observational study on perimeterless hvac system...

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が一体 したペリメータレス システム および エネルギー Observational study on perimeterless HVAC system integrated with building envelope system 一ノ * ,井 ** *** **** Masayuki ICHINOSE, Takashi INOUE, Yusuke SEKI, Takefumi YOKOTA This paper presents effects of perimeterless air conditioning system on indoor thermal environment and energy conservation in the office building by long-term actual measurement. It is verified that the high-performance window system including automatic external venetian blind and glass with heating layer enables perimeterless environment through all seasons, and advanced air conditioning system including low-temperature air supply applying Sock filter and VAV realize comfortable indoor environment and energy conservation. It is also shown that tuning and refining of the system based on measurement and verification in the actual condition contribute greatly to the effective operation. Keywords:Air conditioning system of perimeterless, Automatic external venetian blind, Glass with heating layer, Sock filter, VAV system, Actual measurement ペリメータレス システム, ブラインド, ガラス,ソックフィルター,VAV1 はじめに して,アトリ よう らずオフィス において えて から, を大きくす えている.ここ に対して, エネルギー するために, く,エアフロー ィンド ダブルスキン よって システム ペリメータレス 一体 した ファサードエンジニアリングが されるように ってきた. ペリメータレス する して ・井 らによる する一 1) ,井 らによるエアフロー ィンド およびダブルスキンによる 2) による システム 3) ,ペリメータゾーンを えた 4) あるが, されている った あり,さら エネルギー ために ある. システム システム ペリメータレス メリットに まらず, による インテリ によって れた るこ るが, において, 態に対して させて維 して いくために づく システム および ある. 題意 から,意 によって デザイン システム いレ ベル した いオフィス 5) において, における システム 握に づいた運 から してきた. ,対 ルにおいて されている,ペリメータレス する ブラインドおよび コールドドラフト する ガラスによる ステム するソックフィルターシステムによる する VAV システム による および を多 によって 確に し, ファ サードシステム これによるペリメータレス ブライド による するこ している. 2 建物および実測概要 2.1 建物概要 つ,2003 3 したオフィ ある ( 14 1 1 ,延 20,000m 2 )1 および り・ を, 1 システ * 大学 ( ) Assistant Professor, Tokyo University of Science, Dr.Eng. ** 大学 Professor, Tokyo University of Science, Dr.Eng. *** ()NTT ファシリティーズ ( ) NTT Facilities, Inc., M. Eng. ( 大学 大学院 ) **** () Nikken Sekkei Co. Ltd, M. Eng.

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Page 1: Observational study on perimeterless HVAC system ...建築と設備が一体化したペリメータレス空調システムの性能および省エネルギー効果の実測評価

建築と設備が一体化したペリメータレス空調システムの性能および省エネルギー効果の実測評価

Observational study on perimeterless HVAC system integrated with building envelope system

一ノ瀬 雅之 ∗,井上 隆 ∗∗,関 佑介 ∗∗∗,横田 雄史 ∗∗∗∗

Masayuki ICHINOSE, Takashi INOUE, Yusuke SEKI, Takefumi YOKOTA

This paper presents effects of perimeterless air conditioning system on indoor thermal environment and energy conservation in theoffice building by long-term actual measurement. It is verified that the high-performance window system including automatic externalvenetian blind and glass with heating layer enables perimeterless environment through all seasons, and advanced air conditioning systemincluding low-temperature air supply applying Sock filter and VAV realize comfortable indoor environment and energy conservation.It is also shown that tuning and refining of the system based on measurement and verification in the actual condition contributegreatly to the effective operation.

Keywords:Air conditioning system of perimeterless, Automatic external venetian blind,Glass with heating layer, Sock filter, VAV system, Actual measurement

ペリメータレス空調システム,外ブラインド,発熱ガラス,ソックフィルター,VAV,実測

1 はじめに

近年の建築物の傾向として,アトリウムのような特殊な建築空間

に限らずオフィスビル等においても,外観意匠上の要件に加えて室

内視環境・開放感の向上や昼光利用の観点から,開口部を大きくす

る事例が増えている.ここで,日射遮蔽や熱抵抗に不利な開口面積

の増加に対して,快適な室内環境の形成とエネルギー消費量の低減

を同時に実現するために,単に空調設備の能力増強に頼るのではな

く,エアフローウィンドウやダブルスキンなどの外皮性能向上に

よって空調システムのペリメータレス化を図るなど,建築と設備が

一体化した高度なファサードエンジニアリングが導入されるように

なってきた.

ペリメータレス空調に関連する既往の研究としては,松尾・射場

本・井上らによる空気循環型窓に関する一連の研究 1),井上・石野・

郡らによるエアフローウィンドウおよびダブルスキンによる熱環

境・熱負荷への効果の解析 2),郡による窓システム適用時の窓側放

射環境評価法の提案 3),ペリメータゾーンを熱的緩衝空間と捉えた

研究 4) など多数あるが,実際に業務に利用されている執務空間で,

継続的に長期間の性能検証を行った研究事例は希有であり,さらな

る先進的な省エネルギー技術の普及のためには一層の実測検証事例

の積み重ねが必要である.

高性能な窓システムの導入は,空調システムのペリメータレス化

のメリットに留まらず,照明制御による昼光利用の促進やインテリ

ア空調制御との連携によって建物全体で調和のとれた環境性能の向

上を図ることが可能となるが,建設後の段階において,実際の屋外

気象状態や建物の利用形態に対して所期性能を発揮させて維持して

いくためには,測定・検証に基づく調整やシステムの改良および改

修の継続が不可欠である.

筆者らは以上の問題意識から,意匠設計者と設備設計者の密接な

協業によって建築デザインと高効率な設備システムの調和を高いレ

ベルで実現した総合的な環境性能の高いオフィスビル 5) において,

実使用状況下における室内環境・空調システム性能の把握と,実態

把握に基づいた運転改善を竣工直後から継続してきた.

本論文は,対象ビルにおいて導入されている,ペリメータレス化

を実現する日射遮蔽性能の高い電動自動制御外ブラインドおよび冬

季コールドドラフト防止効果を有する発熱ガラスによる高性能窓シ

ステムや,搬送動力を削減するソックフィルターシステムによる低

温送風,室内環境と連動する VAV等の空調制御システムや,昼光利

用による照明調光制御など個々の先進的な技術の効果・性能および

総合的な性能を多面的な実測によって的確に評価し,高性能なファ

サードシステムの導入とこれによるペリメータレス空調,自動調光

制御とブライド自動制御による昼光利用の普及促進に寄与すること

を目的としている.

2 建物および実測概要

2.1 建物概要

調査対象ビルは東京都心部に建つ,2003年 3月に竣工したオフィ

スビルである (地上 14階,地下 1階,塔屋 1階,延床面積 20,000m2).

図 1 に建物および窓周り・空調設備概要を,表 1 に窓・空調システ

* 東京理科大学 助教・博士 (工学) Assistant Professor, Tokyo University of Science, Dr.Eng.** 東京理科大学 教授・工博 Professor, Tokyo University of Science, Dr.Eng.

*** (株)NTTファシリティーズ 修士 (工学) NTT Facilities, Inc., M. Eng.(研究当時 東京理科大学 大学院生)

**** (株)日建設計 Nikken Sekkei Co. Ltd, M. Eng.

Page 2: Observational study on perimeterless HVAC system ...建築と設備が一体化したペリメータレス空調システムの性能および省エネルギー効果の実測評価

ムの特徴を示す.敷地は東西に長く,南北面に隣接して同規模のオ

フィスビルが建っているため,日射制御上不利な東西面に大きな

開口を持つファサードを設けざるを得なかった.このため,過酷な

西日対策として「すだれ」に想を得たオフィスビル用の耐久性の高

い自動制御外ブラインドを新規開発し,高度な日射遮蔽,照明制御

と連動した昼光利用および眺望の確保を図っている.さらに,窓面

温度に応じて発停制御する発熱複層ガラスによって冬季コールド

ドラフトを防止し,通年でのペリメータレス化を行っている.ペリ

メータレス化によって,空調空気を拡散させて吹き出すソックフィ

ルターの全面的な導入を可能としている.ソックフィルターは,北

欧で食肉工場向けに開発されたシステムであり,結露し難くドラフ

トの影響が少ないなどの特徴を有しているため,低温送風に伴うド

ラフトや結露を回避して,搬送動力削減効果の高い低温送風に適し

ている.また,空調運転制御においてはゼロエナジーバンド制御,

ロードリセット制御,外気冷房制御,CO2濃度検知による最小外気

量制御などによって徹底した省エネルギー化を図っている.熱源設

備は氷蓄熱システムと高効率ガス焚冷温水機の併用方式である.

2.2 実測概要

基準階は図 2 に示すように東西に長い平面形状となっており,

VAVユニットが内蔵された 8系統 16本のソックフィルターによっ

て空調を行っている.空調機は西側 5系統,東側 3系統の 2台で負

荷分担している.測定は図中に示す空間上部の空調制御センサや居

住域における室温の他,窓面日射量,窓面温度,グローブ温度などの

連続的な計測と,夏季・冬季の代表日 注 1) におけるオフィス稼働状

況下での平面・断面温度分布や室使用実態などの手動計測を実施し

た.なお,窓近傍における気温分布測定にあたっては,線径 0.1mm

の熱電対を使用して放射の影響を低減させるように配慮した.

3 外ブラインド・発熱ガラスによる通年の窓性能への効果

通年のペリメータレス化を実現する,電動自動制御外ブラインド

と発熱ガラスで構成される窓システム 注 2) の性能検証結果を示す.

3.1 外ブラインドの日射遮蔽効果

外ブラインドの日射遮蔽性能を把握するため,夏季代表日 注 1) に

窓近傍での気温および放射環境の分布測定を行った.測定は,鉛直

方向に 20cm 間隔 16 点を測定する熱電対および 1100mm 高さに設

置したグローブ温度計・風速計を設置したポールを,台車で静かに

移動して各測定点で 1分程度静止させて行った.時間変化の影響を

なくすために,往復して計測を行いデータを平均処理している.な

お,断面温度分布測定は人体等の影響を受けない休日に実施した.

図 3 に空調立ち上がり安定後の東面におけるピーク時の断面温

度分布を示す.測定結果によると,窓直近の天井付近において熱溜

まりが発生しているが,居住域においては室温分布が均一に維持さ

れている.また,図 4に示す同時間帯におけるグローブ温度および

PMV(Clo0.6, Met1.2)の分布によると,窓面から 2m付近において

空調吹き出し気流の影響で局所的な低下が見られるが,窓近傍を含

め ±0.5以内に収まっており,良好な放射環境が形成されている.

3.2 内ブラインドとの性能比較

一般的な窓仕様である内ブラインドに対する外ブラインドの効果

を明らかにするため,同一窓面にて比較実験を行った.西側窓面の

うち 1ユニット (幅 1500mm)の外ブラインドを手動で格納し,室内

図 1 建物および窓廻り・空調設備の概要

表 1 窓・空調システムの特徴窓システム 電動自動制御外ブラインド・発熱複層ガラス照明 昼光利用調光制御・人感センサー制御空調 低温送風・VAV・ソックフィルター空調制御 ロードリセット制御・最小外気量制御・外気冷房制御熱源 内外融氷蓄熱システム・電気ガス併用熱源

1 24

2 2 23 3 1西側空調機(AC 5-2) 東側空調機(AC 5-1)

EVホール 集密書架

系統A B C D E F G H

発熱ガラス外ブラインド発熱ガラス外ブラインド

17.6m

6.4mソックフィルタ温熱環境計測位置 窓廻り環境計測位置

① 3000 m3/h② 2300 m3/h③ 2500 m3/h④ 2000 m3/hVAV定格値

空調制御用室温センサ空調制御用室温センサ(ペリメータ用:改善後)居住域室温センサ(追加設置)図 2 空調系統・測定点の概要平面図

3100

100

[mm]

1100

2100

200 6200 [mm]52004200320022001200[℃]

242424

2424

2425

252628 23 24

2223242526272829303132

図 3 東ペリメータの南北断面温度分布 (2007/8/15 8:00)

PMV[-],風速[m/s] 温度[℃]

窓面からの距離[mm]-0.6-0.4-0.200.20.40.60.811.21.40 1000 2000 3000 4000 5000 6000 182022

242628PMV 風速 室温 グローブ温度

図 4 東ペリメータ放射環境 (2007/8/15 8:00)

2025303540

0

500

1000

1500

9:00 12:00 15:00 18:00 21:00

温度 [oC]

日射量 [W/m

2 ]

内BL窓面温度 外BL窓面温度 窓近傍室温 外気温 窓面日射量

図 5 西方位窓における内外ブラインド窓面の比較 (2005/7/28)

Page 3: Observational study on perimeterless HVAC system ...建築と設備が一体化したペリメータレス空調システムの性能および省エネルギー効果の実測評価

側に外ブラインドと同系色の内ブラインドを設置した.夏季代表日

(2005/07/28) における窓面温度および屋外気象の日変動を図 5 に

示す.ここで,窓面温度は赤外線放射カメラにて撮影した熱画像か

ら窓面内を領域平均した放射温度とした.本建物のガラスは Low-e

効果を有する発熱膜を内蔵しているため,窓単体でも市販の Low-e

ガラスと同等の日射遮蔽性能を有するが,内ブラインドに比べて外

ブラインドの窓面温度はピーク時に 7K程度も低く,終日窓近傍の

気温と同等に抑えられており熱負荷低減および良好な放射環境の形

成に大きく寄与している.

3.3 発熱ガラスによるコールドドラフト抑制効果

高い日射遮蔽性能は夏季において効果的である一方,冬季におい

てはペリメータでのコールドドラフトへの対応が必要である.コー

ルドドラフト対策として FCU や蓄熱式のヒータなどの機器を設置

する場合があるが,本建物では配管・設備機器スペースが不要とな

る,必要時のみ発停制御可能等のメリットから発熱ガラスを採用し

ている.そこで,発熱ガラスによるコールドドラフト抑制効果およ

び放射環境改善効果を把握するため,前出の夏季における断面温度

分布と同様に,冬季窓近傍環境において発熱運転の有無による断面

温度分布の比較実験を行った.

図 6 は,屋外気象条件が同等であった冬季代表日 注 1) における,

東窓面の発熱停止 (左) および発熱運転 (右) での断面温度分布であ

る.発熱運転時は停止時と比較して窓際のコールドドラフトが軽減

されたことによって,窓近傍における上下温度分布が緩和されてい

ることがわかる.

図 7に温度分布測定時における床上 1100mmでの PMV(Clo0.85,

Met1.2)および風速分布を示す.発熱ガラス停止時はコールドドラ

フトや空調吹き出し気流の影響によって PMVが低下する場所が見

られるが,発熱ガラス運転時はコールドドラフトが低減され窓面か

らインテリアまで安定した温熱環境が形成されている.

また,図 8に代表日における発熱ガラスの単位窓面積あたり投入

電力・窓面温度・設定窓面温度および発熱ガラス年間電力量を示す.

8:00に発熱ガラスが起動すると同時に,消費電力は最大の 54W/m2

となり,その後はなだらかに減少する.電力の投入に伴い窓面温

度は 1 時間かけて 16̊ C から 21.3̊ C まで上昇し,以降は窓面温度を

20̊ C 前後に維持している.ここで,非発熱時にも約 0.57W/m2 が

待機電力として消費されている.単位窓面積あたり年間電力量を見

ると,東側・西側ともに約 15kWh/(m2・年) のうち,35% 程度の待

機電力が発生していたが,2007 年度以降は回路を修正して待機電

力ロスを解消した.発熱運転時の平均電力量は約 14W/m2 であり,

温度制御による発熱ガラスは多大なエネルギー消費を伴わずに冬季

の窓際での熱環境維持が可能である.

3.4 長期的な温熱環境

夏季執務時間帯における室温とグローブ温度の関係を図 9 に示

す.ペリメータにおいてもインテリアと同様に室温とグローブ温度

に大きな差はなく,外ブラインドの日射遮蔽効果によって,窓面か

らの熱放射が抑えられている.

図 10にインテリア (左)およびペリメータ (右)における夏季の上

下温度分布,図 11に冬季の上下温度分布を示す 注 3).評価対象は平

日の空調稼働時間帯(9:00~19:00)とした.夏季においては,外ブ

ラインドの日射遮蔽効果によって,インテリアおよびペリメータと

17 18 1920

21

2121

15

21

17 18 1920

21

2121

15

21

17 18 1920

21

2121

15

21ソックフィルタ3100

100200

[mm]

11002100

320022001200

ソックフィルタ

17 18 1920

21

2121

22

17 18 1920

21

2121

223100

100200

[mm]

11002100

320022001200発熱ガラスON(2008/1/5 9:00)発熱ガラスOFF(2008/1/6 9:00) [mm][mm]1516171819202122

[℃]

図 6 発熱ガラス発停制御有無における東ペリメータの南北断面温度分布

PMV[-]

風速[m

/s]

窓面からの距離[mm] (発熱ガラスON 2008/1/5, OFF 1/6)-0.8

-0.7

-0.6

-0.5

-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

0

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0.35

0.4PMV(発熱ガラスON) PMV(発熱ガラスOFF)

風速(発熱ガラスON) 風速(発熱ガラスOFF)

図 7 発熱ガラス ON・OFF時室内環境

温度[℃]

電力[W/m2 ]

消費電力量[kWh/m2・年]

発熱ガラスON (2008/1/5) (2006/4/1~2007/3/31)05

1015202530

7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:000102030405060

中央窓面温度 外気温度発熱ガラス制御用センサ窓面温度 設定窓面温度

待機電力 (約0.57W/m2)

投入電力ピーク(約54W/m2)

0246810121416

東側 西側

待機電力(夏期+中間期)待機電力(冬期)消費電力量34% 36%

年間での運転時間686.7hでの平均年間での運転時間684.2hでの平均

図 8 単位窓面積あたり投入電力推移と年間消費電力量

y = 0.7665x + 6.6584R2 = 0.9245

22

24

26

28

30

32

22 24 26 28 30 32

室温[℃]

グロー

ブ温

度[℃

] y = 0.8061x + 5.5469R2 = 0.9167

22 24 26 28 30 32

室温[℃]

ペリメータ インテリア

図 9 室温とグローブ温度の関係 2005.7/25~8/26

床上高さ[mm] 温 度 [ ℃ ] 温 度 [ ℃ ]( 2 0 0 7 / 7 / 1 ~ 9 / 3 0 )2 0 2 2 2 4 2 6 2 8 3 01 0 06 0 01 1 0 01 7 0 02 0 0 02 3 0 02 5 0 02 7 0 03 0 0 03 3 0 0

2 0 2 2 2 4 2 6 2 8 3 01 0 06 0 01 1 0 01 7 0 02 0 0 02 3 0 02 5 0 02 7 0 03 0 0 03 3 0 0 イ ン テ リ ア 東 ペ リ メ ー タ2 5% 7 5%MIN MAX2 5% 7 5%MIN MAX

図 10 夏季上下温度分布

イ ン テ リ ア 東 ペ リ メ ー タ

床上高さ[mm] 温 度 [ ℃ ] 温 度 [ ℃ ]( 2 0 0 7 / 1 2 / 1 2 ~ 1 2 / 2 8 )1 8 2 0 2 2 2 4 2 6 2 81 0 06 0 01 1 0 01 7 0 02 0 0 02 3 0 02 5 0 02 7 0 03 0 0 03 3 0 0

1 8 2 0 2 2 2 4 2 6 2 81 0 06 0 01 1 0 01 7 0 02 0 0 02 3 0 02 5 0 02 7 0 03 0 0 03 3 0 0

図 11 冬季上下温度分布

0 200 400 600 800020406080

100

日射量 [W/m2]

照明出力率 [%]

1列目

0 200 400 600 800日射量 [W/m2]

2列目

0 200 400 600 800日射量 [W/m2]

3列目

図 12 壁面日射量と照明出力率の関係 (2004~2005年)

Page 4: Observational study on perimeterless HVAC system ...建築と設備が一体化したペリメータレス空調システムの性能および省エネルギー効果の実測評価

ともに床上 100mm~3300mm 間の上下温度分布の平均温度差が約

1K 以内に収まっている.冬季においては,ペリメータ床付近に冷

気の影響が見られるが,発熱ガラスのコールドドラフト抑制効果に

よって,上下温度差はインテリアで約 1K,ペリメータで約 2Kに抑

えられており,長期的にも冬季・夏季ともにペリメータレス環境が

実現されている.

3.5 昼光利用効果

本建物では天候状態に応じたブラインドのスラット角制御を行っ

ており,日射を遮蔽しつつ昼光の積極的な導入を図っている 注 4).

長期的な昼光利用効果を評価するため,図 12 に示すように休日お

よび平日昼休みを除く日中時間帯 (9:00~18:00) における西壁面日

射量と西側窓面から奥行方向の系統毎 (幅 6.4m) 照明出力率の関係

を検討した.適切なブラインドと照明の協調制御による昼光利用効

果によって,窓際 2列目までは壁面日射量と出力率の低下が明確で

あり,日射遮蔽と昼光利用の両立が達成されている.

4 ソックフィルターによる低温送風システムの有効性

ペリメータレスを実現する窓システムの導入下にあっては,空調

システム構成の選定自由度が高くなる.建物の利用形態や熱源シス

テムとの組合せによって選択肢は多岐にわたるが,本建物のように

熱源に蓄熱システムを利用している場合は搬送動力の低減が可能

な低温送風は有効である.低温送風は結露やドラフトの発生に注意

する必要があるが,金属部分との空気接触がないため結露の発生リ

スクが少なく,穏やかな室内環境の形成が可能なソックフィルター

は,ペリメータレス空調システムにおける有効な選択肢の一つとな

り得る.本節では,ペリメータレス下におけるソックフィルター空

調システムの性能検証結果を示す.

4.1 温熱環境

まず,ソックフィルターの基本的な性能を把握するため,インテ

リアにおいて給気温度分布と居住域温熱環境について検討を行っ

た.図 13に断面温度分布 (給気温度 12̊ C上段:風量 100%,下段:風

量 25%) を示す.風量 25% では,100% に比べて両端間の給気温度

差が大きくなるため,先端側の気温が若干高くなっているが,居住

域においては根元側と先端側の気温差は 1K 程度に収まっている.

給気温度に空間分布差が生じ易い低風量時であっても,居住域での

室温分布は小さく保たれており,良好な熱環境を形成可能である.

図 14 は熱的に軽い薄紙を用いてソックフィルター周りの気温分

布を赤外線放射カメラにより測定した結果である.左に可視画像,

中央に給気温度 12̊ C,右に給気温度を 10̊ C に設定したケースを示

す.給気温度を下げると,冷気の到達距離が若干長くなっている

が,居住域においては概ね均一な室温分布を示している.また,図

15に示す風速分布 (左:給気温度 12̊ C,右:10̊ C) にも大きな違いが

見られない.なお,風量を絞ったケースにおいてもドラフトの発生

は見られなかった.

4.2 給気性能

ソックフィルターは搬送装置も兼ねる本体での漏気・熱交換を伴

いながら給気を行うため,ダクト根本部分から末端部にかけて給気

量の不足や給気温度の変化が懸念される.そこで,本建物における

13mのスパン内での給気風量分布の計測を行い,執務空間への汎用

的な適用にあたっての基本的な性能を検証した.ダクトのスロット

243100

100

[mm]

11002100 24 24.523.523.5 23 23

23.5 24243100

100

[mm]

11002100 24 24.523.523.5 23 23

23.5 24

3100

1000

[mm]

[mm]11002100

4000 160001200080002000 6000 10000 14000

26 2625.5 25.5

3100

1000

[mm]

[mm]11002100

4000 160001200080002000 6000 10000 14000

3100

1000

[mm]

[mm]11002100

4000 160001200080002000 6000 10000 14000

26 2625.5 25.5

21222324252627[℃]

給気温度12℃ 給気風量100%

給気温度12℃ 給気風量 25%図 13 ソックフィルターと居住域温熱環境との関係 (2007/8/21)

(2007/8/13) (2007/8/14)

12℃℃℃℃ 給気風量給気風量給気風量給気風量100% 10℃℃℃℃ 給気風量給気風量給気風量給気風量100%可視画像可視画像可視画像可視画像 22. 022. 0

23. 023. 0

24. 024. 0

25. 025. 0

26. 026. 0

27. 027. 0

28. 028. 0

29. 029. 0

30. 030. 0

22. 022. 0

23. 023. 0

24. 024. 0

25. 025. 0

26. 026. 0

27. 027. 0

28. 028. 0

29. 029. 0

30. 030. 0

図 14 給気温度温熱環境比較 (赤外線放射カメラ)

[m/s]ソックフィルター

照明

150650115016502150265031503350

2000[mm]0.2

0.30.4

0.2

0.2 0.40.20.3

0.1

0.1ソックフィルター

照明ソックフィルター

照明

150650115016502150265031503350

2000[mm]150650115016502150265031503350

2000[mm]0.2

0.30.4

0.2

0.2 0.40.20.3

0.1

0.1ソックフィルター

照明

0.10.1

0.20.30.4

0.20.1

0.30.4 0.6

150650

115016502150265031503350

2000[mm]

ソックフィルター照明

0.10.1

0.20.30.4

0.20.1

0.30.4 0.6ソックフィルター

照明

0.10.1

0.20.30.4

0.20.1

0.30.4 0.6

150650

115016502150265031503350

2000[mm]150650

115016502150265031503350

2000[mm] 00 .10 .20 .30 .40 .50 .60 .70 .80 .91

給気温度12℃ 風量100% 給気温度10℃ 風量100%図 15 給気温度気流環境比較

a d スロット面風速計測ポイント~31 給気温度計測~

TT

321

ダクトエンド

給気温度計測点

スロット部

13,000mm

ダクト入口給気温度

da b c

スロット部

風速

[m/s]

0

2

4

6

8

10

12

14

a b c d

100% 75% 50% 25%

a b c d

図 16 ソックフィルター計測ポイントおよびスロット部風速分布

頻度[h] 頻度[h]

頻度[h] 頻度[h](2007/7/1~9/30)

空調機内給気との温度差[℃]

空調機内給気との温度差[℃]

給気風量[m3/h]

給気温度[℃]5 10 15 20 25012345678910

5 10 15 20 25

012345678910

0 500 1000 1500 2000 2500 3000設定給気温度:12℃

設定給気風量:25%

0 50 100

0 50 100

0 50 100

0 50 100設定給気風量:25%

インテリア インテリア

インテリア

ペリメータ ペリメータ

ペリメータインテリア①インテリア②インテリア③ ペリメータ③ペリメータ②ペリメータ①

空調機給気温度との差[K]空調機給気温度との差[K]

図 17 吹き出し箇所による給気温度比較

Page 5: Observational study on perimeterless HVAC system ...建築と設備が一体化したペリメータレス空調システムの性能および省エネルギー効果の実測評価

部分における風速およびダクト内部の給気温度を図 16 に示す測定

点で代表日または長期連続的に計測を行った.図 16 はスロット部

分の風速分布を風量出力を手動で変更して測定した結果である.風

量が多くなるにつれて,ダクト根元と末端との間での給気風速の差

が大きくなるが,常用的な出力範囲においては 13mのスパンであっ

ても末端まで支障なく給気可能である.

次に,給気風量と給気温度の関係について,インテリア・ペリメー

タでの吹き出し位置別での冷房期間中の稼働状況での長期的な傾向

を図 17 に示す.給気温度については,空調機と鋼板メインダクト

の接続位置における給気温度を基準として評価した.上段に示す給

気風量と給気温度差の関係によると,ペリメータ系統のソックフィ

ルター末端側においては最低風量時に 3~5K 程度まで温度差が生

じている.また,下段に示す給気温度と給気温度上昇の関係による

と,給気温度が低いほどソックフィルター通過後の温度上昇が大き

く,給気温度 10̊ Cの時に最大で 4~7K程度の差が生じる.

ソックフィルターを長いスパンで適用する場合は,低温送風時の

ダクト末端近傍における熱環境に留意する必要があるが,ペリメー

タレス下においてソックフィルターを用いることによって,省エネ

ルギーに寄与する低温送風運転を行っても結露やドラフトを生じる

ことなく,良好な温熱環境を実現可能である.

4.3 長期的な性能変化

ソックフィルターは,食肉工場向けに開発されたシステムであ

り,6ヶ月毎という高い頻度での洗浄がメーカーからは推奨されて

いるが,中性能フィルタを設け除塵するオフィス空調での使用であ

るため,本建物においては 3年間洗浄せずに継続使用した.ここで,

経年変化によるソックフィルターの性能変化を検証するため,竣工

後 3年目に実施した洗浄メンテナンス前後のソックフィルターを対

象として比較検証を行った.

図 18 に,吹き出し風量全体に対するスロット部からの給気風量

の割合について,洗浄前後の比較を設定風量別に示す.洗浄前後と

もに給気風量が少なくなるほど,スロット部からの吹き出し割合が

増加する傾向がある.洗浄前後を比較すると,洗浄後に布が縮むた

め風量の低下がフィルタ部分において見られるが僅かである.ソッ

クフィルターの経年に伴う性能劣化は殆ど無く,洗浄の有無による

室内温熱環境,搬送能力への影響も小さいことが明らかとなった.

5 ペリメータレス下でのVAV制御の検証と制御改善効果

ペリメータレス下では,ゾーニングを意識せずに VAV を用いた

並列的な給気システムを構築することが可能であるが,システムが

相互に影響する状況下で意図した動作をさせることは難しい.本節

では,VAVシステムの稼働状況下での検証と制御改善効果を示す.

5.1 ロードリセット制御

ロードリセット制御は,VAV制御下での低負荷時における極端な

風量低下による温熱環境の悪化を回避するために,低負荷状態が一

定時間継続した時に空調機の給気温度を自動変更する制御である.

図 19はロードリセット制御下における給気温度・空調機風量 (VAV

と連動してインバータ制御される) の冷房負荷との関係と,出現頻

度を示したものである.年間を通して冷房負荷が発生しているが,

冬季において冷房負荷が少ない時にロードリセット制御によって給

気温度が上昇して風量を確保している.しかしながら,夏季におい

図 18 洗浄前後スロット部吹き出し風量比較

1015202530

給気温度[℃]

0100200頻度[h] AHU冷房負荷(顕熱のみ)頻度[h]

給気温度頻度[h]夏期

冬期 中間期夏期冬期中間期

AHU冷房負荷(顕熱のみ)[MJ/h]給気風量[m3 /h]

夏期冬期

中間期10000800060004000200000 50 100 150 頻度[h]

給気風量頻度[h]

0 300 600図 19 ロードリセット制御下での給気風量・給気温度の傾向

風量/定格風量[%]

給気温度[℃]

室温[℃]

ロードリセット抑制前(07/07/06) ロードリセット抑制後(07/07/27)

051015202530

020406080100120

24262830

6 8 10 12 14 16 18 20 6 8 10 12 14 16 18 20

風量/定格風量[%]

給気温度[℃]

室温[℃]

ロードリセット抑制前(07/07/06) ロードリセット抑制後(07/07/27)

051015202530

020406080100120

24262830

6 8 10 12 14 16 18 20

風量/定格風量[%]

給気温度[℃]

室温[℃]

ロードリセット抑制前(07/07/06) ロードリセット抑制後(07/07/27)

051015202530

020406080100120

24262830

6 8 10 12 14 16 18 20 6 8 10 12 14 16 18 20

設定給気温度 系統H給気風量(東ペリメータ)系統F給気風量系統G給気風量

系統H室温(東ペリメータ)系統F室温系統G室温

[h]

給気温度

図 20 ハンチング抑制前後空調運転比較

頻度[%]

頻度[%]

給気温度[℃]

AHU冷房負荷(顕熱のみ)[MJ/h] 頻度[%] 頻度[%]1015202530

0 50 100 150調整前調整後

01020

0 10 20 30 40

東側空調機(AC 5-1)

ロードリセット変更前(2006/7/23~9/13)ロードリセット変更後(2007/7/23~9/13)

0 10 20 30 40

01020

図 21 ロードリセット制御変更前後の給気温度比較

4.0m

2.5m

従来位置

移設位置

図 22 制御用センサ変更位置

-2-10123

-2-10123

西ペリメータ(系統A) インテリア(系統B~G) 東ペリメータ(系統H) 西ペリメータ(系統A) インテリア(系統B~G) 東ペリメータ(系統H)空調制御用センサ温度

と居住域温度の差[K]

制御用センサ移設前(2007.7/27,30,31) 制御用センサ移設後(2007.8/27,28,29)図 23 制御用センサ温度差比較

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てもロードリセットが頻繁に発動しており,意図しない給気温度の

上昇が発生している懸念があったため,夏季におけるロードリセッ

ト制御による室内環境への影響を検討した.

図 20 にロードリセット制御の設定変更前後 注 5) における空調機

給気風量・温度および室温の時刻変動を示す.変更前ではロードリ

セットが頻繁に発動しており,室温に周期的な変動が生じていた.

これに対して,ロードリセット発動の閾値を変更した結果,給気温

度の安定に伴って風量の過剰な変動がなくなり,室温の変動幅を抑

制することができた.

冷房期間中における傾向を分析するため,AHU 冷房負荷と給気

温度の相関性と,冷房負荷 (上) および給気温度 (右) の頻度を図 21

に示す.制御変更前は熱負荷 50MJ/h前後において給気温度が上昇

しており,過剰な給気温度の上昇は望ましくない状態であったが,

制御変更後は負荷と給気温度の相関性が改善されており,給気温度

の制御性が高まった.

5.2 空調制御用室温センサ位置(1) 空調システム運転への影響

一般に空調制御用室温センサは室使用上に障害とならないことを

優先して壁際等に配置される場合が多いが,日射の影響や機器発熱

の影響を受けるといった原因によって空調システムの挙動に悪影響

を与える事例は多い.特に,ペリメータレス空調システムでの VAV

制御では,熱負荷の空間的偏在および時刻変動性に適切に対応す

るために各 VAV が担当する領域における代表温度を正確に捉える

ことの重要性が高くなる.窓近傍の領域では,高性能窓システムで

あってもインテリアと比較して熱負荷が偏在し,変動幅も大きいこ

とが予想される.

調査対象建物においては東西全面が開口部で南北全面が書棚とし

て利用される大空間となっているという空間構成上の制約から,空

調吸い込み口に近い壁面近傍の床上高さ約 3m程度の空間上部に空

調制御用の室温センサが配置されており,居住域温度に対する空間

的・時間的な乖離が懸念された.そこで,図 22 に示すように,当

初の設置位置から居住域に近い場所へセンサ位置を変更し,空調制

御用センサと居住域温度の乖離,それに伴う室温変動および制御状

況,VAV出力の状態や室温の平面分布状況などについて,その前後

の変化を検討した.

図 23 に制御用センサと居住域気温との温度差について,センサ

移設前後の比較を示す (左:移設前,右:移設後).移設前は東西ペリ

メータにおいて温度差が 1K程度生じており,その変動幅も大きい

状態であったが,移設後は温度差が 0.5K 程度に改善され,変動幅

も小さくなった.図 24 に移設前後での代表日の制御用センサと居

住域室温,給気風量の推移を示す.移設前ではセンサが室温変動を

捉えられずに風量の変動が大きくなっていたが,移設後は制御用セ

ンサが室温の変動を適切に捉えており風量が負荷に応じた変動を示

し,室温の変動幅も小さくなっている.また,センサ値と居住域温

度の間に生じていた 2K程度の温度差も減少し,熱環境が改善され

る結果となった.

また,図 25 に示す同等の気象条件であった代表日 注 6) における

空調機負荷の系統別の処理熱量内訳によると,空調制御用センサ

の移設前はペリメータ系統の過剰な給気は他系統まで及んでいた

が,空調制御用センサ移設によってペリメータ系統の負荷割合が約

7%減少しており熱負荷処理の系統分担の偏りが解消された.

図 24 制御用センサ位置変更による給気風量への影響

日処理熱量[kJ/日・m

2 ][%]

制御用センサ移設前 制御用センサ移設後0500

1000150020002500

7/24 7/25 9/3 9/4 020406080100-25002500西ペリメータ処理熱量 東ペリメータ処理熱量インテリア処理熱量 ペリメータ割合

図 25 ペリメータ系統処理熱量割合比較

居住

域温度

[℃]

居住

域温度

[℃]

23.0

24.0

25.0

26.0

27.0

28.0

系統A 系統B 系統C 系統D 系統E 系統F 系統G 系統H

23.0

24.0

25.0

26.0

27.0

28.0

系統A 系統B 系統C 系統D 系統E 系統F 系統G 系統H

制御用センサ移設前(2007/7/27,30,31)

制御用センサ移設後(2007/8/27,28,29)

図 26 制御用センサ位置変更前後の室温分布

西側 東側

6.4m

17.6m

西側 東側

6.4m

NN 17.6m空調制御用センサ移設前(07/08/01 14:00)

空調制御後センサ移設後(07/09/06 14:00) [℃]

25.525.5

25.5262626

26 26.526.5系統A 系統B 系統D系統C 系統F系統E 系統H系統G系統A 系統B 系統D系統C 系統F系統E 系統H系統G25

24.524.5 24.52525 25.525.5 2626 26.524 24系統A 系統B 系統D系統C 系統F系統E 系統H系統G系統A 系統B 系統D系統C 系統F系統E 系統H系統G

26

23.52424.52525.52626.527

図 27 制御用センサ位置変更による室温分布への影響

050

100150200

8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00

[人,台] 着席稼働PC数 有効タスク照明点灯数 在室人数稼働PC数 点灯タスク照明数在室人数Max=147稼動PC数Max=171点灯タスク照明数Max=95

図 28 室使用実態 (2007/11/27)

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(2) 室内温熱環境への影響

センサ位置改善による,室内温熱環境への影響について検討す

る.図 26 にセンサ移設前後の各系統の居住域温度を示す.移設前

はペリメータ(系統A・系統H)において居住域温度が他の系統よ

り低くなっていた.これは,ペリメータ系統のセンサが居住域温度

より高い温度を捉え,さらにインテリア系統の負荷を分担する状態

となって供給風量が過多になったためである.センサ移設後はペリ

メータ系統の過度な供給風量が抑制され,他の系統との温度差およ

び室温の変動幅も小さくなった.

また,図 27 に示すセンサ移設前後の室内平面居住域温度分布に

よると,センサ移設前はペリメータにおいて室温が過剰に低下して

いたが,移設によってペリメータにおける室温低下が改善され,イ

ンテリアとペリメータの居住域温度差が小さくなっている.

センサ位置変更によって居住域温度を適切に捉えることができ,

過度な冷房を抑制して省エネルギー性を高め,さらに室内の温度分

布状況を改善可能であることを示した.

6 エネルギー消費量への効果

ペリメータレス空調システムの導入による省エネルギー効果を明

らかにするため,建物の使用実態および竣工後数年間のエネルギー

消費量の実績を示す.

6.1 建物の使われ方

内部発熱の実態を把握するため,室の使われ方について実測を

行った.図 28 に代表日 (2007/11/27) における在室人数・点灯タス

ク照明数・稼働 PC数の変動とおよび各項目の最大値を示す.また,

在室状況に対して有効に機能している機器の状態を把握するため,

着席状態で稼働している PC 数(着席稼働 PC 数)およびタスク照

明の点灯数(有効タスク照明点灯数)についても併せて示している.

なお,実測は平日の執務状況下にて,30分ごとに数人で室内を巡

回して目視で測定を行った.PC の稼働状況は赤外線放射カメラに

よって発熱状況を可視化して確認を行った.

在室人数は,出勤時間の 9:00~9:30 に増加し,11:30~12:30 にか

けて昼休みのため減少がみられるが,他の時間帯においては 60~80

人(最大在室人数の 40~50%)程度で深夜まで推移している.点灯

タスク照明数は一日を通して 15 台以下であり,タスク照明はあま

り必要とされていない.稼働 PC数は一日を通して在室人数より多

く,着席起動 PC数は 10~65台(起動 PC総数の 35~85%)で推移

している.11:00~13:00 において稼働 PC 数は変動が少ないのに対

し,着席稼働 PC 数(着席し作業に利用されている PC 数)が減少

しており,PCを稼働させたまま席を外す人が多いことがわかった.

また,同日におけるコンセント・照明系統別の電力量および冷房

処理熱量の日変動を在室状況と併せて示した図 29 によると,在室

状況と同調して深夜まで空調処理熱量が高い値で推移していること

がわかる.

6.2 竣工後のエネルギー消費量推移

図 30に BEMSで集計した竣工後 5年間のエネルギー消費量実績

を, 一般ビルの実態値 8) と併せて示す.一般的な事務所ビルと比較

して,本建物は長時間に渡って高い密度で使用される傾向にあるた

め,照明・コンセント電力消費量およびそれに伴う空調処理熱量が

大きいが,ペリメータレス空調システムによって快適な執務空間を

提供しつつ空調エネルギー消費量を抑えている.

0510152025

0:00 2:00 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 0:00

[W/m2]

050100150200250[人,台]

BEMS室全体冷房処理熱量 BEMSコンセント系統電力量BEMS照明系統電力量 在室人数(Max=147)点灯タスク照明数(Max=95) 起動PC数(Max=171)

図 29 室使用実態と電力量・処理熱量 (2007/11/27)

延べ床面積あたり一次エネルギー消費量[MJ/㎡/年]

02004006008001,0001,2001,4001,6001,8002,000

一般ビル 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度照明コンセントその他空調系統熱源補機熱源

02004006008001,0001,2001,4001,6001,8002,000

一般ビル 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度照明コンセントその他空調系統熱源補機熱源

図 30 竣工後 5年間のエネルギー消費量推移

7 まとめ

建築と設備が一体化したペリメータレス空調システムの構築にお

いては,高性能窓・空調設備機器・制御システムといった個々の技術

を導入するだけでなく,実使用状況下でこれらが連動して動作する

状況での性能評価を行い,その結果に基づいた長期的な調整・評価

によって所期性能が発揮可能となることを本研究は明らかにした.

また,ペリメータレス空調システムを導入したビルにおける,実

使用状況下の性能評価を実施した結果,一般化に資する以下の知見

を得た.

• 電動自動制御外ブラインドによって,高い日射遮蔽性能と良好な放射環境を形成すると伴に,適切な昼光導入によって 30%程

度の照明電力量を削減可能である.

• 発熱ガラスは,補助的な運用によって年間で単位窓面積あたり 10kWh/m2 程度の電力量で冬季のコールドドラフトを低減

する.

• ペリメータレス下において,ソックフィルターは 13m 程度の

スパンでも空調搬送機器としての基本性能を満たし,結露・ド

ラフトを伴うことなく 10̊ Cの低温送風を実現できる.

• ロードリセット制御は冬季の低負荷冷房運転時に有効だが,夏季においては室温ハンチングの要因となり得るため,発動閾値

の調整が必要である.

• ペリメータレス空調での VAV 制御においては室温センサの設

置位置の選定がシステム全体の性能に影響するため,放射環

境・熱溜り等を考慮した設置位置の検討・調整が不可欠である.

• 建物の使用頻度が高く照明・コンセント電力消費量が多い場合でも,窓システムと一体化したペリメータレス空調によっ

て,空調エネルギー消費量を一般ビルよりも大幅に削減可能で

ある.

Page 8: Observational study on perimeterless HVAC system ...建築と設備が一体化したペリメータレス空調システムの性能および省エネルギー効果の実測評価

謝辞

本研究を進めるあたり,当時東京理科大学学部生の田村由美子氏

から実測調査の協力を,パナソニック電工エンジニアリング (株)の

廣瀬洋一氏から技術的な協力を得た.ここに記して感謝の意を表し

ます.

注 1) 図 A-1 に夏季・冬季代表日としてデータを掲載した測定日における外気温および日射量の時刻変動を示す.

0

10

20

30

気温 [℃]

外気温水平面全天日射量

6 12 18 24 02004006008001000

日射量[W/m2 ]

外気温水平面全天日射量

6 12 18 24 6 12 18 242007/8/15 2008/1/5 - 6図A-1 ペリメータ環境の詳細実測実施日における気象条件

注 2) 発熱複層ガラスは,複層ガラスの中空層室内側ガラス面に浸透させた特殊金属皮膜を通電によって発熱させ,ガラスを加熱するシステムである.メーカー値として示されている発熱複層ガラスの仕様(透明ガラス 6mm+空気層 6mm+発熱ガラス 6mm)の性能値は,日射透過率 0.55,反射率 0.14,吸収率 0.31,日射熱取得率 0.68,熱貫流率 2.3W/(m2K) である.また,外ブラインドのスラット反射率は 0.69である.

注 3) 上下温度分布の測定位置は図 A-2 に示すように,執務スペースのパーティション外側の通路部分とした.また,評価対象は平日の空調稼働時間帯(9:00~19:00)とした.

東ペリメータ測定点インテリア測定点

図A-2 測定対象執務室の什器配置および上下温度分布測定点

注 4) 東西面に設けている自動制御外ブラインドは,眺望性の確保と昼光の導入を積極的に行うため,各方位において直達日射の当たらない時間帯(例えば西方位の午前中)はスラットを格納し,直達日射の当たる時間帯は遮蔽可能な限界角度にスラットを 10分間隔で調整する制御としている.調光制御照明は天井面に設置された照度センサによって机上面照度が 800lx となるように出力が制御され,昼光利用効果が反映される.なお,照度センサと照明は窓面から奥行方向へ 6.4m幅でゾーニングされている.

注 5) 本建物におけるロードリセット制御は,複数ある各 VAVユニットの風量出力を「不足」:85%以上,「良好」:40%~85%,「過度」:25%~40%の状態に分類して,各状態のユニット数から空調の過不足状態を冷・暖房時それぞれにおいて 3段階に判断して給気温度の変更を判断している.ここでは,夏季に最も頻発していた最低段階(「過度」が 1ユニットでも存在する)における給気温度上昇値を 0.5K下げるように変更した.

注 6) 図 A-3 に,センサ移設前後の空調処理熱量比較を行った各代表日における外気温および鉛直面日射量の時刻変動を示す.

0

10

20

30

気温 [℃]

外気温西鉛直面日射量

6 12 18 24 6 12 18 24

東鉛直面日射量

2007/7/24 - 2502004006008001000

日射量[W/m2 ]

外気温

西鉛直面日射量

6 12 18 24 6 12 18 24

東鉛直面日射量

2007/9/3 - 4図A-3 センサ移設前後の比較実験日における気象条件

参考文献

1) 松尾陽, 井上隆, 射場本忠彦ほか: 窓の熱的性能に関する研究 (その 1),(その 2),(その 4)~(その 7), 日本建築学会大会学術講演梗概集, pp.621-624,

1983.9, pp.705-706, 1984.10, pp.823-824, 1985.10, pp.767-768, 1986.8

ほか

2) 井上宇市, 石野久彌, 郡公子ほか: ペリメータレス空調の評価法に関する研究 (第一報)~(第五報), 空気調和・衛生工学会学術講演論文集, pp.217-224,

1991.10, pp.353-360, 1992.10

3) 郡公子: ペリメータレス空調のための窓システムの評価に関する研究, 日本建築学会計画系論文集, 第 539号, pp.7-13, 2001.1

4) 相賀洋, 石野久彌, 久本浩子, 郡公子: ペリメータに熱的緩衝空間を有した床吹出空調システムの性能評価に関する基礎的研究, 日本建築学会計画系論文集, 第 563号, pp.45-13, 2003.1

5) 野原文男, 横田雄史, 林純子, 川瀬貴晴, 安達孝, 荒牧智之, 吉田実, 井上隆,

百田真史: 日建設計東京ビルの空気調和・衛生設備, 空気調和・衛生工学Vol.80 No.10, 空気調和・衛生工学会, pp.855-860, 2006.10

6) 関佑介, 井上隆, 一ノ瀬雅之, 横田雄史: オフィスビルにおけるソックフィルターを用いた低温送風空調の実態調査, 空気調和・衛生工学会学術講演論文集, pp.241-244, 2007.9

7) 関佑介, 井上隆, 一ノ瀬雅之, 横田雄史: 省エネルギー技術を複合導入したオフィスビルの運転実績に関する研究 (第 7 報) ペリメータレス空調システムの評価と制御改善効果,空気調和・衛生工学会学術講演論文集, pp.537-540,

2008.8

8) 建築物エネルギー消費量調査報告書, (社)日本ビルエネルギー総合管理技術協会, 平成 16年度版