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星槎道都大学研究紀要 経営学部 創刊号 2020 年 高校生の陸上競技長距離種目における指導について

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星槎道都大学研究紀要

経営学部

創刊号

2020 年

高校生の陸上競技長距離種目における指導について

石 井 祐 治

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高校生の陸上競技長距離種目における指導について

石 井 祐 治

⚑.はじめに

現在,陸上競技長距離種目の大会で高校生が参加できるレースが増え,同時に高校生たちは国内外のアスリート達の活躍を見てレースへの関心を高めてきている。そして何よりも日本で生まれた「駅伝」種目が普及して,テレビで中継放送される箱根駅伝をはじめとする駅伝競走は高校生たちの憧れとなり,大学に進学して「出雲駅伝」「全日本大学駅伝」「箱根駅伝」に出場して走りたい気持ちから長距離走を始める高校生たちが増えてきているように思われる。駅伝は,ロードコースを用いての試合がほとんどであるため駅伝の常連校ではロード走を中心とした練習や,ジョギングもロードを使用する場合が多い。筆者は,高校生の指導に携わってきた中で色々な問題に局面してきた経験から練習を実践させる前に考慮しなければならなかった反省点を今後の指導に活かしていかなくてはならないと感じている。今回,筆者は高校生の指導に携わった経験から高校生の長距離の指導について検証する。筆者が推奨する練習方法は選手の適性や練習環境に合った練習方法を取り入れる方法がベストだと感じている。そのためには,指導者が各々の練習方法のメリット,デメリットを把握した上で練習計画を立案して実行,検証,修正して練習計画の見直しを図りながら進めていくべきであろう。練習環境によって練習の効果は違うであろうが,そうすることによって国内,国外いずれの環境においても練習の効果は高まるものと考えられる。

⚒.ランニングにおける練習方法

現在,ほとんどの高校の練習は授業後の放課後におこなわれているなかで,ランニングに関する練習方法をざっと挙げてみると以下のような練習方法が用いられている。

【練習方法】①JOG(ジョギング)②LSD(ロング・スロー・ディスタンス)

③ペース走④ビルドアップ走⑤タイムトライアル⑥インターバル⑦レペティション⑧ウインドスプリント走⑨クロスカントリー走

①JOG(ジョギング)JOGとは,ジョギングとよばれ速く走るランニングとは違い,ウォーキングの延長でゆっくりとしたスピードで走ること意味して国立健康・栄養研究所によって示されているMETs 表によるとランニングは時速 6.4 km以上,ジョギングはそれ以下のスピードが目安とされている。またジョギングは準備運動で用いられる場合が多く,ウォーミングアップでレースに必要な動き作りに用いられている。また競技者がレースの後にクーリングダウンをおこなう時にも使われる。METs 表とは運動強度の単位で,安静時を⚑とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したものである。ジョギングに相当するMETs は5.0 以上の強度となり,時速 9.6 km のランニングとなるとMETs は 10となる。普段の練習では,準備運動や整理運動の時,積極的休養を図る時,体調を整える時などゆっくり走る時にジョギングが用いられる。またジョギングは怪我や故障者が練習に復帰する前の練習方法として体に与える影響が少ないことから有効な練習である。ジョギングは,競技者には心拍数が上がらない程度の運動強度であるため心肺機能の強化にはあまり役立たないため,負荷をかける用途には用いられない。

②LSD(ロング・スロー・ディスタンス)LSDとはロング・スロー・ディスタンスの略称で,一般に長い時間かけてゆっくりのペースで距離を踏む練習方法である。この練習方法は,特に一般の競技者に多く取り入られていて,スローペースで長時間走ることによって酸素の運搬能力を高めることから有酸素機能を向上させ,心肺機能が高まることから一般の競技者がマラ

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The Bulletin of Seisa Dohto University, Faculty of ManagementNo.1, 53-58, 2020

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ソン向けの練習に広く役立てている。有酸素運動によって,毛細血管を活発に増加させ多くの酸素を血液で循環させることができることから酸素摂取能力および全身持久力の向上が期待できるわけである。また脂肪の燃焼に役立つことからダイエット効果があり体脂肪の削減に効果があるとされジョギング同様に初心者や怪我や故障者の復帰した後の練習方法として用いられる。ロング・スロー・ディスタンスは速筋繊維を強化させる効果は低く,ジョギング同様にスピード強化には結びつかない。

③ペース走ペース走とは,ある一定のペースで走る練習方法でペース感覚を養うことができる。ペース走をおこなっていくことで一定の距離をスピードの上げ下げが少なく走れる技術を身につけることができるため,長距離選手の練習に有効な手段であるといえる。ペース走は持久力アップに効果的で,AT値の向上に効果的であるとされておりスピード持久力の向上に役立つ。AT値とは,有酸素運動と無酸素運動の境界レベルの運動負荷で走るペースのことで,ぎりぎりに近い一定の速度を維持して走ることのできる値である。効果的なペース走とは,余裕を持ったペース感覚で最後まできつくない程度のある一定ペースで余力を残して走れるスピードを保って走ることが重要である。繰り返しおこなうことによって徐々に距離を伸ばしていき,徐々にペースのレベルを上げていくことによってAT値レベルが向上していく。ペース走は,試合前の調整にも用いられる練習方法であり,試合前にレースペースと同じペースで走ることで目標タイムのテスト走になる。また,レース前の状態の確認とレースペースを体に覚えさせることができる。

④ビルドアップ走ビルドアップ走とは走り始めはペースを抑えて徐々にペースを上げていく練習方法で体力的には後半になるにつれて疲労が生じてくるためペース配分を考慮しておこなわなければならないが,レース後半からのペースが上がった時の精神的な苦しさに対して強化することができる。そして,乳酸性作業閾値(LT値)を高める練習方法である。乳酸性作業閾値とは,運動する際に発生する乳酸が発生する中で乳酸を利用することによって運動を続けることができるもので,乳酸濃度が高まらないレベルでの走りをすることによって長時間走り続けることができる分岐点を意味する。

乳酸性作業閾値を高めることはランニング効率の向上,筋肉の酸化系エネルギー供給力の向上につながるため速いペースでのランニングの持続時間が高まるものと考える。

⑤タイムトライアルタイムトライアルとはレースと同じような決められた距離を全力で走る方法で,毎日の練習の成果や自分自身の現段階での状態の確認やレース感覚を磨くことができる。レースの予行練習にもつながりレースプランの構成に役立つ練習方法である。実際には,全力で走るため練習計画を立てる際にタイムトライアルの実施日や体調を考慮しておこなわなければならない。タイムトライアルは試合と同様に体への負担がかかるため一定期間をおいた上で実施することが大切であり,定期的に実施するとよい。また,目標とするレースの距離よりも短い距離でおこなったほうが追い込んで走れるためレースより速いペースでおこなうことができる。予定していたペースより速いレース展開になった場合の対応にもつながる。

⑥インターバル一般的に長距離の練習に用いられる方法で,不完全休息を入れながら走る練習方法で,あらゆるスポーツ種目で取り入れられている。特に,陸上競技の中長距離種目の心肺機能の向上に役立つ練習方法である。インターバルの意味として,心肺機能に負荷がかかる走りを入れた後に暖走を入れた不完全な休息を入れ,それを繰り返すものである。インターバル走をおこなった後,数日間の回復期間を入れてから繰り返してインターバル走をおこなうことによって心肺機能の向上が望める。この練習方法の利点として,負荷をかける距離を短くして距離でセット数を増やしたり負荷をかける距離を長くしてセット数を少なくしたりと色々な組み合わせの中で用いることができる。

⑦レペティションレペティションとは,一定の距離を全力または全力に近いペースで走り完全休息に近い休息時間を設けた「疾走+休息」を繰り返しておこなう練習方法で,インターバル走との大きな違いとして,インターバルトレーニングは疾走後不完全休息で繰り返すトレーニングであるのに対してレペティショントレーニングは,完全休息を入れて負荷をかけるといった休息の仕方に大きな違いがあ

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る。練習の効果として,全力に近い負荷をかけることによって速筋線維を刺激するためスピードを向上させ,乳酸に対する耐性を高めるために,乳酸を多く発生させる運動強度が高い練習方法である。乳酸耐性を高めることによってより速いスピードで走り続けられるようになり,スピード持久力を高めることによってレース後半のペースダウンを抑える効果的な練習方法である。

⑧ウインドスプリント走ウインドスプリント走とは,全力ではなく⚗,⚘割の感覚で短い距離を走る練習方法である。距離的には 100m 前後の短い距離を数本程度おこなうもので追い込む走りをするのではなく適度なスピードの強度でおこなう。特に,レース前や体に刺激を入れたい時など身体の調子を整える意味でおこないレース前やメイン練習の前後に用いる場合が多い。初心者は,慣れるまではジョギングのあとにウインドスプリント走を入れた練習をして徐々にスピードを入れる距離を伸ばしていくよう色々な練習に加えていくとよい。

⑨クロスカントリー走クロスカントリー走とは,ロード走とは違った土や芝生といった自然の地の利を使った起伏や不整地な柔らかいコースでおこなうものである。この練習方法は,アスファルトと違い着地の際に衝撃が吸収され反発しないため普段使わない筋肉も使用され,上りや下りで負荷のかかり方が変わるためバランス感覚が養われ,脚筋力や上りを走る際の心肺機能の強化に役立つ練習である。また,丘のような地形を用いたヒルトレーニングでも平地での練習とは違ったクロスカントリー走と同じような効果があり,両者とも自然の地形を活かした練習方法で身体のバランス感覚や脚筋力や心肺機能に効果がある。

⚓.これからの高校生の指導における練習計画についての課題

⑴ 故障の予防高校生については,まだまだ成長過程の中での段階である。高校生の練習の内容も中学生時よりも練習の量と質が高まってくるため疲労度も高まり,身体器官に与える影響が大きくなるため,筋肉および靭帯,関節,骨への負担がかかることによって故障が起こる要因となる。

特に,⚑年生は練習環境,練習内容に慣れていないため身体へのストレスが高まることによって故障を誘発する要因になる。シンスプリント,中足骨の疲労骨折,ハムストリングの肉離れ,膝蓋骨軟化症,膝蓋靭帯炎,オスグット,長径靭帯炎など各怪我の種類があるがいずれも原因として練習のし過ぎによる各個所への過度な負担によって起こるものである。そのため,練習の内容に各選手たちへの身体に負担がかかり過ぎないよう配慮しなければならない。現在,高校生の長距離走においての記録の向上によって練習の内容も質量ともに増えていく傾向にあり体への負担が高まってきているのが現状である。指導者として,記録の向上の中に高校生の長距離種目の大会で目標とされている全国高校総体(インターハイ)や全国高校駅伝を目指しているため,春先から夏はトラック練習,夏から冬場においてはロード練習が主体となるため高校生にとって休養期間が限られているのが現状である。欧米諸国のトレーニングをみてみるとアスリートたちは冬場,走り込みよりもウエイトトレーニングや室内での球技やウインタースポーツを行なっている。日本では,冬場は駅伝シーズンとなるためロードでの試合が多くなり,トラックシーズンに向けての走り込みとしてロード走を用いる場合が多いため,特に冬場は筋肉や諸関節・靭帯にかかるストレスがかかり故障が発生しやすい。故障の原因として,ロード練習やスピード練習のやり過ぎから起こると考える。筋肉にあるグリコーゲンの回復には 48時間かかるとされている。つまり最大レベルの練習強度で入れた場合最低でも⚒日間は練習の強度を落とさないと元のレベルには戻らない。そのような事を考えると,⚒日間同じ強度のレベルで練習を入れた場合⚒日目の練習の際には注意して行わないと故障や怪我に結びつく危険性があるということになる。現在,全国高校総体の地区予選大会をみてもレースが続く中での日程となるため,⚑日に⚒レース出場もしくは⚒日連続しての出場となるため,レースを想定した上での練習を計画していかねばならないと考える。筆者は,⚒日間強度の高い練習を組む場合には⚑日目より⚒日目に強度の高い練習を行うようにすれば実践的なものになるかと思われる。この事は,決勝をふまえた上で,いかに予選で余裕をもってレースをできるかは,普段からの練習によって活かせるはずである。例えば予選で,軽そうに走っていた選手が決勝では予

高校生の陸上競技長距離種目における指導について

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選よりも悪い結果で終わってしまう場面がよくある。原因として体力的要因もあるだろうが⚑本目の予選で心身共にもてる力を発揮し過ぎてしまい⚒日目は,心身共に疲弊した状態に陥ってしまい予選の動きもできないまま終わってしまったと考えられる場合がある。⚑本目の予選よりも⚒本目の決勝で最大限の実力を発揮させるための練習として練習の内容として⚒日間強度の高い練習を組む場合,⚑日目よりも⚒日目に強度を上げるべきと考える。練習の強度については選手の走力に応じて⚑日目は全力にならない強度の内容にして⚒日目に強度の高い内容にすることによって,連戦になるレースを想定した上での練習になるであろう。故障の原因として疲労の蓄積によって起こる場合があるため練習の過程の中で故障を誘発する伏線がみられた場合には直ちに練習の内容の見直しを図らなければならない。そして,大会までの計画を修正していけば,大きな故障にならず回復修正が効くであろう。指導者は選手が故障しそうな時点で,素早く察知して故障を回避する策を投じるのも重要なことで,指導者と選手とのコミュニュケーションが作られていないとできない。選手は試合に出場したいがために,多少の異変が生じても指導者に黙っているケースがみられ,あとで指導者が知ったケースが多いのは,指導者が普段から選手の動きをよく見た上で状態の確認を常にチェックするなど細かい気づきが必要なことであろう。そのためにも指導者と選手との信頼関係の構築が必要となり練習日誌をつけさせて,定期的にチェックしてアドバイスを入れながら取り組ませることと同時に,定期的なメディカルチェックも必要となる。また気候に応じて練習環境を配慮することも必要なことであり,練習場所,練習時間,練習内容も考慮すべきである。

⑵ 貧血の予防公益財団法人日本陸上競技連盟が推奨するアスリートの貧血対策として⚗つの項目が挙げられている。

①食事で適切に鉄分を摂取すること。②鉄分の摂りすぎに注意すること。③定期的な血液検査で状態を確認すること。④疲れやすい,動けないなどの症状は医師に相談すること。⑤貧血の治療は医師と共におこなうこと。⑥治療と共に原因を検索すること。⑦安易な鉄剤注射は体調悪化の元になること。

貧血の原因として病的な要因で起こるものとスポーツ等でハードな運動によってヘモグロビン鉄が発汗や尿や便から消失して,ランニング特に長距離走では長時間足底に衝撃が加わることによって赤血球が破壊されて溶血して貧血の症状を引き起こす。特に成長期である思春期の運動選手にとって鉄分は血液を作成する以外に,筋肉や骨格などの身体を構成する際に使われる物質であり,常に鉄分の数値が高い状態でないと貧血に陥りやすくなる。女子の場合は,月経による失血がともなうため特に注意を要するものである。主な症状として疲労感,だるさや動悸,息切れなどがあるが長距離選手のほとんどは貧血状態に陥っているのに気がつかない場合が多いため,定期的な血液検査が有効な手立てであるのと同時に食生活に常に気を使い食育も充実させていかなければならない。血液検査の指標として⚓ヶ月に⚑度,赤血球,ヘモグロビン,ヘマトクリット,血清鉄,血清フェリチンが基準値を下回っていないかどうか検査してみることによって選手が安心してトレーニングに取り組めるものと考える。一般的な食事の中でもレバーなど鉄分を多く含む肉類の他に鉄の吸収率を高めると言われるホウレンソウなどの野菜類そしてビタミンC,亜鉛を一緒に摂取できる食事に気を使うと良いであろう。そして,補助食品として鉄分などを多く含んだサプリメントを食事と一緒に摂ると効果的である。貧血の陥りやすい夏場などは特に食欲が衰退してしまい貧血になってしまうと改善が遅くなるため梅雨時から食生活に注意する必要がある。特に鉄分などの補給は意識して摂取する必要があるが健康補助食品に頼り過ぎないよう日頃から食事に注意する必要がある。

⑶ モチベーションの維持スポーツ選手の中に,燃えつき症候群に陥るケースがある。いわゆる精神的に落ち込んだ状態になりやる気を失い競技を続ける意欲がなくなり自分から止めてしまうケースが見られる。心身の状態が悪くなりバーンアウトに陥るケースの前の段階で適切な対応をしておかないと手遅れになってしまう。その前触れとして,モチベーションの低下が挙げられる。メンタルな面での影響として,日常生活の中でイライラや不安,焦りの症状が見られ,身体的な部分への影響としては,食欲不振,不眠,発熱などの症状が見られる。

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これらの症状が出ないようにするためには,普段からの練習時間,部活動以外の時間の確保,休養・睡眠時間の確保が必要不可欠となる。高校生活の中で,部活動と勉強との両立や人間関係など思春期の生徒にとってストレスが多くのしかかって精神的な負担からモチベーションの低下が見られる場合がある。これらを防ぐためにも指導者が選手の生活状況が把握できるような手段をとらなくてはならない。よく部活動日誌を書かせて指導者が練習結果を確認して選手に指導しているが,直接選手と面談等向き合った形で進捗状況を確認して,場合によっては相談に応じる機会を定期的に設ける必要があるであろう。特に中学時代に活躍していた選手が高校に進学してから怪我などで伸び悩んだまま競技生活を終えてしまった選手の話を聞くが,この場合,競技に対する意欲を失う,燃え尽き症候群と言われるバーンアウトに陥ったケースが多い。指導者としては,こうしたケースにならないよう選手の心身の状態を常に観察して傷口が大きくなる前に対処していかなくてはならないので選手とのコミュニュケーションを図れるよう選手が指導者と向き合える状況を作っておかなければならない。そのためにも練習日誌をつけさせて選手状態を確認したうえで定期的に面談して選手の話を聞いてアドバイスを送るようなコミュニュケーションを図れる場を作ると良いであろう。

⚔.まとめ

高校生の陸上競技の長距離指導について,専門的な知識や技術および豊富な経験を積んだ指導者であれば高いレベルの指導ができるかと思うが,まずは生徒達への意識付けも大切であろう。そのためには,長期的な目標な

ど明確に設定することが大事である。指導者は過去の経験や学んで得た知識などを土台にして練習計画を立案しているかと思われるが,その中で練習計画の内容を理解させた上で生徒自身が思考する取り組みの場を作ってやるべきだと思う。今,文部科学省が推奨するアクティブラーニングが当てはまるかと考える。指導者自身も指導される側に立って,計画→実行→評価→改善といったサイクルをつなげていきながら練習レベルを上げていく必要があるであろう。段階を踏みながら作り上げていかなくて指導される側がついていけなくなる可能性があるからである。これからは,画一的指導ではなく会話を通じて納得いく上での練習計画を立案,実行させていく指導が有効であるかと考える。

参考文献⚑)ノックス,ティム(ランニング学会訳)『ランニング事典』大修館書店,1994

⚒)サウスメイド,ウィリアム他(中嶋寛之監修)『スポーツヘルス』ブックハウス・エイチディ,1983

⚓)日本スポーツ心理学会 編集『スポーツ心理学事典』大修館書店,2008

⚔)公益法人日本陸上競技連盟『アスリートの貧血対処⚗ヶ条』2016

⚕)石川三知『トップアスリートになるための食事と栄養学─ベストな身体を作り勝利を目指す実践スポーツ栄養学!』日本文芸社,2004

⚖)井藤英俊,山本順之「長距離走の授業におけるアクティブラーニングの導入:新学習指導要領に対応した体育授業の提案」『九州保健福祉大学研究紀要⒆』53-58,2018

高校生の陸上競技長距離種目における指導について

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Guidance of High School Students in Long Distance Events in Athletics

ISHII Yuji

AbstractCurrently, the number of races that high school students can participate in in long-distance athletics events is

increasing, and at the same time, high school students are increasing their interest in racing by watching theactivities of athletes in Japan and abroad.And above all, the “Ekiden” event that was born in Japan spread, and the Ekiden race including Hakone

Ekiden which is broadcast ed by television became a longing of high school students, and went on to university“Izumo Ekiden” and “All Japan University Ekiden” It seems that the number of high school students who startlong-distance running from the desire to participate in “Hakone Ekiden” and run is increasing.Since the Ekiden is mostly a game using a road course, regular schools in Ekiden often use road practice and

jogging, mainly road running.The author seems to have to make use of the reflection points which had to be considered before the practice

is put into practice from the experience which has faced various problems in the guidance of the high schoolstudent in the guidance in the future.This time, the author examines the long-distance guidance of high school students from the experience of

teaching high school students. I think the best practice method I think is to incorporate the practice method thatsuits the player’s aptitude and practice environment. In order to do so, it is necessary for the leader to understandthe merits and disadvantages of each practice method, and then plan the practice plan, execute it, verify it, andrevise it while reviewing the practice plan. The effect of the practice might be different depending on the practiceenvironment, but the effect of the practice is considered to increase in both domestic and foreign environments bydoing so.

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