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  • 2

     NECは、「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」を「NECグループビジョン2017」として掲げ、ICT( Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用して社会インフラを高度化する「社会ソリューション事業」に注力し、さまざまな社会課題の解決を通して、グローバル社会に貢献することを目標としています。 NECが社会ソリューション事業に注力している背景には、これからの世界政治・経済が直面するさまざまな課題があります。今後、世界の人口が増加し、都市への集中が加速するのに伴い、エネルギーや水などさまざまな資源に対する需要が拡大して、現状の社会インフラでは人々の生活を支えきれなくなります。地球環境や社会を取り巻くさまざまなリスクが連鎖し、都市の安全・安心へのニーズも高まります。  このような社 会 課 題を解 決する 為に 、IoT

    (Internet of Things)時代の新しい社会インフラが求められています。NECは、ICTでさまざまな人やモノ、仕組みを有機的に融合させることにより、 安全・安心で効率的かつ人々に公平なサービスが行きわたる、より明るくスマートな社会の実現に貢献できると考えています。 これまでNECは、コンピューティング、ネットワーク、そしてソリューションを作り上げるソフトウェアの

    3つの領域において、世界最先端の技術開発で業界をリードし、お客様のビジネスを支えるさまざまなインフラを実現するお手伝いをして参りました。独自のセンシング技術、データサイエンスや人工知能

    (AI)、IoTなどの先端領域においても、将来に向けた研究開発の取り組みを積み重ねています。こうした技術力やノウハウの蓄積は、未来を見据えた新しい社会インフラの実現に大きく貢献いたします。  2014 年、NECグループが一丸となって社 会ソリューション事業を加速することを目的として、

    「Orchestrating a brighter world」という新たなブランドステートメントを策定しました。これは、NECが社会価値創造型企業としてリーダーシップを発揮し、卓越した技術とさまざまな知見やアイデアを融合することで、世界の国々や地域の人々と協奏しながら、明るく希望に満ちた暮らしと社会を実現し、未来につなげていくという強い決意を表現したものです。 さらに、「Orchestrating a brighter world」を出発点として、私たちが取り組む7つの社会価値創造テーマを策定しました。①地球との共生を目指す「Sustainable Earth」 ②安全・安心な都市と行政基盤を作る「Safer Cities & Public Services」 ③安全・高効率なライフラインを提供する「Lifeline Infrastructure」 ④豊かな社会を

  • 2016年4月

    代表取締役 執行役員社長 兼 CEO

    新野 隆

    支える「Communication」 ⑤産業とICTが新結合する「Industry Eco-System」 ⑥枠を超えた多様な働き方を創造する「Work Style」 ⑦個々人が躍動する豊かで公平な社会を実現する「Quality of Life」——です。 NECは、世界のさまざまなお客様やパートナーの皆様と協奏しながら、7つの社会価値創造テーマへの取り組みをより力強く推進していきます。ICTの力を最大限に活用した新たな価値創造を実現し、

    「安全」「安心」「効率」「公平」という価値をグローバルに提供して参ります。 ぜひとも、より明るくより快適な世界「a brighter world」の実現に向けてNECのビジョンをまとめた本誌を、ご一読いただければ幸いです。

  • 第1章 明るく希望に満ちた社会の実現に向けて .............................................................. 6

    グローバル・メガトレンド ......................................................................................................... 6 NECが目指す社会価値創造 ................................................................................................ 10 10年後の社会を見据えたテクノロジービジョン ..................................................... 16

    第2章 お客様と共に創る未来 ...................................................................................................... 20Sustainable Earth : 地球との共生 ............................................................................... 22

    Safer Cities & Public Services : 安全・安心な都市・行政基盤 ................................... 24

    Lifeline Infrastructure : 安全・高効率なライフライン ................................................ 26

    Communication : 豊かな社会を支える情報通信 .......................................................... 28

    Industry Eco-System : 産業とICTの新結合で変革する世界 ....................................... 30

    Work Style : 枠を超えた多様な働き方 ......................................................................... 32

    Quality of Life : 個々人が躍動する豊かで公平な社会 .................................................. 34

    CONTENTS

    1

    2

    3

    4

  • NECが目指す社会価値創造 NECグループは、人が豊かに生きる安全・安心・効率・公平な社会を実現するために、ICTを活用して社会インフラを高度化する「社会ソリューション事業」に注力しています。本誌「NEC Vi-sion for Social Value Creation 」は、NECが事業を通じて社会価値を創造するビジョンをまとめたものです。今後もICTは大きく進化し、社会やビジネス、人々の生活に貢献していきます。社会のさまざまな課題解決への取り組みは大きなチャレンジですが、お客様と共に新しい社会インフラを創る機会と考えています。 本誌でお伝えしたいことは、次の2点です。 第1に、増え続ける世界人口が都市に集中していく中、それを上回るペースでエネルギーや食糧の需要が高まります。地球の限りある資源をムダなく使い、公平で持続できる社会を築いていくために、ICTを原動力とした新たな社会インフラの構築が求められています。 第2に、社会価値創造のプロセスは、①本質的課題への気づき、②価値創造のためのコラボレーション、③ビジネスモデルの工夫とICTの活用、④お客様への価値提供と社会価値の共創──で実現します。NECグループは、これら4つのステップを大切にしています。お客様や社会との約束として「Orchestrating a brighter world」という新たなブランドステートメントを定めるとともに、7つの社会価値創造テーマを設定しました。お客様やパートナー様とともに新たな価値を共創し、豊かで明るい未来の創造に取り組んでいきます。 なお、NECの「社会ソリューション」の代表的事業とお客様事例を別冊にまとめています。併せてご覧ください。

    社会ソリューション事業による価値創造

    5

    価値創造の手段 豊かな社会を実現するための4つの提供価値

    安全国家から個人まで幅広い安全に対応

    公平多様な格差や不公平の解消

    効率持続可能な成長の実現

    安心目立たないところで地球や社会を支える

    コラボレーション● ソーシャルバリュー デザイン● パートナリング● オープン イノベーション● リーンスタートアップ

    など

    SI・サービス● コンサルティング● システム インテグレーション● 運用・保守サービス● ファイナンシング

    など

    ICTアセット● ビッグデータ● SDN● クラウド基盤● サイバーセキュリティ

    など

    社会・お客様の本質的価値の追求

    新たな価値・市場の創造

  • 6

    このままでは「地球2つ分」の資源が必要 国連によると、世界人口は2050年には96億人にまで膨れ上がります。都市部への人口集中が進み、世界の都市人口は現在の1.8倍の63億人に拡大する見込みです。その結果、エネルギーは1.8倍、水は1.6倍、食糧は1.7倍必要となるという予測があります。今日の都市型ライフスタイルをこのまま続けた場合、 2050年には「地球2つ分」の資源が必要となる計算です。こうした中で持続可能な社会を築くためには、資源の生産性を高める一方で、社会の仕組みや生活のあり方を変えて、地球資源を効率的に使う必要があります。

     一方、国・地域の視点では異なった景色が見えてきます。例えば、温室効果ガスの排出量は2050年に地球全体では1.5倍になりますが、新興国・途上国は約2倍になるのに対し、先進国は1.1倍に留まっています。少子高齢化問題は、先進国・新興国にかかわらず、進行している国とそうでない国があります。日本、韓国、シンガポールなどでは今後急速に人口が減少し問題に直面しますが、少子化対策が成功したフランス、イギリス、スウェーデンなどでは大きな問題になっていません。差し迫った地球規模の課題であっても、国・地域ごとに事情が異なり温度差があるため、その解決は容易ではありません。

    パワーの分散化とデジタル新時代 人口増加を背景にした新興諸国における経済発展が国家間のパワーバランスの変化を引き起します。2050年の GDP比率では、G7※1が 36%に対し、

    これからの地球と世界の潮流

    ※1 G7:米国・フランス・イギリス・ドイツ・日本・イタリア・カナダ※2 E7:中国・インド・ブラジル・ロシア・インドネシア・メキシコ・トルコ

    世界は今、巨大な変革の中にあります。限りある資源をムダなく使い、公平で持続可能な社会を築いていくために、ICTを原動力とした新たな社会インフラが求められています。

    グローバル・メガトレンド1明るく希望に満ちた社会の実現に向けて第1章

  • 7

    E7※2は64%になる試算もあり、今後の世界の政治経済はG7中心型の構造から、新興各国を含む多極型の構造へと大きく変容し、政治的にも経済的にもパワーの分散化が進むでしょう。 新たなテクノロジーやサービス、自然災害や伝染病など、特定の国・地域で発生した出来事はまたたく間に世界に伝わり、日々の暮らし・株価・人道支援など、その影響の範囲はグローバルに拡大しています。 さらに、インターネットの世界的な普及がそれを後押ししています。ネット利用者数は2014年には 30億人を突破し、2050年には世界人口の約 8割の80億人になると予測されています。ビッグデータ分析、人工知能、ロボットなどの技術進化とあいまってパラダイムシフトが起きつつあります。国・地域を越えたソーシャルネットワークサービス、動画投稿サイト、個人レベルで資金調達可能なクラウドファンディングなどICTサービス進化により、「個」の影響力はさらに高まります。世界経済のネットワーク化は、各国の相互依存性をさらに強めます。経済発展を背景に新興国から新たなイノベーションが生まれ、それが先進国に広がる「リバース・イノベーション」も増える

    でしょう。 インターネットの広がりにより、機密情報の漏えいやサイバー攻撃、国家によるインターネット規制や「忘れられる権利」 (プライバシーの保護のためインターネット上の個人情報を削除できる権利)の保障など、新たな脅威や対策の必要性が生じています。実世界とサイバー世界の融合はすでに始まっており、この世界的な潮流はますます加速していきます。

    求められる新しい社会インフラ  2015年9月の国連サミットで、2030年に向けた

    「持続可能な開発目標(SDGs)※3」が正式に採択されました。その中に「インクルーシブ」というキーワードがあります。貧困・格差・障害に苦しむ人々を、誰一人取り残さず、包括的に受け入れる社会を目指すという考え方です。今後は、実世界だけでなく、サイバー世界においても包括的(インクルーシブ)な取り組みが大切となるでしょう。例えば、これまで十分な教育・医療が行き届いていない地域や人々に対して、遠隔医療やオンラインによる映像授業などを活用し、実世界とサイバー世界の両面から浸透を図る

    このままでは地球2つ分必要 国・地域から見た姿

    ※3 17ゴール・169ターゲットからなる持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals: SDGs)

    2050年の地球の姿

    東・東南アジア

    先進国

    東西・中央アフリカ

    サハラ以南アフリカ

    新興国・途上国

    日本・韓国・シンガポール

    (出典:OECD・FAO・PwC・国連のデータをもとに作成)

    エネルギー需要

    温室効果ガス 食糧需要

    都市人口

    水需要

    1.8倍

    1.5倍 1.7倍

    1.8倍 1.1倍

    1.1倍

    10%以下

    2.1倍

    2.0倍

    35%以上

    1.6倍人口

    温室効果ガス

    高齢化率

    明るく希望に満ちた社会の実現に向けて 第1章

  • 8

    パワーの分散化とデジタル新時代

    取り組みが期待されています。 今私たちは、デジタル新時代の共生社会(‘Diverse Society’ at the Digital New Age)を、どのようにデザインし、どのような仕組みとしたらよいか模索しているともいえます。80億人がインターネットにつながる世界、それは非常に可能性に満ちた、そしてこれまでと次元が異なる変革が起こる未来です。世界の隅々までインターネット・アクセスが可能となり、利用者間の相互依存性はさらに高まり、人々の生活はICTなしでは成り立たなくなります。サイバー世界でこれから生まれるサービスが、実世界に影響を与えるでしょう。限られた地球上の資源を効率的に活用し、国・地域でそれぞれ異なる社会課題や多様化する脅威に対応する、デジタル新時代の共生社会を支える、「新しい社会インフラ」の構想と実行が求められています。

     10年や30年というロングレンジで、世界経済・社会・技術のトレンドを構造的に見ていくと、メガトレンド(大きな潮流)が見えてきます。 NECは、このグローバル・メガトレンドを6つに整理しました。 ①連鎖する資源・環境問題、②新興国の成長と新たな課題、③成熟社会モデルの模索、④個の力の向上と影響力拡大、⑤パワーの集中から拡散へ、 ⑥多様化する脅威と安全安心ニーズ—これらはそれぞれが複雑につながり、その影響は連鎖し合います。 例えば、世界人口の増加や新興国の経済発展・都市化の進展は、資源やエネルギー問題に大きな影響

    連鎖する6つのメガトレンド

    国家間パワーバランスの変化

    共生社会を支える「新しい社会インフラ」

    デジタル新時代の共生社会‘Diverse Society’ at the Digital New Age

    パワーの分散化

    新興国の台頭個の影響力拡大

    ネットサービスの浸透

    ●グローバル分業体制●リバース・イノベーション

    イノベーションの促進

    ●地域紛争●犯罪(リアル/サイバー)●高まる不確実性

    多様化する脅威

    E7(新興国上位7カ国)とG7のGDP対比

    2013年 2050年

    E7

    G7

    +20% 64%44%

    56% 36%

    インターネット利用人口

    2013年 2050年

    80億人(約83%)

    20億人(約28%)

    (出典:PwC・開発技術協会のデータをもとに作成)

  • 9

    6つのメガトレンドの相関

    を与えます。穀物需要の増大は、それを育てるための水の不足、砂漠化の進行にもつながり、自然環境への影響も甚大です。また、今まで困難であったシェール層からの石油や天然ガス(シェールガス)の抽出が可能になったことにより、世界のエネルギー事情が大きく変わる可能性があります。既存の産油国の経済への影響のみならず、国家間のパワーバランスに変化が生じます。 メガトレンドが複雑に連鎖し影響が増大する中、正確に未来予測を行うことは限界がありますが、グローバル・メガトレンドを羅針盤に、自らが未来を想い描き、新たなチャンスを見いだしていくことが大切だとNECは考えています。また、国際社会の一員として、多様性を許容する「デジタル新時代の共生社会」実現に向け、取り組んでいきます。次項では、NECが目指す社会価値の創造についてご紹介します。

    6つのメガトレンド

    シェールガス革命による地政学の変化

    水の偏在 食糧需要の偏り 資源・エネルギー問題

    サイバーリスク拡大

    「国」概念の実質的崩壊ネット環境性能の向上

    ボーダレスな仮想世界 個の力の向上

    少子高齢化

    国家に匹敵する個の影響力

    グローバル分業ワークスタイルの変化

    巨大グローバル企業の影響力拡大

    医療・介護・ヘルスケアの充実

    社会インフラ・サービスのリビルド

    先進国の減退人口減少

    新興国の台頭人口増加急激な成長の影響

    政治、制度、格差、環境などの問題

    気候変動化石燃料消費による温暖化バーチャル

    ウォーター

    相互支援イノベーション促進(人道支援、技術提携、リバース・イノベーション、不正摘発)

    リスクの拡大( 紛争、犯罪、過度な監視、データ漏えい、サイバーアタック)

    バイオ燃料

    自然災害甚大化

    生産地被害

    需給量の影響

    基本インフラ整備メガシティー、巨大経済圏

    基本公共サービス浸透教育、医療

    高度経済成長都市化

    水源被害

    個客サービスの充実

    社会保障改革・国家財政改善

    連鎖する資源・環境問題人口増加や都市化による水・食糧などの消費拡大が、他の資源や環境に多大なインパクトを与える。

    新興国の成長と新たな課題新興国では急激な経済成長で、国力拡大が進む一方、環境問題や資源不足などの新たな課題が発生。

    成熟社会モデルの模索先進国では少子高齢化や設備老朽化などの変化が、現在の法制度や社会システムの変革を迫る。

    個の力の向上と影響力拡大インターネットの発展で、個の影響力がグローバルに拡大する一方、サイバーリスクなど懸念も広がる。

    パワーの集中から拡散へ新興国や個の影響力の拡大により、世界は分散化し、新たなパワーバランスで再構築される。

    多様化する脅威と安全安心ニーズ世界の大きな変化は、実世界からサイバー世界まで多様な脅威を発生させ、安全・安心の需要が増加する。

    連鎖する資源・環境問題

    新興国の成長と新たな課題

    成熟社会モデルの模索

    個の力の向上と影響力拡大

    パワーの集中から拡散へ

    多様化する脅威と安全安心ニーズ

    ++

    ーー

    明るく希望に満ちた社会の実現に向けて 第1章

  • 10

    7つの社会価値創造テーマ 前項で紹介したとおり、これからの世界は人口の劇的な増加とさらなる都市化が進むでしょう。資源消費量の増大や温暖化、気候変動、環境破壊、さらには先進国での高齢化や犯罪の多様化といった社会課題への一層の対策が必要となります。

     一方、世の中を大きく変革するテクノロジーは今後も次々と生まれ、次世代の社会課題解決の中心的な役割を果たすでしょう。 NECは、先に紹介した6つのメガトレンドから導き出された、7つの社会価値創造テーマを策定しました。これらはいずれも、地球規模で起きている社会課題に対し 、ICT を最大限活用して取り組むNECの「社会ソリューション事業」を具体化するものでもあります。 ①地球との共生を目指す「Sustainable Earth」、 ②安全・安心な都市と行政基盤を作る「Safer Cities

    お客様やパートナー様との協奏で実現する明るくスマートな世界

    地球規模で起きている幾多の社会課題と 、ICTの目覚ましいイノベーション。NECはこの 2つの潮流を見据えながら、人々がより明るく豊かに生きていける社会を目指します。

    NECが目指す社会価値創造2

  • 11

    & Public Services」、③安全・高効率なライフラインを提供する「Lifeline Infrastructure」、 ④豊かな社会を支える「Communication」、⑤産業とICTが新結合する「Industry Eco-System」、⑥枠を超えた多様な働き方を創造する「Work Style」、⑦個々人が躍動する豊かで公平な社会を実現する

    「Quality of Life」、の7つです。

    「Orchestrating a brighter world」 NECは社会ソリューション事業への取り組みとして、「Orchestrating a brighter world」をブ

    ランドステートメントとして掲げています。これは「7つの社会価値創造テーマ」に沿って、世界の国や地域の人々と「協奏」しながら、明るく希望に満ちた暮らしと社会を「共に創り」、未来につなげていくという意思を表現したものです。 私たちNECは、コンピューティング、ネットワーク、そしてソリューションを作り上げるソフトウェアを併せ持つ、類のないインテグレーターとしてリーダーシップを発揮し、卓越した技術とさまざまな知見やアイデアを融合することで、「Orchestrating a brighter world」を具現化していきます。

    7つの社会価値創造テーマ

    地球との共生

    Sustainable Earth

    枠を超えた多様な働き方

    Work Style

    豊かな社会を支える情報通信

    Communication

    安全・高効率なライフライン

    Lifeline Infrastructure

    安全・安心な都市・行政基盤

    Safer Cities & Public Services

    産業とICTの新結合

    Industry Eco-System

    個々人が躍動する豊かで公平な社会

    Quality of LifeNECが目指す社会価値創造

    明るく希望に満ちた社会の実現に向けて 第1章

  • 12

    7つの社会価値創造テーマと6つのメガトレンド

    Sustainable Earth地球との共生

    地球と共生するため、限りある資源の有効活用や環境課題の解決をすることで、持続可能な活動基盤を構築。

    Safer Cities & Public Services安全・安心な都市・行政基盤

    新興国の安全・安心な都市づくりや、先進国の成熟社会化を支援。産官学民連携によるグローカルな行政サービス基盤を構築。

    Lifeline Infrastructure安全・高効率なライフライン

    高度で柔軟なICTシステムで地域・時間格差を解消し、24時間365日途切れることのないインフラを実現。

    Communication豊かな社会を支える情報通信

    社会の高度化に伴って重要度が増す情報や知識の流通を支える情報通信基盤を構築。

    Industry Eco-System産業とICTの新結合

    産業機械のネット接続、3Dプリンタやクラウドソーシング、リバース・イノベーションなど、産業エコシステムを新たに構築。

    Work Style枠を超えた多様な働き方

    性別や世代を超え、地域・ロボットとも共創する新しい働き方や社会との関わり方を構築。

    Quality of Life個々人が躍動する豊かで公平な社会

    教育・健康・医療などを通じて躍動する個々人の生活を支え、多様性ある豊かで公平な社会を構築。

    本質的課題への気づき NECは社会価値創造に向けた出発点として、「社会やお客様にとっての本質的な価値は何か」を大切にしています。予想できない事態が次々と起こり、既存の価値観が根底から覆ることも珍しくない中、課題の本質を的確に把握することは容易ではありません。課題発見の手法の1つとして、デザイン思考があります。NECでは、フィールドワーク(現場観察・調査)などで抽出した課題に対して、「利用者」と

    「社会」の2つの視点で解決策を提供する「ソーシャルバリューデザイン」の取り組みを行っています。世界各地の地域ニーズを踏まえた本質的な課題発見とその解決を、お客様や社会と共にNECは目指して

    メガトレンドを踏まえた社会課題とその解決に向けて

    6つのメガトレンド

    いきます。 2050年には地球 2つ分の資源が必要になるという予測がありますが、これは「現在のライフスタイル」を続けた場合の試算です。現在の社会・産業の仕組みを改めて眺めてみると、「MOTTAINAI(もったいない)」があることに気づきます。 例えば、人が飲める安全な水は地球上に0.01%しかありませんが、世界の大都市の漏水率は10〜40%もあります。また、世界で生産される食糧の約 3分の1は、毎年廃棄されているといわれています。ガソリン自動車の内燃機関の熱効率は、現在の技術では50%が限界といわれていますし、交通渋滞もエネルギ ーと人々を時間的に拘束するMOTTAINAIの一例といえます。 「利用可能な時間を、人々の都合に合わせてシフトさせること」や「所有ではなく共同利用(シェアリング)」など、これまでの仕組みをデザインし直す取り組みが始まっています。このような取り組みを、社会・

    6つのメガトレンド

    連鎖する資源・環境問題

    新興国の成長と新たな課題

    成熟社会モデルの模索

    個の力の向上と影響力拡大

    パワーの集中から拡散へ

    多様化する脅威と安全安心ニーズ

  • 13

    産業界へ本格的に適用することで、MOTTAINAIを抜本的に減らすことができるとNECは考えています。

    「協奏」と「共創」 新たな方法や仕組みに基づいて社会課題を解決し、改善していくために、最も重要なのはお客様の業界知識や実務ノウハウです。地域社会が抱える課題の本質を把握しているNGO/NPOや地方自治体などとのコラボレーション、業界をまたいだパートナ

    リングは欠かせません。NEC自身もオープンイノベーションや、新規事業開発手法の1つであるリーンスタートアップなどを積極的に展開し、課題解決に取り組んでいます。 積み重ねてきた先端のICTアセットと長年培ってきたシステム構築・サービスの知見を融合し、新たな価値を皆様と共にデザインし、共に奏で続けることで、輝く世界を実現したい──これがNECの強い思いであり、ICTを通して社会・産業システムを構築していくという経営の根幹にある考え方です。

     ICTを活用した MOTTAINAIの解消に向けた取り組みについて、「水」を例に説明します。 1人当たりの年間使用可能水量が1,700トン以下になると、日常生活に不便を感じる「水ストレス」状態と見なされます。2025年には、世界人口の3分の2が水ストレス状態になると予想されています。その一方で、世界の主要都市の漏水率は10〜40%にも上っているのです。 現在の漏水対策は、埋設された管路の漏水音を専門保守員が器具を使って自身の耳で確認する方法が主流です。しかしこの方法では、広大な管路の状態変化をタイムリーに把握するのは困難で、水道管の老朽化進行や保守員の減少とともに事態は深刻化します。 NECの漏水検知ソリューションは、上水道管の振動を把握できるセンサーを接続しクラウド上で解析することで、

    水道管の漏水箇所の正確な早期発見が可能です。お客様にとって、保守費用の効率化になるだけでなく、早期に漏水を発見して初期段階でくい止めることは、ガス管への影響や道路陥没など二次被害を防ぐという効果もあります。 また、スマートウォーターマネジメントの共同研究を英国インペリアル大学と進めています。大量のデータから水道設備や水の流れを数理モデル化し、NEC独自の人工知能技術である異種混合学習技術による水利用量予測と組み合わせて水道設備を遠隔で電子制御するまったく新しい試みです。 NECはお客様と共に、限りある水資源を安定供給し、誰もがいつでも安心して水を使える安全・安心な街づくりの実現に向け取り組み続けます。

    MOTTAINAIの解消に向けて

    社会・お客様の課題

    ●水資源の不足・枯渇●飲料水の公平な提供●老朽化による漏水率の拡大

    お客様への価値提供

    ●水道インフラの効率運用、 サービスレベル向上●高度な漏水分析による 設備保守の効率化・高度化 (漏水監視サービス/故障検知/ 監視制御技術/利用量分析・予測)

    お客様と共創する社会価値

    ●誰もがいつでも安心して水を 使える社会●限りある水資源での継続利用/ 安定供給

    (出典:国連環境計画(UNEP)のデータをもとに作成)

    (出典:東京都のデータをもとに作成)

    世界人口の2/3(2025年)

    世界主要都市の漏水率都市 漏水率(%)ニューヨーク(米国・2008年) 1.8東京(日本・2010年) 2.7シドニー(オーストラリア・2009年) 8.2マドリード(スペイン・2006年) 12.3北京(中国・2006年) 15.9イスタンブール(トルコ・2008年) 25ロンドン(イギリス・2006年) 33.3ニューデリー(インド・2007年) 40

    水ストレス人口予想

    明るく希望に満ちた社会の実現に向けて 第1章

  • 14

    100年を超えるNECの歴史 1899年7月17日に創立したNECは、「ベタープロダクツ・ベターサービス」をスローガンに、情報通信分野でイノベーションの歴史を歩んできました。そうした ICTの進化を支えているのが、「コンピューティング」、「ネットワーク」、そしてソリューションを作り上げる「ソフトウェア」です。この20年間でコンピュータの性能、すなわちCPUの処理能力は約 500 倍に向上しています。また光海底ケーブルの伝送容量は1994〜2014年で約2,000倍となり、モバイルネットワークの無線伝送容量も1992〜2020年で約100万倍になると予想されています。 そうした中でNEC はコンピューティング、ネットワーク、ソフトウェア、全てを有しており、世界トップクラスのテクノロジーとサービスでお客様の課題解決と価値の共創に取り組んでいきます。

    リアルタイム、ダイナミック、リモート コンピューティング、ネットワーク、ソフトウェアの領域での進化は、「リアルタイム性」、「ダイナミック性」、「リモート性」という3つの価値を生み出すとNECは考えています。 まず1つ目の「リアルタイム性」とは、時間の制限を超える力を表します。例えば、災害発生時に時々刻々と変化する複雑な状況下では、現場の状況をいかに早く、正確に知るかが、被害の最小化につながります。災害の拡大方向を予測し、リアルタイムに避難誘導することが重要です。ICTの進化により、広域に発生するテラバイト〜ペタバイト級の膨大なデータから、ミリセコンド〜数秒を争う素早

    さでの分析が可能となるでしょう。 2つ目の「ダイナミック性」とは、あらゆる変化への対応力のことです。プラント故障の予兆を監視するシステムにビッグデータ分析技術を適用すれば、「いつもと違う」兆候をいち早くオペレーションセンターが把握でき、事前に対策を練ることができるようになります。 3つ目の「リモート性」とは、空間の制限を超える力のことです。ICTを使った遠隔医療の分野では、遠く離れた場所からでも医師が診察できるようになることで、場所に依存せずに医療の質が保証されるのです。

    モノやコトがつながることで創り出される価値 IoT(Internet of Things)が急速に普及しつつあります。例えば、カメラでモノを撮影してクラウド上に保存したときのThingsについて考えてみます。この場合、カメ

    NECが考えるICTによる価値創造

    ICTの進化を支える3つの領域

    ※米国国立標準技術研究所( NIST:National Institute of Standards and Technology)のベンチマークで1位を獲得

    ComputingPower

    Real Timeリアルタイム

    Dynamicダイナミック

    Remoteリモート

    時間の制限を超える力

    変化への対応力

    空間の制限を超える力

    Software/Solution Capability

    Network

    世界トップクラスの性能 仮想化技術とブロードバンド

    世界No.1※の顔認証技術/ビッグデータ分析技術

    Software/Solution Capability

    ComputingPower Network

  • 15

    ラに映し出された「モノ」だけでなく、撮影者の行動や当日の天候、位置情報、画像に映し出されるモノの状態などのコンテキストを含むさまざまな「コト」をThingsと捉えることができます。これにより、カメラを利用する「人」、カメラで撮った画像(モノ)、そして画像に痕跡が残っている行動や体験といった「コト」のあらゆる対象がインターネットにつながります。インターネットの世界であるサイバー空間と、実社会であるリアル空間が融合して、あらゆる「モノ」「人」、そして「コト」が意識されずに常につながっている世界が到来します。 NECはICTによる価値創造プロセスを、①実世界の本質的な課題をサイバー世界で「見える化」、②解決するための手段と意思決定を支援する「分析」、③実世界へサービスやソリューションとして提供する「制御・誘導」——と捉えています。 実在するモノやコト、人のさまざまな「データ」をセンシング技術でデジタル「情報」に変換し、その状態を明示、把握することが「見える化」です。これらのデジタル情報を、高度なアルゴリズムで構成した人工知能ソフトウェアや、コンピュータ、ネットワークの処理能力を駆使して「分析」します。高度な分析の結果生み出された、「知識」や「知性」により、これまでの常識を覆す革新的なサービスが可能となるでしょう。

    データを情報に、そして知識、知性へと変えていく 単なる「データ」の蓄積も、ある目的を持つことで意味のある「情報」になります。例えば街中での人の往来に関するデータも、時間や人の属性と切り分けることで「情報」となります。この「情報」をさまざまな場所や時間で蓄積

    することで、街全体の群衆行動や公共サービスの利用状況などについての「知識」となります。ICTの進化により、カメラの映像から人々の性別や年齢、歩くスピードなどを瞬時に分析することで、「知性」を得られるようになりつつあります。そして今後、人々の表情や服装などから行動目的まで予測できるようになれば、スムーズな動線の確保や、より安全な街づくりに役立てることができるのです。

    NECの取り組み このような価値創造に向けて、ICTの3つの領域それぞれにおいて、NECは取り組みを続けています。 「コンピューティング」では、独自技術・ノウハウにより、設置スペースや消費電力を75〜80%削減する効率的なデータセンターを実現しています。また画像処理などに適しているベクトル型スーパーコンピュータは津波による浸水被害の予測に使われています。 「ネットワーク」では、光海底ケーブルや小型マイクロ波無線通信システム「PASOLINK」は世界に広く導入されています。またネットワークの仮想化・制御の分野においては 草 創 期 か ら S D N( S o f t w a r e - D e f i n e d Networking)の研究・技術開発、業界標準化を推進し、世界に先駆け対応製品を販売しています。 「ソフトウェア」では、顔認証や群衆行動解析など、世界最高レベル精度のメディア処理技術を保有しており、300万人の顔データ照合を1秒間で行うことが可能です。またインバリアント分析技術や異種混合学習技術、独自の人工知能技術を活用した豊富なソリューションと導入実績があります。

    ICTによる価値創造プロセス

    サイバー世界実世界

    見える化 分析 制御・誘導モノ

    環境

    ICT

    知性本質的価値の提供

    知識

    情報

    データ

    Software/Solution Capability

    ComputingPower Network

    明るく希望に満ちた社会の実現に向けて 第1章

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    コトの理解を起点に新しいビジネスが生まれる 社会価値創造に向けたこれからのNECの取り組みでは、実世界の各領域へ ICTを融合させ新たな価値を生み出すことによって、社会課題を解決していきます。そこでは、実世界とサイバー世界をつなぐ技術や、高度な分析技術が重要な役割を担うことになります。 IoTで世界中のさまざまな「モノ」がつながるようになると、それらから取得したデータによって、モノやその周囲の環境が「見える化」されていきます。さらに、モノのつながりが人工知能によって分析されることで、そこで起きている「コト」の理解までが可能

    になります。その結果、私たちの生活を安全・安心そして豊かにする新しいサービスが創出できるのです。例えば製品やサービスを提供している事業者は、モノを利用する現場で発生しているコトを理解することで、利用者の真のニーズを把握・予測し、それに応えるサービスを常に改善しながら継続的に提供できるようになります。 継続的な改善は、サービス、ソフトウェア、そしてハードウェアの枠を超えて可能になります。これまで柔軟な対応が難しかったハードウェアも、その主要な機能がソフトウェアで制御される「ソフトウェア化」が進むことで、ダイナミックな変化への対応が可能になっていくのです。ネットワークにつながったハードウェアは、日々アップグレードを繰り返しながら、新しい機能を提供し続けるようになります。 このような技術の進展は、利用者の要望・好みを先取りし、製品やサービスを提供する時間や場所などといったシチュエーションまでをも利用者の好み

    社会価値創造に向けたICTの役割と技術進化の方向性

    10年後の社会を見据えたテクノロジービジョン3

    ICTの世界では、未知のテクノロジーであっても瞬く間に現実のものとなり、私たちの社会に普及し、そしてなくてはならない存在となっていきます。NECは、10年先の世界を見据え、課題解決のためのテクノロジーを追求しています。

  • 17

    ICTが生み出す社会価値

    7つの技術進化

    に合わせる「超カスタマイズ」を実現します。また、コトの理解を起点に異業種の人々が連携することで、これまでにない新しいビジネスが次々と誕生していくことでしょう。

    NECが注力するテクノロジーの方向性 このように ICTが社会を大きく変えていく中で、NECは、コトをより深く理解し価値の高いサービス提供につなげるデータサイエンスと、それを効率的かつセキュアに実行するICTのプラットフォームづくりに注力していきます。 今後、社会課題の複雑化・大規模化に伴いICTに求められるのは、明確な解答が存在しない課題への対応や、変化する状況に応じた判断・アクションなど、より知的な「コトの理解」に基づいた処理です。 自動車の制御を例に説明します。最適な走行制御に必要なのは、単に交通の状況把握だけではなく、気候やドライバーの心理状態など、多様なコトをリアルタイムに判断することです。そしてその結果行われる制御の方法は1つとは限りません。このような高

    度な処理を実行するためには、人や機器の状態を常に把握できる仕組み——ネットワーク・コネクティビティが必要ですし、また人間の知性と同等、もしくはそれ以上の知的な思考・判断が可能な人工知能も欠かせません。加えて、判断結果に基づいて機器を自動制御する技術も求められるのです。 これらの新しい仕組みや技術に対応する新たなICTのプラットフォームづくりも重要です。例えば高度な人工知能を実現する際、現在のコンピュータでは消費電力が壁となってしまいます。そこで、電力効率の優れた脳型コンピュータなどの開発が求められます。また、自動運転の分野では、自動車本体で行う処理だけでなく、地域交通の全体最適に基づいた渋滞解消など、クラウド上での処理も欠かせません。そのため、機能ごとに最適な分散配置を実現する技術が必要になります。セキュリティ面でも同様に、運転に関わる統合的なセキュリティの技術開発が求められます。 このようにNECでは、社会インフラのあらゆる領域に対し、多様な視点から技術開発を展開していきます。その詳細は次ページで説明します。

    社会価値

    ICTプラットフォーム

    サイバー世界

    実世界 制御・誘導見える化 分析データサイエンス

    モノ

    環境

    継続的サービス

    超カスタマイズ

    浸透するコネクティビティコトの理解

    強化される知性 サービスの起点となる柔らかいHW

    浸透するコネクティビティ

    強化される知性

    サービスの起点となる柔らかいHW

    社会に適応するロボティクス

    脳に倣うコンピューティング

    エッジに広がるクラウド

    IT・人・モノの全体セキュリティ

    脳に倣うコンピューティング IT・人・モノの全体セキュリティエッジに広がるクラウド

    社会に適応するロボティクス

    2020

    コトがつながる

    コト理解

    サービス化

    データセンター/エッジ連携

    IoTセキュリティ

    2025~

    推論・判断

    自律協調

    右脳型処理

    機能分散

    全体セキュリティ

    モノがつながる

    ~現在

    単機能

    左脳型処理

    データセンター集中

    サイバーセキュリティ

    ソフトウェア化

    分析・認識

    4つの提供価値

    明るく希望に満ちた社会の実現に向けて 第1章

  • 18

     急速に進化する情報化社会は、より快適な生活や新たな経験をもたらす反面、対処しなければならない情報量が増えすぎてしまうという問題を生じさせています。検索によって、情報の絞り込みはできますが、得られた中身を精査し、理解する部分は、まだまだ人が時間をかけて行っているのが現実です。 この分野に大きな期待を集めているのが人工知能です。過去の情報を整理したり、それらの情報に潜む規則性や傾向を抽出したりといった段階に留

     通信技術の発展に加え、屋内・屋外を問わずインターネットにつなげられる環境が整い、IoTによってさまざまなモノもネットワークに接続されつつあります。人やモノが常時インターネットにつながり、そのデータをコンピュータが分析することで、人の動きや物の温度といった「人やモノの状態」から、企

    業の活性化状態や機器の稼働状況など「コトの状態」までも「見える化」が広がっていくでしょう。 現状では、このような人や企業活動レベルでのつながりは特定の組織やドメインに限られていますが、今後はその範囲が社会規模に広がります。組織やドメインの壁を越えて資源を共有したり、異分野の英知を結集してイノベーションを起こしていくことも可能になるでしょう。将来的に価値観や制度すらも動かすことになっていくでしょう。

    まっていたコンピュータが、人工知能の進化によって、正解の見えない不確実な状況下での新たな観点や要因の提示、検証による集約などを行えるようになっていくでしょう。定型業務や一部の知的労働を含めた仕事を人工知能に任せる一方で、私たち人は、戦略立案などのより高度な意思決定、または感情や感性が大きな役割を果たす仕事に集中できるはずです。洗練された未来の人工知能は、「知性」を強化してくれる人類のパートナーとして期待されています。

    Augmented Wisdom :強化される知性

    Pervasive Connectivity :浸透するコネクティビティ

     人工知能のような高度な知的処理には膨大な処理が必要ですが、従来のノイマン型コンピュータのアーキテクチャでは、消費電力もスケールに比例して増大していきます。 一方、人間の脳が行っている処理は極めて高度で、消費電力も20ワット程度と極めて小さいことが知られており 、その機構を模した新たなコンピューティング・アーキテクチャの研究が進展しつつあります。 今後は、従来のような汎用処理や厳密計算にお

    いてはノイマン型コンピュータを利用し、より人間の思考に近い専用処理やあいまいな計算は、脳を模した非ノイマン型コンピュータによって行うといった、混合型のアーキテクチャによるコンピューティング技術が重要になっていきます。

    Brain-Inspired Computing :脳に倣うコンピューティング

    社会変革をもたらす技術の世界観 NECは、新たな社会変革を起こす技術分野として、下記7つを注視しています。

  • 19

     仮想化や抽象化といった ICTの進展により、多くのハードウェア(HW)の機能をソフトウェアで定義することが可能になってきました。こうしたソフトウェア化の流れは、IT機器のみならず飛行機や自動車にまで広がってきています。 ソフトウェア化された柔らかいハードウェアは、運

    用中であっても機能を追加・変更することが可能になるという大きなメリットを有しています。そのようなハードウェアの設計は、将来の新しいサービスの追加を予見したものでなくてはなりません。こうした物理システムの変化は、アフターサービスといった従来の概念を超え、製品の提供者と顧客とを永続的につなげるサービスへと変わっていくでしょう。

    Adaptive Robotics :社会に適応するロボティクス

    Service-Oriented Hardware :サービスの起点となる柔らかいHW

     この先 IoTが進展していくことで、センサーやアクチュエータ、各種ネットワーク機器など、ネットワークのエッジ部分にも計算処理機能が備えられるようになるでしょう。そうした未来のIoTシステムは、クラウドとエッジの双方を組み込んだ構成となり、データ量やリアルタイム性などの要件に応じて役割を分け、柔軟な処理、動的な制御が可能となっていくでしょう。実世界の情報は、より近い場所で処理されていくため、激しい変化にも、素早く対応できる価値が生まれます。

     IoTの普及は、セキュリティの対象領域を物理システムへと拡大していきます。実世界と結びついた IoTシステムでは、サイバー攻撃と同時に、人間による設備への侵入や破壊などのリスクも考慮しなければならず、それらのリスクは個別ではなく相互に連携して発生する可能性があります。サイバーセキュリティの強化とともに、映像監視による侵入発見など、実世界のセキュリティ対策と連携させた全体セキュリティの強化が必要になります。

    Cloud to the Edge :エッジに広がるクラウド

    Holistic Security :IT・人・モノの全体セキュリティ

     生産性の向上に直接寄与し、当たり前になりつつあるロボティクスですが、ロボットをネットワークにつなげることで、知能・感覚・駆動を分散させる「クラウドロボティクス」という新たな概念も提唱されています。これにより、ロボティクスは実世界に働きかける制御の役割を果たすものとして、ICTシステムの重要な構成要素になっていきます。 さらに、ロボットは目的に応じ、産業用のもの、移動のためのもの、人間とコミュニケーションを行うためのもの、など異なる方向で進化をしていきま

    す。ロボットが自律性を獲得することによって生産性が飛躍的に向上するとともに、人のパートナーとしても、社会の中で重要な役割を担う存在になっていくでしょう。

    明るく希望に満ちた社会の実現に向けて 第1章

  • 20

    社会・お客様の課題 お客様への価値提供

    エネルギー、食糧、水などの資源不足や偏在/地球温暖化による自然災害甚大化や生態系への影響

    都市インフラ整備/セキュリティなど社会の安全・安心の向上/ライフスタイル支援/高齢化対策 など

    価値創造の手段

    コラボレーション● ソーシャルバリューデザイン● パートナリング● オープンイノベーション● リーンスタートアップ

    など

    ICTアセット● ビッグデータ● SDN● クラウド基盤● サイバーセキュリティ

    など

    協奏

    お客様と共に創る未来第2章NECは地球環境から、社会、産業、人々の生活まで広い視野で世界を見つめ、短絡的な課題解決ではなく本質的な課題解決を追究し、お客様とのコラボレーションを通じて、お客様の価値と社会の価値を両立した、明るい未来の実現を目指していきます。

  • 21

    価値創造の手段の例

    「a brighter world」の実現に向けて 本章では、豊かで明るい未来 「a brighter world」 を実現するために、NECが取り組む7つの社会価値創造テ-マをご紹介します。 NECは社会価値創造への出発点として、 「社会やお客様の本質的価値の追究」 を大切にしています。本質的な 「社会・お客様の課題」 を捉え、お客様の発展のみならず、持続可能な社会の実現を探求し続けます。 そのために、NECはお客様やパートナー企業に留まらず、社会を構成するさまざまなステークホルダの皆様と「協奏」し、「社会価値の共創」に取り組んでいます。 先端の 「ICTアセット」、長年培ってきたシステム構築・サービスの知見に加え、 「問題解決に向けたパートナリング」 や 「新しいビジネスモデル」 も価値創造の手段として融合させ、 「a brighter world」 の実現に向けた貢献を目指します。

    ソーシャルバリューデザインフィールドワーク(現場観察・調査)により抽出した課題に対して、「利用者」と「社会」の2つの視点で解決策を提供する取り組みです。

    リーンスタートアップ複雑な社会課題に対して、仮説構築、検証を短いサイクルで繰り返し、最小のコストと時間で本質的な課題解決を目指す取り組みです。

     

    Social Value Design

    イノベーション

    ソーシャルエクスペリエンス

    ユーザーエクスペリエンス「利用者」の視点で

    価値を向上させる

    2つの視点を持って

    新しい価値を創出する 「社会」の視点で

    価値を向上させる

    User Experience Social Experience

    Innovation

    ソーシャルバリューデザイン

    時間

    ピーク(最大需要)

    設備の使用率 平準化

    所有

    シェア

    製品データ

    アイデア

    構築する

    計測する

    学ぶ

     

    Social Value Design

    イノベーション

    ソーシャルエクスペリエンス

    ユーザーエクスペリエンス「利用者」の視点で

    価値を向上させる

    2つの視点を持って

    新しい価値を創出する 「社会」の視点で

    価値を向上させる

    User Experience Social Experience

    Innovation

    ソーシャルバリューデザイン

    時間

    ピーク(最大需要)

    設備の使用率 平準化

    所有

    シェア

    製品データ

    アイデア

    構築する

    計測する

    学ぶ アイデアを最低限の製品として構築し、利用者の反応を観察、学びを素早く反映し、改善・再考するサイクルを繰り返します。

    お客様と共創する社会価値

    限りある資源の効率的な利活用 / 環境変化への柔軟な対応 / 市民生活の安全・安心の向上

    防災・減災 /インフラ維持/セキュアなネットワーク提供 /食糧や物資の安全提供/格差のない医療・教育 など

    SI・サービス● コンサルティング● システムインテグレーション● 運用・保守サービス● ファイナンシング

    など

    共創

    お客様と共に創る未来 第2章

  • 22

    持続可能な国際社会を目指して 世界全体の急速な人口増加と都市化は、地球環境への大きな負担となり、さまざまな脅威を人類に突きつけます。社会が持続するためには、国や地域の枠を超えた地球的な視点から、世界全体で地球環境への負荷を減らし、安全・安心に暮らせるよう自然災害の発生に備え、資源を持続的に利用できるよう効率よく公平に分配していかなくてはなりません。 NECは、宇宙から海底までの広範囲な領域で事業を展開しています。地球環境に関するあらゆるデータを集め、読み解くことは、地震や暴風雨、津波などの災害発生予測や、エネルギーの需要予測に結びつきます。NECは、多くの人々が災害から身を守れるように促したり、限りある資源の無駄を減らすなど、安全・安心で効率・公平な社会の実現を目指しています。

    環境課題の解決を支える未来のICT 人工衛星からのセンシング技術は急速に進歩して

    います。衛星から地上の状態を数センチ単位で識別できるセンサーは、世界中の森林の植生状況から植物の生育状況まで、リアルタイムで詳細な把握を可能にします。加えて地表温度やCO2濃度、海面温度や水循環などあらゆるセンシングデータを経年で把握・解析することで、地球温暖化による環境の変化がもたらす植物や生態系への影響を明らかにし、予測できるようになります。IoTの進展でさまざまなモノやセンサーなどがつながることで、身の回りから収集できる環境情報も広がっていきます。つまり、地球全体を宇宙から海底までセンサーでモニタリングすることで、あたかも人間の健康診断のように、地球環境の状態をリアルタイムに診断でき、適切な対策へ役立てることができます。私たちが今後も地球からの恵みを享受し続けるためには、地球環境を健全な状態に保たなければなりません。NECは ICT技術を駆使して地球環境の悪化状況を正しく把握し、最も効果的な対策を考え、効率的に実施することを支援します。 また、地球温暖化による気候変動はすでに社会

    地球との共生

    Sustainable Earth

    これからの30年、世界人口の増加と都市化は地球環境に大きな負担と自然災害の増加などの脅威をもたらします。NECは、変化し続ける地球の姿を見える化し、限りある資源の効率・公平な配分や、環境課題の解決を通じて、地球と共生する社会の実現に貢献します。

  • 23

    へ影響を及ぼしています。私たちは、安全・安心に生活していくために、その影響に対しICTを用いて備えることができます。 例えば、地球温暖化により乾燥化が進む地域では、森林火災の多発と大規模化が予想されます。衛星からのモニタリングは、世界各地の気候変化や森林の状況をリアルタイムに捉えて、森林火災の発生予測の精度を高めることはもちろん、火災発生時には発生エリアや延焼範囲の特定、避難誘導や消火活動計画の立案などに活かすことができます。 持続可能な社会の実現に向けて、あらゆる国や地域、企業、個人は連携し、地球規模の環境課題に取り組む必要があります。NECが目指すのは、宇宙から海底まであらゆる場所でICTを活用することで、その解決にグローバルで貢献し続けていくことにあります。

    延焼予測を行う森林保全モニタリング

    NECの取り組み 持続可能な地球を支えるICTを、NECはこれまで世界各国で実現してきました。 例えば、人工衛星に搭載した「合成開口レーダー」は、天候や昼夜に関係なく広範囲にわたり森林を観測できるため、違法伐採の取り締まりに貢献します。 さらに、航空写真の3次元解析や、分光スペクトル解析を組み合わせることで、森林の木々の高さや樹種の特定を低コストかつ広範囲に行える技術を開発し、森林保全に活用されています。また、海底におけるケーブル式の海底地震観測システムから送られるデータは、リアルタイムに関係機関へ配信され、地震や津波による被害の軽減や避難などの防災対策に貢献するとともに、海洋プレートの構造解明や地殻活動の調査・研究に役立てられています。 そしてNECが開発に貢献した「地球シミュレータ」は、衛星や海底からの情報をはじめ、地球上のさまざまな観測データをもとに、地球規模での環境変動に伴う現象の原因解明や将来予測に活用されており、気候変動対策の議論においても重要な役割を果たしています。 このように、NECでは変化し続ける地球の姿をいろいろな角度から見える化し、環境問題の原因の究明や対策に事業を通じて支援することで、地球と共生する社会の実現に貢献しています。

    社会価値創造の例

    お客様と共創する社会価値お客様への価値提供社会・お客様の課題

    価値創造の手段ICTアセットSI・サービスコラボレーション

    温室効果ガスの排出削減

    気候変動による災害への備え

    資源の持続的な利用

    モニタリングなどによる環境把握・予想

    データ解析による災害発生の予知・予測

    資源の需要予測や最適な受給調整

    効果的・効率的な地球温暖化防止対策

    被害の未然防止や適切な避難誘導

    資源の無駄削減と安定供給

    お客様と共に創る未来 第2章

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    安全・安心な都市・行政基盤

    Safer Cities & Public Services

    人口の集中やグローバル化が進む都市では、サイバー攻撃で安全を脅かされる新たなリスクも高まっています。NECは、犯罪や災害を未然に察知するとともに、産・官・学に加えて市民の力も活かして地域の魅力を発揮できるグローカルな行政基盤の実現に貢献します。

    ICTが支えるボーダレスな都市連携 世界的に都市化やグローバル化が進行することで、人々や産業の活動はより一層ボーダレスになっていくことでしょう。実世界だけでなくサイバー世界でも、国家や自治体、企業などの境界を越えた連携が深まるようになり、ビジネスが活性化し住民の生活が充実していきます。ユニバーサルデザインや機械翻訳技術が組み込まれることで、言語や文化などの違いによる壁も解消されます。各都市で開催される大型イベントやビジネス、観光などの魅力も高まり、人やモノの流動性が活発化するでしょう。 一方で、そうした都市では安全・安心の確保や維持が課題となります。セキュアかつ利便性の高いサービス提供には、生体認証技術が重要な役割を果たすでしょう。指紋や顔、静脈や虹彩などの生体情報を柔軟に組み合わせた認証技術によって、強固なセキュリティ環境を実現するとともに、認証のためのモノや手間を必要とせずにサービスを享受で

    きる高い利便性を提供します。

    サイバー/フィジカル双方で都市を守る 将来的な都市の安全面では、サイバー上からの攻撃がますます高度化し激化することは避けられません。サイバー攻撃は機械学習を活用した巧妙かつ継続的なものとなるおそれがあるため、攻撃を受ける国家や企業は、熟練したセキュリティアナリストのノウハウを人工知能に学習させて、自動防御の高度化を図ることなどで攻撃を防ぐようになるでしょう。有事の際には、SDN(Software-Defi ned Networking)などを活用したセキュリティ対策システムが緻密な自動遮断などで出口対策を施し、被害を最小限にとどめます。 ICTを活用した脅威への対応は、フィジカルにおける災害対策の高度化も実現します。人工衛星やドローンなどからの情報を駆使し、来るべき災害への備えが進みます。常に変化を続ける都市の大気や水、土壌の状況、住民の活動に加えて、衛星画像や

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    気象データを重ね合わせることによって、災害発生の事前予測や迅速で的確な避難誘導につなげます。そして、住民にもたらされるリスクを高精度に、わかりやすく可視化して提供します。

    都市連携を実現する共通基盤 安全・安心な行政サービスは、世界中の国や地域で待ち望まれています。将来、セキュアで効率的な都市運営を通じて人々に最適なサービスを提供するために、国家や自治体に縛られない柔軟な連携が進みます。こうした連携の実現には、ICTによる共通基盤の存在が欠かせません。NECは、ICTを土台にした共通基盤上で省庁や自治体、企業が連携することで、世界のどの都市にいても、より利便性の高いサービスが提供されるような社会を実現していきます。

    NECの取り組み 世界各地でICTを通じた安全・安心、そして快適な街づくりが進んでいます。NECは、世界ナンバーワン※1の精度を誇る顔認証技術や指紋認証技術といったパターン認識技術の提供を通じて多くのプロジェクトに参画し、豊富な実績を積み重ねてきました。 NECは、より高い安全・安心の提供を目指した研究開発を推進しています。例えば、公共空間に設置されたカメラが撮影した映像から、個人を特定することなく群集の混雑状況や異変を検知する「群衆行動解析技術」がその1つです。この技術は、事件や事故の兆しを事前に発見すべく、各都市での実用化が進められています。 また、NECは防災領域にもIoTを適用しています。センサー技術とビッグデータの融合による危険予測サービスとして、土中の水分量センサーのみで斜面崩壊の危険度をリアルタイムかつ高精度に検知可能な、土砂災害検知・予測ソリューションの実用化もすでに成功しています。 さらに、サイバーセキュリティ領域においては20年以上にわたり培ってきた豊富な知識や技術、サイバーセキュリティ・ファクトリー※2の運用で得たノウハウを活かして、SDNや人工知能などの先進技術を適用した新しいセキュリティ技術の研究にも取り組んでいます。※1 米国国立標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)のベンチマークで1位を獲得※2 NECのサイバー攻撃対策の中核拠点

    社会価値創造の例

    生体認証によるゲートレスな出入国管理

    お客様と共創する社会価値お客様への価値提供社会・お客様の課題

    価値創造の手段ICTアセットSI・サービスコラボレーション

    国家や自治体などの境界を越えた連携

    安心して活用できる行政サービスの提供

    来るべき災害への備え

    画像認識技術による安全・安心な街づくり

    サイバーセキュリティのグローバルな連携

    センサー技術とビッグデータの融合による高度な危険予測

    サイバー/フィジカル双方での安全・安心

    セキュアで利便性の高いサービス

    災害の事前予測や迅速で的確な避難誘導

    お客様と共に創る未来 第2章

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    安全 ・ 高効率なライフライン

    Lifeline Infrastructure

    世界的な都市化の進展で、生産・生活基盤の多様化・複雑化が加速しています。NECは、高度で柔軟なICTシステムで地域・時間格差を解消し、24時間365日途切れることのないインフラを実現することで、大切な資源を安全かつ効率的に供給し続けます。

    「柔らかい社会インフラ」の実現へ 電気、ガス、上下水道、通信、交通、そして生活必需品などの物流網は、人々の生活および経済活動の生命線です。これら暮らしを支える社会インフラは、世界的な都市化に伴う加速度的な人口集中により、その需要に対し供給が追い付かない状況が起こるでしょう。これからの社会インフラは、人口構造や技術、老朽化といった変化、さらには増大する巨大災害リスクなどに柔軟な対応を行う必要があります。 将来の社会インフラを支えるICTは、個々のインフラをマネジメントするだけではなく、さまざまなインフラをつなげて、統合的にマネジメントする役割を担うように進化していきます。今後、社会インフラは ICTと融合することで、従来の単なる物理的なインフラから、ソフトウェア化されてダイナミックに変化する「柔らかい社会インフラ」へとパラダイムシフトするでしょう。 ICTが支える将来の都市で活動する人々は、スマートフォンやウェアラブル機器、各種センサー群

    により、ICT網と常につながっています。人々の生活リズムや需要の変化、さまざまなインフラの状況、天候、事故、災害の状況など、多様な情報が社会インフラを統合的にマネジメントするシステムと緊密かつ臨機応変に結びつくことで、社会インフラのダイナミックな全体最適化を実現します。 新しい社会インフラは人々の一番近いところに寄り添い、故障予知や需要予測などで将来のインフラへの変化を先取りして、人々の生活の質や都市のレジリエンス(強靭性)を維持向上させます。 将来の社会インフラの全容は、人々の暮らしを支えるさまざまなライフラインが生物の神経系のように有機的につながり、ICTで統合的にマネジメントされることで、多角的に把握されます。さらに、人工知能による網羅的な相関分析が、高度な知見を見いだし、革新的な都市経営支援も実現するでしょう。 例えば急速に都市化する新興国の課題を、需要予測、合意形成、柔軟なプライシングなどのマネジメント施策で補います。また、災害などの緊急時には、リアルタイム、ダイナミックに通常とは異なる供給系統に切り替えることで、人々を支えるライフラ

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    インを維持します。サイバー攻撃に対しても、微細な予兆をもキャッチするセキュリティ技術が機能することで、人や物理的なインフラの変化に柔軟に対応する、レジリエントな社会が実現します。

    生活の安心と豊かさを支えるICT 将来の都市生活者を支えるライフラインは、高度なICTなくしては立ちゆかないでしょう。そのため、個々のインフラも進化を続けています。 風力・太陽光といった不安定な新エネルギーのコントロールや、老朽化した水道など物理的なインフラを低コストで復旧させるためのリアルタイム診断・データ分析・制御などは人々に大きな恩恵をもたらします。 さらに、食料・生活必需品など、交通インフラによる調達・物流網についても、24時間365日の確実な稼働をICTが支えることで、人々の豊かな生活を創出していく──そんな未来をNECは描き続けます。

    NECの取り組み ライフラインを支えるインフラを最適制御するためには、膨大なセンサー情報を収集してリアルタイムに分析・予測する必要があります。そのためNECでは、「インバリアント分析技術」や「異種混合学習技術」など、実世界のさまざまな事象をリアルタイムに分析する技術の開発を進めています。一方、ライフラインへのサイバー攻撃に対応するため、セキュリティ・コンサルティングサービスを通じた課題解決に取り組んでいます。 また、高効率なライフライン実現に向けた各分野での研究開発や実証実験も進めています。電力では、100万台以上に及ぶ分散した蓄電池やEV(電気自動車)などをクラウドから制御することにより、既存の電力系統と同等のリアルタイムな電力需給調整を実現する「仮想統合制御ソフトウェア」を開発しました。水道分野では、海外の産官学のパートナーと連携し、水資源の有効活用を目指すスマートウォーターマネジメントの研究・実証に取り組んでいます。さらに流通、物流向けには、異種混合学習技術をベースとした需要予測・自動発注の仕組みを大手事業者へ提供しており、小売業における日配品廃棄の40%削減も実証段階では実現しています。  NECは高度な技術を土台に、多様なライフライン分野で故障予知や需要予測、最適制御といった新たな価値創出を目指した取り組みを進めています。

    社会価値創造の例

    ICTが支える安全・高効率なライフライン

    お客様と共創する社会価値お客様への価値提供社会・お客様の課題

    価値創造の手段ICTアセットSI・サービスコラボレーション

    急激なインフラ需要への対応や維持コストの抑制

    生活レベルの維持・向上

    ライフラインを支える社会インフラの最適制御

    エネルギーのコントロールや途切れることのない調達・物流網

    ICTに支えられた安全・安心な都市経営

    生活者を支え続けるライフライン

    お客様と共に創る未来 第2章

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    豊かな社会を支える情報通信

    Communication

    人・モノ・コトがつながるデジタルネットワークの進化、そして、社会の高度化に伴って情報や知識の重要度が高まっています。NECは、海底から宇宙まで広がる情報通信技術アセットを通じて世界中の人々や企業が情報・知識を安全・安心・公平に活用できる情報通信基盤を構築します。

    47億人、1兆個のIoTデバイス ネットワークに接続される人口は今後も増加を続け、2025年には現在の1.5倍に当たる47億人に達する見込みです。同時に各種センサーなどのさまざまなデバイスもネットワークに接続されるようになり、その総数は実に1兆個にもなると見られています。 このような世界では、人の感覚からモノの情報までを効率よくつなぐIoTを支える情報通信基盤が重要な役割を担います。また、各種センサーなど無数のデバイスを活用した安全・安心で豊かな社会を実現するソリューションへのニーズも高まり、さまざまな用途で情報通信が利用されるでしょう。こうしてつながった人とモノの情報は、食糧・水不足や災害、医療・エネルギー問題などの社会課題の解決にも大きく貢献します。

    次世代のコミュニケーション環境 場所や時間といった物理的な制限を意識しないネットワークの普及により、あらゆる人やモノの間には、常に「つながっている」状態が実現されるようになり

    ます。人やモノ、さらにはそれらに付随した状態・状況・関係などの「コト」までつながった世界では、遠隔医療や遠隔教育、自動車の運転支援などの新しい社会サービスが創出されることでしょう。また、こうしたつながりは、災害発生時の支援手段としての発展も期待できます。孤立地域の被災者に対しても、通話やメールなどによるコミュニケーションを維持し、状況に応じて必要な通信環境を提供することで、「つながっている」という安心感を提供できます。 一方で、常に「つながっている」状態は、人々の安全・安心そして公平を阻害するリスクも生じさせます。例えば、現在よりもはるかに重要な役割を担うようになったシステムがサイバー攻撃の被害を受ければ、その深刻度は個人や企業にとってはかり知れないものとなります。こうした被害を最小に留めるだけでなく、未然に防ぐことが次世代の情報通信基盤に求められる最も重要な課題です。 ここで鍵を握るのは、セキュアな情報通信を実現する技術の進展です。暗号化でデータを保護するだけでなく、人の声・顔・DNAといった生体情報を活用し、ネットワークにつながるあらゆるモノやコトが

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    識別情報を持つことで、改ざんやなりすましといった脅威からコミュニケーションが保護されます。またネットワークに流れているデータトラフィックの変動やパターンを分析することにより、外部からのサイバー攻撃などの脅威をいち早く検知し、仮想ネットワーク技術などを駆使することで、その脅威を回避します。

    新しいコミュニケーションの世界 IoTが当たり前に普及するこれからの社会では、場所を越えた連携やセキュアな通信を提供する新しいコミュニケーションが、今まで以上に安全・安心な生活を実現するでしょう。例えば遠隔医療によるバーチャル診断では、患者の「感覚」 や「気持ち」 までも医師に伝えられるようになります。高度な技量を有する医師による遠隔診断・遠隔手術をどこでも誰でも公平に受けられる、安全・安心な生活が実現されるでしょう。

    NECの取り組み 次世代のネットワークは、超高速であるのはもとより、遅延が少なく、セキュアで安定していることが重要です。さらに、必要に応じて通信の経路や容量を自在に構成できる柔軟性、運用における高い効率性なども求められます。 NECは、通信キャリアのトラフィック量やネットワーク遅延情報と、天候・交通などのデータを組み合わせて分析することで、ネットワークの障害や利用者の満足度、混雑などをリアルタイムに予測し、リソースの割り当てや経路の変更などを柔軟かつ動的に制御するソリューションの実現にも注力しています。 さらに、ネットワークとビジネスの運用を一元的に管理するソリューションによって、通信キャリアの事業運営全体の効率化を支援しています。 またNECは、IoTの普及に向けて、センサーなどIoTデバイスの特性や状況に合わせて制御信号を削減し、ネットワーク負荷を低減する技術を世界に先駆けて開発しました。これらの新技術を5Gの標準規格として、国際標準化団体へ提案し、グローバルな技術革新に貢献しています。 NECは、海底ケーブルや衛星通信、無線基地局拡充への積極的な取り組みなど、世界中の人とモノが、いつでも、どこでも、絶えることなくコミュニケーションできる環境構築を目指しています。

    日常を見守る遠隔医療モニタリング

    社会価値創造の例

    お客様と共創する社会価値お客様への価値提供社会・お客様の課題

    価値創造の手段ICTアセットSI・サービスコラボレーション

    人・モノをつなぐ情報通信基盤の確立

    高まるセキュリティ脅威への対策

    サービス需要に応じたネットワークを提供

    セキュアな情報通信技術によるコミュニケーションの保護

    「つながっている」安心な環境構築

    公平に受けられる新しい社会サービス

    お客様と共に創る未来 第2章

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    産業とICTの新結合で変革する世界

    Industry Eco-System

    IoTによる人・モノ・プロセスの有機的結合、急進する生産や販売のデジタル化、多様化する消費体験や高度化するニーズへの対応による新たなビジネスの登場など、産業構造が変革し続けています。NECは、新しいデジタルプラットフォームを通じて、次世代の産業エコシステムを実現していきます。

    なく、ユーザーをより一層支え続けるパートナーとなり、従来以上にビジネスの機会が増大します。

    産業基盤の変革をもたらすICT 高度化する消費ニーズに対応するための産業基盤のデジタル化もまた、ICTの進化により急速に進みます。 生産や物流、販売といった産業領域も、人やモノ、プロセスの状況がセンサーなどでリアルタイムに可視化され、サプライチェーンがより密に連携するようになります。さらに人工知能による自律制御が施され、全体最適により、生産性や効率性の高いバリューチェーンが実現します。 店舗業務における意思決定にも、購買データにとどまることなくIoTにより集められた店舗内の状況、ユーザーの購買行動、購買心理といった大量のデータが活かされるようになります。商品チェックは人工知能が画像解析により瞬時に行い、接客や精算といった業務もロボットが担うようになるでしょう。人とロボット、ICTの共創により高度なユーザー体験の提供と、生産性の両立が実現します。 需給予測においても、個人の消費レベルまでそ

    ユーザーと産業の深まる関係性 人やモノ、コトが常につながることで、産業だけでなくユーザーにも大きな変革が起きます。モノからコトの消費、そして所有からシェア、メーカーとの共創、ユーザーと産業との関係は変化し続けています。  例えば、ユーザーはより消費プロセス体験そのものに楽しさを求めるようになっていきます。遠隔地のアドバイザーと会話を楽しみながら、拡張現実を活用して商品を疑似体験し、行動履歴やセンシング情報をベースにカスタマイゼーションが施された製品が、瞬時に3Dプリンターから出力される未来も実現するでしょう。 さらに、さまざまなユーザー体験がクラウドにデータとして蓄積され、利用特性を人工知能で分析することにより、ユーザーにとってより豊かで、喜びある体験を継続的に提供し続けることができるようになります。 製造業の領域では、組み込んだセンサーからさまざまなデータがリアルタイムに読み取られることで、製品の利用状況が常に把握され、正しい利用方法や故障の予知、消耗品の購入、新しい使い方の提案が行われるでしょう。単なる商品提供者では

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    NECの取り組み 経済のグローバル化に伴い、研究開発・企画・設計、開発、調達・物流・販売といったバリューチェーンは、さらにダイナミックに進化するでしょう。NECは、将来の産業構造変革や新たな価値創造の動きに対応し、ICTを通じてバリューチェン・イノベーションを実現し、お客様の事業を支えていきます。 具体的には、これまでの造る・運ぶ・売るから、消費体験の領域へと広がり続けるIoT化の先を見据え、分析・予測に基づいてバリューチェーンの変化にリアルタイムかつダイナミックに対応できる、次世代のSCMを支える基盤の構築を目指しています。NECは、画像認識技術の多用途展開に力を入れていきます。工業製品・部品の個体を識別する世界初の「物体指紋認証技術」をはじめ、大量商品の瞬時の識別、店舗や工場での人の動線分析など、あらゆる人やモノ、コトの高度な理解を目指して研究開発を進めています。さらに、IoTを活用した次世代モノづくりソリューションとして、「NEC Industrial IoT」にも取り組んでいます。またNECが中心