2 中南米 - minister of economy, trade and industry...(1)マクロ経済 ①gdp...

22
中南米経済は、主要な輸出品である一次産品価格の 下落や世界経済の減速に伴い、他の新興・途上国と同 様に成長が低迷しているが、資源価格の回復等に伴い、 今後は緩やかに回復していくと見込まれている。IMF は 中 南 米 地 域 の 経 済 成 長 率 に つ い て、2016 年 の -1.0%から 2017 年は +1.1%、2018 年は 2.0%とプラス 成長に転じると見込んでいる(第Ⅰ-4-2-1-1 )(第 Ⅰ-4-2-1-2 )(第Ⅰ-4-2-1-3 )。 以下では、中南米地域の中で、経済的に影響力が強 いメキシコとブラジルについて最近の経済の動向等に ついて概観し、現状と課題について展望する。 中南米 1.中南米の経済概略 -4-2-1-1 図 中南米地域及び主要国の GDP 成長率の推移 資料: IMF 「WEO,April2017」から経済産業省作成。 -4 10 8 6 4 2 0 -2 (%) (年) 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 世界 新興国・途上国 中南米・カリブ諸国 推計値 3.1 3.5 3.6 3.7 3.7 4.1 4.5 4.8 4.9 4.9 -1.0 1.1 2.0 2.5 2.6 資料: IMF 「WEO,April2017」から経済産業省作成。 -15 15 10 5 0 -5 -10 (%) 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 中南米・カリブ諸国 メキシコ アルゼンチン チリ ブラジル (年) 推計値 -4-2-1-2 表 中南米主要国の経済・貿易指標の比較 メキシコ ブラジル アルゼンチン チリ 単位 2005 年 2015 年 2005 年 2015 年 2005 年 2015 年 2005 年 2015 年 輸出に占める資源依存度 (%) 18.2 10.7 42.8 59.5 70.3 68.3 58.5 60.6 輸出に占める中国依存度 (%) 0.5 1.3 5.8 18.6 7.9 9.1 11.9 25.5 輸出に占める米国依存度 (%) 85.7 84.7 19.0 12.6 11.3 6 16.3 12.8 経常収支対 GDP 比 (%) -1.0 -2.9 1.5 -3.3 2.6 -2.5 1.5 -2.0 外貨準備対 GDP 比 (%) 8.6 15.5 6.0 20.1 14.1 4.0 13.8 16.1 財輸出対 GDP 比 (%) 24.7 33.3 13.3 10.8 20.2 9.0 33.5 26.4 サービス輸出対 GDP 比 (%) 1.8 2.0 1.7 1.9 3.2 2.2 5.8 4.1 対内投資ストック対 GDP 比 (%) 27.0 36.7 20.0 27.4 27.7 14.9 63.9 86.5 GDP 成長率 (2016 年) (%) 2.3 -3.6 -2.3 1.6 1 人当たり名目 GDP(2016 年) ドル 8,555 8,727 12,503 13,576 注: *メキシコは石油と鉱物、農産品、ブラジルは一次産品と半製品、アルゼンチンは一次産品、農産品及び燃料・エネルギー、チリは鉱物と農水 産品の輸出額から算出。 資料:Comtrade、UNCTAD、CEIC、IMF 等のデータベースから経済産業省作成。 通商白書 2017 131 第2節 中南米

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Page 1: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

 中南米経済は、主要な輸出品である一次産品価格の下落や世界経済の減速に伴い、他の新興・途上国と同様に成長が低迷しているが、資源価格の回復等に伴い、今後は緩やかに回復していくと見込まれている。IMFは中南米地域の経済成長率について、2016 年の-1.0%から 2017 年は +1.1%、2018 年は 2.0%とプラス

成長に転じると見込んでいる(第Ⅰ-4-2-1-1図)(第Ⅰ-4-2-1-2表)(第Ⅰ-4-2-1-3図)。 以下では、中南米地域の中で、経済的に影響力が強いメキシコとブラジルについて最近の経済の動向等について概観し、現状と課題について展望する。

中南米第2節

1.中南米の経済概略

第Ⅰ-4-2-1-1 図 中南米地域及び主要国のGDP成長率の推移

資料:�IMF�「WEO,�April�2017」から経済産業省作成。

-4

10

8

6

4

2

0

-2

(%)

(年)2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

世界 新興国・途上国 中南米・カリブ諸国

推計値

3.1 3.53.6 3.7 3.7

4.14.5 4.8 4.94.9

-1.0

1.1 2.0 2.5 2.6

資料:�IMF�「WEO,�April�2017」から経済産業省作成。

-15

15

10

5

0

-5

-10

(%)

2020

2019

2018

2017

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2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

中南米・カリブ諸国 メキシコアルゼンチン チリ

ブラジル

(年)

推計値

第Ⅰ-4-2-1-2 表 中南米主要国の経済・貿易指標の比較

メキシコ ブラジル アルゼンチン チリ単位 2005 年 2015 年 2005 年 2015 年 2005 年 2015 年 2005 年 2015 年

輸出に占める資源依存度* (%) 18.2� 10.7� 42.8� 59.5� 70.3 68.3 58.5� 60.6�

輸出に占める中国依存度 (%) 0.5� 1.3� 5.8� 18.6� 7.9 9.1 11.9� 25.5�

輸出に占める米国依存度 (%) 85.7� 84.7� 19.0� 12.6� 11.3 6 16.3� 12.8�

経常収支対 GDP 比 (%) -1.0� -2.9� 1.5� -3.3� 2.6 -2.5 1.5� -2.0�

外貨準備対 GDP 比 (%) 8.6� 15.5� 6.0� 20.1� 14.1 4.0 13.8� 16.1�

財輸出対 GDP 比 (%) 24.7� 33.3� 13.3� 10.8� 20.2 9.0 33.5� 26.4�

サービス輸出対 GDP 比 (%) 1.8� 2.0� 1.7� 1.9� 3.2 2.2 5.8� 4.1�

対内投資ストック対 GDP 比 (%) 27.0� 36.7� 20.0� 27.4� 27.7 14.9 63.9� 86.5�

GDP 成長率 (2016 年) (%) 2.3� -3.6� -2.3 1.6�

1 人当たり名目 GDP(2016 年) ドル 8,555 8,727 12,503 13,576注:�*メキシコは石油と鉱物、農産品、ブラジルは一次産品と半製品、アルゼンチンは一次産品、農産品及び燃料・エネルギー、チリは鉱物と農水

産品の輸出額から算出。資料:Comtrade、UNCTAD、CEIC、IMF 等のデータベースから経済産業省作成。

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 131

第2節中南米

Page 2: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

(1)マクロ経済① GDP メキシコの実質 GDPは、2016 年は前年比+2.3%と2015 年の同+2.6%から減速したが、3 年連続で 2%台の緩やかな成長を続けている。2017 年に入り、通貨安を背景としたインフレが加速しており、メキシコ経済の牽引役である個人消費への影響が懸念される。また、米国の対メキシコ政策の先行きの不透明性も対内直接投資や国内の設備投資を抑制させるリスクとなっている(第Ⅰ-4-2-2-1図)。メキシコ政府、メキシコ中央銀行(以下、中央銀行)及び IMFは、2017 年のGDP 成長率について、それぞれ1.5-2.5%、1.5-2.5%、1.7%と予測している 187。

② 生産、消費 鉱工業生産は全体として横ばいで推移している。製造業は堅調であるが、鉱物採取の低下が続いている。消費については、小売売上高指数は堅調に推移してい

たが、好調だった自動車の売上げの伸びが足下で失速している(第Ⅰ-4-2-2-2図)(第Ⅰ-4-2-2-3図)。

2.メキシコ

第Ⅰ-4-2-1-3 図 中南米主要国の財輸出額、サービス輸出額、対内直接投資額の伸び率の比較

資料:�Comtrade、UNCTAD、IMF、CEIC のデータベースから経済産業省作成。

-20

10

5

0

-5

-10

-15

(%)

チリアルゼンチンブラジルメキシコ

(財輸出額伸び率の推移)

2013 年

2015 年2014 年

資料:�Comtrade、UNCTAD、IMF、CEIC のデータベースから経済産業省作成。

-20

302520151050-5

-10-15

(%)

チリアルゼンチンブラジルメキシコ

(サービス輸出額伸び率の推移)

2013 年

2015 年2014 年

資料:�Comtrade、UNCTAD、IMF、CEIC のデータベースから経済産業省作成。

-25

20

15

10

5

0

-5

-10

-15

-20

(%)

チリアルゼンチンブラジルメキシコ

(対内直接投資額伸び率の推移(フロー))

2013 年

2015 年2014 年

第Ⅰ-4-2-2-1 図 メキシコの実質GDP成長率と需要項目別寄与度の推移

備考:�四半期ベースは季節調整済み、前期比資料:�メキシコ国立統計地理情報院のデータから経済産業省作成。

2.3

-3

6

5

4

3

2

1

0

-1

-2

(%)

ⅣⅢⅡIⅣⅢⅡIⅣⅢⅡIⅣⅢⅡIⅣⅢⅡI

誤差在庫変動

政府消費個人消費純輸出

GDP総固定資本形成

4.04.0

1.41.4 2.62.62.3

0.50.10.1

1.11.10.70.7

(年ベース) (四半期ベース)

(年)2012 2013 2014 2015 20162012

2013

2014

2015

2016

�187財務公債省(2017 年 5 月 22 日)、中央銀行(同年 5 月 31 日)、IMF(同年 4 月 18 日)公表。

132 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向

Page 3: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

③ 物価、為替、政策金利 メキシコの消費者物価指数は、2016 年 10 月にメキシコ中央銀行が定めるインフレ目標値(3%± 1%)を約 1 年半ぶりに超えて以来加速を続けており、2017年 4 月には前年同月比 5.8%と目標値上限の 4%を大きく超えて推移している。メキシコは産油国でありながら精製設備の不足から、ガソリンを輸入に頼っており、政府のガソリン低価格政策見直しによる価格引上げが、最近の物価上昇に影響している(第Ⅰ-4-2-2-4図)。 また、米国のトランプ新政権の強硬な通商・移民政策がメキシコ経済に与える影響への懸念から、通貨ペソは 2017 年1月に過去最安値を更新したが 188、同年

2 月の先物取引を利用した通貨介入政策「為替ヘッジ・プログラム」導入や米国との通商交渉が順調に進むとの期待感から上昇に転じている。メキシコペソは、新興国の中でも取引量の多さと流動性の高さから投機的資金の出入りが大きく、ボラティリティが拡大しやすい通貨であると言われている(第Ⅰ-4-2-2-5 図)(第Ⅰ-4-2-2-6 図)。 中央銀行は、インフレへの対応と通貨防衛のため、2015 年 12 月の米国の利上げに追随し政策金利を引き上げて以来、2017 年 5 月までに計 9 回の利上げを実施し、年 6.75%となっている。今後も追加的な引き上げが必要となれば、減速している国内経済を一層停滞させる懸念があるため、注意が必要である。

-5

20

15

10

5

0

(%)

8.25% 5/186.75%

インフレターゲット3%±1%(上限 4%)

政策金利引き上げ2015 年 12 月、0.25pt、2016 年 2、6、9、11、12 月、2017 年 2 月、各 0.5pt、3 月、5 月各 0.25pt

消費者物価 コア消費者物価(食品、エネルギー除く)インフレ目標(上限) インフレ目標(下限)

エネルギー物価政策金利

20172011 2012 2013 2014 2015 2016 (年)201020092008

第Ⅰ-4-2-2-2 図 メキシコの鉱工業生産指数の推移

資料:�メキシコ国立統計地理情報院のデータから経済産業省作成。

60

130

120

110

100

90

80

70

(2008 年 =100)

鉱工業生産 製造業 鉱業

2008/1

2008/3

2008/5

2008/7

2008/9

2008/1

12009/1

2009/3

2009/5

2009/7

2009/9

2009/1

12010/1

2010/3

2010/5

2010/7

2010/9

2010/1

12011/1

2011/3

2011/5

2011/7

2011/9

2011/1

12012/1

2012/3

2012/5

2012/7

2012/9

2012/1

12013/1

2013/3

2013/5

2013/7

2013/9

2013/1

12014/1

2014/3

2014/5

2014/7

2014/9

2014/1

12015/1

2015/3

2015/5

2015/7

2015/9

2015/1

12016/1

2016/3

2016/5

2016/7

2016/9

2016/1

12017/1

第Ⅰ-4-2-2-3 図 メキシコの小売売上高の伸び率の推移

資料:�メキシコ国立統計理理情報院のデータから経済産業省作成。

-20

25

20

15

10

5

0

-5

-10

-15

(2008 年 =100)

小売売上高指数 自動車

2009

/120

09/4

2009

/720

09/1

020

10/1

2010

/420

10/7

2010

/10

2011

/120

11/4

2011

/720

11/1

020

12/1

2012

/420

12/7

2012

/10

2013

/120

13/4

2013

/720

13/1

020

14/1

2014

/420

14/7

2014

/10

2015

/120

15/4

2015

/720

15/1

020

16/1

2016

/420

16/7

2016

/10

2017

/1第Ⅰ-4-2-2-4 図 メキシコの消費者物価と政策金利の推移

資料:�メキシコ国立統計地理情報院、メキシコ中央銀行のデータから経済産業省作成。

�1882017 年 1 月 11 日に 1 ドル= 21.8275 ペソ(ロイター通信による)。

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 133

第2節中南米

Page 4: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

(2)貿易、投資、国際収支① 貿易 1982 年のメキシコ債務危機当時は、メキシコの輸出総額の 7 割以上を石油が占めていたが、1980 年代後半から進められた輸出志向の工業化や 90 年代の北米自由協定(NAFTA)締結を契機に、メキシコは米州向け輸出・加工拠点として発展を遂げた。2016 年には、メキシコの輸出に占める工業製品の割合が 8 割強に増加した一方、石油の割合は約 5%まで低下した。また、メキシコの輸出依存度は 2016 年で 35.7%と中南米諸国の中では高い水準となっている(第Ⅰ-4-2-2-7 図)(第Ⅰ-4-2-2-8 図)。 2016 年のメキシコの貿易収支は、輸出が 3,739 億ドル(前年比 -1.7%)、輸入が 3,871 億ドル(同 -2.1%)と輸出入ともに減少し、貿易収支は 131 億ドル(同-10.6%)の赤字だった(第Ⅰ-4-2-2-9図)。 メキシコの主な輸出品は、自動車・同部品、電気機器、一般機械、鉱物性燃料(原油)、輸入品は、電気機器、一般機械、自動車・同部品、鉱物性燃料(ガソ

リン)となっている(第Ⅰ-4-2-2-10 図)(第Ⅰ-4-2-2-11 図)。また、2016 年の財別の輸入構成比をみると、中間財 76.2%、資本財 10.4%、消費財 10.4%となっており、中間財や資本財を海外から輸入して、国内で加工・組立を行い、最終財を海外に輸出するという貿易形態を取っている(第Ⅰ-4-2-2-12 図)。 メキシコの主な貿易相手国は米国で、米国への輸出依存度は 2016 年で約 80.9%、輸入依存度も 47.3%と

第Ⅰ-4-2-2-5 図 メキシコペソの為替レートの推移

資料:�Thomson�Reuters�EIKON から経済産業省作成。

22.5

16.5

19.5

21.5

20.5

18.5

17.5

(1 ドル当りの為替レート)

2015

/12/

1

2016

/1/1

2016

/2/1

2016

/3/1

2016

/4/1

2016

/5/1

2016

/6/1

2016

/7/1

2016

/8/1

2016

/9/1

2016

/10/

1

2016

/11/

1

2016

/12/

1

2017

/1/1

2017

/2/1

2017

/3/1

2017

/4/1

ペソ高(ドル安)

ペソ高(ドル安)

ペソ安(ドル高)

ペソ安(ドル高)

第Ⅰ-4-2-2-6 図 新興国通貨の為替取引高の比較

備考:�2016 年 4 月の月間平均ベースの 1 日当たり取引金額資料:�BIS�「Triennial�Central�Bank�Survey�of�foreign�exchange�and�OTC�de-

rivatives�markets�in�2016」から経済産業省作成。

0 20015010050(10 億ドル)

人民元

メキシコペソ

韓国ウォン

トルコリラ

インドルピー

ロシアルーブル

南アランド

ブラジルレアル

第Ⅰ-4-2-2-7 図 メキシコの輸出額の品目別構成

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

(

(2016 年)

農産物・鉱物(石油除く)

8.9%石油

4.8%

工業製品

86.3%

第Ⅰ-4-2-2-8 図 中南米主要国の輸出依存度の比較

備考:�数値は 2016 年、ベネズエラのみ 2015 年資料:�IMF�「WEO,�April�2017」、CEIC のデータベースから経済産業省作成。

0

40

35

30

25

20

15

10

5

(%)

ベネズエラブラジルアルゼンチンコロンビアペルーチリメキシコ

35.7

24.5

19.0

11.0 10.6 10.3

3.5

第Ⅰ-4-2-2-9 図 メキシコの貿易収支の推移

資料:�Global�Trade�Aatlas のデータから経済産業省作成。

-10

4035302520151050-5

(10 億ドル)

2011 2012 2013 2014 2015 2016 (年)2017201020092008

貿易収支輸出輸入

134 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向

Page 5: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

極めて高い。対米国の貿易黒字額は拡大している(第Ⅰ-4-2-2-13 図)(第Ⅰ-4-2-2-14 図)(第Ⅰ-4-2-2-15図)。 一方、米国にとってもメキシコは、中国、カナダに次ぐ第 3 位の輸入相手国であり、対メキシコの輸入比率は 2016 年 13.4%で増加傾向にある(第Ⅰ-4-2-2-16図)。メキシコから米国向けの主要な輸出品は、乗用車、自動車部品、トラック、コンピュータ、テレビ、輸入品は、石油(原油除く)、自動車部品、石油ガス、ディーゼルエンジン、乗用車となっている(第Ⅰ-4-2-2-19図)。輸出入双方の上位品目に乗用車及び自動車部品が含まれており、米国とメキシコの間に、自動車産業

第Ⅰ-4-2-2-10 図 メキシコの主要輸出品目の割合と輸出額の伸び率の推移

備考:HS2 桁ベース資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

輸出品目(2016 年)

自動車・同部品27.0%

自動車・同部品27.0%

その他13.5%その他13.5%

電気機器20.6%

電気機器20.6%

一般機械16.6%

一般機械16.6%

光学機器4.4%

鉱物性燃料4.9%

服飾0.6%ゴム製品

0.7% 鉄道0.8%

飲料1.2%

鉄鋼製品1.4% 果物

1.5%野菜1.8% 貴金属

2.0%

家具2.8%

プラスチック製品2.3%

鉄鉱石等1.0%

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

-10

35

30

25

20

15

10

5

0

-5

(%)

2016 (年)2015 2014 2013 2012 2011 2010

-1.8-4.2

4.62.56.1

17.2

29.9

輸出額の伸び率の推移(品目別寄与度)

服飾 鉄道 鉱石 飲料 果物 野菜鉄鋼製品 貴金属 プラスチック製品 家具光学機器 鉱物性燃料 一般機械 電気機器自動車・同部品 全体

第Ⅰ-4-2-2-11 図 メキシコの主要輸入品目の割合と輸入額の伸び率の推移

備考:HS2 桁ベース資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

電気機器22.5%

電気機器22.5%

その他18.8%その他18.8%

一般機械17.9%

一般機械17.9%

自動車・同部品9.9%

自動車・同部品9.9%

薬品1.1%

穀物1.1%

紙製品1.4%

アルミニウム1.4% ゴム製品

1.6%有機化学品

2.0% 鉄鋼2.3%

光学機器3.9%

プラスチック製品5.9%

鉄鋼製品2.3%

化学工業製品1.2%

輸入品目(2016 年)

鉱物性燃料6.7%

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

-5

35

30

25

20

15

10

5

0

(%)

2016 (年)2015

-1.2

-2.12014

4.9

2013

2.8

2012

5.7

2011

16.4

2010

28.6

輸入額の伸び率の推移(品目別寄与度)

薬品 穀物 化学工業製品 紙製品アルミニウム ゴム製品 有機化学品 鉄鋼鉄鋼製品 光学機器 プラスチック製品 鉱物性燃料自動車・同部品 一般機械 電気機器 全体

第Ⅰ-4-2-2-12 図 メキシコの輸出入額の財別割合

資料:�メキシコ国立統計地理情報院のデータから経済産業省作成。

0 10080604020 (%)

輸入

輸出

14.214.2 75.275.2 10.610.6

25.525.5 44.644.6 29.929.9

消費財 中間財 資本財

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 135

第2節中南米

Page 6: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

を中心とするサプライチェーンが構築されていることを示している。なお、米国国際貿易委員会(USITC)によると、米国がメキシコから自動車及び同部品を輸入 す る 際 の NAFTA 利 用 率 は 2016 年 が 93.2 %、NAFTA 利用額は約 701 億ドルに上っている(第Ⅰ-4-2-2-17 表)(第Ⅰ-4-2-2-18 表)。

第Ⅰ-4-2-2-13 図 メキシコの主要輸出相手国の割合と輸出額の推移

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

米国80.9%米国80.9%

チリ0.5%

インド0.5%

韓国0.7% ブラジル

0.8%コロンビア0.8% 英国

0.9%スペイン0.9% 日本

1.0%

中国1.4%

カナダ2.8%

ドイツ1.1%

フランス0.5%

その他7.2%その他7.2%

輸出相手国(2016 年)

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

0

350

300

250

200

150

100

50

(10 億ドル)

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

1995

(国別の輸出額の推移)

米国 カナダ 中国 ドイツ日本 スペイン 英国 コロンビアブラジル 韓国 インド

(年)

第Ⅰ-4-2-2-14 図 メキシコの主要輸入相手国の割合と輸入額の推移

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

米国47.3%米国47.3%

中国17.7%中国17.7%日本

4.4%

韓国3.7%

ドイツ3.5%ドイツ3.5%

インド1.0%

スペイン1.2%

ブラジル1.2%タイ1.3%

イタリア1.3% 台湾

1.7%マレーシア

1.9%カナダ2.5%

その他11.4%その他11.4%

輸入相手国(2016 年)

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

0

250

200

150

100

50

(10 億ドル)

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

1995

米国 中国 日本 ドイツ韓国 カナダ マレーシア 台湾タイ イタリア ブラジル

(国別の輸入額の推移)

(年)

第Ⅰ-4-2-2-15 図 メキシコの対米国の貿易収支の推移

資料:�Global�Trade�Aatlas のデータから経済産業省作成。

0

350

300

250

200

150

100

50

(10 億ドル)

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

1995

収支輸出輸入

(年)

136 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向

Page 7: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

② 海外直接投資 2016 年のメキシコへの対内直接投資額は約 267 億ドル(前年比 -5.8%)で、米国からの投資が約 104 億ドルと全体の約 4 割を占め、次いでスペイン、ドイツ、イスラエル、カナダ、日本 189からとなっている(第Ⅰ-4-2-2-20 図)。2015 年時点のメキシコへの日系進出企業数は 957 社(第 13 位)となっている 190。 業種別では、製造業が全体の約 6 割を占め、外国企業がメキシコを米州における製造業の加工・輸出拠点として積極的に活用している様子が伺える。製造業以外では、運輸、金融・保険、情報、商業が続く(第Ⅰ-

4-2-2-21 図)。2015 年は自動車関連の投資が活発に続いている他(第Ⅰ-4-2-2-22 図)、金属包装や飲料、航空機等の分野で大型の投資案件がみられた。エネルギー改革の一環としてメキシコ石油公社(PEMEX)が独占してきた基礎石油化学や製油部門への民間企業の参入が認められたほか、油田鉱区の開発・生産事業の入札も開始されており、更なる外国資本の流入が期待される 191。

第Ⅰ-4-2-2-16 図 米国の主要輸入相手国の割合と輸入額の推移

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

中国21.1%中国21.1%

メキシコ13.4%

メキシコ13.4%

カナダ12.7%カナダ12.7%

日本6.0%日本6.0%

シンガポール0.8%

インドネシア0.9%

イスラエル1.0%

ブラジル1.2%

タイ1.3% スイス

1.7%マレーシア

1.7% 台湾1.8%

ベトナム1.9%

アイルランド2.1%

イタリア2.1%

インド2.1% 英国

2.5%韓国3.2%

フランス2.1%

その他15.1%その他15.1%

米国の輸入相手国(2016 年)

26.1%

ドイツ5.2%

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

0

600

500

400

300

200

100

(10 億ドル)

2016

2014

2012

2010

2008

2006

2004

2002

2000

1998

1996

1994

1992

1990

中国 メキシコ カナダ 日本ドイツ 韓国

1994 年NAFTA 発効

英国アイルランド

フランスインド

(国別の輸入額の推移)

(年)

第Ⅰ-4-2-2-17 表 米国のメキシコ輸入品のNAFTA 利用率

2016 年� (百万ドル)

輸入額全体

NAFTA 利用額利用率 (%)

輸送用機器 75,223 70,139 93.2

電気・電子機器 62,028 32,998 53.2

一般機械 51,046 14,887 29.2

精密機械 13,275 2,587 19.5

家具 11,280 2,313 20.5

鉱物性燃料 8,915 2,710 30.4

野菜 6,376 6,369 99.9

合計 296,882 165,009 55.6資料:JETRO、USITC のデータを基に経済産業省作成。

第Ⅰ-4-2-2-18 表 NAFTA の自動車関連の原産地規則と各国の最恵国税率

米国 カナダ メキシコ

原産地規則完成車 62.5%

部品 60.0%

域内関税率 関税率 0%

最恵国(MFN)税率

乗用車2.5% 完成車

6.1%完成車20%トラック

25%

部品2.5-5.0%

部品0-6%

部品0-5%

資料:各種資料を参考に経済産業省作成。

�189JETRO によると、日本のメキシコ向け投資の多くは在米現地法人を介して行われ、メキシコの統計上、米国側に計上されるものも多いこ

とから、実際の日本からの投資額は統計の約 2 倍以上となる。また近年中国からの投資も増加しているが、租税回避地等の第三国を経由した投資については、本統計では捕捉されていない。

190外務省「海外在留邦人数統計調査 平成 28 年」1912013 年 12 月エネルギー改革に向けた憲法の部分改正(エネルギー改革法)が、ペニャ・ニエト大統領により公布され、メキシコ国営石

油公社(PEMEX)が独占してきたメキシコでの石油開発事業への外資企業の参入機会が開かれた。原油埋蔵量が最も期待される深海油田の入札が 2016 年 12 月に実施され、日本の石油企業や商社も権益を獲得した。

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 137

第2節中南米

Page 8: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

第Ⅰ-4-2-2-19 図 NAFTA 域内(メキシコ、米国、カナダ)の貿易関係(2016 年)

備考:�数値は 2016 年資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

-121 億ドル

-193 億ドル

1,231 億ドル

58 億ドル58 億ドル251 億ドル251 億ドル

2,781 億ドル2,781 億ドル2,781 億ドル

2,660 億ドル2,660 億ドル2,660 億ドル

1,796 億ドル1,796 億ドル

3,026 億ドル3,026 億ドル

貿易収支

米国→メキシコ

162 億ドル136 億ドル50 億ドル34 億ドル30 億ドル28 億ドル

メキシコ→米国

230 億ドル227 億ドル214 億ドル182 億ドル128 億ドル114 億ドル

メキシコ 米国

カナダ

品目 輸出額 割合%9.07.62.81.91.71.5

1 石油(原油除く)2 自動車部品3 石油ガス4 ディーゼルエンジン5 乗用車6 光ファイバーケーブル品目 輸出額 割合%

7.67.57.16.04.23.8

1 乗用車2 自動車部品3 貨物自動車4 コンピュータ5 携帯電話6 テレビ・ビデオモニター

メキシコ→カナダ

27 億ドル23 億ドル21 億ドル11 億ドル10 億ドル9 億ドル

品目 輸出額 割合%10.89.38.54.24.13.8

1 乗用車2 貨物自動車3 自動車部品4 コンピュータ5 光ファイバーケーブル6 腰掛け(シート)

カナダ→メキシコ

7 億ドル6 億ドル5 億ドル3 億ドル2 億ドル2 億ドル

品目 輸出額 割合%11.410.09.44.53.73.2

1 自動車部品2 菜種3 乗用車4 アルミニウムの塊5 エチレン重合体6 小麦

カナダ→米国

457 億ドル362 億ドル90 億ドル74 億ドル71 億ドル56 億ドル

品目 輸出額 割合%16.413.03.22.72.62.0

1 乗用車2 原油3 自動車部品4 石油(原油除く)5 石油ガス6 木材

米国→カナダ

171 億ドル146 億ドル105 億ドル82 億ドル74 億ドル55 億ドル

品目 輸出額 割合%6.45.54.03.02.82.1

1 自動車部品2 乗用車3 貨物自動車4 石油(原油除く)5 航空機、エンジン、部品6 コンピュータ

第Ⅰ-4-2-2-20 図 メキシコへの対内直接投資額の推移

資料:�メキシコ経済省外国投資局のデータから経済産業省作成。

米国38.9%米国38.9%

スペイン10.7%

スペイン10.7%

ドイツ9.0%ドイツ9.0%

カナダ6.3%カナダ6.3%

日本5.7%日本5.7%

イスラエル7.5%

イスラエル7.5%

韓国3.2%

その他18.7%その他18.7%

主要投資国の割合(2016 年)

資料:�メキシコ経済省外国投資局のデータから経済産業省作成。

-2

14

12

10

8

6

4

2

0

(10 億ドル)

日本ドイツカナダオランダスペイン

1992 年 1996 年 2000 年 2004 年2008 年 2012 年 2016 年

米国

対内直接投資額の推移(フロー)

138 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向

Page 9: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

③ 国際収支 メキシコの経常収支は、慢性的な赤字状態でやや拡大傾向にあり、2016 年は対 GDP 比 -2.6%となった(第Ⅰ-4-2-2-23 図)。米国等への出稼ぎ労働者からの送金により、第二次所得収支は黒字が続いており、2016年の在米国メキシコ人からの送金額は、過去最高の約270 億ドルで全送金額の 95%を占め、メキシコのGDP の 2%に相当する規模で、自動車産業輸出に次ぐメキシコの外貨獲得手段となっており、中低所得層の重要な現金収入源となっている(第Ⅰ-4-2-2-24 図)。 メキシコは、これまで経常収支の赤字を海外からの資金流入で補ってきているが(第Ⅰ-4-2-2-25 図)、米新政権のメキシコに対する強硬な通商・移民政策は、為替リスク増大とともに、好調を続けてきたメキシコ向け直接投資や証券投資への影響が懸念される。近年、加速していた日本や欧米自動車メーカー等のグローバル企業のメキシコへ向け投資についても、新規進出や

生産拡大計画等について、今後の米国の政策の動向を伺い慎重な姿勢に向かう可能性がある。 2015 年の外貨準備高(ストック)の水準について見てみると、短期対外債務の 2.5 倍(2.5 年分相当)と IMF が保有外貨準備の目安とする 1 倍以上を上

第Ⅰ-4-2-2-21 図 メキシコへの対内直接投資額の業種別の割合

資料:�メキシコ経済省外国投資局のデータから経済産業省作成。

農林水産業0.3%

鉱業4.7%鉱業4.7%

製造業61.3%製造業61.3%

運輸9.6%運輸9.6%

商業2.3%

金融9.6%金融9.6%

情報3.4% その他

8.8%その他8.8%

業種別(2016 年)

第Ⅰ-4-2-2-22 図 メキシコの輸送機器部門への対内直接投資額の推移(フロー)

資料:�メキシコ経済省外国投資局のデータから経済産業省作成。

0

5045403530252015105

(10 億ドル)

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

対内投資額 うち輸送機器

(年)

第Ⅰ-4-2-2-23 図 メキシコの経常収支の推移(対GDP比と構成)

資料:�IMF�「WEO,�April�2017」から経済産業省作成。

-40

0

-5

-10

-15

-20

-25

-30

-35

-7

0

-1

-2

-3

-4

-5

-6

(%)

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

1995

1994

1993

1992

1991

1990

経常収支額

(10 億ドル)

経常収支赤字の対 GDP 比(右軸)

-2.6%

(年)

資料:�メキシコ銀行のデータから経済産業省作成。

-70

403020100

-10-20-30-40-50-60

2016201520142013201220112010

第二次所得収支貿易収支

経常収支第一次所得収支サービス収支

(10 億ドル)

(年)

第Ⅰ-4-2-2-24 図 メキシコへの海外送金額の推移

注 :米国のデータは 2013 年から資料:�メキシコ銀行のデータから経済産業省作成。

0

30

25

20

15

10

5

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

(10 億ドル)

全体米国からの送金額

(年)

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 139

第2節中南米

Page 10: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

回っていることから、直ちに金融危機を発生させる可能性は、現時点では低いと言える(第Ⅰ-4-2-2-26 図)。

(3)産業、財政① 産業 メキシコは多岐にわたる産業が発達しているが、労働や生産コストの低さを強みとして、自動車産業、電気・電子産業、航空宇宙産業等の製造業が発展しており、広範な FTA ネットワーク 192を活用した輸出が活発である。産業別にみると、第二次産業(鉱業、電気・ガス・水道、建設、製造業)の全産業の GDP に占める割合は、2016 年で 32.5%と縮小傾向にあり、中でも原油生産量の減少に伴い鉱業は 6.2%に低下している。製造業については 16.8%とほぼ横ばいで推移しているが、自動車産業(輸送機器)については 3.2%

と堅調な伸びをみせている(第Ⅰ-4-2-2-27 表)。

(メキシコの自動車産業) メキシコの自動車生産台数は、2014 年にブラジルを上回り世界第 7 位となり、その後も拡大を続けている(第Ⅰ-4-2-2-28 表)。メキシコの自動車産業は、主要市場(北米、南米、欧州等)へのアクセスの良さや、自動車部品メーカーの産業集積、整備された物流網、低廉で豊富な労働力、さらには NAFTA を始めとする世界各国・地域との自由貿易協定のネットワークの積極的な活用により、米州地域における生産・輸出拠点としての優位性を有している。近年は、新興国の自動車市場の拡大もあり、メキシコを米州における中小型車の生産・輸出拠点として位置付ける海外自動車・部品メーカーの進出や、生産能力増強の動きが活発化している。小型車は利幅が小さく生産コストの抑制が競争力を左右することから、中国等、新興国の労働者の賃金が上昇する中、労働コストが低廉で安定しているメキシコの優位性が増している 193(第Ⅰ-4-2-2-29 図)。(メキシコの自動車生産・販売・輸出) メキシコ自動車工業会(AMIA)によると、メキシコの 2016 年の自動車生産台数(バス・トラックを除く)は約 346 万台(前年比 +2.0%)、輸出台数は約 277 万台(前年比 +0.3%)と、ともに 7 年連続で過去最高を更新した(第Ⅰ-4-2-2-30 図)。全生産に占める輸出の割合は約 8 割(79.9%)で、輸出先は米国が約213 万台(前年比 +7.1%)、以下カナダが約 24 万台(同-15.2%)、ドイツが約 7 万台(同 -15.2%)となっており、輸出台数に占める米国向け比率は 77.1%、カナダが 8.9%、二国の合計で 86%と北米市場への依存度

第Ⅰ-4-2-2-25 図 メキシコの金融収支の推移

資料:メキシコ銀行のデータから経済産業省作成。

-40

100

80

60

40

20

0

-20

2016201520142013201220112010

その他投資収支直接投資収支 証券投資収支

(10 億ドル)

金融収支

(年)

第Ⅰ-4-2-2-27 表 メキシコの産業部門のGDP構成比の推移

(%)

第一次産業

第二次産業

第三次産業農業 鉱業 製造業 輸送

機器1995 3.8 2.4 36.1 11.0 17.0 1.3 57.6

2000 3.3 2.1 37.8  9.9 18.7 2.2 56.3

2005 3.2 2.0 37.1 10.0 17.4 2.0 57.1

2010 3.1 2.0 34.9  8.3 16.4 2.2 59.4

2015 3.1 2.0 33.2  6.8 16.8 3.2 61.0

2016 3.1 2.0 32.5  6.2 16.6 3.2 61.6資料:メキシコ国立統計地理情報院、CEIC のデータから経済産業省作成。

第Ⅰ-4-2-2-26 図 メキシコの対外債務残高と外貨準備高の推移

資料:世界銀行�World�Development�Indicators�から経済産業省作成。

0

50045040035030025020015010050

0

4.5

4.0

3.5

3.0

2.52.5 倍

2.0

1.5

1.0

0.5

(倍)

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

1995

1994

1993

1992

1991

1990

対外債務残高外貨準備高

短期対外債務残高外貨準備高 / 短期対外債務残高(右軸)

(10 億ドル)

外貨準備の適正水準をみるベンチマークとして IMF が示した外貨準備高 / 短期対外債務残高 1 以上を適用。

�192米州ではチリに次いで多い世界 46 カ国(EU28 カ国含む)と FTA(自由貿易協定)を締結。(2017 年 4 月現在)193自動車や家電等の労働組合が一般的に穏健であることも利点と考えられている。

140 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向

Page 11: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

が極端に高い(第Ⅰ-4-2-2-31 図)。また、米国市場における原産国別の販売比率をみると、2007 年に7.5%だったメキシコ製が 2016 年に 12.2%まで上昇し、日本製は 12.9%から 9.3%に低下している(第Ⅰ-4-2-2-32 図)。 メキシコに進出している海外完成車メーカーは、2016 年末時点で合計 10 社で、国籍別メーカーの生産台数は、米国系メーカーが 155 万台(シェア 45%)、日系メーカーが約 139 万台(同 40%)、欧州系が 41

万台(同 12%)、韓国系が 10 万台(同 3%)となっている(第Ⅰ-4-2-2-33 図)。(自動車部品産業) メキシコ国内では、自動車部品サプライヤーの集積も進んでおり、輸出額も拡大している(第Ⅰ-4-2-2-34 図)。2016 年、メキシコの自動車部品輸出額の約 9割が米国向けとなっており(第Ⅰ-4-2-2-35 図)、米国から見てもメキシコは自動車部品輸入額の約 3 割強を占める輸入先として存在感を強めている(第Ⅰ-4-2-2-36 図)。現在、米国がメキシコから輸入する自動車部品の多くは、米国原産の構成部品をメキシコ内で加工したものとなっており、米墨間では国境を越えた自動車産業の分業体制が確立されており、両国の相互

第Ⅰ-4-2-2-30 図 メキシコの自動車の生産・輸出・販売台数の推移

資料:�メキシコ自動車工業界(AMIA)、国立統計地理情報院のデータから経済産業省作成。

0

400

350

300

250

200

150

100

50

70

84

82

80

78

76

74

72

(万台) (%)

2016 2015 2014 2013 2012

生産販売

輸出輸出比率(右軸)

79.9%

(年)

第Ⅰ-4-2-2-28 表 各国の自動車生産台数の推移

2005 年� (百万) 2010 年� ( 百万) 2016 年� (百万)(%)

国名 台数 国名 台数 国名 台数 前年比1 米国 11.9 1 中国 18.3 1 中国 28.1  14.5

2 日本 10.8 2 日本  9.6 2 米国 12.2   0.8

3 ドイツ  5.8 3 米国  7.7 3 日本  9.2  -0.8

4 中国  5.7 4 ドイツ  5.9 4 ドイツ  6.1   0.5

5 韓国  3.7 5 韓国  4.3 5 インド  4.5   7.9

6 フランス  3.5 6 インド  3.6 6 韓国  4.2  -7.2

7 カナダ  2.8 7 ブラジル  3.4 7 メキシコ  3.6   0.9

8 スペイン  2.7 8 スペイン  2.4 8 スペイン  2.9   5.6

9 ブラジル  2.5 9 メキシコ  2.3 9 カナダ  2.4   3.8

10 英国  1.8 10 フランス  2.2 10 ブラジル  2.2 -11.2

11 メキシコ  1.7 11 カナダ  2.1 11 フランス  2.1   5.6

12 インド  1.6 12 タイ  1.6 12 タイ  1.9   1.8

13 ロシア  1.4 13 イラン  1.6 13 英国  1.8   8.0

14 タイ 1.2 14 ロシア  1.4 14 トルコ  1.5   9.4

15 イラン  1.1 15 英国  1.4 15 チェコ  1.3   8.3備考:台数はバス・トラックを含む。資料:国際自動車工会(OICA)のデータから経済産業省作成。

第Ⅰ-4-2-2-29 図 一般工職の月額賃金の比較

資料:�JETRO�「2015 年度投資コスト比較」から経済産業省作成。

0

1,200

1,000

800

600

400

200

(US ドル) (2015 年度調査)

深圳(中国)

上海(中国)

ホーチミン(ベトナム)

マニラ(フィリピン)

バンコク(タイ)

ニューデリー(インド)

リマ(ペルー)

ボゴタ(コロンビア)

ブエノスアイレス(アルゼンチン)

サンティアゴ(チリ)

サンパウロ(ブラジル)

メキシコシティ(メキシコ)

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 141

第2節中南米

Page 12: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

第Ⅰ-4-2-2-32 図 米国市場の原産国別自動車販売の比率

資料:�JETRO、メキシコ自動車工業会(AMIA)のデータから経済産業省作成。   (原資料:Ward’sAutomotive)

0 100908070605040302010 (%)

2007

2016

米国・カナダ メキシコ 日本韓国 ドイツ その他

65.765.7

69.269.2

12.212.2

7.57.5

9.39.3

12.912.9

5.65.6

4.04.0

3.83.8

3.93.9

3.33.3

2.62.6

第Ⅰ-4-2-2-33 図メキシコの国籍別完成車メーカーの生産・輸出・販売台数の比較

*�国内販売台数は、輸入した完成車をメキシコ国内で販売した台数も含むため、ここで示す生産台数は、国内販売台数と輸出台数の合計と等しくない。

資料:�メキシコ自動車工業会(AMIA)のデータから経済産業省作成。

2016 年

メキシコ生産155 万台

国内販売台数51 万台

*輸入車の販売数を含む

(シェア 45%) 輸出136 万台

うち北米向け130 万台(95.6%)

米国系メーカー

87.7%

日系メーカー

メキシコ生産139 万台

国内販売台数65 万台

*輸入車の販売数を含む

(同 40%) 輸出98 万台

うち北米向け75 万台(76.5%)

70.5%

ドイツ系メーカー

メキシコ生産41 万台

国内販売台数25 万台

*輸入車の販売数を含む

(同 12%) 輸出33 万台

うち北米向け23 万台(69.7%)

80.5%

第Ⅰ-4-2-2-34 図 メキシコの自動車部品の輸出入額の推移

備考:自動車部品(HS8708)資料:�Global�Trade�Atlas�のデータから経済産業省作成。

0

30

25

20

15

10

5

(10 億ドル)

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

輸出輸入

(年)

第Ⅰ-4-2-2-35 図 メキシコの自動車部品の主要輸出相手国・輸入相手国の割合

資料:�Global�Trade�Atlas から経済産業省作成。

米国86.6%米国86.6%

カナダ4.4%

中国2.1%

日本1.4%

ブラジル1.3%

ドイツ0.6%

英国0.6%

その他2.9%

輸出先(2016 年)

資料:�Global�Trade�Atlas から経済産業省作成。

米国59.9%米国59.9%

日本10.0%日本10.0%

中国7.3%中国7.3%韓国

5.1%

ドイツ4.3%

カナダ4.0%

イタリア1.4%

タイ1.2%

インド1.0% その他

5.7%

輸入先(2016 年)

第Ⅰ-4-2-2-31 図 自動車の輸出相手国の割合

資料:�メキシコ自動車工業界(AMIA)、国立統計地理情報院のデータから経済産業省作成。

米国77.1%米国77.1%

カナダ8.9%カナダ8.9%

ドイツ 2.9%ドイツ 2.9%コロンビア 1.8%コロンビア 1.8%

ブラジル 1.7%ブラジル 1.7%アルゼンチン 1.4%アルゼンチン 1.4%

チリ 0.7%チリ 0.7%中国 0.4%中国 0.4%

プエルトリコ 0.4%プエルトリコ 0.4%ペルー0.3%ペルー0.3%

その他 4.5%その他 4.5%

輸出相手国(2016 年)

142 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向

Page 13: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

の依存度は極めて高い(第Ⅰ-4-2-2-37 図)。

② 財政 メキシコ政府は、過去の債務危機や経済危機からの経験から、財政やマクロ経済運営に対する投資家の信頼を確保し、海外直接投資の流入やそれに伴う正規雇用の創出を維持するため、財政規律を重視している。2006 年、財政収支の均衡を義務づける財政責任法が施行されて以降、原則、財政赤字を容認しない予算編成が定められている(第Ⅰ-4-2-2-38 図)。かつては国家歳入の多くを石油収入に依存し、2008 年にはその割合が歳入の 45.6%にまで達していたが、その後生産量減少や石油価格下落により、2016 年には 8.5%ま

で低下している(第Ⅰ-4-2-2-39 図)(第Ⅰ-4-2-2-40図)。経済成長が減速傾向にある中にあっても、政府は財政規律の維持を優先し歳出削減に努めており、増税等による税収基盤の強化により石油関連以外の税収による財源の確保に努めている 194。 世界経済危機後の 2009 年、景気後退による歳入減少と景気対策向けの歳出増加により財政赤字は対GDP 比で -5.1%に増大したが、2016 年には同 -2.9%に改善している。政府総債務残高については、2016年で対 GDP 比 58.1%と他の新興国等と比べ低い水準にはあるものの、増加傾向にあることが懸念される(第Ⅰ-4-2-2-41 図)。

第Ⅰ-4-2-2-36 図 米国の自動車部品の輸出相手国の割合と推移

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

カナダ26.2%カナダ26.2%

ブラジル1.0%

英国1.0%

日本0.8%

韓国0.8%

イタリア0.7%

豪州0.8%

メキシコ24.1%

メキシコ24.1%

中国3.0%

ドイツ1.1%

その他40.6%その他40.6%

輸出相手国(2016 年)

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

0

25

20

15

10

5

(10 億ドル)

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

1995

1994

1993

1992

1991

1990

(国別の輸出額の推移)

カナダ メキシコ 中国 ドイツブラジル 英国 豪州 日本

(年)

第Ⅰ-4-2-2-37 図 米国の自動車部品輸入相手国の割合と推移

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

メキシコ34.5%

メキシコ34.5%

中国14.0%中国14.0%

カナダ13.9%カナダ13.9%

日本12.0%日本12.0%

ドイツ7.7%ドイツ7.7%

韓国7.0%韓国7.0%

タイ0.7%イタリア

1.0%

インド1.3%

台湾2.3%

その他5.5%その他5.5%

輸入相手国(2016 年)

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

0

25

20

15

10

5

(10 億ドル)

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

1995

1994

1993

1992

1991

1990

(国別の輸入額の推移)

メキシコ 中国 カナダ 日本ドイツ 韓国 台湾 インドイタリア タイ

(年)

�194財務公債省のデータによると 2016 年の連邦政府の税収の内訳は、所得税が 53%、付加価値税が 29%、物品税(ガソリン等)が 15%、法

人税 -0.2%、関税 2%となっている。

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 143

第2節中南米

Page 14: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

(4)メキシコ経済のリスク要因 以上、最近のメキシコ経済の動向を見てきたが、米国経済の堅調な拡大により、輸出の増加が期待できるものの、メキシコの経済成長を押し下げるリスク要因として、米国の対メキシコ政策の先行きの不透明性、

それに伴うペソ安進行とインフレ率の上昇、金利引き上げによる消費・投資マインドの低下、原油生産量の減少と今後の価格動向、政情不安等による構造改革の実行の遅れ等が挙げられる。

(1)マクロ経済① GDP 2016 年のブラジルの実質 GDP 成長率は -3.6%と、2015 年の -3.8%から 2 年連続してマイナス成長となった。内需(消費、投資)の低迷、高インフレ、高失業率、高金利、等により景気停滞が長期化していたが、一次産品価格の持直しや政治混乱の収束、インフレ率の低下等、好転の兆しが見られている(第Ⅰ-4-2-3-1 図)。しかし一方で、失業率の悪化は続いており、

商品価格の先行きにも不透明感があることから、本格的な回復には、更に時間を要すると思われる。 2017 年の成長率については、ブラジル政府(財務省)が +1.0%、ブラジル中央銀行(以下、中央銀行)が発表した民間予測が +0.5%、IMF が +0.2%と、プラス成長に転じると予測しているが、回復のペースは緩やかなものとなるとしている 195。

3.ブラジル

第Ⅰ-4-2-2-38 図 メキシコの財政収支の推移

資料:�IMF�「WEO,�April�2017」から経済産業省作成。

700

500

300

100

-100

-300

-500

-700

-900

6

4

2

0

-2

-4

-6

-8

(10 億ペソ) (%)

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

1995

1994

1993

1992

1991

1990

財政収支財政収支の対 GDP 比(右軸)

基礎的財政収支基礎的財政収支の対 GDP 比(右軸)

0.2%

-2.9%-2.9%

(年)

第Ⅰ-4-2-2-39 図 メキシコの原油生産量の推移

資料:�メキシコ国立統計地理情報院のデータから経済産業省作成。

1,500

4,000

3,500

3,000

2,500

2,000

(千バレル / 日)

2000/1

2000/6

2000/1

12001/4

2001/9

2002/2

2002/7

2002/1

22003/5

2003/1

02004/3

2004/8

2005/1

2005/6

2005/1

12006/4

2006/9

2007/2

2007/7

2007/1

22008/5

2008/1

02009/3

2009/8

2010/1

2010/6

2010/1

12011/4

2011/9

2012/2

2012/7

2012/1

22013/5

2013/1

02014/3

2014/8

2015/1

2015/6

2015/1

12016/4

2016/9

2017/2

第Ⅰ-4-2-2-40 図 メキシコの歳入に占める石油関連収入の割合

資料:�メキシコ国立統計地理情報院のデータから経済産業省作成。

0

25

20

15

10

5

0

60

50

40

30

20

10

(10 億ドル) (%)

201620152014201320122011201020092008200720062005

メキシコの歳入に占める石油関連収入

石油関連収入 石油関連収入依存度(右軸)非石油関連収入

45.6%

8.5%8.5%

(年)

第Ⅰ-4-2-2-41 図 メキシコの政府総債務残高

資料:�IMF�「WEO,�April�2017」から経済産業省作成。

0

16,000

14,000

12,000

10,000

8,000

6,000

4,000

2,000

0

70

60

50

40

30

20

10

(10 億ペソ) (%)

(年)2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

政府総債務残高政府総債務残高の対 GDP 比(右軸)

58.1%

144 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向

Page 15: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

② 生産、消費 鉱工業生産は低迷を続けているが、鉱物採取に回復の兆しがみられる。消費は低迷を続けており、小売売上高の伸び率は長期にわたり減速している(第Ⅰ-4-2-3-2 図)(第Ⅰ-4-2-3-3 図)。

③ 物価、政策金利、為替 ブラジルの消費者物価指数(IPCA)は、公共料金引き上げの影響の緩和や、通貨レアル高による輸入物価上昇の抑制と国内消費の減退等により伸び率が鈍化

第Ⅰ-4-2-3-2 図 ブラジルの鉱工業生産の推移 

資料:�ブラジル地理統計院、CEIC のデータベースから経済産業省作成。

70

140

130

120

110

100

90

80

(2012 年 =100)

2012/1

2012/3

2012/5

2012/7

2012/9

2012/1

12013/1

2013/3

2013/5

2013/7

2013/9

2013/1

12014/1

2014/3

2014/5

2014/7

2014/9

2014/1

12015/1

2015/3

2015/5

2015/7

2015/9

2015/1

12016/1

2016/3

2017/1

2017/3

2016/5

2016/7

2016/9

2016/1

1

鉱工業生産指数 鉱物採取 製造業

第Ⅰ-4-2-3-3 図 ブラジルの小売売上高の伸び率の推移

注:2016 年 =100資料:�ブラジル地理統計院、CEIC データベースから経済産業省作成。

-30

40

30

20

10

0

-10

-20

(%:前年同月比)

小売売上高指数 自動車、バイク・部品

2012/1

2012/3

2012/5

2012/7

2012/9

2012/1

1

2011/1

2011/3

2011/5

2011/7

2011/9

2011/1

1

2010/1

2010/3

2010/5

2010/7

2010/9

2010/1

1

2013/1

2013/3

2013/5

2013/7

2013/9

2013/1

12014/1

2014/3

2014/5

2014/7

2014/9

2014/1

12015/1

2015/3

2015/5

2015/7

2015/9

2015/1

12016/1

2016/3

2017/1

2017/3

2016/5

2016/7

2016/9

2016/1

1第Ⅰ-4-2-3-4 図 ブラジルの消費者物価と政策金利の推移

備考:�* IPCA は前年同月比   *拡大消費物価指数(IPCA)�:ブラジル政府の公式インフレ指数。最低給与の 40 倍までの所得を持つ家族を対象。   **監視品目:ガソリン価格や電気・通信料金、公共交通機関運賃等が政府による監視の対象となっている。資料:�ブラジル地理統計院、ブラジル中央銀行のデータから経済産業省作成。

0

25

20

15

10

5

(%)

20172011 2012 2013 2014 2015 2016 (年)2010200920082007200620052004

5.6%

下限 2.5

上限 6.54.6%

11.25%

政策金利2016 年 10 月、11 月各 0.25%、2017 年 1 月、2 月各 0.75%、4 月 1%、引き下げ

拡大消費者物価指数(IPCA) 拡大消費者物価指数(監視品目) インフレ目標(下限)インフレ目標(上限) 政策金利

2015 年、降雨不足(水力発電依存 7 割)による電力料金の上昇の影響。

第Ⅰ-4-2-3-1 図 実質 GDP成長率と需要項目別寄与度の推移

備考:�四半期ベースは季節調整済、前期比資料:�ブラジル地理統計院のデータから経済産業省作成。

6

4

2

0

-2

-4

-6

-8

(%)

在庫変動・誤差政府消費個人消費

実質 GDP純輸出総固定資本形成

1.91.93.03.0

0.50.5

-3.8-3.8-3.6

-0.7-0.9-0.9

(四半期ベース)

ⅣⅢⅡIⅣⅢⅡIⅣⅢⅡIⅣⅢⅡIⅣⅢⅡI

(年ベース)

2012 2013 2014 2015 2016 (年)2012

2013

2014

2015

2016

�195ブラジル銀行が週次で発表しているエコノミスト等への調査に基づく GDP 成長率予測に関し、1 月 27 日時点で 2017 年の GDP 成長率を

0.5%、2018 年の GDP 成長率を 2.20%としている。

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 145

第2節中南米

Page 16: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

し、2016 年(通年)は前年比 +6.29%と、インフレ目標値(4.5 ± 2%)の上限値 6.5%を下回った。さらに2017 年 3 月は、7 か月連続で前月を下回り推移し、同+4.6%と上記目標値の 4.5%に近づいた。ブラジル中央銀行は、2017 年 4 月、政策金利である基準金利を1%引き下げ、年 11.25%とした。利下げは 5 会合連続で、インフレの抑制が想定通りに進んでいることから、今後も緩和のペースを加速するものとみられ、企業の設備投資の増加が期待される(第Ⅰ-4-2-3-4 図)。 ブラジル通貨レアルは、原油安の長期化や政治的混乱を背景に 2014 年以来下落していたが、テメル政権の構造改革実現への期待や原油価格の上昇等により、年明け以降、持ち直しがみられた。レアルは 2016 年11 月の米国大統領選挙後 1 ドルあたり 3.5 レアル近くまで下落したが、足下では 3.0 レアル台まで上昇している(第Ⅰ-4-2-3-5 図)。

 昨年末以来、米国が拡張的な財政政策を実施するとの観測から米国金利の先高観が高まったが、米国の利上げが想定以上のペースで加速すれば、資金流出圧力が高まり、レアル安が起こる可能性もある。レアル安となれば、インフレ低下のペースが遅れ、更に金融緩和基調が弱まることになれば、景気回復を遅らせる要因となる可能性もあることから、注意が必要である。

④ 雇用、所得 ブラジルの失業率は、17 年 4 月末時点で 13.7%と雇用状況の悪化が続いている。企業は雇用拡大に慎重な姿勢を示しており、回復には時間が要するとの見方が強い。失業率の上昇に加え、インフレによる実質所得の減少や債務負担の増大から家計の購買力は低下していたが、足下の実質所得の伸び率は 16 年 12 月以降

プラスに転じている(第Ⅰ-4-2-3-6 図)。

(2)貿易、投資、国際収支① 貿易 2016 年のブラジルの貿易は、輸出が 1,852 億ドル(前年比 -3.1%)、輸入が 1,375 億ドル(同 -19.8%)、貿易収支の黒字は 477 億ドルと過去最高を記録した(第Ⅰ-4-2-3-7 図)。

 ブラジルは、大豆、砂糖、コーヒー、食肉等の農産品や鉄鉱石、鉱物性燃料等の鉱物資源等の一次産品が主要な輸出品目で、全輸出額の 5 割弱を占める一方で、航空機、自動車・同部品等の工業製品も 4 割弱を占めている。また、原油の産出・輸出国であるが、ガソリン等の石油製品や原油も輸入している(第Ⅰ-4-2-3-8図)。 ブラジルにとり、中国及び米国が主要な貿易相手国となっている。輸出については、2016 年の全輸出額

第Ⅰ-4-2-3-5 図 ブラジルレアルの為替レートの推移

資料:�Thomson�Reuters�EIKON から経済産業省作成。

5.0

1.0

4.5

4.0

3.5

3.0

2.5

2.0

1.5

(1 ドル当りの為替レート)

2013

/7/1

2013

/9/1

2013

/11/

120

14/1

/120

14/3

/120

14/5

/120

14/7

/120

14/9

/120

14/1

1/1

2015

/1/1

2015

/3/1

2015

/5/1

2015

/7/1

2015

/9/1

2015

/11/

120

16/1

/120

16/3

/120

16/5

/120

16/7

/120

16/9

/120

16/1

1/1

2017

/1/1

2017

/3/1

レアル高(ドル安)レアル高

(ドル安)レアル安

(ドル高)レアル安

(ドル高)

第Ⅰ-4-2-3-6 図 ブラジルの失業率と実質所得の伸び率の推移

資料:�ブラジル地理統計院のデータから経済産業省作成。

-6

4

2

0

-2

-4

6

0

14

12

10

8

6

4

2

(%) (%)

ブラジルの失業率と実質所得の伸び率

実質所得伸び率失業率(右軸)

2013 2014 2015 2016 2017

13.7%

(年)

第Ⅰ-4-2-3-7 図 ブラジルの貿易収支の推移

資料:�Global�Trade�Aatlas のデータから経済産業省作成。

-5

30

25

20

15

10

5

0

(10 億ドル)

2017(年)2011 2012 2013 2014 2015 201620102009

貿易収支 輸出 輸入

146 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向

Page 17: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

の 19.0%が中国向けで、主に大豆や鉄鉱石、肉類等の一次産品を、次いで 12.5%が米国向けで、主に一般機械、航空機、鉄鋼等を輸出している(第Ⅰ-4-2-3-9 図)。また、輸入については、同年の全輸入額の 17.3%を米国から、主に一般機械、鉱物性燃料、プラスチック製品等を、次いで 17.0%を中国から、主に電気機器、一般機械、有機化学品等を輸入している(第Ⅰ-4-2-3-10 図)。2000 年以降は輸出、輸入ともに米国の占める割合が低下する一方、中国の割合が増加し、中国に対する貿易依存度が高くなってきている。以上のことからブラジルは、一次産品価格の動向や中国及び米国経済の影響を受けやすい構造となっていると言える。

 2016 年のブラジルの輸出についてみると、一次産品の上位品目の大豆、鉄鉱石、原油、食肉、コーヒー等が減少したが、自動車や航空機等の工業製品が増加した(第Ⅰ-4-2-3-11 図)米国の自動車市場が堅調だったことや、コロンビアとの間で無関税輸入枠を相互に設定したことが良い影響を与えたほか、中国国内の民間航空機の旅客輸送量の増加を背景とした航空機も増加した。2017 年以降は、原油や鉄鉱石等の国際市況の回復や穀物生産量の増加により、輸出の伸びが期待されている(第Ⅰ-4-2-3-12 図)。

第Ⅰ-4-2-3-8 図 ブラジルの主要輸出品目と主要輸入品目の割合

備考:�HS2 桁ベース資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

採油用種子、大豆10.6%

鉄鉱石8.5%鉄鉱石8.5%

食肉6.8%食肉6.8%

一般機械6.3%

一般機械6.3%

鉱物性燃料(原油)6.3%

自動車・部品5.9%

砂糖5.7%砂糖5.7%

鉄鋼4.3%鉄鋼4.3%

パルプ3.0%

食品工業残渣3.0%

コーヒー2.8%

航空機2.6%

穀物2.2%

船舶2.1%

プラスチック製品1.9%

石灰セメント1.8%

希少金属1.8%

電気機器1.7%

木材・木製品1.3%

野菜・果物1.2%

その他20.2%その他20.2%

輸出品目(2016 年)

備考:�HS2 桁ベース資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

一般機械15.2%

一般機械15.2%

電気機器12.2%

電気機器12.2%

鉱物性燃料10.9%

鉱物性燃料10.9%

自動車・部品7.2%

自動車・部品7.2%

有機化学6.0%

医薬品4.6%医薬品4.6%

肥料4.3%

プラスチック4.3%

光学機器3.4%化学工業製品

2.7%

ゴム製品1.8%

穀物1.7%

鉄鋼製品1.5%

希少金属1.2%

航空機1.2%

鉄鋼1.0%

アルミニウム0.9%

銅0.8%

魚介類0.8%

人造繊維0.8%

その他17.3%その他17.3%

輸入品目(2016 年)

第Ⅰ-4-2-3-9 図 ブラジルの主要輸出相手国の割合と推移

資料:�Global�Trade�atlas のデータから経済産業省作成。

中国 19.0%中国 19.0%

米国 12.5%米国 12.5%

アルゼンチン 7.2%アルゼンチン 7.2%

オランダ 5.6%オランダ 5.6%

ドイツ 2.6%ドイツ 2.6%日本 2.5%日本 2.5%

チリ 2.2%チリ 2.2%メキシコ 2.1%メキシコ 2.1%

イタリア 1.8%イタリア 1.8%ベルギー1.7%ベルギー1.7%

インド 1.7%インド 1.7%韓国 1.6%韓国 1.6%

英国 1.5%英国 1.5%シンガポール 1.5%シンガポール 1.5%

ウルグアイ 1.5%ウルグアイ 1.5%スペイン 1.4%スペイン 1.4%

サウジアラビア 1.3%サウジアラビア 1.3%

カナダ 1.3%カナダ 1.3%

フランス 1.2%フランス 1.2%

ロシア 1.2%ロシア 1.2%

その他 28.5%その他 28.5%

輸出相手国(2016 年)

資料:�Global�Trade�Atlas のデータから経済産業省作成。

輸出相手国の推移(割合)

0

30

25

20

15

10

5

(%)

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

中国オランダ チリ

米国ドイツ

アルゼンチン日本

(年)

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 147

第2節中南米

Page 18: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

② 海外直接投資 ブラジルでは、長期の経済停滞にかかわらず、中長期的な成長のポテンシャル等 196から海外からの直接投資は堅調に推移してきたが量的拡大ペースには一服感が見られる(第Ⅰ-4-2-3-13 図)。2015 年時点のブラジルへの日系進出企業(拠点)数は 705 社(第 17 位)となっている 197。 2016 年のブラジルの対内直接投資額(フロー)は約 530 億ドル(前年比 +3.2%)で、国・地域別で見る第 3 位の米国以外は、オランダ、ルクセンブルク、英国、スペイン等の欧州諸国が上位を占めている(第Ⅰ-4-2-3-14 図)。中国については、日本に次いで第13 位(8 億 8 千万ドル)で 198、近年、中国企業による電力等のインフラ部門への投資が積極的に行われて

いる。対内投資の業種別割合は、サービス業が約 6 割、農業・畜産・鉱業が約 14%、工業が約 26%となっているが(第Ⅰ-4-2-3-14 図)、2015 年 1 月に外資系企業の医療分野への直接・間接的な資本参加が可能となったことから、今後は健康・医療分野への投資の伸びが見込まれる。

③ 国際収支 ブラジルの経常収支は 2008 年以降赤字が続いており、金融、通信、小売等の業種で外国企業のプレゼンスが大きいことから、第一次所得収支は流出超で恒常的に赤字となっている。また一次産品価格下落等の影響で、2014 年は貿易収支が赤字に転じたが、価格の持ち直しにより 15 年には黒字に回復し、2016 年の経

第Ⅰ-4-2-3-12 図 商品先物指数の推移

資料:�トムソン・ロイター・コアコモディティーCRB 指数、Thomson�Reuters�EIKON�から経済産業省作成。

100

400

350

300

250

200

150

(ポイント)2009/1/31

2009/3/31

2009/5/31

2009/7/31

2009/9/30

2009/11/30

2010/1/31

2010/3/31

2010/5/31

2010/7/31

2010/9/30

2010/11/30

2011/1/31

2011/3/31

2011/5/31

2011/7/31

2011/9/30

2011/11/30

2012/1/31

2012/3/31

2012/5/31

2012/7/31

2012/9/30

2012/11/30

2013/1/31

2013/3/31

2013/5/31

2013/7/31

2013/9/30

2013/11/30

2014/1/31

2014/3/31

2014/5/31

2014/7/31

2014/9/30

2014/11/30

2015/1/31

2015/3/31

2015/5/31

2015/7/31

2015/9/30

2015/11/30

2016/1/31

2016/3/31

2016/5/31

2016/7/31

2016/9/30

2016/11/30

2017/1/31

2017/3/31

第Ⅰ-4-2-3-10 図 ブラジルの主要輸入相手国の割合と推移

資料:�Global�Trade�Aatlas のデータから経済産業省作成。

米国 17.3%米国 17.3%

中国 17.0%中国 17.0%

ドイツ 6.6%ドイツ 6.6%

アルゼンチン 6.6%アルゼンチン 6.6%韓国 4.0%韓国 4.0%

イタリア 2.7%イタリア 2.7%フランス 2.7%フランス 2.7%

日本 2.6%日本 2.6%メキシコ 2.6%メキシコ 2.6%

チリ 2.1%チリ 2.1%スペイン 1.9%スペイン 1.9%

インド 1.8%インド 1.8%英国 1.7%英国 1.7%

ロシア 1.5%ロシア 1.5%スイス 1.4%スイス 1.4%カナダ 1.4%カナダ 1.4%

オランダ 1.3%オランダ 1.3%台湾 1.2%台湾 1.2%

アルジェリア 1.2%アルジェリア 1.2%ベトナム 1.2%ベトナム 1.2%

その他 21.5%その他 21.5%

輸入相手国(2016 年)

資料:�Global�Trade�Aatlas のデータから経済産業省作成。

輸入相手国の推移(割合)

0

25

20

15

10

5

(%)

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

中国韓国

フランス

米国

イタリア

ドイツアルゼンチン

日本

(年)

第Ⅰ-4-2-3-11 図 ブラジルの輸出額の伸び率の推移

資料:�Global�Trade�Aatlas から経済産業省作成。

3025201510

50

-5-10-15-20

(%)

2016 2015 2014 2013 2012 2011

輸出伸び率の推移(品目別寄与度)

食肉鉄鋼 さとうきび 自動車・部品鉱物性燃料(原油) 一般機械鉄鉱石 採油用種子、大豆 合計

26.826.8

-5.3 -0.2-0.2-7.1

-15.1-15.1

-3.1-3.1

(年)

�196内需主導型経済、労働人口の増加、豊富な資源等。197外務省「海外在留邦人数統計調査 平成 28 年」198中国からの投資の多くが租税回避地域を回避して行われており、正確な数字が統計上に現れていない。

148 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向

Page 19: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

常赤字は 235 億ドル(対名目 GDP 比 -1.3%)と改善がみられている(第Ⅰ-4-2-3-15 図)。 ブラジルの経常収支赤字は、ブラジル経済への信認を背景とした直接投資や証券投資による資本流入によ

りカバーされてきたが、2016 年には証券投資がマイナスに転じており、今後の安定した外資繰りに懸念が生じている(第Ⅰ-4-2-3-16 図)。 2015 年の外貨準備高(ストック)の水準を見てみると、短期対外債務の 6.8 倍(6.8 年分相当)と IMFが保有外貨準備の目安とする 1 倍以上を十分に上回っていることから、ブラジルの外部ショックへの耐性は高まっており、金融危機発生のリスクは低いといえる(第Ⅰ-4-2-3-17 図)。

(3)構造改革 2016 年 8 月末に発足したテメル政権は、経済再生と財政健全化に向けた構造改革を進めている。a)歳出に上限を設定するための憲法改定 前政権下の低所得者層向けの社会保障支出拡大の政策は低所得者層の底上げには貢献したが、高水準のインフレや財政悪化を招く要因となった。2016 年 12 月、

第Ⅰ-4-2-3-13 図 ブラジルの対内直接投資額の推移(フロー)

資料:ブラジル銀行のデータから経済産業省作成。

0

80

70

60

50

40

30

20

10

(10 億ドル)

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

(年)

第Ⅰ-4-2-3-14 図 ブラジルへの主要対内直接投資国と業種の割合

資料 : ブラジル銀行のデータから経済産業省作成。資料 : ブラジル銀行のデータから経済産業省作成。

国別(2016 年)

オランダ19.6%

オランダ19.6%

ルクセンブルク13.8%

ルクセンブルク13.8%

英国6.7%英国6.7%

スペイン

6.5%

スペイン

6.5%イタリア

5.3%

フランス5.2%

ノルウェー4.1%

ドイツ 3.4%

英領バージン諸島3.1%

日本 2.6%スイス 1.8%中国 1.6%チリ 1.6%

メキシコ 1.5%

アイルランド 1.1%ベルギー 1.1%

カナダ 1.0%韓国 1.0%

その他6.8%

その他6.8%

米国12.2%米国

12.2%

業種別(2016 年)

石油・天然ガス採掘7.9%

石油・天然ガス採掘7.9%

金属・鉱物採掘業 4.6%鉱物採取関連サービス 1.3%

自動車・トレーラー・部品2.7%

化学品 2.4%食料品 4.0%

コンピュータ・光学機器

1.5%

電気機器・装置12.2%

電気機器・装置12.2%

機械・設備2.9%

商業10.6%商業

10.6%

金融3.4%

通信0.9%

保険3.6%

不動産5.5%

電気・ガス2.0%

運輸 1.4%情報 0.9%教育 1.5%

その他30.6%その他30.6%

資料:ブラジル銀行のデータから経済産業省作成。

第Ⅰ-4-2-3-15 図 ブラジルの経常収支の推移(対GDP比と構成)

資料:IMF�「WEO,�April�2017」から経済産業省作成。

20

0

-20

-40

-60

-80

-100

-120

2

1

0

-1

-2

-3

-4

-5

(10 億ドル) (%)

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

1995

1994

1993

1992

1991

1990

経常収支額 経常収支赤字の対 GDP 比(右軸)

-1.3

(年)

-120

40

20

0

-20

-40

-60

-80

-100

60(10 億ドル)

2010

第二次所得収支サービス収支

第一次所得収支経常収支

貿易収支

2011 2012 2013 2014 2015 2016(年)

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 149

第2節中南米

Page 20: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

テメル政権は「歳出上限設定の憲法改正案(歳出上限法)」を成立させた。歳出上限設定とは、連邦政府支出の増加率を前年の物価上昇率以下に抑えることを義務付けるもので 2036 年まで 20 年間続く。(財政) ブラジルでは、財政責任法に基づき、予算段階で各政府の基礎的財政収支に対する目標設定が義務づけられている。2016 年の中央連邦政府の同収支の赤字幅については、目標を 1,705 億レアル(GDP 比 -2.75%)と設定し、16 年(実績)は赤字額が 1,558 レアル(同-2.47%)となり目標を達成した(第Ⅰ-4-2-3-18 図)。政府は、2020 年に赤字解消を目指しているが、依然として政府債務残高の増大が懸念されている。(第Ⅰ-4-2-3-19 図)。b) 年金改革のための憲法改定 ブラジルの年金財政は恒常的な赤字で、社会保障費が連邦政府の歳出額の 4 割 199にのぼり、財政赤字拡大の要因となっている。政府は 2016 年 12 月、「年金改革に関する憲法改正案」を発表し、議会に特別委員会を設置し改革の内容についての議論を開始した。改正の内容は、年金受給年齢の引上げや保険料支払期間の厳格化、サラリーマンや公務員、農村部労働者に分かれた年金制度の統一、受給年齢の男女差解消等となっている。c)労働法改正 ブラジル進出外国企業の多くが、硬直的で労働者保護色の強いブラジルの労働法(統一労働法:1943 年制定)の問題を指摘しているが、2016 年 12 月、政府

は同法の近代化を図るため改正案を国会に提出し、現在、審議が行われている。改正の内容は、労働協約の裁量の拡大・運用の柔軟化で、臨時雇用契約やパートタイム労働についても制限緩和の対象としている。〈ブラジルのビジネス環境〉 ブラジル経済や産業の成長を妨げ、海外企業のブラジル進出を困難にしている要因として、複雑で高率な税制や極端に労働者保護に偏った労働法制、交通・インフラの未整備といった「ブラジルコスト」が知られている(第Ⅰ-4-2-3-20 表)。以下ブラジルのビジネス環境についての外部評価の結果を紹介する。○ビジネス環境ランキング 世界銀行の「2017 年ビジネス環境総合ランキング」によると、中南米では、メキシコ(47 位)を首位に、

第Ⅰ-4-2-3-18 図 ブラジルの財政収支の推移

資料:IMF�「WEO,�April�2017」から経済産業省作成。

-700

300200100

0-100-200-300-400-500-600

-12

6

4

2

0

-2

-4

-6

-8

-10

(10 億レアル) (%)

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

財政収支財政収支の対 GDP 比(右軸)

基礎的財政収支基礎的財政収支の対 GDP 比(右軸)

-2.5%

基礎的財政収支の対 GDP 比目標値2017 年 -2.1%2018 年 -1.8%2020 年 黒字化

(年)

第Ⅰ-4-2-3-16 図 ブラジルの金融収支の構成の推移

資料:ブラジル銀行のデータから経済産業省作成。

-50

1501301109070503010-10-30

(10 億ドル)

2016201520142013201220112010

その他投資 金融収支金融派生商品証券投資直接投資

(年)

第Ⅰ-4-2-3-17 図 ブラジルの対外債務残高と外貨準備高の推移

資料:世界銀行�World�Development�Indicators�から経済産業省作成。

600

500

400

300

200

100

0

14

12

10

8

6

4

2

0

(10 億ドル) (倍)

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

1999

1998

1997

1996

1995

1994

1993

1992

1991

1990

対外債務残高 短期対外債務残高外貨準備高 外貨準備高/短期対外債務残高(右軸)

6.8 倍

外貨準備の適正水準をみるベンチマークとして IMF が示した外貨準備高/短期対外債務残高 1 以上を適用。

(年)

�199ブラジル銀行によると 2016 年ブラジルの社会保障費は約 537 億レアルで歳出の約 40.9%。

150 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向

Page 21: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

コロンビア、ぺルー、チリの太平洋同盟の国々が 50位台で続いているのに対し、メルコスールではアルゼンチン(116 位)、ブラジル(123 位)と低位に留まっている(第Ⅰ-4-2-3-21 表)。 ブラジルのビジネス環境評価の下位の項目として、納税(181 位)、事業立ち上げ(175 位)、建築許可(172位)、越境取引(149 位)、財産権登記(128 位)、資金調達(101 位)等が挙げられている。中でもブラジル特有の複雑で高率な税制が障害として度々指摘されてきており、同報告書によると、ブラジル国内の企業は納税の準備のために年間 2,038 時間も費やしており、中南米諸国の平均 343 時間、高所得国(OECD 加盟国)の同 163 時間を大きく上回っている。また起業に要する手続数や日数等についても改善の必要性が指摘されている。○進出日系企業調査 JETRO の「2016 年度中南米進出日系企業実態調査」によると、ブラジルにおける投資環境面のメリットとして「市場の規模や成長性」を挙げる企業が多い一方で、デメリットとして税務面等の様々なリスクを指摘する企業が多い。「税制・税務手続の煩雑さ」を挙げる企業が 86.5%と最も多く、「人件費の高騰」、「不安定な為替」、「不安定な政治・社会情勢」、「労働争議・訴訟」、「行政手続の煩雑さ(許認可等)」が続いている(第Ⅰ-4-2-3-22 図)。また、2000 年代以降進出した企業のうち、初期投資が回収できた企業は 14.3%に過ぎないことも、固有のコストの高さが影響している

第Ⅰ-4-2-3-19 図 ブラジルの政府総債務残高の推移

資料:IMF�「WEO,�April�2017」から経済産業省作成。

0

8

7

6

5

4

3

2

1

0

100

80

60

40

20

(兆レアル) (%)

(年)2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

2001

2000

政府総債務残高(現地通貨)政府総債務残高の対 GDP 比(右軸)

78.3%

第Ⅰ-4-2-3-20 表 ブラジルコストの例

項目 内容

税制非常に多くの種類の税金が存在し、GDP の約4割に達する高負担。制度の頻繁な変更等も問題とされ、手続等でも企業の負担が大きい。

労働・雇用給与・役職等の面での被雇用者の優遇。最低賃金が名目成長率にスライド。高い社会保障費用や頻繁に発生する労働訴訟等、硬直的で時代遅れの労働法等が問題に。

治安 警備員の派遣、警備システム構築、防弾車購入等、対策のための費用負担。

金融 高率な融資金利や手数料代の負担。

インフラ・物流

電力や通信、道路、港湾設備の未整備や港湾スト等による経費負担や時間のロス。鉄道網が未発達により、高コストのトラック輸送が中心。

保護主義 国内産業保護のための輸入制限。複雑で頻繁に変わる税制(自動車関連)等。

資料:各種資料を参考に経済産業省作成。

第Ⅰ-4-2-3-21 表 世界銀行ビジネス環境総合ランキングの結果

中南米主要国のビジネス環境ランキング (2017 年)� (順位)

総合順位 国名 事業

立ち上げ 建築許可 電力供給 財産権登記 資金調達 個人投資

家保護 納税 越境取引 契約履行 破綻処理

47 メキシコ  93  83 98 101   5 53 114  61  40 30

54 ペルー 103  51 62  37  16 53 105  86  63 79

53 コロンビア  61  34 74  53   2 13 139 121 174 33

57 チリ  59  26 64  58  82 32 120  65  56 55

116 アルゼンチン 157 173 91 114  82 51 178 111  50 98

123 ブラジル 175 172 47 128 101 32 181 149  37 67

( 参考)

34 日本  89  60 15  49  82 53  70  49  48  2参考:世界 190 カ国・地域   各国・地域の電力事情や資金調達、税制等 10 項目を分析しランキングを作成資料:2017 年 世界銀行�ビジネス環境ランキング (Ease�of�Doing�Business)」から経済産業省作成。

第4章

第Ⅰ部

通商白書 2017 151

第2節中南米

Page 22: 2 中南米 - Minister of Economy, Trade and Industry...(1)マクロ経済 ①GDP メキシコの実質GDPは、2016年は前年比+2.3%と 2015年の同+2.6%から減速したが、3年連続で2%台の

ものと考えられる。

(4)ブラジル経済のリスク要因 以上、ブラジル経済の動向を見てきたが、ブラジルの経済成長を押し下げるリスク要因として、失業率の更なる上昇と民間消費回復の鈍化、世界や中国の経済の減速、原油を含む一次産品価格の動向、米国の予想を上回るペースでの利上げによる金融市場への影響、

政治情勢の不安定や汚職問題の長期化等による構造改革実行への影響等が挙げられる。 テメル政権の一連の構造改革は、金融市場からの期待や評価は高い一方で、財源確保や制度見直し等による国民への負担が重く、国民や議会から支持を得ることは容易なことではないが、ブラジル経済再生に向けて、政府が明確な道筋を示し、着実に実行していくことが重要である。

第Ⅰ-4-2-3-22 図 ブラジルの投資環境面のリスク調査結果

参考:調査対象企業数 222 社のうち、回答企業数 96 社、(n=96)資料:JETRO�2016 年度中南米進出日系企業実態調査の結果より。

0 10080604020(%)

特に問題はない環境汚染自然災害

消費者運動・排斥運動(不買運動、市民の抗議等)テロ

労働力の不足/人材採用難(一般ワーカー、スタッフ・事務員)知的財産権保護の欠如

労働力の不足・人材採用難(専門・技術職・中間管理職)ビザ・就労許可取得の困難さ・煩雑さ

土地/事務所スペースの不足、地価/賃料の上昇未成熟・未発達な裾野産業

外国人・企業を対象とした犯罪取引リスク(代金回収リスク等)法制度の未整備・不透明な運用

インフラの未整備現地政府の不透明な政策運営

行政手続の煩雑さ(許認可など)労働争議・労働訴訟

不安定な政治・社会情勢不安定な為替人件費の高騰

税制・税務手続の煩雑さ 86.579.2

7675

65.663.5

60.447.947.9

35.435.429.2

22.920.8

19.818.818.8

9.47.3

3.13.13.13.1

152 2017 White Paper on International Economy and Trade

第4章 その他新興国経済動向