民法院は、権利

者に対し、侵害者が侵害行為により取得した利益について立証するよう求めなければ

ならない。

権利者が、侵害者が取得した利益の初歩的な証拠を提供したものの、侵害行為に関す

る帳簿、資料を主として侵害者が把握している場合、人民法院は、侵害者に対し、当

該帳簿、資料の提供を命じることができる。

侵害者が正当な理由なくして帳簿、資料の提供を拒否し、又は虚偽の帳簿・資料を提

供した場合、人民法院は、権利者の主張と提供した証拠に基づき、侵害行為によって

取得した利益を認定し、当該利益額により権利者の損害額を認定することができる。

4. 不動産登記関連

(1) 不動産登記機関による登記実務上の運用基準の明確化

① 「『不動産登記操作規範(試行)』の発行に関する国土資源部の通知」(国土資規[2016]6 号、

2016 年 5 月 30 日公布、同日施行)

2015年 3月に施行された「不動産登記暫行条例」(国務院令第 656号)及び 2016年 1月に施行さ

れた「不動産登記暫行実施細則」(国土資源部令第 63号)により中国における不動産統一登記制度

が構築されています。2016 年 5 月 30 日に、当該不動産統一登記制度における登記プロセスの明確

化、透明化を目的として、国土資源部により「不動産登記操作規範(試行)」が公布され、同日施行

されました。同規範は、登記機構、登記簿、登記情報のプラットホーム等の不動産統一登記制度に

おける、具体的な取り扱いについて規定しています。その主たる特徴は、下表のとおりです。

法務

25 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

① 法令に規定されていない手続・資料を登記審査資料とすることの禁止

登記申請時において、不動産登記機関が、物権法、不動産登記暫行条例及び不動産登記暫行実施細則

等の法令に規定されていない手続を実施すること又は、資料の提出を求めることを禁止。

② 不動産登記機関の自由裁量の制限

不動産登記機関が登記申請に対する審査を行う際の登記完了までの標準処理期間等を規定し、明確

化することにより、不動産登記機関の自由裁量を制限。

③ 不動産登記情報の保護

不動産登記情報を閲覧できる者の範囲を限定し9、不動産情報の閲覧申請を行う際の手続を規定。

不動産登記機関の不動産登記情報に対する保護義務を明確化。

本年も中国では様々な重要立法がなされることが予想されます。読者の皆様とともにフォローし

て参りたいと思います。

9 不動産権利者、利害関係を有する者並びに人民法院、人民検察院、国家安全機関及び監査機関等の国家機関に限定。

法務

26 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

野村 高志 パートナー 弁護士 西村あさひ法律事務所 上海事務所代表

早稲田大学法学部卒業。1998年弁護士登録。2001年より西村総合法律事務所に勤務。2004

年より北京の対外経済貿易大学に留学。2005年よりフレッシュフィールズ法律事務所(上

海)に勤務。4年半の中国滞在を経て 2010 年に現事務所復帰、2014年より現職。

専門は中国内外の M&A、契約交渉、知的財産権、訴訟・紛争、独占禁止法等。ネイティブ

レベルの中国語で、多国籍クロスボーダー型案件を多数手掛ける。

2012年~2014 年 東京理科大学大学院客員教授(中国知財戦略担当)。

主要著作に「中国での M&Aをいかに成功させるか」(M&A Review 2011年 1月)、「模倣対策

マニュアル(中国編)」(JETRO 2012 年 3 月)、「中国現地法人の再編・撤退に関する最新実

務」(「ジュリスト」(有斐閣)2016年 6月号(No.1494))等多数。

Tel:+86-21-6178-3748

Email:[email protected]

早川 一平 西村あさひ法律事務所 アソシエイト 弁護士

2008年慶應義塾大学法学部卒業。2010年慶應義塾大学法科大学院修了。2011年第二東京

弁護士会登録、西村あさひ法律事務所に勤務。2013 年西村あさひ法律事務所の北京オフ

ィスにて 1年間勤務。

専門は日本国内の会社法務全般、中国内外のM&A、中国現地法人の会社法務等。

Tel:+81-3-6250-6200

Email:[email protected]

木下 清太 西村あさひ法律事務所 アソシエイト 弁護士

2010年慶應義塾大学法学部卒業。2012年慶應義塾大学法科大学院修了。2013年第二東京

弁護士会登録。西村あさひ法律事務所に勤務。

専門は日本国内の会社法務全般、中国内外の M&A、独占禁止法等。

Tel:+81-3-6250-6200

Email:[email protected]

税務会計

27 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

増値税の会計処理(その 2)

前月号に引き続き、増値税の会計処理を紹介します。

1. 輸出税金還付の会計処理

納税者が貨物を輸出して受け取るべき輸出税金還付金を取り扱う科目として「未収輸出還付

税金」科目が新設されました。「未収輸出還付税金」科目の借方は輸出貨物を販売して規定に従

って税務機関に申告して還付されるべき増値税と消費税等が表示されます。この科目の貸方は

実際に受け取った還付増値税と消費税等を表示します。年度末残高はまだ受け取っていない還

付税額を表示します。

増値税の輸出免税(還付)政策には、還付免税政策と免税政策があり、還付免税政策には免税

控除還付方法と免税還付方法の 2 つの方法があります。免税控除還付方法は、輸出増値税を免

除し、これに対応する仕入税額を税額控除するかまたは控除できない場合に税額を還付する方

法です。免税還付方法は輸出増値税を免除し、これに対応する仕入税額を還付する方法です。免

税政策は、輸出増値税を免税しますが、これに対応する仕入税額はすべて原価(コスト)に振り

替えます。免税控除還付方法と免税還付方法においても税金還付率等により仕入税額の一部が

原価(コスト)に振り替えられます。

(1) 免税控除還付方法を実施しない場合

免税控除還付方法を実施しない一般納税者が貨物を輸出して規定に従って税金還付する場合

には、次の会計仕訳を行います。

① 税金還付を申告した時

(借方) 未収輸出還付税金 (貸方) 未納税金費用-未納増値税(輸出税金還付)

② 輸出還付税金を受け取った時

(借方) 銀行預金 (貸方) 未収輸出還付税金

③ 還付税額が購入時の増値税専用発票の増値税額より低い場合の差額

(借方) 主要営業原価 (貸方) 未納税金費用-未納増値税(仕入税額振替)

(2) 免税控除還付方法を実施する場合

① 還付税額が購入時の増値税専用発票の増値税額より低い場合の差額

免税控除還付方法を実施する一般納税者が貨物を輸出して、貨物の輸出販売後に製品販売原

近藤公認会計士事務所

公認会計士 近藤 義雄

[email protected]

http://kondo.la.coocan.jp/

税務会計

28 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

価に振り替えた時に、規定に従って計算した還付税額が購入時に取得した増値税専用発票の増

値税額より低い場合の差額の会計仕訳

(借方) 主要営業原価 (貸方) 未納税金費用-未納増値税(仕入税額振替)

② 国内販売製品の納付税額から控除する輸出貨物の仕入税額

規定に従って計算した当期輸出貨物の仕入税額を国内販売製品の納付税額から控除する場合

の会計仕訳

(借方) 未納税金費用-未納増値税(輸出控除国内販売製品納付税額)

(貸方) 未納税金費用-未納増値税(輸出税金還付)

③ 還付税金を受け取った時の会計仕訳

規定の期限内に、国内販売製品の納付税額が控除する輸出貨物の仕入税額に不足する場合に、

不足部分が関連税法規定に従って税金還付が認められて還付税金を受け取った時の会計仕訳

(借方) 銀行預金 (貸方) 未納税金費用-未納増値税(輸出税金還付)

2. サービスの差額課税の会計処理

2016 年 5 月 1 日に実施された営改増の全面改正では、不動産取引に 5%の徴収率を適用する

簡易税額計算方法を認めただけではなく、営業税から増値税に編入された特定のサービスにつ

いて営業税で行われていた差額課税方式が導入されました。

例えば、観光娯楽サービスを提供する増値税の一般納税者は、観光娯楽サービスの購入者から

受け取り、かつホテル、レストラン、運送会社、下請観光会社等に支払った宿泊費、飲食費、交

通費、ビザ費用、観光入場料等の費用を控除してその差額に 6%の観光娯楽サービスの税率を適

用して税額を計算することができます。

全額課税方式と差額課税方式による納付税額の計算

一般税額計算方法の全額課税方式=販売金額×適用税率 6%-仕入税額控除

一般税額計算方法の差額課税方式=(販売金額-控除費用) ×適用税率 6%

このような差額課税方式を適用した場合には、サービスの購入者には差額部分の増値税専用

発票が発行されることになります。サービス代金の支払者が仕入税額控除できるのは差額部分

に限定されるからです。

このように増値税専用発票の発行についても、販売金額の全額を対象とする専用発票と販売

金額から費用を控除した差額についての増値税専用発票の発行が行われるようになりました。

税務会計

29 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

差額課税方式が認められている課税行為には、観光娯楽サービスの他に、仲介代理サービス、

ファイナンスリースとファイナンスリース性セールスアンドリースバック、航空運輸サービス、

建設サービス、労務派遣サービス、不動産開発企業の土地代金控除、一般納税者の運送ステーシ

ョンサービス等があります。

差額課税方式には、一般税額計算方法における差額課税と簡易税額計算方法における差額課

税があり、新規定では、このような差額課税の会計処理も規定しています。例えば、企業が差額

課税方式の認められるサービスを販売してこれに関連する原価費用が発生した場合には、次の

ような会計仕訳が行われます。

① 関連原価費用の発生時

(借方) 主要営業原価 (貸方) 買掛金

② サービス販売の納税義務が発生した時

(借方) 売掛金 (貸方) 主要営業収入

(貸方) 未納税金費用-未納増値税(売上税額)

③ 関連原価費用の増値税専用発票を取得した時

(借方) 未納税金費用-未納増値税(売上税額控除) (貸方) 主要営業原価

上記の会計仕訳は、関連原価費用が発生した時にはまだ下請代金を支払っておらず増値税専

用発票等を取得していないため税込金額で主要営業原価と買掛金を計上したことを示していま

す。サービスを販売した時には売上高(主要営業収入)と売上税額を計上しています。

次に下請代金を支払って増値税専用発票等を取得した時に主要営業原価の仕入税額を未納増

値税(売上税額控除)として計上します。未納増値税(売上税額)と未納増値税(売上税額控除)

との差額が上述した差額課税方式による未納増値税額となります。

3. 簡易税額計算

「簡易税額計算」明細科目は、一般納税者が簡易税額計算方法を採用して発生させた増値税の

計上、控除、予納、納付等の取引を会計処理します。

(1) 販売取引

① 販売取引

企業が、貨物、加工修理整備役務、サービス、無形資産または不動産を販売し、簡易税額計算

方法を採用した場合には、例えば次のような会計仕訳を行います。

税務会計

30 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

(借方) 売掛金 (貸方) 主要営業収入

(貸方) 未納税金費用-簡易税額計算

② 企業会計上の収入等の認識時点が納税義務の発生時点より早い場合の会計仕訳

(借方) 売掛金 (貸方) 主要営業収入

(貸方) 未納税金費用-振替待ち売上税額

③ 実際に増値税の納税義務が発生した時の会計仕訳

(借方) 未納税金費用-振替待ち売上税額 (貸方) 未納税金費用-簡易税額計算

④ 納税義務の発生時点が企業会計上の収入等の認識時点より早い場合の会計仕訳

(借方) 売掛金 (貸方) 未納税金費用-簡易税額計算

⑤ 企業会計上の収入等を認識すべき時の会計仕訳

(借方) 売掛金 (貸方) 主要営業収入

⑥ みなし販売の会計処理

企業に増値税のみなし販売行為が生じた場合、例えば、従業員に物品を支給した時には増値税

の売上税額について次のような会計仕訳を行います。

(借方) 未払従業員給付 (貸方) 未納税金費用-簡易税額計算

(2) 購入取引

一般納税者が、貨物、加工修理整備役務、サービス、無形資産または不動産を購入し、簡易税

額計算方法を用いた課税項目の仕入税額が売上税額から控除できない場合の会計処理は増値税

専用発票を取得した時に、例えば次のような会計仕訳を行います。

(借方) 主要営業原価 (貸方) 銀行預金

(3) 差額課税方式

① 原価費用の発生時

現行増値税制度の規定に従って企業に関係原価費用からの控除が認められる販売額が発生し

た場合には、原価費用が発生した時に次のような会計仕訳を行います。

(借方) 主要営業原価 (貸方) 買掛金

税務会計

31 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

② 増値税専用発票等を取得して販売の納税義務が発生した時

増値税専用発票等を取得して増値税の納税義務が発生した時に次のような会計仕訳を行いま

す。

(借方) 未納税金費用-簡易税額計算 (貸方) 主要営業原価

販売取引で計上した「未納税金費用-簡易税額計算」の貸方金額と差額課税方式で計上した

「未納税金費用-簡易税額計算」の借方金額との差額が未納税金費用の納付税額になります。

4. 増値税の月末処理と納付と減免税

(1) 月末処理

① 未納増値税から未払増値税への振替

月末に、企業は当月に納付すべき未納増値税を未払増値税科目に振替えます。

(借方) 未納税金費用-未納増値税(未払増値税振替)

(貸方) 未納税金費用-未払増値税

② 過大納付増値税から未払増値税への振替

月末に、企業は当月に過大納付した増値税と未払増値税を相殺します。

(借方) 未納税金費用-未払増値税

(貸方) 未納税金費用-未納増値税(過大納付増値税振替)

(2) 増値税の納付処理と減免税処理

① 未納増値税の当月納付

企業が当月に納付すべき増値税を納付した場合には、次の会計仕訳を行います。

(借方) 未納税金費用-未払増値税(納付済税金) (貸方) 銀行預金

② 前月以前の未払増値税の納付

企業が前月以前の未払増値税を納付した場合には、次の会計仕訳を行います。

(借方) 未納税金費用-未払増値税 (貸方) 銀行預金

③ 増値税の予納

企業が増値税を予納した時は、次の会計仕訳を行います。

税務会計

32 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

(借方) 未納税金費用-予納増値税 (貸方) 銀行預金

月末に次の会計仕訳を行います。

(借方) 未納税金費用-未払増値税 (貸方) 未納税金費用-予納増値税

(3) 減免税

企業が当期に減免税を処理する時は、次の会計仕訳を行います。

(借方) 未納税金費用-未納増値税(減免税額) (貸方) 損益科目

5. 財務諸表項目の表示

(1) その他の流動資産またはその他の非流動資産

「未納税金費用」科目の「未納増値税」、「未払増値税」、「控除待ち仕入税額」、「認証待ち仕入

税額」、「増値税控除留保税額」等の明細科目の期末借方残高は、状況に基づいて、貸借対照表の

中の「その他の流動資産」または「その他の非流動資産」項目に表示します。

(2) その他の流動負債またはその他の非流動負債

「未納税金費用-振替待ち売上税額」等の科目の期末貸方残高は状況に基づいて、貸借対照表

の中の「その他の流動負債」または「その他の非流動負債」項目に表示します。

(3) 未納税金費用

「未納税金費用」の「未納増値税」、「簡易税額計算」、「金融商品譲渡未納増値税」、「代理控除

代理納付増値税」等の科目の期末貸方残高は貸借対照表の中の「未納税金費用」項目に表示しま

す。

近藤 義雄 近藤公認会計士事務所 所長 公認会計士

早稲田大学大学院商学研究科の修士課程を卒業後、監査法人に勤務して公認会計士として登録、

上場会社等の監査業務に 23 年ほど従事した。1986年から 2年ほど北京の国際会計事務所に日本

人初の駐在員として勤務し、日系企業に幅広いコンサルティング業務を提供。帰国後に「中国投

資の実務」(東洋経済新報社 1990年)を出版し、現在まで中国の投資、会計、税務分野の専門書

を 25冊ほど出版。2001年に近藤公認会計士事務所を開設して中国専門のコンサルティング業務

を提供している。

税務会計

33 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

アジアにおける税制 チャイナ・プラス・ワン 香港 -その日本及び中国本土との比較–

税制とは、各国・地域によって、財政収入確保、効率的な行政執行、課税の公平性、社会政策

等の観点から、多くの点で異なっています。しかしながら、これと同時に、国家間において、そ

の制度設計について一定の共通性が見られる場合が多いともいえます。

従って、一国だけでは見えなかった各国独自の税制が、共通性または相違性をみることにより

初めて理解できるとともに、近年 BEPSプロジェクト等により世界的に統一されつつある税制に

対する各国ごとの対応についても横断的に把握ができるものとなります。

また、多国間を跨ることが日常化した現代の事業環境においては、横断的な税制への対応が必

要とされることが多く、そのための一つの有効かつ効率的な視点として注意を払っていく必要

があると考えられます。

今回は、香港における個人所得税及び社会保険制度について、日本及び中国本土の制度との比

較を含めて、みてみたいと思います。

香港税制の概要

香港税務局(Internal Revenue Department)は、そのビジョンとして香港の繁栄と安定の促

進を担う重要な役割を果たすことのできる卓越した税務行政を目指すべきものと示しています。

また、香港における租税制度は、内国歳入法(Inland Revenue Ordinance)に基づく所得に対

する直接税目と、印紙税など個別に定められた税法に基づく間接税目とに区分され、直接税とし

ては、事業所得税、給与所得税、不動産所得税があり、間接税としては印紙税が存在するほか、

管轄の異なる関税、空港利用税等が存在しています。

また、毎年 2 月または 3 月に次年度予算案を財政長官が発表し、この中に税制改正法案が含

まれており、予算案は立法行議会(Legislative council)の承認を要するものの、例年予算案

のまま承認されています。

香港税収の概要

2016年度おける香港の税収は約 3,000億香港ドル(約 5兆円)であり、日本の約 18分の 1 程

度といえます。約 720万人(日本の 15分の 1)の人口を抱える都市国家(面積では日本の約 350

分の 1)としては、日本と比較しても遜色のない税収を有しているものといえます。

その基礎は事業所得税、給与所得税、不動産所得税等の直接税と印紙税等の間接税からなり、

歳入においては、税収以外にも、政府による投資事業収入等があり、バランスの取れた歳入構造

を確立しているものといえます。

MAZARS Mochizuki

パートナー 公認会計士 望月一央

http://www.mazars.com

税務会計

34 MIZUHO CHINA MONTHLY

2017年2月号

(出典:香港 Inland Revenue Department annual reportより作成)

香港においては、税収以外にも投資及び事業収入による歳入(2016年度約 1,500億香港ドル)

があり、2016年度歳入総額は約 3,500億香港ドルとなっています。

香港における個人にかかわる税制と日本及び中国における税制との比較

上述のように、香港においては極めて簡素化された税制が採用されており、所得の発生

源泉により税制が区分されています。これは、日本、中国並びに多くの国において採用さ

れている、納税義務者により法人税、個人所得税等の税制が区分される制度とは考え方が

異なっています。

従って、比較的珍しい税制といえるものの、見方を変えて根底にある相違さえ理解すれ

ば、簡素な税目が採用されていることと相まって、非常に分かりやすい税制となっている

ともいえます。

香港においては、原則として、その所得種類に応じて、事業所得税、給与所得税、不動

産所得税をそれぞれ支払うものとなっています。但し、実務的には、給与所得税のみの課

税を受けることが大多数であり、また、複数の所得を有する場合には、総合課税方式を選

択することが可能で、ここでは、全ての所得を合算して申告することが認められていま

す。

(1)納税義務者となる個人

香港における事務所等、または雇用に基づき収入を得る者、または香港に 60日以上滞在

することによる役務提供に基づき収入を得る者については、給与所得税の納税義務者とな

ります。また、香港においては、商品売買や就業、その他事業に従事する、個人事業主、

法人、共同経営者、受託者、団体等は、それら事業によって生じた香港を源泉とする所得

を得る者については事業所得税、香港における不動産からの賃料収入を得る者については

不動産所得税の納税義務者となります。

Profits tax

48%

Salaries tax

20%

Stamp duty

21%

Betting duty

7%

Personal

assessment

2%

Property tax

1%

Business

registration fees

1%

2016

税務会計

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(2)居住者及び非居住者

香港においては、地域外所得免除方式が採用されています。

居住者・非居住者の区分は、居住者に対しては全世界所得、非居住者に対しては国内源泉所得

のみという区分を目的としたものであり、地域外所得免除方式を採用する香港においては、そも

そも全世界所得課税を想定しておらず、その区分は基本的には意義を有さないものといえます。

(3)課税年度

香港における課税年度は 4月 1日から翌年の 3月 31日までとなっており、複数の所得税を納

税する者は申告を要しますが、給与所得税のみが課税される者については賦課方式が採用され

ており、申告書が送付されてくるものとなっています。

また、源泉徴収義務は基本的になく、給与所得税、事業所得税、不動産所得税においては全て

予納制度が採用されており、予納税評価額は、一般的には前年度の評価額に基づく見積りによる

ものとされています。

税額は二分割で納付され、最初に前年度の税額の 75%相当額を、通常、当該課税年度の最終

四半期に支払い、残りの 25%を 3 ヶ月後に支払うものとされており、実際の所得が確定後に、

最終的な税評価額が発行され、予納額について差引かれるものとなっています。また、最終的な

税評価額は次年度の予納税評価額とともに発行されることから、最終税額の支払いは翌年の事

前評価税額の最初の支払いと同時期となります。

(4)給与所得税

① 課税対象

給与所得税は、香港におけるあらゆる雇用ないし年金等により生じた所得に関して、全ての個

人に対して課税されます。これらの給与所得としては、給与、有給休暇中の給与及び手当、歩合、

賞与、一時金ないし臨時収入、手当、ストックオプション収入等が含まれます。また、役員報酬

についても、給与所得税の課税対象に含まれます。

香港における雇用から生じたあらゆる所得は、その労務の一部が香港外で提供されたもので

あったとしても、基本的に給与所得税の課税対象であると見做されます。

香港以外での雇用関係から生じた所得については、香港において提供された労務から生じた

所得の範囲内でのみ課税されます。香港内、もしくは香港外のどちらで雇用が為されているかに

ついては、雇用にあたっての交渉及び契約締結が為された場所、その発効地、雇用者の居住地、

給与の支払地をはじめとする種々の要因によって決定されます。

② 税率及び控除額

給与所得税は、費用及び人的控除項目を控除した後の純課税所得について、2~17%の累進課

税制度により計算がなされます。しかし、給与所得税は、納税者の費用を控除した後の純課税所

得(但し、人的控除実施前)の標準税率割合(現行 15%)を超える部分については課税されま

せん。

控除額については、所得を得るにあたり必要かつ完全に、そのためにのみ支出された費用につ

いてだけ控除が認められることとなっており、さらに、一定の控除限度額が設けられています。

税務会計

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税率が低く抑えられており、簡素な税制が志向されていることもあり、外国籍駐在員にかかわ

る特別の優遇税制は基本的に設けられていません。

(5)利子及び配当並びにキャピタルゲイン

金融機関を除くあらゆる者は、香港の認可を受けた機関にて保有する預金から生じる利子所

得の受け取りにあたって、所得税の支払が免除されます。尚、その際にどの通貨で預金が為され

ているかは関係がありません。しかし、貸付金の返還を保証するための預入金に関して生じた利

息費用が、課税上控除出来る費用と見做される場合、対応する利息収入についてはこのような免

除が適用できないこととなっています。

また、配当及びキャピタルゲインについては、その受領者が香港居住者であるか否かに関わら

ず、課税を受けることはありません。

(6)香港における社会保険

香港の社会保険については、自己責任を原則とした効率的な制度が採用されており、従って、

香港外で年金制度に加入している者や公務員など既に法定の年金制度に加入している者は基本

的に香港の法定社会保険である強制積立退職金制度(MPF)の対象外とされています。

ここでの対象者は、香港企業の、18歳から 65歳までの被雇用者で、60日以上雇用される者で

あり、積立額は月額給与の最低 10%で、企業が 5%、個人が 5%の負担となっています。但し月

額給与が 2万香港ドルを超える場合、企業・労働者それぞれの拠出限度額は 1千香港ドルで、そ

れを超える部分は双方とも任意となります。月額給与が 5 千香港ドル未満の場合は、従業員の

拠出義務が無いものとされています。

香港個人所得税制の特徴

香港における個人にかかわる税制は、日本及び中国本土等との比較において、特殊な税制であ

るといえます。その多くは、香港においては、国外所得免除方式による簡素かつ効率的な税制が

施行されていることに起因するものといえます。

具体的には、例えば、香港における雇用契約に基づき香港企業から支給される給与について

は、原則として、全額課税所得として課税されるものといえ、香港外における契約に基づき香港

外の企業から支給される給与については、同様に、課税の範囲外とされることになります。

このことは例えば日本と中国本土において職責を有する個人に当てはめた場合には、日本が

居住地国であることを前提とした場合、日本において全世界所得課税がなされ、中国においては

中国源泉所得(すなわち勤務期間に基づく全世界給与所得)に対応する税額が発生し、これを居

住地国である日本において外国税額控除するという方式が採用されることになります。

これに対して、日本と香港において職責を有する個人の場合で、同様に、日本を居住地国とす

る場合には、日本側では同様の処理となりますが、香港においては、基本的に香港企業側から支

給を受けた給与についてのみの課税が実施されることになります。従って、実務的には香港にお

いて給与を受け取っていない場合には、香港において課税がなされないということも考えられ

ます。

さらに、仮に居住国・地域を香港とした場合には、香港及び日本の双方で実務的に課税が発生

しないというケースも考えられることになります。

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以上のように、基礎となる考え方が異なる場合には、その適用を十分に理解していなければ、

同様の処理を行おうとしても結果が全く異なってしまうことがあります。

従って、日本、中国本土、香港というような形で課税制度の異なる国・地域を跨いだ対応が必要

となる場合には、事前に詳細な検討及び準備を行っておくことが重要といえます。

望月一央 MAZARS パートナー 日本公認会計士

MAZARS は世界 77 カ国に 17,000 名のスタッフ(2016 年 1 月 1 日時点)を有する、監査、会計、

税務およびアドバイザリーサービスに特化したワンファーム型国際会計事務所です。今般、

MAZARS 中国は、100 社にのぼる中国国有及び上場企業をクライアントに有する中審衆環会計師

事務所と統合することにより、MAZARS 中審衆環となりました。この統合による中国拠点 15 カ

所、総勢約 1,800名の新体制のもと、今後、日本企業にとってもますます重要となる中国企業関

連分野において最先端の業務を提供させていただくとともに、中国以外のインド、シンガポー

ル、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピン、ミャンマー等のアジア地域にお

いても、ワンファームならではの緊密な連携により複合的なサービスを提供させていただきま

す。

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