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©JETRO 2004 1 米国通商代表部(USTR)2004 年外国貿易障壁報告書 * 及び 2004 年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政策局編) 対応表 ASEAN に関する部分を要約~ 2004 年版 USTR 外国貿易障壁(NTE)報告書、及び 2004 年版不公正貿易報告書(経済 産業省通商政策局編)のそれぞれ ASEAN に関する部分を抜粋、要約致しましたのでご参 照ください。 * 2004 年 3 月 31 日に発表された米国通商代表部(USTR)2004 年外国貿易障壁報告書のうち、ASEAN 部 分を抜粋してジェトロで仮訳の上、要約致しました。ご参照ください。なお、本文はあくまで仮訳であり、 本要約を参照した結果生じた、いかなる損害に関しても責任は負いかねますので、正確を期すためには原 文をご参照ください。原文は http://www.ustr.gov/reports/nte/2004/index.htm にございます。 2004 年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政策局編)の対応部分を要約致しました。全文は http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/wto_consistency_report/index.html をご参照ください。 WTO/FTA Column Japan External Trade Organization International Economic Research Division Vol. 028 2004/05/17

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Page 1: Column - JETRO2 ©JETRO 2004 タ イ 2004年USTR外国貿易障壁報告書要約(pp.459-469) 2004年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政 策局編)要約(pp.126-128)

©JETRO 2004 1

米国通商代表部(USTR)2004 年外国貿易障壁報告書*及び 2004 年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政策局編)†対応表

~ASEANに関する部分を要約~

2004年版 USTR外国貿易障壁(NTE)報告書、及び 2004年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政策局編)のそれぞれ ASEAN に関する部分を抜粋、要約致しましたのでご参照ください。

*2004 年 3 月 31 日に発表された米国通商代表部(USTR)2004 年外国貿易障壁報告書のうち、ASEAN 部

分を抜粋してジェトロで仮訳の上、要約致しました。ご参照ください。なお、本文はあくまで仮訳であり、

本要約を参照した結果生じた、いかなる損害に関しても責任は負いかねますので、正確を期すためには原

文をご参照ください。原文は http://www.ustr.gov/reports/nte/2004/index.htm にございます。 † 2004 年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政策局編)の対応部分を要約致しました。全文は

http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/wto_consistency_report/index.html をご参照ください。

WTO/FTA Column

Japan External Trade Organization

International Economic Research Division

Vol. 028 2004/05/17

Page 2: Column - JETRO2 ©JETRO 2004 タ イ 2004年USTR外国貿易障壁報告書要約(pp.459-469) 2004年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政 策局編)要約(pp.126-128)

©JETRO 2004 2

タ イ

2004 年 USTR 外国貿易障壁報告書要約(pp.459-469) 2004 年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政

策局編)要約(pp.126-128) 参考情報(ジェトロによる)

税制

一般的に、複雑で不透明であると指摘。1999 年 VAT は経済活性化政策の一環とし

て 10%から 7%に下げられた。2005 年 10 月 1 日に 10%に戻すといっているが、これ

までも 3回そういって結局とりやめている。

タクシン首相は 2003 年 7 月 31

日に IMF 融資完済を受けて、融資

条件であった VAT の 10%への引き

上げを取りやめ、7%に据え置くと

発表している。通商弘報 2003 年 8

月 8 日号記事「IMF 融資を完済」

参照。

関税

自由化と関税率引き上げの連動を指摘(ローカルコンテンツ要求を廃止した 1999

年の CKD 部品関税の引き上げ(20→33%)、オートバイの高関税(60%)など)。1108

品目の関税引き下げ(2003.10)を評価するも、国内産品と競合しないものに対して

のみ引き下げを行っている、また 2003.9 決定の関税引き下げが未履行であると指

摘。

CKD 部品 33%→30%、1391 品目の関税率引き下

げ(2003.9)について評価。譲許率の低さ

(70.9%)、自動車、銅、ポリエチレンなどの高

関税品目を指摘。

また、デジタルカメラについて、ITA の品目リ

ストで無税とすることが合意されているにも拘

らず、2002 年 1 月の HS コード改正を機に ITA

対象外として 3%の関税を賦課するようになって

いる。

2003年9月に決定された関税率

引き下げは、その後 12 月に実施

された。通商弘報 2004 年 1 月 9

日号記事「1,391 品目の関税を引

き下げ」参照。

関連 WTO 規定:

GATT2 条、ITA

農産品、食

ワイン・スピリッツ以外のほとんどの農産品に対する従量税が撤廃され、また従

価税率も WTO 譲許表通り削減されていることを評価。ただし、一部の農産品、食品

に対する高関税を指摘。特に、梨、チェリーについて関税その他の障壁により 2500

万$の損失を米国業者が算出していることを指摘。とうもろこし、大豆などの自由

化は比較的進んでいるが、輸入許可証発行の要件が厳しくなっている。(とうもろこ

しの輸入は 3~6 月しかできないなど。譲許表に載っていない。)他に肉類輸入許可

申請費が高額であることなど。

関連 WTO 規定:

GATT2 条、

農業協定 4条

自動車

乗用車、スポーツ用車について 80%の高関税(以前は 42%、68%)。ピックアッ

プトラック(3%)などに比べて乗用車に対する物品税が高率(35~48%)であるこ

とを指摘。

繊維 高関税。また 3 分の 1 の繊維製品に従量税を課していることによりさらに税率が

高くなり、60%以上になるものもある。

輸入政策

数量制限、

輸 入 ラ イ

センス

原料、石油、繊維、医薬品、農産品など 26 のカテゴリーで輸入許可証が必要。中

古バイク・部品、ゲーム機などは輸入が禁じられている。非特恵原産地規則(特恵

関税の供与の対象とならないあらゆる商品にかかる原産地規則のこと)に関する特

定の措置が存在しない、などを障壁として指摘。

実際には中古バイクは輸入許

可が必要とされているもので、事

実上輸入はできない。部品は輸入

禁止。

関連 WTO 規定:

GATT11 条

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©JETRO 2004 3

関税障壁

関税評価については、US-タイの貿易投資枠組協定(TIFA)のもとでの議論によっ

て大幅に改善。ただし、透明性の面で問題あり。2000 年制定の WTO 関税評価協定の

実施法を 2003 年 7 月に WTO に通報したことなど。また関税局長が恣意的に課税価格

を操作することを制限する法案が国会未通過。これにより WTO 関税評価協定に反す

る実行がある。

関連 WTO 規定:

関税評価協定

SPS・TBT

保健省の食品薬品管理所がすべての食品・医薬品に要求する基準、テスト、ラベ

ル、許可証などは、手続面も含め貿易制限的であるとの米国企業の不満を紹介。な

お、GMO については日本の制度を参考に 2003 年 5 月に導入。技術認証については工

業省の工業規格研究所が所轄、現在 60 の産品に対して強制規格を設定している。

関連 WTO 規定:

SPS 協定、TBT 協定

政府調達

WTO 政府調達協定には未加入。政府調達について規定する政府調達政令等では、

無差別原則および公開入札を規定しているが、実際には各機関は独自の基準を採用

しており、国内業者(外資子会社含む)には調達の際に自動的に 15%の価格マージ

ンが与えられることがある。

2001 年に無差別原則の方針を転換して「バイ・タイ」規則を制定。特にパソコン

の調達について。公式にはバイ・タイ政策が外国業者に差別的であることを否定し

ているが、ある調達に関する政府の指導にはタイ以外を入札から除外することを明

記している。

輸出補助金

工業製品、農産品などに対して税控除などの形での輸出補助金制度が存在する。

2004 年末までに廃止することになっていた輸出信用制度(packing credit program)

は廃止。工業団地公社、および投資委員会(BOI)による輸出補助金については 1

年の延長が WTO で認められた。

関連 WTO 規定:

補助金協定

全体

立法の整備、および諸外国とのエンフォースメント面での協力にも拘らず、いま

だ模倣品の問題は大きい。1994 年 11 月以来スペシャル 301 条の監視国となってい

る。2003 年 6 月には TIFA のもと米は知財アクションプランをタイに提示している。

ポイントは①現在国会で審議中となっている光学ディスク法案の修正、および立法、

②エンフォースメントの改善、③著作権法改正法案の修正、および立法の 3点。

商業秘密法(2002.3)の公共の利益に関する条項は、当局に過剰な裁量を与える

ものとして関心。地理的表示法については 2003 年議会通過、04 年 4 月より発効。

エンフォースメントについては、2003 年秋に特別調査局(SID)設置法が国会を通

過。1997 年に知的財産・国際貿易中央裁判所を設置したが、当局が職権で刑事裁判

を開始するには人的資源が不足している。

知財

特許

1999 年 9 月に TRIPS に従い特許法を改正したが、人的資源が不足しているため、

十分な実施のためには 5 年以上かかるかもしれない。医薬品特許の侵害品の増加も

問題。

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著作権 1995 年 3 月に TRIPS・ベルヌ条約に従い著作権法が発効したが、逆コンパイルに

ついて、およびエンフォースメントの規定があいまい。

関連 WTO 規定:

TRIPS 協定、ベルヌ条約

商標 商標侵害の訴訟は時間・コストがかかる。侵害に対する罰則が不十分。

電気通信

1997 年憲法に規定されている国家電気通信委員会が政治対立のため未だ設置さ

れていない(同様に放送分野での国家放送委員会も未設置)。年央には 7人の委員が

上院で選定される見込みだが、設置までは新しいライセンスの発行や様々な問題点

などが処理できない。

WTO で 2006 年 1 月までに電気通信分野を開放することを約束しているが、規制改

革の遅れにより守られないと思われる。

電話公社(TOT)、通信公社(CAT)は電気通信産業開発マスタープランおよび 1999

年の民営化法に基づきそれぞれ 2002 年 7 月、2003 年 8 月に民営化が開始されたが、

完全な民営化には時間がかかる見込み。

2006 年 1 月までに電子通信分野を開放すると

するGATSでの約束履行に備えた国家電気通信委

員会の未設置を指摘。

また、2001 年から通信会社の外資出資比率上

限を49%から25%に引き下げる電気通信事業法が

施行された。現在再び 49%へ引き上げる法案が審

議されている。

関連 WTO 規定:

GATS 約束表

法律

現行法では外国人がタイで弁護士業務を実施することは禁止されており、タイ法

律事務所の持ち株比率も 49%を超えてはならない。ただし、米タイ修好通商関係条

約により、米国は後者の規制からは免除されている。

米タイ条約は近々失効予定。

関連 WTO 規定:

GATS2 条(最恵国待遇)

金融

1997 年の WTO での金融サービス交渉後、自由化が進んだ。外国人は取得から 10

年間、タイの銀行・金融機関の 100%の所有が認められた。ただし、10 年経過後は

持ち株比率が 49%以下になるまで外国人は増資できない。外国銀行は 3つまでしか

支店がもてない(バンコクには 1つ)。また、最低 1億 2500 万バーツを政府、国営

企業に投資するかタイの銀行に預けるかしなければならない。

保険業において外資出資比率及び外国人役員

比率が 25%以下に制限されている。外資出資比率

上限を 49%まで引き上げる法改正の動きはある

が、成立の見通しは立っていない。

建築

外国人が建設業に従事するのを禁止。また建設会社はタイで登記されなければな

らない。外国企業の入札率も制限されている。さらに、建築士免許取得はタイ国籍

を要件としている。

会計 CPA 取得にはタイ国籍が必要。外国人会計士はコンサルタント業のみ。

クーリエ 外国資本は、陸上運輸業では 49%までしか出資を認められていない。

ヘ ル ス ケ

ア 透明性に問題。医療サービスについて、タイは GATS で約束していない。

ただし、BOI の投資奨励事業に

は一部含まれる。

サービス

小売 直接に小売を扱う特定の法はないが、都市計画法、取引競争法により制限されて

いる。

小売業については、最低資本金 3 億バーツ未

満、あるいは各支店で 2000 万バーツ以下となる

場合に参入が規制され、また卸売業について最

低資本金 1 億バーツ未満の場合に規制されてい

る。

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©JETRO 2004 5

広告

外資比率が 49%に制限されているが、米国企業

には 100%の出資が認められている。この点につ

きタイはGATSにおいて最恵国待遇の免除登録を

行っている。

関連 WTO 規定:

GATS第2条の免除に関する附属

全体

外国人事業法により規定。米国民投資家の権利は通商条約、および租税条約によ

り保障されている。2002 年 10 月の省令により実施されている最低資本金要件も米

国民には課されていない。例外を規定する省令も策定中。

2000 年に外国人事業法が改正され、外国企業

の参入制限は 63 事業から 43 事業に縮減され、

また残りについても 9 業種を除き許可を受けれ

ば参入できるようになった。しかし、現タクシ

ン政権は外資制限の強化を選挙公約し、現在検

討中である。

関連 WTO 規定:

GATS第2条の免除に関する附属

投資規制

TRIM オートバイ、およびミルク製品へのローカルコンテンツ要求は 2000 年 1 月 1日、

および 2003 年 12 月までにそれぞれ廃止。

関連 WTO 規定:

TRIM 協定

電子商取引

電子取引法は 2002 年 4 月に発効したが、実施規則が未整備。コンピューター犯罪

法は 2003 年 9 月に内閣承認、その他電子資産譲渡法、データ保護法、国家情報イン

フラ法は策定中。すべてのプロバイダについて通信公社(CAT)とその従業員が一定

の株(32%、3%)を保有することになっていること、国際通信サービスが CAT に独

占されていることはこの市場の障害となっている。

その他

いくつかの政府系企業が保護されている。たとえば、政府医薬品機関は登録・許

可に関する要件を満たす必要がない。また、他国で使用されたジェネリック医薬品

は安全確認プログラムを実施することなく販売できる。

医薬品、レコード、ミルク、砂糖、石油、化学肥料など 20 産品・サービスに対し

て価格統制を行っており、価格決定も不透明。根拠となるデータも不適切な場合が

ある。

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©JETRO 2004 6

マレーシア

2004 年 USTR 外国貿易障壁報告書要約(pp.319-327) 2004 年版不公正貿易報告書(経済産業省通商

政策局編)要約(pp.128-132) 参考情報(ジェトロによる)

関税

平均実行関税率は 9.29%だが、関税品目のうち 6.8%については 16-20%、16.9%

は 20%を超えており、また自動車などには 100%を超える関税が課されている。ま

た、ほとんどの品目について、関税に加えて 10%の売上税が課される。関税・売上

税ともに輸出品に利用される原料・部品には課されない。また、関税品目のうち

17%については輸入ライセンスの取得が必要とされている。

全体として関税率は他の途上国と比較し

て低くなっているが、繊維製品(平均 17.6%)、

輸送機械(平均 25.4%)など高関税の分野が

ある。また電気機器、ガラスも最高 30%の高

関税。自動車は非譲許(実行税率 60~200%)。

また、2002 年 3 月 15 日に、非譲許品目であ

るものの、鉄鋼製品 199 品目の関税を 0~25%

から最大 50%に引き上げた。

自動車に対する

輸入制限

2004 年 1 月 1 日、自動車に対するローカルコンテンツ規制を廃止し、また自動

車・自動車部品に対する関税の削減を発表した。しかし、これと同時に物品税が

課されるようになり、関税引き下げの効果を無効化している。国内生産者である

Proton と Perodua のみ物品税について 50%の割引がある。自動車の税制の概要は

以下の通り。

自動車(CBU):70-200%、60-110%(前者が関税、後者が物品税、以下同じ)

多目的乗用車(CBU):4-130%、30-90%

多目的乗用車(CKD):0-20%、30-90%

4WD(CBU):40-130%、50-90%

4WD(CKD):10-20%、50-90%

自動二輪車(CBU):40-50%、10-50%

自動二輪車(CKD):5-30%、10-50%

政府は、AFTA のスケジュールに従って 2005 年に ASEAN 調達率 40%以上の産品

に対しては関税率引き下げを実施する予定だが、物品税率も改定されるかどうか

は未定。

政府が指定した国内メーカー(4 社)製造

の国民車とそれ以外の非国民車との間で物

品税の賦課につき差別的待遇がある。国内で

生産、組み立てられる自動車には 25~65%の

物品税が課されているが、国民車には 50%の

割引がある(2001 年度の WTO 貿易政策検討制

度(TPRM)でも指摘)。また部品の輸入でも

国民車用であれば関税が減免されている。

政府は 2003 年 12 月 31 日、完成車(CBU)、

ノックダウン車(CKD)の輸入関税の引き下

げ(CEPT20~110%、MFN 関税率 10~100%の引

き下げ)を発表し、翌年 1月 1 日から施行し

たが、新たに物品税が 30~100%課されること

になった。

関連 WTO 規定:

GATT3 条 2(内国民待遇)

GATT1 条 1(最恵国待遇)

コメ輸入政策 政府公社(Bernas)のみが輸入の取り扱いを認められており、輸入規制に大き

な権限をもっている。

関連 WTO 規定:

農業協定 4条

繊維 現行の関税率は 0-30%で、輸入ライセンス、ラベリング等の規制も課していない。

Page 7: Column - JETRO2 ©JETRO 2004 タ イ 2004年USTR外国貿易障壁報告書要約(pp.459-469) 2004年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政 策局編)要約(pp.126-128)

©JETRO 2004 7

関税法に基づく

輸入制限

マレーシアでは、1967 年関税法第 31 条に

基づく関税令、1977 年関税規則、1978 年輸

入管理令により①完全輸入禁止品目、②条件

付き輸入禁止品目、③国内産業保護のための

暫定的輸入制限品目、④品質管理のため関係

当局による証明を必要とする品目の 4つの分

類に従い輸入制限が課されている。

関連 WTO 規定:

GATT11 条

丸太の輸出規制

マレーシア半島部では、自国における木材

の加工度を高めることを目的として、1985 年

から小径木を除く全ての樹種の輸出を禁止

している。各州でも輸出が制限されている。

関連 WTO 規定:

GATT11 条、GATT20 条

栄養表示

2003 年 3 月に公示された栄養表示規則は、表示が必要とされる情報、パッケー

ジに表示する際のフォーマットなどを規定しているが、企業に移行期間を与える

ことなく 2003 年 9 月 1 日に発効した。ただし、この後厚生省は 2004 年 3 月 1 日

に実施時期を延期した。

ハラル認証

すべての牛肉製品、豚肉、卵・卵製品はハラル(イスラムの慣行に従って生産

されたという意)認証を Pusat Islam から受けなければならない。この認証制度

の不透明性、分かりにくい手続を指摘。この認証は現地調査後、農業省の家畜サ

ービス局と Pusat Islam の共同勧告に従って発行される。実際には現地調査が実

施されるまで 3年ほどかかっているので、認証に時間がかかる。

S

P

S

T

B

T

薬品登記

薬品登記には時間がかかり、3 年ほどかかるものもある。国家医薬品管理局は

2003 年初頭、インドネシアがマレーシア製医薬品を認可しないことに対抗して、

インドネシア製医薬品の販売を認可しないことを決定した。

関連 WTO 規定:

GATT11 条、TBT 協定

調

WTO 政府調達協定には未加入。政府調達は一般にブミプトラ政策の推進、地元企

業への技術移転など国策を支持するために実施されるため、外国企業は不利な待

遇を受ける。したがって、ほとんどの外資は地元企業をパートナーとして入札を

受けざるをえない。また決定の不透明性を指摘する声もある。

中央銀行が統括する輸出信用再融資スキームのもとでは、貸し手は輸出業者に

優遇的レートで融資を行う。また、海外広告、サンプルの輸出、海外支所の運営、

輸出市場の調査などについては、二重控除を行うなど税制面での優遇措置もある。

関連 WTO 規定:

補助金協定

財 全体

インターネット環境での著作権についても規定する WIPO 著作権条約、実演・レ

コード条約に未加入。

TRIPS 協定に整合するよう 2000 年に著作権法、特許法、商標法を修正、また集

積回路の回路配置および地理的表示に関する法律を策定した。しかし、TRIPS 協定

39 条 3 で要求されるデータの保護が与えられていない。

日本は 2002 年に WIPO 著作権条

約、実演・レコード条約とも加入。

関連 WTO 規定:

TRIPS 協定 39 条 3 項

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©JETRO 2004 8

光学メディアの

海賊版

海賊版の流通が重大な問題。CD/DVD の生産能力は国内需要、合法的な輸出量を

合わせたものを優に超える。これに対する対応策は徐々に強化され、改善されつ

つあるが、まだまだ改善の余地はある。例えば、政府が海賊版の要因はメディア

が高額であるためとして、CD/VCD の価格に上限を設定したことは、民間だけでな

く政府内でも知的財産権に対する理解が深まっていないことを示している。

なお、国際知的財産権協会によれば 2002 年の海賊版被害は 2 億 4000 万ドル。

2001 年 10 月以来スペシャル 301 条の監視国リストにも入っている。

医薬品 中国産と見られる特許侵害品が多く流入している。またインド産の未認可のジ

ェネリック医薬品も流通している。

商標

模倣品被害は多分野に渡る。マレーシア産だけでなく、中国、タイ、インドか

らも流入している。

エンフォースメントでは、地方政府レベルでの教育および情報の不足が実施を

困難にしている。また商標法の上級審の解釈では、模倣品がオリジナル産品と同

一でない場合、取締りを行う際に捜査官は取引表示命令(TDO)を入手しなければ

ならない、としており、エンフォースメントを困難にしている。

全体 WTO・サービス交渉のオファー未提出。

基本電気通信

WTO 基本電気通信議定書では限定的にのみ市場開放約束。参照文書も部分的に採

択。これにより、既存のライセンス取得企業の 30%までの株式取得による参入に対

してのみ無差別原則を保証している。また市場アクセスを国内に設備を有する業

者に限定している。これらの規制により政府系企業の Telekom Malaysia は優遇を

受けている。

マレーシアでは 1998 年 2 月に国内総合通

信業の外資比率上限を 30%から 49%に引き

上げ、4月には最初の 5年間は 61%、その後

49%にすると発表した。

訪問販売

訪問販売会社については地元企業に対する 30%以下の出資によるものしか認め

られていない。また当局はローカルコンテント目標を「推奨」している。さらに

連鎖販売取引企業のライセンス申請の際に地元企業は 65 万 7000 ドルの資本金で

よいが、外資が出資する企業は 130 万ドル必要。

法律

外国人が法律相談業務を行うことは認められておらず、外国法律事務所の支所

設置・名前の使用も認められていない。外国法律事務所は 30%以下の出資で地元事

務所との共同でのみ業務を行うことができる。マレーシア法に関わる業務もマレ

ーシア国民、一定の基準を満たした永住資格取得者のみだが、限定的にケースバ

イケースで認める場合もある。

建築 外資は、建築委員会の許可を経て共同出資という形でしか営業できない。外国

人は建築士になれない。

エンジニアリン

外国人の技師はプロジェクトベースでのみエンジニア委員会からライセンスを

得られる。また外国人技師を雇う地元企業は、マレーシア人技師を確保できない

ことを説明しなければならない場合がある。外国人技師は独立では営業できない。

Page 9: Column - JETRO2 ©JETRO 2004 タ イ 2004年USTR外国貿易障壁報告書要約(pp.459-469) 2004年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政 策局編)要約(pp.126-128)

©JETRO 2004 9

会計・税務

マレーシアで業務を取り扱う会計士は財務省の認可を受ける前にマレーシア会

計協会(MIA)に登録しなければならないが、登録はマレーシア市民、もしくはマ

レーシアの大学を卒業または英連邦諸国の 11の海外の会計士団体のうち 1つの会

員である永住資格取得者に対してのみ認められている。米国 CPA 協会は認可され

ていない。

銀行

金融政策は、1989 年の銀行および金融機関法、および 2001 年の金融マスタープ

ランに基づく。プランでは 2007 年までに外資への市場開放を開始することになっ

ている。現在マレーシアで業務を行っている外国銀行は祖父条項に基づくもので

あり、新たなライセンスの付与は行われていない。しかし、2003 年 9 月に中央銀

行はイスラム銀行のライセンスを 3 つ付与することを発表した。また、2003 年 4

月 1 日には、外資企業はマレーシアでの借入れの 50%をマレーシアの銀行から融資

を受けなければならないとの要件を廃止した。

金融マスタープランでは 2007 年までに既

進出の外国金融機関の支店開設許可、外国銀

行のフルバンキングライセンス賦与がなさ

れることになっている。

通商弘報2003年10月6日記事「イ

スラム銀行設立、外資へ開放」を

参照。

保険

金融マスタープランは段階的な市場の開放(外資比率の上限の引き上げ、再保

険産業の完全開放、専門家の雇用に関する制限の撤廃)を提唱している。

外資保険会社の支店は 1998 年 6 月 30 日までにマレーシア法に基づき法人化す

ることが要求されていたが、個別に延期が認められている。1997 年の WTO 金融サ

ービス合意のもとで、現在株式を保有する外国人による保険会社の株式取得を 51%

まで認めることを約束しているが、(既に株式を保有している)外資による 49%を

超える株式取得は、政府の認可が必要とされている。新規参入については地元企

業への資本参加しか認められておらず、30%を超えてはならない。ただし、この上

限については交渉中である。

関連 WTO 規定:

GATS 金融サービス合意

証券

外資に対して、証券会社については 49%の株式取得、投資信託会社については

30%が認められている。証券委員会が 2001 年 2 月に発表した資本市場 10 年マスタ

ープランは、2003 年までに外資参入規制を緩和することを提唱したが、2003 年 12

月現在規制に変化はない。

ファンドマネジメント会社は外国人にのみサービスを供給する場合は 100%外資

による出資が認められるが、マレーシア人にも供給するのであれば 70%までしか認

められない。また証券委員会は 2003 年 9 月から、マレーシアで事業を行っている

外資企業がクアラルンプール証券取引所への登録申請を認めることとした。

NTE とほぼ同じ。

広告

外国広告は 20%までしか認められていない。政府内には、広告は「外国のライフ

スタイルを促進する」ものであってはならないとする非公式、かつ不明瞭なガイ

ドラインが存在する。

オーディオ・ビ

ジュアル、放送

テレビ番組の 80%はマレー系現地企業によって製作されることが定められてい

る。しかし、実際には、各局は地元番組の不足のために、かなりの裁量が与えら

れている。

ラジオ番組では 60%が現地企業によって製作されなければならない。地上波への

外資参入は禁じられている。宗教的・性的規制のための監視が厳しい。

Page 10: Column - JETRO2 ©JETRO 2004 タ イ 2004年USTR外国貿易障壁報告書要約(pp.459-469) 2004年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政 策局編)要約(pp.126-128)

©JETRO 2004 10

投資を歓迎しているものの、個別の投資に対してはまだかなりの裁量を有して

いる。特に国内市場を狙った投資については、外資の資本参加を制限(通常 30%)

したり、現地企業との合弁を投資の要件としたりしている。ただし、金融危機の

影響を和らげるためにも、国内産業と競合のない製造業での外資規制は緩和され

ており、2003 年 6 月、製造業関連への新規投資および既存の投資の拡張について、

これまでも認めてきた 100%の外資参入を無期限に延長することとした。

また、外国人の雇用者数制限が問題。2003 年 6 月に政府は規制を緩和したが、

それでも資本金 200 万ドル以上の企業は 10人の雇用許可を自動的に受けるにとど

まる。

価格統制

国内取引・消費者行政省は 2003 年 7 月、すべての光学ディスクの小売価格に上

限を設定すると発表した。その後企業、米国政府などの反発を受けて、上限設定

は CD/VCD に限定することとした。また、実施時期も 2004 年 1 月 1 日から 4 月 1

日に延期された。(上述「知財・光学メディアの海賊版」参照。)

透明性 政府調達での透明性が大きな問題。ただし、2003 年 10 月にアブドラ首相が就任

した際に、よりオープンな調達を実施していくと発表している。

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フィリピン

2004 年 USTR 外国貿易障壁報告書要約(pp.378-392) 2004 年版不公正貿易報告書(経済産業省

通商政策局編)要約(pp.135-139) 参考情報(ジェトロによる)

関税

政府は 2003 年 1 月、関税政策を転換することを発表した。これを受けて関税委員会は

2004 年初めまでに、いくつかの分野での関税引き上げと関税引き下げを遅らせることを提

唱した。これまでの政策では、原材料は 2003 年 1 月までに 3%、完成品は 10%に、それ以外

の産品は 2004 年 1 月までに 5%にそれぞれ引き下げることになっていた。ただし引き上げ

後の税率は譲許税率内にとどまる。

大統領令 241、264 号(2003.10,12)によって 1000 品目以上の関税率が引き上げられた。

引き上げられた品目には、国内で生産されている産品(化学肥料、セメント、繊維製品、

原材料)などが含まれる。この命令により、これらの産品の関税率はこれまで 3-10%であ

ったのが、5-20%となった。この命令の効力は 2007 年まで。

自動車(最高 30%)、一部繊維製品(最

高 15%)、電気機器(最高 15%)等の高

関税品目が存在する。

2004年1月の関税率変更につい

ては通商弘報2004年1月6日号記

事「原材料や中間財の関税変更」

を参照。

自動車関税

政府は 2001 年 2001 年 4 月 17 日、自動車部品の関税率を 10%から 3%に引き下げる命令を

公布した。完成車の輸入関税率については、2004 年に 5%に引き下げる予定であったのが、

関税見直しに従って 2007 年まで 30%の関税率を維持することになった。CKD については、

2004 年に現行の 10%から 5%に引き下げられる予定。

セーフガー

2000 年 8 月 10 日に発効したセーフガード(SG)措置法は、申し立てられたセーフガー

ド措置に対して、外国産業がコメントする期間として 5 日間しか与えられていない。これ

は短すぎるとの米国政府の抗議を受けて、フィリピンは一定の条件のもとこの期間を 21

日まで延長できることとした。

2001 年 11 月にセメントに対する SG が発動されており、現在も有効。また、関税委員会

はフロートガラス・鏡用ガラスに対する SG の申立を現在検討中である。

フィリピンでは 98 年以降インドネシ

ア、日本、台湾等からのセメント輸入量

増加により国内企業の販売数量が低下し

た。これを受け 2001 年 5 月には国内企業

12 社が貿易産業省(DTI)に SG 発動申請

を行った。その後 11 月に関税委員会が調

査を開始し、DTI の決定により SG 確定措

置が 2003 年 6 月 25 日より発動された。

セメントは非譲許品目であるため関税引

き上げは問題ないが、同措置は中国、韓

国、ベトナム等多くの国を除外している

ため、最恵国待遇に反するおそれがある。

なお、日本企業が 2003 年 7 月 4 日付で最

高裁に差し止め請求を起こしている。

関連 WTO 規定:

GATT1 条 1 項、

セーフガード協定

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農産品関税、

輸入ライセ

ンス

自国のセンシティブな農産品に対して高関税を課している(穀類、畜産品、肉類、砂糖、

冷凍・加工ジャガイモ、タマネギ、コーヒー、かんきつ類<オレンジ・レモン・グレープフ

ルーツ>)。

2002 年に行政命令 83、84、91 号により、ほとんどの農産品関税を 2004 年までに引き下

げることが決定されたが、2003 年 1 月の行政命令 164 号によりこの決定は覆され、ほとん

どの産品につき 2002 年時点での関税率に据え置きとなった。いくつかの産品については関

税が引き上げられたものもあった(レタス・ブロッコリー、カリフラワーは 7%→20~25%)。

また、センシティブな農産品 15 品目については、ミニマムアクセス数量(MAV)と関税

割当が設けられている。特に米国の関心品目として、トウモロコシ(割当内関税 35%、割

当外 50%<2003/04>)、鳥肉(ただし、2003 年 7 月 1 日より関税割当内外とも税率は 40%に

なった)、豚肉(割当内 30%、割当外 40%<2004>)に割当が設けられている。特に肉類の割

当については、ほとんどの輸入ライセンスが輸入に関心を持たない国内生産者に割り当て

られていたため、米国は改善を要求、98 年に覚書(MOU)を締結した。これにより改善は

見られるものの、未だライセンスの発行に裁量が働く部分が見られ、WTO 協定に反するお

それがある。

水産品については、農務長官が必要であると認め、農務省が輸入許可を発行した場合に

のみ輸入が認められる。許可の基準の一つとして、輸入により同種、もしくは直接競合す

る産品を生産する国内生産者に、重大な損害、あるいは損害のおそれが存在するかどうか

が挙げられている。

関税割当品目の関税率について

は、農務省 HP

http://www.da.gov.ph/MAV/Tarif

fRate/TariffRate.html を参照。

関連 WTO 規定:

輸入許可手続に関する協定、

GATT11 条

蒸留酒への

物品税

輸入酒に対して極めて差別的な待遇を与えている。現地の原料(ココナッツやし、サト

ウキビ、根菜等)から作られた蒸留酒に対しては 8.96 ペソ/㍑の物品税が課されるのに対

し、その他の蒸留酒に対しては 84~336 ペソ/㍑(小売価格による)の物品税が課される。

輸入酒はほとんど後者に含まれる。ワインについてはアルコール度数 14%未満のものは

13.44 ペソ/㍑、14~25%のものは 26.88 ペソ/㍑、25%以上のものには上記の蒸留酒と同様

の物品税が課される。2002 年以来この税制を改正する法案が国会で審議されているが、今

のところ通過の見通しは立っていない。

関連 WTO 規定:

GATT3 条 2(内国民待遇)

自動車への

物品税

議会は 2003 年 8 月に、それまで排気量に従って課税した税制から価格による税制に変更

する法案を可決した。新制度のもとでの税率は以下の通り。

60 万ペソ以下の価格:2%

60 万ペソ以上 110 万ペソ以下:12000 ペソ+60 万ペソを超える部分×20%

110 万ペソ以上 210 万ペソ以下:112000 ペソ+110 万ペソを超える部分×40%

210 万ペソ以上:512000 ペソ+210 万ペソを超える部分×60%

この価格分類は 2年ごとに見直される。

関連 WTO 規定:

GATT3 条 2(内国民待遇)

数量制限

国家食糧庁はコメの輸入に数量制限を課している。ミニマムアクセス量は 2003 年

193,135 トンで、2004 年 224,005 トン。関税率は 50%。国内生産量の不足、人口増加のた

め、タイ、ベトナムなどからの密輸が急増している。

農務省は 2003 年に、それまで国家食糧庁が輸入権を独占していたのを民間業者にも開放

した。ただし、現在、輸入権を国内生産者に付与するという計画があり、問題がある。

関連 WTO 規定:

農業協定 4条

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その他輸入

規制

国家電気通信委員会は 1999 年 4 月 15 日以来、携帯電話の輸入に関して輸入許可の取得

を義務付けている。

税関障壁

これまで関税の算出基準として国内消費価格を使用していたが、共和国法 8181 号

(1996)、および共和国法 9135 号(2001)により、WTO 関税評価協定に従い基本的に取引

価格を使用するよう改定した。また関税評価への私企業の関与が排除された。しかし、関

税評価の際に、未だ国内私企業が関与している(特に輸入専門官チーム(Import Specialist

Team)の活動)ことが指摘されている。米国は二国間協議などの場でこの問題を取り上げ

ている。

共和国法 9135 号については、

http://www3.jetro.go.jp/iv/j/f

di/step04/asia/philippin/roumu

01.html 参照。

関連 WTO 規定:

関税評価協定

鉱工業品

化粧品等 75 品目について国内強制規格を遵守しているか調査をうけるよう義務付けら

れている。また、いくつかの繊維製品についてラベリングが義務付けられている。また、

1988 年のジェネリック医薬品法は、ジェネリック品促進のため、商品名の上にジェネリッ

ク医薬品の名前を記載するよう義務付けている。

S

P

S

T

B

T 農産品

農務省は 1995 年に、米国のりんご、グレープ、オレンジ、ジャガイモ、タマネギ、ニン

ニクを輸入する際の食品衛生規則を設定した。またフロリダのグレープフルーツ、オレン

ジ、タンジェリンの輸入は 2000 年 3 月の二国間の議定書で認められている。しかし農務省

は、畜産物検疫証明書(VQC)の発行手続、および検疫を鶏肉の輸入を制限するために利用

している。具体的には、米国産業から、VQC の発行に 1ヶ月ほどの遅れがある、VQC の発行

が MAV のライセンス保持者に限定されているなどの不満が挙がっており、WTO 協定に反す

るおそれがある。

農務省は 2002 年 9 月に、すべてのフィリピンに輸出する食肉製品、乳製品の工場に対し

て、第三者機関による危険分析重要管理点(HACCP)検査を 2003 年 4 月 1 日より導入する

ことを発表した。しかし 2003 年 2 月に、同措置の実施を無期限に延期した。同措置によれ

ば、第三者機関は、フィリピンへの輸出工場に対して、HACCP プログラムの国際基準への

遵守を確保するために、四半期ごとに検査を実施することになっていた。米国等はこの新

しい規制は SPS 協定に反するおそれが強いとして反対していた。

また、2003 年 12 月から、ペットフードの輸入業者を農務省の認可制とする規則案の公

聴会が開催される予定である。同規則案によれば、輸入者に対する認可は、輸入者負担の

生産工場実地調査後に発行されることになっている。これはすでに米国政府が実施してい

る検査と重複するものであり、科学的根拠がなく、米国は懸念を表明している。

関連 WTO 規定:

SPS 協定 2条、

同付属書 C

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©JETRO 2004 14

調

政府調達協定締約国ではないが、徐々に調達手続を改善しつつある。しかし、医薬品、

コメ、トウモロコシ、鉄鋼の調達に関しては、現地企業を優遇している。また、配水管、

電力網、電気通信などのインフラプロジェクトについては、契約者の 60%以上がフィリピ

ン企業であることが義務付けられている。

アロヨ大統領は 2003 年 1 月に政府調達改革法に署名した。同法では、透明性を確保する

ためのモニタリングを義務付け、また調達制度の一本化のための電子システムの構築など

が規定されている。しかし一方で同法は、利便性、時間的制約を考慮して調達機関が国内

産品を優遇することを可能にしている(コンサルティングサービス、インフラプロジェク

トについては例外)など、差別的待遇は残存する。

フィリピンは 1993 年に、カウンタートレード義務を 100 万ドル以上の政府調達に導入して

いる。米国政府は同制度の履行を注視していく必要がある。

カウンタートレード義務:政府調

達に付随して、国産品購入義務、

技術移転要求などを義務付けるこ

と。

全体

「投資優遇計画(IPP)」の対象事業に携わる企業は、投資委員会(BOI)に登録すること

ができ、4-6 年の法人税免除、雇用労働者の賃金の 50%相当の税控除などの優遇措置を受

けることができる。また開発途上区域に存する企業は、インフラ整備のための支出の 100%、

および追加的人件費の 100%までの税控除を受けることができる。

また、輸出発展法のもとでは、輸出比率 50%以上の企業は BOI、フィリピン経済区庁に登

録し、優遇措置を受けることができる。

投資優遇計画(IPP)については、

通商弘報 2004 年 3 月 25 日号記事

「奨励分野に社会サービス産業を

追加-2004 年の投資優先計画(I

PP)-」参照。 輸

自動車輸出

補助金

アロヨ大統領は自動車の現地生産、輸出の促進のため、2003 年 10 月に大統領令 156 号

に署名した。同令のもとでの輸出推進プログラムによれば、完成車をフィリピンから輸出

する業者は、1 台につき 400 ドルの補助を受け取ることができる。この補助は当該業者が

完成車を輸入する際に関税を引き下げるという形で供与される。具体的には、MFN 関税率

30%および 20%のものは 10%に、CEPT での関税率 5%は 1%に引き下げられる。このプログラ

ムによる補助は、1,2 年目は 400 ドル、3年目は 300 ドル、そして 5年目までに 100 ドルと

することになっている。

大統領令への署名は 2002 年 12

月。本文は下記 URL 参照。

http://www.dti.gov.ph/contentm

ent/7/8/files/bis_eo156.doc

関連 WTO 規定:

GATT3 条 2、

補助金協定

財全体

アロヨ大統領の知財制度強化の努力にも関わらず、知財権侵害、特に光学メディアの海

賊版は増加しており、フィリピンは 2003 年 4 月には 3年連続でスペシャル 301 条の優先監

視国となった。法の未整備、継続的なエンフォースメントの努力の欠如、司法救済措置の

欠如などの問題がある。

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知財法

1997 年の知財法が知財保護の法的枠組みを規定している。2000 年には電子商法が制定さ

れ、この枠組みをインターネットにまで拡大した。しかし、1997 年知財法には、放送、再

放送、ケーブル放送、衛星放送に対する著作権者の権利があいまい、ソフトウェア等の技

術のライセンシング契約に対する過剰な制限、司法が、侵害者に対する通知なしに、暫定

措置として海賊版を接収するよう命令する権限を持たない、などの問題があった。

知財法の不備を改善するために、フィリピンはいくつかの法を導入した。2001 年には集

積回路の回路配置に保護を与える法を制定した。2002 年 1 月には、最高裁が知財権侵害に

関わる民事裁判で職権により開始できる権限に関わる規則を制定した。2002 年 6 月には、

TRIPS 協定 27 条 3(b)に従って、植物品種の保護に関する法を制定した。ただし、同法につ

いては、米国の種苗業者から規定のあいまいさ(特に現地農家をライセンス義務から除外

する規定)につき不満が挙がっている。

また、アロヨ大統領は 2004 年 2 月 10 日、オプティカルメディア法に署名した。同法は

光学メディアの生産及び輸出入の規律を目的としている。同法の実効性を保つためには、

エンフォースメント措置の完全な実施が肝要である。なお 2003 年の二国間協議で米国はフ

ィリピンに光学メディアの海賊版に関する法を策定するよう要求していた。

オプティカルメディア法につい

ては、通商弘報 2004 年 2 月 23 日

記事「オプティカルメディア法が

成立」を参照。

関連 WTO 規定:

TRIPS 協定第 6 節(集積回路の

回路配置)、

TRIPS27 条 3(b)

エンフォー

スメント

米国は、フィリピンに一貫した、効果的なエンフォースメントが欠如していることに重

大な関心を持っている。2002 年のフィリピンでの著作権侵害による米国産業への被害は、

1億 2100 万ドルに上ると見られている。また、商標権の侵害も拡大している。

エンフォースメントの強化のためには、人材不足、侵害品押収後の措置、省庁間の協力

不足などの課題がある。特に最後の点については、知財法では知的財産庁(IPO)が知財権

の侵害、ライセンシングに関する紛争について管轄することとなっているが、他の省庁と

の協力体制が築けておらず、実効性はない。IPO の行政申立手続も機能していない。

ただし、政府はエンフォースメント強化のためいくつかの措置を実施している。2002 年

9 月の税関行政命令は、海賊版の輸入を禁止する関税局の権限を強化し、局内に知的財産

ユニットを設置した。さらに、関税局は 2003 年 6 月にビデオ規制事務局との間で結んだ覚

書の結果、何百万ドルに及ぶ海賊版の摘発が実施された。

フィリピンは 1995 年に 34 の知財に関する特別裁判所を設置していたが、実際には知財

以外の案件も取り扱っており、専門性に欠けていた。2003 年 6 月、最高裁はすべての知財

案件を新しく設置される特別商務裁判所に移行することを決定した。この裁判所は以前証

券取引委員会が扱っていた案件と知財案件を管轄するものであり、専門性が確保されるか

どうかは不明。さらに、知財権の侵害はそれほど重い罪であるとみなされていない。フィ

リピンでの知財権侵害に対する刑事訴追はほとんど成功しておらず、また罰金が少なすぎ

るという問題もある。

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基本電気通

フィリピン憲法は基本電気通信企業に対する外資の出資比率を 40%に制限している。WTO

の基本電気通信に関する参照文書との関連でフィリピンはいくつかの約束をしているが、

衛星サービスの市場アクセスおよび内国民待遇については約束していない。また、フィリ

ピンは GATS 第 4 議定書(基本電気通信に関する協定が含まれる)をまだ批准していない。

フィリピン長距離電話会社(PLDT)など主要電話会社は 2003 年 2 月、同じ日に同じ分だ

け外国通信事業者の着信接続料金の引き上げを行い、支払わない業者に対してはサービス

を停止した。これに対して米国連邦通信委員会(FCC)は反競争的であるとして、米国企業

に支払いをやめるよう命令した。2004 年 3 月までにすべてのフィリピン企業はサービスを

再開し、米国企業と合意に達した。この結果、FCC は支払停止命令を取り下げている。

NTE に同じ。

金融 GATS 第 5 議定書(金融サービス協定を含む)をまだ批准していない。

保険

実行上は 100%外資を認めているものの、GATS では新規投資については 51%までの資本参

加しか約束していない。また、現行法では、最低資本金規制が外資率とともに挙がる。原

則として政府の保険制度のみが政府の事業に対して保険を提供できる。さらに 1994 年の大

統領令は、この原則を BOT 方式の事業にも拡大しており、大きな障壁となっている。

銀行

1994 年の法律に基づき、10 の外資銀行に対して完全なサービスを提供する支店の開設、

また新規、もしくは既存の現地子会社の 60%までの保有が認められている。支店はそれぞ

れ 6つまで開設が認められる。また、1948 年以前からフィリピンで営業している 4つの外

資銀行に対しては、追加的な 6つの支店の開設が認められる。1997 年の WTO 金融サービス

合意では外資に対して 51%までの開放しか約束しておらず、また認可にあたって相互主義

が適用されることも留保している。

2000 年の一般銀行法では、7年以内であれば外資銀行による 100%までの所有を認めてい

る(以前は 60%まで)。しかし、最初の 3年間は既存の現地銀行に対してのみ投資が許され

る。現行の規則はフィリピン側が多数を占める現地銀行が常に全銀行の資産のうち 70%以

上を占めるよう義務付けられている。

銀行分野の外資規制は1994年5月の外

国銀行自由化法及び2000年5月の一般銀

行法により規定されている。外国銀行自

由化法で外資出資比率は 60%に制限さ

れ、支店での進出は同法成立後 5年以内、

合計 10 支店の設置が認められた。

2000 年一般銀行法については、

http://www3.jetro.go.jp/iv/j/f

di/step04/asia/philippin/roumu

04.html 参照。

証券その他

金融サービ

フィリピン証券取引所の会員はフィリピン法のもとで設立された外資企業にも開放され

ている。証券引受会社への外資比率は 60%までに限定されている。フィリピン法に基づき

設置されていない証券引受会社は、国内市場での引受は行えない。相互ファンドの外資比

率については現行法は規制を設けていないが、経営幹部がフィリピン国民に限定されてい

る。また、フィリピンは(GATS で)証券会社の外資資本参加について、相互主義に基づき

外資資本参加を認可するとして、MFN の免除を宣言している。

広告 フィリピン憲法は広告会社の外資比率を 30%に限定しており、また経営幹部もフィリピ

ン国民でなければならない、と規定している。

公益事業

フィリピン憲法は特定の事業(上下水道・送配電・電気通信・公共輸送)についてはす

くなくとも 60%をフィリピン国民が所有する企業に限定している。また企業の経営幹部は

フィリピン国民でなければならない。2001 年に成立した電力産業改革法は国営電力会社

(NPC)の送配電設備の民営化を規定している。

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自由職業サ

ービス

一般原則として、フィリピン憲法は免許を必要とする専門サービス(法律、医薬、看護、

会計、エンジニア、建築、通関など)をフィリピン国民に限定している。また共和国法 8182

号は外国の援助によるプロジェクトの実施の際に、フィリピン国民の専門家を優先するよ

う規定している。ただし、1998 年 2 月の共和国法 8555 号は大統領にこの要件を免除する

権限を与えている。

海運

海事産業庁(MIA)は外国籍船が国内運送サービスを供与することを禁止している。また、

国内法により、フィリピン籍船は、予備員を除きフィリピン人船員により運行されること

が義務付けられている。

クーリエ

外資クーリエ企業の参入には、100%フィリピン企業と契約するか、もしくは 60%以上フ

ィリピン資本の国内企業を設立することが義務付けられている。米国企業は現在部分的な

オープンスカイ条項によりハブ業務を実施しているが、米国政府は 2003 年に、フィリピン

政府と完全なオープンスカイ協定(第 7 の自由:本国を経由することなくその他の二国間

での空輸をみとめるもの、を含む)を締結するよう交渉した。2003 年 7 月に行われた交渉

で、フィリピンは第 7 の自由は違憲であると主張したが、アロヨ大統領は 2003 年 12 月 3

日、クラーク・スービック特別経済区の 2 つの国際空港につき、貨物オープンスカイ(第

7の自由含む)を認める大統領令に署名した。

建設

建設については外国投資法のネガティ

ブ・リストに記載されていないため、

100%外資が認められることになってい

る。しかし、実際には建設業者許可法

(Constructors License Law)により当

局から建設許可証を入手しなければなら

ず、外資出資比率 40%を超える企業につ

いては個別企業ごとにのみ有効な許可証

しか与えられない。このため、実際には

100%外資での参入は困難であるのが現

状。

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資全体

1991 年外国投資法は、外国投資が規制される分野につき 2つのネガティブ・リストを設

けている。最近では 2002 年 10 月 22 日にリストは改定されており、2004 年にも見直しが

行われる予定である。リストの概要は以下の通り。

リスト A(憲法等により規制されているもの)

- 外資禁止: 自由職業サービス(上記「自由職業サービス」参照)

・小売業(払込資本 250 万ドル以下、および高級品については 25 万ドル以下)

・マスメディア・小規模鉱業・民間警備サービス・闘鶏・海洋資源の利用・爆竹、花火

製造

- 25%まで: 人材派遣サービス

・公共事業建設・修理(BOT 方式、および外国の援助によるプロジェクト除く)

- 30%まで:広告

- 40%まで:自然資源採掘(ただし、大統領の許可により 100%まで認められる)

・教育サービス・公共設備・商業目的の深海漁業・政府調達契約、

・コメ・トウモロコシの加工(30 年の操業の後 100%外資が認められる)

(また、外資 40%までの企業は私有地の保有も認められる)

- 60%まで:証券引受含む金融・投資サービス

- 100%外資可:小売業(払込資本 250 万ドル以上で店舗建設への投資が 83 万ドル以上、

および高級品については 1店舗辺りの払込資本が 25 万ドル以上)

リスト B(安全保障、健康の保護、安全、道徳上の理由などによる制限)

・爆発物、武器、マッサージ業、ギャンブルなどは 40%に制限。

・中小企業保護のため、20 万ドル以下の資本金で国内市場向けのみの企業は 40%に制限。

- A,B 以外にもフィリピンは投資委員会(BOI)の計画に従い優先産業については 40%の

外資出資制限を課している。

- 外国人の土地所有は憲法で禁じられており、1994 年の投資家リース法により最大 75

年(50 年+25 年の延長)までの土地のリースが認められている。

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TRIM

自動車開発計画に基づき BOI が課していたローカルコンテンツ要求(LCR)は、2003 年 7

月に撤廃された。また為替規制については 1999 年 10 月に 5 年間の延長が認められていた

が、米国との交渉により、2001 年 11 月に同規制を 2003 年 7 月までに撤廃することで合意

し、上記 LCR とともに撤廃された。

この他に、1987 年の大統領令では、石鹸・洗剤の生産につき環境に損害を与えない原料

(これは実際にはフィリピン産のココナッツベースの界面活性剤に限定される)を 60%以

上利用することを義務付け、またそうした原料を 60%以上利用していない石鹸・洗剤の輸

入を禁じている。ただし、1999 年にフィリピン司法省は同措置が WTO・TRIM 協定に反する

と決定し、それ以降同令は、実施されていない。

また BOI による優遇措置の供与について規定する規則は、フィリピン企業(50%)より外

資企業(70%)により高い輸出パフォーマンス要求を課している。1987 年の大統領令は医

薬品企業に対して、輸入品が 20%以上安くない限り、半合成抗生物質は特定の現地企業か

ら購入することを義務付けている。また、ASEAN 産業協力スキーム(AICO)のもとで起業

の認可を申請する企業については、不文律の輸出入均衡要求があるように思われる。

廃止したのは、2002 年 1 月 22 日付け

Memorandum Order 51(MO 51)および MO73

(2002 年 9 月 12 日)による。03 年 7 月

1 日より発効。

関連 WTO 規定:

WTO・TRIM 協定および WTO 協定

の直接適用

TRIM と小売

取引

2000 年 2 月にフィリピン議会を通過した法案は、法制定後 10 年間は外資小売業者に少

なくとも仕入れの価格ベースで 30%(250 万ドル以上の資本金を有する企業、高級品専門企

業は 10%)を現地で確保するよう義務付けている。さらに小売取引法では、相互主義も謳

われている。

1987 年憲法は独占を規制・禁止する権限を政府に与え、不公正競争を禁止しているが、

フィリピンにはまだ包括的な競争法は存在しない。個別の法で競争に関連する規定はある

が、実効性を持たない。

2000年6月に署名された電子商法はインターネットなど電子上での取引に文書同様の効力

を認めた。また電子商取引には課税されない。プロバイダは基本的に不法行為を働くか他

の当事者が不法行為を働くよう仕向けた場合を除き、刑事責任を負わない。また同法によ

りハッキング、海賊行為などに罰則が設けられた。ただし、同法は相互主義の留保を課し

ている。

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インドネシア

2004 年 USTR 外国貿易障壁報告書要約(pp.227-237)

2004 年版不公正貿易報告書(経済産

業 省 通 商 政 策 局 編 ) 要 約

(pp.135-139)

参考情報(ジェトロによる)

関税

2003 年 1 月までに 70%の品目について 0~5%の関税率となっている。また、平均関税率は 7.3%ま

で下がっている(1994 年は 20%)。

2001 年 1 月 11 日には 1279 品目につき関税引き下げを行い、翌年 1月 1 日より AFTA の関税引き下

げも実施した。2004 年 1 月には新しい関税引き下げパッケージを発表した。新しい関税表は非 ASEAN

関税と ASEAN 関税とに分類されており、前者は自動車、アルコール等センシティブ品目以外は 0、5、

10%のいずれかの税率を課され、ASEAN についてはすべての品目について 0、2.5、5%のいずれかの

税率が課されている。

ウルグアイ・ラウンドの譲許約束では、譲許率 94.6%を達成し、ほとんどの品目についての譲許税

率は 40%である。ただし、自動車、鉄・鉄鋼、および化学品の一部は 40%以上の譲許税率か、譲許さ

れていない。譲許品目については、2005 年までに輸入課徴金を撤廃することを WTO で約束しており、

実際に 1996 年末までに撤廃した。農産品については、WTO 農業協定に従い非関税障壁を関税に置き

換え、1341 品目につき 40%かそれ以上の税率を譲許した。ただ、現在のドーハ・ラウンドでは、コ

メ・砂糖・大豆・トウモロコシを特定品目として関税削減対象から除外することを主張している。

乳製品に関するローカルコンテンツ規制は 1998 年 2 月 1 日に廃止された。

国内農業団体からの圧力にも関わらず、インドネシア政府は農業保護政策を採用していない。農

務省は関税引き上げを提案しているが、政府は拒否している。

全体的に関税水準は高い。完成車

は 93 年に輸入解禁され、その後関税

も引き下げられてきたが、依然最高

80%と高い水準。なお、インドネシ

アは APEC の個別行動計画(IAP)に

よりいくつかの留保を付した上で関

税削減のスケジュールを発表してい

る。

非関税障

政府は、2000 年 9 月に農務省畜産総局により導入された鶏肉部分肉の禁輸を維持している。米国

は、米国企業はハラル認証の要件に従っており、措置を撤回するよう要請しているが、インドネシ

アはハラル(イスラム的慣行に従った生産)を確保するために必要な措置であると主張している。

同措置による損害は約 1000 万ドルと見積もられている。

また牛肉・鶏肉については、輸入者推薦状(Surat Rekomendasi Importir)を要求することによ

り事実上の輸入制限を課している。推薦状の認可に際してインドネシア政府は輸入許可数量を任意

に変更することができ、事実上の数量制限として機能している。同措置による損害は 1000~2500 万

ドルと見積もられている。

米国政府は、インドネシア税関当局が食品の関税評価にあたって、実際の取引価格ではなく恣意

的な「チェック・プライス」を利用しているとの報告を受けている。インドネシア政府はこれは過

小報告による脱税防止のためであるとしているが、計算方法を公表しておらず、結果として関税は

5%であるにもかかわらず実行税率はもっと高い可能性がある。

ワイン・スピリッツについては、170%の関税、10%の VAT、35%の奢侈税に加え、輸入者を 3社(国

有企業 1社含む)に限定している。

関連 WTO 規定:

GATT11 条、

農業協定 4条、

関税評価協定、

GATT3 条 2

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輸入ライ

センス

現在酒類、潤滑油、爆発物等 141 品目につき輸入許可制度を実施(90 年は 1112 品目)。商工省は

2002 年 3 月、特定の産品(とうもろこし、コメ、大豆、砂糖、繊維製品、靴、電機製品、玩具)の

輸入者に対して特別な輸入者 ID カードの申請を要求する特別輸入業者証番号制度(NPIK)を導入し

た。ただし、同措置に関する不満は今のところ聞こえてこない。

また商工省は 2002 年 10 月 23 日、繊維輸入取極に関する規則を公布した。これによれば、完成品

のために輸入織物を使用する工場を持つ企業のみが、輸入ライセンスを取得することができる。イ

ンドネシアは同措置は密輸の防止のためとしているが、米国は同措置がさまざまな WTO 諸協定上の

義務に反していることを憂慮しており、撤廃を要求する。

NPIK について左に同じ、ただし、

とうもろこし(corn)でなく小麦を

対象産品としている。

また、2002 年 11 月までに鋼材に

ついて輸入許可制度、船積み前検査

が導入された。

関連 WTO 規定:

GATT11 条、

輸入許可手続きに関する協定

丸太・製

材等の輸

出規制

インドネシア政府は 1998 年 4 月、

IMF 合意に基づき丸太、製材への輸

出税を従量税から従価税に改め、99

年 12月までに 15%まで引き下げた。

ただし、この改定と同時に、丸太、

製材等の輸出総量を設定した。更に

2001 年 10 月 8 日には違法伐採対策

として丸太輸出を一時停止した。

関連 WTO 規定:

GATT11 条、

GATT20 条

S

P

S

T

B

T

政府は 2000 年 7 月、1998 年消費者保護法の実施措置として輸入食品の登録を義務付けることを開

始した。同措置によれば、輸入者は医薬品・食品管理局(BPOM)に登録番号を申請しなければなら

ない。しかし、輸入者らの苦情により BPOM はより手続を簡素化した改正案を提示したが、大統領府

で止まっている。

米国の生産者には、過度に詳細な食品の成分・加工工程に関する情報を提示しなければならず、

営業秘密漏洩の恐れから輸出を停止したものもいる。もっとも、同措置はそれほど徹底して実施さ

れているわけではない。

食品ラベル法では、全ての消費産品につきインドネシア語のみでラベルを表示しなければならな

い。ただし、2003 年 12 月現在同要件に関する実施規則は公布されておらず、実際には実施されてい

ない。2001 年 1 月、遺伝子組換え成分、もしくは放射性成分を含む食品には表示ラベルを義務付け

る規則が導入された。ただし、基準値を設定していないため実施はされていない。同措置による米

国大豆産業への影響は 4億 1100 万ドルと見積もられている。

調

WTO 政府調達協定には未加入。インドネシアの政府調達制度は多岐にわたるが、最も重要なものは

2000 年 2 月の大統領令で、1994 年の政府調達法を改正したもの。同令では調達手続を簡素化し、透

明性を高めているが、同時に国内業者への特恵待遇も与えている。また、建築法 14/1999 は、民間

エンジニアサービス、および関連するコンサルティング業務について規定している。

一定の額を超えた事業を落札した外資企業は、特定のインドネシア産品の一定額を購入・輸出す

るよう要請されている。また、政府機関は、外国の援助による事業を除き、できるだけ国内産品・

サービスを利用するよう求められている。

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政府は、インドネシア輸出銀行を通じて、農業、中小企業に対して補助付きローンを供与する制

度を維持している。

全体

エンフォースメントの問題により 2003 年もスペシャル 301 条の優先監視国となった。2001,2002

年のスペシャル 301 条年次報告書はインドネシアの知財権に関する様々な問題を指摘しており、こ

れらの問題は外資企業が投資を控える一因ともなっている。

警察の問題、知財法に精通していない検察・裁判官、社会における知財の重要性の認識不足、腐

敗などの問題は、侵害者の訴追を困難にしている。2001 年より商業裁判所で知財訴訟が扱われ始め

たが、その年に米国ソフトウェア企業が海賊版ソフトウェアを内蔵したコンピューターを販売して

いた業者に対して、民事で勝訴したことは画期的な案件であった。2年間で商業裁判所は 150 件以上

の案件を処理している。しかし、予測不可能性、非効率性などの問題点が米国企業より指摘されて

いる。

WIPO 加盟国として、パリ条約、ベルヌ条約(33 条留保)、WIPO 著作権条約、PCT、商標法条約、ニ

ース協定、ストラスブール協定に加入している。

著作権

新著作権法は議会通過 1年後の 2003 年 7 月に発効した。同法は、光学ディスクに関する規則を発

布する権限の付与、海賊版エンドユーザーへの刑事罰、海賊版に関する民事訴訟を開始する権利の

付与等が規定されている。光学ディスク規則は現在法務省を通過して商工省にて検討中。

エンフォースメントは定期的に実施されているものの、均一性に欠ける。海賊版は広く流通して

おり、特に DVD、VCD が問題。米国産業は 2002 年の著作権侵害による被害を 2億 5000 万ドル以上と

見積もっている。

特許

2001 年 8 月 1 日に、それまでの 3つの特許に関する法規を統合して特許法を制定した。同法によ

り、知財の民事訴訟については地方裁判所でなく商業裁判所が管轄権を持つことになった。また、

特許侵害の罰金の上限が 5億ルピア(6万ドル)に引き上げられた。しかし、エンフォースメントに

問題がある。

同法の制定にも関わらず、発明者は、ある産品もしくは生産の工程について特許を申請する際、

インドネシア国内で当該産品を生産、もしくは生産工程を利用していなければならないという要件

は残されており、問題。また公共の利益に反する発明を特許の対象から除外する要件が、TRIPS 協定

より広い。

関連 WTO 規定:

TRIPS 協定 27 条 2

商標

2001 年 8 月 1 日に商標法を制定した。同法により罰金の上限は 10 億ルピア(12 万ドル)に引き

上げられ、その代わり懲役刑の上限が短縮された。外国の権利者は、侵害に対する罰則の上限の設

定より下限の設定を要求している。

同法は使用主義ではなく登録主義を採用。また、著名商標の保護も規定しているが、保護を供与

するための手続が規定されていない。また、商標権担当官がすべての商標の修正についての登録を

義務付けていることは、パリ条約に反する恐れがある。

関連 WTO 規定:

パリ条約

(TRIPS 協定 2 条)

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全体

2000年7月20日の大統領令96号、

8月 16 日 118 号により、外資参入規

制業種ネガティブ・リストが改訂さ

れ、大規模小売業、大規模流通業な

どが規制対象から外された。また出

資率95%以下に限定されているもの

の、医療サービス等も開放された。

法律

外国法律事務所は直接に営業できず、現地事務所との提携が必要。また弁護士業務を行うために

は、インドネシア国民であること、インドネシアもしくは所定の機関の法学位の取得が要件とされ

ている。外国人弁護士は法務・人権省からの認可を得た後、リーガル・コンサルタントとしてのみ

業務を実施できる。

流通

1998-99 年に IMF との合意に基づき小売サービスの一部を自由化した。政府はセメント、紙、合板、

香辛料についての制限的市場調整措置を撤廃した。また、卸売、小売サービスを外資に開放してい

るが、現地小企業との提携協定を結ぶという条件付き。ただし、映画産業は 1992 年映画法により制

限されている。

2001 年 10 月の石油ガス法により川下部門は開放された。また、大統領令 86/2002、および政令

67/2002 により、独立の機関、石油ガス川下ビジネス規制委員会(BPH Migas)が設置された。主な

任務は石油の供給・流通の規制、備蓄、輸送・保管のための要件の制定、天然ガスのパイプライン

使用料の設定、小売価格の設定、流通の規制など。

NTE と同旨。

金融、会

計、銀行

WTO 金融サービス合意のもとで、インドネシアは銀行以外の金融サービスについては 100%外資を

認めることを約束している。1998 年に支店の設置に関する制限は撤廃されている。

インドネシア銀行再建庁(IBRA)は、2002 年には Bank Niaga および Bank Central Asia、2003 年に

は Bank Danamon および Bank International Indonesia の政府保有株をそれぞれ売却した。購入の

多くは外資によるもの。また 2003 年には Bank Mandiri の 20%、BRI の 40%についても IPO に成功し

ている。

外資系総合ファイナンス企業に対する払込資本要件は国内企業の 2 倍となっている。銀行につい

ては、1998 年 11 月、1992 年銀行法が改正され、100%外資が認められることとなった。

会計

外国会計事務所は自身の名称では営業できない(ただし、"in association with"といった形なら

OK)。外国会計事務所は現地事務所への技術援助提携を通してのみ営業できる。また、会計士免許の

取得にはインドネシア国民でなければならない。

証券 政府は 1998 年、WTO 金融サービス合意に基づき証券会社の外資出資率制限を撤廃した。

オーディ

オ・ビジ

ュアル

外国の映画・ビデオ配給会社が支店を開設することを禁じている。映画法では現地企業にのみ輸

入、配給が認められている。米国の映画は、欧米映画輸入協会(AIFEA)のみが輸入・配給できる。

また、関税、ライセンス手続等も輸入障壁となっている。

NTE に同じ。

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建築、エ

ンジニア

外資企業は、政府が現地企業ではできないと認めた分野についてのみ、現地企業の下請け、もし

くはアドバイザーとしてのみ参入できる。また、政府の事業については、外資企業は参入のために

は現地企業との合弁事業でなければならない。

電気通信

2000 年電気通信法(法 36 号)は独占の廃止、基本電気通信サービスの外資への開放を規定してい

る。同法は、インドネシアが WTO 基本電気通信合意(外資出資制限の 35%までの開放)、および WTO 基

本電気通信参照文書で約束している以上の開放をうたっている。

2002 年に同法の実施規則が発布され、PT テレコムの国内長距離通話および地方固定回線への独占

権を廃止、インドサット社(PT.Indosat)および Satelindo の国際通話サービスへの独占権を廃止

した。また、2003 年 7 月に透明性の確保、および紛争処理のために電子通信規制機関が設置された。

2000年改正電気通信法により通信

分野での独占の廃止が決定された。

その後2003年8月にはインドサット

社が独占していた国際通信業務へテ

レコム社の参入が認められている。

世界経済フォーラムの 2003 年の競争力ランキングで 102 か国中 97 位であり、投資環境は貧しい。

FDI は金融危機以来急減している。2003 年の政府の投資許可額は 146 億ドルに達しているが、3分の

1はタンザニア、モーリシャスの投資家が二国間租税条約での優遇措置を利用して国営企業の民営化

に参画したもの。

2001 年 1 月 1 日より実施されている地方分権化は、権限の所在を不明確にし、投資の不確実性を

高めている。多くの分野で、地方政府は法に反するにも関わらず地方利用者負担金(retribusi)を

課している。

政府は現在新しい投資法を策定中(2004 年制定見込み)だが、これにより一定の分野についてし

か許認可権限をもっていない投資調整庁(BKPM)が、すべての分野に責任を持つことになっている。

また、特定の分野については、ネガティブ・リストを発行して外資を制限している。直近は 2000 年

8 月の大統領令 96 号によるネガティブ・リスト。

電子商取引は、プロバイダの普及にも関わらず、政策の不透明性、PT.テレコムによる固定回線の

独占、パソコン普及率の低さ、知財権の保護水準の低さなどの要因により阻害されている。また、

電子サイバー法を長年検討中。その必要性は 2001 年 10 月に裁判所によっても指摘されている(競

争相手のドメインを不正取得した被告人を無罪として)。また、クレジットカード詐欺も深刻な問題

となっている。

自動車政

政府は 1999 年 6 月 24 日、国民車政策の変更を発表し、税などによる優遇措置を撤廃した。また、

関税の引き下げも実施されたが、60%の高関税、75%の奢侈税、高速道路への二輪車乗り入れ禁止に

ついて、米国企業は参入障壁と指摘している。政府は 2000 年 12 月に奢侈税を改定し、4000cc のセ

ダン、4×4 のジープ・バンへの税率は 50%から 75%への引き上げ、1500cc から 3000cc の自動車は 15%

から 20%に引き上げられた。

関連 WTO 規定:

GATT2 条、3条 2

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©JETRO 2004 25

シンガポール

2004 年 USTR 外国貿易障壁報告書要約(pp.418-425) 参考情報(ジェトロによる)

関税

ビール、アルコール飲料の一部を除き、関税を課していない。またこれらの例外品目も米星 FTA をはじめ FTA では撤廃されてい

る。しかし、社会的・環境的理由により、蒸留酒・ワイン、タバコ、自動車、ガソリンに対して高い物品税を課している。

シンガポールのウルグアイ・ラウンドでの譲許率は 70.5%である。米星 FTA では 100%。

シンガポールは繊維に対して関税その他輸入・輸出規制を課していない。

シンガポールは情報技術合意(ITA)の加入国。

すべての輸入品(再輸出向け含む)は、物品・サービス税(GST)のもと、関税局長が免除を認定したものを除き、5%(2004 年

1 月 1 日より)の課税対象となる。自由貿易地域(FTZ)の産品には GST は課されない。

日星 FTA ではビールの関税が

撤廃され、その効果として、日本

からのビールの輸入が増えた。

物品・サービス税については、

通商弘報 2004 年 1 月 14 日記事

「物品・サービス税を5%に引き

上げ」を参照。

輸入ライセ

ンス

すべての産品は輸入ライセンスを必要とするが、これはほとんど統計に利用するためのものである。特別な輸入ライセンスを必

要とするのは、戦略品、有害化学品、映画・ビデオ、武器・弾薬、バイオテクノロジーによる農産品、医薬品、化粧品などである。

また、米星 FTA のもとでは、一定の要件のもと医療目的でのチューインガムの輸入も認められている。

SPS

TBT

2002 年の消費者保護(安全基準)規則の下で、家電・ガス製品は規制対象となっており、シンガポール政府および認証機関(SPRING

シンガポール)による認証マークが義務付けられている。SPRING シンガポールは相互取極めにより、国外の特定の試験所、認証機

関によるテスト報告を認めている。また、ラベリングが輸入食品・医薬品・酒類・ペンキ・溶剤に対して義務付けられている。

調

政府調達は一般的に開放されている。しかし、政府は否定しているものの、米国企業は政府系企業が優先されていると主張して

いる。シンガポールは 1997 年以来政府調達協定の加入国であり、また米星 FTA でも追加的義務が課されている。

関連規定:

政府調達協定 3条

米星 FTA

外資導入のため、特に輸出産業、新しいサービス産業に優遇措置を与えているが、基本的に輸出補助金を与えていない。

全体

90 年代後半から知財問題は改善されつつあり、2001 年にはスペシャル 301 条の監視国から除外された。しかし、海賊版の光学

ディスクの流通、ライセンスのないソフトウェアの利用などの問題が残っている。米星 FTA はこの点を鑑みて米国民の知財権を強

化している。

関連規定:

米星 FTA

エンフォー

スメント

海賊版の生産、露骨な海賊版の販売は急減しているが(現在の動画・音楽の海賊版の割合は約 20%)、海賊版は未だに流通してい

る。シンガポール警察の知的財産権部(IPRB)はこの問題に取り組んでいるが、侵害者の流動性が問題である。ソフトウェアの海

賊版の割合はアジアでは最も低いものの、米国の 2倍。これはソフトウェアについて刑事罰がないことも一因である。この点につ

き、米星 FTA に基づきシンガポールは法を改定中である。また、シンガポールは「自助」政策に基づき知財権侵害に対して他の犯

罪と異なる扱いをしている。米星 FTA では自助政策を変更することが義務付けられている。

この 2年の間に、多くの現地教育機関が出版社に著作権使用料を支払うことに合意し、長年の問題を解決したように思われる。

しかし、未だにいくつかのコピーセンターは書籍全てをコピーすることも行っている。取締りは多少行われているが、裁判所が、

おとり購入は知財権者が海賊版を容認したことを意味すると判断し、おとり購入に基づく案件を棄却していることにより、実効性

は限定されている。また、捜査状に明確に記載されていない場合、執行機関は侵害品を押収しない、と出版者は主張している。た

だし、この問題については、当局は一定の要件に基づき押収の用意はあるとしている。

関連規定:

米星 FTA

Page 26: Column - JETRO2 ©JETRO 2004 タ イ 2004年USTR外国貿易障壁報告書要約(pp.459-469) 2004年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政 策局編)要約(pp.126-128)

©JETRO 2004 26

中継貿易

シンガポールの港に入る貨物の 80%は中継貿易であるが、これらの貨物の中身・目的地の情報を把握していない。これによりエ

ンフォースメントが困難になっている。また、経由のみの貨物を押収できるかシンガポール法では不明確である。シンガポールは

米星 FTA に基づき、2003 年 11 月に FTA 締約国の関税当局と情報共有することを定めた法を通過させている。

関連規定:

米星 FTA、

その他 FTA

インターネ

ット

米星 FTA で、2004 年 7 月 1 日までに、デジタル作品により保護を与える法的枠組みを強化し、インターネットから知財権侵害品

を削除する要件・手続を修正することを約束している。また、WIPO 著作権条約か実演・レコード条約を 2004 年 12 月 31 日までに

署名・批准することも約束している。

関連規定:

米星 FTA

基本電気通

2000 年 4 月 1 日に電気通信分野への外資参入規制をすべて撤廃した。しかし、75%国営のシンガポールテレコム(SingTel)は、

ブロードバンド市場で、他の業者の地域回線のリースに対して反競争的な使用料を課している。米星 FTA では、使用料を合理的な

ものにすることを約束しており、2003 年 12 月には使用料に関する規則が公布されている。しかし、同規則については、情報通信

技術省への申立が係争中であり、履行はその解決後となる。

関連規定:

米星 FTA

オ ー デ ィ

オ・ビジュ

アル/メデ

ィア

ローカル無料放送、ケーブル放送、新聞は事実上国内企業に限定されている。放送事業法 47 条は、国内向け放送企業には 49%

の外資出資制限を課している(ただし、メディア開発局(MDA、2003 年 1 月 1 日より設置)に同要件の例外を認める権限を与えて

いる)。また同法第 10 部は、いかなる個人も、事前の承認なしに、5%以上の放送企業株を取得してはならない、としている(2002

年央までは 3%)。実際にはローカルラジオ・テレビ放送局はすべて政府系である。また、現在新聞・放送ライセンスをもっている

のは Singapore Press Holding(SPH)と Media Corp のみである。有料テレビ放送の Singapore Cable Vision による独占は、2002

年 6 月 20 日に廃止されたが、2003 年央に開かれたライセンス入札では入札者はいなかった。

新聞等出版物事業法は、株式の保有を国内、外資問わず 5%に限定しており、また新聞社の経営陣をシンガポール人に限定してい

る。また、同法で「新聞」はかなり広く定義されている。新聞社は一般・経営の 2つのクラスの株式を発行することが義務付けら

れており、後者は政府が認定したシンガポール国民・企業に対してのみ発行される。また後者の株式保有者のみ総会決定での投票

権を持つ。

新聞・雑誌・映画・テレビ等の輸入、生産、配給、放映には MDA によるライセンスが必要であり、その付与は条件付きであり、

また裁量が大きい。さらに政府は警告または理由なしにライセンスを取り消すことができる。外国のニュース出版物の中には発行

部数制限を課されているものもある。

法律

外国法律事務所は、シンガポール法について弁護業務、訴訟などはできず、またシンガポール人弁護士を雇用することも認めら

れていない。ただし、現地事務所との Joint Law Venture(JLV)、Formal Law Alliance(FLA)を通じての業務は、ガイドラインに

従うことを条件として認められる。米星 FTA によりこれらの要件は米国法律事務所については緩和された。また、これまで豪州・

NZ・英国の一部の大学の学位しか認められていなかったが、米星 FTA により米国の 4つのロースクールの学位も認められることに

なっている。

関連規定:

米星 FTA

エ ン ジ ニ

ア・建築

エンジニア・建築企業は 100%外資が可能であるが、社長、および経営陣の 3分の 2は現地の専門機関に登録されたエンジニア、

建築家等でなければならない。米星 FTA により、米国企業への要件は緩和されている。

関連規定:

米星 FTA

Page 27: Column - JETRO2 ©JETRO 2004 タ イ 2004年USTR外国貿易障壁報告書要約(pp.459-469) 2004年版不公正貿易報告書(経済産業省通商政 策局編)要約(pp.126-128)

©JETRO 2004 27

銀行・証券

・リテールバンキング(小口銀行業務)

シンガポール金融局は 1999 年まで、リテールバンキングのライセンスの外資への新規付与を 20 年以上認めていなかった。また

既存の銀行も新規支店の開設、既存の支店の移転、ATM の開設は認められていなかった。なお、リテールバンキングを除きシンガ

ポールは外資銀行と国内銀行を差別していない。

政府は 1999 年、銀行自由化 5カ年計画に着手し、現地銀行への 40%の外資出資規制を撤廃、6つの外資銀行にフルバンク資格(QFB)

を付与した。このライセンスにより 15 まで支店もしくは ATM(うち支店は 10 まで可)を開設することができるようになり、既存

の支店の移転、ATM の共有も認められた。また 2002 年 12 月には金融企業に関する外資総株式保有率の 20%への制限も撤廃した。

しかし、現地の ATM ネットワークに参入できないなど外資のみに課されている制限は未だ存在する。また、外資出資制限は撤廃

されたにも関わらず、当局は外国企業による現地銀行の買収は認めないとしている。当局は、全資産に対する現地銀行のシェアを

50%以上に維持すると述べている。

米星 FTA によりこれらの規制はほぼ解消される。現存のフルサービス銀行への新規ライセンスに関する制限は、2005 年 6 月 30

日までに撤廃、大口貸し出し銀行については 2007 年 1 月 1 日までに撤廃される。ライセンスを付与された米国銀行は、発効後 1

年目には 30 までの拠点を設置することができるようになり、2年目には無制限になる。米国銀行の現地法人は 2006 年 6 月 30 日以

降、支店は 2008 年 1 月 1日以降にそれぞれ地方 ATM ネットワークに参入できるようになる。

2004 年 1 月 1 日に、ある米国銀行に FTA の通りの権利が認められたが、追加的な要件が課されているという懸念も存在する。

関連規定:

米星 FTA

一般に外資に制限は設けてられていないが、放送、ニュースメディア、国内リテールバンキング、財産の所有、および政府系企

業への投資については制限を設けている。またシンガポール政府は金融サービスおよび電気通信サービスのライセンスの承認につ

いて、以前はパフォーマンス要求を条件としていたが、米星 FTA によりサービス拠点数の制限等パフォーマンス関連の制限は禁じ

られている。

関連規定:

米星 FTA

電子商取引を制限する主な規制はない。米星 FTA は電子商取引について内国民待遇、最恵国待遇などを義務付け、またサービス

規制は電子的に取引されるサービスにも適用されること、電子商取引は恒久的に免税対象であることを確認している。

政府はインターネットを放送事業法等の放送に対する制限の対象であると考えている。すべてのプロバイダはインターネット・

アクセス・サービス・プロバイダ(IASP)を通してのみサービスを供給でき、また IASP は政府がわいせつ、過剰に暴力的、人種・

宗教紛争を引き起こすと考える 100 のサイトへのアクセスを禁止しなければならない。しかしこの 100 のサイトは公表されておら

ず、どのサイトが選ばれるかの選定過程も不明確。また、同じようなサイトでも 100 以上は選ばれない。

政治的・宗教的なサイトを提供するコンテンツ・プロバイダーもしくは個人は、MDA からライセンスを受ける必要がある。

競争

多くの分野において政府系企業の占める比重が高い。また特に電気通信・発電、配電・金融サービス分野では、分野固有の競争

規制および担当局が存在する。いくつかの政府系企業は反競争的な慣行を行っていると指摘されているが、政府は強く否認してい

る。米星 FTA では、政府の支配下にある企業が商業ベースで行動すること、および米国企業を差別的に扱わないことを確保するよ

う何らかの措置をとることを規定している。

包括的な競争法はないが、米星 FTA により 2005 年までに競争法を採用することが義務付けられた。また政府系企業の資産に関

する透明性を高める義務も設けられた。

関連規定:

米星 FTA そ

透明性

米国政府は、シンガポールが法・規則案をパブリックコメントのために回覧を実行していることを歓迎する。米星 FTA の履行に関

する全ての法・規則が議会への提出前にパブリックコメントに付されることは FTA の透明性義務に整合するものであり、米国が期

待するところである。

関連規定:

米星 FTA

(以上、担当:牧野 直史(まきの なおふみ))