リードスイッチの特性とそのマグネット駆動 -...
TRANSCRIPT
U.D.C.る21.31d.53-213.34:占21.318.2
リードスイッチの特性とそのマグネット駆動CharacteristicsofReedSwitchApplication
With Permanent Magnet
山 田 宏*HiroshiYamada
中 村 浩 章*HiroakiNakamura
安 部 正 道**MasamichiAbe
要 旨
リードスイッチほコイルと組み合わせてリードリレーとしての用途が圧倒的に多かったが,最近,永久磁石
と組み合わせて機械的な動作を電気的な信号に変換する用途が多くなってきた。
そこでリードスイッチの諸掛生を永久磁石駆動7)観点からとらえ,本使用法における永久磁石の選択法を述
べ・リードスイッチ永久磁石駆動セット,たとえばキーボード,電鍵(でんけん)などの設計法の基礎ならびに
諸注意事三郎こついて述べる。
l.緒 ロ
リ「ドスイッチ(図1)は当初クロスバ交換機周として製造され,
その高速動作,高感度,高信煩性などの勾引生を生かして,メモリ素
子に多量に用いられている。
また,プリント板取付形,チューブラ形刀リレーとして電子回路
むこ,前記の特長を生かして用いられている。
しかし,ここ数年来,電子式卓上計算機のキーボードなどに永久
磁石と組み合わせて,機械一電気の変換素子として急に注目され出
した。これほ
(1)比較的小形で小さな磁界で作動する。
(2)ガラス管に封入されているので,外部ふん圃気.の影響を受
けない。
(3)温度,湿度に影響されない。
(4)長寿命である。
などの特長を有するためと思われる。
以下,リードスイッチの特性および,これと永久磁石との組み合
わせについて述べる。
2・リードスイッチの概要
リードスイッチは周知のように図2に示す構造をもち,図2の矢
印の方向に磁界を加えるとリードは互いに吸引され,吸引力がリー
ドのバネの力を上回れば,接点は開成し,また磁界が小さくなり,
吸引力がバネの力より小さくなれば,接点は開放する。
通常,磁界は永久磁石またはソレノイドコイルで与えられる。リ
ードは52%ニッケル,残り鉄の合金で膨張係数がガラスチューブと
良く合致するもので,ほかの電磁リレーのコア,アーマチュア,接
点,接点バネ,レスタバネなどを兼ねた単純な片持ばりである。
接点部は金メッキ後,拡散処理されたもの,またほロジウムメッ
キされたものが一般的である。
ガラスチューブはリードの固定と内部の不活性ガスの気密を保つ
のに用いられる。
3.リードスイッチの特性
リードスイッチの種類とその代表的な特性は表】に示すとおりで
ある。
3.】作動アンペアターン特性
ある特定の標準コイルを用いて測定したものをいい,感動アンペ
アターン(以下,NI。♪と記す)とは図3に示すように,コイルの電
*日立製作所戸塚工場
**日立金属株式会社熊谷工場
44
図1リードスイッチ
磁界 ¶▲→
N
不活性ガス(N2+H2)
リー-ド(Ni52%,残りFe)/
ガラスチューブ
図2 リードスイッチの構造
流を徐々に,増加するとき,ちょうど開成するときのアンペアター
ンを,また開放アンペアターン(以下,NIrr′と記す)とは,コイル
の電流を徐々に減少するとき,ちょうど開放するときのアンペア
ターンをいう。NIα夕,NI′g∫は,リードの磁気特性,リードの空隙
(げき)および重なりの影響を受けるが特に図4に示すようにリード
の空隙による影響が大きい。参考までに,リードの重なりによる影
響を示すと図5のようになる。
NI。♪ほ表1に示すように,HR-10リードスイッチの場合,16~
40アンペアターンと約2倍の変動があるが,永久磁石と組み合わせ
てリードスイッチを用いる場合,あとでこのことはじゅうぷんにふ
れるが,所定のストロークを無調整で得ることがむずかしいので,
、\\
品\
特 性\\
HR-10 弓 HR-11【FR-SllGR-SllEG-Sl
感動アンータ‾て
頗放アン′ター:/
ア 注1
上皇竺Lア 注1(AT)
作時間(羞‡旧時間(羞‡
接
点
容
量
(DC)
通電電流(A)
開
閉
初期接触抵抗電
接点間耐圧 (Ⅴ)
寿 命 (回)
耐 振 性 (G)
耐衝撃性
接点形式
(G)
大きさ
axbxc(m□1)
16′~40
約10以上
0.1以下
0.2
150以下
百百‾‾豆武「‾以上
約10ア
-ヒソタギャップ
m乱Ⅹ
17.5×2.9
m8.X
X30.5
20~60
約0.15
0.1以下
0.2
0.08
50
4
150以下
DC250
__________旦±約107
オフセット
ギャップ
m乱Ⅹ
14.5×2.7
m8石
×44.2
25~65
約12以上
約0.3
0.1以下
0.5
0.12
60
6
100以下
DC300
以上
約107
20
セソク
ギャップ
m乱Ⅹ
21.5×3.8
maX
X39.4
35~70
約18以上
約0.4
0.1以下
90以下
DC300
____一一▲_以上約3×107
30
・ヒソクギャップ
maX
27×4.2
m且Ⅹ
×45
60~100
約22以上
約1
0.5以下
70以下
DC450
以上
約108
30
センタ
ギャップ
ma二E
52×5.8
m8Ⅹ
×81
注:1.標準コイル忙て測定した値である。
2.導体抵抗を含む。
Un
(ぺ小Lこ田
動
㌦変N
の
M■′LNr。p(H。。)
NI。pの変動
NIまたはH(Oe)
図3 リードスイッチの磁気特性
(卜王
∴-ヘトて■八ト
感動
∠////佃放0 0.02 仇04 0.06 0.08
空隙長(mIコ)
リードスイッチ HR-10
標準コイル 巻数5,000 長さ 91nm
図4 リードスイッチの作動アンペアターン
と空隙長の関係の一例
(←S
八-ヘトて八ト
リードスイッチの特性とそのマグネット駆動 1013
約10アンペアターンごとに層別を行ない,できるだけ使用しやすく
している。動作アンペアターンと動作磁界の関係は図dに示すとお
りである。
3.2 作 動 時 間
標準コイルを用いて測定した例は図7に,作動時間の定義は図8
に示すとおりである。
チャツタリングはリードスイッチの場合,接点閉成時に必ず伴う
ものでリードスイッチに与えられる磁界の立上り速度が速いものほ
ど大きくなる。
また,キーボードなどではキートップを押すときの衝撃の影響で,
チャツタリング継続時間が長くなることが知られている。その例を
示したのが図9である。
(巴ヒ)
匡曽裔監
チ・丁ツタリング継続時間
〉1 1.5 2 2.5 3
那酌Nト蛙軌NI
リードスイッチ HR-10
標準コイル 巻数2,000 長さ20mm
図7
接点問電圧Vc l
+動作時間一「
.竺瞥ーー.._....一ノーーノー′
リードスイッチの作動時間特性
+復旧時間継続時間
(α)各部乍E仔披形
空隙長0.04
‾0 0.2 0.4 0.6 0.8
重なr)良(mm)
リードスイッチ HR-10
標準コイル 巻数5,000 長さ 9mm
図5 リードスイッチの作動アソペアターソ
と重なり長の関係の一例
/水銀リL∴接点壊
ードスイッチ励磁コイル
リードスイッチ
(b.)励磁回路
リードスイッチの時間特性
(←S
八1ヘトて八ト音聖
▼0 10 20 :30 40 50
軸方向平行磁界(Oe)
図6 均一磁界中にあるリードスイッチの
作動アンペアターンと動作磁界の関係
45
1014 日 立 評 論
2
(岩)
N一匹皆へ\‥r小崎¶り「掛簿
。0。喜
げ「。×
0 仇1 0.2
tl→初期のチャッタ時間(m5)
図9 リードスイッチに衝撃が加えられたときの
チャツタ時間
3.3 接 点 特 性
リードスイッチは一般に比較的大電圧,大電流の場合に閃離不良
が,比較的小電流の場合に接触抵抗値の変動が問題になる。
リードスイッチの開離不良は,主として接点閉成時に通電される
電流値によって決まる。したがって接点制御電流を決める場合,た
とえばラソプ負荷で長寿命を要求するには,定常電流で接点制御電
流を決めずに,接点開成時の突流で決定すべきである。定常電流は
リードスイッチの規格内にあっても障害となる例(図10に示す)も
あるが,直列に突流抑制抵抗を入れることにより閑離不能に対する
動作回数の増加の様子がよくわかる。したがってリードスイッチと
並列にはいるコンデンサは,たとえ布線の長さなどによるものでも
極力小さくすることが望ましい。
接触抵抗値の変動は,主として接点が動作するにつれ,ごくわず
かであるが接点が摩耗し,その摩耗粉には拡散処理時に金の中に拡
散された鉄分が含まれているので,リードスイッチ中のごく少量の
酸素,水蒸気などの影響で鉄が酸化され,接点間に残った結果,接
触抵抗が増加すると考えられる。
しかし,6~12V,10mA内外の負荷が現在一般に用いられてい
るようであるが図】lに示すように,500万回までの接触抵抗の変動
は,ごくわずかである。
そのはかごくまれには,封入部のリーク封入時の塵挨(じんあい)
の混入による接触不良が認められる。
4.永 久 磁 石
4.1材質の選択
永久磁石には鋳造,焼結およぴバリウムフェライト磁石があるが,
バリウムフェライト磁石は,
(1)複雑な形状を作ることができるので取付穴などが容易に作
れる。
(2)焼成後研摩なしでも寸法精度が良い。
(3)したがって安価である。
(4)外部磁界に対して安定である。
などの特長があるので,使用しやすく,使用実績も圧倒的に多い。
しかし用途によってほ鋳造,焼結などの磁石が用いられることも
ある。
46
(C且娼盟丑車
100
02
棄表
匡Ⅰ
せ1一
裔
105
10一
10ユ
ⅤOL.52 Ⅳ0.11 1970
開離不良領域
ド パルススピード0.5回/s
ノ【-ク比 ㍍
4 6
南流抵抗(虫)
10 12
3.2 2.3 2.01.8 1.45 1.23 1.06
ラッシュ電流(A)
(ランプ負荷における突流抑制抵抗と寿命)
図10 リードスイッチの接点特性(1)
HR-10
負荷条件12V,5mA抵抗負荷
駆動方法 マグネット即動
試料数10本
10
試 料
負 荷
駆動方法
30 50 70100 200 300 500
動作回数(万回)
HR-10リードスイッチ 10本
12V,5mA抵抗負荷
マグネット駆動
〈抵抗負荷における接触抵抗の変動)
図11リードスイッチの接点特性(2)
4.2 磁石の形状
種々ユーザーの動向を調査した結果,表2のような4種類を標準
的な永久磁石とした。
これらは,永久磁石と組み合わせて使用するひん度の多いHR-
10,11およびFR-Slについて適用されるもので,図12はリードス
イッチの動作する点を示したものである。これは図に示した位置関
係において,Ⅹ方向におけるデータであるが同様にY,Z方向につ
いてもこのような特性を求めることができる。図13はある特定の
リードスイッチを用いてⅩ,Y,Zの3方向について求めた例であ
る。これらと図dから実効的な磁界の分布を推定することができる。
また図13において,リードスイッチの代わりにホール素子を用い
たガウスメータで,磁界分布を直接測定することもでき,リードス
イッチで測定した場合とほとんど一致した憤向を示している。
4.3 着 磁
リードスイッチ用磁石の着磁は,使用方法に合わせていかなる着
磁も可能である。その代表例を示したのが図14である。
リードスイッチの特性とそのマグネット駆動 1015
表2 リードスイッチ用標準磁石
寸法(公差)(mm) 材 質 適用リードスイ ッチ l備 考
8×4×4(±0.15)
8×8×4(±0.15)
10×6×4(±0.15)
10×8×4(±0.15)
YBM-3
YBM-3
YBM-3
YBM-3
HR-10,HR-11
HR-10,HR-11,FR-Sl
江R-10,HR-11,FR-Sl
HR-10,HR-11,FR-Sl
1.
3.
(ト5
八-恥トソ∴ト右横
4・
l
く=〉
′1、
nU
O
7
6
l
I
0.5
4
■1ゝぐつ
↓
N
一三Uつ
l‾
N
トー4一}士†
1■法axbxc=8×4×4
単位(mm)
Ⅹ。P:1r=0,Z=0ノ′Ⅹ軸卜て
り一卜‾てイ・ソナかざノ土
うと′車州ミ‾-勺∴-
l∈ゝ
亡■・、
N
+、
T⊂l⊃
1l
L_去
4.
10×6×4
取付穴その他は下図による
取付穴その他は下図による
取付穴その他ほ下図による
取付穴その他は下図による
N
J ‾や・
一世
Jl
ll勺OD
、S.N
N
††
0.5
/×ノ′
ユ山一
十〃X
12
10
・匡
E 6
麿 ≡三8
10
誕;'モ壁甥
10×8×4
‾0 1 2 3 4 5 6 / 8 9
Ⅹ。-,く二mml
図12 磁石の形状効果によるリードスイッチの動作位置
同一磁石について着磁方法を変えた例は図14i・こ,また同一磁石に
ついて磁極間距離を変えた例ほ図15に示すとおりである。
4.4 温 度 特 性
/ミリウムフェライト磁石の可逆温度係数ほ約-20℃-~+200℃の
間で約-0.18%/℃である。よって40℃温度変化すると約7%磁界
の強さが変化するので,最低,最高温度の温度変化に対してもじゅ
うぷん仕様を満足するように磁気回路を楕成する必要がある。
4.5 磁気安定性
バリウムフェライト磁石ほ鋳造,焼結磁石に比較し,保持力,Hc
が大きいので減磁しにくく安定である。
また,200℃以下の熱や衝撃による減磁も無視でき,さらに減磁
による安定化処理も不要なので着磁したまま使用できる。
4.d 磁 力 調 整
リードスイッチ用磁石は一般にON-OFFのストローク仕様が非
常に小さいので,磁力のばらつきを非常に小さく押さえることが必
要になってくるが,これは着磁電圧を調整することにより,自由に
磁力調整を行なうことができる。
4.7 磁力のチェックポイント
リードスイッチ用永久磁石は従来の永久磁石のように磁力の強さ
ハリ
5
4
つJ
5ワー
∩エ
(∈己)
腰匿hh?之○
1.0
0.5
ノバ/
Z(Ⅹ,Z) z
把Ⅹモ圭空(竺,供喜点り-トスイツ子 HR‾10
NI岬=38・OAT■NIreJ=21・2AT
供試マケネlソト YBM‾3
10×8×4
\\
./
/ン
/”ノ
\
ト‖〃〃/.
./〃′/
Z=0のⅩ,Y面
「
07)Ⅹ,Z面
● 両面着超× 片面芯石畳
_リーードスイッチON
ートスイッナOFF
圃13 リードスイッチの動作点分布
転\廊
l
画 廊
老 若
磁 石壷
Z(Ⅹ,Z) z
。姓Ⅹ過ごY(∋供試り【ドスイッチHR-10
NI。p=38ニ‾OAT,Nしi‾=21・8AT
せ)供試マグネットYBM-310×8×4
(む衰磁方向
0両面着磁
0片面芯磁
0片面岩磁
0片面4極
…⊥寸7翫「j
ド日叫四出員田
「空
「ぬL
Ⅹ;Y,Zが0のとき
Y;Ⅹ.Zが0のとき
Z;Ⅹ,Yが0またはある他をもつと.き
面 曲
者 4
他 極
(き≡i)(芋≡昌)
図14 各種着磁方法とリードスイッチの動作点
47
1016 日 立 評 論
04
6
4
0
n”
0.2
(E王
煙霞hh?ZO
Z (X,Z) z
∈把Ⅹ一占星(竺YⅩ;Y,Zが0のとき
Y;Ⅹ,Zが0のとき
Z;Ⅹ,Yが0のとき 弊転間距離Jp
▼0 2 4 6 8 10
極圃距艶J,(mm)
図15 片面2極着磁における磁極問距離と
リードスイッチの動作点
Hy
†
HA
HB
Z(Ⅹ,
y=a卜・左) --H少
Z=b卜完)/∵y
Ⅹ
B A
トJ
【 一
ストロークⅩ
y,Z)
ON-OFF間隔
図16 ストローク(マグネットの移野量)と磁界分布
のみのチェックでははとんど意味がなく,
①ストローク位置,②磁界,の両方を同時にチェックして管理
する必要がある。図1るはストローク方向とリードスイッチの動作
磁界の関係を示したものである。ON-OFF距離をAB,動作する点
をA,その磁界をH〃わ開放する点をB,その磁界をH.g′■とすると,
動作条件は次のようになる。
(1)A点に至るまでにリードスイッチは必ずONしなければな
らない。
(2)B点に至るまでにリードスイッチは必ずOFFして,かつ
ONしてはならない。
普通ON-OFF距離は,全体のストロークからみて,1~2mmに
押さえる必要があるので,リードスイッチの層別とともに,磁石の
着磁およぴ,その品質管理技術が要求される。
現在,キーボードの傾向は,
(1)セット本体を蒋形,コンパクトにする。.
(2)キーストークを小さくする。
(3)リードスイッチと永久磁石のセットを無調整化する。
という方向に進んでいる。
特に(3)については,従来はリードスイッチと磁石をセットにし
た後,それぞれ,仕様に合うように調整していたが,大量生産にな
ると,調整工数がたいへんなものになるので,この無調整化という
48
(注)
ラン70
&-「一丁一一十
「.■-++
一
ⅤOL.52 N0.11 1970
巳OJ
+
①RSlは感動アンペアターンが殺大のリードスイッチRS2は開放7ンぺ7タuンが最′トのリードスイッチ
(彰Jg,L州⊥oFF;ま,仕掛こより決定される値
(卦合格条件 マグネットをスライド晩1二に載せてUラインに押しつけて,lj-ド
ラン7FL】れ郎rし次にDライニ
スイツ子RS2カ▲OFFして,ラニ
そのマグネット;ま丹枯となる。
乙イッチRSlがONし,
に押しつけて,リード
79L2が消灯すれば.
(右図参照)
Jg
NI
NI。p
maX
NI‖′`
mIn
スライド放
り--ドスイッチRSl
マグネット
RS2
OLoFF LoN
図17 マグネット検査器の例
マグネットの移動方向
マグネットの仝ストローク
□工呂百ざ誤1蒜守る法変動工呂蒜(㌔㍊ぷ綜る法変動
し∴所定の全ストロークよりマグネットおよぴリードスイッチの特性を考慮して動rF点の許容できる変動を決定する)
団18 マグネットとリードスイッチの選定方法
ことが,重要なポイントとなる。そのためには,A点,B点におけ
る磁界H。♪,H′。∫をシビアに管理する必要がある。
当社では,ON-OFF間隔を,1~2mm以内に押え,セットを無
調整化するための着磁方法および,性能検査器の開発に成功し,全
数保障の量産体制を確立している。
4.8 性能検査器例
リードスイッチ用磁石の品質管理において,着磁面の表面磁束密
度だけでは,着磁ずれなどが検出できず,必ず問題が生ずる。よっ
て,検査器としてほ子トローク位置および,その点の磁界の2点を
同時に測定チェックする必要がある。これは,ホール素子を用いて
測定することも可能であるが,図17に示すようi・こ,実装条件を再現
した検査器を製作し,永久磁石をスライド板上を上下させることに
より,リードスイッチのON-OFFをランプにより検出する方法が
便利である。
5.リードスイッチと永久磁石の選定
5.1達定方法の概念
リードスイッチを永久磁石で駆動する場合次のような項目を検討
すれば,ほぼ完全iこ使用する永久磁石とリードスイッチの組み合わ
せによる動作の概念と設計の指針が与えられると思われる。
すなわち,
(1) 3次元にわたりその動作領域図を描き,空間的な把捉(は
あく)を行なう。
(2)図柑に示す所定の目的にかなったON-OFF間隔を検討
する。
誤動作領域に対する安定度の検討。
使用する永久磁石の材質,形状および着磁方法。
リードスイッチの種額とNI叫 NI′`Jの決定。
リードスイッチと永久磁石の相対寸法の変動とON-OFF間隔の変動。
などの検討を行なうことにより,使用する永久磁石とリードスイッ
チはほぼ決定できると思われる。しかし,あとで説明するが表3か
ら所期の目的にかなうと思われる二,三の組合せを見いだし,それ
らについて詳細に検討する方法もある。
5.2 具体的な設定方法
次にさらに,詳細に設計するためには,さきに決めたリードスイッ
チと永久磁石について,永久磁石の外部磁界とリードスイッチの動
作点とを対応させて,議論を進めるのが最も有効かつ,確実な方法
である。
この段階では誤動作その他の検討は,すでに終っているので,全
空間にわたって磁界分布をとる必要もなく,実際使用する範囲内で
行なってもよい。ただし,後述するように永久磁石による磁界分布
は不均一であるため図dに示した値とは必ずしも一致しない。
HY
札p
H,`J
① ② kxⅩ。,Ⅹ;♪Ⅹ;gヱⅩTe` 一一--Ⅹ
図19 マグネットの磁界分布とリードスイッチの動作点の関係
リードスイッチの特性とそのマグネット駆動 1017
外部磁界分布と対応させるのは次の理由による。
(1)リードスイッチは繰り返し実験する場合,寸法的に不安定
の要素が多い。
(2)リードスイッチで空間における動作点を求めるのはホール
素子を使用したガウスメータなどによる場合に比べ連続的
なデータを必要とする場合実験が非常に煩雑になる。
(3)実験に必要な各要因の効果はリードスイッチで行なうと直
接判断できないので磁界の測定を必要とする。
などによる。
例をあげて説明すると,図19は永久磁石の外部磁界分布のうち,
磁石の中性断面上の磁界分布を示したものであるが,いま,リード
スイッチが感動する磁界をH叫 開放する磁界をHrβ′とすると,曲
線①について,これらの札♪およぴHrg∫に対応する距離は,それぞ
れⅩ〃♪およびⅩrg∫となる。開閉間隔Ⅹ叫-Ⅹrg′を小さくしたいとき,
曲線①を②のように変化させれば②の曲線について札♪,H,β∫に
対応する距離はⅩ。♪′,Ⅹr々′′となり,開閉間隔Ⅹ。♪′-Ⅹ,gJ′は図から明
らかなように縮小することができる。すなわち,曲線①および②
を求めておけば,リードスイッチの開閉に与える影響がはとんど推
察することができる。
また,リードスイッチを層別して使用した場合図20のように,
Y方向の設定点を層別ごとに変えれば動作点の変動が小さくなり,
結局,曲線②にしたと同様な効果が得られ,両者を組み合わせれ
ば,その効果のほどは明白である。
その他,永久磁石に補助磁気回路を加えた場合の効果の検討には
外部磁界との対応で考えると便利でかつ,判断を誤まることがない。
ただし,磁界分布,掛こその磁界の強さと傾きが,リードスイッチ
を動作させるための大きな要因であり,一般に磁界が急激に変化す
るところに設置されたり】ドスイッチほ,図21に示すように動作す
るのに均一な磁界分布中に設置されたときより,強い磁界を必要と
する。
5.3 実用的な対向方法
リードスイッチを永久磁石で動作させるとき,磁石とリードスイ
ッチの対向方向から分けて,表3に示す平行形,垂直形および,回
表3 リードスイ ッチの駆動方法
座 ■標 動 作 領 域 図磁 界 分 布 と の 対 応
A B
N
0形市
花T
Tl~
「山Sト
V一Ⅹ.臥Y0
,■
y
】
一
雌A
0二Z
nU
Oニ
Ⅴノ
X
off
Hy
H岬
H,ぞi
(…≡3
0 Ⅹ。p X,亡J
R,
れ,H,。J
y。p
(;≡g′2
yr`J
垂 直 形
原■ヱ'a】Ⅹ O
z=0
A
off
壷托
托p
Hrg′
(;三景
y岬y,gJy yop
yrgJ
札
札pH,`′
回 転 形
必ハU{
uJ
60′30
A900 0ff
60
30
0
2
0・町
ニ>一Y-
Z
X‾ア ーJ O J y
x=O
z>d/2
Hy
札p
札gi
l-Hy
(:三言要はy=。
β。■p
900 1800
仇gJ
札
托タHrゼJ難
90 β
30β。p
(参考図)
49
1018 日 立 評 論
Y=a
層別1
NIop(Hop)の変動
封Y
▲C
b
ニ
ニ
Y
Y
ll
「「層別後の動作点の変動l一-「-1-+層別前の動作点の変動
Y†虹
Ⅹ
図20 リードスイッチの動作アンペアターン
層別と動作点の変動
転形の三つに大別される。
平行形は,磁石の磁化方向がリードスイッチのリードの軸方向と
平行に並置された状態で磁石を移動させ,リードスイッチを開閉す
るものであり,垂直形は磁極と垂直にリードスイッチを配置すると
き,または回転形は磁極を回転させ,リードスイッチを開閉するも
のである。これらの構成を基本にして組み合わせたり,また,さら
にヨークやシールドなどの補助磁気回路をつけ加えれば,各種各様
の方法を構成することができるが,いずれにしてもリードの軸方向
の磁界分布と関係づけることにより,その動作を把捉することがで
きる。
d.緒 言
以上,リードスイッチ,永久磁石およびそれらの組合せについて
50
弟32巻 日
ⅤOL.52 N0.11■
1970
100
X=2(80
(レ
⊂〉
言604
40
6'
名20
10
†
Ⅹ
Nらヱ6之占 供試リードスイッチFR-S
5諾8 供試マグネット10×8
34.6片面着磁
4 2 0 2 4 6 8 ‾‾‾■■■‾‾‾-‾12
y(nm)
×4
図21リードスイッチの動作点とその磁界分布
述べたが,電子式卓上計算機のキーボードを初め,動くものの位置
検出,計器その他の機械的動作を検出し,電気信号に変える用途に
使用される。また本来感磁素子であるところから磁界変化の検出に
も使用され,今後ますます用途は広がるものと思われる。本文がこ
れからリードスイッチの永久磁石駆動を辛がけられる人達の一助に
なれば幸いである。
最後に種々ご指導をいただいた関係各位に深く謝意を表する。
(1)
(2)
(3)
参 芳 文 献
R.J.Parker,R.J.Studders:Parmanent Magnets and
Their Application.Jobn Wiley and SonsInc,(1962)F.Knigbt:Magnets for Reedswitches,IndustrialElect-
ronics,2,12,558~563(1964)中村,山田,荒木:リードスイッチの永久磁石駆動につい
て,継電器研究会資料173-1(昭44-11)
(4) 日立評論52,96(昭45-1)
(5)高野,池上:キーボードにおけるリードスイッチのチャツ
タ観測,44年信学会全国大会
目
・鹿 児 島 本 線 電 化 完 成 ノ
・日 立 技 術 展
・順 調 に 建 設 進 む一島 根 原 子 力 発 電 所
・D E 5 0 試 験 運 転
・東 西 の 電 力 を 結 ぷ一周 波 数 変 換 機
海一単一ス
閑
航タ
ン
機ナ
のソのエ
後七立
一イ
朋
最器∵
第
九撥けコ
ら学駆
ム
をR
く化界-
立
次
さ理世Pホ
発行所 日 立 評 論 社
取次 店 株式会社 オーム社書店
東京都千代田区丸の内一丁目5番1号
郵便番号100
東京都千代田区神田錦町3丁目1番地
郵便番号101
振 替 口 座 東 京20018番