contents 中・大規模木造 計画・設計マニュアル流 通 製 材 を 利 用 し て 大...

1 60 70 3 調J K 使024 026 028 032 034 036 038 042 048 050 052 054 056 058 059 060 053 061 071 081 087 095 105 20136月号 CONTENTS 中・大規模木造 計画・設計マニュアル 使J A S L V L Q & A 1 0 0 114 115 116 020 June 2013 特集中・大規模木造計画・設計マニュアル 021 June 2013

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流通製材を利用して大空間をつくる

認定こども園﹇幼保連携型﹈の計画・設計①

居ながら工事での改築を約1年で行う

認定こども園﹇幼保連携型﹈の計画・設計②

接合金物工法でも自由なデザインを

保育所の計画・設計

大断面集成材で可変性の高い建物に建て替える

幼稚園の計画・設計

地場の工務店と流通製材・坪60万円未満で建てる

高齢者福祉施設の計画・設計

坪70万円で耐火木造(枠組壁工法)を実現する

木造3階建て共同住宅の計画・設計

サポート

はじめて中・大規模木造建築を手掛ける

設計者のためのサポートサービス

エヌ・シー・エヌ

ネットワークを生かしたサポートサービス

シェルター

事前の調査・計画によるサポート

JK木構造グループ

豊富な木質材料から適材適所の部材を提案

三井住商建材

大規模木造の技術を生かしたサポート

銘建工業

独自のプレカットシステムを使った支援

024

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087

095

105

2013年6月号

CONTENTS

[中・大規模木造]計画・設計マニュアル

巻頭言

中・大規模木造の普及には生産システムの整備が不可欠

材料

計画を左右する木材の性質

材料

使用する木材のコストと流通

材料

構造設計におけるJAS製材の位置づけ

材料

住宅向け構造用製材でつくる梁とパネル

材料

集成材・LVLの寸法と強度

架構

構法・架構形式とスパンの関係

防耐火

防耐火性能の考え方と関連法規

法規

いまさら聞けない木造化推進事業Q&A

法規

気をつけたい高さと敷地内の通路

法規

増改築時における緩和措置の最新動向

キーワード100

執筆者プロフィール

資料請求者プレゼント

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020June 2013 [特集] [中・大規模木造]計画・設計マニュアル021 June 2013

※:林野庁補助事業「木材利用技術整備等支援事業」。日本集成材工業協同組合、全国LVL協会、日本合板工業組合連合会が配信予定

 

中・大規模木造建築の普及のために

は、RC造や鉄骨造と同様に、設計の

ための技術情報を整備し、容易に使用

できる標準部材を準備する必要があ

る。現在、こうした部材、接合部の標

準化に向けて、実験データの収集・整

理が行われており、2013年中に各

団体が設計支援情報を配信する予定で

ある﹇※﹈。

集成材・LVLの断面寸法と部材長

 

木質材料には、さまざまな樹種、再

構成材がある。現在の国産材の状況に

照らすと、軸組材の主流はスギやカラ

マツの集成材とLVLである。

 

強度区分は、集成材(対称異等級)

では、スギE

65

-

F

225、カラマツE

105

-

F

300、E

95

-

F

270。LVLでは、スギ60

E、

カラマツ120

Eがそれぞれ標準的な材料

集成材・LVLの

寸法と強度

である。

 

中・大規模木造建築では、空間が大

きくなればなるほど、固定荷重や積載

荷重も大きくなり、戸建住宅の応力と

は異なる部材寸法を選択することにな

る。

 

また、必要とされる防耐火性能も高

くなるため、準耐火建築として燃え代し

﹇46頁参照﹈を考慮すると、当然ながら

部材断面は大きくなる。そのため、戸

建住宅用の中断面(幅105・120㎜×梁せ

い240・360・450㎜)より大きな断面規格

(幅150・180・210・240㎜×梁せい450・600・

750・900㎜)を整備する必要がある。ま

た、集成材では、ラミナ幅によっては

部材幅が210㎜程度でよいかもしれない

が、幅接は

ぎ・2次接着といった対応に

より、幅広の部材にも対応することが

できる。

 

部材長(定尺)の考え方も戸建住宅

用部材とは異なる。学校の教室では7.2

mや8mといったスパンを架け渡す梁

が必要であり、事務所でも6m以上は

必要である。柱材についても建物の階

高が高くなるため、4m程度の部材長

が必要となる。集成材やLVLなどの

再構成材では、部材長に限界があるも

のの、製造の自由度は比較的高く、加

工・運搬・施工(揚重)などほかの要

因で部材長が決まることが多い。

 

部材断面と部材長の標準寸法が整備

されても、その部材の加工にコストが

かかるようでは意味がない。木材の加

工には、①住宅用のプレカットシステ

ム、②大断面部材用のNC加工、など

がある。ただし①は、加工可能な部材

断面寸法(150㎜以下)や部材長に関し、

現状の生産体制では制約が生じる。一

方、②は、加工の自由度は向上するが、

コストがやや高くなる。

 

なお、これら標準的な部材より高い

性能をもつ部材や大きな断面も、供給

することは可能である。しかしそれは、

付加価値のある「特注品」として扱い、

単価を高くするべきである。鉄骨部材

でも高強度のものや耐火性能の高いも

のは、付加価値の高いものとして単価

が高くなるのと同様の考え方だ。汎用

性の高い部材と特注品の部材を組み合

わせて、適材適所で使用したい。

接合部の標準化

個々のケースを共有

 

中・大規模木造建築の構造要素とし

ては、柱梁フレームにおける柱梁接合

部、柱脚接合部、ブレース端部接合部

などがあり、木質材料の種類と組み合

わせると多様である。

 

こうした接合部の設計法自体は、さ

まざまな規準書に計算式が記載されて

いる。しかし、不慣れな設計者にとっ

ては、どの規準書を参考にすればよい

か迷う。またこうした設計情報は、複

雑な式になったり、さまざまな検討を

行って最小値を求めたり、実験でデー

タを収集しないと計算できない場合も

あったりする。これまでは、個々の建

物に対して設計者が個別に実験を行い

ながら設計を行ってきた。しかし、せ

っかく得られた実験のデータが、その

建物のために用いられた後に活用され

ないでいた。

 

そこで、部材の強度区分や寸法を特

定すれば、この接合部の設計状況も変

わるはずである。個々の設計者が実験

を行わなくても、誰か1人が詳細な検

討を行い、得られたデータを共有でき

れば、多くの設計者が容易に設計を行

えるようになる﹇図﹈。

 

樹種、強度区分、断面寸法ごとに、

ボルトやドリフトピン接合で用いられ

る長さと径の比l/dや、へりあき、

端あきといった寸法を考慮した接合具

配置を用いて、理想的で標準的な接合

部を提示することも可能であり、品質

の安定した建物とすることができる。

こうした標準的な接合部が、設計者、

加工者、施工者に浸透すれば、記載ミ

スがあったとしても多重チェックの過

程で発見できることもあり、安全性の

向上にもつながる。

 

面材も、中・大規模木造建築と木造

住宅とでは、要求性能が異なる。建物

の規模が大きくなれば、面材を張る面

積が大きくなる。当然ながら、1枚1

枚の面積が大きいほうが張る枚数は少

なくなり、手間を軽減できる。

 

木造住宅用に用いられる構造用合板

はサブロク(910×1千820㎜)板が基本だ

が、シハチ(1千200×2千400㎜)板とい

ったサイズも製造可能である。また板

厚も、中・大規模木造では9㎜ではな

く、24㎜、28㎜が主流。日本合板組合

連合会では、こうした厚板合板を用い

て短期許容耐力40

kN/m(壁倍率換算

20程度)の耐力壁や、床の水平構面の

設計情報整備を行っている。同様に、

LVLや集成材による厚さ100㎜以上の

耐力壁の開発も行われている。

﹇腰原幹雄﹈

図|データの共有 概念図

●▼ × ■× ■▲

木質構造設計規準

規準書

計算式

規準書C

規準書

規準書B

規準書A

理論解だけでは不安…

たった1棟のために…

時間が…

お金が…

データはクローズ

データはクローズ

実験検証

実験検証

実験検証

実験検証

e1

e2≧1.5de2≧1.5d

e1S

データベース

降伏時変形  δy= ●短期許容耐力 Py= ■終局耐力   Pu= ▼

実験データ

5050

24112112

実験データから、具体的な数値が提示される

設計者A 設計者A

設計者B

設計者C設計者B 建物B1棟

建物A1棟

建物C

建物A

建物B

▽ ▽

▽ ▽

▽ ▽

▽ ▽

①個々の実験データ……

③材料・寸法が決まっていないと…… ④材料・寸法が決まっていれば……

②部材断面を規格化して、データを集約・共有すれば……

M16 木材木材

鋼板 鋼板

022June 2013 [特集] [中・大規模木造]計画・設計マニュアル023 June 2013

材料

防耐火

架構

法規

サポート

表| 高さと規模による制限

図2| 大規模木造等の敷地内通路(令128条の2)

図1|耐火建築物としなくてもよい木造3階建て共同住宅(令115条の2の2)(木3共)

気をつけたい

高さと敷地内の通路

高さ13

m、軒高9m超

 

木造建築物における「大規模」の要件

は、①高さ13

m超か軒高9m超、②床

面積1千㎡超、のいずれかである。①

の高さ13

m、軒高9mを超えると、適

合性判定対象建築物となり、軸組計算

延べ面積1千㎡超

 

延べ面積が1千㎡超の場合、一般の

建築物は、幅員1.5

m以上の敷地内通路

(建築物の主な出入口や屋外避難階段

から道や空地まで)を確保しなければ

ならない(令128条)。

 

主要構造部の一部が木造で、延べ面

積1千㎡超の建築物の場合、さらにそ

の周囲(道または隣地境界線に接する

部分以外)に、3m以上の幅員で敷地

の接する道まで達する敷地内通路が必

要となる﹇図2﹈(令128条の2第1項)。

また、床面積1千㎡以内の木造などの

建築物が敷地内に2棟以上ある場合、

隣接する建築物の合計面積が1千㎡超

となると、建築物相互間に幅3m以上

の通路を設けなければならない(同条

2項﹇写真﹈)。

 

一方、木造建築物と準耐火建築物な

どとの間には、通路幅の制限はない。

しかし、それらの建築物の床面積の合

計が3千㎡を超える場合、3千㎡ごと

にその周囲に3m以上の敷地内通路が

必要となる(同条3項)。

 

敷地内通路を横切って、通行などに

利用されている幅3m以下の渡り廊下

がある場合は、交差部分に幅2.5

m以上、

高さ3m以上の開放部分を設けなけれ

ばならない(同条4項)。 ﹇谷村広一﹈

①木造などの建築物(延べ面積>1,000㎡)の周囲の 通路幅(令128条の2第1項)

②木造などの建築物(延べ面積≦1,000㎡)の周囲の 通路幅(令128条の2第2項)

③木造などの建築物と準耐火建築物の混在(令128条の2第3項)

大規模木造建築物の敷地内通路

注:表中の各通路は、敷地の接する道路まで達することとする(令128条の2第5項)*:耐火構造の壁・特定防火設備で区画した耐火構造の部分の面積は、床面積から除く(令128条の2第1項)

適用対象 適用条件 通路幅 設置内容 適用条項大規模木造建築物[*]

1棟の延べ面積>1,000㎡

≧3m[条件1]

建築物の周囲に設置(道に接する部分を除く)

令128条の2第1項

2棟以上で延べ面積の合計>1,000㎡

≧3m[条件2]

1,000㎡以内ごとに区画し、その周囲に設置(道・隣地境界線に接する部分を除く)

令128条の2第2項

延べ面積合計>3,000㎡

≧3m 3,000㎡以内ごとに、相互の建築物の間に通路を設置(道・隣地境界線に接する部分を除く)

令128条の2第3項ただし書

条件1:1棟で延べ面積≦3,000㎡

≧1.5m 隣地境界線に接する部分の通路のみ

令128条の2第1項ただし書

条件2:耐火・準耐火建築物が1,000㎡以内ごとに区画された建築物を相互に防火上有効に遮っている場合

通路設置を適用除外 令128条の2第3項

通路を横切る渡り廊下 廊下の幅≦3m、通路幅≧2.5m通路高さ≧3m通行・運搬以外の用途に供しないこと

令128条の2第4項

道路

制限なし

A1,500㎡

B 500㎡

≧3m

制限なし

≧1.5m

≧1.5m

1,000㎡<A≦3,000㎡建築物間≧3m隣地間≧1.5m  :敷地内通路

注:延べ面積の合計>1,000㎡の場合、規制あり 注:木造等の建築物の延べ面積の合計>3,000㎡の場合、規制あり

制限なし

制限なし 制限なし

前面道路 前面道路

耐火・準耐火建築物

耐火・準耐火建築物

耐火・準耐火建築物

1,000㎡超

1,000㎡超

C800㎡

E250㎡

D350㎡

D600㎡

G250㎡

F400㎡

E900㎡

C 90㎡

A300㎡

A800㎡

B750㎡

B300㎡

1,000㎡以内 3,000㎡以下 3,000㎡以下≧1.5m

≧3m

≧3m

≧3m

≧3m

≧3m

防火壁

制限なし

:敷地内通路 :敷地内通路

≧4m ≧3m

≧3m

防火地域以外の地域にある、地階を除く階数が3、かつ3階を下宿、共同住宅、寄宿舎の用途に供する建築物

道路

隣地境界線

(準防火地域内に適用)3階各住戸の外壁開口部に防火設備を設ける(メゾネット式住戸などで階数≧2の場合は、2階以下の階を含む) 各住戸から地上に通じる主な廊

下・階段などの通路が直接外気に開放され、かつその通路に面する各住戸の開口部に防火設備が設置されている場合は免除

建築物の周囲に幅員≧3mの通路を設ける

主要構造部:1時間準耐火構造

各住戸に避難上有効なバルコニーを設置する

3階の各住戸の開口部(代替進入口と同等の構造)が、道または道に通じる幅員≧4mの通路などに面すること

次のイ・ロ・ハをすべて満たす場合は免除(イ)各住戸に避難上有効なバルコニーなどを設置(ロ)各住戸から地上に通じる主な廊下などの通路が直接外気に開放され、かつそれに面する各住戸の開口部に防火設備を設置(ハ)外壁開口部から上階開口部へ延焼のおそれがある場合に、平12建告1381号に定める構造の庇を設置(ただし、延べ面積>1,000㎡の場合、令128条の2第1項による幅員≧1.5mの通路が必要)

庇の設置

木造建築物の規模 注意点 条項延べ面積>1,000㎡ 外壁、軒裏で延焼のおそれのある部分:防火構造

屋根:不燃材料でつくるか、葺く法25条

防火壁:1,000㎡以内ごとに区画 令113条敷地内通路:周囲に3m確保※隣地境界線部は1.5m接道部は制限なし

令128条の2

高さ>13m    軒高>9m

耐火構造とするまたは大規模木造の技術的基準に適合

法21条1項(法2条9の2イ)令129条の2の3

延べ面積>3,000㎡ 耐火構造とする 法21条2項(法2条9の2イ)

などの仕様規定以外に構造計算で剛性

率や偏心率などチェックしなければな

らない内容が増える。さらに、防火性

能の制限もある﹇表﹈。

開口木3と木3共

 

従来、準防火地域内で、木造3階建

てを建築することはできなかったが、

昭和62年の建築基準法の改正により、

準防火地域内で木造3階建てを建築す

る技術基準がつくられた。敷地境界付

近の開口部などを規制することから

「開口木3」と呼ばれる。技術的基準

のポイントは以下のとおりである。①

外壁開口部の構造と面積制限、②外

壁、軒裏の防火構造、③主要構造部の

石膏ボードなどの防火被覆と隙間ふさ

ぎ、④3階の各室間は壁または戸(襖、

障子は不可)で区画﹇42頁参照﹈。

 

また、特殊建築物の防火制限では、

地上3階建ての共同住宅は耐火建築物

としなければならないため、木造でつ

くることは難しい。しかし、防火地域

以外で、一定の要件の木造3階建ての

共同住宅(木3共)はつくることがで

きる。木3共は3階部分のすべての用

途が共同住宅・下宿または寄宿舎で、

木造1時間準耐火の技術基準(令115条

の2の2)を満たす必要がある﹇図1﹈。

幅3m以上の敷地内通路

木造建築物

024June 2013 [特集] [中・大規模木造]計画・設計マニュアル025 June 2013

材料

防耐火

架構

法規

サポート

AD BC仮設工事は夏休みに行う

 

認定こども園を1年間で竣工させる

にはどのようにすればよいのか。ここ

では、実際のスケジュールを振り返る

ことで、そのポイントを明らかにして

いきたい。最も重要なのは、着工のタ

イミング。遅くとも、9月着工を目指

すべきである。本体工事を9月に始め

られたとしても、翌年3月までの工期

は6カ月。500〜1千㎡クラスの建物と

してはギリギリである。したがって、

8月末を目処に、基本設計、実施設計、

入札、見積り・調整(VE案作成)、

確認申請、工事契約・着工準備、解体

工事、仮設校舎の建設、を終えなけれ

ばならない。

 「こばとこどもえん」の場合は、入

札日を7月中旬に設定。それに合わせ

て6月末までに実施設計図面を作成し

た。7月末に建設会社との間で契約金

額を決定すると同時に、民間の確認検

査機関に確認申請図書を提出してい

る。確認申請には最低でも1カ月程度

かかるので、審査期間を可能な限り短

縮できるように、検査機関および消防

局との事前打ち合わせは実施設計から

見積り期間のうちに終わらせておく。

 

確認申請以外では、保育園・幼稚

園・認定こども園の設置基準﹇90・94頁

参照﹈のほか、特殊建築物となるので、

景観法、人にやさしいまちづくり条

例、バリアフリー法、省エネ法など関

連法規もチェックしなければならな

い。厨房設備がある場合は、保健所へ

の届けも必要となる。

 

併せて重要となるのが、解体工事と

仮設園舎建設の時期。これは、幼稚園

の夏休み(確認申請中でもある)を利

用する。大量の埃が出るこの工事を済

ませ、9月頭に始まる2学期の始業前

には完了させておく。

内装・設備工事は最低3カ月

 

確認申請が通れば、無事に9月着工

の目標を達成することができる。ポイ

ントは遅くとも11月末(着工から2カ

月程度)までの上棟を目指すこと。設

備工事や内装・下地工事には最低でも

3カ月以上はかかるので、このタイミ

ングを逃すと、3月の竣工・引渡しが

難しくなる。特殊な納まりなどが必要

となる場合は、建設会社との早めの打

ち合わせを心掛けるべきであろう。

 

もう1つ重要になるのが、耐震改修

など既存部分のメンテナンス工事の時

期である。園運営上の問題から、2学

期に行うのは難しいので、冬休みの期

間を利用して行う。

B|面積算定を行うタイミング─面積基準等に合わせた簡単な計画平面図を作成し、その図面を持参して、担当課に具体的な問題点やポイントをヒアリング。本格的なプランニングを練り上げる前に、早い段階で条件を洗い出すことが重要。これをもとに「認定こども園認定申請書」に添付する面積基準等調書を作成する[74

頁参照] 

C|概算検討の重要性─最も避けるべきは、“入札不調”という結果。設計者は基本設計~実施設計を進めながら、概算の検討を行い、しっかりとコストコントロールする必要がある。また、入札額が予定価格に達しない場合も想定し、素早い判断で変更や中止が可能な減額案を考えておくことも重要

A|事前相談で確認すべきこと─園から相談があったのは年度前の11月。11月~3月は、建築主や役所にヒアリングを行いながら、計画条件を洗い出す期間となった。筆者は設計作業にとりかかる前に、市および県の担当課にヒアリングを行った。保育園・幼稚園および認定こども園の施設整備基準(国が定める児童福祉施設最低基準のほかに、県が定める独自の基準がある。乳児室・ほふく室について、千葉県の基準[計画当時]

では4.95㎡/人で、国の基準3.3より厳しい)や、補助金の割合、計算方法、内示のタイミング、入札の手続きなどについて、概略を確認

D|指名競争入札の心得─入札は指名競争入札[*]で実施。設計の早い段階で、入札に関するルール・方法を担当課に確認しておく(保育園は保育課、幼稚園は学事課など)。指名工事会社の必要数(工事費ごとに○社以上など)や、建設会社の入札参加資格(Aランク以上または評点○点以上など)、入札への役所担当者の立会の要否、記録の方法、などがポイント。入札前に、園の理事長(または園長・理事会)と設計監理者は協力して以下の準備を行う。予定価格および最

低入札価格の設定、入札箱の用意、同札の場合の取扱い方法、など。入札会は、理事長(園長・理事会)または設計監理者が司会進行を務め、市担当者が立ち会い、各建設会社が参加して行われる

*:入札には、発注者が一定の基準にもとづき建設会社を選定する指名競争入札と、希望者すべてを入札に参加させる一般競争入札がある。前者の場合、入札に先立って建築主名で指名通知書を送付し、建設会社に入札への参加を依頼する。見積り用の実施図面を作成したら、図渡し・現場説明会を行う。現場説明会は、参加会社を一堂に集めて行う場合と、日時指定を行い個別に行う場合がある

増築棟計画

建築確認

仮設園舎

既存棟

幼稚園

認可

現場

12234564 3 2 12 11 10 9 8 72009

112010

12011

1年月 認

定こども園﹇幼保連携型﹈の

全体計画

「こばとこどもえん」のスケジュールを示す。計画から竣工までの期間は1年3

カ月程度。県から補助金の交付を内示される4月より前に、準備を進めていた。

9月からの約半年間で建物を完成させている冬休み冬休み 春休み春休み 3学期 2学期 3学期 2学期1学期夏休み

認可受△担当課現場検査

手直し△設計・施主検査

木工事(構造)△上棟

基礎工事 土工事

内示△市から県に申請書を提出

認可基準 適不適チェック

基本設計 相談詳細条件ヒアリング 役所ヒアリング+計画条件の把握

実施設計図面調整△入札見積り用図面完成

概算検討 地盤調査①地盤調査②

実施設計

プレカット加工プレカット図面作成・検討

仕上げ工事 木工事(内外装下地)

見積り期間

条件整理→実施設計

仮設・確認審査引越し解体 仮設校舎使用中 仮設・許可申請

是正+補修

○認可関係の書類提出

○完了検査

○ヒアリング ○役所ヒアリング

○役所調査+ヒアリング○既存棟調査△既存不適格調書提出

工事会社決定

工事会社候補検討

一部手直しなど

△入札立会い △図面・面積表等提出

着工準備△地鎮祭

△指名通知書送付

○完了検査 ○中間検査 ○審査機関と事前協議 ○役所調査+ヒアリング

△入札

△確認済

仮計画図+面積表作成本体工事以外の工事本体工事とは別に、既存園舎の解体工事、残す園舎のメンテナンス工事、工事中の仮設園舎工事、なども発生する。これらの工事も補助金の対象工事とする場合、本体工事と同様に、内示後の入札および着工が必要なので、注意する。これらの工事は幼児の少ない、夏休みなどに実行することが望ましい

保育室の外廊下は、幼稚園との共用部分。それぞれの基準に照らし合わせながら寸法を調整していく必要がある。幅は2,900㎜

A

B

C

D

審査期間(建築確認その他)△1カ月はかかるので事前打ち合わせが重要

着工

仮設園舎建設

確認申請中かつ夏休みの時期に行う(大量の埃が出るため)

026June 2013 [特集] [中・大規模木造]計画・設計マニュアル027 June 2013

スケジュール2-1

AD BCC|建築基準法にかかわる制約─防火区画の設置(令112条2項)、防火上主要な間仕切壁(令114条2項)、排煙上有効な開口部(令126条の2)などについて確認を行う[98頁参照]

*:東京都建築安全条例窓先空地や敷地内通路の幅員・避難ルートや2階の延床面積について確認する[98頁参照]

高齢者福祉施設の

全体計画

「優っくり村」のスケジュールを示す。計画から竣工までの期間は1年3カ月程

度。都市計画法にもとづく生産緑地の開発行為を含めて計画を進め、構造・設

備計画の合理化により、約半年の工期で建物を完成させた。

採択

開発行為

基本設計

実施設計

建築確認

工事

開発検査

建築検査

中高層条例

A|都市計画法32条による開発─500㎡以上の土地で建築行為などを行う場合は、道路、下水道、消火栓、給水、公園などについて管理者の同意が必要。今回の開発行為では、雨水浸透施設の設置および緑化面積の確保、道路の再整備、下水の整備、土留め工事が発生

D|確認申請上のポイント─軒高6.410m、最高高さ9.284mと設定して構造計算ルート1で対応できるようにした(軒高9m、最高高さ13m以下という条件を満たしている)。確認が下りるまでは当時約2カ月弱を要した

201089101112

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B|都市計画法37条の解除─都計法37条1号に定められている。「都道府県知事が支障ないと認める」場合に限って、着工前に山留め(擁壁)までの工事を行うことができる

都計法37条解除による工期短縮

 

複合介護施設「優ゆ

っくり村」の建物

は、延床面積818㎡。施工を担当したの

は、住宅を主業務としている地場の工

務店であった。計画から竣工まで約1

年間と比較的タイトなスケジュールの

なかで、さまざまな業務を同時並行し

て進めなければならなかった。着工に

先立ち、業務を効率的に進めるために

「開発行為」と「建築確認申請」をス

ムーズに行う必要があった。

 

計画敷地は生産緑地である。したが

って、福祉施設を計画する場合には開

発行為が必要となる。特定行政庁との

間で、都市計画法(以下、都計法)を

も踏まえた事前協議が必要となる。特

に重要となるのが、都計法32条同意と

都計法37条に関するものであるが、ス

ケジュール管理には特に後者の影響が

大きい。

 

都計法37条により、一般的には、開

発工事に関する着手・完了、検査、検

査済証の取得といった一連のステップ

を終えるまでは、建築確認済証を取得

できず、建物を着工することができな

い。しかし、これに素直にしたがって

いては、予定のスケジュールに間に合

わないケースが多い。

 

本件の敷地(あまり高低差のない敷

地)では、隣地の基礎(ベタ基礎)と

接する部分について、土留めを兼ねる

構造として、開発工事と建築工事を関

連づけ、それを根拠に37条制限解除の

適用を受けた(特定行政庁とも入念に

相談したうえでの結果なので、ほかの

特定行政庁では通用しないことも多々

ある)。この方法を利用すれば開発工

事が省略されるので、スケジュールを

1〜2カ月短縮できる。

 

建築確認申請については、民間の確

認検査機関と同様に、計画当時は特定

行政庁においても、確認申請の事前相

談を行ってくれた。開発協議、申請と

ほぼ同時進行で進められた。

 

もちろん都計法37条の許可が下りる

までは法的な受付は不可であるが、都

計法37条の許可が下り次第、建築確認

申請もスムーズに受理され、速やかに

消防同意へ進み、最終的には2週間後

に確認済証を取得できた。以上のよう

な動きによって、1カ月近いスケジュ

ール短縮を実現させた。

 

この建物は、建築確認申請が通ると

同時に着工。当初は6カ月の工期を想

定していたが、実際には5カ月程度に

短縮できた。意匠・構造・設備の打ち

合わせを早い段階から進め、計画全体

を合理的なものにしていたことが、そ

の要因として挙げられる。

年月

事前協議32条同意

開発許可37条制限解除

検査

検査

竣工 着工6カ月

▲年度末工事出来高30%

検済

検済

D

AB

C

用語の定義「優っくり村」は、グループホームと小規模多機能施設を兼ねている。建築基準法上の分類は老人ホーム・身体障害者福祉ホームである。一方、東京都建築安全条例上は「寄宿舎」「児童福祉施設等」の両方の基準で扱われている。両方の要素を併せ持っているので、それぞれについての規制をクリアしなければならない

見積り・調整高齢者福祉施設は住宅とは異なり、消防法施行令別表第1(6)項ロに該当するので、規模にもよるが、防災設備(スプリンクラー、自動火災設備など)の設置義務が発生する(この建物は275㎡以上1,000㎡未満に該当するが、この場合は水道直

結型スプリンクラーとすればよい)。バリアフリーの観点から、エレベータやバリアフリー設備(特に水廻り。手摺や機械浴など)も備えなくてはならない。したがって、工事費に占める設備・電気工事の比重は比較的大きくなる[100頁参照]

中高層条例とは?練馬区(東京都)の「中高層建築物等における紛争の予防と調整」によるもの。最高高さが8mを超える場合には、近隣住民とのトラブルを防ぐため、計画や工事について、説明会の実施や標識の設置などが義務付けられる

内装下地工事中の現場。せいが300㎜の梁とエアコンのダクトが、干渉することなく取り付けられている

この高齢者福祉施設は、生産緑地に計画された。都市計画法による開発行為が必要となる都市計画法における完了検査と建築

基準法における完了検査がほぼ同時期なのは、都計法37条による建築制限を解除しているため

028June 2013 [特集] [中・大規模木造]計画・設計マニュアル029 June 2013

スケジュール5-1