河川整備基金助成事業 -...

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1 河川整備基金助成事業 河川を題材とした教育プログラムの作成と実践 「川とともに学ぶ彩都っ子」 報告書 助成番号:26-4221-048 箕面市立彩都の丘学園 教頭 高田康之 平成26年度

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河川整備基金助成事業

河川を題材とした教育プログラムの作成と実践

「川とともに学ぶ彩都っ子」

報告書

助成番号:26-4221-048

箕面市立彩都の丘学園

教頭 高田康之

平成26年度

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様式 6・2

〔河川教育部門〕 [概要版報告書]

助成番号 助成事業名 学校名

26-4221-048 川とともに学ぶ彩都っ子 彩都の丘学園

校長名 樋口 弘造 担当教諭名 中井 昭

過去の助成実績 なし あり〔助成番号:25-1261-001 助成事業名:川とともに生きる〕

キーワード 川との共生

対象児童生徒 高校生( 年 名) 中学生( 年 名) 小学生(3,4年 124名)

対象河川名 箕面川、河合裏川 活動場所の指定状況 なし 子どもの水辺 水辺の楽校

年間学習計画(シラバス)における本助成事業の位置づけ

テーマ : 自然とともに生きる豊かな人間性

ねらい : 水と生き物たちに焦点を当てた活動を通して、自然を愛し守る大切さを学ぶ

評価の観点: 思考力・判断力・表現力

活動時期の予定: 6月~10月

活動形態 総合的な

学習の時間

各教科学習

( 理科 )

クラブ活動

( ) 学校行事

その他

( ) 合計

上記の

活動時間数 3時間 2時間 時間 時間 時間 5時間

支援者等(複数記入可)

外部小学校

の支援

保護者

の支援

外部中学校の

支援

外部高校

の支援

外部大学

の支援

市民団体

の支援

専門家等の個

人の支援

河川管理者

の支援

行政機関の支援

・博物館 ・歴史資料館

・ビジターセンター 等

関係団体等の支援

・漁協 ・農協

企業

の支援

その他

支援概要 *観察活動を安全に遂行するための事前準備・点検作業

*生息する生き物の解説

活動成果

発表形態 成果作品

学級単位 学年単位 学校全体 パックテストによる水質検査

対外発表( )

安全対策に関する課題

・年々児童生徒数が増加する中で、それに対応し得る支援スタッフ数の確保。

今後の課題・展開

・9年間を見通し、以前に学んだことのある内容をより発展させて形で次につなげていくスパイラル学習のカリ

キュラム化。

・総合的な学習の時間が減少する中での継続化。

活動内容と実施時期(主な活動を2つのみ記入)

部門 大分類 中分類 小分類 実施時期

データベースに登録

するキーワード

河川教育

部門 教育活動

生物調査系 水生昆虫 6月

生物調査系 水生昆虫 10月

※データベースに登録するキーワードは、本冊子P.72の表から代表的なものを2つ記入して下さい。

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様式 6・2・3

スタートアップ活動報告書

1.助成事業 川とともに学ぶ彩都っ子

学校名 彩都の丘学園 助成番号 26-4221-048

2. 実施する教科・領域 理科・総合

3.実施日時 平成26年6月17日、平成26年10月16日

4.単元目標 川での体験を通じ水と私たちの暮らしとの関係性について理解する力を養う

5.学年 人数 3年生 66名、4年生 58名

6.実施場所 箕面川、河合裏川

活動指導計画 第3・4学年 科「 理科・総合 」 全5時

第1次

学習活動 1時間

水辺には、いろんな生き物が生息していることを説明することで、生き物と水との関わりを理解さ

せるとともにその生態についての関心を持たせる。

第2次

学習活動 3時間「川の活動」

普段なら近づくことのできない川に出向き、自然観察ならびに川に入っての水中昆虫の採取等、実

際に水に触れながらの活動を行うことで、生物にとっての水の大切さを理解させるとともに、自然

の素晴らしさを体感させる。

第3次

学習活動 1時間

一人の人間として自然界に生きていることを認識させるために、この間の学習内容を各自の振り返

りシートにまとめさせる。

注)川で学習を行う場合は,時数の横に「川の活動」と記述する。

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1.はじめに

川や池などの身近な自然に触れたり、自然遊びなどの活動を通して自然の有用性やその

神秘に気づいたり、そこに生きる生物を観察したりすることにより、子どもたちの「自然

を愛し守り育てていこう」という心身ともに健全な発達を促すことができる。しかし、ご

く一部の親水空間以外では、安全面から近づくことを許されなくなった川。この川をなん

とか私たち、とりわけ、子どもたちの手に取り戻したい、そんな思いから出発した研究で

ある。

2.研究の目的

人々が大昔から水とともに暮らし、生きてきたことを再認識し、食物連鎖などの学習を

通して人も大自然とともに生きる生物界の一員であることを実感できるようにするための

河川教育プログラムを作成することを目的とする。

1.地域を流れる川や、溜池、水田などの水とわたしたちの暮らしについて、水と生き物

たちに焦点を当てた活動を企画・実践し、自然を愛し守り、自然とともに育つ子どもたち

を育成するプログラムを作成する。

2.作成したプログラムの実践し、成果の検証を行う。

3.食物連鎖など、自然界の繋がりに目を向け、自然と私達の暮らしが密接に関わりあっ

ているということを直接的、体験的に学ばせる河川の教材化を行う。

以上の3点を主な視点として、活動なり学習を学年の発達段階に応じて教材化し、系統

的な教育プログラム作成・実践・検証を行う。

3.研究の方針

3.1 方針

昨年度に引き続き、各学年の発達段階に応じた野外観察・野外活動プログラムを作成し、

実施することで自然とともに生きる豊かな人間性を育むことができるようにする。特にミ

ジンコをキーとして食物連鎖から自然界のつながりを構築することで科学的な視野を広げ、

自然を総合的に把握できるようにすることをめざした。

効果的と思われるプログラムを作成・実践した後、他校にも行ってもらうことで多角的

に検証し、成果を各学校で子どもたちに還元していきたいと考えた。

3.2 プログラム作成の視点

プログラムを構成する上で重視したのは次の3点である。

①楽しく興味を引く内容であり、心に残る体験活動であること

②他の教科の学習に支障のない範囲の時間で実施できること

③専門的な知識がなくても、ずぼらでも一定の授業成果が得られること

他の取組の増加に伴い総合的な学習の時間が減少する中で、河川学習に使える時間も減

っていること、川での活動を主体とすると安全面での対策や校長の理解を得ることなどが、

かなり困難になってきており、実施に向けた教職員の意欲が行動につながりにくい。

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河川教育プログラムの作成にあたっては、学習指導要領との関連で、教科学習の目標と

つながることが大切になる。また、単発的な学習ではなく、9年間を見通して、以前行っ

た学習活動をより発展させた形で再び取り組むスパイラル学習とすることにより、いっそ

うの効果をあげることが期待できる。

そして川は、水を通して山や森林、海、大気をつなげているという大きな生態系を意識

することが必要だと考える。例えば、5年生の社会科では、流域における水の循環という

視点から山への植林で漁業を盛んにするという、水資源と森林、漁業の関係を学ぶ。また、

道徳では、動物愛護・自然愛・環境保全について学ぶ。理科では、上・中・下流のちがい

による流水の働きやメダカとの関連で水の中の小さな生き物について学ぶ。これらを横断

的・総合的にカリキュラム化していけば、総合的な学習の時間を使っての生物調査や水質

調査を行うプログラムが有機的につながってくる。活動のまとめをする際には、言語活動

を意識することでいっそうの効果が挙がることが期待される。

4.研究経過

4.1 プログラムの企画

以下のプログラムを企画し、取り組むこととした。川・溜池・水田などの水とわたした

ちの暮らしの密接な関わりについて、体験を通して学ばせ、自然を愛し、自然とともに育

つ子どもを育成するためのプログラムである。

①自然観察・自然遊び

動植物観察会と食べられる野草・実の見つけ方講習。草笛、草鉄砲などの自然遊び。

②川の役割

川の源流から海までをたどり、浄水場・下水処理場の見学とあわせて川の役割を知る。

③水質調査と水質向上

パックテストと生物を指標とした水質調査を行い、水質向上のためにできることを考

え、行動する。

④川の歴史・人との関わり

川の歴史やわたしたちとのかかわりについての聞き取り。

⑤川の地形・地質の観察

川の地形・地質を観察し、大阪層群の化石を発掘することで、興味をもって地域と歴

史を学ぶ。

⑥プランクトンの観察、食物連鎖

プランクトンの観察、特にミジンコに焦点を当てて、採取・飼育等を通して食物連鎖

からの自然界のつながりを学ぶ。

4.2 学年ごとのプログラム

学年ごとに考えた具体的なプログラムは以下のとおりである。

1年 自然探検、自然遊び、ヨモギだんごづくり

2年 トンボ・水の生き物、野菜の収穫とカレーづくり

3年 昆虫学習と水生動物観察

4年 浄水場と下水処理場、水質浄化

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5年 イネづくりと成長の観察、プランクトンの観察、植物の発芽と成長

川の上・中・下流調べ、川と私たちのくらし

6年 川の地形・歴史、利水や治水の歴史の学習

7年 大地の変化、地層と化石

8年 生命を維持する働き

9年 自然の生態系

4.3 実施したプログラムと活動

4.3.1 「ヨモギだんごづくり」 ・活動場所と時間 野外2h・家庭科室2h

・ねらい 自然探検で食べられる野草を知り、試食を通して自然に親しみをもつ。

・関連する学年・教科 1・2年生活

ヨモギだんごづくり だんごを茹でる

ヨモギをもんでみて、独特のにおいから見分け方を学び、子どもたちは、たくさん摘ん

でくれた。水を替えながらよく洗って先の若葉の部分のみにして茹で、重曹を少し入れて

あく抜きをし、水でさらして絞り、冷凍保存しておく。団子づくりのときに解凍してミキ

サーにかけ、上新粉・白玉粉・砂糖とまぜて一口大の大きさに手で丸める。茹でて少し餡

をつけて食べるとほのかなヨモギの香りが口にただよってみんな大喜びである。身近な野

草の中には食べられるものがあることに気づき、自然に親しむとともに手でこねて丸める

体験が楽しく、また、心が満たされる活動である。

食物アレルギーの子どもたちもいることが考えられるので、試食する際には、子どもた

ちの実態把握や使用する材料に吟味が必要であるが、食は、生きる基本であり、本能に結

びついているので満足感が得られ、学習効果が高いので、ぜひ取り組みたいプログラムで

ある。

4.3.2「野菜の収穫」

・活動場所と時間 野外2h・家庭科室2h

・ねらい 野菜を育て、収穫をすることで、作物の生育には水が欠かせないこと、

また栄養分が必要であることに気づかせる。

・関連する学年・教科 1・2年生活、3~5年理科、5年社会

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2年生では、地元のビール工場からの酵母を活用した堆肥を使って有機栽培されている

農家の方からお話を伺い、ジャガイモとタマネギの収穫をした。また、1~4年生で、オ

クラ・ナス・キュウリ・トマト・ズッキーニ・サツマイモ・シシトウ・ピーマン等を育て、

それらを使った夏野菜たっぷりのカレー&サラダづくりを行った。1年生は、トマトの皮

むきなどを手伝い、3・4年生が調理をして給食のときに食した。野菜が嫌いな子もカレ

ーのおいしさにおかわりをするほどで、自分たちが水やりを欠かさず頑張って育てたとい

う思いが野菜嫌い解消に役立った。

学校近くの水田 野菜作りについての聞き取り

大きなタマネギが取れました

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4.3.4「水辺の動植物観察」

・活動場所と時間 野外2~3h

・ねらい 水辺には、いろんな動植物が生育していることに気づき、生き物と水との関

わりを理解し、生態について学ぶ。

・関連する学年・教科 2年生活、3~9年理科、4・5年社会

自然観察、自然遊び、川べりに生える食べられる植物の試食など、川を使っての体験活

動である。ふだんは、近づくことができない池・川などの水辺に近づき、水にふれながら

の活動は、自然のすばらしさを感じさせ、自然界に生きる原体験となるであろう。

3年生は、生態園「彩都の森」のミカンの木にいた

アゲハチョウの幼虫やキャベツの葉で見つけたモンシロ

チョウの幼虫の観察をし、羽化するところを見て感動した。

川での活動は、どんな生き物がどんなところにすんで

いるのか、子どもたちは興味津々であった。

水生昆虫がいっぱい どこにいるかみんなでさがそう

専門家に見てもらう 見つけた生き物をみんなで確認

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4.3.6「水質の浄化」

・活動場所と時間 教室2h・野外3h・見学3h

・ねらい 下水処理場を見学し、浄化した水を川へ戻していることや、微生物が水の浄

化に活躍していることを知る。

また、水を浄化する工夫を考えて実際に試してみる。

・関連する学年・教科 4年社会、5年理科・社会

4年生は、環境クリーンセンターや下水処理場を見学し、ごみや下水の処理について学

んだ。

クリーンセンター見学 下水処理の途中の水の様子

下水の砂や大きなごみを取り除いた後、空気を送りこんで、反応タンクの微生物の数を

増やして微生物の働きで水をきれいにしていることを知った。微生物がよごれを食べて水

をきれいにしているということに子どもたちは驚いていた。

その後、自分たちも水をきれいにできるかやってみたいということで、泥水をきれいに

する実験を行った。グループごとにろ過材を工夫して取り組んだが、早くろ過できるもの

は、なかなかきれいにならず、こだわってきれいにしようとするとすごく時間がかかると

いうことに気づき、飲み水をつくるのは、たいへんなことなのだと実感できていた。

泥水をきれいにする実験 始め(中央)よりは少しきれいになった水(右)

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繰り返すとだんだんきれいに

学校近くの川で、パックテストによる川の水質

検査をした結果は、以下の通りであった。 河合裏川

A.彩都西駅付近の河合裏川(10月20日) 水温17.6℃ 気温18.0℃

●亜硝酸態窒素・・・0.005ppm 以下

●硝酸態窒素・・・ 0.2ppm 以下、

●りん酸・・・0.2ppm

●COD・・・ 4

●アンモニウムイオン・・・0.2ppm

●PH 8.5

B.豊川北小学校下流の勝尾寺川(10月20日)

水温17.2℃ 気温18.0℃

●亜硝酸態窒素・・・0.005ppm 以下

●硝酸態窒素・・・ 0.5~1ppm

●りん酸・・・0.2ppm

●COD・・・ 4

●アンモニウムイオン・・・0.2ppm

●PH 7.5 勝尾寺川

川の水は、どちらもわずかににごっており、見た目と同じくパックテストによる水質検

査の結果でも少し汚れた川だということが分かった。

4.3.7「イネづくり」

・活動場所と時間 校庭2~3h(+継続観察)

・ねらい 稲作には、たくさんの水が必要であることに気づき、私たちの命を支えてき

た稲作を体験することにより、作物の成長の様子と育てる工夫・苦労につい

て理解させる。

・関連する学年・教科 5・6年理科、4・5年社会

イネづくりにあたっては、近くに田があって農家の方の協力で田植えから収穫までの体

験をさせていただける条件の整った学校では、その直接体験が望ましいが、そのような恵

まれた環境にある学校は少数であるのが実情である。そこで、よく取り組まれているバケ

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ツイネづくりを5年生は一人ひとりが取り組んだ。また、大きなプラスチック容器でのミ

ニ田んぼづくりをし、苗を植えることもあわせて行った。

4.3.8「ミジンコの観察」

・活動場所と時間 野外2h・教室1h

・ねらい 水中の微生物が水の浄化や生態系に大きな役割を果たしていることに気づか

せる。また、ミジンコを観察することにより、体の動きや心臓の鼓動を目の

当たりにし、生命の神秘を感じ取らせ、命を大切にする心情を培う。

・関連する学年・教科 4・5年社会、5・6・8・9年理科

ミジンコは、川や田で生活し、自分よりも小さなプランクトンを食べ、自分は魚など大

きな生き物に食べられるという水中の生態系の中で中心になる位置を占めている。ある池

では、春に植物プランクトンが増加し、水が緑色になり水質も悪化するが、しばらくする

とミジンコが増えてそれをどんどん食べるので水の色が元に戻り、今度は増えすぎたミジ

ンコを餌に魚たちがぐんぐん成長する。するとミジンコが減るためまた植物プランクトン

が増加するという、いたちごっごを繰り返すという。

このように生態系の鍵をにぎるミジンコについて、観察を通して生態を調べるのはたい

へん興味深い。また、タマミジンコなど、体の中を観察しやすいミジンコでは、食べたも

のの動きや、心臓の動き、背中にいる卵、かえった赤ちゃんミジンコの動きなども鮮明に

見られ、その神秘に感動する。

川で水草の根元付近を網ですくうのもよいが、田で土のついたイネの切り株を1つもら

ってくると水に入れておくだけでいつでもミジンコを発生させることができるので便利で

ある。冬場でもヒーターを入れてやれば数日で、右下の写真のように大量に準備できる。

ミジンコを増やすには、鶏糞を水にほんの少し入れておくとよい。5年生は夏場に直接田

から採集したミジンコを観察させたが、他の学年は、このやり方で冬場に観察させること

ができた。

イネ株を少し水槽に入れ、ヒーターで加温 白い点々がすべてミジンコ

スポイトでミジンコを吸い取ってスライドガラス上に置き、こより状にしたティッシュ

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で水を減らしてやると顕微鏡でミジンコが視野の範囲で動き回るのが見られる。パンチで

開けたビニルテープの穴の中にミジンコを置き、カバーガラスをかけて周囲からこより状

ティッシュで水を吸い取っていくと体を固定でき、観察しやすい。そうするとドクドクと

動く心臓の鼓動がよく見える。また植物プランクトンを食べ、体の中を食物が通過してい

く様子が見える。特にタマミジンコは、大きく、体の中が透き通っていてよく見えること

と、田んぼなどで手に入れやすく、生態系のカギになるところに位置しており、食物連鎖

を考えるうえでも適している。

体が動きすぎるときには、薄い炭酸水を少し加えてやると触角や足の動きが止まり、心

臓の鼓動が観察しやすい。観察は、短時間にし、ミジンコを元に戻すときには、スポイト

の水でやさしく流すようにして傷つけないようにすることが大切である。

はじめは、直接、顕微鏡でのぞいて自分の目で感動を体験させた。その後、大画面テレ

ビに接続してみんなで同時に同じポイントを観察した。特に心臓の動きが感動的で、小さ

なミジンコは鼓動が速いが、大きなミジンコはもう少しゆっくりであることもみんなで確

認できた。また、背中に卵をかかえていたり、背中の赤ちゃんミジンコがぴくぴく動いた

りするのは、みんなが同時に見ることで感動を共有でき、なお効果的であった。自然の神

秘と生きていることの素晴らしさを実感することができた。また、食べたものが体の中を

動いていくようすをリアルタイムで見ることができ、その場所を示しながら視点を明確に

してやることができるのでよい。

今回もデジカメを直接顕微鏡の接眼レンズ部分に当てて静止画や動画を撮影してみた。

これは簡単にできるので、子どもたちにも自分で撮影させることができた。

ミジンコは、条件が悪くなると休眠卵を背中にもつようになるが、それも観察すること

ができる。また、急に数が減ってしまうことがあるので、バケツや2Lのペットボトルの

上部を切ったものなどをいくつか用意しておき、そこへ分散しておくと常に観察用のミジ

ンコを用意できて便利である。

大きくなった時の心臓(中央) 小さくなった時の心臓

いくつかのページの抜粋を載せたが、資料集として完成させるべく現在も取り組んでい

るところである。

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5.成果と課題

川を子どもたちの手に取り戻したい、そんな思いから出発した研究である。プログラム

を構成する上で重視したのは次の3点であった。

①楽しく興味を引く内容であり、心に残る体験活動であること

②他の教科の学習に支障のない範囲の時間で実施できること

③専門的な知識がなくても、一定の授業成果が得られること

できるだけ少ない時間で、さほど準備がいらず、多少の失敗があったとしても一定の授

業成果が得られることをめざしたプログラムというこの3点については、達成できたと考

えている。

2年連続の納豆作り・ミジンコ観察をお奨めプログラムとして実践した。納豆作りに関

しては、直接の川学習ではないように思われがちであるが、稲作という川とは切っても切

れない農作業に関連して田の周囲を活用していることと、イネのわらについている納豆菌

という関連から着想した納豆作りは、十分、川と私たちの暮らしとつながりを持っている。

今後もいろんなことが、水を通してつながっていくという、有機的な見方で川学習に取

り組んでいきたいと考えている。

課題は、2点ある。

1点目は、川の地形や地層、大地の変化、利水や治水の歴史の学習という視点からの効

果的なプログラムの開発ができなかったことである。

2点目は、だれでも系統的に川学習に取り組んでもらいやすくするための資料集(ワー

クシート集)の作成である。できるだけ早期の完成をめざしたい。

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様式 6・3

〔河川教育部門〕 [活動写真]

助成番号 助成事業名 学校名・学校長氏名

26-4221-048 川とともに学ぶ彩都っ子 彩都の丘学園

校長 樋口 弘造

フィールド:箕面川

日 付 :平成26年6月17日(火)

コメント:自然観察のあとは、普段は入れない川に入り

水にふれあいました。

フィールド:箕面川

日 付 :平成26年6月17日(火)

コメント:自然の素晴らしさを感じるとともに、自然界

に生きる原体験となりました。

フィールド:箕面川

日 付 :平成26年6月17日(火)

コメント:自分たちで採取した生き物を専門家に見ても

らっています。

注)写真は5~6枚程度(枚数が多くなっても、また複数ページになってもかまいません。)

写 真

写 真

写 真

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様式 6・3

〔河川教育部門〕 [活動写真]

助成番号 助成事業名 学校名・学校長氏名

26-4221-048 川とともに学ぶ彩都っ子 彩都の丘学園

校長 樋口 弘造

フィールド:河合裏川

日 付 :平成26年10月16日(木)

コメント:河川管理者(支援者)のみなさんから活動に

あたっての事前注意を受けています。

フィールド:河合裏川

日 付 :平成26年10月16日(木)

コメント:潜んでいる生き物をみんなで探しています。

どんな生き物がいるか興味津々です。

フィールド:河合裏川

日 付 :平成26年10月16日(木)

コメント:水生昆虫がいっぱいいました。見つけた生き

物はみんなで観察しました。

注)写真は5~6枚程度(枚数が多くなっても、また複数ページになってもかまいません。)

写 真

写 真

写 真