iPadで使える電子教科書（PDF・EPUB）を自作する

清原 文代（大阪府立大学 高等教育推進機構 外国語教育センター）

CIEC外国語教育研究部会 第5回学習会タブレットPC時代の外国語教育

2011年10月22日於 大学生協杉並会館

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私の基本的スタンス

• 私の体格は縦にも横にもでかいLLサイズですが、教材の作成と配信も「LL」で！

• すなわち、ローテク＆ローコスト！ワープロソフトによる書類作成、Web閲覧、メール送受信を普段している人が、少し背伸びをすれば作れるように。

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なぜ自作が必要？

• 電子教科書導入に関しては様々な議論があるが、外国語教育に限って言えば、音声とテキストを一体化して扱えるだけでも導入の価値あり。

• 新しい分野のコンテンツはまずある程度数があってこそ普及する。作り込んだコンテンツはその後で。

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外国語電子教科書に必要なものは？

• テキスト

• 図、写真

• メモやラインマーカー等の書き込み機能

• 音声、動画

• 検索機能

• Webへのリンク

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教育現場における電子書籍のファイル形式

• 教育現場で使われる電子書籍のファイル形式は特定の企業や製品に依存しないオープンなもので、且つ広く普及したものが良い。

• ファイル形式にも栄枯盛衰があるが、上記のようなファイル形式なら、過渡期には新しい形式へのコンバートが可能なはず。

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版面可変ならEPUB• IDPF（International Digital Publishing Forum）による特定の企業や製品に依存しないオープンな規格。http://idpf.org/

• Apple、 Google、SONYが電子書籍の規格として採用を決めたことにより注目を浴びる。

• リーダーソフトを入れることにより、パソコン、iPhone・iPod touch・iPadなどのiOS搭載機、Android

搭載機でEPUBを読むことができる。

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版面可変はなぜ必要？

• どうして版面可変である必要性がある？→いろいろな画面の大きさに対応するため。

• 小さな画面（iPhoneやiPod touch、Android携帯等）で版面が固定されたファイルを読むのは辛い。可読性が著しく落ちる。

• テキストが画面の大きさで合わせてリフローすれば、各自が読みやすい字の大きさで読める。

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期待のEPUB3• EPUB3の仕様が2011年10月11日に確定。

http://idpf.org/epub/30

• 縦書きやルビが使える。

• 音声や動画などマルチメディアの埋め込みOK。

• カラオケの歌詞のように音声とテキストの同期（ Media Overlays）もサポート。

• JavaScriptを使ってインタラクティブ性を持たせることも可能。

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EPUB3のサンプル

• epub café EPUB3 コンテスト 第1回 村田真賞ごんぎつね（川幡太一）http://www.meadowy.org/~kawabata/gongitsune/reader.html縦書き、ルビ、テキストと同期した音声（Media

Overlays）のサンプル。WebブラウザにはないEPUB3の再生機能についてはJacaScriptで補完。

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iPadでEPUB

• EPUB3はあくまで仕様なので、EPUB3に対応したリーダーソフトや制作ソフトが充実してくるのはこれから。

• iPadにおける代表的なEPUBリーダーアプリはApple社のiBooks（無料）。

• iBooksはEPUB3を先取りして、EPUBに埋め込んだ音声や動画を再生できる！

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iBooksでEPUB(1)

• テキストを見ながら、埋め込まれている動画や音声を視聴する。

• 音声については、iPadをスリープさせても再生が続くので、オーディオブック的な使い方も可能。

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iBooksでEPUB(2)• 教科書に出てきた○○という言葉がわからない。

• 辞書をひいてみよう。iBooksは国語辞典、英和辞典、英英辞典を内蔵。

• 教科書の他の部分に説明がないか検索して調べてみよう。

• 更にネットでも調べてみよう。iBooksは本文検索と同時にGoogleとWikipediaを検索できる。

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iBooksでEPUB(3)• 気になるところに印やメモをつける

• ページにしおりをつける。

• 本文をマーキングする。

• メモを書く。メモはiPadのメールで送信可能。（例）教科書への質問やコメントを教員に送信する。

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iBooksでEPUB(4)• iBooksはEPUBの中にあるWebリンクをSafariに引き継ぐ。Webページを見た後、再びiBooksを開くと、見ていたページが自動的に開かれる。

• テキストを読んだ後、Web上にある参考資料を見る。

• テキストを読んだ後、 Web上で練習問題を行う。（例）http://quizlet.com/

• テキストを読んだ後、 LMSに置いた練習問題を解く。

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iBooksでEPUB(5)

• iBooksは英語・日本語・中国語などのTTSによる合成音声の読み上げに対応している。但し、１つのEPUBの中に混在している複数言語を自動的に読み分けることはできない。

• iPadの設定→一般→アクセシビリティ→→ホームをトリプルクリック→VoiceOverを切り替える。

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EPUBを作る(1)• パブー（無料）ではブログを書く要領でEPUBとPDFを書き出せる。http://p.booklog.jp/

• すでにブログを持っているなら、パブーでEPUBとPDFに変換可能。http://p.booklog.jp/book/378/page/524543

• 音声や動画はネットに置いて、そこへのリンクを貼る。（例）清原文代『大阪府立大学中国語ポッドキャスト旅行会話編補充教材』http://p.booklog.jp/book/2272

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EPUBを作る(2)• ブログではないWebページを持っている。

• Firefoxのアドオン、GrabMyBooks（無料）を使ってEPUBに変換。http://www.grabmybooks.com/

• クリッピングサービスのInstapaper（無料）を使ってEPUBに変換。http://www.instapaper.com/

• 音声や動画はネットに置いて、そこへのリンクを貼っておく。

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EPUBを作る(3)

• Mac OS Xユーザー：ワープロソフトPages（有料）で、音声や動画を埋め込んだEPUBを書き出せる。http://www.apple.com/jp/iwork/pages/

EPUB用のスタイルを適用したPagesのファイルをAppleが公開している。http://support.apple.com/kb/HT4168?viewlocale=ja_JP

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EPUBを作る(4)• Windowsユーザー：音声・動画の埋め込み対応、または次期バージョンアップで対応を表明しているもの

• FUSEe（有料の製品版と無料のβ版）

http://fusee.fusenetwork.co.jp/http://fusee.fusenetwork.co.jp/product.phphttp://development.fusenetwork.co.jp/

• Smart ePub（有料Pro版と無料のフリー版）

http://www.openend.co.jp/http://www.openend.co.jp/productsinfo/smartepub/index.htmlhttp://www.openend.co.jp/productsinfo/Smartepub-free/smartepubfree01.html

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EPUBを作る(5)

• HTMLに関する知識があるのなら、 Windows、Mac

OS X、Linuxで使えるEPUBエディタの Sigil（無料）。http://code.google.com/p/sigil/

• 音声や動画を手動でEPUBに埋め込むことはできるが、作業が複雑。

• 音声や動画はネットに置いて、そこへのリンクを貼る方が楽。

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EPUB参考資料(1)

• idpfhttp://idpf.org/http://idpf.org/epub

• epub café 電子出版環境整備事業

http://www.epubcafe.jp/

• epub café EPUB 第3回 成果報告会http://www.epubcafe.jp/egls/epubseminar3

• OnDeck 電子出版イノベーションのビジネス実践誌（EPUB雑誌）

http://on-deck.jp/

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EPUB参考資料(2)• エリザベス・カストロ『誰でもわかるEPUBでiPad電子書籍を作る本』（ピアソン桐原、2010年12月）

• 境祐司『電子書籍の作り方　EPUB，中間ファイル生成からマルチプ

ラットフォーム配信まで』（技術評論社、2011年1月）

• 林拓也『電子書籍らくらく作成PACK　EPUBテンプレート付き』（技術評論社、2011年6月）

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教育現場における電子書籍• テキストが画面の大きさに合わせてリフローするかしないかが大問題、これ案外盲点！

• 対面授業は教員と学生が同じ版面を見ていることが前提になっている。「皆さん、８８ページの５行目を見て下さい。」

• リフロー：画面の大きさや字の大きさの設定に合わせてテキストが再配置される。→版面は可変、上記のような指示ができない！

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版面固定ならPDF• Adobe社の開発したものだが、現在はISO（国際標準化機構）に承認されている。http://www.iso.org/iso/pressrelease.htm?refid=Ref1141

• 紙の再現を目指したフォーマット。 メモの書き込み、蛍光ペンでマーキングもできる。

• 印刷もOK（印刷不可のセキュリティ設定が無い限り）。

• 紙はコンテンツとメディアと記憶装置が三位一体になった優れた端末、紙への出力を考慮すべき。

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iPadでPDF

• iPadでPDFを読むためのアプリは無料・有料を含めて多数ある。

• 今回は有料のGood Reader for iPadを使用。http://itunes.apple.com/jp/app/goodreader-for-ipad/id363448914?mt=8

• Good Reader for iPadはPDFの表示に加えて、Webページの表示、音声や動画の再生に対応している。

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Good Reader for iPad

• PDFへの注釈メモ、マーキング等を付加。

• PDF内のテキストを検索。

• 音声や動画をWebに置いて、そこへのリンクを貼る。

• 小テストをWebに置いて、 そこへのリンクを貼る。

• 参考になるWebページへのリンクを貼る。

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PDFに音声や動画は埋め込めないのか？

• Acrobat Pro（有料）などを使えば、PDFに音声や動画を埋め込むことができる。

• パソコン用のAdobe ReaderはPDFに埋め込まれた音声や動画を再生できる。

• iPad上で動くPDFリーダーアプリで、PDFに埋め込まれた音声や動画まで再生できるものは未見。もしあったらぜひお教え下さい！

• 音声や動画はネットに置いて、PDFからリンクする形で処理。

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PDFを使った外国語学習教材

• CIEC春季研究会2010ワークショップで、Adobe社のAcrobat ver.9を使ったワークショップを開きました。

• その時の資料は以下のWebページでダウンロードできます。http://www.las.osakafu-u.ac.jp/~kiyohara/PDF_workshop/

• その時のビデオは以下のWebページの下の方にあります。http://www.ciec.or.jp/~f_lang/wiki/index.php?%C9%F4%B2%F1%B4%EB%B2%E8

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Acrobat Xの登場• 2010年冬にAcrobatのバージョン9からXにバージョンアップ。

• インターフェースや操作方法など、その他いろいろ変更有り。

• 特に注釈の書き込み、本文への書き込み、本文への録音が可能なPDFへの書き出しの方法の変更が大きい。「別名で保存」から「Reader拡張機能が有効なPDF」で書き出す。

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どうやってiPadへ送る？• Webページからダウンロード

• メールの添付書類添付書類のアイコンを長押し→（次の方法で開く）→iBooksで開く

• ポッドキャスト配信（例）清原文代『接客のための中国語』音声（MP3）、PDF、音声付きEPUBを無料配信iPad→iTunes→Podcasthttp://itunes.apple.com/jp/podcast/id312365350

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PDFとEPUB• 版面可変→EPUB

いろいろな画面の大きさの端末に対応。iPhoneなどのスマートフォンを使っていつでもどこでも学ぶモバイルラーニング。iPadのiBooksで音声・動画入りのEPUBが使える。

• 版面固定→PDF

iPadくらいの画面の大きさがあれば、版面固定のPDFでも十分読める。版面のレイアウトも重要な情報である。同じレイアウトで紙にも出力。

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iPad用のPDFとEPUBを１つのソースから作る

• Webサービス「パブー」を利用してEPUBとPDFを作る。既存のブログがある場合は読み込み可能。

• Mac OS Xユーザーは、ワープロソフトPagesを使ってEPUB

とPDFを書き出す。既存のWordファイルがある場合はPagesに読み込み可能。

• Windowsユーザーは、Wordのファイルを起点にする。Word2007、Word2010はPDFを書き出せる。EPUB制作ソフトの Smart ePub やFUSEeはWordのファイルを読み込める。

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• 清原文代（2011）「Podcastによる電子書籍（PDF・EPUB）の配信」『CIEC研究会論文誌』vol.2 pp.112-119

• 清原文代（2010）「iPadで見る、聞く、読む、学ぶ—中国語教育を中心に—」『漢字文献情報処理研究』第11号　pp.112-124

• 清原文代（2010）「紙とe-Learingを繋ぐ—PDFによる外国語学習教材—」『CIEC研究会論文誌』Vol.1　pp.13-19

• 清原文代（2008）「PDFで作る音声付き教材　紙でもパソコンでも使える教材をPDFで！」『漢字文献情報処理研究』第9号 　pp.92-102

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• 吉田春世,松田憲,上村隆一,野澤和典編著,CIEC外国語教育研究部会著『ICTを活用した外国語教育』東京電機大学出版局　2008年

• 清原文代　第13章「Podcastによる多言語音声教材およびテキスト教材の配信―大阪府立大学の事例を中心に」　 pp.209-231

• 清原文代　第14章「外国語教育とiPod&Podcasting」14.2「Podcast制作の実際」　 pp.242-249

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本研究は科研費(22520574)の助成を受けたものである。

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