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多多多多多多多多多多多 多多多多多多多 、、。。、、。 1. 多多 多多多 、。 6500 多多多多多多多多 多多多 多多多多 一、-( KT boundary )。K 多多多多多Cretaceous )、T 多多多多多Tertiary )。K 多多多多多多多 多多多多多多多多 C 多多多多多多多多多多多KT 多 多 、。 多多多 Hildebrand, 1992)多多多多 KT 多多多多多多 、2。 Fireball layer 多 多 3mm多多多多多 、( 2多多3 多 多多多多多多多 )。 Ejecta layer 多多多 2cm 多 多 多 、、。 多多 KT多 多 多 多 多 多 多 多 多 、。、、、。、。。75%多多多多多多多多多多多多多多多多多 109

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Page 1: 生物学入門 - Tokyo Medical and Dental University · Web view中生代に栄えた恐竜は、その末期、中生代の白亜紀から新生代の第三紀を境にして突然に姿を消す。この突然の絶滅がどうして起こったかは長い間の謎であった。この章では、恐竜の突然の絶滅を足がかりにして、どうしてこれまで述べてきた生物の多様性が生じたかを考えていこう。

多様性を促した外的要因      

 中生代に栄えた恐竜は、その末期、中生代の白亜紀から新生代の第三紀を境にして突然

に姿を消す。この突然の絶滅がどうして起こったかは長い間の謎であった。この章では、

恐竜の突然の絶滅を足がかりにして、どうしてこれまで述べてきた生物の多様性が生じ

たかを考えていこう。

1.恐竜の絶滅

 中生代の白亜紀と新生代の第三紀では、化石の種類に著しい差があることに地質学者は

気がついていた。それで今から 6500万年前のこの間に一種の境界線があるとみなして、これを白亜紀-第三紀境界線( KT boundary)と呼んでいる。 K は白亜紀(Cretaceous)を示し、Tは第三紀(Tertiary)を意味する。Kを使うのはカンブリア紀ですでに Cを使っているからである。KT境界線は、中生代と現代へ連なる新生代を分ける境界線でもある。

 ヒルデブランド(Hildebrand, 1992)によると、KT境界線は地球上どこでもほとんど同じで、2層になっている。上の層は Fireball layerと呼ばれ、平均 3mmの厚さで、このことから非常に急速に(2から 3ヶ月)で堆積したと計算できる。その下の Ejecta

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layerは厚さ 2cmで、ほとんど粘土層で、上部に煤を含んでいる。

 この KT境界線を境にして、恐竜は忽然と姿を消す。このときは恐竜ばかりでなく、大型の植物食爬虫類、魚竜などの海生爬虫類、翼竜などの飛行性爬虫類などの爬虫類が絶滅

した。その他、アンモナイトや有孔虫や二枚貝の仲間が滅んだ。植物でもシダなどの植

物相が激変した。75%の種がこのとき滅んだと言われている。

赤いナイフを置いた部分が KT境界線

 中生代の終わりに恐竜がなぜ滅んだか、その原因をめぐる論争は 1980年になって転機を迎えることになった。それまで、恐竜の絶滅の原因に関しては、火山活動説、アルカ

ロイド毒説、流行病説、気温変化説などさまざまな説が唱えられたが、どれも恐竜以外の

生物を含む広範な絶滅をうまく説明できるものではなかった。もう一つ、隕石衝突説と

いうのがあったが、ライエル以来の伝統的な斉一説とは相容れない天変地異(カタスト

ロフィー)を地質学に再び呼び戻すこの説は、あまり多くの注目を浴びなかった。

 隕石衝突説の真正面から取り組んだのが、ウォルター・アルバレスとその父親でノー

ベル賞受賞者のルイス・アルバレスだった。彼らはイタリアの Gubbioというところで最初に、その後は地球上のいたるところで、この KT境界線に該当する薄い粘土層を見つけ、その粘土層が地球上では希元素であるイリジウムをふつうの場所の数百倍も多く含

むことを明らかにする。イリジウムは隕石中には多く含まれている。このことはこの層

が、地球の粘土と地球に隕石が衝突した際に生じた塵の混合物が短期間に堆積したもので

あることを示唆している。層の厚さとイリジウムの量から計算して、隕石の直径はおよ

そ 10kmだろうと考えられた。もしもこの大きさの隕石が衝突すると、直径 150から200kmのクレーターが残ることになる。こうしてイリジウムという希元素を手掛かりに、

彼らは隕石の衝突とその後の巻きあげられた塵によっておこった太陽光の遮断による天

候の変化によって、今から 6500万年前のこの時期に、急激に多くの生物が絶滅したと推

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論した。

IA 01 2H IIA IIIB IVB VB VIBVIIB He3 4 5 6 7 8 9 10Li Be B C N O F Ne11 12 13 14 15 16 17 18Na Mg IIIA IVA VA VIAVIIA VIII IB IIB Al Si P S Cl Ar19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36K Ca Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe55 56 57 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86Cs Ba La Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn87 88 89Fr Ra Ac 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71

Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu

90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103Th Pa U Np Pu Am Cm Bk Cf Es Fm Md No Lr

(c) 1998 Hitachi Digital Heibonsha, All rights reserved.

 周期表第 VIII 族に属する白金族元素の一つで、1804 年イギリスのテナント S. Tennant により白金鉱から発見され、その化合物がいろいろな色調を示すことからギリ

シア語の iris(虹)にちなんで命名された。白金鉱中にオスミウムと合金イリドスミンをつ

くって存在する。地殻中の存在度は 1×10-3ppmで、希元素の一つである。ひじょうに

硬く(モース硬度 6.5)、もろい金属で、王水にも溶けないほど酸に強い(平凡社世界百科

事典より)。

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http://www.gl.rhul.ac.uk/~belcher/ktboundary/

KT境界層の発見物語(とてもおもしろい)

http://www.lpl.arizona.edu/SIC/impact_cratering/Chicxulub/Chicx_title.html

 もちろんこの説は、最初は受け入れられなかった。斉一説を信じている地質学者は、

隕石の衝突が地球の誕生直後ならともかく、ごく最近起こって地質学的な変化をもたらし

たという考えは受け入れがたいものだったからである。火山の活動によっても、地球の

深いマントル内に存在するイリジウムが地表に出て、堆積物に入る可能性はある。たと

えば、この時期、インドでは大規模の火山活動が起こり、玄武岩が表出して現在のデカン

高原が形成された。しかし、その後の調査では、火山活動は KT境界線前後のかなり長い時期にわたっていることが明らかになり、急激な絶滅とは直接的な関連は薄いと考えら

れている。

 その後、KT境界線が隕石に由来することを示すイリジウム以外の証拠が見つかる。

Fireball layerの元素の構成を調べてみると、隕石に含まれる元素の組成とよく似ている

事がわかった。また、Ejecta layerの下のほうに、微小テクタイト(microtektite)と呼ばれるガラスが溶けてできた微小な粒子が含まれていることが分かった。また衝突に

よって変性した衝撃水晶(shocked quartz)が含まれることも分かった。これらのもの、特に衝撃水晶は、核実験を行なった場所か、小惑星か隕石が地表に衝突した場所でしか見

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られない。

 

微小テクタイト             衝撃水晶

 こうして、隕石あるいは小惑星が衝突したが、KT境界線の時期に衝突した証拠がそろ

い、仮説は正しいもののではないかと思われるようになったが、80年代の初めには、肝

心な直径 10kmの大きさをもつクレーターの報告はなかった。多くの研究機関の参加に

よって、その場所が、北アメリカにあるのではないかと推論され、その場所が絞られて

いき、ついにメキシコのユカタン半島の北、チチュルブ(Chicxulub)にそれがあるということが、分かってきた。

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 もちろん、昔のことなので、その上に堆積物があり、直接、目で見ることはできない。

それで人口的に地震を起こしてその反射を調べたり、磁気や重力の異常を調べたりした。

結果はいずれもチチュルブに円形の何かがあることを示していた。次の図は、ユカタン

半島に特有なセノ-テ(底に水を溜めた石灰岩の深い穴で、かつてマヤ族がいけにえを

投げ込んだと言う)の分布を示しているが、これが衝突によってできたことを示唆して

いる。

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さらに掘削をしていろいろなデータを集めていった。クレーターだと思われる地層の年

代はまさに 6500万年前を指し示していた。

 最近になって(2003年 3月)、NASAは宇宙から撮影して、コンピューターによって

高低差を際立たせたこの地域の写真を公開した。それによると、大きなクレーターの南

半分の縁がよく見える。

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http://www.planetary.org/html/news/articlearchive/headlines/2003/yucatancrater.html

 現在では、ユカタン半島のこのクレーター跡が隕石の衝突でできたこと、それによっ

ていろいろな影響を地球に与えたことを疑うものは少なくなった。ただ、このことが直

接的な恐竜の絶滅にどうつながるかについては、まだまだ議論の分かれるところええあ

る。ごく最近の説では、衝突後、ごく短い時間で絶滅が起こったと言う説も提唱されて

いる。

 

白亜紀-第三紀境界線(KT boundary)についてhttp://www.psi.edu/projects/ktimpact/ktimpact.htmlKT境界線のインパクト

http://taggart.glg.msu.edu/isb200/kt.htmウォルター・アルバレスとのインタビュー

http://www.geocities.com/stegob/walteralvarez.html

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 同じような衝突が、この時期あるいはそれ以前に起こったとことを示すクレーター跡

も次々と見つかっている。

白亜紀末のクレーター(Hodge, 1994)http://www.lpi.usra.edu/publications/slidesets/craters/

 こんなに最近に、隕石の衝突が起こるのだということを納得させる事件が 1994年にお

こった。この年の 7月 16 日から 22 日にかけて、シューメイカー・レビー第 9 彗星が少

なくとも 21の破片(大きいもので直径 2km)になって、次々と木星に衝突するのが観

測されたからである。この衝突が木星の大気に与えた影響は計り知れないものだった。

 シューメイカー・レビー第 9 彗星の衝突が人類の目の前で起こったと言う事実は、上に

述べた 6500万年前の衝突を納得させるものだった。

シューメイカー・レビー第 9 彗星が木星に衝突

http://oposite.stsci.edu/pubinfo/Comet.html

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 生物の進化は、ライエルの考えを受け継いだダーウィンの考え方、すなわち少しずつ

の変化が積み重なって起こるのだと言う考え方で説明されてきたが、現在では、むしろ

大きな節目があるという考え方のほうが優勢になっている。次の図は、これまで起こっ

た何回かの大絶滅(mass extinction)を示している。④が KT境界線の絶滅である。

地球上の生命の歴史

http://www.lifesci.utexas.edu/faculty/sjasper/bio213/earthhist.htmlhttp://rainbow.ldeo.columbia.edu/courses/v1001/syllabus.html

2.地質学の基礎

 前の節では、白亜紀から第三紀に移るときの恐竜の絶滅について触れ、ほかにもいく

つかの大絶滅があったことを述べた。また、カイメンからヒトまでの説明では、いつ地

球上に出現したかと言う、時間軸のことはあまり触れずに、主として分岐分類法に基づ

く系統関係の推定に基づいて生物を配列してきた。しかしながら、当然これらの生物は、

地球上に一時に現われたのではなかった。

 そこで、ここでは地球の歴史を知るために地質学のごく基本的なことがら、地質時代

の分け方について述べておく。

代 紀 世 年代(始) 年代(終) 氷河時代 

始生代   地球誕生 46 億年 25 億年  

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原生代  真核生物出現

無脊椎動物25 億年 5 億 7000万

氷河時代

約 6 億年前

古生代

カンブリア紀現在の動物の

主な門出現5 億 7000万 5 億年  

オルドビス紀 節足動物陸へ 5 億年 4 億 3000万  

シルル紀無顎類栄える

有顎魚類出現4 億 3000万 3 億 9500万  

デボン紀 両生類出現 3 億 9500万 3 億 4500万  

石炭紀(ミシ

シッピ-紀)

両生類栄える

爬虫類出現3 億 4500万 3 億 2000万  

石炭紀(ペン

シ ル ベ ニ ア

紀)

3 億 2000万 2 億 8000万 氷河時代(石炭

紀末から二畳紀

初期)二畳紀(ペル

ム紀)

ペルム紀大絶

滅2 億 8000万 2 億 2500万

中生代

三畳紀 恐竜放散 2 億 2500万 1 億 9000万  

ジュラ紀 恐竜栄える 1 億 9000万 1 億 3600万  

白亜紀 大絶滅 1 億 3600万 6500万  

新生代

第三紀

暁新世 6500万 5300万アルプス造山運

動始新世 5300万 3700万漸新生 3700万 2600万中新世 2600万 700万  

鮮新世 700万 200万  

第四紀

更新世(洪積

世)200万 1万 氷河時代

完新世(沖積

世)1万 ~現代 後氷期

3.環境の激変と絶滅

 KT境界線の大絶滅を含めた主な絶滅には次のものがある。

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 カンブリア紀末(5 億 500万年前) オルドビス紀末(4 億 3800万年前) デボン紀末(3 億 6000万年前) ペルム紀(二畳紀)末(2 億 4500万年前)(96%以上の種が滅んだと言われる) 三畳紀末(2 億 800万年前) 白亜紀から第三紀への移行期(6500万年前) 第三紀末(160万年前)http://www.tulane.edu/~sanelson/geol204/impacts.htm

 いずれの場合も、地質学的に区切りがつけられる時期に絶滅が起きている。絶滅と言

うと生命にとって負のイメージを持つかもしれないが、実はこの絶滅によって、それま

で生態系を占めていた動物群がいなくなるために、空いた空間を生き残った動物が占め

ることによって爆発的に適応放散するということが起こる。KT境界線でおきた大型爬虫

類の絶滅によって、哺乳類は空いた生態系を占めることになり、今日の哺乳類の繁栄につ

ながり、ひいては人類の誕生につながるのである。

 KT境界線での絶滅以外も、小惑星の衝突が原因ではないかと考える人もいる。火山活

動を重視する人もいる。いずれにしても地球上に起こった大激変が原因となっているの

だろう。それでは、カンブリア紀以前はどうだったのだろうか。カンブリア紀以前には

それほど動物の種類はいなかった。それは誕生してからしばらくの間は地球の環境が比

較的均一で、生物にとってかならずしも好ましいものではなかったからである。最初に

生物の種類が増える時期はカンブリア紀に入って海水中に溶存酸素やリン酸イオンの量

が増えたこと、海水面が上昇して浅い海が出現したことなどによって、爆発的に生物種

が増えた。これをカンブリアの大爆発(Cambrian explosion)といっている。このときに、すでに現在の門のほとんどが出現したと言われている。その後は、上に述べたよう

に一定期間をおいて(周期性があると主張する人もいる)、減っては増え減っては増え、

を繰り返しながらしだいに右肩上がりに増えてきている。

http://www.dragonridge.com/rockies/burgess_shale.htmhttp://www.dc.peachnet.edu/~pgore/geology/geo102/burgess/burgess.htm

 次の図と次ページの図は、カンブリアの大爆発の跡をよくとどめているカナダのバー

ジェス頁岩層から見つかった化石をもとに描いた、当時の海の生物群の想像図である。

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http://www.nmnh.si.edu/paleo/shale/pamsci.htm

Anomalocaris(上図右上の動物、次ページの 28)の化石

http://www.geocities.com/goniagnostus/anohome.html

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http://www.aloha.net/~smgon/triloclass.htm

 これらの動物の大部分は、カンブリア紀末の絶滅によって姿を消し、化石として残る

のみである。三葉虫(1)は生き残り、ペルム紀になって絶滅する。

 このような生物の多様化は、明らかに環境がしだいに多様になってきて、それに適応

して(別の言い方をすれば自然選択がおこって)生物が進化してきたことを示している。

現在では、地球上の激変時に大進化(上位の分類階級レベルでの進化)がおこり、その後

の環境への適応によって小進化(属や目のレベルの進化)が起こったのだろうと考える

ヒトが多くなっている。

4.多様な生物を支える多様な生態圏

 これ以上深く古生物学に立ち入ることはやめて、現在の状況に話を移すことにするが、

地球の環境を考えるためには、生物が積極的に地球に与えた影響を忘れてはならない。

これは現在でも同じで、いかなる生物も、地球という「環境」の中でしか生存できず、

環境に適応するとともに、環境に影響を与える。

 この地球「環境」を構成するさまざまな要素、状態量を環境要因と言い、非生物的環境

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要因と生物的環境要因がある。

 1)非生物的環境要因

  光要因、温度要因、(水分要因、酸素要因、二酸化炭素要因、土壌要因)、

  生息場所の地理的・気候的要因(緯度、高度、降雨、積雪など)

 2)生物的環境要因

  食物要因、生息場所(植生)、同種他個体、異種個体

 これらの環境要因で構成される、ある特定の生息場所(habitat)に生物は適応して生息している。上に述べた環境要因は地球状の場所に応じて実にさまざまな組み合わせが

できるので、さまざまな生息場所ができあがることになる。たとえば、森林(針葉樹の

森林、広葉樹の森林、混交林、熱帯雨林など)、サバンナ、砂漠、ツンドラ、海(海岸の

潮間帯、浅い海、深海、暖かい海、冷たい海)、河、湖沼、草原など、思いつくままに書

き並べたが、いろいろな生息環境がある。

陸の生態群系

熱帯雨林

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サバンナ

砂漠

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潅木林

温帯草原

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温帯落葉樹林

温帯雨林

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ツンドラ

海の生息環境

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潮間帯                 サンゴ礁

 

深海底生

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