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河道管理のための洪水・土砂移動解析 技術の深化と課題解決への道筋 2014年度河川技術に関するシンポジューム 201465中央大学研究開発機構 福岡 捷二

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Page 1: 2-2014年河川技術シンポジューム Keynote Lecturecommittees.jsce.or.jp/hydraulic01/system/files/OS1_2.pdf講演内容 1.洪水流・河床変動に関する調査・研究の変遷と今後の方向性

河道管理のための洪水・土砂移動解析技術の深化と課題解決への道筋

2014年度河川技術に関するシンポジューム2014年6月5日

中央大学研究開発機構福岡 捷二

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講演内容

1.洪水流・河床変動に関する調査・研究の変遷と今後の方向性

2.観測水面形の時間変化を境界条件に,洪水流と河床変動を一体的に解く

3. 河道と構造物,河床変動を一体的に捉え,異なる時空間ケールからなる種々の水理現象を広範囲に,統合的に解析する.

4.砂礫河川の洪水流,河床変動解析のまとめ

5.石礫河川の洪水流と河床変動解析

6.数値移動床水路による移動床水理学の地平を開く

7.石礫河川の洪水流,河床変動解析のまとめと展望

8.おわりに

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1.洪水流・河床変動に関する調査・研究の変遷と今後の方向性

1.1950年代から1960年代後半・水理解析,実験水路を用いた移動床水理の基礎現象の検討・大型水理模型実験による河道計画・数値解析時代の幕開け

2.1970年代・河川の流砂研究の隆盛期・総合治水計画・洪水氾濫解析

3.1980年代から1990年代後半・洪水流,河床変動の現地河川観測と分析・洪水流の一次元解析から準二次元・二次元数値解析へ・治水,利水,環境の整備と保全を目的とする河川の総合管理・多自然型川づくり

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4.2000年から現在・河川整備基本方針,河川整備計画の策定・多自然川づくりの基本方針策定・大型模型実験と数値解析手法の相互補完に基づく河道設計技術・洪水流と河床変動を一体的に解く数値解析技術の進展と洪水-土砂水理

システムの理解増進・河川を広がりを持った洪水―土砂水理システムとして捉えた河川砂防技術基準の改定,維持管理基準の策定

・総合土砂管理・防災から減災へ,

5.これから・ 時空間的にスケールの異なる河川の諸現象を広範囲に統合的に解く数値

解析技術の活用による多自然川づくり・ 新しい土砂移動解析法の河川への適用技術の開発・ 治水と環境の調和した多自然川づくり設計技術の推進・ 気象予測技術の向上による治水計画技術の展開・ 気候変動に適応した治水対策,超過洪水対策の検討・実施・ 河川と都市の連携による都市の耐水安全性の確保技術・人口減少時代の流域管理.

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洪水流と土砂移動は河川の諸現象の基盤を構成する

洪水流解析

土砂移動解析

河川環境

生態系構造物

河道形状

人口減少気象予測技術の向上

流域都市

減災対策

河道

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・河川の計画,管理を適切に行うためには,洪水流と河床変動の十分な理解に基づく解析技術と適用性の広い解析モデルを持つことが不可欠である.

・洪水流は土砂の移動,河床の変動を引き起こし,また,河床の変動は洪水流下形態に影響を及ぼす.したがって,両者の一体的な解析モデルが望まれる.

・洪水流と土砂の移動は,河川で起こっているあらゆる現象,すなわち,河道の縦横断面形,構造物とその周りの流れ・洗掘・堆積,河川環境,河川生態等に密接に関係している.このため,洪水流と土砂移動の一体的解析モデルは,これら密接に関係する要素の解明に役立つ基盤を構成するものである.

そのような解析モデルとは,「観測水面形の時間変化を境界条件に与え,洪水流と河床変動を一体的に解析し,流れの三次元構造,特に,河床底面付近の流即場を的確に表現することにより土砂移動を正しく記述できるものであることが必要である.これにより,異なる時空間スケールからなる種々の水理現象を広範囲に,統合的に解析可能」なものである.

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2.観測水面形の時間変化を境界条件に与え,洪水流と河床変動を一体的に解く

・ 洪水流の解析では,上流端境界条件として洪水流量ハイドログラフを,下流端境界条件に水 位ハイドログラフを与えて,水位や流速等流れ場を解く方法が一般的に用いられて来た.

これは,河床高が洪水中にほとんど変動せず,ほぼ固定床として扱えるような川底形状であれば,与えた流量ハイドログラフに対して,水位ハイドログラフを未知量として解析を行うのは 妥当な方法である.

・ 近年,水位を同時多点で高精度に観測することが容易になり,河川の水面形の時間変化(多点で同時に測定された水位を連ねたもの)を高精度に容易に求めることが可能になった.このように洪水時の水位が流量よりも高精度に多点で容易に測れる時代に

あっては,大きな河床変動,河道貯留量,河道遊水量がある洪水流の基本情報が適切に反映されている観測水面形の時間変化を既知量(境界条件)とし,流量ハイドログラフを未知量とする ことは,洪水流,河床変動の解析法として本質的であり,河川の実務問題解明に用いられてきた.

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流速分布,底面流速(BVC法)

河床変動解析法

洪水前河床形状洪水ピーク河床形状

洪水後河床形状

水面形時系列データ

洪水前の平均河床高

洪水後の平均河床高

観測データ

下流設定水位

下流端

上流端

上流設定水位

上昇期水面形(実線)下降期水面形(破線)

図-1 水面形時系列データに基づく洪水流・河床変動解析のイメージ

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項目水面形時間変化(水位時空間変化)(必須**)洪水後の平均河床高の縦断分布流量(ある断面の流速)

観測水面形時系列データ

境界条件設定データ上流設定水位時系列下流設定水位時系列給砂量(上流平衡流砂量)

初期状態の地形データ平面形状,断面形状

解析メッシュデータ

メッシュ平面形状,河床高,地被状況(メッシュの種類)など

初期状態の地被状況

粗度分布,樹木抵抗係数分布

境界条件上流端境界条件(上流端水位調整)下流端境界条件(下流端水位調整)上流流砂量(平衡流砂量)

洪水流(BVC法)・河床変動解析

観測データ

調整・修正*

解析結果の検証

解析モデルの検証

比較

解析結果水面形の時間変化(水位時空間変化)流量ハイドログラフの縦断分布流速分布の時空間変化(底面流速の時空間変化)河床高の時空間変化

解析(水理)データへの変換

* 洪水流の上昇期・下降期の緩やかな水面形変化に追随する抵抗分布の値を求めることは容易である** 水面形データは観測データで唯一時空間分布をもつ

図-2 水面形時系列データに基づく洪水流・河床変動解析フロー

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未知量 方程式,評価式境界条件・初期条件

洪水流(BVC法)

(1) 水深平均流速水平方向運動方程式

(水深積分)

水面形の時間変化(上・下流端水位ハイドログラフ含む)

(2) 水深 連続式(水深積分)

(3) 底面流速 渦度の定義式(水深積分)

(4) 水深積分渦度 渦度方程式(水深積分)

(5) 水表面流速水平方向運動方程式

(水面)

(6) 水深平均鉛直流速 連続式(水深二重積分)

(7) 底面圧力鉛直方向運動方程式

(水深積分)

土砂移動・河床

変動

(1) 掃流砂量 (芦田・道上式)初期河床形状,河床材料,流入土砂

(2) 浮遊砂の浮上量 (板倉・岸の式)

(3) 浮遊砂濃度 三次元移流拡散方程式

(4) 河床変動 流砂の連続式

水面形の時間変化を境界条件にした洪水流・土砂移動解析法の例

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0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

流量

(㎥

/s)

導流堤

水制

樹木群水位観測地点

8/4 8/5 8/6 8/7 8/8

観測流量(15k地点)

48時間水位観測

Flow

流量観測(15k地点)

河床高(T.P.m)

図-3 石狩川河口部の平面形状 およびS56.8洪水における水位観測地点

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0

1

2

3

4

5

6

7

8

-3k -2k -1k 0k 1k 2k 3k 4k 5k 6k 7k 8k 9k 10k 11k 12k 13k 14k 15k 16k

水位

(T.P

.m)

左岸 右岸 △ ▲ 観測 解析 福岡の式 解析 芦田道上の式 解析 佐藤吉川芦田の式

(洪水ピーク)8/6 3:00

8/5 0:00

8/5 12:00

-20

-18

-16

-14

-12

-10

-8

-6

-4

-2

0

-3k -2k -1k 0k 1k 2k 3k 4k 5k 6k 7k 8k 9k 10k 11k 12k 13k 14k 15k 16k

標高

(T.P

.m)

洪水前 実測 洪水前 実測

洪水後 実測 洪水後 実測

洪水後 芦田道上式 洪水後 芦田道上式

洪水後 佐藤吉川芦田式 洪水後 佐藤吉川芦田式

洪水後 福岡式 洪水後 福岡式

低水路平均河床高 最深河床高

蛇行区間

図-4縦断水面形の時間変化の観測結果と解析結果(水位上昇期)

図-5洪水前後の低水路平均河床高・最深河床高縦断形の観測結果と解析結果

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図-5 信濃川下流の流域図

3. 河道と構造物,河床変動を一体的に捉え,異なる時空間ケールからなる種々の水理現象を広範囲に,統合的に解析する.

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洗堰

尾崎

蒲原大堰

刈谷田川右岸P

荒町

三条下水P

新川P

保明新田

田上郷P

16

18

20

22

7/29 16:00 解析値 7/29 18:00 解析値 7/29 20:00 解析値 7/30 0:00 解析値

7/30 3:00 解析値 7/30 9:00 解析値 7/30 14:00 解析値 7/30 18:00 解析値

初期河床高 洪水後河床高

洗堰

尾崎

蒲原大堰

刈谷田川右岸P荒町

三条下水P

新川P

保明新田田上郷P

水田P

小須戸橋

臼井橋

大秋P覚路津P

新酒屋鳥屋野潟P

帝石橋

信濃川水門(上)新潟大堰(上)

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

22

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51

距離(k)

標高

(T.P

.m)

7/29 16:00 解析値 7/29 18:00 解析値 7/29 20:00 解析値

7/30 0:00 解析値 7/30 3:00 解析値 7/30 9:00 解析値

7/30 14:00 解析値 7/30 18:00 解析値 洪水後河床高

右岸堤防

左岸堤防

HWL

● 痕跡水位 左岸○ 痕跡水位 右岸▲ 観測値◇ 平均河床高(実績)

関屋分水路

洪水後河床高(解析結果)

五十嵐川合流 刈谷田川合流

中ノ口川分派

加茂川合流

小阿賀野川合流

下条川合流

中ノ口川合流本川下流

図-6 平成23年7月洪水における水面形の時間変化及び河床高縦断分布の解析値と実測値の比較(信濃川)

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0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

7/29 12:00 7/30 0:00 7/30 12:00 7/31 0:00 7/31 12:00

流量

(m

3/s)

荒町(解析値) 中ノ口水門(解析値)板井(解析値) 帝石橋(解析値)荒町(観測値) 中ノ口川水門(観測値)板井(観測値) 帝石橋(観測値)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

7/29 12:00 7/30 0:00 7/30 12:00 7/31 0:00

西野

地区

の氾

濫量

(万

m3)

西野地区氾濫ボリューム(計算値)

西野地区氾濫ボリューム(洗堰実績水位からの推定値)

図-7 流量ハイドログラフの解析値と観測値の比較

図-8 西野地区の氾濫ボリュームの時間変化

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図-9 斐伊川本川と放水路の平面図

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13.0

14.0

15.0

16.0

17.0

18.0

19.0

13 13.5 14 14.5 15 15.5 16

斐伊川放水路実線:Cal.(左岸水位)点線:Cal. (右岸水位)

◇:Obs.(左岸水位)△:Obs.(右岸水位)

図-10 洪水水面形の時間変化と平均河床高に実測値と計算値の比較

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(a)洪水終了時の解析結果

(b)洪水終了後の実測結果

図-11 河床変動量のコンター図

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4.砂礫河川の洪水流,河床変動解析のまとめ

1.砂礫河川では,水面形の時間変化を境界条件として,的確に流れの解析が可能な方程式形(たとえば一般BVC法) と二次元河床変動の式を用い,底

面流速および河床変動量を求める洪水流解析と土砂移動の一体的解析法は,平均河床高,最新河床高分布の計算を可能にする等,砂礫河川の多くの問題の解明につながった.

2.河床変動の大きい河川の河床高の 解析結果には,初期河床高分布が大きく影響する.初期河床高の与え方に注意が必要である.

3.検討事例に用いた石狩川,信濃川下流や,斐伊川のように複雑な河道構

成(河道線形が縦断的に変化し,河川の分合流など構造物が流れを規定し,河道貯留や河床変動が大きい)を持つ河川にあっては,平面二次元解析をベースとした流れの解析法は,洪水流,河床変動を十分説明できない.このような場合には,流れの三次元性が考慮されているBVC法(底面流速解法)を用いる必要がある.

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砂礫河川石礫河川

5.石礫河川の洪水流と河床変動解析

・石礫河川では,石礫の大きさ,形状が多様な分布を持ち,河床の凹凸が大きく,多量に移動するために,先に示した従来の砂礫河川の解析法は,そのままでは使えない.現段階では,長田・福岡による石礫河床の凹凸分布とせん断応力ではなく石礫に及ぼす流体力を考慮した河床変動解析法が,比較的説明力が高い.

・しかし,従来モデルでは石礫河川における流れと石礫群の相互作用や石礫群の間で頻繁に起こる衝突による運動量交換等,石礫河川の力学の本質である粒子群と

流れの間の相互作用が考慮されていない.

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6.数値移動床水路による移動床水理学の地平を開く

任意形状粒子群の個々の粒子運動に着目し,流れをEuler的に,粒子運動をLagrange的に直接解析する数値移動床水路を用いた福田・福岡らの解析は,流れと粒子群の相互作用を考慮しており,この成果は,土砂水理学の新しい地平を開く可能性がある.

図-10 数値移動床水路における反砂堆の発達

1 2

3 4

解析に用いた石礫

120 90 mm70 mm 50 mm

5m

10m

15m 5m

10m

15m 5m

10m

15m 10m

5m

15m

15m

10m

5m

通水前

t =

t =

t =

t =

40 mm

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図-10 流砂量の時間変化 (上)球, (下)石礫

流砂

量×

10-3

(m3 /

s)

図-10には,水路下流端で計測した各粒径の流砂量とその合計を示す.上図は

球粒子群,下図は石礫粒子群である.これらの図より,流砂量は,球粒子群のほうが多く,全流砂量は,時間の経過とともに減少している.石礫河道で周期的な反砂堆が発達する t = 300 s 以前の時刻では,大粒径粒子の流砂量が流砂量の

半分程度を占めていたが,周期的な反砂堆が形成された後は,大粒径粒子の流砂量が減少し,小粒径粒子と同程度の流砂量となっている.粒子群の形の影響と形に起因して起こる河床構造の抵抗を,どのように解析モデルに取り込むかが今後の大きな課題である.

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7.石礫河川の洪水流,河床変動解析のまとめと展望

1.石礫河川を構成する石礫の形は多様であり,これが石礫河川の流砂特性を規定する.特に,粒子間のかみ合わせ効果と衝突が与える影響が砂礫河川に比して著しく大きいことから,この特性を十分考慮した解析法が検討されねばならない.

2.数値移動床水路では,河床近傍の粒子運動と流体運動及びそれらの相互作用を調べることが出来,これより流れの抵抗則等河床の構造,流砂運動等が明らかになる.

3.従来の移動床水理の考え方の問題,用いられている理論の妥当性や適用限界が明らかになる.

4.流砂モデルの開発のための移動床流れの基礎データを取得することができ,これらを用いた移動床数値シミュレータによって流砂力学の新しい地平が開かれることが期待される.

5. 数値移動床水路での研究成果を河川管理,河道設計の実務にどのように生かすかが次の課題となる.具体的には,Lagrange解析で得られた粒子群の運動をEuler の運動方程式で表現することが次の課題である.

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8.おわりに

洪水流と土砂移動問題は,河川問題の中心課題である.それゆえに,洪水流と土砂移動解析技術は,河川技術の王道に位置づけられる.

この中心技術が,生き生きと展開していかなければ,安全で自然豊かな川づくりは難しい.しかし,現実はどうであろうか?

本講演では,洪水流と土砂移動の解析技術の最前線について述べた.ここで示

したもの以外にも議論すべき技術は,いろいろあるが,今回は除いたことをお許し願いたい.

河川の水理現象は,一次元から三次元まで時・空間的に広く分布している.こ

れら河道全体の水理現象をカバーできる方程式系からなる一つの解析モデル(たとえばBVC法)が基本にあり,それぞれ場の状況に応じた適切な方程式群を選択できる多重構造の解析モデルが望まれる.

現在の技術基準は,一般論で書かれており,このような要請にこたえることは難

しい.複雑な洪水,土砂移動場の解析は,労力,費用がかかっても必要であれば実行する.今は,簡単な解析でおおよその判断出来ればよいという時代ではなく,検討対象領域の上下流の広い区間を含めて,明確な根拠に基づき,洪水,土砂移動を検討する時代である.

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技術者には,知恵を絞って上手に技術を使い,「いい川づくり」に向け

た一層の努力を期待したい.研究者には,現在の研究レベルに満足せず,新しい発想で骨太の研究を進展させる努力を期待したい.

今回のシンポジュームの洪水流,土砂移動の課題は,治水と環境の調和,維持管理,超過洪水対策,都市の水害対策,総合土砂管理,人口減少と流域治水の在り方,気候変動に適応した治水対策等これからの解決すべき重要な課題に密接に関係する.

技術開発,研究開発への時代の要請は,待ったなしの状況にあることをしっかりと意識する機会としたい.