23 1211 014成果報告書public-report.kasen.or.jp/231211014.pdf河川整備基金助成事業...

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における および遺 23-1211-014 大学大学院医学 23

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  • 河川整備基金助成事業

    「降雨時の河川における人獣共通感染型の病原

    微生物の濃度変動および遺伝子多様性の解析」

    助成番号:23-1211-014

    山梨大学大学院医学工学総合研究部 原本 英司

    平成 23年度

  • 1. はじめに

    ノロウイルスやクリプトスポリジウムに代表される水系感染性の病原微生物は、水や食

    品などを介して経口的にヒトに感染し、下痢や嘔吐、発熱などの様々な症状を引き起こし、

    糞便中に高濃度に排出される。下水処理場や浄化槽での処理を経た水に感染力を有した病

    原微生物が含まれる場合、病原微生物は河川を流下し、水道水の飲用や親水行為での誤飲、

    海産物の喫食などを通じてヒトへの再感染を引き起こす可能性がある。このいわゆる「水

    系感染リスク」については、水環境中での病原微生物の存在実態に関する知見が不足して

    いることが主な原因となり、十分には明らかにされていないのが現状である。

    水環境中における病原微生物の濃度変動には、流域内の感染者数の増減に応じた長期的

    なものに加え、降雨時の出水や日変動などによる短期的なものも存在している。現在まで

    に、国内外の様々な地域で水環境中の病原微生物の検出調査が実施されてきているが、調

    査頻度が低い場合が多く、長期間にわたる詳細な病原微生物の濃度変動特性に関する知見

    が不足している。このような知見は、水道原水中の急激な病原微生物の濃度変動によって

    取水に影響を受け得る浄水場において、微生物学的な水の安全性を確保するために特に重

    要である。

    水道原水への病原微生物の混入源としては、ヒトのみならず、流域内に生息する動物か

    ら排出される糞便も想定される。病原微生物は、ヒトのみに感染するもの、特定の動物の

    みに感染するもの、さらには、ヒトと動物の両方に感染する人獣共通感染型のものに分類

    される。そのため、水道水の飲用による水系感染リスクをより正確に評価する上で、水道

    原水あるいは浄水中に存在する病原微生物のヒトへの感染性の有無(すなわち、遺伝子型

    の分布特性)を明らかにすることは非常に重要である。しかしながら、水道水源を含めた

    多くの水環境中における病原微生物の遺伝子型の分布特性に関する知見は十分であるとは

    言えない。

    本事業では、首都圏の主要な水道水源である利根川を対象とし、1 年間にわたる継続的

    な採水調査を実施することにより、水道原水となる河川水中における病原微生物と指標微

    生物の濃度変動特性および遺伝子多様性を明らかにすることを試みた。

    2. 調査方法

    2.1 調査対象地点および試料の採取

    調査対象地点として、首都圏の主要な水道水源である利根川の利根大堰(埼玉県行田市)

    を選定した。2011 年 5 月~2012 年 3 月の期間中、週 1 回の頻度で河川水(表流水)を採取

    した。また、採水予定日の前後に降雨が予想されていた 8 期間中には、最大 5 日間にわた

    って経日的な採水を実施した(降雨イベント 1~8)。各採水日における採水時刻は 9 時と

    した。ただし、2012 年 1 月 20 日のみ、9 時と 16 時の 2 回にわたって採水した。調査期間

    全体で採水した試料数は 67 試料であり、採水日時の早いものから順に 1~67 の試料番号を

    付した。

    埼玉県企業局水質管理センターの協力により、採取した試料のうちの 1L は、陽イオン

    吸着・酸洗浄・アルカリ誘出法 1)を用いたウイルスの濃縮操作に供した。また、滅菌済み

  • のポリ容器(容量 200mL)に満水まで試料を入れ、保冷剤を入れたクーラーボックス内で

    冷蔵して山梨大学の実験室まで輸送した。

    2.2 濁度の測定

    山梨大学に到着直後の試料 10mL を用い、簡易水質分析計(HACH)によって濁度を測

    定した。

    2.3 流量および降水量データの取得

    取水地点より利根川本川の上流に位置する地点(古戸)における流量データを利根川水

    系土地改良調査管理事務所水源情報提供システム(http://tonecho.st.wakwak.ne.jp)より取得

    した。また、気象庁アメダス(http://www.jma.go.jp/jp/amedas/)より、流域内の地点(伊勢

    崎)における降水量データを取得した。なお、流量と降水量データはそれぞれ別の地点(流

    量:川俣、降水量:熊谷)からも取得しているが、両データ共に 2 地点で類似した変動特

    性を示したことから、調査対象地点での流量と降水量の代替としても使用可能であると判

    断した。調査期間中の流量、降水量および濁度の変動は図 2.1 に示す通りである。

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    0.1

    FAU

    )

    Date

    Rainfall Water sampling River flow rate Turbidity

    図 2.1 調査期間中の流量、降水量および濁度の変動

    2.4 指標微生物の測定

    指標微生物として、大腸菌群、大腸菌、嫌気性芽胞菌および F 特異大腸菌ファージ(F

    ファージ)を測定した。大腸菌群と大腸菌は、コリラート(Idexx Laboratories)を用いた

    最確数法によって測定した。嫌気性芽胞菌は、ハンドフォード改良培地(栄研化学)を用

    いた三重層法によって測定した。F ファージは、Salmonella enterica serovar Typhimurium

    WG49 を宿主菌に用いたプラック法によって測定した。測定に供した試料の量および測定

    回数より、各指標微生物の検出限界は、大腸菌群と大腸菌が 4.0 most probable number(MPN)

  • /100mL、嫌気性芽胞菌が 0.05 colony-forming units(CFU)/mL および F ファージが 0.05

    plaque-forming units(PFU)/mL であった。

    2011 年 5 月 10 日~2012 年 1 月 31 日に採取した 50 試料について、シャーレ上に形成し

    た Fファージのプラックを 1試料あたり最大 8個単離し、滅菌MilliQ水 500μLに溶解した。

    このプラック溶解液から 10μLを分取して RNAを加熱抽出(95℃5分)した後、High Capacity

    cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)を用いた逆転写反応に供し、cDNA 溶

    液 20μL を得た。cDNA 溶液から 2μL ずつ分取し、核酸として RNA を保有する F 特異 RNA

    大腸菌ファージ(F-RNA ファージ)の 4 種類の遺伝子群(I~IV 群)それぞれに特異的な

    リアルタイム PCR(95℃30 秒→(95℃5 秒→58℃30 秒)×40 回)2)を実行した。PCR 反応

    液(23μL)は Premix Ex Taq(Perfect Real Time)(TaKaRa Bio)を用いて調整し、プライ

    マーの濃度は各 0.4μmol/L、TaqMan プローブの濃度は 0.2μmol/L とした。リアルタイム PCR

    装置には Thermal Cycler Dice Real Time System TP800(TaKaRa Bio)を使用し、蛍光強度が

    指数関数的に増加しているサイクル数(Ct 値)を決定した。

    プラックには大量のファージ RNA が含まれるため、Ct 値が大きい場合には、プラック

    を形成する主要なファージを検出できていないと考えられる。そのため、まず I 群に特異

    的なリアルタイム PCR を実行し、Ct 値が 20 未満の場合に I 群に分類されると判断した。

    一方、Ct 値が 20 以上の場合には続けて II 群に特異的なリアルタイム PCR を実行した。同

    様の操作を IV 群までについて繰り返し、4 種類の遺伝子群すべてで 20 未満の Ct 値が得ら

    れなかった場合は、核酸として DNA を有する F 特異 DNA 大腸菌ファージ(F-DNA ファ

    ージ)に特異的なリアルタイム PCR3)に供した。

    プラック溶解液から DNA を加熱抽出(95℃5 分)し、DNA 抽出液 2μL と PCR 反応液

    23μL を混合してリアルタイム PCR(95℃30 秒→(95℃5 秒→50℃30 秒→72℃30 秒)×40

    回)及び融解曲線反応(95℃15 秒→60℃30 秒→95℃15 秒)に供した。PCR 反応液は SYBR

    Premix Ex Taq II(Perfect Real Time)(TaKaRa Bio)を用いて調整し、プライマー4)の濃度は

    各 0.4μmol/L とした。Ct 値が 20 未満であり、さらに、増幅産物の融解温度(Tm値)が約

    81℃である場合に F-DNA ファージ陽性と判定した。

    F-RNA ファージの 4 種類の遺伝子群および F-DNA ファージのいずれにも分類されなか

    ったプラックについては、20 以上 30 未満の Ct 値を示したグループがあった場合はそのグ

    ループに分類した。複数のグループに対して該当する範囲の Ct 値が得られた場合は、最小

    の Ct 値を示したグループに分類した。いずれのグループにも分類されなかったプラックは

    未分類として扱った。

    2.5 病原微生物の測定

    2.5.1 原虫の濃縮

    2011 年 5 月 10 日~2012 年 2 月 24 日に採取した 57 試料について、試料 1L を陽イオン

    吸着・酸洗浄・アルカリ誘出法 1)を用いたウイルス濃縮操作に供した後の陰電荷膜(混合

    セルロース膜、直径 90mm、孔径 0.45μm、Millipore)から濁質を回収し、水系感染性の病

    原原虫であるクリプトスポリジウムとジアルジアの検出に供した。

    ろ過後の陰電荷膜をフィルターホルダーから剥がし、PET 溶液(0.2g/L Na4P2O7・10H2O、

  • 0.3g/L C10H13N2O8Na3・3H2O、0.1mL/L Tween 80)約 30mL を含む遠沈管(容量 50mL)に入

    れて凍結保存した。ろ過に使用した陰電荷膜の枚数は、試料の濁質に応じて 1~4 枚とした。

    遠沈管を解凍後、フットボール型撹拌子を入れて激しく撹拌し、陰電荷膜を数 mm 四方以

    下に破砕した。スポイトを用いて溶液の全量を新しい遠沈管に移し入れた後、PET 溶液約

    20mL を元の遠沈管に加えて同様の操作を繰り返し、濁質を含む溶液 50mL を得た。遠沈管

    を遠心(2,000×g、10 分、4℃)して上清を除去した後、PBS(-)約 10mL を加えて軽く撹

    拌し、再度遠心(2,000×g、10 分、4℃)した。上清を除去して沈渣に PBS(-)約 5mL を

    加え、軽く撹拌した後、全量を L10 チューブ(Invitrogen)に移し入れた。同様の操作を繰

    り返し、約 10mL の原虫濃縮液を得た。

    2.5.2 原虫の定量

    Dynabeads GC-Combo(Invitrogen)を用いた免疫磁気ビーズ法によって L10 チューブ中

    の原虫を 110μL に精製した。この精製試料の半量(55μL)を親水性 PTFE 膜(直径 25mm、

    孔径 1.0µm、Advantec)で吸引ろ過し、EasyStain(BTF)と DAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)

    を用いた直接蛍光抗体法に供してプレパラートを作製した。蛍光顕微鏡(Olympus)でプ

    レパラートを観察し、Bおよび G励起下でクリプトスポリジウムとジアルジアを計数した。

    2.5.3 原虫の遺伝子解析

    残り半量の精製試料を用い、クリプトスポリジウムとジアルジアの遺伝子型の同定を試

    みた。凍結融解(-80℃10 分、56℃5 分)を 10 回繰り返して精製試料(55μL)中のオー

    シストおよびシストから核酸を抽出した後、Proteinase K 溶解液 55μL(1mol/L DTT(ナカ

    ライテスク)0.55μL、600mAU/mL Qiagen Proteinase K(Qiagen)0.275μL、5mol/L NaCl(ナ

    カライテスク)0.44μL、1% Triton X-100(MP Biomedicals)11μL、TE バッファー42.735μL)

    と混合し、核酸抽出操作(60℃30 分→超音波処理 2 分→75℃10 分→95℃5 分→冷却)に供

    した。全量を Amicon Ultra-0.5(分画分子量 30,000、Millipore)のカラムに移し入れて遠心

    (14,000×g、10 分、20℃)した後、カラムを逆遠心(1,000×g、2 分、20℃)することで

    約 20μL の核酸抽出液を得た。

    クリプトスポリジウム(Cryptosporidium spp.)の Nested PCR には、18S rRNA 遺伝子領

    域に特異的なプライマー5、6)を使用した。18S rRNA は感染性を有するクリプトスポリジウ

    ムのオーシスト内で大量に発現しており、PCR の前段に RNA の逆転写反応(Reverse

    transcription、RT)を追加することで高感度の検出が可能となるため 7)、本事業でも逆転写

    反応を採用し、RT-nested PCR を実行した。核酸抽出液から 5μL を分取して High Capacity

    cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)を用いた逆転写反応に供し、cDNA 溶

    液 10μL を得た。この cDNA 溶液に 1st PCR 反応液 40μL を添加し、PCR(94℃2 分→(94℃

    30 秒→55℃30 秒→72℃1 分)×35 回→72℃7 分)に供した。1st PCR 産物から 2μL を分取

    して 2nd PCR 反応液 48μL と混合し、同様の温度条件にて PCR を実行した。PCR 反応液の

    調整には Premix Ex Taq Hot Start Version(TaKaRa Bio)を用い、プライマーの濃度は各

    0.3μmol/L とした。

    ジアルジア(Giardia intestinalis)の Seminested PCR は、Glutamate dehydrogenase(GDH)

    遺伝子領域を増幅させるプライマー8)を用いて実行した。核酸抽出液から 5μL を分取して

  • 1st PCR 反応液 45μL と混合し、PCR(94℃2 分→(94℃30 秒→56℃30 秒→72℃1 分)×35

    回→72℃7分)に供した。1st PCR産物から 2μLを分取して 2nd PCR反応液 48μLと混合し、

    同様の温度条件にて PCR を実行した。PCR 反応液の組成はクリプトスポリジウムの場合と

    同様とした。

    2nd PCR 産物 10μL を 2%アガロースゲル(TaKaRa Bio)を用いた電気泳動に供した後、

    エチジウムブロマイドで染色し、UV トランスイルミネーター(UVP)で目的の長さ(ク

    リプトスポリジウム:約 850bp、ジアルジア:約 450bp)の PCR 産物の生成の有無を確認

    した。PCR 産物の生成が確認された場合は、ゲルから PCR 産物を切り出し、QIAquick Gel

    Extraction Kit(Qiagen)で 50μL に精製した後、ABI 3730xl DNA Analyzer(Applied Biosystems)

    を用いたダイレクトシークエンシングによって塩基配列を決定した。得られた塩基配列か

    ら両端のプライマー部位を除いた領域に対し、日本 DNAデータバンクへの登録株も含め、

    近隣結合法を用いて系統樹を作成し、原虫の遺伝子型を同定した。

    3. 調査結果および考察

    3.1 指標微生物の測定結果

    調査期間全体における指標微生物の濃度変動を図 3.1 および図 3.2 に示す。各指標微生

    物の陽性率は、大腸菌群が 100%(67/67)、大腸菌が 96%(64/67)、嫌気性芽胞菌が 100%

    (67/67)および F ファージが 94%(63/67)であった。また、陽性試料中の各指標微生物

    の濃度は、大腸菌群が 132~112,000 MPN/100mL、大腸菌が 8.0~4,190 MPN/100mL、嫌気

    性芽胞菌が 0.10~7.50 CFU/mL および F ファージが 0.05~8.75 PFU/mL であり、年間で 100

    倍程度あるいはそれ以上の幅で変動していることが分かった。指標微生物の濃度変動は夏

    期(5~9 月)に顕著であり、降雨の影響を強く受けているためであると考えられた。

    8 期間の降雨イベントの前後における指標微生物の濃度変動特性を解析するため、当該

    期間のデータを抽出したものを図 3.3~3.5 に示す。微生物の種類や累積降水量、降雨継続

    日数、先行晴天日数などによって異なる特性を示す可能性があるものの、降雨によって指

    標微生物の濃度が上昇することが明らかとなった。特に、降雨イベント 1(2011 年 5 月 10

    ~12 日、累積降水量:47.5mm)における指標微生物の濃度上昇率は非常に高く、大腸菌

    群が 1.98 log、大腸菌が 2.09 log、嫌気性芽胞菌が 1.22 log および F ファージが 1.53 log で

    あった。また、降雨イベント 4(2012 年 1 月 20~24 日、累積降水量:27.0mm)における

    指標微生物の濃度上昇率も、大腸菌群が 1.29 log、大腸菌が 1.98 log、嫌気性芽胞菌が 0.82

    log および F ファージが 0.62 log と高い値であった。降雨出水時の河川水中の病原微生物や

    指標微生物の濃度は、数時間の間に急激に変化することが報告されている 9)。本事業では、

    採水頻度は 1 日に 1 回であったため、実際の指標微生物の濃度上昇率はここで得られた値

    よりも高かった可能性がある。微生物の濃度変動を正確に把握するための最適な採水間隔

    を検討することは今後の課題であると言える。

    2012 年 1 月 31 日までに採取した 50 試料を対象とし、シャーレから単離した F ファージ

    のプラックの分類を試みた結果を表 3.1 および図 3.6 に示す。計 278 個のプラックのうち、

    F-RNA ファージは 228 個(82%)と大部分を占め、F-DNA ファージは 12 個(4%)、いず

    れにも分類されなかったプラックは 38 個(14%)であった。F-RNA ファージの遺伝子群

  • の内訳は、II 群が 151 個(66%)と最も多く、II 群が 62 個(27%)、III 群が 15 個(7%)

    であり、IV 群は検出されなかった。いずれのグループにも分類されなかった 38 株につい

    ては、今回使用したリアルタイム PCR では増幅できないファージであった可能性が考えら

    れる。あるいは、宿主菌の体表面に感染する体表面吸着サルモネラファージであった可能

    性がある。

    試料別では、50 試料中 31 試料(62%)で F-RNA ファージの II 群が単離したプラックの

    半数以上を占めており、この遺伝子群が定常的に河川水中に混入していることが示唆され

    た。一方、2011 年 5 月 31 日に採取した試料から単離したプラック 8 個すべてと 2011 年 7

    月 20 日に採取した試料から単離したプラック 8 個中 6 個が F-RNA ファージの I 群に分類

    されたことより、I群は非定常的に河川水中に混入している遺伝子群である可能性がある。

    F ファージの宿主特異性については現状では未解明な部分が多く、本事業の結果から F フ

    ァージの排出個体種を特定することはできないものの、水道原水となる河川水が多様な排

    出源からの影響を受けていることが示唆された。

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    00 m

    l)

    Date

    Total coliform E. coli Turbidity

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    図 3.1 大腸菌群および大腸菌の濃度変動

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    4

    2011

    /8/2

    9

    2011

    /9/1

    3

    2011

    /9/2

    8

    2011

    /10/

    13

    2011

    /10/

    28

    2011

    /11/

    12

    2011

    /11/

    27

    2011

    /12/

    12

    2011

    /12/

    27

    2012

    /1/1

    1

    2012

    /1/2

    6

    2012

    /2/1

    0

    2012

    /2/2

    5

    2012

    /3/1

    1

    2012

    /3/2

    6

    Turb

    idity

    (FA

    U)

    Ana

    erob

    ic s

    pore

    (log

    CFU

    /ml)

    F-sp

    ecifi

    c co

    lipha

    ge (l

    og P

    FU/m

    l)

    Date

    Anaerobic spore F-specific coliphage Turbidity

    (-)

    図 3.2 嫌気性芽胞菌および F 特異大腸菌ファージの濃度変動

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300-2

    -1

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    2011

    /5/1

    2011

    /5/3

    2011

    /5/5

    2011

    /5/7

    2011

    /5/9

    2011

    /5/1

    1

    2011

    /5/1

    3

    2011

    /5/1

    5

    2011

    /5/1

    7

    2011

    /5/1

    9

    2011

    /5/2

    1

    2011

    /5/2

    3

    2011

    /5/2

    5

    2011

    /5/2

    7

    2011

    /5/2

    9

    2011

    /5/3

    1

    2011

    /6/2

    2011

    /6/4

    2011

    /6/6

    2011

    /6/8

    Rai

    nfal

    l (m

    m/d

    )

    Tota

    l col

    iform

    or E

    . col

    i(lo

    g C

    FU/1

    00 m

    l)A

    naer

    obic

    spo

    re (l

    og C

    FU/m

    l)F-

    spec

    ific

    colip

    hage

    (log

    PFU

    /ml)

    Date

    Rainfall Total coliform E. coliAnaerobic spore F-specific coliphage

    (-)

    図 3.3 降雨イベント 1 および 2 における指標微生物の濃度変動

  • 0

    50

    100

    150

    200

    250

    300-2

    -1

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    2011

    /7/1

    1

    2011

    /7/1

    3

    2011

    /7/1

    5

    2011

    /7/1

    7

    2011

    /7/1

    9

    2011

    /7/2

    1

    2011

    /7/2

    3

    2011

    /7/2

    5

    2011

    /7/2

    7

    2011

    /7/2

    9

    2011

    /7/3

    1

    2011

    /8/2

    2011

    /8/4

    2011

    /8/6

    2011

    /8/8

    2011

    /8/1

    0

    Rai

    nfal

    l (m

    m/d

    )

    Tota

    l col

    iform

    or E

    . col

    i(lo

    g C

    FU/1

    00 m

    l)A

    naer

    obic

    spo

    re (l

    og C

    FU/m

    l)F-

    spec

    ific

    colip

    hage

    (log

    PFU

    /ml)

    Date

    Rainfall Total coliform E. coliAnaerobic spore F-specific coliphage

    (-)

    図 3.4 降雨イベント 3 における指標微生物の濃度変動

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300-2

    -1

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    2012

    /1/1

    6

    2012

    /1/1

    9

    2012

    /1/2

    2

    2012

    /1/2

    5

    2012

    /1/2

    8

    2012

    /1/3

    1

    2012

    /2/3

    2012

    /2/6

    2012

    /2/9

    2012

    /2/1

    2

    2012

    /2/1

    5

    2012

    /2/1

    8

    2012

    /2/2

    1

    2012

    /2/2

    4

    2012

    /2/2

    7

    2012

    /3/1

    2012

    /3/4

    2012

    /3/7

    2012

    /3/1

    0

    2012

    /3/1

    3

    Rai

    nfal

    l (m

    m/d

    )

    Tota

    l col

    iform

    or E

    . col

    i(lo

    g C

    FU/1

    00 m

    l)A

    naer

    obic

    spo

    re (l

    og C

    FU/m

    l)F-

    spec

    ific

    colip

    hage

    (log

    PFU

    /ml)

    Date

    Rainfall Total coliform E. coliAnaerobic spore F-specific coliphage

    (-)

    図 3.5 降雨イベント 4~8 における指標微生物の濃度変動

  • 表 3.1 F ファージのプラックの分類結果

    No. 採水日時

    F ファージ

    濃度

    (PFU/mL)

    分類プラック数(個)

    F-RNA ファージ F-DNA

    ファージ 未分類 計

    I 群 II 群 III 群 IV 群

    1 2011/5/10 9:00 0.10 1 0 0 0 0 1 2

    2 2011/5/11 9:00 0.10 1 1 0 0 0 0 2

    3 2011/5/12 9:00 3.40 1 2 2 0 1 2 8

    4 2011/5/16 9:00 0.10 1 0 0 0 1 0 2

    5 2011/5/24 9:00 0.15 2 0 0 0 1 0 3

    6 2011/5/25 9:00 0.25 3 3 0 0 1 0 7

    7 2011/5/26 9:00 0.15 2 0 0 0 0 1 3

    8 2011/5/31 9:00 0.75 8 0 0 0 0 0 8

    9 2011/6/7 9:00 < 0.05 0 0 0 0 0 0 0

    10 2011/6/14 9:00 0.05 1 1 0 0 0 0 2

    11 2011/6/21 9:00 < 0.05 0 0 0 0 0 0 0

    12 2011/6/28 9:00 0.35 0 7 0 0 0 0 7

    13 2011/7/5 9:00 < 0.05 0 0 0 0 0 0 0

    14 2011/7/12 9:00 < 0.05 0 0 0 0 0 0 0

    15 2011/7/19 9:00 0.10 0 2 0 0 0 0 2

    16 2011/7/20 9:00 1.65 6 2 0 0 0 0 8

    17 2011/7/21 9:00 1.40 4 4 0 0 0 0 8

    18 2011/7/26 9:00 0.15 1 0 0 0 0 2 3

    19 2011/8/2 9:00 1.10 0 4 2 0 1 1 8

    20 2011/8/9 9:00 0.05 0 1 1 0 1 0 3

    21 2011/8/16 9:00 0.05 0 1 0 0 0 0 1

    22 2011/8/23 9:00 0.20 0 2 0 0 2 0 4

    23 2011/8/30 9:00 0.20 0 4 0 0 0 0 4

    24 2011/9/6 9:00 1.25 3 0 3 0 1 1 8

    25 2011/9/13 9:00 0.25 1 3 0 0 0 1 5

    26 2011/9/20 9:00 0.45 0 7 0 0 0 1 8

    27 2011/9/27 9:00 0.70 0 4 4 0 0 0 8

    28 2011/10/4 9:00 0.10 0 1 1 0 0 0 2

    29 2011/10/11 9:00 0.15 2 1 0 0 0 1 4

    30 2011/10/18 9:00 0.15 0 2 0 0 0 1 3

    31 2011/10/25 9:00 0.45 0 4 0 0 0 4 8

    32 2011/11/1 9:00 0.25 2 3 0 0 0 1 6

    33 2011/11/8 9:00 0.30 2 3 0 0 1 0 6

    34 2011/11/15 9:00 0.60 0 8 0 0 0 0 8

    35 2011/11/22 9:00 0.35 1 3 0 0 0 3 7

  • 36 2011/11/29 9:00 0.50 2 6 0 0 0 0 8

    37 2011/12/6 9:00 0.70 4 2 2 0 0 0 8

    38 2011/12/13 9:00 0.55 1 6 0 0 0 1 8

    39 2011/12/20 9:00 0.70 1 5 0 0 0 2 8

    40 2011/12/26 9:00 0.50 2 6 0 0 0 0 8

    41 2012/1/5 9:00 0.65 1 4 0 0 2 1 8

    42 2012/1/10 9:00 1.00 0 6 0 0 0 2 8

    43 2012/1/17 9:00 0.85 0 6 0 0 0 2 8

    44 2012/1/20 9:00 0.95 3 3 0 0 0 2 8

    45 2012/1/20 16:00 1.05 1 6 0 0 0 1 8

    46 2012/1/21 9:00 2.40 2 6 0 0 0 0 8

    47 2012/1/22 9:00 4.05 1 4 0 0 0 3 8

    48 2012/1/23 9:00 4.00 1 6 0 0 0 1 8

    49 2012/1/24 9:00 0.55 0 7 0 0 0 1 8

    50 2012/1/31 9:00 0.55 1 5 0 0 0 2 8

    計 62 151 15 0 12 38 278

    012345678

    2011

    /5/1

    0 9:

    0020

    11/5

    /11

    9:00

    2011

    /5/1

    2 9:

    0020

    11/5

    /16

    9:00

    2011

    /5/2

    4 9:

    0020

    11/5

    /25

    9:00

    2011

    /5/2

    6 9:

    0020

    11/5

    /31

    9:00

    2011

    /6/7

    9:0

    020

    11/6

    /14

    9:00

    2011

    /6/2

    1 9:

    0020

    11/6

    /28

    9:00

    2011

    /7/5

    9:0

    020

    11/7

    /12

    9:00

    2011

    /7/1

    9 9:

    0020

    11/7

    /20

    9:00

    2011

    /7/2

    1 9:

    0020

    11/7

    /26

    9:00

    2011

    /8/2

    9:0

    020

    11/8

    /9 9

    :00

    2011

    /8/1

    6 9:

    0020

    11/8

    /23

    9:00

    2011

    /8/3

    0 9:

    0020

    11/9

    /6 9

    :00

    2011

    /9/1

    3 9:

    0020

    11/9

    /20

    9:00

    2011

    /9/2

    7 9:

    0020

    11/1

    0/4

    9:00

    2011

    /10/

    11 9

    :00

    2011

    /10/

    18 9

    :00

    2011

    /10/

    25 9

    :00

    2011

    /11/

    1 9:

    0020

    11/1

    1/8

    9:00

    2011

    /11/

    15 9

    :00

    2011

    /11/

    22 9

    :00

    2011

    /11/

    29 9

    :00

    2011

    /12/

    6 9:

    0020

    11/1

    2/13

    9:0

    020

    11/1

    2/20

    9:0

    020

    11/1

    2/26

    9:0

    020

    12/1

    /5 9

    :00

    2012

    /1/1

    0 9:

    0020

    12/1

    /17

    9:00

    2012

    /1/2

    0 9:

    0020

    12/1

    /20

    16:0

    020

    12/1

    /21

    9:00

    2012

    /1/2

    2 9:

    0020

    12/1

    /23

    9:00

    2012

    /1/2

    4 9:

    0020

    12/1

    /31

    9:00

    No.

    of p

    hage

    pla

    ques

    Date of sampling

    GI F-RNA coliphage GII F-RNA coliphage GIII F-RNA coliphageGIV F-RNA coliphage F-DNA coliphage Unclassified

    図 3.6 F ファージのプラックの分類結果

    3.2 病原微生物の測定結果

    2011 年 5 月 10 日~2012 年 2 月 24 日に採取した 57 試料を対象に、クリプトスポリジウ

    ムとジアルジアの検出を試みた結果を図 3.7 および表 3.2 に示す。クリプトスポリジウム

    は 57 試料中 18 試料(32%)、ジアルジアは 13 試料(23%)から検出され、それぞれの最

    大濃度は 8 oocysts/L と 6 cysts/L であった。これらの原虫の陽性率は、冬期に上昇する傾向

    を示したが、指標微生物とは異なり、各降雨イベントにおける明確な濃度変動特性は認め

    られなかった。この原因として、顕微鏡観察に供した検査水量が 500mL と少なかったため、

    信頼性の高い原虫の定量結果を得るには十分ではなかったことが考えられる。今後、より

  • 多量の試料を用いての継続的な調査を行う必要があると言える。

    遺伝子解析を目的として RT-nested PCR を実行した結果、57 試料いずれからもクリプト

    スポリジウムは検出されず、感染性を有したクリプトスポリジウムは存在しなかったこと

    に起因していると推察された。一方、Seminested PCR により、ジアルジアは 57 試料中 6

    試料(11%)から検出された。Seminested PCR でジアルジア陽性となった 6 試料のうち、

    蛍光顕微鏡観察でも陽性と判定されたものは 1 試料(濃度:2 cysts/L)のみであり、

    Seminested PCR と蛍光顕微鏡観察の結果との間に明確な関係性は見られなかった。この原

    因として、両手法による検査水量が異なることに加え、免疫磁気ビーズ法で精製した試料

    中での原虫の分布が一様ではない可能性が挙げられる。

    ジアルジア陽性となった 6試料から得た PCR産物をダイレクトシークエンシングに供し

    た結果、すべての試料で塩基配列解析対象領域の全長(393bp)の決定に成功した。図 3.8

    の系統樹にも示す通り、Genotype AII が 3 試料(No. 15、51 および 53)で最も多く、Genotype

    AI(No. 52)、BIV(No. 49)および E(No. 48)が 1 試料ずつであった。Genotype AI はヒ

    トや様々な動物に感染する人獣共通感染型であり、Genotype AII と BIV はヒトにのみ特異

    的に感染する遺伝子型であることが示唆されている 10)。また、Genotype E はウシやブタ、

    ヒツジなどに感染するが、ヒトへの感染事例は報告されていない 10)。これらのことから、

    Genotype AII と BIV はヒト由来である可能性が高く、Genotype E は動物由来であると判断

    した。この結果は、調査対象とした河川水がヒト以外にも動物の糞便汚染を受けているこ

    とを示すと共に、顕微鏡観察のみではヒトへの水系感染リスクを正しく評価できないこと

    を示すものであった。

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    3000

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    10

    2011

    /5/1

    2011

    /5/1

    5

    2011

    /5/2

    9

    2011

    /6/1

    2

    2011

    /6/2

    6

    2011

    /7/1

    0

    2011

    /7/2

    4

    2011

    /8/7

    2011

    /8/2

    1

    2011

    /9/4

    2011

    /9/1

    8

    2011

    /10/

    2

    2011

    /10/

    16

    2011

    /10/

    30

    2011

    /11/

    13

    2011

    /11/

    27

    2011

    /12/

    11

    2011

    /12/

    25

    2012

    /1/8

    2012

    /1/2

    2

    2012

    /2/5

    2012

    /2/1

    9

    Rai

    nfal

    l (m

    m/d

    )

    Cry

    ptos

    porid

    ium

    oocy

    st (o

    ocys

    ts/l)

    Gia

    rdia

    cyst

    (cys

    ts/l)

    Date

    Rainfall Cryptosporidium Giardia

    (-)

    図 3.7 クリプトスポリジウムおよびジアルジアの濃度変動

  • 表 3.2 クリプトスポリジウムおよびジアルジアの遺伝子解析結果

    No. 採水日時

    クリプトスポリジウム ジアルジア

    濃度

    (oocysts/L)

    RT-nested

    PCR 結果

    濃度

    (cysts/L)

    Seminested

    PCR 結果 決定遺伝子型

    1 2011/5/10 9:00 < 2 - 2 -

    2 2011/5/11 9:00 2 - < 2 -

    3 2011/5/12 9:00 < 2 - 4 -

    4 2011/5/16 9:00 < 2 - < 2 -

    5 2011/5/24 9:00 < 2 - < 2 -

    6 2011/5/25 9:00 2 - < 2 -

    7 2011/5/26 9:00 < 2 - < 2 -

    8 2011/5/31 9:00 2 - 4 -

    9 2011/6/7 9:00 < 2 - < 2 -

    10 2011/6/14 9:00 < 2 - 2 -

    11 2011/6/21 9:00 2 - < 2 -

    12 2011/6/28 9:00 < 2 - < 2 -

    13 2011/7/5 9:00 < 2 - < 2 -

    14 2011/7/12 9:00 < 2 - < 2 -

    15 2011/7/19 9:00 < 2 - < 2 + AII

    16 2011/7/20 9:00 2 - < 2 -

    17 2011/7/21 9:00 < 2 - < 2 -

    18 2011/7/26 9:00 < 2 - < 2 -

    19 2011/8/2 9:00 < 2 - < 2 -

    20 2011/8/9 9:00 < 2 - 6 -

    21 2011/8/16 9:00 < 2 - < 2 -

    22 2011/8/23 9:00 < 2 - < 2 -

    23 2011/8/30 9:00 < 2 - < 2 -

    24 2011/9/6 9:00 < 2 - < 2 -

    25 2011/9/13 9:00 < 2 - < 2 -

    26 2011/9/20 9:00 < 2 - < 2 -

    27 2011/9/27 9:00 < 2 - < 2 -

    28 2011/10/4 9:00 < 2 - < 2 -

    29 2011/10/11 9:00 < 2 - < 2 -

    30 2011/10/18 9:00 2 - < 2 -

    31 2011/10/25 9:00 2 - < 2 -

    32 2011/11/1 9:00 < 2 - < 2 -

    33 2011/11/8 9:00 < 2 - < 2 -

    34 2011/11/15 9:00 < 2 - < 2 -

    35 2011/11/22 9:00 4 - 2 -

  • 36 2011/11/29 9:00 8 - < 2 -

    37 2011/12/6 9:00 2 - < 2 -

    38 2011/12/13 9:00 2 - 4 -

    39 2011/12/20 9:00 < 2 - < 2 -

    40 2011/12/26 9:00 < 2 - < 2 -

    41 2012/1/5 9:00 < 2 - 2 -

    42 2012/1/10 9:00 2 - < 2 -

    43 2012/1/17 9:00 < 2 - 2 -

    44 2012/1/20 9:00 < 2 - < 2 -

    45 2012/1/20 16:00 < 2 - < 2 -

    46 2012/1/21 9:00 4 - < 2 -

    47 2012/1/22 9:00 2 - < 2 -

    48 2012/1/23 9:00 < 2 - 2 + E

    49 2012/1/24 9:00 4 - < 2 + BIV

    50 2012/1/31 9:00 6 - 2 -

    51 2012/2/7 9:00 < 2 - < 2 + AII

    52 2012/2/8 9:00 4 - < 2 + AI

    53 2012/2/9 9:00 < 2 - < 2 + AII

    54 2012/2/14 9:00 < 2 - < 2 -

    55 2012/2/21 9:00 < 2 - 2 -

    56 2012/2/23 9:00 < 2 - < 2 -

    57 2012/2/24 9:00 2 - 2 -

  • 図 3.8 ジアルジアの系統樹

    4. まとめ

    本事業では、首都圏の主要な水道水源である利根川を対象とし、1 年間にわたる継続的

    な採水調査を実施することにより、河川水中における病原微生物と指標微生物の濃度変動

    特性および遺伝子多様性を明らかにすることを目的とした。本事業で得られた知見は以下

    に示す通りである。

    1) 指標微生物の陽性率は、大腸菌群が 100%(67/67)、大腸菌が 96%(64/67)、嫌気性芽胞菌が 100%(67/67)および F ファージが 94%(63/67)であり、陽性試料中の濃度は、

    それぞれ 132~112,000 MPN/100mL、8.0~4,190 MPN/100mL、0.10~7.50 CFU/mL およ

    び 0.05~8.75 PFU/mL であった。指標微生物の濃度は降雨イベント時に経日的に上昇す

  • る傾向を示し、最大で 2 log(100 倍)程度上昇することが明らかとなった。

    2) 単離した F ファージのプラックの分類を試みた結果、調査期間全体で単離したプラッ

    クの 82%(228/278)を F-RNA ファージが占め、その遺伝子群別の内訳では II 群が 66%

    (151/228)と最も多かった。試料別では、62%(31/50)の試料で II 群が優占していた

    が、I 群が優占している試料もあり、遺伝子群によって河川水中への汚染機構が異なる

    ことが示唆された。

    3) 蛍光顕微鏡観察によって原虫の検出を試みた結果、クリプトスポリジウムは 57 試料中18 試料(32%)、ジアルジアは 13 試料(23%)から検出され、それぞれの最大濃度は 8

    oocysts/L と 6 cysts/L であった。指標微生物とは異なり、降雨イベントにおける明確な

    原虫の濃度変動特性は認められなかった。

    4) 遺伝子解析の結果、57 試料いずれからもクリプトスポリジウムは検出されず、感染性

    を有したクリプトスポリジウムは存在しなかったことに起因していると推察された。

    一方、ジアルジアは 57 試料中 6 試料(11%)から検出され、4 試料がヒト特異的と考

    えられている遺伝子型(Genotype AII および BIV)、1 試料が人獣共通感染型の遺伝子

    型(Genotype AI)および 1 試料が動物特異的な遺伝子型(Genotype E)に同定された。

    この結果は、調査対象とした河川水がヒト以外にも動物の糞便汚染を受けていること

    を示すと共に、顕微鏡観察のみではヒトへの水系感染リスクを正しく評価できないこ

    とを示すものであった。

    謝辞

    本事業の実施にあたり、埼玉県企業局水質管理センターの森田久男氏および国立保健医

    療科学院生活環境研究部の岸田直裕氏に多大なご協力を頂いた。ここに記して深謝する。

    参考文献

    1) Katayama, H., Shimasaki, A., Ohgaki, S. (2002): Development of a virus concentration method and its application to detection of enterovirus and Norwalk virus from coastal

    seawater, Applied and Environmental Microbiology, Vol. 68, No. 3, pp. 1033~1039.

    2) Wolf, S., Hewitt, J., Rivera-Aban, M., Greening, G. E. (2008): Detection and characterization of F+ RNA bacteriophages in water and shellfish: application of a multiplex real-time reverse

    transcription PCR, Journal of Virological Methods, Vol. 149, No. 1, pp. 123~128.

    3) Haramoto, E., Kitajima, M., Katayama, H., Asami, M., Akiba, M., Kunikane, S. (2009): Application of real-time PCR assays to genotyping of F-specific phages in river water and

    sediments in Japan, Water Research, Vol. 43, No. 15, pp. 3759~3764.

    4) Vinjé, J., Oudejans, S. J. G., Stewart, J. R., Sobsey, M. D., Long, S. C. (2004): Molecular detection and genotyping of male-specific coliphages by reverse transcription-PCR and

    reverse line blot hybridization, Applied and Environmental Microbiology, Vol. 70, No. 10, pp.

    5996~6004.

    5) Xiao, L., Escalante, L., Yang, C., Sulaiman, I., Escalante, A. A, Montali, R. J., Fayer, R., Lal,

  • A. A. (1999): Phylogenetic analysis of Cryptosporidium parasites based on the small-subunit

    rRNA gene locus, Applied and Environmental Microbiology, Vol. 65, No. 4, pp. 1578~1583.

    6) Xiao, L., Alderisio, K., Limor, J., Royer, M., Lal, A. A. (2000): Identification of species and sources of Cryptosporidium oocysts in storm waters with a small-subunit rRNA-based

    diagnostic and genotyping tool, Applied and Environmental Microbiology, Vol. 66, No. 12, pp.

    5492~5498.

    7) 岸田直裕・古川一郎・黒木俊郎・猪又明子・泉山信司・森田重光・秋葉道宏(2010):リアルタイム RT-PCR法を用いた河川試料水中のクリプトスポリジウムの高感度定量、

    日本水処理生物学会誌、Vol. 46、No. 4、pp. 181~189.

    8) Read, C. M., Monis, P. T., Thompson, R. C. A. (2004): Discrimination of all genotypes of Giardia duodenalis at the glutamate dehydrogenase locus using PCR-RFLP. Infection,

    Genetics and Evolution, Vol. 4, No. 2, pp. 125~130.

    9) 原本英司(印刷中):降雨出水時の河川における病原微生物及び指標微生物の濃度変動特性の解析、水道協会雑誌 .

    10) Thompson, R. C. A. (2004): The zoonotic significance and molecular epidemiology of Giardia and giardiasis, Veterinary Parasitology, Vol. 126, No. 1~2, pp. 15~35.

  • ・助成事業者紹介

    原本 英司

    現職:山梨大学大学院

    医学工学総合研究部・助教

    学位:博士(工学)

  • 様式6・2 1.調査・試験・研究 [:概要版報告書]

    助成番号 助成事業名 所属・助成事業者氏名

    23-1211-014 降雨時の河川における人獣共通感染型の病原微生物の濃度変動および遺伝子多様性の解析

    山梨大学大学院医学工学総合研究部原本 英司

    〔目 的〕 水環境中における病原微生物の濃度変動には、流域内の感染者数の増減に応じた長期的なも

    のに加え、降雨時の出水や日変動などによる短期的なものも存在している。現在までに、国内外の様々な地域で水環境中の病原微生物の検出調査が実施されてきているが、調査頻度が低い場合が多く、長期間にわたる詳細な病原微生物の濃度変動特性に関する知見が不足している。また、水道原水への病原微生物の混入源としては、ヒトのみならず、流域内に生息する動物から排出される糞便も想定される。水道水の飲用による水系感染リスクをより正確に評価する上

    で、水道原水あるいは浄水中に存在する病原微生物のヒトへの感染性の有無(すなわち、遺伝子型の分布特性)を明らかにすることは非常に重要である。本事業では、首都圏の主要な水道水源である利根川を対象とし、1年間にわたる継続的な採水調査を実施することにより、水道原水となる河川水中における病原微生物と指標微生物の濃度変動特性および遺伝子多様性を明らかにすることを試みた。 〔内 容〕 調査地点として、首都圏の主要な水道水源である利根川に位置する利根大堰を選定した。

    2011年 5月~2012年 3月の期間中、週 1回以上の頻度で河川水を計 67試料採取した。その中には、降雨出水イベントとして経日的な連続採水(計 8期間)により採取した試料も含まれている。ウイルス濃縮操作後の陰電荷膜から濁質を回収し、蛍光顕微鏡でクリプトスポリジウムとジアルジアを定量すると共に、定性 PCRとダイレクトシークエンシングに供して遺伝子型の同定を試みた。また、指標微生物として、大腸菌群、大腸菌、嫌気性芽胞菌および Fファージを定量した。さらに、糞便汚染源を解析するため、シャーレ上に形成した Fファージのプラックを単離し、その遺伝子群を同定した。 〔結 果〕 指標微生物の陽性率は、大腸菌群が 100%(67/67)、大腸菌が 96%(64/67)、嫌気性芽胞菌

    が 100%(67/67)および Fファージが 94%(63/67)であった。指標微生物の濃度は降雨イベント時に経日的に上昇する傾向を示し、最大で 100倍程度上昇することが明らかとなった。単離した Fファージのプラックの分類を試みた結果、調査期間全体で単離したプラックの

    82%(228/278)を F-RNAファージが占め、遺伝子群別の内訳では II群が最も多かった。試料別では、62%(31/50)の試料で II群が優占していたが、I群が優占している試料もあった。蛍光顕微鏡観察によって原虫の検出を試みた結果、クリプトスポリジウムは 57試料中 18

    試料(32%)、ジアルジアは 13試料(23%)から検出された。指標微生物とは異なり、降雨イベントにおける明確な原虫の濃度変動特性は認められなかった。 遺伝子解析の結果、クリプトスポリジウムはいずれの試料からも検出されなかった。ジアル

    ジアは 6試料(11%)から検出され、4試料がヒト特異的と考えられている遺伝子型(AIIおよび BIV)、1試料が人獣共通感染型の遺伝子型(AI)および 1試料が動物特異的な遺伝子型(E)に同定された。この結果は、調査対象とした河川水がヒト以外にも動物の糞便汚染を受けていることを示すと共に、顕微鏡観察のみではヒトへの水系感染リスクを正しく評価できない可能性を示唆するものであった。

  • 様式6・3 1.調査・試験・研究 [:自己評価シート]

    助成番号 助成事業名 所属・助成事業者氏名

    23-1211-014 降雨時の河川における人獣共通感染型の病原微生物の濃度変動および遺伝子多様性の解析

    山梨大学大学院医学工学総合研究部原本 英司

    評 価

    〔計画の妥当性〕 本事業では、首都圏の主要な水道水源である利根川の河川水を調査対象とし、年間を通して

    週 1回以上の頻度で採水調査を実施することで、水道原水となる河川水中の健康関連微生物の長期的および短期的な濃度変動特性を総合的に捉えることを目的とした。本事業で得た知見は、水道水を介した病原微生物の水系感染リスクの評価につながるものであり、妥当な研究テーマであったと言える。健康関連微生物を測定するための実験機器は十分に整っており、経日的な連続採水に対しても高い精度を維持して測定することができた。 〔当初目標の達成度〕 年間を通して平水時の健康関連微生物の濃度測定を実施できた点、複数の降雨出水イベント

    を対象とした経日的な連続採水によって健康関連微生物の濃度変動特性を明らかにできた点より、当初の目標は十分に達成できたと言える。一方で、検出感度の問題から、遺伝子検査によって十分な数の原虫(クリプトスポリジウムおよびジアルジア)の陽性試料が得られず、遺伝子型の多様性を完全には明らかにできなかったことは今後の課題として挙げられる。 〔事業の効果〕 本事業の成果は、2013年 3月に開催される「第 47回日本水環境学会年会」または 2013年

    10月頃に開催される「第 64回全国水道研究発表会」にて口頭発表を行う予定である。さらに、本事業の成果を中心に取りまとめ、国際学術雑誌に投稿する予定である。 〔河川管理者等との連携状況〕 本事業においては特に該当なし。