263.docx)title (microsoft word - \216_\211\273\212\322\214\263.docx) author choji created date...

26
36 3. 錆び 錆び 錆び 錆びるも るも るも るも燃えるもみな化ず元 燃えるもみな化ず元 燃えるもみな化ず元 燃えるもみな化ず元 原子内に電子を拘束しおいる静電匕力 原子内に電子を拘束しおいる静電匕力 原子内に電子を拘束しおいる静電匕力 原子内に電子を拘束しおいる静電匕力 地球䞊の党おの質は皮々の原子で構成されおいたすが、その原子は電子、䞭性子、陜 子の 3 皮の埮粒子が組み合わせられお出来おいるず思われおいたす。質量の小さな電子は 9.1 x 10  31 kg で負電荷を垯びおいたす。電子の 1839 倍の質量を持぀䞭性子は電気的に䞭性 で、電子の 1836 倍の質量を持぀陜子は正電荷を垯びおいたす。質量が栌段に倧きい陜子ず 䞭性子が結び぀いお原子栞を圢成し、その呚囲に電子が分垃する圢で原子が出来おいたす。 電子の質量が陜子や䞭性子ず比范しお無芖しうるほどに小さいために、皮々の原子を構成し おいる陜子の数ず䞭性子の数の和を質量数ずいいたす。原子の性質は原子栞の呚囲に広く分 垃する電子の数に倧きく圱響を受けおいたす。そのため、質量数が異なる原子でも、陜子の 数が同じであれば原子の性質が非垞に䌌おいたすから、これらを元玠ずいいたす。たた、同 じ元玠でも質量数の異なる原子がいろいろずありたすので、これを互いに同䜍元玠ず呌んで いたす。 氎玠原子は陜子ず電子が 1 ぀ず぀で䞭性子を含んでいたせん。氎玠陜むオンは氎玠原子 から 1 ぀の電子が倱われたものですから、陜子だけずなりたす。そのため氎玠陜むオンず陜 子は党く同じものです。ヘリりム原子は陜子 2、䞭性子 2、電子 2 で出来おいたす。他にも 陜子、䞭性子、電子の数の異なる原子が無限に考えられたすが、原子栞の䞭で陜子ず䞭性子 を結び付けおいる力が盞察的に匱くなるため、安定な元玠は陜子の数が 83 以䞋に限られお おり、陜子の数が 84 以䞊の元玠では䞍安定で、劂䜕なる環境でも攟射胜を出しながら䞀定 の寿呜を持っお埐々に壊れおゆきたす。自然に存圚する最も陜子数の倧きな元玠はりラニり ムですが、この元玠の䞭で半期の最も長い同䜍元玠でも 10 億幎です。さらに陜子数が 93 以䞊の党おの元玠は極めお寿呜が短く、䟋えどこかで生成したずしおも、きわめお短い幎月 で党お滅しおしたいたす。このこずから地球䞊で性質を知るこずの出来る陜子の数のう 元玠は 90 皮類に限られおいたす。 倪陜系では倪陜の半埄の玄 6400 倍の半埄の空間に、倪陜の質量の 0.10.00002皋床 の重さを持぀ 8 個の惑星が呚回しおいたすが、玠原子では原子栞の半埄の玄 16000 倍の 半埄の空間に 0.03の質量を持぀軜い電子が 8 個分垃しおいたす。倪陜系では倪陜ず惑星 の間には䞇有匕力が働いお惑星は倪陜に結び付けられおいたすが、原子栞は正電荷を持っ おいたすから、負電荷を持぀電子を静電的な力で結び付けおいたす。原子の電子は原子栞 に近い内偎から 7 段階におおよそ順番に詰たっおいきたすが、その 7 ぀の段階を䞻量子数 ず呌んでいたす。原子に属する電子の入るこずの出来る堎所は䞻量子数 1 から順に 1、4、 9、16、25、36 ありたす。この電子の入るこずの出来る堎所を軌ず呌び、各軌に 2 個 の電子が入るずその軌は充足し安定したす。そのため、䞻量子数 1 から 2、8、18、32、 50、72 個の電子が入れるだけの蚱容量を持っおいたす。最も倖偎の量子数の軌に分垃す る倖殻電子が䞻量子数 1 では 2 個、それ以倖では 8 個たで入るず次の倖偎の量子数の軌

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Page 1: 263.docx)Title (Microsoft Word - \216_\211\273\212\322\214\263.docx) Author Choji Created Date 2/23/2017 11:52:31 AM

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3. 錆び錆び錆び錆びるもるもるもるも燃えるもみな酞化ず還元燃えるもみな酞化ず還元燃えるもみな酞化ず還元燃えるもみな酞化ず還元

原子内に電子を拘束しおいる静電匕力原子内に電子を拘束しおいる静電匕力原子内に電子を拘束しおいる静電匕力原子内に電子を拘束しおいる静電匕力

地球䞊の党おの物質は皮々の原子で構成されおいたすが、その原子は電子、䞭性子、陜

子の 3 皮の埮粒子が組み合わせられお出来おいるず思われおいたす。質量の小さな電子は

9.1 x 1031 kg で負電荷を垯びおいたす。電子の 1839 倍の質量を持぀䞭性子は電気的に䞭性

で、電子の 1836 倍の質量を持぀陜子は正電荷を垯びおいたす。質量が栌段に倧きい陜子ず

䞭性子が結び぀いお原子栞を圢成し、その呚囲に電子が分垃する圢で原子が出来おいたす。

電子の質量が陜子や䞭性子ず比范しお無芖しうるほどに小さいために、皮々の原子を構成し

おいる陜子の数ず䞭性子の数の和を質量数ずいいたす。原子の性質は原子栞の呚囲に広く分

垃する電子の数に倧きく圱響を受けおいたす。そのため、質量数が異なる原子でも、陜子の

数が同じであれば原子の性質が非垞に䌌おいたすから、これらを元玠ずいいたす。たた、同

じ元玠でも質量数の異なる原子がいろいろずありたすので、これを互いに同䜍元玠ず呌んで

いたす。

氎玠原子は陜子ず電子が 1 ぀ず぀で䞭性子を含んでいたせん。氎玠陜むオンは氎玠原子

から 1 ぀の電子が倱われたものですから、陜子だけずなりたす。そのため氎玠陜むオンず陜

子は党く同じものです。ヘリりム原子は陜子 2、䞭性子 2、電子 2 で出来おいたす。他にも

陜子、䞭性子、電子の数の異なる原子が無限に考えられたすが、原子栞の䞭で陜子ず䞭性子

を結び付けおいる力が盞察的に匱くなるため、安定な元玠は陜子の数が 83 以䞋に限られお

おり、陜子の数が 84 以䞊の元玠では䞍安定で、劂䜕なる環境でも攟射胜を出しながら䞀定

の寿呜を持っお埐々に壊れおゆきたす。自然に存圚する最も陜子数の倧きな元玠はりラニり

ムですが、この元玠の䞭で半枛期の最も長い同䜍元玠でも 10 億幎です。さらに陜子数が 93

以䞊の党おの元玠は極めお寿呜が短く、䟋えどこかで生成したずしおも、きわめお短い幎月

で党お消滅しおしたいたす。このこずから地球䞊で性質を知るこずの出来る陜子の数の違う

元玠は 90 皮類に限られおいたす。

倪陜系では倪陜の半埄の玄 6400 倍の半埄の空間に、倪陜の質量の 0.10.00002皋床

の重さを持぀ 8 個の惑星が呚回しおいたすが、酞玠原子では原子栞の半埄の玄 16000 倍の

半埄の空間に 0.03の質量を持぀軜い電子が 8 個分垃しおいたす。倪陜系では倪陜ず惑星

の間には䞇有匕力が働いお惑星は倪陜に結び付けられおいたすが、原子栞は正電荷を持っ

おいたすから、負電荷を持぀電子を静電的な力で結び付けおいたす。原子の電子は原子栞

に近い内偎から 7 段階におおよそ順番に詰たっおいきたすが、その 7 ぀の段階を䞻量子数

ず呌んでいたす。原子に属する電子の入るこずの出来る堎所は䞻量子数 1 から順に 1、4、

9、16、25、36 ありたす。この電子の入るこずの出来る堎所を軌道ず呌び、各軌道に 2 個

の電子が入るずその軌道は充足し安定したす。そのため、䞻量子数 1 から 2、8、18、32、

50、72 個の電子が入れるだけの蚱容量を持っおいたす。最も倖偎の量子数の軌道に分垃す

る倖殻電子が䞻量子数 1 では 2 個、それ以倖では 8 個たで入るず次の倖偎の量子数の軌道

Page 2: 263.docx)Title (Microsoft Word - \216_\211\273\212\322\214\263.docx) Author Choji Created Date 2/23/2017 11:52:31 AM

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è¡š 3-1 呚期衚

族族族族 1111 2222 3333 4444 5555 6666 7777 8888 9999 10101010 11111111 12121212 13131313 14141414 15151515 16161616 17171717 18181818

1 2

1111 H He

1 2

3 4 5 6 7 8 9 10

2222 Li Be B C N O F Ne

1 2 3 4 5 6 7 8

11 12 13 14 15 16 17 18

3333 Na

M

g Al Si P S Cl Ar

1 2 3 4 5 6 7 8

19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36

4444 K Ca Sc Yi V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr

1 2 2 2 2 1 2 2 2 2 1 2 3 4 5 6 7 8

37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54

5555 Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe

1 2 2 2 1 1 2 1 1 2 1 2 3 4 5 6 7 8

55 56 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86

6666 Cs Ba *1 Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn

1 2 2 2 2 2 2 2 1 1 2 3 4 5 6 7 8

87 88 104 105 106 107 108 109

7777 Fr Ra *2 Rf Db Sg Bh Hs Mt 陜子数

1 2 2 2 2 2 2 2 元玠蚘号元玠蚘号元玠蚘号元玠蚘号

倖郭電子数

57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71

*1 LaLaLaLa CeCeCeCe PrPrPrPr BdBdBdBd PmPmPmPm SmSmSmSm EuEuEuEu GdGdGdGd TbTbTbTb DyDyDyDy HoHoHoHo ERERERER TmTmTmTm YbYbYbYb LuLuLuLu

2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2

89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103

*2 AcAcAcAc ThThThTh PaPaPaPa UUUU NpNpNpNp PuPuPuPu AmAmAmAm CCCCmmmm BkBkBkBk CfCfCfCf EsEsEsEs FmFmFmFm MdMdMdMd NoNoNoNo LrLrLrLr

2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2

Page 3: 263.docx)Title (Microsoft Word - \216_\211\273\212\322\214\263.docx) Author Choji Created Date 2/23/2017 11:52:31 AM

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に電子は順次詰たっおゆきたす。このこずから、倖殻電子の数は 18 たでしかありたせん

し、元玠の性質も倧たかには 8 皮類しかありたせん。これは Mjendjeljejev が芋出したした

元玠の性質ず陜子の数ずの間の呚期衚の芏則性を衚しおいたす。衚 3-1 には珟圚、化孊の

研究に䜿われおいる呚期衚を挙げ、陜子数、元玠蚘号および最も倖偎に分垃する電子の数

を瀺しおおきたす。兞型金属元玠を淡赀色、遷移金属元玠を耐色、非金属元玠を黄色、垌

ガス元玠を緑色であらわしたした。さらにランタニド金属元玠を赀耐色、アクチニド金属

元玠を赀色であらわしたした。このように、原子は質量の重い䞭性子ず陜子が原子栞ずな

っお䞭心に座り、原子栞の正電荷を打ち消すようにその呚囲に陜子ず同じ数の軜い電子が

広く分垃しおいたすから、原子を構成しおいる陜子ず電子がそれぞれ正負の電荷を持っお

いるにもかかわらず、原子には電荷が珟れたせん。

呚囲の電子の数で決たる原子の性質呚囲の電子の数で決たる原子の性質呚囲の電子の数で決たる原子の性質呚囲の電子の数で決たる原子の性質

䞀般に、電荷を持぀ 2 個の粒子の間に働く静電的な力 FCoulombはクヌロン力ず呌ばれ、

真空䞭の誘電率をεεεε0ずするずき、それぞれの電荷の倧きさ Qiず Qjに比䟋し距離 r に反比

䟋する匏 3-1 に瀺す Coulomb の関係匏で衚されたす。この匏は同じ笊号の電荷であれば反

発力に、異なる笊号の電荷であれば匕力ずしお働くこずを意味しおいたす。たた、これら

の粒子がクヌロン力を振り切っお無限の圌方ぞ匕き離されるずきに芁する゚ネルギヌ

ECoulombはクヌロン゚ネルギヌず呌ばれ匏 3-2 で衚されたす。原子栞は正電荷を持っおいた

すから、原子栞の半埄の 10000100000 倍の半埄の広い空間に負電荷を持぀電子を静電的

なクヌロン力で結び付けおいたす。このように、原子は質量の重い䞭性子ず陜子が原子栞

を構成しお䞭心に座り、原子栞の正電荷を打ち消すようにその呚囲に陜子ず同じ数の軜い

電子が広く分垃しおいたすが、原子栞に近いほど距離 r が小さくなりたすからこれらの電

子ず原子栞の間に働くクヌロン力は倧きくなりたす。

2

04 r

QQF

ji

Coulombπε

⋅= 匏 3-1

r

QQE

ji

Coulomb

04πε

⋅= 匏 3-2

2

2

2

2

2

0

42 11

8 nZR

nh

emZEn ⋅=⋅−=

∞

ε 匏 3-3

非垞に小さく早い速床で運動しおいるので原子栞も電子も量子力孊に支配されおいた

すから、それらの電子を原子栞から匕き離すために芁するクヌロン゚ネルギヌはむオン化

ポテンシャル En ずいい、最倖殻電子の䞻量子数 n、その原子の陜子の数を Z、電子の電荷

を e、電子の質量を m、Planck の定数を h ずするずきに匏 3-2 を倉圢した匏 3-3 で衚され

たす。ただし、h は 9.5371014s·kcal/mol ず芋積もられおいたすが、Rydberg は m や e や

Page 4: 263.docx)Title (Microsoft Word - \216_\211\273\212\322\214\263.docx) Author Choji Created Date 2/23/2017 11:52:31 AM

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h などの定数の項を

䞀括しお R∞ずし、実隓

的に 1.0973x107m1 ず

定めたした。原子栞に

近い内偎からこれらの

電子は䞍連続な 7 段階

の電子の入るこずの出

来る軌道におおよそ順

番に詰り、倖偎には電

子の入りうる䞻量子数

の倧きな軌道が存圚し

たす。匏 3-3 から明らか

なように、䞻量子数の

小さな内偎の軌道の電

子は原子栞に匷く匕き

付けられおおり、䞻量

子数の倧きな倖偎の軌

道の電子は匱い力で結

び付けられおいたす。

圓然、最も倖偎の量子

数の軌道に分垃する最

倖殻電子は小さな゚ネ

ルギヌで原子から匕き

離されおしたい、陜む

オンずしお正電荷を垯

びおきたす。

皮々の元玠のむオン化ポテンシャルを衚 3-2 および図 3-1 に掲げおおきたすが、この倀

が小さいほど元玠は陜むオンに成り易いこずを意味したす。1 䟡の陜むオンからさらに電

子を匕き離しお 2 䟡の陜むオンにするために芁するむオン化ポテンシャルも衚 3-2 に䜵せ

お掲げたした。匏 3-3 から明らかなように、䞻量子数が同じ元玠では陜子数の小さな元玠

ほどクヌロン力が小さくなりたすが、この陜むオンになり易い傟向が図 3-2 にも珟れおい

たす。衚 3-2 に掲げた元玠の䞭でアルカリ金属ず呌ばれる Li ず Na ず K ず Rb は最倖殻電

子を 1 個しか持たない元玠で非垞に小さなむオン化ポテンシャルを瀺し、最も陜むオンに

なり易いこずが分かりたす。Mg や Ca などのアルカリ土類金属は最倖殻にある 2 ぀の電子

は小さなむオン化ポテンシャルで 2 䟡陜むオンになりたすが、倧きなむオン化ポテンシャ

ルを芁したすから 3 䟡陜むオンには容易にはなりたせん。アルカリ金属ずは反察に、同じ

è¡š 3-2 皮々の元玠のむオン化ポテンシャルkcal/mol

元玠 最倖殻軌道

M→M+ M

+→M2+

M2+→M

3+ M

3+→M4+

䞻量子数 電子数

H 1 1 319 0 0 0

He 1 2 577 1272 0 0

Li 2 1 127 1769 2863 0

Be 2 2 219 426 3597 5094

B 2 3 195 563 887 6063

C 2 4 265 570 1121 1508

N 2 5 342 692 1108 1727

O 2 6 320 821 1289 1809

F 2 7 409 813 1363 1994

Ne 2 8 507 958 1485 2281

Na 3 1 121 1106 1661 2326

Mg 3 2 180 352 1873 2558

Al 3 3 141 440 665 2804

Si 3 4 191 382 782 1056

P 3 5 258 465 706 1200

S 3 6 243 547 820 1106

Cl 3 7 306 557 932 1249

Ar 3 8 370 652 957 1433

K 4 1 102 744 1092 1433

Ca 4 2 144 278 1197 1637

Page 5: 263.docx)Title (Microsoft Word - \216_\211\273\212\322\214\263.docx) Author Choji Created Date 2/23/2017 11:52:31 AM

40

䞻量子数の元玠の䞭で最も最倖殻電子を倚く持぀垌ガス元玠では陜子数が倧きいために非

垞に倧きなむオン化ポテンシャルを瀺し、陜むオンになり難いこずが分かりたす。

元玠から最倖殻電子を匕き離しお陜むオンになるずきにはむオン化ポテンシャルを芁

したすから、逆に陜むオンが倖から電子を受け取っお元玠に戻るずきにはむオン化ポテン

シャルに盞圓する゚ネルギヌを発生したす。同

じように元玠が倖から電子を受け取りたすず陜

子の数よりも電子の数が倚くなりたすから負電

荷を持぀陰むオンになり、そのずき匏 3-3 に盞

圓する電子芪和力ず呌ばれる゚ネルギヌを攟出

したす。皮々の元玠の電子芪和力を衚 3-3 およ

び図 3-2 に掲げお起きたすが、この倀が倧きい

ほど攟出する゚ネルギヌが倧きいので陰むオン

になり易すい性質を持っおいたす。匏 3-3 から

明らかなように、䞻量子数が小さな元玠ほど発

生する゚ネルギヌが倧きくなりたすから、陰む

オンになり易い傟向を瀺したす。アルカリ金属

は同じ䞻量子数を持぀元玠の䞭では最も陜子の

数が小さいので発生する゚ネルギヌが小さく、

陰むオンになり難い性質を瀺したす。

最倖殻電子を 7 個持぀ F や Cl や Br や I など

のハロゲン元玠は同じ䞻量子数を持぀元玠のな

かで陜子数が倧きいために倧きな゚ネルギヌを

攟出したすから、陰むオンになり易い性質を瀺

è¡š 3-3 元玠の電子芪和力(kcal/mol)

元玠 電子芪和力 元玠 電子芪和力

H 17.4 P 17.7

He -12.2 S 48.0

Li 14.3 Cl 83.1

Be -4.4 Ar -8.4

B 5.5 K 11.5

C 29.4 Ca -37.3

N 1.2 Ga 8.6

O 33.7 Ge 27.7

F 78.4 As 18.4

Ne -6.9 Se 46.6

Na 12.7 Br 77.4

Mg -4.6 Kr -9.3

Al 11.9 Rb 11.0

Si 28.7 I 70.5

0

100

200

300

400

500

0 20 40 60 80 100

kcal/molkcal/molkcal/molkcal/mol

陜子数陜子数陜子数陜子数

図図図図 3333----1111 元玠のむオン化ポテンシャル元玠のむオン化ポテンシャル元玠のむオン化ポテンシャル元玠のむオン化ポテンシャル(kcal/mol)(kcal/mol)(kcal/mol)(kcal/mol)

Page 6: 263.docx)Title (Microsoft Word - \216_\211\273\212\322\214\263.docx) Author Choji Created Date 2/23/2017 11:52:31 AM

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したす。8 個の最倖

殻電子を持぀垌ガ

ス元玠はその軌道

に入れる電子の蚱

容量を満たしおい

たすから、新たに倖

から電子を受け取

る堎合には䞻量子

数が増加しおした

い、電子芪和力が負

の倀を瀺したす。このこずは垌ガス元玠が陰むオンになるためには逆に゚ネルギヌを芁し

たすから、ほずんど陰むオンにならないこずを意味しおいたす。

ある原子あるいはむオンを Mn+、電子を e、むオン化ポテンシャルを Enずするず、原

子ず陜むオンの間の倉化を n=0 のずきの図 3-3 で衚すこずができたすし、n が正の敎数の

ずきには䟡数の異なる陜むオンの間の倉化を衚すこずができたす。前節で考えたように電

子芪和力も本質的に匏 3-3 で近䌌されるむオン化ポテンシャルず同じですから、さらに

n=‐1 のずきには原子ず陰むオンの間の倉化を衚したすし、n が‐1 より小さいずきには䟡

数の異なる陰むオンの間の倉化たで総括するこずができたす。酞化反応は原子あるいはむ

オンから電子を攟出する反応ず定矩されおいたすから、この䞀般匏の巊蟺から右蟺ぞの倉

化で衚すこずができたすし、酞化反応の逆反応

の還元反応は原子あるいはむオンが電子を取

り蟌む反応ず定矩されおいたすから、右蟺から

巊蟺ぞの倉化で衚されたす。

䟋えば、金属に酞HXを䜜甚させたすず金属は電子を攟出しながら陜むオンに倉化

したすが、氎䞭では酞が䞀般的に H+ず Xに解離しおいたすから、攟出された電子を氎玠

むオンが取り蟌む還元反応が同時に進行しお氎玠を発生したす。氎玠むオンが電子を取り

蟌むずきには電子芪和力の発熱がありたすが、金属が電子を攟出しお陜むオンに倉化する

ずきにはむオン化ポテンシャルに盞圓する゚ネルギヌを芁したす。代衚的な金属の亜鉛に

塩酞を䜜甚させたすず図 3-4 のように倉化しお氎玠ず塩化亜鉛が生成したすが、実線の䞋

に瀺したように亜鉛の酞化する反応ず氎玠むオンが還元する反応が起こっおいるこずが分

かりたす。亜鉛金属から亜鉛むオン(Zn2+

)ぞのむオン化ポテンシャルず氎玠から氎玠むオン

ぞの電子芪和力がほが等しい

ために系党䜓ずしお゚ネルギ

ヌの損埗がほずんどなくこの

反応は容易に進行したす。た

た、鉄道の線路や日本刀の刃

0

20

40

60

80

0 20 40 60 80

kcal/mol

陜子数陜子数陜子数陜子数

図図図図3333----2222 元玠の電子芪和力元玠の電子芪和力元玠の電子芪和力元玠の電子芪和力kcal/molkcal/molkcal/molkcal/mol

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42

は銀色に光る鉄の金属ですが、廃線になっお䜿われなくなった線路も、叀墳から出土され

る鉄の刀も雚露に晒され土䞭の氎に觊れお赀耐色に錆びおいたす。この鉄錆は鉄の原子が

電子を攟出しお鉄陜むオンずなり、氎がわずかに解離しお生じる氎酞むオンず反応し、さ

らに脱氎しお生成した酞化鉄ですから、鉄が錆びる倉化は酞化反応ず考えるこずができた

す。同時に氎玠むオンの還元により氎玠が攟出されたす。

原子を構成する電子は匏3-3で近䌌されるような゚ネルギヌで原子栞に結び付けられお

いたすから、同じ䞻量子数を持぀元玠では陜子数が小さく最倖殻電子の数が少ない元玠で

はむオン化ポテンシャルも電子芪和力も小さく、陜むオンになり易い性質を瀺したす。た

た、陜子数が倧きく最倖殻電子の数が倚い元玠ではむオン化ポテンシャルも電子芪和性も

倧きいので、陰むオンになり易い性質を瀺したす。さらに、垌ガス元玠ではむオン化ポテ

ンシャルが極端に倧きく、電子芪和力が負の倀を瀺したすから、陜むオンにも陰むオンに

もなりたせん。たずめたすず、元玠のむオンぞのなり易さは䞭心の原子栞ではなく、䞻に

呚囲に広く分垃する電子の状態に圱響されたすから、酞化され易さや還元され易さなどの

原子やむオンの重芁な化孊的性質も原子栞の呚囲に分垃する電子の状態に圱響されたす。

特に最倖殻電子の数が元玠の性質を決定付けたすから、Mjendjeljejev が芋出した元玠の性

質ず最倖殻電子の数の盞関性から導いた衚 3-1 の呚期衚が合理的に説明できたす。

電圧で衚す酞化剀電圧で衚す酞化剀電圧で衚す酞化剀電圧で衚す酞化剀の胜力の胜力の胜力の胜力

原子栞の呚囲を電子が取り巻いおいる構造の原子から負電荷を持぀電子が攟出されれ

ば、原子は正電荷が過剰になりたすから陜むオンになりたす。さらに、陜むオンが電子を攟

出しお 2 䟡の陜むオンや 3 䟡の陜むオンになるこずもありたすし、陰むオンが電子を攟出し

お原子に戻るこずもありたす。反察に、倖郚からの電子を原子が受け取れば、原子党䜓ずし

お負電荷が過剰になりたすから陰むオンになりたすが、陰むオンがさらに電子を受け取っお

倚䟡の陰むオンになるこずもあり、陜むオンが電子を受け取っお原子に戻るこずも有りたす。

前節で芋おきたように、原子やむオンから電子を攟出する反応を酞化反応、原子やむオンが

電子を受け取る反応を還元反応ず定矩しおいたす。電子を䟛絊する酞化反応がなければ電子

を受け取る還元反応は起こり埗たせんし、電子を受け取る還元反応がなければ電子を攟出す

る酞化反応も起こり埗たせん。蚀い換えれば、酞化・還元反応は電子をやり取りする反応で

あり、酞化反応も還元反応も片方の反応だけでは進行せず、酞化反応が進行する時には還元

反応が必ず同じの系の䞭で同時に進行したす。

銅板の䞊に傷を぀けながら絵や暡様を描き、その䞊に塩化第 2 鉄の氎溶液を茉せたすず、

傷の郚分に塩化第 2 鉄溶液が入り蟌み金属銅ず反応しお、金属銅が溶けお傷が倧きな穎に

成長したす。この反応はほずんど危険性のない安党な薬品が甚いられたすから、゚ッチン

グ法ずしお銅版画の䜜成などに叀くから甚いられおきたしたが、近幎になり電子郚品の基

盀を䜜る技術に応甚されるようになっおいたす。金属銅を薄く貌り付けたプラスティック

板の䞊に油性のむンクで配線図や暡様を曞き、塩化第 2 鉄氎溶液に板を浞したすず、むン

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クの塗られた郚分は氎を撥じいお金属銅ず塩化第 2 鉄氎溶液が接觊できたせんが、むンク

の無い郚分ではこの反応が進行しお金属銅は塩化銅に倉化しお氎に溶解しおしたいたす。

よく氎で薬品を掗浄埌にむンクを掗い萜ずせば、油性むンクの暡様のずおりに金属銅がプ

ラスティック板䞊に残りたすから配線が完了したす。

この反応では原料の塩化第 2鉄も生成物の塩化第 1鉄ず塩化銅もむオン結合で結ばれた

物質ですから、氎に溶けた状

態では銅むオンず鉄むオンず

塩玠むオンに解離しおいたす。

塩玠むオンは垞に氎の䞭に陰

むオンずしお存圚しお倉化し

たせんから、この反応においお党く関䞎しおいたせん。鉄むオンず銅に関係する倉化は図

3-5 に芁玄したように第 2 鉄むオンFe+3が第 1 鉄むオンFe

+2に還元され、金属銅が

酞化されお銅むオンCu+2になる 2 ぀の玠反応が組み合わさった酞化・還元反応です。

䜆し、この反応匏で元玠蚘号のように電子を eず衚しおいたす。

たた、硫酞銅氎溶液に金属亜鉛を浞すずきには次第に亜鉛が溶液䞭に溶解し、代わっお

青色の銅むオンCu+2の色が消えお赀耐色の金属銅が析出しおきたす。原料の硫酞銅も

生成物の硫酞亜鉛もむオン結合で結ばれた物質ですから、氎に溶けた状態では銅むオン

Cu+2ず亜鉛むオンZn

+2ず硫酞陰むオンに解離しおいたす。硫酞むオンは垞に氎の䞭

に陰むオンずしお存圚しお倉化したせんからこの反応には党く関䞎しおいたせん。銅に関

する反応ず亜鉛に関する玠反応に分けお考えたすず、図 3-6 に瀺すようになり亜鉛は電子

を攟出しお陜むオンZn+2に酞

化され、その電子を銅むオンCu+2

が受け取っお金属銅に還元される

2 ぀の玠反応が組み合わさった酞

化・還元反応であるこずが分かり

たす。

原子は原子栞の正電荷を打ち消すようにその呚囲に陜子ず同じ数の電子が広く分垃し

おいたすが、これらの電子ず原子栞の間に働くクヌロン力は原子栞に近いほど倧きくなり

たす。そのため、内偎の電子は原子栞に匷く匕き付けられおおり、倖偎の電子は匱い力で

結び付けられおいたす。電子ず原子栞の間にクヌロン力が働いおいたすから、盞圓するク

ヌロン゚ネルギヌを受け取れば原子栞から電子は開攟されお飛び出すこずができ、原子は

陜むオンになりたす。氎玠以倖の原子は電子を 2 個以䞊持っおいたすから、電子を 1 個攟

出しお生じる陜むオンからも電子をさらに攟出するこずができたす。このように倚くの元

玠には倚段階の酞化の状態があり、元玠によっお圓然むオン化ポテンシャルの倀が違いた

すが、原子から 1 䟡陜むオンぞの倉化か 1 䟡陜むオンから 2 䟡陜むオンぞの倉化かなど攟

出される電子の数によっおもむオン化ポテンシャルの倧きさも異なりたす。原子から 1 䟡

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陜むオンぞの倉化ず 1 䟡陜むオンから 2 䟡陜むオンぞの倉化は同じ酞化反応でも、酞化反

応の起こり易さは異なっおきたす。還元反応は酞化反応ず反察に電子を受け取る反応です

から、還元反応の起こり易さも異なっおきたす。鉄、ニッケル、コバルト、錫、銅などの

遷移金属ず呌ばれる金属では異なる䟡数をも぀耇数のむオンが安定に存圚したすが、むオ

ンの䟡数が倉化するずきには、攟出される電子の数が異なりたすから、電子の出入りが金

属元玠に起こり酞化あるいは還元反応になりたす。

先に挙げた䞡反応ずも赀字で瀺したように金属銅ず銅むオンの間の倉化を含んでいた

すが、図 3-5 は電子を攟出しお金属銅がむオンに倉化する酞化反応ですし、図 3-6 は還元反

応で電子を受け取っお金属銅に倉化する反応です。このように、同じ倉化でも盞手ずなる

物質の反応性の違いにより酞化反応にも還元反応にもなりたすから、酞化・還元反応を利

甚するためには物質の持぀反応性の倧きさを瀺す尺床が必芁になりたす。たた、倚段階の

酞化状態を持぀ 2 皮類の物質が反応するずきには、酞化される物質がどちらなのかきわめ

お耇雑で刀り難くなりたす。第 2 章に掲げた図 2-5 の反応座暙で瀺すような系 A から系 B

に倉化する時には、系 A から系 B たでの自由゚ネルギヌ倉化ΔGABが負の倀の堎合には系

A よりも系 B の持぀総゚ネルギヌが小さいこずを意味したすから系 A から系 B ぞの倉化は

゚ネルギヌを攟出しながら容易に進行する発熱反応であり、逆にΔGABが正の倀の堎合には

゚ネルギヌを加えなければ反応の進行しない吞熱反応ず考えられたす。酞化・還元反応に

よる系 A から系 B ぞの倉化は構成元玠から電子が攟出される酞化反応ずその電子が別の元

玠に取り蟌たれる還元反応で構成されおいたすから、皮々の酞化・還元反応は倚くの酞化

反応ず還元反応の組み合わせず考えるこずができたす。

酞化・還元反応は負の電荷を持った電子を遣り取りする反応で、物質の間を電子が移動

したすから物質の間に電流が流れるこずになりたす。電荷を持った物質が移動する胜力は

電䜍で定矩されボルトVで衚しおいたすから、酞化・還元反応の状態がわかるように酞

化電䜍ず還元電䜍の電䜍差により酞化ず還元の反応性を定矩しボルトVで衚すようにし

おいたす。酞化・還元反応の進行が盞察的な酞化状態や還元状態に巊右されたすから、指

暙ずなる倚くの物質の酞化電䜍ず還元電䜍は氎から氎玠ぞの還元電䜍を基準ずしお盞察的

にそれぞれの電䜍差で衚されおいたす。元玠やむオンから電子を攟出する酞化反応は還元

反応の逆反応ですから、酞化電䜍は還元電䜍の笊号を正から負、負から正に倉えた倀にな

りたす。盞察的により倧きな還元電䜍を持぀物質により酞化反応が進行したすから、倧き

な還元電䜍の物質ほど酞化の反応性が高いこずを意味しおいたす。逆に、倧きな酞化電䜍

を持぀物質ほど高い還元の反応性を持っおいたす。酞化・還元反応による系 A から系 B の

倉化における自由゚ネルギヌ倉化ΔGAB が酞化反応の酞化電䜍ず還元反応の還元電䜍の和

に盞圓したすから、この酞化ず還元の電䜍差が正の倀を瀺すずきにはこの酞化・還元反応

が容易に進行したすが、負の倀になる組み合わせの反応は系倖から匷制しなければ進行し

たせん。

倚くの元玠やむオンが電子を取り蟌んで還元する反応の還元電䜍を参考のために本曞

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の末尟にたずめた別衚 2 にその倀の小さな順から掲げたした。この衚から分かるように銅、

銀、金などの限られた金属を陀いお、ほずんど党おの金属むオンは負の還元電䜍を瀺しお

いたす。むオンから金属元玠ぞの還元反応の還元電䜍が最も小さな元玠がリチりムLi

やルビゞりムRbやカリりムKなどのアルカリ金属やカルシりムCaなどのアル

カリ土類金属ずこの衚から読み取るこずができたす。これらの金属は氎により酞化され、

氎は還元されお急激な発熱を䌎っお発生する氎玠に匕火しお爆発的に反応したす。アルカ

リ金属やアルカリ土類金属ず比范しお、珟代生掻で倧量に甚いられおいるアルミニりムや

鉄の金属元玠は倧きな還元電䜍を瀺しおいたすから、同様に氎によっお酞化されおゆっく

りず錆びおゆきたす。

このように元玠やむオンの酞化電䜍ず還元電䜍は酞化剀や還元剀の匷さを定量化しお

衚しおいたすから、物が燃える燃焌やパンを膚らたせる発酵や鉄の道具が赀耐色に錆びる

こずや銅版画を䜜る゚ッチング技術など身の回りの倚くの酞化反応や還元反応の仕組みや

進行のし易さを知るこずができたす。

トタントタントタントタン板板板板ずずずず䜿い捚おカむロ䜿い捚おカむロ䜿い捚おカむロ䜿い捚おカむロ

地球の地殻を構成する元玠の玄半分は酞玠原子で次いでケむ玠ずアルミニりムが続き

たすが、4 番目に倚く含たれる鉄の存圚比は 5で䞻に鉄酞化物の圢で存圚しおいたす。地

殻䞭に非垞に倚く存圚するこの鉄酞化物を朚炭や石炭などず 1000℃以䞊の高枩で加熱した

すず、炭玠が酞化されお二酞化炭玠になるず同時に鉄酞化物が金属の鉄に還元されたす。

このようにしお埗られる金属の鉄は非垞に硬く、しかも石材などず比范しお成型が容易で

したから、歎史的に玄 3000 幎前から歊噚や狩猟道具ずしおばかりでなく鍋釜や包䞁などの

調理噚具、鋀鍬などの蟲耕噚具、釘や鋞や鉋などの倧工道具などのように、日垞生掻に極

めお密接に関わっおきたした。

日本刀の刃は銀色に光る鉄の金属ですが、叀墳から出土される鉄の刀は赀耐色に錆びお

がろがろに脆くなっお党く圹に立たなくなっおいたす。非垞に硬く倚くの道具の玠材ずし

お優れた金属の鉄は酞化反応の条件により赀錆Fe2O3ず黒錆Fe3O4の 2 皮類の鉄錆

びを生じたす。シロアリなどの虫が材朚を食い荒らしおゆくように、酞玠や氎の存圚で赀

錆を生ずる酞化反応は容易に鉄の衚面を蝕むように内郚に進行しおゆきたすから、銀色の

金属光沢を速やかに倱い、長時間の間に鉄党䜓が酞化されお脆い赀錆の塊になっおしたい

たす。鉄から 2 䟡

の鉄むオンぞの酞

化電䜍ず氎酞化第

䞀鉄から氎酞化第

二鉄ぞの酞化電䜍

ず酞玠から氎酞む

オンぞの還元電䜍

3H2O2Fe Fe2O3

6e- 6OH-

2Fe 4e-2Fe2+

3/2O2

3H2O3/2O2

2Fe(OH)3

3H2O

Fe2O3 3H2O

4OH-2Fe2+ 2Fe(OH)2

2e-2Fe(OH)32OH-2Fe(OH)2

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が別衚 2 からそれぞれ 0.41V ず 0.56V ず 0.40V ず読み取るこずができ、3 者の和が正の倀ず

芋積もれたすから、この金属の鉄が赀色に錆びる倉化は氎の觊媒で図 3-7 に瀺すような酞

化・還元反応で容易に進行するず考えられたす。

高枩に熱した金属の鉄を空気䞭で冷华したすず、衚面が酞化されお非垞に緻密な黒錆の

膜を䜜りたすが、生成した黒錆は空気や氎ず接しおもさらなる酞化反応が進行したせんか

ら、内郚の金属の鉄の酞化を抑えたす。黒錆で被芆した鉄噚に空気ず氎が付着しおも、赀

錆を生ずるような酞化反応が進行したせんから、錆びない鉄噚のように取り扱うこずがで

きたす。調理を職業ずする人達が䜿う金属の鉄でできた䞭華鍋やフラむパンは非垞に堅牢

で高枩にも耐え無理な䜿い方にも察応できたす。これらの鉄補の鍋類は賌入時に良く掗浄

した埌、非垞な高枩に空焌きしたすず衚面に黒錆が生じたすから、以埌赀色に錆びるこず

はほずんどありたせん。赀錆が生じたり食べ物が焊げ付いたりしたずきには、束子やヘラ

やダスリで掻き萜ずし、よく磚いおから高枩で空焌きすれば黒錆が再生したす。

図 3-7 に瀺すように鉄は空気ず氎がなければ赀色に錆びる反応が進行したせんが、日垞

の生掻環境には必ず空気ず氎が存圚し、䞡者を完党に取り陀くこずは極めお困難なこずで

す。第 2 章で考えたように、酞化・還元反応は酞化剀ず還元剀の出䌚いの反応ですから、

匏 2-2 で衚されるように反応は䞡者の分子の衝突の確率が小さいほどゆっくりず進行した

す。そのため、金属の鉄の優れた玠材ずしおの性質を維持し぀぀、赀錆びを抑えおその優

れた性質を維持できるように鉄の衚面を空気や氎から隔離するような倚くの工倫がなされ

おきたした。䟋えば、歊士の魂ずもいわれる日本刀は銀色の光沢を持っお光っおいなけれ

ばなりたせんから、錆びないように刃を玙でよくぬぐい汚れを萜ずしおから、油を塗っお

氎が付かないように手入れしおいたようです。しかも、油が叀くなるず塵や埃が付着しお

したい錆の原因になりたすから、小説に出おくる剣豪は垞にこの手入れを怠りなく繰り返

し続けなければなりたせんでした。油は光や熱や空気で剥げ萜ちたり揮発したり酞化した

り重合しお被膜が壊れたりしお錆止めの働きが倱われたすから、そのような倉性に耐える

ニスやペンキなどの塗料が雚戞などの倚くの鉄で䜜られおいる道具や建具や機械に甚いら

れおいたす。食塩などのむオン結合を持぀化合物の氎溶液に接したすず鉄の錆びる反応が

非垞に加速されたすから、鉄で䜜られた倖掋型の倚くの船舶は喫氎以䞋を赀色に、喫氎以

䞊は黒色や灰色で塗装しお錆止めに泚意をしおいたす。自動車の車䜓も耐久性を高めるた

めに塗料で錆止めをしおいたすが、同時に存圚を誇瀺するために消防車は赀色に、救急車

は癜色に、ロンドンずニュヌペヌクのタクシヌはそれぞれ黒色ず黄色に塗料の色が決めら

れおいたす。

メッキず呌ばれる金属の衚面に他の金属を薄く䞇遍なく付着させ被芆する技術が開発

されおり、皮々の金属で衚面を芆い隠しお錆止めをするずずもに甚いた金属の特色を加え

た鉄板が広く甚いられおいたす。金属錫(Sn)は䜎い枩床232℃以䞊で液䜓になりたすか

ら、融けた錫の䞭に鉄板を浞すず鉄板の衚面を容易に金属の錫で䞇遍なく被うこずができ

たす。その䞊、鉄の酞化電䜍が 0.41V に察しお金属錫の酞化電䜍は 0.14V ですから、鉄に

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比べお錫は錆び難い性質を持぀金属です。そのため、金属の錫で被芆する方法は非垞に簡

䟿な錆止めずしお叀くから利甚され、錫で被芆された鉄板をブリキず呌んで食品甚の猶や

玩具に広く甚いられおきたした。しかし、わずかに錫の被芆が損なわれおいたすず、露出

した鉄の郚分が錆び易くなる欠点を持っおいたす。

逆に鉄よりも酞化電䜍の倧きな金属亜鉛(0.76V)で鉄板を被芆したトタン板では、優先

的に亜鉛が酞化されたすが、生成する酞化亜鉛が金属亜鉛の衚面を緻密に被い保護したす

から、鉄板の保護膜ずなり錆止めの効果を瀺したす。しかも、金属亜鉛の被芆が損なわれ

お鉄が郚分的に露出しおも、亜鉛が優先的に酞化されお錆びの進行を遅くしたす。「熱い

トタン屋根の猫」ず Williams の小説の題名にもなっおいるように、トタン板は倚少の傷に

も錆び難く堅牢で軜量で廉䟡ですから、屋根や塀などの建築資材ずしお広く甚いられおい

たす。さらに、亜鉛の被芆膜より堅牢な被芆膜に改良したガルバリりム鋌板は熔融したア

ルミニりムず亜鉛の合金の䞭に鉄板を浞しお補造され、近幎建築される家屋の屋根材ずし

お広く普及しおいたす。たた、自動車のバンパヌや自転車のハンドルのように衚面にクロ

ムをメッキしたすず、鉄の堅牢さを損なうこずなく錆びない鏡のような金属の光沢を保぀

こずができたす。

氎晶や石英は玔粋な酞化ケむ玠SiO2の結晶で、硬床が高く、良く光を透過したすが

非垞に融点が高く成型が極めお困難です。この酞化ケむ玠にカリりムやナトリりムなどの

化合物を加えお加熱したすず、その融点が䞋がり玄 1000℃で液状になりたすから、板や噚

に成圢しお冷华すれば、ガラス板やガラス噚が出来䞊がりたす。他に皮々の金属酞化物を

加えお熔融したすず、透明床の高いガラスや屈折率の高いガラスや皮々の色圩豊かなガラ

スなどを䜜るこずができたすから、叀くから県鏡やワむングラスや教䌚のステンドグラス

などに甚いられおきたした。これらのガラスは硬くお日垞の生掻環境では党く倉圢したせ

んし、酞玠や氎ばかりでなく酞や塩基などの化孊薬品にも党く反応したせんから、ビヌカ

ヌやフラスコなどの化孊実隓の噚具ずしお広く甚いられおいたす。このように優れた性質

を瀺しおいたすから、鉄板をこのガラスで被芆した琺瑯ホヌロヌの衚面は堅牢で耐熱

性や耐薬品性に優れおおり、しかも内郚の鉄の錆止めの効果も持っおいたす。

このように日垞生掻で広く甚いられおいる金属の鉄は錆びお劣化したすから、その察策

ずしお赀錆の生成を抑える皮々の工倫がなされおきたしたが、近幎、鉄が空気ず氎で酞化

されお赀錆を生ずる反応を逆に利甚する工倫が考え出されおきたした。地球䞊に倧量に存

圚する空気ず氎は枩暖に気候を保぀ばかりでなく生物が生呜を維持するために欠かせたせ

ん。反察に空気ず氎は食品䞭のバタヌなどの油脂の酞化により油焌けしたり、颚味や色が

倉化したりしお食品の劣化を速めたす。たた、衣類は空気ず湿気で色耪せたり繊維の匷床

が枛少しお襀耞になっおゆきたすし、曞物は玙が黄倉しむンクが倉色し装䞁が壊れお解読

困難になりたす。このように空気ず氎は鉄で䜜られおいる道具や建具や機械の劣化や食料

の腐敗や暎颚の灜害など負の働きも担っおいたすが、日垞の生掻環境でこの空気ず氎を完

党に取り陀くこずは極めお困難です。著者の携わっおきた化孊の研究においおも、空気や

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氎が邪魔をしお反応が期埅通りに進行しない堎合が倚々あり、化孊薬品が空気や氎ず反応

しお火灜や爆発などの事故に繋がった堎合も経隓したした。そのため必芁に応じお、ピロ

ガロヌルの氎溶液に通気しお酞玠を陀き、次いで硫酞の䞭を通気しお也燥させ、最

埌に塩化カルシりムの固䜓を甚いお飛沫の硫酞を取り陀くこずで酞玠ず氎を含た

ないように気䜓を粟補しおいたしたが、非垞に耇雑な手順ず装眮ず危険な薬品を必

芁ずしおいたすから、簡単には日垞生掻に適甚できたせんでした。

第 2 章で考えたように、酞化・還元反応は酞化剀ず還元剀の出䌚いの反応ですから、匏

2-2 で衚されるように反応は䞡者の分子の衝突の確率が倧きいほど速やかに進行したす。鉄

の金属を埮现な粉末にしたすず、衚面積が栌段に倧きくなり酞化剀の酞玠に察する接觊面

も倧きくなりたすから、図 3-7 で瀺した鉄の酞化・還元反応の速床が倧きくなり、赀錆の

生成ずずもに酞玠が消費されたす。この反応を容易に進行させるために酞玠を取り蟌み易

くする掻性炭や反応を促進させるための食塩などを觊媒ずしお組み蟌んだ脱酞玠剀が 1977

幎に商品化されたした。容噚にこの脱酞玠剀を入れお封入したすず、容噚内の空気䞭の酞

玠が鉄粉末ず反応しお赀錆ずしお固定化されお、容噚内は化孊的に䞍掻性な窒玠の雰囲気

になりたす。これにより油脂類の酞化を遅らせお味や颚味や色の倉化を抑えたすし、埮生

物の繁殖を抑えたすから、食品や医薬品の劣化を防ぎ賞味期限や䜿甚期限の延長を可胜に

したした。

金属の鉄が空気ず氎の働きで赀錆を生成する反応では 1.75kcal/g の生成熱を発生したす

から、この酞化・還元反応の反応熱を利甚する暖房甚品が米囜陞軍で考案されたしたが、

その埌に日本囜内の数瀟も䜿い捚おカむロずしお商品化したした。栃朚県西那須野䞭孊校

の矢口茝倫教諭は、各瀟の䜿い捚おカむロの成分が鉄粉 6065、氎 1015、反応促進

ず保氎ず通気のための掻性炭や食塩や苊土蛭石などず分析し報告しおいたす。䜿甚目的に

より子䟛甚や靎䞭甚など皮々の圢態の商品が甚意されおいたすが、暙準的な䜿い捚おカむ

ロは個圓たり玄 50g の鉄粉を含む発熱䜓を持っおいたすから、衚 2-3 からガ゜リン玄 7mL

の燃焌熱に盞圓する玄 55kcal の発熱をするず考えられたす。

このように金属の鉄が空気ず氎の働きで赀錆を生成する酞化・還元反応は皮々の鉄補の

歊噚や道具の性胜を劣化させる短所ずなる反応で皮々の察応策が考えられおきたした。し

かし、金属の錆びお脆くなる性質は脱酞玠剀や䜿い捚おカむロなどに利甚されおいたすか

ら、あながち短所ずは蚀い切れたせん。さらに䞍芁になっお廃棄された鉄補の歊噚や道具

や建具は地球䞊の到る所に存圚する空気ず氎により次第に赀錆ずなっお圢を倉えお土に還

りたすから、鉄の持぀この特性は地球環境の汚染を起こさない環境に優しい長所でもあり

たす。

王氎王氎王氎王氎は最も匷力な酞化剀は最も匷力な酞化剀は最も匷力な酞化剀は最も匷力な酞化剀

前節の日垞生掻に関わる鉄の酞化・還元反応に続いお、日垞生掻で利甚されおいる鉄以

倖の金属を介した倚くの酞化・還元反応に぀いお、別衚 2 に掲げた皮々の反応の還元電䜍

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を基に考えおみようず思いたす。銅の陜むオンから金属銅ぞの還元電䜍が0.34Vですから、

逆に金属銅から銅の陜むオンぞの酞化電䜍は0.34V ず芋積もられたす。図 3-5 に瀺した銅

の゚ッチングの反応では、塩化第 2 鉄むオンから塩化第 1 鉄むオンぞの反応の還元電䜍が

0.77V で、金属銅から銅の陜むオンぞの酞化電䜍を加えた䞡反応の酞化ず還元の電䜍の和が

正の倀になりたすから金属銅の酞化反応は進行したす。たた、亜鉛の陜むオンから金属亜

鉛ぞの反応の還元電䜍が0.76V ですから、金属亜鉛から亜鉛の陜むオンぞの反応の酞化電

䜍は 0.76V ずなりたす。図 3-6 に瀺した硫酞銅ず金属亜鉛の反応でも、金属亜鉛から亜鉛

むオンぞの反応の酞化電䜍 0.76V に銅むオンから金属銅ぞの還元電䜍を加えた倀が正にな

りたすから反応は進行したす。硫酞亜鉛の還元電䜍ず金属銅の酞化電䜍はそれぞれ0.76V

ず0.34V ですから䞡反応の酞化電䜍ず還元電䜍の和が負の倀になり、硫酞亜鉛の氎溶液に

金属銅を浞しお゚ッチングを詊みおも反応が党く進行しないず思われたす。

銀のむオンや化合物の還元電䜍は 0 から正の小さな倀を瀺しおおり、酞の存圚で酞化銀

の金属銀ぞの還元反応の還元電䜍は 0.34V ですから、金属銀は比范的むオンになり難く氎

䞭や空気䞭で安定に存圚したす。しかし、硫化銀から硫化氎玠ず金属銀を生成する類䌌の

還元反応の還元電䜍が0.04V ですから、箱根の倧涌谷などの火山の噎気孔の近くでは硫化

氎玠の濃床が高いために銀補の装食品が硫化銀を生成しお黒く錆びおしたいたす。たた、

ゆで卵などの卵料理にはしばしば硫化氎玠が含たれおいたすから、よく磚き䞊げた銀食噚

も黒く錆びおしたいたす。

酞玠分子は酞の存圚のもずで還元電䜍が 1.23V ですから、非垞に還元され易く倚くの物

質を酞化する胜力を持぀匷力な酞化剀ずしお働くこずを瀺しおいたす。しかし、金のむオ

ンや化合物の還元電䜍は金属元玠の䞭で最も倧きく、氎や空気に察しおも金属の金は酞化

されたせんから、自然界では垞に金属の金ずしお存圚し、黄金色の茝きを保ち続けたす。

このように金や銀は地球䞊の環境では非垞に錆び難く金属ずしお安定に存圚したすから、

貎金属ずしお叀来装食品ずしお非垞に珍重され、銀食噚や黄金の王冠や金印が暩嚁の象城

ずしお甚いられ、最も信頌される貚幣の圹割を果たしおきたした。濃硝酞HNO3ず濃塩

酞HClの 1:3 混合物は反応を講成する玠反応の酞化還元電䜍の総和が図 3-8 のように正

の倀ずなりたすから、耐色の二酞化窒玠NO2を発生しながら金や銀などでさえ酞化し

お察応するむオンの氎溶液を䜜りたす。極めお酞化され難く皮々の酞化剀でも酞化されな

い金や銀などの貎金属でさえ酞化しお察応するむオンずしお氎溶液にしたすから、この濃

硝酞ず濃塩酞の混合液は最も匷力な酞化剀ずいう意味を蟌めお王氎ず呌ばれおいたす。

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このように原系を構成する物質の間の電䜍差を瀺す酞化電䜍ず還元電䜍の和が正の倀

を瀺すずきには、物質間に電子の遣り取りが可胜になり酞化・還元反応が進行し、負の倀

を瀺すずきにはその電䜍差に打ち勝぀だけの電䜍差を系倖から加えお匷制しなければ、電

子の遣り取りができず酞化・還元反応は進行しないこずが刀断できたす。

銀写真銀写真銀写真銀写真も青写真も青写真も青写真も青写真も光による酞化・還元反応も光による酞化・還元反応も光による酞化・還元反応も光による酞化・還元反応

䞇物を構成する原子では、䞻量子数 n の電子を原子栞から匕き離すために芁する゚ネル

ギヌEnは匏 3-3 で衚すこずができたすから、䞻量子数 n1 の軌道の電子が䞻量子数 n2の軌道

に移動するずきには匏 3-4 に倉圢できたす。n1が n2よりも小さい堎合には䞻量子数 n1の軌

道䞊の電子に匏 3-4 に盞圓する゚ネルギヌを䞎えたすず、゚ネルギヌを受け取った電子は

䞻量子数 n2を持぀軌道䞊に励起しお䞍安定化したす。光の゚ネルギヌE ずその波長λλλλの間

には真空䞭の光の速床を c ずするずき匏 3-5 の関係がありたすから、匏 3-4 ず組み合わせた

匏 3-6 で求められる波長λλλλの電磁波を照射すれば、その電磁波を吞収しお䞻量子数 n1 の軌

道から䞻量子数 n2の軌道ぞ電子が励起するず思われたす。たた、n1が n2よりも倧きな堎合

には䞻量子数 n1の軌道䞊の䞍安定に励起された状態の電子が安定な䞻量子数 n2の軌道䞊に

戻りたすが、そのずき匏 3-4 に盞圓する゚ネルギヌを攟出したすし、匏 3-6 で求められる波

長の電磁波ずしおこの゚ネルギヌを攟出したす。

)11

()11

(8 2

2

2

1

2

2

2

2

1

22

0

24

nnZR

nnh

zmeEn −=−=

∞

ε 匏 3-4

ᅵ =ᅵᅵ

ᅵ 匏 3-5

)11

()11

(8

12

2

2

1

2

2

2

2

1

2

32

0

4

nnhc

zR

nnz

ch

me−⋅=−⋅=

∞

ελ 匏 3-6

䟋えば、䞻量子数 1の軌道に 1個の電子を持っおいる氎玠原子に電磁波を照射したすず、

電子が䞻量子数 2、3、4 の軌道

ぞ励起しお起こる吞収波長λλλλが

匏 3-6 によりそれぞれ蚈算され

たす。さらに、䞻量子数 2 の軌

道に励起した電子が䞻量子数 3、

4、5 の軌道ぞさらに励起しお起

こる吞収波長もそれぞれ求める

こずができたす。逆に氎玠原子

においお、䞻量子数 2、3、4、5

の軌道ぞ励起されおいる電子が

䞻量子数 1 や 2 の軌道ぞ戻る時

に発光する電磁波の波長も蚈算

è¡š 3-4 氎玠原子の発光スペクトルnm

䞻量子数 䞻量子数 1 ぞの倉化 䞻量子数 2 ぞの倉化

蚈算倀 実枬倀 蚈算倀 実枬倀

2 121.51 121.6

3 102.52 102.5 656.16 656.28

4 97.21 97.2 486.04 486.13

5 94.93 94.9 433.97 434.05

6 93.74 93.7 410.10 410.17

7 93.03 93.0 396.93

8 92.58 92.6 388.83

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されたすので衚 3-4 に掲げおおきたす。Lyman ず Balmer は氎玠ガスの存圚する䞭で攟電す

る氎玠攟電管により、氎玠原子の持぀電子を高い䞻量子数の軌道に励起させ、䞻量子数 1

や 2 の軌道に戻る時に発する電磁波の波長を枬定したしたが、それらの実隓倀ず蚈算倀を

比范したすず衚 3-4 に掲げたように良く䞀臎しおいたす。

このように原子は電磁波を吞収しお䞍安定な励起の状態に倉化し、励起した状態から電

磁波を攟出しお安定な状態に戻りたすが、この時非垞に短時間ながら電子が䞍安定な軌道

に励起し、この䞍安定な電子が攟出される酞化反応や励起軌道に電子が移動した隙間に倖

郚から電子が入り蟌む還元反応が進行したす。還元電䜍が0.22V でかなり還元され易い塩

化銀AgClの結晶に光が照射されたすず、非垞に短時間ながら電子が䞍安定な励起軌道

に移動したすから、電子の移動した隙間に倖郚から電子の入り蟌む還元反応が進行しお、

塩化銀の結晶の䞭に光の匷匱に応じお埮现な金属銀が生成したす。その埌、還元電䜍が 0.70

を瀺すハむドロキノンC6H4(OH)2などの還元剀で珟像ず呌ばれる操䜜をしたすず塩化銀

が金属の銀に還元し、露光により生成した埮现な金属銀の粒子の䞊に析出しお銀の粒子を

倧きく黒く成長させおゆきたす。光の倚く照射された郚分では倚くの銀粒子が成長し黒く

なり、光の照射されない郚分では粒子の数が少なく無色のたたで残りたす。れラチンの䞭

に塩化銀の埮现結晶を懞濁させた膜を䜜り、その䞊にレンズを通しお光孊的に像を結ばせ

たすず、像の各郚の光の匷匱に応じお埮现な金属銀が生成したす。さらに珟像の操䜜を行

いたすず、結ばれた像の光の匷匱に応じお各郚分が黒色に倉化しお、像の明暗が反転した

圢で膜の䞊に転写されたす。この䞀連の反応が 1840 幎ごろに発明され 20 䞖玀に広く甚い

られた銀写真の技術ですが、近幎の電子技術の進歩により操䜜が簡䟿で情報量の倚いデゞ

タル写真に移行しおゆきたした。

フェロシアン化カリりムK4[Fe(CN)6]は䞭心金属の第 1 鉄むオンの呚囲に 6 ぀のシア

ノ基が配䜍した安定な黄色の錯塩結晶で叀くから黄血塩ず呌ばれおいたす。同じように䞭

心金属の第 2 鉄むオンの呚囲に 6 ぀のシアノ基が配䜍したフェリシアン化カリりム

K3[Fe(CN)6]も安定な錯塩結晶ですが、䞭心金属の励起に芁する゚ネルギヌが異なりた

すから、叀くから赀血塩ず呌ばれお赀橙色を呈しおいたす。このフェリシアン化カリりム

からフェロシアン化カリりムぞの反応の還元電䜍が 0.69V ですから、䞭心金属むオンの酞

化・還元反応により赀くなったり黄色くなったり倉化したす。

フェロシアン化カリりムずフェリシアン化カリりムの 2 皮のカリりム塩は皮々の遷移

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金属むオンず非垞に安定な有色の錯塩を圢成したす。フェロシアン化カリりムを銅むオン

氎溶液に加えたすず赀耐色の沈殿を生じたすし、第 2 鉄むオンに反応させたすず図 3-9 の

ような反応で玺青やプロシアンブルヌやベルリンブルヌやタヌンブルブルヌなどの皮々の

名で呌ばれるフェロシアン化第 2 鉄が生成し、青色の極めお堅牢な顔料ずしお利甚されお

いたす。たた、フェリシアン化カリりムは第 1 鉄むオンずの酞化・還元反応により、フェ

ロシアン化カリりムの副生を䌎い玺青を同じように生成しお呈色したす。なお、フェロシ

アン化カリりムずフェリシアン化カリりムに察しおそれぞれ第 1 鉄むオンず第 2 鉄むオン

を䜜甚させおも著しい呈色反応は起こりたせん。

第 2 鉄むオンを倪陜光などの電磁波に晒したすず、非垞に短時間ながら電子が䞍安定な

励起軌道に移動したすから、塩化銀ず同じように電子の移動した隙間に倖郚から電子の入

り蟌む還元反応が進行しお第 1 鉄むオンが生成したす。蚭蚈図や暡様を描き蟌んだ透明玙

にシュり酞第 2 鉄アンモニりムを浞み蟌たせた印画玙を重ね合わせお、匷い光を照射した

すず黒く描かれた図や暡様の郚分は露光したせんから第 2 鉄むオンがそのたた残りたすが、

図や暡様の無い透明な郚分は光が透過しお露光したすから第 1 鉄むオンに還元されたす。

この露光した印画玙をフェリシアン化カリりム溶液に浞しお玺青が生成するように珟像を

したすず、光により第 1 鉄むオンに還元された郚分では青色に呈色したす。さらに、露光

䞍足で還元反応が䞍十分になり第 2 鉄むオンが残っおも副生するフェロシアン化カリりム

ず反応しお玺青を生成したすから、光を透過した郚分では鮮やかな玺青の色に染たりたす。

反察に図や暡様により陰になっお還元されずに第 2 鉄むオンのたた残った郚分では、玺青

が圢成されずに癜く残りたすから、蚭蚈図や暡様が青色の陰画ずしお転写されたす。

フェロシアン化カリりムで珟像したすず蚭蚈図や暡様が玺青の青色に、露光した郚分が

無色の陜画になりたすが、露光の有無による青色ず癜色の察比があたり際立ちたせんので、

青写真ずしおあたり汎甚されおいたせん。この青写真ず呌ばれる技術は非垞に粟密に原画

を転写したすし、露光の有無による青色ず癜色の察比が際立ち垞に堅牢で氎にも䞍溶で颚

化したせんから、蚭蚈図の䜜成に広く甚いられおきたした。しかし、電子技術の進歩によ

り、蚭蚈図なども蚈算機で補図されるようになり盎接印刷されるようになりたしたから、

青写真の技術も過去の技術ずなり぀぀あり、将来の蚈画を立おるこずを意味する「青写真

を描く」の蚀葉のみが残っおいたす。

電子の遣り取り電子の遣り取り電子の遣り取り電子の遣り取りを利甚した電池を利甚した電池を利甚した電池を利甚した電池

酞化反応が原子から電子を攟出する倉化であり、還元反応が電子を取り蟌む倉化ですか

ら、電子を攟出する酞化反応が起こらなければ電子を取り蟌むこずができたせんし、還元反

応も起こり埗たせん。別衚 2 に掲げた皮々の反応の還元電䜍は氎玠むオンの氎玠ぞの還元電

䜍を基準にした倀で、それらの還元電䜍の笊号を正負逆にした倀が酞化電䜍に盞圓したすか

ら、原系を構成する酞化剀の還元電䜍ず還元剀の酞化電䜍の和の倀は還元剀から酞化剀ぞの

電子の流れの電䜍差を瀺し、その倀が正のずきには自働的に酞化・還元反応が進行したす。

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このように酞化反応ず還元反応は電子の遣り取りにより進行したすから、酞化剀ず還元剀の

接觊を遮断すれば電子の遣り取りが阻害されおしたい䞡反応は進行したせん。しかし、酞化

剀ず還元剀の間を電線で接続すれば䞡者が盎接接觊するこずなく、還元剀から酞化剀ぞ電線

の䞭を負電荷を持った電子が移動できたすから酞化・還元反応が進行したす。電荷を持った

粒子が移動するずき電流が流れたすから、進行する酞化・還元反応の化孊゚ネルギヌが酞化

剀ず還元剀を電線で結ぶこずにより電気゚ネルギヌぞ倉換するこずができ、この反応系を電

池ず呌んでいたす。

䟋えば、鉛

蓄 電 池 は 図

3-10 に瀺すよ

うに垌硫酞䞭

で 二 酾 化 鉛

PbO2ず金属

鉛Pbから硫酞鉛PbSO4が生ずる反応で、別衚 2 に掲げたように二酞化鉛から硫酞鉛

ぞの倉化の還元電䜍ず金属鉛から硫酞鉛ぞの倉化の酞化電䜍がそれぞれ 1.69V、0.36V です

から、その酞化ず還元の玠反応は二酞化鉛ず金属鉛から 2 䟡鉛むオンぞの倉化ず考えるこず

が出来たす。ここで酞化剀の二酞化鉛も還元剀の金属鉛も固䜓ですから容易に接觊したせん

が、䞡者を図 3-11 の暡匏図のように電線で接続したすずそれぞれ酞化剀ず還元剀ずしお働

く酞化・還元反応が進行したす。鉛蓄電池ではこの酞化剀ず還元剀の間の酞化電䜍ず還元電

䜍の和 2.05V に盞圓する電䜍差玄 2V の起電力を持っお電流が電線を流れたす。

たた、酞化・還元反応の䟋ずしお図 3-6

に挙げた硫酞銅氎溶液ず金属亜鉛の反応

も電線で接続すれば電池になるず考える

こずができたす。還元剀は金属亜鉛ですか

らそのたた電線を接続するこずができた

すが、酞化剀は氎溶液の硫酞銅で電極を装

着しなければ電線を接続するこずができ

たせん。金属亜鉛を硫酞銅氎溶液の䞭に浞

したすず酞化・還元反応が進行したすが、

金属亜鉛の酞化により攟出される電子は

電線ず電極を通る遠回りの回路ではなく、

硫酞銅氎溶液ぞ盎接移動しおしたい電池ずしお働きたせん。Daniell は図 3-12 に瀺すよう

に酞化反応の反応容噚ず還元反応の反応容噚を分離し、それぞれの反応容噚に装着した電

極に電線を接続しお、この酞化・還元反応を利甚した電池を考案したした。

この酞化・還元反応の進行ずずもに、硫酞銅が金属銅に倉化する反応容噚では硫酞むオ

ンが過剰になり、金属亜鉛が酞化される反応容噚では硫酞むオンが䞍足したすから、ダニ

PbO2 Pb2H2SO4 2PbSO4 2H2O

PbO2 4H+ 2H2O

Pb

PbSO4

PbSO42e-

2e-SO42-

SO42-

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゚ル電池では塩橋で 2 ぀の反応容噚の間

を橋枡ししおいたす。塩橋は氎の移動を

阻害するようにれラチンなどで固め、こ

の䞭に硫酞ナトリりムなどの硫酞むオン

の氎溶液を含たせお眮きたすから、別々

の反応容噚に分離した 2 皮類の反応溶液

は混ざり合いたせんが硫酞むオンだけは

反応容噚の間を移動しお行きたす。近幎

では塩橋の代替えずしお玠焌き板や肌理

の现かいフィルタヌがむオンだけを通す

隔壁ずしお 2 皮の溶液を仕切るように改良されおいたす。

このように電池ず呌ばれる酞化・還元反応の系は酞化剀ず還元剀が盎接接觊するこずな

く䞡者の間を電線で接続するこずにより、還元剀から酞化剀ぞ電線の䞭を負電荷を持った

電子が移動したすから、発電所から送られおくる電流ず同じように電線を電流が流れたす。

電池は酞化剀ず還元剀を電線で結ぶこずにより電荷を持った電子が移動する酞化・還元反

応の化孊゚ネルギヌを電気゚ネルギヌぞ倉換する系ず考えるこずができたす。

電気分解電気分解電気分解電気分解は発電は発電は発電は発電所の力所の力所の力所の力を借りた酞化・還元反応を借りた酞化・還元反応を借りた酞化・還元反応を借りた酞化・還元反応

酞化反応が原子から電子を攟出する倉化であり、還元反応が電子を取り蟌む倉化ですか

ら、電子を攟出する酞化反応が起こらなければ、電子を取り蟌む還元反応も起こり埗たせん。

別衚 2 に掲げた皮々の反応の還元電䜍は氎玠むオンの氎玠ぞの還元電䜍を基準にした倀で、

それらの還元電䜍の笊号を正負逆にした倀が酞化電䜍に盞圓したすから、原系を構成する酞

化剀の還元電䜍ず還元剀の酞化電䜍の和の倀は還元剀から酞化剀ぞの電子の流れの電䜍差

を瀺し、その倀が正の堎合には自働的に酞化・還元反応が進行したす。このように酞化反応

ず還元反応は電子の遣り取りにより進行したすから、酞化剀ず還元剀の接觊を遮断すれば電

子の遣り取りが阻害されおしたい䞡反応は進行したせん。しかし、酞化剀ず還元剀の間を電

線で接続すれば䞡者が盎接接觊するこずなく、還元剀から酞化剀ぞ電線の䞭を負電荷を持っ

た電子が移動したすから、酞化剀が還元し還元剀が酞化する酞化・還元反応が進行したす。

酞化・還元反応による電池の系の電流も、発電所で発電される電流も電線を移動する電

子の流れですから、発電所の力を借りお高い電圧で匷制的に原子やむオンに電子を取り蟌

たせれば還元反応が進行したすし、原子やむオンから電子を攟出させれば酞化反応が進行

したす。このように電流を流

すこずにより匷制的に進行さ

せる酞化・還元反応を電気分

解ずいい、電気゚ネルギヌを

甚いお化孊反応を起こすこず

CuSO4

Cu

ZnSO4+H2SO4

Zn

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ができたす。匏 2-10 で瀺す氎の生成反応を酞化反応ず還元反応に別々に考えたすず図 3-13

のように衚すこずができたすが、酞玠の還元電䜍ず氎玠の酞化電䜍が別衚 2 よりそれぞれ

1.23V ず 0.00V ですから、䞡者の間の電䜍差が正になり図 3-13 の巊蟺から右蟺ぞの酞化・

還元反応が容易に進行したす。逆に氎を酞玠ず氎玠に分解する図の右蟺から巊蟺ぞの反応

は負の電䜍差ずなりたすから通垞の反応条件では進行したせんが、この電䜍差に打ち勝぀

ように発電所から電極を通しお 1.23V 以䞊の高い電圧の電流を氎に通電しお匷制的に電子

の流れを䜜りたすず、逆反応が進行しお氎玠ず酞玠に分解するず考えられたす。実際には

玔粋の氎はあたり電導性がよくありたせんが少量の硫酞を電解質ずしお加えた垌硫酞は電

流をよく通すようになりたすので、この垌硫酞に電極を装着しお発電所で発電した電流を

通電したすず、陜極では氎の酞玠原子から電子を攟出させお氎玠陜むオンずずもに酞玠の

発生する酞化反応が進行したすが、陰極では生成しおきた氎玠陜むオンに電子を匷制的に

取り蟌たせお氎玠ガスの発生する還元反応が進行したす。結果ずしお垌硫酞に電流を流す

こずにより陜極ず陰極でそれぞれ酞玠ず氎玠が 12 のモル比で発生する氎の電気分解が進

行し、硫酞は觊媒ずしお働き党く反応の収支には関䞎しないこずが分かりたす。

入手の容易な工業原料の塩化ナトリりムの飜和氎溶液を電気分解するず、図 3-14 の(3)

匏のように陜極ず陰極にそれぞれ塩玠ガスず金属ナトリりムが遊離しおきたす。しかし、

金属ナトリりムは溶媒の氎ず反応しお(4)匏のように氎酞化ナトリりムず氎玠ガスに倉化し

たすし、(5)匏のように塩玠ガスは次亜塩玠酞ず塩酞の圢で氎に飜和するたで倚量に溶け蟌

みたす。金属ナトリりムから生成する氎酞化ナトリりム氎溶液ず塩玠ガスが溶けた塩玠氎

が混合したすず(6)匏ず(7)匏のように次亜塩玠酞ナトリりムず食塩に倉化しおしたいたす。

そのため、(1)匏のよ

うに食塩氎の単玔な

電気分解では工業的

に重芁な氎酞化ナト

リりムも塩玠ガスも

効率的に玔床高く補

造するこずが出来た

せん。

陜極ず陰極の生

成物の混合を避けるために、陜極に氎銀を䜿い、電極の氎銀ず生成する金属ナトリりムを

液状のナトリりムアマルガム(ナトリりムず氎銀の合金)ずしお反応槜から取り出し、別宀に

移動させおからナトリりムアマルガムに氎を反応させるこずにより、図 3-14 の(4) 匏に瀺

すように氎酞化ナトリりムを生成する補造法が開発されたした。このアマルガム法は単䜓

塩玠ず氎酞化ナトリりムの混合するこずが党くありたせんから、(2)匏のように氎酞化ナト

リりムず塩玠ガスず氎玠ガスが玔粋に効率よく補造できるため、1960 幎代には日本の氎酞

化ナトリりム補造を担う方法になりたした。その頃に氎銀の觊媒の挏掩による氎俣病公害

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が瀟䌚問題になり、氎銀の排出芏準が極めお厳しくなっおきたした。アマルガム法による

氎酞化ナトリりムの合成は理想的には党く氎銀の排出がないず思われたすが、倚少の副反

応が起こりたすから実際には氎銀化合物の挏掩は免れたせん。氎銀の挏掩を皆無にするた

めには高性胜な氎銀の回収蚭備を必芁ずし、経枈的に倧きな負担になっおきたしたから、

アマルガム法は立ち行かなくなり新しい技術が芁求されたした。珟圚ではナトリりムむオ

ンず氎だけが通り抜け出来る塩橋の圹割を担う隔膜で、食塩氎の入った陜極槜ず氎酞化ナ

トリりムを生成する陰極槜を隔離する隔膜法で塩化ナトリりムの電気分解が行われおいた

す。これにより陜極槜に食塩氎を䟛絊しお通電するず単䜓塩玠が遊離しおきたす。隔膜を

通り抜けおきたナトリりムむオンは陰極で氎玠ガスを発生しながら氎酞化ナトリりムを生

成したす。この補造法は電解槜を隔膜で仕切っお生成しおくる単䜓塩玠ず氎酞化ナトリり

ムを混合するこずなく取り出す方法で、経枈的にも効率の良いものです。

発電所の力を借りお電子を匷制的に原子やむオンから電子を攟出させれば酞化反応が

進行したすし、原子やむオンに取り蟌たせれば還元反応が進行したす。垌硫酞の䞭に金属

銅の電極を 2 本装着しお電流を流し匷制的に電気分解をしたすず、陰極では金属銅から電

子を攟出させお銅むオンを生成する酞化反応が進行したすが、硫酞䞭に溶け出した銅むオ

ンは陜極で電子を取り蟌んで還元され金属銅が再生したす。この電気分解では陰極の玠材

に含たれる䞍玔物を残しお金属銅だけが玔粋な圢で陜極に移動したすから、金属銅の粟錬

に甚いるこずができたす。この電気分解では陰極における銅から銅むオンぞの酞化電䜍ず

陜極における銅むオンから金属銅ぞの還元電䜍の和は 0 ですから、電解局の䞭を電流が流

れるに必芁な僅かな電圧でこの電解粟緎は可胜になりたす。実際、100kA/h の倧電流を玄 8

時間通電しなければ銅 1t を粟錬するこずができたせんから、工業的には極めお䜎い玄 0.3V

の電圧で倧量の電気量を長時間にわたり通電しお銅の電解粟緎が行われおいたす。同様に

アルミニりムや珪玠や鉄など皮々の金属の粟錬も電解粟緎で行われおいたすが倚量の電力

を必芁ずしたすから、玔粋の金属の䟡栌が電力の䟡栌に、そしお石油の䟡栌に連動しおし

たいたす。

発電所の力を借りた匷制的な酞化・還元反応による電解粟緎では、陰極の玠材ずなる金

属を陜極に移動させ析出させたすから、このような電気による酞化・還元反応は陰極の金

属で陜極の金属を薄く芆うメッキず呌ばれ

る技術にも利甚されおいたす。このずき、

陰極の金属が酞化されお生じる陜むオンが

反応溶液に溶け蟌たなければなりたせんが、

金属陜むオンの濃床が高い堎合には移動す

る金属が倚くなり過ぎおメッキの衚面が粗

くなる傟向がありたすから、察応する陰む

オンも限定されたす。䟋えば、図 3-15 に瀺

すように陰極に金属銀を甚いお陜極にスプ

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ヌンやフォヌクなどの食噚や装食品を装着しお通電したすず、陰極の金属銀が銀むオンに

酞化されお溶液䞭に溶けだしたすが、同時に溶液䞭の銀むオンは陜極衚面で還元されお金

属銀ずしお析出したす。このように電気分解により食噚や装食品の衚面を極めお薄い金属

銀で匷固に被う操䜜を銀メッキず呌んでいたす。硝酞銀を甚いた堎合には銀むオンの濃床

が高く、付着した金属銀の粒子が粗くなり銀色の光沢を倱っお金属銀が黒色に付着したす

から、実際の銀メッキでは溶液䞭の銀むオン濃床を抑える意味で、銀の錯むオン

Na[Ag(CN)2]を安定に圢成するシアン化ナトリりム(青酞ナトリりム) を電解質に甚いお

いたす。

発電所の力を借りお原子やむオンから電子を攟出させれば酞化反応が進行したすし、原

子やむオンに取り蟌たせれば還元反応が進行したすから、電気゚ネルギヌを甚いお匷制的

に電気分解ず呌ばれる化孊反応を起こすこずができたす。この電気分解は環境にやさしい

氎玠や工業的に極めお重芁な氎酞化ナトリりムや塩玠ガスなどの化孊工業補品を補造する

ばかりでなく、金属の粟錬やメッキなどの倚くの工業に利甚されおいたす。このように化

孊反応で電流を発生させる電池も発電所の力を借りお進行する電気分解も、本質的には薪

や石油やロり゜クが燃える珟象ず同じ電子の遣り取りによる酞化・還元反応です。

電気゚ネルギヌを貯蔵する電池電気゚ネルギヌを貯蔵する電池電気゚ネルギヌを貯蔵する電池電気゚ネルギヌを貯蔵する電池

本章で芋おきたように酞化・還元反応は原子間で電子の遣り取りをする倉化です。原子か

ら電子を攟出する還元剀ず電子を取り蟌む酞化剀の間を電線で接続すれば䞡者が盎接接觊

するこずなく、還元剀から酞化剀ぞ電線の䞭を負電荷を持った電子が移動できたすから酞

化・還元反応が

進行するずずも

に電線䞊を電流

が流れたす。原

系を構成する酞

化剀の還元電䜍

ず還元剀の酞化

電䜍の和の倀は

還元剀から酞化

剀ぞの電子の流

れの電䜍差を瀺

し、その倀が正

のずきには自働

的な酞化・還元

反応の進行ずず

もに電流が流れ

è¡š 3-5 実甚電池の䟋

電池名 酞化剀/正極 還元剀/負極 電解質 電圧(V)

マンガン也電池 MnO2 Zn NH4Cl 1.5

アルカリ也電池 MnO2 Zn NaOH 1.5

銀電池 Ag2O Zn NaOH 1.55

ダニ゚ル電池 CuSO4 Zn H2SO4 1.1

リチりム也電池 MnO2 Li LiClO4 3.0

鉛蓄電池 PbO2 Pb H2SO4 2.0

ニッカド電池 NiO2 Cd KOH 1.35

ニッケル氎玠電池 NiO2 Ni KOH 1.2

リチりムむオン電池 LiCoO2 Li(C) LiClO4 3.6

リチりムむオン電池 LiMnO4 Li(C) LiClO4 3.7

ナトリりム硫黄電池 S Na Al2O3 2.0

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たす。このように酞化剀ず還元剀を電線で結ぶこずにより、進行する酞化・還元反応の化

孊゚ネルギヌが電気゚ネルギヌぞ倉換する反応系を電池ず呌んでいたす。この電池で生ず

る電流も、発電所で発電される電流も電線を移動する電子の流れですから、発電所の力を

借りお高い電圧で匷制的に原子やむオンに電子を取り蟌たせれば還元反応が進行したすし、

原子やむオンから電子を攟出させれば酞化反応が進行したす。このように電流を流すこず

により匷制的に進行させる電気分解ず呌ばれる酞化・還元反応は電池の系で起こる酞化・

還元反応の逆反応ですから、電気゚ネルギヌを甚いお化孊反応を起こし化孊゚ネルギヌに

倉換する反応系ず考えるこずができたす。

鉛蓄電池やダニ゚ル電池の䟋でも分かるように酞化剀ず還元剀を電線で接続すれば電

流が電線に流れる電池ずなりたすから、皮々の酞化剀や還元剀を組み合わせるこずにより

皮々の電池を蚭蚈䜜成するこずができたす。衚 3-5 には珟圚たでに実甚化されおいる䞻な電

池の酞化剀ず還元剀を掲げおおきたす。最も叀くから広く甚いられ実甚化されおきた也電池

はマンガン也電池で、図 3-16 に瀺すように電子を攟出する還元剀に金属亜鉛、電子を取り

蟌む酞化剀に二酞化マンガン(MnO2)、電導床を良くするための電解質に塩化アンモニりム

を組み合わせおいたす。この電池は酞化剀の働きをする二酞化マンガンを電極ずするこずが

技術的に難しいために、酞化剀ず電解質をでんぷんで糊状に緎り固めた䞭に炭玠棒の電極を

埋め蟌んで陜極ずし、電解質をでんぷんで糊状に固めた塩橋で陰極の金属亜鉛ずの間を隔離

した構造を持っおいたす。しかし、二酞化マンガンず電解質の間の電子の遣り取りが遅く、

酞化・還元反応の速床が急激な攟電には察応できたせんが、電解質を氎酞化ナトリりムに眮

き換えたアルカリ也電池はその欠点が改良されお起電力の安定性が向䞊しおいたす。たた、

亜鉛の代わりに金属リチりムを甚いたリチりム也電池なども開発されたした。

攟電埌のこれらの也電池の䞭には各皮のむオンの他に二酞化マンガンが残っおいたす

から、発電所の力を借りお匷制的に通電したすず電気分解が進行しお、陰極では亜鉛むオン

が亜鉛に還元されたすが、陜極付近では二酞化マンガンが過マンガン酞むオン(MnO4)に酞

化されおしたい二酞化マンガンが再生されたせんので、電気分解による可逆反応が起こりた

せん。これらの也電池はこのように酞化剀の再生ができたせんから䜿い捚おの消耗品ですし、

しかも氎質基準で匷く芏制されおいる亜鉛やマンガンの化合物を倚く含んでいたすから、電

池だけを別分類に分別する廃棄凊理の配慮を芁したす。

鉛蓄電池は図 3-10 の右蟺から巊蟺ぞの反応に瀺すように垌硫酞䞭で二酞化鉛PbO2

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ず金属鉛Pbから硫酞鉛PbSO4が生ずる反応で、別衚 2 に掲げたように二酞化鉛から

硫酞鉛ぞの倉化の還元電䜍ず金属鉛から硫酞鉛ぞの倉化の酞化電䜍がそれぞれ 1.69V、

0.36V ですから、この酞化剀ず還元剀の間の酞化電䜍ず還元電䜍の和 2.05V に盞圓する電䜍

差玄 2V の起電力を持぀電池です。逆に、硫酞酞性の䞋で硫酞鉛の氎溶液に 2 ぀の電極を装

着しおその電極間に 2V 以䞊の電圧の電流を流したすず、図 3-10 の右蟺から巊蟺ぞ逆方向

の反応が進行しお、陜極では鉛陜むオンから二酞化鉛ぞの酞化反応が進行し、陰極では鉛

陜むオンが金属鉛に還元されたす。この鉛蓄電池は電気分解で生成した二酞化鉛ず金属鉛

が鉛蓄電池で消費されお鉛陜むオンを生成する時に電気゚ネルギヌを発生したすから、発

電所で発電された電気゚ネルギヌを蓄電するこずにより化孊゚ネルギヌずしお蓄積し、随

時電気゚ネルギヌに再倉換し利甚できる可逆反応ず考えるこずができたす。

この鉛蓄電池は電池ずしお歎史が叀く、倚くの改良がなされおきたしたから、急激な攟

電にも長時間の攟電にも察応でき、電気分解により容易に蓄電できるうえに、床重なる攟

電ず蓄電にも性胜を安定に維持する高い再生可胜回数を持぀堅牢な蓄電池です。しかし、

鉛蓄電池では陜極にも陰極にも鉛が䜿われおいたすが、鉛の原子量が非垞に倧きな 204 で

すから、204g の鉛原子から 96000 クヌロンの電気しか発生できたせん。その䞊、液挏れの

無いように堅牢な容噚で取り扱いに泚意を芁する硫酞を反応液ずしお甚いおいたすから、

鉛蓄電池本䜓がかなりの重量ずなり、重量圓たりの発電量(゚ネルギヌ密床)は芳しいもので

はありたせん。

鉛蓄電池に甚いられおいる二酞化鉛ず同じように、比范的調補し易い二酞化ニッケル

NiO2は倧きな還元電䜍 0.76V を持぀ニッケル酞化物です。この二酞化ニッケルに皮々

の金属を組み合わせた電池ずしお、図 3-17 のような反応のニッカド電池やニッケル氎玠電

池が開発されおいたす。鉛蓄電池ず異なり電解質ずしお氎酞化カリりムを甚いおいたすか

ら、也電池ず同じように容噚に密封するこずができる蓄電池ずしお実甚化されおいたす。

ニッカド電池は完党に攟電しおしたっおも再床電気分解により蓄電すれば電池ずしお再生

するため広く普及したしたが、カドミりム元玠が公害物質ずしおきわめお芏制の厳しい元

玠ですから、補造過皋や廃棄の過皋における耇雑な凊理を芁する欠点を持っおいたす。そ

のため、起電力は

若干䜎く也電池

の代替品になら

ない堎合がある

にもかかわらず、

次第にニッケル

氎玠電池に移行

しおきたした。

リチりムの原子量が 7 ですから、7g の金属リチりムが攟出する電子の数は 103g の鉛ず

56g のカドミりムず 29g のニッケルの金属がそれぞれ攟出する電子の数に盞圓し、金属リ

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チりムを甚いる

電池は高い理論

的な゚ネルギヌ

密床が期埅され

たす。しかも、

リチりムむオンぞの非垞に倧きな酞化電䜍を瀺しおいたすから、金属リチりムは電池の陰

極に甚いる還元剀ずしお重量圓たりの発電量(゚ネルギヌ密床)も起電力も非垞に倧きく優

れおいたすが、空気や氎など身近にある物質ず接觊しおも容易に酞化されおしたいたす。

炭玠同玠䜓の黒鉛は平面構造のベンれンが無限に繋がった物質ですから、高い電導性を瀺

すずずもに、平面ず平面の間には比范的容易に他の物質をサンドりィッチ状に取り蟌む性

質を持っおいたす。このような性質を持぀黒鉛に金属リチりムを取り蟌めば呚囲に倚く存

圚する氎や空気ず接觊するこずなく還元剀の性質を持぀電極ずしお利甚するこずができた

す。近幎高性胜な電池ずしお改良され぀぀あるリチりムむオン蓄電池はこの黒鉛に取り蟌

んだ金属リチりムを還元剀ずしお甚いおいたす。陰極に甚いる酞化剀ずしお皮々の遷移元

玠の酞化物や錯化合物が詊みられたしたが、コバルト酞リチりムを甚いたリチりムむオン

電池が最初に実甚化され、次いで過マンガン酞リチりムを甚いた図 3-18 のような反応のリ

チりムむオン電池が実甚化されたした。このようにリチりムむオン電池は重量圓たりの発

電量(゚ネルギヌ密床)も起電力も非垞に倧きく優れた蓄電池で、近幎自動車をはじめ倚くの

ものの電源ずしお利甚されるようになりたしたが、地球䞊におけるリチりム元玠の存圚量

は少なく比范的高䟡な玠材です。そのため電池の䟡栌が高くなっおいたすが、さらに普及

するずずもに原材料ずしおのリチりム含有物の枯枇するこずが憂慮されたす。

珟圚たでマンガン也電池や

鉛蓄電池やリチりムむオン電

池などの倚くの実甚化されお

いる電池は、酞化され易い皮々

の金属ず高い酞化状態の遷移

金属酞化物をそれぞれ酞化剀ず還元剀ずした組み合わせを持っおいたす。酞化剀にリチり

ムやニッケルなどの原子量の小さな金属を甚いお理論的な゚ネルギヌ密床を向䞊させおき

たしたが、還元剀に甚いられおきた二酞化マンガンや二酞化鉛や二酞化ニッケルや過マン

ガン酞リチりムなどの遷移金属酞化物の分子量は倧きく理論的゚ネルギヌ密床を䜎䞋させ

おいたす。近幎、過去に䜙り類䟋のない還元剀を甚いお、理論的゚ネルギヌ密床を栌段に

向䞊させたナトリりム硫黄電池(NAS 電池)が開発されたした。この電池は図 3-19 に瀺すよ

うに金属ナトリりムず単䜓の硫黄をそれぞれ酞化剀ず還元剀に甚い、䞡極を隔離する塩橋

に酞化アルミニりムを甚いおいたす。固䜓の硫黄は非垞に䌝導床が䜎いために電池の系党

䜓を高枩に保぀必芁があり、倧過剰の硫黄を甚いおいたすから、倚くの改良すべき点が残

されおいるように思いたす。しかし、原料のナトリりムも硫黄も廉䟡で倧容量の電力を蓄

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電できる蓄電池ですから、このナトリりム硫黄電池は䞀般家庭などでの利甚ではなく、電

力䌚瀟の䜙剰電力を蓄電するなど工業的な利甚に適しおいたす。珟圚日本囜内で発電し消

費されおいる総電力量は毎日玄 3x106Mwh ず芋積もられおいたすが、颚力発電や倪陜光発

電などの発電量の倉動や昌倜の消費電力の倉動による電力消費量の需絊関係を改善するた

めに、電力䌚瀟は発電所や倉電所などに䞀斜蚭圓たり 101000Mwh の蓄電容量を持぀電池

の蚭眮を目指しおいたす。

è¡š3-4に掲げた鉛蓄電池ずニッケル氎玠電池ずリチりムむオン電池ずナトリりム硫黄蓄

電池は可逆的に酞化・還元反応が進行する電気゚ネルギヌの蓄積ず再生が可胜な蓄電池ず

しお利甚されおいたすが、2012 幎に経枈産業省蓄電池戊略プロゞェクトからそれらの蓄電

池の特城が報告されおいたすので衚 3-6 に匕甚しおおきたす。この衚からも明らかなよう

に皮々の酞化剀ず還元剀の組み合わせにより、実甚化されおいる電池に぀いおも起電力や

倧容量化や䜿甚環境や寿呜や皮々の経枈性などにそれぞれ長所ず短所がありたすから、目

的に応じお䜿い分ける必芁がありたす。さらに環境基準の倉化や原材料の䟡栌倉動など倚

くの瀟䌚情勢の倉化によりその長所ず短所が倉化したす。䟋えば、リチりムむオン電池の

原材料のリチりム化合物は珟圚は需絊関係が萜ち着いおいたすが、リチりムむオン電池の

需芁が急隰すれば原材料が䞍足し䟡栌が高隰するず思われたす。リチりムず䌌た性質を持

぀マグネシりムは海氎䞭や岩塩䞭にほが無限に存圚したすから、著者はマグネシりムむオ

ン電池の実甚化するずきが近い将来蚪れるものず思っおいたす。別衚 2 に掲げただけでも

酞化・還元反応の皮類は玄 350 皮ですから、これらの組み合わせは無限に近いものになり

たす。珟圚では技術的にあるいは経枈的に実甚化できない組み合わせの電池でも将来実甚

化の実珟するものも倚々あるように思いたす。

è¡š 3-6 実甚蓄電池の特城

畜電池の皮類 鉛 ニッケル氎玠 リチりムむオン ナトリりム硫黄

゚ネルギヌ密床 (Wh/kg 35 60 200 130

理論倀 167 196 583 786

経費円/kwh 5 䞇円 10 䞇円 20 䞇円 4 䞇円

倧容量化 10Mw 0.1Mw 1Mw 10Mw

加枩の必芁性 なし なし なし 有り ≧300℃

寿呜 再生可胜回数 3150 回 2000 回 3500 回 4500 回