2013年度電磁気学2講義第 回 10/16)2013年度電磁気学2講義第4回(10/16) 3.3...

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2013年度電磁気学2講義第410/16§3.3 Separation of Variables (変数分離法) 境界条件が球面上で与えられている場合は,球座標を用いるのが便 利である. 1 球面上で与えられる境界条件の例 §3.3.2 Spherical Coordinates (球座標) 球座標(3次元極座標) 球面上でポテンシャルの角度依存性を 指定する. V (θ , ) x = r cos sin θ , y = r sin sin θ , z = r cos θ

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2013年度電磁気学2講義第4回(10/16)�§3.3 Separation of Variables (変数分離法)

l  境界条件が球面上で与えられている場合は,球座標を用いるのが便

利である.

1

球面上で与えられる境界条件の例

§3.3.2 Spherical Coordinates (球座標)

球座標(3次元極座標)

球面上でポテンシャルの角度依存性を指定する.

V (�, ⇥)

x = r cos ⇥ sin �, y = r sin⇥ sin �, z = r cos �

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この式の導出の詳細については講義ノートを参照のこと.

�2V =1r2

⇤r

�r2 ⇤V

⇤r

⇥+

1r2 sin �

⇤�

�sin �

⇤V

⇤�

⇥+

1r2 sin2 �

⇤2V

⇤⇥2= 0

l  Laplace方程式を球座標で表す.

l  ここでは,ポテンシャルがz軸周りで対称,つまりVがφに依存しない場合を

仮定する.このときのLaplace方程式は

1r2

⇥r

�r2 ⇥V

⇥r

⇥+

1r2 sin �

⇥�

�sin �

⇥V

⇥�

⇥= 0

1r2

⇤r

�r2 ⇤V

⇤r

⇥+

1r2 sin �

⇤�

�sin �

⇤V

⇤�

⇥+

1r2 sin2 �

⇤2V

⇤⇥2= 0

球座標によるLaplace方程式

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Laplace方程式に代入

3

l  両辺をV=RΘで割って書き換えると

l  これが恒等的に成り立つためには,両辺ともに定数でなければならない.

θのみに依存 rのみに依存

左辺=右辺= 定数をこのような形に置くことの意味は,後ほど明らかになる.

変数分離解 l  変数分離解を仮定する.

V (r, �) = R(r)�(�)

l(l + 1)

�d

dr

�r2 dR

dr

⇥+

R

sin �

d

d�

�sin �

d�d�

⇥= 0

1R

d

dr

�r2 dR

dr

⇥= � 1

� sin �

d

d�

�sin �

d�d�

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l  動径関数Rに対する動径方程式

l  一般解は

(A, Bは任意の定数) R = Arl +B

rl+1

1R

d

dr

�r2 dR

dr

⇥= l(l + 1)

Check

d

dr

�r2 dR

dr

⇥=

d

dr

⇧r2

⇤lArl�1 � (l + 1)

B

rl+2

⌅⌃=

d

dr

⇤lArl+1 � (l + 1)

B

rl

= l(l + 1)Arl + l(l + 1)B

rl+1= l(l + 1)

�Arl +

B

rl+1

= l(l + 1)R

動径関数

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l  角度関数Θに対する角度方程式

l  この微分方程式は,lが負でない整数のときにのみ,物理的に意味のあ

る解,つまり の範囲で有限で連続な一価関数の解を持つこ

とが知られている.

l  この解はLegendre多項式とよばれる.詳細は講義ノートを参照のこと.

Rodoriguesの公式

1� sin �

d

d�

�sin �

d�d�

⇥= �l(l + 1)

0 � � � 2⇥

�(�) = Pl(cos �)

Pl(x) =1

2ll!

�d

dx

⇥l

(x2 � 1)l

角度方程式の解

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Legendre多項式の性質

6

l  Legendre多項式の具体的表式

• Pl(x)はxのl次の多項式である. • lが偶数のときは偶数次の項のみを含む. • lが奇数のときは奇数次の項のみを含む. • Pl(1)=1

となる.一般解はR = Arl +

B

rl+1(1.101)

で与えられる.ただし A,B は任意の定数である.二階の微分方程式なので,一般解は二つの未定定数 A,B

を含んでいる.(1.101)式が微分方程式 (1.100)の解であることは,以下のように容易に確かめられる.

r2dR

dr= r2[lArr!1 ! (l + 1)

B

rl+2] = lArl+1 ! (l + 1)

B

rl(1.102)

d

dr

!r2

dR

dr

"=

d

dr

#lArl+1 ! (l + 1)

B

rl

$= l(l + 1)Arl + l(l + 1)

B

rl+1= l(l + 1)R (1.103)

次に角度方程式1

! sin !

d

d!

!sin !

d!

d!

"= !l(l + 1) (1.104)

を考える.この微分方程式は,lが負でない整数のときにのみ,物理的に意味のある解,つまり 0 " ! " 2"

の範囲で有限で連続な一価関数の解を持つことが知られている.この解は Legendre多項式とよばれる.

!(!) = Pl(cos !) (1.105)

Legendre多項式についての詳細と,角度関数が方位角 #に依存する場合(球面調和関数)については補足 2

を参照のこと.ここでは Legendre多項式のいくつかの重要な性質のみを記す.Legendre多項式の一般的な表式は Rodoriguesの公式によって与えられる.

Pl(x) =1

2ll!

!d

dx

"l

(x2 ! 1)l (1.106)

最初の数個の Legendre多項式の具体的な表式を以下に示す.

P0(x) = 1

P1(x) = x

P2(x) = (3x2 ! 1)/2

P3(x) = (5x3 ! 3x)/2

P4(x) = (35x4 ! 30x2 + 3)/8

P5(x) = (63x5 ! 70x3 + 15x)/8

(1.107)

上式を見てもわかるように,Pl(x)は xの l次の多項式である.また,lが偶数のときは偶数次の項のみを含み,lが奇数のときは奇数次の項のみを含む.(1.106)式の因子 (1/2ll!)は Pl(1) = 1となるように選ばれている.Legendre多項式 Pl(x)は !1 " x " 1で完全直交系を作ることが知られている.

% 1

!1Pl(x)Pl!(x)dx =

% !

0Pl(cos !)Pl!(cos !) sin !d! =

2

2l + 1$ll! (1.108)

この性質は境界条件を満たす解を構成するために重要な役割を果たす.以上によって,軸対称な場合の Laplace方程式の変数分離解が

V (r, !) =

!Arl +

B

rl+1

"Pl(cos !) (1.109)

と求まった.デカルト座標の時と同様に,(1.109)は無限個の解の組を与える.一般的な解はそれらの線形結合で与えられる.

V (r, !) ="&

l=0

!Alr

l +Bl

rl+1

"Pl(cos !) (1.110)

係数 Al は与えられた境界条件を満たすように定める.その際には Legendre多項式の直交関係 (1.108)を利用する.

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� 1

�1Pl(x)Pl�(x)dx =

� �

0Pl(cos ⇥)Pl�(cos ⇥) sin ⇥d⇥ =

22l + 1

�ll�

l  Legendre多項式の直交性

l  Legendre多項式Pl(x)は で完全直交系を作る. 0 � x � 1

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Laplace方程式の一般解

8

l  以上によって,変数分離解が求まった.

V (r, �) =�

Arl +B

rl+1

⇥Pl(cos �)

l  一般解は変数分離解の重ね合わせで作られる.

V (r, �) =�⇤

l=0

�Alr

l +Bl

rl+1

⇥Pl(cos �)

l  係数Al,Blは与えられた境界条件を満たすように定める.

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Ex.3.6:境界面でポテンシャルが与えられている場合(1)

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V (R, �) = V0(�)

半径Rの球面上でポテンシャルの角度依存性V0(θ)が定まっているとき,球の内部でのポテンシャルを求めよ.球の内部には電荷は存在しないものとする.

解答

V (r, �) =��

l=0

AlrlPl(cos �)

V (R, �) =��

l=0

AlRlPl(cos �) = V0(�)

l  原点r=0でポテンシャルが有限であるためには全てのlでBl=0でなけ

ればならない.

l  球面上での境界条件

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��

l=0

AlRlPl(cos �) = V0(�)

� �

0d� sin �Pl�(cos �)�

� �

0d� sin �Pl�(cos �)�

Al =2l + 12Rl

� �

0V0(�)Pl(cos �) sin �d�

l  両辺を積分してLegendre多項式の直交性を使う.

��

l=0

AlRl

⇥ �

0d� sin �Pl�(cos �)Pl(cos �) =

⇥ �

0d� sin �Pl�(cos �)V0(�)

具体例: V0(�) = k sin2(�/2)

V (r, �) =k

2

⇤P0(cos �)� 1

RP1(cos �)

⌅=

k

2

�1� r

Rcos �

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Ex.3.7:境界面でポテンシャルが与えられている場合(2)

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V (R, �) = V0(�)

解答

V (r, �) =��

l=0

Bl

rl+1Pl(cos �)

V (R, �) =��

l=0

Bl

Rl+1Pl(cos �) = V0(�)

Bl =2l + 1

2Rl+1

� �

0V0(�)Pl(cos �) sin �d�

半径Rの球面上でポテンシャルの角度依存性V0(θ)が定まっているとき,球の外部でのポテンシャルを求めよ.球の外部には電荷は存在しないものとする.

l  無限遠方でポテンシャルは0なので,全てのlでAl=0でなければならない.

l  球面上での境界条件

l  Legendre多項式の直交性を用いると

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Ex.3.8:一様な電場の中に導体球が置かれている場合

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一様な電場 の中に帯電していない半径Rの導体球が置かれている.導体中の正電荷は電場による力を受けzの正の方向に移動する.逆に,負電荷は電場からの力によってzの負の方向に移動する.このようにして誘起された電荷は導体球周辺の電場を変形させる.このとき,導体球外部における電場を求めよ.

解答

(i)導体球面上でポテンシャルは一定. (ii)無限遠方で電場は一様. (iii)導体球は帯電していない.

E� E0z

V (R, �) = V0

V ⇥ �E0r cos � + Cr � R で

�� da = 0

E = E0z

l  境界条件

C=0とする.

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l  一般解

V (r, �) =�⇤

l=0

�Alr

l +Bl

rl+1

⇥Pl(cos �)

l  r=Rでの境界条件[条件(i)]

l  無限遠方での境界条件[条件(ii)]

V (r, �)⇥��

l=0

AlrlPl(cos �) = �E0r cos � = �E0rP1(cos �)

A1 = �E0, Al = 0 (l ⇥= 1)

V (R, �) =�⇤

l=0

�AlR

l +Bl

Rl+1

⇥Pl(cos �) = V0

B0 = RV0, B1 = �A1R3 = E0R

3, Bl = 0 (l ⇥= 0, 1)

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l  以上の結果を代入

l  表面誘起電荷密度

V (r, �) =RV0

r� E0

�r � R3

r2

⇥cos �

⇤(⇥) = ��0⌅V

⌅r

����r=R

= �0RV0

r2+ �0E0

⇥1 + 2

R3

r3

⇤cos ⇥

����r=R

= �0V0

R+ 3�0E0 cos ⇥

l  導体球に誘起された電荷の総和は0 [条件(iii)]

Q =�

⇤ da = 4⇥R�0V0 = 0

V0 = 0

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l  以上をまとめると

l  仮に,導体球が帯電しているものとすると

V (r, �) = �E0

�r � R3

r2

⇥cos � = �E0r cos � + E0

R3

r2cos �

一様電場 表面電荷が作る電場

ポテンシャル

表面誘起電荷密度

⇤(⇥) = 3�0E0 cos ⇥

V (r, ⇥) =Q

4⇤�0r� E0r cos ⇥ + E0

R3

r2cos ⇥

点電荷Qが作る電場