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1 JNET「我が国における Flow Diverter の幕開け」 Pipeline 3適応、症例選択、合併症回避 石井 1 大石英則 2 1 小倉記念病院 脳神経外科 2 順天堂大学大学院医学研究科 脳神経血管内治療学講座 802-8555 北九州市小倉北区浅野 321

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JNET「我が国における Flow Diverter の幕開け」

Pipeline

3) 適応、症例選択、合併症回避

石井 暁 1 大石英則 2 1 小倉記念病院 脳神経外科 2 順天堂大学大学院医学研究科 脳神経血管内治療学講座 〒802-8555 北九州市小倉北区浅野 3-2-1

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要旨 本邦の Pipeline Flex の適応は「後交通動脈より近位の最大径 10mm 以上かつネック長が

4mm 以上の内頚動脈瘤」である。Pipeline による治療はネックの完全な被覆と母血管への

確実な密着が前提であるが、症例によっては必ずしも容易でない。特に、留置部位に複数

の著しい蛇行、ネック長が 8mm 以上、動脈瘤両端の母血管径差が 2mm 以上などは留置が

難しい。また、硬膜内の超大型・巨大動脈瘤では留置後の遅発性破裂が報告されており、

コイル塞栓併用が現時点では唯一の予防である。初期段階ではこれらの症例はできるだけ

避けて、留置が比較的容易な症例から開始することが望ましい。

Abstract The indication for a Pipeline Flex in Japan is internal carotid artery aneurysms proximal to the posterior communicating artery with maximum diameter of more than 10mm and neck of more than 4mm. Total coverage of neck and wall apposition to the parent artery are both necessary to obtain total occlusion using a Pipeline. Nevertheless, it is not necessarily technically feasible. It becomes more challenging to appropriately deploy a Pipeline particularly if there are multiple tortuous curvatures adjacent to the aneurysm, wide-neck of more than 8mm, or discrepancy of more than 2mm in the proximal and distal artery. There are several reports of delayed aneurysmal rupture following flow diverter treatment for intra-dural extra-large or giant aneurysms. Coil embolization immediately after Pipeline placement is the only way to possibly prevent this fetal complication. Physicians are recommended to begin with a straightforward case by skipping these challenging aneurysms.

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はじめに 本稿では、本邦で初めて認可された flow diverter(FD)である Pipeline Flex(PF)

(Medtronic)を使用する際の適切な症例選択、および合併症回避のためのトラブルシューテ

ィングについて解説する。

適応 本邦では、PF は「後交通動脈より近位の最大径 10 ミリ以上かつネック長が 4 ミリ以上の

内頚動脈瘤」に対して承認を取得した。すなわち、傍鞍部内頚動脈瘤と海綿静脈洞部内頚

動脈瘤のみが対象である。内頚動脈後交通動脈分岐部や後方循環系は適応外である。また、

破裂急性期や解離性脳動脈瘤も適応外である。本邦のトレーニングプログラムでは、最初

の 5 例はプロクター医によるプロクターシップが必須で、プロクター後の 6 例目から 10 例

目まではメーカー立ち会い必須となっている。この 10 例を終了して PF 実施医となる。 適切な症例選択

適応に該当する内頚動脈瘤でも、症例によって留置の難易度は大きく異なる。PF による治

療自体が不適切な症例も存在する。PF 留置の難易度に大きく関与するのは、母血管径・母

血管蛇行・動脈瘤サイズ・ネック長などである。これらの因子につき、初期の経験(目安

として最初の 5 例程度)でも適切な症例、ある程度の経験後(目安として 6 例目以降)で

あれば適切な症例、PF による治療は不適切な症例に分けて解説する。 1) 母血管径

母血管径は FD 治療の成功に関わる最も重要な因子である。FD 治療が適切かどうかを

判断するためには、いかに正確な血管径を取得しているかが重要である。筆者らは必ず

脳血管撮影(DSA)による母血管径を計測後に FD 留置が可能かどうかを判断している。

現時点では、CT 血管造影(CTA)による母血管径計測値は参考値としている。また、

3D-DSA による血管径計測は必ずしも正確でないので、必ず通常の 2D-DSA による計

測も合わせて行っている。 留置予定部位に血管径が 5mm を大きく超える部位が存在する場合、PF による治療は

不可能である。最大径の PF 5.00mm を使えば 5.25mm 程度まで拡張することは可能で

あるが、筆者らは 2D-DSA で 5.3mm 以上は治療対象外としている(図 1)。ただし、動

脈瘤近傍では母血管は扁平化していることがしばしばあり、そのような場合は長軸径と

短軸径の平均値を血管径として採用している(図 2)。5mm を超えていても、平均値が

5mm 以下であれば PF による治療による治療が可能である。母血管径が動脈瘤近位と

遠位で著しい差が見られる場合、遠位側と近位側で別サイズの PF を使用する必要があ

り、2 本の PF を接続する、いわゆる telescoping technique が必要となるため(図 3)、初期の段階では避けた方がよい。筆者らは、血管径差が 2mm 以上あれば、telescoping technique を採用している。

2) 母血管の蛇行

PF と合わせて distal access catheter である Navien (Medtronic)が PF 留置時の蛇行血

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管に対して承認された。したがって、PF を近位側の蛇行血管経由で誘導すること自体

は比較的容易である。しかし、留置予定部位自体に大きな蛇行が複数ある場合、FD を

適切に留置することが困難となる(図 1、図 4)。「適切な留置」とは、血管壁にきちん

と密着させて留置させることであり、複数の蛇行に対して密着を得ることは比較的難し

い。最も遠位の蛇行部直前まで Navien を誘導させて、蛇行血管で密着を得てから、次

の蛇行部直前まで Navien を下ろして展開する必要がある(図 4)。Navien の操作で PFを著しく短縮させることもあり、留置予定部位に複数の蛇行がある場合、初期の段階で

は避けた方がよい。 3) ネック長

ネック長が非常に大きい場合、母血管遠位へマイクロカテーテル Marksman (Medtronic)を誘導するネックブリッジング手技が難しくなるだけでなく、PF の留置自

体も非常に難しくなる。特に、ネック径が 8mmを超えると、ネック部でのPFのporosity次第で大きくステント長が変化しうる。通常はネック部でステント長を消費するため、

結果的に telescoping technique が必要となることが多い。また、PF は基本的に押し出

して展開するステントであるため、ネック長が 8mm を超えると、著しく動脈瘤内に突

出することがあり、そのコントロールには経験を要する(図 5)。ネック長が 8mm を超

える動脈瘤は、初期の段階では避けて、経験を積んでからにすべきである。 4) 硬膜内巨大動脈瘤

最大径15mmを超える硬膜内動脈瘤では、PF留置後の遅発性破裂が報告されている 1。

抗血小板薬 2 剤服用下の動脈瘤破裂は極めて致死的である。PF 留置後にコイルを併用

することが勧められる。コイル併用する場合、Pipeline 展開用のカテーテルとコイル用

のカテーテルの干渉を避けるため、複数のガイディングカテーテルシステム(筆者らは

7Fr と 5Fr)を同血管に留置する必要がある。システムがやや複雑になるため、プロク

ター初期の数例は避けた方が無難である。PF 留置後のコイル塞栓自体は極めて容易な

ので、PF に慣れてからであれば手技自体は容易である。 以上より、プロクター初期の段階(目安として最初の数例)で進められる症例は、1) 母血管径差が 1mm 以内 2) 母血管径が 5mm 以下 3) 留置予定部位にカーブが一カ所 4) ネック長が 8mm 以下 5) 傍鞍部 10-15mm 程度または海綿静脈洞部の内頚動脈

瘤である。PF 治療が不可能な症例は、留置予定部位に血管径が 5.3mm 以上の部位が存

在する症例である。それ以外は、PF 治療自体は可能であるが、ある程度 PF に慣れて

からが望ましい。

合併症回避 展開不良

PF の展開不良は FD 治療の初期に最も多く経験するトラブルである。著しい母血管の蛇行

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や著しい母血管の扁平化など、留置血管自体に問題があることもあるが、多くは術者が PFの展開に慣れていないことが原因である。「左手でマイクロカテーテルを血管の中心に位置

させながら、右手でステントを押して展開する」という基本手技が two-hands できるよう

になれば、多くは解決する。特に、PF の場合、展開不良が認められても、再収納してやり

直すことができるため、Pipeline Classic とは比較にならないほど展開不良は減少した。そ

の他の原因としては、ステント径の選択ミスが上げられる。母血管径よりも著しく大きな

ステント径を選択すると、展開は著しく困難となる(図 6)。また、長いステント長も展開

が難しい。母血管の蛇行が著しい場合、Navien を適切な位置に調整しながら展開すること

で多くは解決可能である。 血管壁への密着不良

留置後に血管壁の密着不良が確認された場合、まずステント内に位置するマイクロカテー

テル内にガイドワイヤーを通して、マイクロカテーテルを上下させてステントを内部から

刺激することである程度拡張可能である。いわゆる「マッサージ手技」である。これでも

改善しない場合、300cm のガイドワイヤーを用いて、マイクロカテーテルをバルーンカテ

ーテルにエクスチェンジして、直接的に血管拡張を行う。筆者らは、Hyperform 7x7mm (Medtronic)または SceptorXC 4x10 (テルモ)(最大拡張径 5.9mm)を用いている。 ステント短縮

ステントの短縮により、留置した PF の近位端または遠位端が瘤内に滑落することがある。

前述のマッサージ手技や血管拡張で起こり得るほか、PF 展開後のマイクロカテーテルを遠

位に誘導し直す場合に、マイクロカテーテルとデリバリーワイヤーの間の ledge でステント

近位端を著しく短縮させることがあり、注意を要する。PF の端が瘤内に滑落した場合、再

びステント内の真腔を捕らえて telescoping technique を行うしかないが、極めて難しい(図

7)。PF は留置後も容易に短縮しうることを肝に銘じておくべきである。 血栓塞栓症

抗血小板薬 2 剤(aspirin 100mg および clopidgrel 75mg)内服下で適切に FD が留置され

れば、血栓塞栓症の発生は稀である。1 剤が不応症の疑いがある場合でも、他剤が効いてい

れば、手技はそのまま行う。ただし、2 剤ともに不応症が疑われる場合、注意が必要である。

このような場合、筆者らは、aspirin または clopidgrel を倍量投与している。抗血小板薬が

十分効いている場合でも、FD が血管壁に密着していない部位に分枝がある場合は分枝閉塞

が起こりうる。また、側副血行が極めて良好な後交通動脈や前大脳動脈を FD がカバーする

場合、順行性血流が直ちに消失して、逆行性血流に変化することがある。このような場合、

筆者らは 1 週間程度の全身ヘパリン化を行っている。 FD 留置後動脈瘤破裂

最大径 15mm 以上、FD 留置後の jet flow、症候性動脈瘤(神経症状など)などは留置後破

裂のリスク因子として提唱されている 2。筆者らが Pipeline Classic 治験で経験した症例は

これらのリスク因子すべてに該当していた 1。現時点では唯一の回避方法は、FD 留置後に

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直ちにコイルを併用することしかない 3。どの程度のコイルを挿入すれば、破裂予防効果が

あるのかコンセンサスはない。ただし、神経圧迫症状を有する場合、過度のコイル留置は

神経圧迫症状を増悪させることがあり要注意である。筆者らは、圧迫症状を有する場合、

塞栓率 15%程度に留めている(図 8)。 脳実質内出血

FD 留置後の過灌流症候群 4や抗血小板薬の過剰投与などが原因として挙げられているが定

かでない。筆者らは、FD 留置後の微小塞栓に抗血小板薬の過剰投与が原因と考えられる、

無症候性の脳実質内出血を PF 留置後 5 日目に経験した(図 9)。このような過剰投与を避

けるためにも、適切な抗血小板薬の効果判定が重要である。 脳神経圧迫症状の増悪

FD 留置後に動脈瘤が血栓化する過程で、新たな脳神経圧迫症状が出現したり、既存の神経

症状が一時的に悪化することがある。また、頭痛や眼痛などの症候が出現することがある。

血栓形成過程での動脈瘤周辺の炎症症状の一つと考えられ、ステロイド投与が著効する 3。

筆者らは、プレドニゾロン 60mg (およそ 1mg/body weight)で開始し、2~3 ヶ月かけて

tapering off している(図 9)。

さいごに FD 治療は極めて優れた根治性が最大の特徴であるが、不適切な留置は母血管閉塞や血栓塞

栓症などの合併症に直ちにつながる all or none 的な要素が強い治療である。この点が、不

十分な塞栓に終わっても合併症とはならないコイル塞栓術との大きな違いである。特に PFの初期の症例では、適切な症例選択が重要であることを改めて強調したい。 利益相反開示

筆頭著者(AI)は Medtronic 社から、Pipeline 留置後の遅発性破裂に関する動物実験に対する研

究費とデバイスの無償提供を受けている。共同筆者(HO)が本論文に関して開示すべき COI は、

会議の出席(発表)に対し、その拘束した時間・労力に対する日本メドトロニックからの年間 100

万円以上の支払、および、寄付講座に対する日本メドトロニックからの奨学寄付金年間 200 万

円以上の支払です。

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References 1. Ikeda H, Ishii A, Kikuchi T, Ando M, Chihara H, Arai D, Hattori E, Miyamoto S.

Delayed aneurysm rupture due to residual blood flow at the inflow zone of the

intracranial paraclinoid internal carotid aneurysm treated with the pipeline

embolization device: Histopathological investigation. Interv Neuroradiol. 2015;21:674-683

2. Kulcsar Z, Houdart E, Bonafe A, Parker G, Millar J, Goddard AJ, Renowden S, Gal

G, Turowski B, Mitchell K, Gray F, Rodriguez M, van den Berg R, Gruber A, Desal H,

Wanke I, Rufenacht DA. Intra-aneurysmal thrombosis as a possible cause of delayed

aneurysm rupture after flow-diversion treatment. AJNR. American journal of neuroradiology. 2011;32:20-25

3. Saatci I, Yavuz K, Ozer C, Geyik S, Cekirge HS. Treatment of intracranial

aneurysms using the pipeline flow-diverter embolization device: A single-center

experience with long-term follow-up results. AJNR. American journal of neuroradiology. 2012;33:1436-1446

4. Chiu AH, Wenderoth J. Cerebral hyperperfusion after flow diversion of large

intracranial aneurysms. Journal of neurointerventional surgery. 2012

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Figure Legends 図 1. Pipeline Flex 留置が比較的困難な症例 A. 母血管径が 5mm を超える症例では、Pipeline Flex による十分な血管への密着が得られ

ない。 B. 動脈瘤の近位側(矢頭)と遠位側(矢印)で母血管径が 2mm 以上異なる症例では、二

つのサイズを接続する telescoping technique が必要となる。 C. ネック長(点線)が 8mm を超える症例。本症例はネック長が 19.6mm と計測され、プ

ロクター症例から除外された(国立大阪医療センター藤中俊之先生ご提供)。 D. 留置予定部位(点線)に強い蛇行が複数ある症例。本症例は海綿静脈洞部に動脈瘤が二

カ所あり、これらを治療する場合、2 カ所の強い蛇行部に Pipeline Flex を留置する必

要がある。比較的難易度が高く、プロクター症例から除外された(国立大阪医療センタ

ー藤中俊之先生ご提供)。 図 2. 動脈瘤近傍の母血管が扁平化している症例における母血管径計測 A. 海綿静脈洞部内頚動脈瘤。3D-DSA の volume rendering 画像では母血管の遠位(矢印)

と近位(矢頭)はぞれぞれ 3.50mm, 4.40mm と計測された。 B. 3D-DSA で血管の長軸方向に垂直な断面を観察すると、遠位側(図 A 矢印)は長径

5.01mm 短径 3.30mm と扁平化しているため、平均値 4.16mm を母血管径値として採

用した。 C. 近位側(図 A 矢頭)は、長径 4.37mm 短径 2.18mm と著しい扁平化が見られるため、

平均値 3.28mm を採用した。 図 3. 動脈瘤の両端で著しい母血管径差がある症例 A. 動脈瘤遠位側(矢印)は 3.4mm、近位側(矢頭)は 4.7mm と計測された。 B. 遠位側に Pipeline Flex 4.0x25mm(実線)、近位側に Pipeline Flex 5.0x25mm(点線)

を留置する、いわゆる telescoping technique を行った。 図 4. Pipeline Flex 留置予定部位に複数の蛇行が存在する症例 A. 右内頚動脈海綿静脈洞部巨大動脈瘤。Pipeline Flex 留置予定部位(点線)に 2 カ所の強

い蛇行部位(矢印)が存在する。 B – E. Pipeline Flex 4.50x35mm を遠位側から留置した。その際、Navien(矢印)をでき

るだけ Pipeline 展開部に近づけて、展開の進行に合わせて、順次、Navien(矢印)を近位

側へ下ろしていった。 E. 留置後の Corn beam CT。 図 5. ネック長が大きな脳動脈瘤での Pipeline Flex 留置

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A. ネック長(点線)は 10.2mm と非常に広い。 B. Pipeline Flex 4.0x20mm を展開途中だが、この時点ではネック部での動脈瘤内への逸

脱はない。 C. ネックより近位側に展開途中に、Pipeline を強く押すと、母血管から離れて(矢印)、

動脈瘤内への Pipeline が逸脱した(矢頭)。 D. 逸脱した Pipeline をいったん再収納して、再度留置をやり直した。 E. 最終造影で Pipeline は良好な状態で留置できた。 F. 6 ヶ月後の血管撮影。動脈瘤は完全消失している。 図 6. Pipeline のサイズ選択ミスによる留置困難例 A. 3D-DSA による血管径計測で、留置予定部位の最小径が 3.36mm、最大径が 4.49mm

と計測されたため、Pipeline Classic 4.25x16mm を選択した。 B. サイホン部で展開不良を生じたため、回収した。 C. 2D-DSA で計測すると、最小径が 3.18mm、最大径が 4.01mm と計測されたため、

Pipeline Classic 3.75x18mm を選択し直した。 D. サイホン部での展開不良を生じることなく、良好な密着を得ることができた。 図 7. Pipeline Flex 留置後に近位端が瘤内へ滑落した症例 A. 内頚動脈海綿静脈洞部巨大動脈瘤。 B. Pipeline Flex 4.25x25mm を留置したが、予定していた留置部位よりもやや遠位側と

なったため、動脈瘤近位側の留置部位が短くなった。 C. Marksman を遠位に再誘導する際に、Marksman とデリバリーワイヤーとの ledge で

近位側が短縮して動脈瘤内へ滑落した。 D. 真腔を失ったため、近位側から真腔を取ることを試みるも成功せず。やむなく、脳底

動脈から後交通動脈経由でガイドワイヤーを逆行性に誘導して、近位側からスネアワ

イヤ-で捕捉した。 E. 2 本目の Pipeline Flex 4.50x20mm を留置した。 F. 最終の corn beam CT にてネックは良好にカバーされている。 図 8. 視神経圧迫症状を呈した傍鞍部内頚動脈瘤への Pipeline Flex 留置症例 A. 視神経障害で発症した傍鞍部内頚動脈瘤。 B. Pipeline Flex 3.50x16mm を留置した。 C. Axium コイルを 7 本(全長 280cm)を挿入して、塞栓率 15.5%の段階で意図的に終了

した。術後はプレドニゾロン 60mg を開始し、3 ヶ月かけて tapering off した。視力は、

最も悪化した時期で 0.01 まで低下したが、約 5 ヶ月後の時点で 1.0 まで回復した。

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図 9. Pipeline Flex 留置後に無症候性脳内出血を来した症例 A. 内頚動脈海綿静脈洞部巨大動脈瘤に対して、Pipeline Flex 4.25x25, 4.50x25 を留置し

た。P2Y12 assay にて PRU270 と高値であったため、Clopidgrel 75mg を 150mg へ

増量した。 B. 術後翌日の拡散強調画像にて同側に微小梗塞を認めた。 C. 術後 5 日目の CT にて、同部位の微小出血を認めたが、無症候性であった。P2Y12 assay

にて PRU 70 と低値であり、Clopidgrel 150mg を 75mg へ減量した。 D. 同日の脳血流 SPECT では明らかな過灌流の所見を認めなかった。

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1図

BA

C D

Fig.1

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BA C

Fig.2

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図 3

BA

Fig.3

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図 4

BA C

D E F

Fig.4

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図 5

BA C

D E F

Fig.5

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図 6

4.30mm

4.49mm

3.76mm

4.01mm

3.36mm

3.18mm

Fig.6

A B

C D

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図 7

BA C

D E F

Fig.7

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図 8

BA C

Fig.8

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図 9

BA

C D

Fig.9