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Effect of daily aspirin on long-term risk of death due to cancer: analysis of individual patient data from randomised trial 癌による長期の死亡リスクに対する日々のアスピリンの影響: ランダム化試験からの個々の患者データの分析 Prof Peter M Rothwell FMedSci , Prof F Gerald R Fowkes FRCPE, Prof Jill FF Belch FRCP, Hisao Ogawa MD, Prof Charles P Warlow FMedSci and Prof Tom W Meade FRS

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Effect of daily aspirin on long-term risk of death due to cancer: analysis of individual patient data from randomised trial

癌による長期の死亡リスクに対する日々のアスピリンの影響:ランダム化試験からの個々の患者データの分析

Prof Peter M Rothwell FMedSci , Prof F Gerald R Fowkes FRCPE, Prof Jill FF Belch FRCP, Hisao

Ogawa MD, Prof Charles P Warlow FMedSci and Prof Tom W Meade FRS

サマリー'背景(

• 少なくとも5年間のアスピリンの毎日の服用は、結腸直腸癌のリスクを低下させる。

• アスピリンが他の癌'特に消化管(のリスクを低下させるかもしれないことが示唆されるが、人における証明は不足している。

• ランダム化試験および血管イベント予防のため毎日服用している場合の投与期間中および投与後に癌による死亡を調査した。

サマリー'結果(

• 適正な8件の試験研究'25570例の患者、674の癌死(では、アスピリンは癌による死亡を減らした。

• 個々の患者のデータ'入手可能な7件の試験'23535人の患者、657人の癌死(からの分析に関しては、アスピリンの有益性は5年後の追跡調査のみ明らかだった。

• 20年間の癌死のリスク'3件の試験の12659人の患者における1634人の死亡(は、対照群よりもアスピリン群で低い。

• 死亡に対して効果がある潜伏期間'投与期間(は食道、膵臓、脳、肺癌では5年以内だが、胃、大腸、前立腺癌ではそれより延びる。

• 肺と食道癌については有益性は腺癌に限定され、20年間の癌死のリスクについて全体的な効果は腺癌の場合がもっとも大きい。

• 有益性'ベネフィット(はアスピリン用量'75mg

以上(、性別、喫煙とは無関係だったが、年齢とともに増大する'65歳以上では20年の癌死のリスクの絶対減少は 7・08%に達している(。

Introduction

• 経済発展した国々では生涯における癌のリスクは約40%であり、発展途上の国々において増加している。

• 癌の治療とは対照的に、薬剤を利用した疾病の予防の進展はほとんど無かった。

• しかし、アスピリンの長期使用はいくつかの癌、特に消化器系腫瘍のリスクを低下させることがいくらか示唆されている

• 動物モデルにおいて、アスピリンはいくつかの癌の発生率と成長率のどちらか'または両方とも(を低下させ、少なくともシクロオキシゲナーゼ'COX(酵素の抑制とプロスタグランジンや他の炎症伝達物質の生成減少に関与している。しかし、人間へ適用できるかどうかは分からない。

• ヒトにおける観察研究も、アスピリンが特定の癌のリスクを低下させる(厳密な研究では弱

い関連しかないなど矛盾はあるが(ことを示唆している。

方法'検索戦略と選択基準(

• アスピリンと対照のランダム化試験において4年の治療期間があったもの、および5年以上のもので平均あるいはメディアン値があるものを検索した。

• これらに合致した報告について以下のように調査した。

• アスピリン対非アスピリン薬剤あるいはアスピリン対アスピリン以外の抗血小板薬

• PubMedとEmbaseを利用して”randomised”および“aspirin” or ”salycyl” or ”an†iplateletおよび ”trial” を検索した。ただしヒトに限定。

試験期間中の死亡の分析

• 癌死リスクに関するアスピリンの配分効果と各試験の間の総死亡率は、オッズ比として表した'ORs;95%信頼限界CIs(

• プールされた推定値は、fixed-effects meta-analysis'固定効果モデルによるメタ解析(によって得た。• この方法は集められた研究結果のバラツキは偶然誤差であると仮定している

• 試験全体のアスピリンの作用で異質性を評価したあと、個々の患者のデータはプールされた。

異質性'Heterogeneity)とは• 複数の臨床研究の結果が一致しないことがあるがこれは異質性のためと考えられる。

• メタアナリシスにおける「異質性」とは,

統合する一次研究における研究間のバラツキ'これを統計学的異質性という(,

あるいは各研究における対象者'患者集団:性別、人種、年齢、疾患の重症度など(や介入方法,対照群,結果の指標'エンドポイント(,薬物の量・投与法、観察期間、研究手法などの違いや差'これを概念的異質性という(

• 癌死のリスクに関するアスピリンの累積効果はKaplan-Meier curves'カプラン・マイアー曲線(とlog-rank test'ログランク検定(および、層

別されたコックス比例ハザードモデル'生存に関わる多変数の効果を調べる回帰モデル(から得られる危険率'ハザードリスク;HRs(によって推定した。

メタアナリシスとは

• 過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法を用いて解析する方法。採用するデータは、信頼できるものにしぼり、それぞれに重み付けを行う。

• 医学分野では対象や研究方法が多様で、各種のバイアスが入りやすく、また研究の質のばらつきが大きい。

医学研究におけるバイアスと重み付け

• 公表論文は有意な結果のみが発表されることが多い。– 研究者がポジティブな結果が得られたときにのみ発表する「報告バイアス」

– 学会誌等の編集者が,統計学的に有意な結果の得られていないものはリジェクトする「出版バイアス」

• このため、単に報告を集めるだけでは、ポジティブ方向へバイアスがかかる。

• また、質の低い論文を他の優れた研究成果と同等に評価対象としてしまうと過大評価することになる。

• メタアナリシスでは、バイアスの影響を極力排除し、評価基準を統一して客観的・科学的に多数の研究結果を数量的、総括的に評価しようとしている。

データを統合するときの注意

• 過去の複数の研究結果を単純に足した場合には個々の研究結果とは異なる結果になることがある。

• これをシンプソンのパラドックスという。

シンプソンのパラドックスの例

治癒 非治癒 %

薬物X 9 1 90

対照 17 3 85

治癒 非治癒 %

薬物X 3 17 15

対照 1 9 10

治癒 非治癒 %

薬物X 12 18 40

対照 18 12 60

研究A研究B

複数の結果をまとめるには

• それぞれの試験研究の結果から効果量(effect size)を求める。

• 効果量の例:リスク差、リスク比、オッズ比など

イベント発生 イベント発生なし 合計

治療群 a b a+b

コントロール群

c d c+d

合計 a+c b+d a+b+c+d

イベント発生率:

治療群'TER)=a/(a+b)

コントロール群'CER)=c/(c+d)

リスク差'RD)=TER-CER=a/(a+b) - c/(c+d) null value=0

リスク比'RR)=TER/CER= a/(a+b) / c/(c+d) null value=1

オッズ比'OR)=(a/b)/(c/d)=ad/bc null value=1

• 効果量の重み付け平均を出す

–①個々の試験ごとにまず、効果量とその分散'バラツキを表す統計量(を求める

–②重み=1/分散とするのが一般的。

–③個々の効果量に重みをかけて、総和する。

–④上記の総和を、重みの総和で割る

同じに扱ってよいか?

サンプルサイズが大きい研究'バラツキが小さい(

サンプルサイズが小さい研究'バラツキが大きい(

計算結果をフォレストプロットする• フォレストプロットの表し方は,研究グループによって異なるが,英国のグループでは平均値のところを四角で印をつけ1(,95%信頼区間を線

で表し,症例数'ウェイト(に応じて四角の大きさを決定。精度の高い試験は大きく,逆に低いものは小さい。

• 個々の研究を総合した結果'重み付け平均(は菱形2(で表す

アスピリン対対照群のランダム化テストにおける癌死に関するアスピリンのメタ解析

null

value

■の大きさは一次研究のウェイト

95%信頼区間

重み付け平均とその95%信頼区間

Fig. 1

カプラン・マイアー法とは

• 臨床試験において観察期間を数個の期間'1年単位など(に区切るのではなく、死亡が1例ずつ起きた時点でその時点の生存率を逐次計算する方法。中途打ち切り例は、それが発生した時点で観察人数から除外する。

• これをもとに生存曲線'死亡曲線(を描く

個々の患者データが利用できた7件の試験の癌による死亡リスクに関するアスピリンの効果のプール解析7個の研究-23535人の患者データより

ログランク検定のP値

被験者数

Fig.2

ログランク検定'log-rank test(

• カプラン・マイヤーで作成できる生存曲線は視覚的なもので、2群に差があるかどうか直感的に把握しやすいが、具体的に有意差を示すかどうかは検定を用いる

• ログランク検定は、2つの生存曲線が同じかどうかを調べる

検定で、群ごとにイベント「あり」とイベント「なし」に集計した分割表'クロス集計表(のカイ2乗値を検定統計量として利用。帰無仮説'H0(:2つの生存曲線に差はない対立仮説'H1(:2つの生存曲線に差がある

一般的な5%水準で検定を行うのであれば、このときの有意確率'P(が0.05未満になる場合に、帰無仮説を棄却して有意差ありとする。

個々の患者のデータが利用できた7件の試験の間の癌による死亡リスクに関するアスピリンの効果のプール解析原発がんの種類によって層別

原発がんの部位消化管食道膵臓結腸・直腸胃その他消化管合計

非消化管肺前立腺膀胱・腎臓その他の固形がん非消化管合計

原発不明固形がん合計微少タイプ腺がん非腺がん不明

血液がんがん合計ETDRS研究含む全て

Table 1

3件の長期の追跡調査をした臨床試験による、20年間の固形癌による死亡リスクの対照'コントロール(に対するアスピリンの効果

Fig. 3

長期の追跡調査による3件の試験、原発腫瘍の種類によって層別した、少なくとも5年の予定の治療長さをもつ10502例の患者における臨床試験期間中と期間後の癌による20年の死亡リスクに関するアスピリンの効果のプール解析

固形がん消化管

食道膵臓結腸・直腸胃その他消化管合計

非消化管

肺前立腺膀胱・腎臓その他固形がん非消化管合計

原発不明固形がん合計

微少タイプ腺癌非腺癌不明

血液がんがん合計

Table 2

長期追跡による3件の試験で、少なくとも5年の治療期間をもつ10 502例の

患者における、最も一般的な致命的な癌による20年の死亡リスクに対するアスピリンの影響

食道 胃

膵臓 直腸・結腸

肺 前立腺

膀胱・腎臓血液

Fig. 4

長期の追跡をした、3件の試験で、少なくとも5年の予定の治療期間をもつ10502

例の患者において、年齢で層別した消化管癌とその他の癌による死亡リスクに

対するアスピリンの影響

Fig. 5

Thrombosis Prevention Trialの長

期の追跡調査の間の腺癌による死亡リスクに対するアスピリン錠またはワルファリンに対するプラセボの影響の比較

Fig. 6 肺腺がん

消化器腺がん

前立腺がん

すべての致命的腺がん

考察

• 我々は、5年より長くアスピリンでの治療が結腸・直腸癌の長期リスクを減らすことをこれまでに示した。

• ほぼ2000例の癌死の分析では、現在、アスピリンもいくつかの他の一般的な癌による死亡を減らすことが示された。

• 1 メタアナリシスによって、アスピリンが試験期間中、癌による死亡リスクを約20%低下させることを示した。

• 2 個々の患者データの分析によって、この有益性が5年の治療後の死亡における、主に約30-40%の遅発性の減少にもとずくことを示した。

• 3 3件の大規模試験の長期の追跡調査によって、固形癌による死亡の減少が20年の間維持されることを示した。

• 4 知見が一般化できることを示唆して、非常に異なる集団にもかかわらず、これらの効果は、試験全体で整合性があった。

• 5 結腸・直腸癌について示されるように、アスピリンの作用は試験治療の継続で増加した。• 6 効果は特定の癌に限られていた'特に腺癌(。• 7 効果は毎日75mg以上のアスピリン投与量で増加するようには見えなかった。• 8 試験に参加した患者範囲で、癌による死亡の絶対減少は、年齢と共に増加した。

• 最後に、致命的な癌のリスクに対するアスピリンの影響は、総死亡率のわずかな減少に結びついた。

知見

• 毎日のアスピリン投与群とアスピリン非投与群との比較で、すべてのランダム化試験と4年を超える予定のランダム試験の平均時間によってではなく、個々の患者データを使用して、アスピリンが癌による死亡リスクを約20%低下させることを示した。'主に5年後の癌死の34%の減少に起因する(

• これらの試験のうちの3件の患者の長期の試行後の追跡調査によって、癌による死亡の20年のリスクがアスピリン群で約20%より低いままであることを示した、また、その有益性は最初に予定していた治療期間とともに増加した。

• 死亡に対する効果が出る前の潜伏期間は食道、膵臓、脳、肺癌では約5年であった、しかし、胃、結腸・直腸と前立腺癌ではそれより長い。

• 肺と食道ガンついての有益性は腺癌に限定される。

解釈

• 以上の知見は、アスピリンがいくつかの一般的な癌による死亡を減らすという、人における最初の証拠を示した。

• 有益性'ベネフィット(は異なる試験集団全体で整合性があった。そして、この知見が一般化できそうなことを示唆した。

• 今回の分析は、いくつかの点でこれまでと同様だった。

• 第1に、研究した試験の一つ以外は二重盲検だったにもかかわらず、ランダム化試験においてドロップアウト率が高いものがあった。

• 長期の追跡調査が行われた試験では、アスピリン群の患者の約40%は、試験期間末までには治療を中止した。

• 第2には、アスピリンの作用が予定された試験治療期間の継続に伴い増加するにもかかわらず、試験期間は有限の長さであったので、癌による死亡に関して長期治療の有益性を過小評価した可能性はある。

• 取り上げた試験はランダム化されていた、しかし、我々の知見はバイアスに起因することがないとはいえないだろう。

• 第1に、一時研究は癌を調査するためにデザインされてはいない。

• しかしながら、癌での死亡は試験の間に記録されており、英国の癌登録を通じて長期の追跡調査は高い精度で正確に確認された。'これは、以前にやった結腸直腸癌の研究のときにわかった(

• 死因は通常死亡診断証明に基づいた。そして、どんな以前の癌登録でもサポートがあった。

• 第2には、データが癌のリスクに対するアスピリンの影響を研究するのに後で用いられるかもしれないという認識がかけており、研究者の潜在的バイアスを抑える。

• 第3には、アスピリンの副作用'例えば貧血と出血(の調査をすることにより、癌の初期の診断がおこなわれ、それによって、その後の死亡の減少に結びついたかもしれない。

• しかしながら、結腸・直腸癌の発生率と時間の分析においては初期の診断によるという証拠は示されなかった、そして、癌の治癒率が非常に低い食道癌では初期の診断におけるバイアスを抑える。

• アスピリンを中止することは致命的な血管イベントを起こす可能性があり、原死因としてとして死亡診断書の上でリストされていない隠れた癌に結びついたかもしれない。

• しかし、アスピリン投与群の中には癌による死亡以前の年に、非致死的な血管イベントのわずかな増加の兆候もなかった。

• さらに、これらの試験で、治験におけるの癌死に関するアスピリンの作用は、他'図1(より、少しも大きくなかった。

• 従って、これらの結果は、アスピリンがヒトで非結腸直腸癌を予防するという初めての信頼できる証拠を提示するする。そして、それはこれまでに予想されている食道、胃、膵臓、肺、前立腺癌と、おそらく脳腫瘍に対する効果とも整合性がある。

• 他の抗血小板薬はランダム化試験'Rothwell、未発表のデータ(で癌死のリスクを低下させないので、長期の抗血小板薬治療の適応のある患者にとっては、平均すると、アスピリン使用が最も利益を得そうである。

• 健常な個人におけるアスピリンの虚血・血管イベントのリスクの減少が非致死性出血性合併症のリスクのわずかな増加で部分的に相殺されるにもかかわらず、リスクと有益性のバランスは5年治療後の癌による死亡の減少によって変えられるかもしれない。

• 今回の解析では、毎日5-10年の間アスピリンを摂取することが、総死亡率'致死的な出血も含まれる(をに低下'約10%の相対危険度減(させることを示す。

• 最後に、特に腺癌について、今回の結果は発癌性解明へ繋がる可能性がある、そして、今後の癌の予防への薬の介入への可能性を示す。

• アスピリンの作用は、おそらくある程度はCOX-2の抑制によるものだとはいえ、より多くの研究がさらに必要であり、腫瘍の発生の初期での他のアポトーシス促進効果もおそらく重要である。

がん登録システム高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部'IT戦略本部( 花井 彩 地域がん登録全国協議会資料より

• 地域がん登録では、多数の異なるデータ源から、また、何年にもわたる経過を追って発生するデータを、間違いなく一人一人の患者のデータとして集約していく必要があるため、資料を照合して同一人に所属するものであると同定するための情報が必須である。

• 英国'England & Wales(における全国システム

• 英国医療:保健サービス法により医療は国営化されている。• (1) 英国統計局Office of National Statistics'ONS(:

ONSの衛生統計課が、全国がん登録室を運営し、国としての罹患率、生存率の報告をとりまとめ、出版している。例えばすでにStudies in Medical Population Subjects No.61として、1971-1995年間の生存率とその解析結果が出版された。

• (2) 全国がん登録室National Cancer Registry'NCR(:英国では全国がん登録室は、既に1945年に創設されていた。1962年以後、全E&Wのデータを収集するようになった。現在、1971年以後のデータがファイルに一元化されている。

• (3) 地域がん登録室:現在、全国の9ヶ所の医療サービス圏がん登録が、全国民'5,000万人(をカバーし、病院が、がん患者の登録情報の届出を責務とすることに基づき、データ収集が行われている。定期的に個人識別情報を含む登録情報を、全国がん登録室に送付する。データはここで再点検された後、保健サービス情報中央登録所National Health Service Central Register'NHSCR(に送られる。

• (4) 保健サービス情報中央登録所National Health Service Center Register'NHSCR(:保健省が管轄する。国営医療サービスを管理するために、全国民の移動、生死を把握する必要があり、ここに背番号付きの全国民のファイルがある。1971 年から、がん登録情報が追記されるようになった。NHSCRに入力される人口動態情報から、がん患者の転居、死亡など予後情報が得られる。これら予後情報は、全国がん登録室を経由して地域がん登録へ送られる。

• (5) 倫理委員会:研究者が申請すると、NHSCRで得られるがんを含む全ての医療情報が、英国医師会、その他の代表者で構成する倫理委員会の審査を受けて、利用'有料(できるようになっている。対象者の地域が限られる場合は、その地域の倫理委員会に先ず申請し、承認をえた後、上位の倫理委員会に申請する。

日本のがん登録制度

• わが国では地域がん登録は、昭和30年代(1955~65)に5府県2市で開始された。昭和50(1975)年に厚生省がん研究助成金によって、「地域がん登録」研究班が創設された。昭和58(1983)年になって老人保健法の制定に伴い地域がん登録は府県が行うべき事業と位置づけされた。これにより、昭和57(1982)年から現在までに19県が事業を開始した。これらが集まり、平成4年に地域がん登録全国協議会を創設した現在35県1市が地域がん登録事業を実施しているが、世

界の動向に逆行し、わが国では平成10(1998)年に、昭和58(1983)年以後なされていた本事業への少額の国費による助成が、一般財源化された。

• また、わが国の病院における診療録管理が、長く、不十分な整備のまま放置されていたため、担当者の努力にもかかわらず、地域がん登録の精度向上にはこれまで限界があった。病院の診療録整備の必要性は単に地域がん登録にのみとどまる問題ではない。このような現状の改善にむけても、早急に具体的な対応がなされるべきである。

地域がん登録を実施している地方公共団体実施35道府県1市'北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、岐阜県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、鳥取県、岡山県、広島県、広島市、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、沖縄県('平成21年12月現在(■:地域がん登録事業実施県■:地域がん登録事業未実施県