sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無 …

8
Sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無の判別 福本昌人 農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門,〒305-8609 茨城県つくば市観音台 2-1-6 Correspondence:福本昌人,e-mail[email protected] 営農形態の変化に対応して試験的に水利権上の代かき期の前倒しが行われることがある.本研究では,その前倒しに 伴う代かきの早期化状況の調査において Sentinel-1 衛星の合成開口レーダ(SAR)データが有効利用できるか否かを明ら かにするため,同データと圃場区画データを用いて水田の湛水有無を圃場毎に判別(後方散乱係数の圃場平均値がある 閾値以下の圃場を「湛水あり」と判定)した場合の判別精度を検証した.その検証は,同じ快晴日に Sentinel-1 衛星と Sentinel-2 衛星の両方で観測が行われていた調査エリアにおいて行い,Sentinel-2 衛星のマルチスペクトルデータによる 湛水有無の判別結果を検証用データとして用いた.判別精度は, VV 偏波が 79.1%VH 偏波が 75.8%で, VV 偏波の SAR 画像の方が判別に適していた.上記のような調査において Sentinel-1 衛星データは十分に有効利用できると判断された. キーワードSentinel-1Sentinel-2SAR,リモートセンシング,判別精度,代かき 1. はじめに 農業用水は時期によって必要水量が異なるため,水利権 の許可取水量は期間別に定められている.そのうち「代か き期」の許可取水量が一般的に最も大きい.近年,営農形 態の変化に伴って水田の用水需要が変化しており,代かき 期の設定期間を変更する必要が一部の地域で生じている. この代かき期の設定期間の変更にあたり,試験的に代かき 期の前倒しが行われることがある.例えば,X 県の A 地区 では,代かき期の設定期間は 4 16 日~5 15 日である が,河川管理者の許可を得て,2019 年には 4 615 日の 期間にも代かき期の許可取水量と同量の許可取水量が設定 された. 筆者は,このことによって同地区で 2019 年に代かきがど の程度早まったのかを調査するため, 2018 年と 2019 年の 4 13 日の Sentinel-2 衛星データ(無償で利用可能)を用い て水田が湛水状態であるか否か(湛水の有無)を圃場毎に 判別し,両年の 4 13 日時点の湛水状況を比較した(未発 表). Sentinel-2 衛星は,欧州宇宙機関(ESA)が運用してい る,マルチスペクトルセンサーを搭載した衛星である. Sentinel-2 衛星データには,水域の判定に有効な短波長赤外 バンドのデータがあり,そのデータを活用することによっ て水田の湛水の有無が高精度に判別できる(福本,2019). しかし,両年とも衛星画像に雲・雲影が見られ,雲・雲影 のエリアに位置していた圃場については湛水の有無が判別 できなかった. そこで,その雲・雲影の部分に位置していた圃場の湛水 の有無については, 2018 年と 2019 年の 4 15 日の Sentinel- 1 衛星データ(無償で利用可能)を用いて判別することを考 えた.Sentinel-1 衛星は,ESA が運用している,C バンドの 合成開口レーダ(SAR)を搭載した衛星である.SAR は, マイクロ波を地表面に斜めに照射し,地表面で散乱して戻 ってくる後方散乱波を受信する能動型のセンサーで,天候 に左右されず,昼夜とも地表面を観測することができる. 本研究は,この Sentinel-1 衛星データが上記の調査で有効利 用できるかどうかを明らかにしようとしたものである. 波立ちのない水面では,マイクロ波が鏡面的に反射し, 後方散乱波の強度が弱い.そのため取水が行われる水稲作 の水田は,後方散乱波の強度が時期的に大きく変化する(竹 内ら,2000).この特徴に基づいて多時期の SAR データを 用いて水稲作付地を抽出する研究が多く行われている.例 えば,竹内ら(2000)は,田植え前と田植え直後の 2 時期, および,それらに稲生育期を加えた 3 時期の SAR データ RADARSAT 衛星,ERS-1 衛星)を用いて,また,石塚ら 2003)は,田植え直後と稲生育期の 2 時期の SAR データ RADARSAT 衛星)を用いて水稲の作付面積の推定を試み ている.木村・島村(2015)は,田植え直後と稲生育期の 2 時期の SAR データ(TerraSAR-X 衛星)を用いて稲の早植 え,慣行植え,遅植え,大豆栽培等の水田利用形態の分類 を試みている.近年では,Singha et al. 2019)や Bazzi et al. 2019)が Sentinel-1 衛星データを利用して水稲作付マップ の作成を行っている.しかし,水田の湛水有無の判別に目 的を絞って SAR データを取水開始時期の調査に利用した 研究(小川ら,2003)は非常に少ない. Ⅱ_21 農業農村工学会論文集 IDRE Journal No. 310 (88-1), pp.Ⅱ_21-Ⅱ_28 (2020.6) 〈研究報文〉

Upload: others

Post on 28-Jan-2022

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無 …

Sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無の判別

福本昌人

農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門,〒305-8609 茨城県つくば市観音台 2-1-6

Correspondence:福本昌人,e-mail:[email protected]

要 旨

営農形態の変化に対応して試験的に水利権上の代かき期の前倒しが行われることがある.本研究では,その前倒しに

伴う代かきの早期化状況の調査において Sentinel-1 衛星の合成開口レーダ(SAR)データが有効利用できるか否かを明ら

かにするため,同データと圃場区画データを用いて水田の湛水有無を圃場毎に判別(後方散乱係数の圃場平均値がある

閾値以下の圃場を「湛水あり」と判定)した場合の判別精度を検証した.その検証は,同じ快晴日に Sentinel-1 衛星と

Sentinel-2 衛星の両方で観測が行われていた調査エリアにおいて行い,Sentinel-2 衛星のマルチスペクトルデータによる

湛水有無の判別結果を検証用データとして用いた.判別精度は,VV 偏波が 79.1%,VH 偏波が 75.8%で,VV 偏波の SAR

画像の方が判別に適していた.上記のような調査において Sentinel-1 衛星データは十分に有効利用できると判断された.

キーワード:Sentinel-1,Sentinel-2,SAR,リモートセンシング,判別精度,代かき

1. はじめに

農業用水は時期によって必要水量が異なるため,水利権

の許可取水量は期間別に定められている.そのうち「代か

き期」の許可取水量が一般的に最も大きい.近年,営農形

態の変化に伴って水田の用水需要が変化しており,代かき

期の設定期間を変更する必要が一部の地域で生じている.

この代かき期の設定期間の変更にあたり,試験的に代かき

期の前倒しが行われることがある.例えば,X 県の A 地区

では,代かき期の設定期間は 4 月 16 日~5 月 15 日である

が,河川管理者の許可を得て,2019 年には 4 月 6~15 日の

期間にも代かき期の許可取水量と同量の許可取水量が設定

された.

筆者は,このことによって同地区で 2019 年に代かきがど

の程度早まったのかを調査するため,2018 年と 2019 年の 4

月 13 日の Sentinel-2 衛星データ(無償で利用可能)を用い

て水田が湛水状態であるか否か(湛水の有無)を圃場毎に

判別し,両年の 4 月 13 日時点の湛水状況を比較した(未発

表).Sentinel-2 衛星は,欧州宇宙機関(ESA)が運用してい

る,マルチスペクトルセンサーを搭載した衛星である.

Sentinel-2 衛星データには,水域の判定に有効な短波長赤外

バンドのデータがあり,そのデータを活用することによっ

て水田の湛水の有無が高精度に判別できる(福本,2019).

しかし,両年とも衛星画像に雲・雲影が見られ,雲・雲影

のエリアに位置していた圃場については湛水の有無が判別

できなかった.

そこで,その雲・雲影の部分に位置していた圃場の湛水

の有無については,2018 年と 2019 年の 4月 15 日の Sentinel-

1 衛星データ(無償で利用可能)を用いて判別することを考

えた.Sentinel-1 衛星は,ESA が運用している,C バンドの

合成開口レーダ(SAR)を搭載した衛星である.SAR は,

マイクロ波を地表面に斜めに照射し,地表面で散乱して戻

ってくる後方散乱波を受信する能動型のセンサーで,天候

に左右されず,昼夜とも地表面を観測することができる.

本研究は,この Sentinel-1 衛星データが上記の調査で有効利

用できるかどうかを明らかにしようとしたものである.

波立ちのない水面では,マイクロ波が鏡面的に反射し,

後方散乱波の強度が弱い.そのため取水が行われる水稲作

の水田は,後方散乱波の強度が時期的に大きく変化する(竹

内ら,2000).この特徴に基づいて多時期の SAR データを

用いて水稲作付地を抽出する研究が多く行われている.例

えば,竹内ら(2000)は,田植え前と田植え直後の 2 時期,

および,それらに稲生育期を加えた 3 時期の SAR データ

(RADARSAT 衛星,ERS-1 衛星)を用いて,また,石塚ら

(2003)は,田植え直後と稲生育期の 2 時期の SAR データ

(RADARSAT 衛星)を用いて水稲の作付面積の推定を試み

ている.木村・島村(2015)は,田植え直後と稲生育期の 2

時期の SAR データ(TerraSAR-X 衛星)を用いて稲の早植

え,慣行植え,遅植え,大豆栽培等の水田利用形態の分類

を試みている.近年では,Singha et al.(2019)や Bazzi et al.

(2019)が Sentinel-1 衛星データを利用して水稲作付マップ

の作成を行っている.しかし,水田の湛水有無の判別に目

的を絞って SAR データを取水開始時期の調査に利用した

研究(小川ら,2003)は非常に少ない.

Ⅱ_21

農業農村工学会論文集 IDRE Journal No. 310 (88-1), pp.Ⅱ_21-Ⅱ_28 (2020.6) 〈研究報文〉

Page 2: Sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無 …

わが国では圃場区画の GIS データが整備されており,そ

の圃場区画データを補助的に利用することによって衛星デ

ータから湛水有無が圃場毎に判別できる.Sentinel-1 衛星と

同様に C バンドの SAR を搭載した RADARSAT 衛星のデー

タについては,圃場区画データを補助的に利用して湛水有

無を判別した場合の判別精度の検証が高橋ら(2004)や石

塚(2015)によって行われている.しかし,Sentinel-1 衛星

データについては,その判別精度の検証事例は見当たらな

い.

前述の 2018 年と 2019 年の 4 月 15 日の Sentinel-1 衛星デ

ータは,VV 偏波と VH 偏波で観測されたものであった.

VV 偏波とは,垂直偏波(V)で送信し,後方散乱波の垂直

偏波(V)を受信するモードで,VH 偏波とは,垂直偏波(V)

で送信し,後方散乱波の水平偏波(H)を受信するモードで

ある.本研究では,Sentinel-1 衛星による VV 偏波の SAR 画

像と VH 偏波の SAR 画像のそれぞれについて,圃場区画デ

ータを補助的に利用して圃場毎に湛水有無を判別した場合

の判別精度を検証した.判別精度の検証は,Sentinel-2 衛星

データによる湛水有無の判別結果を検証用データとして用

いて行い,得られた検証結果から VV 偏波と VH 偏波のど

ちらの SAR 画像が湛水有無の判別に適しているのかを判

断した.なお,本研究では,Sentinel-1 衛星データによる判

別結果が Sentinel-2 衛星データによる検証用データと一致

した圃場の面積割合を判別精度とした.

2. 方法

2.1 調査エリア

利根川沿岸の平坦な水田地帯に調査エリアを設定した.

その位置を Fig. 1 に示す.ここを調査エリアとした主な理

由は,同じ快晴日(2018 年 4 月 20 日)に Sentinel-1 衛星と

Sentinel-2 衛星の両方で観測が行われていたからである.調

査エリアでは,4 月中旬に取水を開始する水田が多く,また

水田転作として麦(秋播き)-大豆作が主に行われている.

なお,調査エリアは,1 章で述べた X 県の A 地区には位置

していない.

2.2 圃場区画データ

農林水産省の水土里情報利活用促進事業で整備された圃

場区画データから抽出した,面積 5a 以上の田の区画ポリゴ

ンを圃場区画データとして用いた.ただし,同データは,

2007~2009年に撮影された航空写真画像をトレースして作

成されたもので,作成年が古いため,Google Earth Pro

(Google 社)に掲載されている 2018 年 5 月 15 日の航空写

真画像を参照して一部の区画ポリゴン(畦畔除去による区

画拡大が行われた圃場)の形状を修正した.

Fig. 2 に,圃場区画データを区画規模別に色分けして示

す.調査エリア内に圃場(区画ポリゴン)は 7,850 枚あり,

その総面積は 2,289ha であった.区画規模別に面積を集計

して総面積に占める割合を求めたところ,20a 未満の圃場

が 20%,20~40a の圃場が 37%,40a 以上の圃場が 43%であ

った.20a 未満の圃場の 61%(面積割合)は,ほ場整備事業

の創設(1963 年)前に 10a 区画(長辺長は 55m 程度)や 20a

区画(長辺長は 75m 程度)を標準区画として整備された後,

再整備が行われていない地区(Fig. 2 の黒枠)に位置してい

た.

2.3 Sentinel-2 衛星データによる湛水有無の判別と検証用

データ

2018 年 4 月 20 日の Sentinel-2 衛星データを用い,圃場区

画データを補助的に利用して圃場毎に同日の湛水有無を判

別し,その判別結果を検証用データとした.

用いた Sentinel-2 衛星データはレベル 1C のデータであ

る.その衛星画像は,幾何補正されていて,大気上端反射

率を 10,000 倍した値が画素値になっている.

Fig. 2 圃場区画データ Paddy parcel boundary data

10a 区画や 20a 区画を標準区画として整備

された後,再整備が行われていない地区

20a 未満 20~40a 40a 以上

Fig. 1 調査エリアの位置 Location of survey area

茨城県

稲敷市

調査エリア

利根川

霞ヶ浦

Sentinel-2 衛星画像(2018.4.20)

Ⅱ_22

農業農村工学会論文集 IDRE Journal No.310(88-1), pp.Ⅱ_21-Ⅱ_28 (2020.6)

Page 3: Sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無 …

2.3.1 Sentinel-2 衛星データによる湛水有無の判別方法

湛水有無の判別は,福本(2019)の方法で行った.その

方法は,修正正規化水指数 MNDWI(Xu,2006)を指標と

したものである.MNDWI は,短波長赤外バンドのデータ

と緑バンドのデータを用いて計算するが,それらの解像度

(それぞれ 20m,10m)が異なっているため,まず,解像度

10m の近赤外バンドのデータを用いてパンシャープン処理

(IHS 変換)により短波長赤外バンドのデータの解像度を

10m に高める.次に,その解像度を高めた短波長赤外バン

ドのデータと緑バンドのデータを用いて MNDWI を計算

し,得られた MNDWI 画像を Otsu 法(Otsu,1979)で自動

的に閾値を決定して二値化する.すなわち,MNDWI が閾

値以上の画素の値を 1(湛水あり),閾値未満の画素の値を

0(湛水なし)とした二値化画像を作成する.最後に,その

二値化画像に圃場区画データを重ね,圃場(区画ポリゴン)

内に位置する画素のうち画素値が 1 である画素が過半数を

占める圃場を「湛水あり」,それ以外の圃場を「湛水なし」

と判定する.

2.3.2 Sentinel-2 衛星データによる湛水有無の判別精度

別途,2018 年 5 月 15 日の Sentinel-2 衛星データと圃場区

画データを用いて福本(2019)の方法で同日の湛水有無を

判別し,その判別精度を調査エリアの一部(Fig. 1 の調査エ

リア内に描かれた破線より右側の部分)で検証した.その

部分は,同日に撮影された航空写真画像とその翌日に撮影

された航空写真画像が Google Earth Pro に掲載されている.

まず,それらの航空写真画像を目視判読して同日の湛水有

無を判別し,その判別結果を検証用データとした.次に,

Sentinel-2 衛星データによる判別結果をそれと照合して判

別精度を求めた.その結果,判別精度は 96.7%であり,非常

に高い精度で湛水有無が判別できることが確認された.こ

のことから,2018 年 4 月 20 日の Sentinel-2 衛星データによ

る判別結果も十分に高い精度を有しており,Sentinel-1 衛星

による判別精度に関する検証用データとして問題なく利用

できると判断した.

2.3.3 Sentinel-1 衛星データによる湛水有無の判別精度に

関する検証用データ

Fig. 3 に,2018 年 4 月 20 日の Sentinel-2 衛星データから

作成された MNDWI 画像を示す.この MNDWI 画像の二値

化画像に圃場区画データを重ね,圃場毎に同日の湛水有無

を判別した.そして,調査エリア内のすべての圃場(7,850

枚)を検証圃場とし,そのうち「湛水あり」と判定された

4,186 枚の圃場を湛水田,「湛水なし」と判定された 3,664 枚

の圃場を非湛水田とした.

Fig. 4 に,検証圃場を湛水田と非湛水田に区分して示す.

この区分情報が,次に述べる Sentinel-1 衛星データによる湛

水有無の判別精度に関する検証用データである.なお,

Google Earth Pro に掲載されている 2018 年 5 月 15 日の航空

写真画像を目視判読して麦作の圃場を抽出したところ,非

湛水田のうち 259 枚(面積 122ha)が麦作の圃場であった.

2.4 Sentinel-1 衛星データによる湛水有無の判別

2018 年 4 月 20 日の Sentinel-1 衛星データを用い,圃場区

画データを補助的に利用して圃場毎に同日の湛水有無を判

別した.

2.4.1 Sentinel-1 衛星データ

用いた衛星データは,IW モードで観測されたレベル 1

GRD プロダクト(地上解像度 20m×22m)の VV 偏波と VH

偏波のデータである.衛星の軌道方向は,Ascending(北向

き)である.ESA が開発した SNAP ソフトウェア(無償)

を用い,サーマルノイズ除去,キャリブレーション,スペ

ックル低減処理(Lee フィルター;ウィンドウサイズ 3×

3),幾何補正(SRTM-3 と呼ばれる 3 秒メッシュの数値標

高モデルを用いた地形補正)といった Sentinel-1 衛星データ

の前処理を行い,画素値が後方散乱係数(σ0)である VV

偏波と VH 偏波の SAR 画像(画素サイズ 10m×10m)を得Fig. 3 MNDWI 画像(2018.4.20) MNDWI image made from Sentinel-2 data taken on 20 April 2018

※画素値の最小値は-0.47(黒),最大値は 0.75(白)

Fig. 4 検証圃場 Paddy fields used for verification of determination accuracy

湛水田(検証圃場) 非湛水田(検証圃場)

閾値決定に供する圃場の抽出エリア

Ⅱ_23

農業農村工学会論文集 IDRE Journal No.310(88-1), pp.Ⅱ_21-Ⅱ_28 (2020.6)

Page 4: Sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無 …

た.Fig. 5 と Fig. 6 に,それぞれ VV 偏波,VH 偏波の SAR

画像を示す.

VV 偏波の SAR 画像に圃場区画データを重ねて SAR 画

像の位置ズレを把握した.Fig. 7 に,SAR 画像の一部(Fig.

5 に緑枠で示した場所を拡大)を示す.左側が 10a 区画(長

辺長 55m)を標準区画として整備された地区,右側が 30a

区画(長辺長 100m)を標準区画として整備された地区にあ

たる.SAR 画像の位置ズレは 15m 程度であり,それが判別

に与える影響は 40a 以上の大きな圃場に対して小さいが,

20a 未満の小さな圃場に対してはやや大きいかもしれない.

なお,MNDWI 画像の位置ズレも,Fig. 8(場所は Fig. 7 と

同じ)に示すように 15m 程度であった.

2.4.2 Sentinel-1 衛星データによる湛水有無の判別方法

VV 偏波の SAR 画像(Fig. 5)と VH 偏波の SAR 画像(Fig.

6)のそれぞれを用い,圃場区画データを補助的に利用して

圃場毎に湛水有無を判別した.その判別は,高橋ら(2004)

に倣い,SAR 画像に圃場区画データを重ねて圃場内に位置

する画素の画素値(σ0)の平均値(圃場平均σ0)を求め,

その値がある閾値以下の圃場を「湛水あり」,それ以外の圃

場を「湛水なし」と判定する,という方法で行った.

3.4 節で述べるように実際の場面では,閾値は,Sentinel-

2 衛星データを用い,その衛星画像の雲や雲影のないエリ

アでの判別結果を利用して決定するが,ここでは,Fig. 4 に

示した 8 つの円(円は無作為に描画)に位置する 1,226 枚

の検証圃場の検証用データを用いて決定した.

具体的には,その 1,226 枚の検証圃場の湛水有無を判別

した時,「判別結果を検証用データと照合して算出される判

別精度」が最大になる値を次のようにして求め,その値を

閾値とした.まず,1,226 枚の検証圃場のうち湛水田(659

枚)の合計面積(S)を求めた.次に,1,226 枚の検証圃場

を圃場平均σ0 の小さい順に並べ,1 番目から(n-1)番目ま

での圃場の合計面積が S 以下になり,かつ,1 番目から n 番

目までの圃場の合計面積が S 以上になる n の値を求め,

(n-1)番目の圃場平均σ0 と n 番目の圃場平均σ0 の平均値

を閾値とした.なお,この方法は,閾値の決定法の一つで

ある p タイル法(高木・下田,1991)を応用したものであ

る.

Fig. 5 VV 偏波の SAR 画像(2018.4.20)

VV-polarized SAR image taken on 20 April 2018

※画素値の最小値は-47dB(黒),最大値は 37dB(白)

※画素値の最小値は-55dB(黒),最大値は 22dB(白)

Fig. 6 VH 偏波の SAR 画像(2018.4.20)

VH-polarized SAR image taken on 20 April 2018

Fig. 7 VV 偏波の SAR 画像と圃場区画データ

VV-polarized SAR image and paddy parcel boundary data

※画素値の最小値は-23dB(黒),最大値は 8dB(白)

標準区画は 30a 区画

標準区画は 10a 区画

Fig. 8 MNDWI 画像と圃場区画データ

MNDWI image and paddy parcel boundary data

※画素値の最小値は-0.28(黒),最大値は 0.69(白)

標準区画は 30a 区画

標準区画は 10a 区画

Ⅱ_24

農業農村工学会論文集 IDRE Journal No.310(88-1), pp.Ⅱ_21-Ⅱ_28 (2020.6)

Page 5: Sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無 …

3. 結果と考察

3.1 湛水田と非湛水田の圃場平均 σ0の統計値

Table 1 に,湛水田と非湛水田の圃場平均σ0(VV 偏波,

VH 偏波)の統計値(平均値,標準偏差)を示す.区画規模

別に算出した統計値も記している.湛水田と非湛水田の間

で平均値・標準偏差(「ALL」の行)を比較すると,平均値

については,湛水田の方が VV 偏波で 3.3dB,VH 偏波で

3.5dB 小さかった.また,標準偏差については,VV 偏波で

は両者ともほぼ同じ値であったが,VH 偏波では非湛水田

の方が 0.9dB 大きかった.

湛水田,非湛水田それぞれについて区画規模別の平均値

を比較すると,湛水田では,20a 未満の圃場が他の面積階級

の圃場に比べて VV 偏波で 0.9~1.2dB,VH 偏波で 0.9~

1.4dB 大きかった.また,非湛水田では,40a 以上の圃場が

他の面積階級の圃場に比べて VV 偏波で 0.4~0.5dB 小さ

く,VH 偏波で 0.7~1.1dB 小さかった.

3.2 SAR 画像による湛水有無の判別結果と判別精度

1,226 枚の検証圃場の検証用データから決定された閾値

は,VV 偏波の SAR 画像が-14.0dB,VH 偏波の SAR 画像が

-25.5dB であった.この閾値を用いてすべての検証圃場

(7,850 枚)の湛水有無を判別し,その判別結果を検証デー

タと照合した.その結果を Fig. 9 に示す.判別結果が検証

用データと一致した検証圃場の面積,すなわち,図に示さ

れている,正しく判別された湛水田(薄い水色)と非湛水

田(薄い桃色)の面積を集計し,判別精度を求めた.

Table 2 に,その集計結果と判別精度を示す.判別精度は,

VV 偏波の SAR 画像が 79.1%,VH 偏波の SAR 画像が 75.8%

であった.VV 偏波の SAR 画像の方が判別精度が 3.3 ポイ

ント高かったことから,VV 偏波の SAR 画像の方が湛水有

無の判別に適していると判断される.なお,閾値の決定に

用いた 1,226 枚の検証圃場を除いて 6,624 枚の検証圃場か

ら判別精度を求めたところ,判別精度は VV 偏波が 79.0%,

VH 偏波が 74.9%であった.すなわち,すべての検証圃場か

Fig. 9 SAR 画像による湛水有無の判別結果(判別の正誤) Results determining whether each paddy field was flooded using SAR images (Parcel color-coding indicates whether the determination for each paddy field was correct.)

(a) VV 偏波の SAR 画像による判別結果(閾値:-14.0 dB)

(b) VH 偏波の SAR 画像による判別結果(閾値:-25.5 dB)

正しく判別された湛水田

正しく判別された非湛水田

誤判別された湛水田

誤判別された非湛水田

Table 1 湛水田と非湛水田の圃場平均σ0の統計値 Parcel average values of the backscattering coefficient for flooded paddy fields and non-flooded paddy fields

湛水田

圃場数(枚)

区画規模

20a未満

20~40a

40a以上

1,529

1,730

927

圃場面積(ha) 平均値(dB) 標準偏差(dB)

217

520

532

VV偏波の圃場平均 σ0

平均値(dB) 標準偏差(dB)

VH偏波の圃場平均 σ0

-14.6

-15.5

-15.8

2.4

2.3

2.4

4,186 1,268 -15.2 2.4ALL

-25.0

-25.9

-26.4

2.3

1.9

1.6

-25.7 2.1

非湛水田

20a未満

20~40a

40a以上

1,866

1,086

712

238

322

461

-11.9

-11.8

-12.3

2.3

2.3

2.2

3,664 1,021 -11.9 2.3ALL

-21.8

-22.2

-22.9

3.0

2.9

2.9

-22.2 3.0

Ⅱ_25

農業農村工学会論文集 IDRE Journal No.310(88-1), pp.Ⅱ_21-Ⅱ_28 (2020.6)

Page 6: Sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無 …

ら求めた判別精度と比べると,VH 偏波については 0.9 ポイ

ント小さい値であったが,VV 偏波についてほぼ同じ値で

あった.

3.3 閾値の最適値とその値に対する判別精度

得られた判別精度は,用いた閾値の値(VV 偏波が

-14.0dB,VH 偏波が-25.5dB)に依存している.そこで,閾

値の値を少しずつ変えながら湛水有無の判別を行い,すべ

ての検証圃場(7,850 枚)から求めた判別精度が最大になる

閾値(閾値の最適値)とその値に対する判別精度を求めた.

Fig. 10 に,閾値と判別精度の関係を示す.VV 偏波の SAR

画像については,閾値の最適値は,1,226 枚の検証圃場の検

証用データから決定された閾値と同じ値(-14.0dB)であっ

た.一方,VH 偏波の SAR 画像については,閾値の最適値

は,1,226 枚の検証圃場の検証用データから決定された閾値

より 0.9dB 大きい値(-24.6dB)であった.また,その値に

対する判別精度は 77.8%であり,VV 偏波の SAR 画像によ

る判別精度(79.1%)には及ばなかった.すなわち,閾値に

最適値を設定したとしても,VV 偏波の SAR 画像の方が湛

水有無の判別に適していることが確認された.

3.1 節で述べたように,区画規模によって圃場平均σ0 の

平均値に違いが見られた.そこで,40a 以上の圃場のみを対

象にして,閾値の値を少しずつ変えながら湛水有無の判別

を行い,閾値の最適値とその値に対する判別精度を求めた.

その結果,閾値の最適値は,VV 偏波の SAR 画像が-14.6dB,

VH 偏波の SAR 画像が-24.7dB であり,すべての検証圃場

を対象にした場合の最適値(VV 偏波が-14.0dB,VH 偏波が

-24.6dB;Fig. 10)よりそれぞれ 0.6dB,0.1dB 小さかった.

一方,閾値の最適値に対する判別精度は,VV 偏波の SAR

画像が 80.6%,VH 偏波の SAR 画像が 79.6%であり,すべ

ての検証圃場を対象にした場合の同判別精度(VV 偏波が

79.1%,VH 偏波が 77.8%;Fig. 10)よりそれぞれ 1.5 ポイン

ト,1.8 ポイント大きかった.したがって,40a 未満の圃場

が少ないエリアで判別を行えば,判別精度がわずかに良く

なると考えられる.

3.4 X 県の A地区における湛水有無の判別

VV 偏波の SAR 画像の方が湛水有無の判別に適している

と判断されたので,1 章で述べた X 県の A 地区において,

2018 年と 2019 年の 4 月 15 日の Sentinel-1 衛星データを用

いて VV 偏波の SAR 画像により湛水有無の判別を行った.

A 地区内の圃場の総面積は 1,470,916ha であった.なお,前

述したように,調査エリアはこの A 地区には位置していな

い.

判別で用いた閾値は,2018 年が-11.5dB,2019 年が-14.6dB

である.2018 年の閾値は,2018 年の 4 月 13 日と 4 月 20 日

(2019 年の閾値は,2019 年の 4 月 13 日と 4 月 18 日)の

Sentinel-2 衛星データを用いて次のようにして決定した.ま

ず,4 月 13 日と 4 月 20 日の Sentinel-2 衛星データを用い

て,両日の湛水有無を福本(2019)の方法(2.3.1 項)で判

別した.ただし,MNDWI 画像の二値化は雲・雲影のエリア

をマスクして行い,雲・雲影エリアに位置していた圃場は

判別対象から外した.次に,4 月 13 日,4 月 20 日とも「湛

水あり」と判定された圃場の中から 500 枚の圃場をランダ

ムに抽出した.この 500 枚の圃場は,4 月 15 日には湛水状

態であったと判断できる.また,4 月 13 日,4 月 20 日とも

「湛水なし」と判定された圃場の中から 500 枚の圃場をラン

ダムに抽出した.この 500 枚の圃場は,4 月 15 日に非湛水

状態であったと判断できる.最後に,「抽出した圃場(湛水

状態が 500 枚,非湛水状態が 500 枚)の湛水有無を 4 月 15

日の Sentinel-1 衛星データを用いて判別した時,その判別結

果を圃場の区分(湛水状態,非湛水状態)と照合して算出

される判別精度」が最大になる値を,2.4.2 項で述べた方法

(湛水状態の圃場を「湛水田」に置き換えて適用)で求め,

その値を閾値とした.

Fig. 11 に,A 地区の一部について,2018 年と 2019 年の

Table 2 SAR 画像による湛水有無の判別結果(面積集計) と判別精度

Results determining whether each paddy field was flooded using SARimages, and determination accuracy based on area (Numerical values inthe table indicate the total areas of each field correctly determined and thetotal areas of each field incorrectly determined.)

正しく判別された湛水田

正しく判別された非湛水田

誤判別された湛水田

誤判別された非湛水田

圃場面積 (ha)

VV偏波 SAR画像(閾値:-14.0 dB)

区分

987

825

282

196

判別精度= 79.1 %

※判別精度=(①+②)/(①+②+③+④)×100

正しく判別された湛水田

正しく判別された非湛水田

誤判別された湛水田

誤判別された非湛水田

VH偏波 SAR画像(閾値:-25.5 dB)

902

833

367

188

判別精度= 75.8 %

Fig. 10 閾値と判別精度の関係 Relationship between threshold values and discrimination accuracy

-28 -27 -26 -25 -24 -23 -22 -21 -2040

50

60

70

80

90

100-18 -17 -16 -15 -14 -13 -12 -11 -10

判別精度

(%)

VV 偏波の SAR 画像に対する閾値(dB)

VH 偏波の SAR 画像に対する閾値(dB)

VV 偏波の SAR 画像

VH 偏波の SAR 画像

Max. 79.1% (-14.0dB)

Max. 77.8% (-24.6dB)

Ⅱ_26

農業農村工学会論文集 IDRE Journal No.310(88-1), pp.Ⅱ_21-Ⅱ_28 (2020.6)

Page 7: Sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無 …

4 月 15 日の SAR 画像(VV 偏波)と湛水有無の判別結果を

示す.図示されている「湛水あり」の圃場(青色)の面積

は,2018 年が 93ha,2019 年が 156ha であり,2019 年の方

が 1.68 倍大きかった.2019 年において,水利権上,4 月 6

~15日の期間に代かき期の許可取水量と同量の許可取水量

が設定(代かき期の前倒し)されたことにより,多くの圃

場で代かきが早期に行われたことが,同図からよくわかる.

VV 偏波の SAR 画像による湛水有無の判別精度(調査エリ

アでは 79.1%)は,決して高いとは言えないが,試験的な代

かき期の前倒しによって代かきがどの程度早まったのかを

調査する上では,Sentinel-1 衛星データは十分に有効利用で

きると判断される.

4. おわりに

本研究では,同じ快晴日(2018 年 4 月 20 日)に Sentinel-

1衛星と Sentinel-2衛星の両方で観測が行われていた調査エ

リアにおいて,同日の Sentinel-2 衛星データによる水田の湛

水有無の判別結果を検証用データとして,同日の Sentinel-1

衛星データ(VV 偏波,VH 偏波)による水田の湛水有無の

判別精度を検証した.その結果,判別精度は,VV 偏波の

SAR 画像で判別した場合が 79.1%,VH 偏波の SAR 画像で

判別した場合が 75.8%であり,VV 偏波の SAR 画像の方が

湛水有無の判別に適していると判断された.また,代かき

期の前倒しに伴う代かきの早期化状況の調査において

Sentinel-1 衛星データは十分に有効利用できると判断され

た.

Sentinel-2 衛星データの場合,雲の影響を受け,雲・雲影

のエリアに位置している圃場の湛水有無は判別できない

が,判別精度は高い.一方,Sentinel-1 衛星データの場合,

雲の影響を受けず,すべての圃場の湛水有無が判別できる

が,判別精度はそれほど高くはない.今後は,それらによ

る湛水有無の判別結果の効果的な組み合わせ方法(例えば,

4 月 15 日の Sentinel-1 衛星データで 4 月 15 日に非湛水状態

と判定されても,4 月 13 日の Sentinel-2 衛星データで 4 月

13 日に湛水状態と判定されれば,4 月 15 日に湛水状態と判

断)について検討する予定である.

謝辞:本研究は,農研機構生研支援センター「生産性革命に向けた

革新的技術開発事業」の支援を受けて実施した.

Fig. 11 X 県の A 地区における 2018 年 4 月 15 日と 2019 年 4 月 15 日の VV 偏波の SAR 画像,および,湛水有無の判別結果 (A 地区の一部を拡大表示)

VV-polarized SAR images taken on 15 April 2018 and 15 April 2019 in a district of Prefecture X, and results determining whether eachpaddy field was flooded using each SAR image (Figure shows enlarged view of part of the district.)

(a) 2018.4.15 の VV 偏波の SAR 画像 (b) 2019.4.15 の VV 偏波の SAR 画像

※画素値の最小値は-24dB(黒),最大値は 5dB(白) ※画素値の最小値は-29dB(黒),最大値は 11dB(白)

(c) 2018.4.15 の湛水有無の判別結果 (d) 2019.4.15 の湛水有無の判別結果

湛水あり 湛水なし

Ⅱ_27

農業農村工学会論文集 IDRE Journal No.310(88-1), pp.Ⅱ_21-Ⅱ_28 (2020.6)

Page 8: Sentinel-1 衛星データと圃場区画データを用いた 水田の湛水有無 …

引用文献

Bazzi, H., Baghdadi, N., El Hajj, M., Zribi, M., Ho Tong Minh, D.,

Ndikumana, E., Courault, D. and Belhouchette, H. (2019) : Mapping

paddy rice using Sentinel-1 SAR time series in Camargue, France,

Remote Sensing, 11, 887, doi:10.3390/rs11070887.

福本昌人(2019):Sentinel-2 衛星データを用いた水田の取水開始時

期の把握,システム農学,35(2),15-23.

石塚直樹,斎藤元也,村上拓彦,小川茂男,岡本勝男(2003):

RADARSAT データによる水稲作付面積算出手法の開発,日本リ

モートセンシング学会誌,23,458-472.

石塚直樹(2015):衛星データを使用した 2011 年の福島県における

農地の土地被覆状況把握,農業環境技術研究所報告,34,81-100.

木村篤史,島村秀樹(2015):2 時期の高分解能 SAR データを用い

た水田利用形態の分類,写真測量とリモートセンシング,54(3),

118-132.

小川茂男,福本昌人,島 武男,大西亮一,武市 久(2003):衛

星データを用いた水田水入れ時期のモニタリング-尾張西部地

区を事例として-,日本リモートセンシング学会誌,23,497-505.

Otsu, N. (1979) : A threshold selection method from gray-level

histograms, IEEE Transactions on System, Man, and Cybernetics, 9, 62-

66.

Singha, M., Dong, J., Zhang, G. and Xiao, X. (2019) : High resolution

paddy rice maps in cloud-prone Bangladesh and Northeast India using

Sentinel-1 data, Scientific Data, 6, 26, doi:10.1038/s41597-019-0036-

3.

高木幹雄,下田陽久(1991):画像解析ハンドブック,東京大学出

版会,502-503.

高橋一義,力丸 厚,向井幸男(2004):RADARSAT データによる

圃場輪郭参照手法の高精度化の実証,写真測量とリモートセン

シング,43(5),6-15.

竹内章司,小西智久,菅 雄三,小黒剛成(2000):衛星搭載 SAR

データによる水稲作付面積の早期推定,写真測量とリモートセ

ンシング,39(4),25-30.

Xu, H. (2006) : Modification of normalised difference water index

(NDWI) to enhance open water features in remotely sensed imagery,

International Journal of Remote Sensing, 27, 3025-3033.

Detecting Paddy Field Flooding Using Sentinel-1 Satellite Data and Paddy Parcel Boundary Data

FUKUMOTO Masato

National Institute for Rural Engineering, 2-1-6 Kannondai, Tsukuba, Ibaraki 305-8609, JAPAN

Correspondence: FUKUMOTO M., e-mail: [email protected]

Abstract

The required amount of irrigation water in paddy fields varies depending on the time of year, because water intake

permitted from rivers for water rights is determined by period. Generally, water intake permitted for a period from soil

puddling is the largest. Periods for soil puddling have been advanced on a trial basis in response to changes in farming

programs. When the periods for soil puddling are advanced, surveys on how early soil puddling was actually done in

paddy fields are performed. The purpose of this study was to clarify whether synthetic aperture radar (SAR) data from

the Sentinel-1 satellite can be effectively used in such surveys. Accuracy in determining whether each paddy field was

flooded on the satellite observation date using Sentinel-1 satellite data and paddy parcel boundary data was verified.

The average pixel value (backscattering coefficient) of the SAR image was equal to or less than the threshold value

used to determine whether a paddy field was flooded. Verification of accuracy was performed in survey areas where

the ground surface was observed by both the Sentinel-1 satellite and the Sentinel-2 satellite on the same clear day (20

April 2018). In addition, highly accurate results were obtained by determining whether each paddy field was flooded

using multispectral data of the Sentinel-2 satellite and paddy parcel boundary data as verification. Determination

accuracy was 79.1% when the VV-polarized SAR image was used and 75.8% when the VH-polarized SAR image was

used. Therefore, VV-polarized SAR images are more suitable than VH-polarized SAR images for determining whether

paddy fields are flooded. In addition, Sentinel-1 satellite data can be used effectively in surveys.

Key words : Sentinel-1, Sentinel-2, SAR, Remote sensing, Determination accuracy, Soil puddling

Ⅱ_28

農業農村工学会論文集 IDRE Journal No.310(88-1), pp.Ⅱ_21-Ⅱ_28 (2020.6)

〔2019. 11. 27. 受稿,2020. 3. 2. 審査終了〕