気候変化・気象変動と 農業・食料 -...
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気候変化・気象変動と気候変化 気象変動と農業・食料農 食
横沢 正幸横沢 幸農業環境技術研究所・大気環境研究領域
日本の平均気温の変化日本の平均気温の変化
気象庁気候変動監視レポート2006より
90年代以降、高温年が多発傾向
高温による品質への影響高温による品質への影響
リ ゴ ミカメ リンゴ ミカンコメ
リンゴの着色遅延リン の着色遅延
着色期に高温が続くと、着色の進行が遅れる
作物の品質への影響が見られる
農林水産省(2007)
作物の品質への影響が見られる
気温上昇が作物収量へ与える影響気温上昇が作物収量へ与える影響
IPCC 第4次報告書 第2作業部会 (2007)
%)
コメ:中・高緯度 コメ:低緯度
変化
(%
収量
気温上昇(℃)
温暖化は中緯度、高緯度の作物生産にはプラスの面もある
作物の生育 生長過程作物の生育・生長過程
葉面積葉面積
バイオマス
子実
移植 出穂 収穫
作物の生育 生長過程作物の生育・生長過程
気温上昇環境
葉面積積
バイオマス
子実
移植 出穂 収穫
出穂日・収穫日が早くなる 収量が減少
作物の生育 生長過程作物の生育・生長過程
気 高気温上昇+高CO2
葉面積
バイオマス
子実
移植 出穂 収穫
CO2施肥効果 バイオマス・収量が増加
コメ収量推計モデルコメ収量推計モデル
気象 境 を デ
環境変化が農業生産へおよぼす影響を評価
気象環境とコメ収量との関係をモデル化
北海道・東北 関東甲信越
環境変化が農業生産へおよぼす影響を評価
北海道 東北 関東甲信越
a)
中部・近畿 中国・四国・九州量(t/
ha収
横沢ら、地球環境 (2009)
温室効果ガスの排出シナリオごとの
IPCC第4次評価報告書(2007)より
温室効果 排出シナリオ気候変化の予測
IPCC第4次評価報告書(2007)より
今世紀末には、CO2濃度は540~970ppm、平均気温は1.1~6.4℃上昇すると予測
影響の空間分布影響の空間分布
在 年 現在(1990年代)に比べて現在(1990年代)に比べて
平均収量が減少する確率
現在(1990年代)に比べて
年々変動(標準偏差)が増加する確率
2046 2065 2081 2100 2046 2065 2081 21002046-2065 2081-2100 2046-2065 2081-2100
確率 (%)
気候変化影響の推計 全国平均気候変化影響の推計:全国平均
2~3℃の気温上昇まではやや増加するが、それ以上では減少する。量比
対する収
990年
に1
日本の年平均気温上昇(1990年を基準)
地球温暖化「日本への影響」-最新の科学的知見-(温暖化影響総合予測プロジェクトチーム、2008)気候変化シナリオ:MIROC高解像度版、排出シナリオ:A1B
気候変化による地域収量への影響気候変化による地域収量への影響(適応策を施さない現行のまま)
北海道・東北 関東甲信越 中部・近畿 中国・四国・九州
(t/h
a)収量
%)
動係数
(%
変動
気温上昇(℃)
北海道・東北は気温上昇で収量は増加する。
西日本では中部・近畿を中心に減少する西日本では中部・近畿を中心に減少する。
いずれの地域でも年々変動は増大する。横沢ら、地球環境 (2009)
イネの稔実率と開花期の最高気温との関係イネの稔実率と開花期の最高気温との関係
ある温度を超えると急に稔実率が減少する
品種 栽培管理によりばらつきがある
%)
品種、栽培管理によりばらつきがある
稔実率(%
稔
開花日の日最高気温(℃)
○●,金ら(1996);△▲,Matsui et al (1997); □,Satake & Yoshida (1977);
◇, Matsui et al. (2001); 黒塗りは高CO2区(650ー700ppm)での結果
開花日の日最高気温(℃)
温暖化による収量変動の増幅温暖化による収量変動の増幅
Paddy rice (Japonica)
0高温域では、不稔率(稔実率)の変動が
( p )
%)
20
)
現在(稔実率)の変動が
大きくなる
稔率
(%
60
40
実率
(%)
不稔
80
60
稔実 温暖化時
収量変動が
100
80 収量変動大きくなる
開花時期の最高気温の平均値(℃)
気候変化による異常気象の頻発気候変化による異常気象の頻発
環境省「地球温暖化の影響 資料集」(2007)
世界の食料生産への影響世界の食料生産への影響
エルニーニョ発生時の気象偏差 気象庁HP
耕作強度の分布
トウモロコシ生産地 北半球・夏
ダイズ生産地南半球・夏
気象変動による影響主要生産地域が局在
アメリカの収量変動アメリカの収量変動
平均収量 年変動 1950年 1998年
トウモロコシ
平均収量 年変動 1950年 - 1998年
トウモロコシ
最近
ダイズ
変動が大きくなっている
ダイ
コムギコムギRosenzweig & Hillel
(2008)
※
収量変動の特徴アメリカ・アイオワ州(42°N, 92°E)
収量変動の特徴
「まれ」ではあるが大きく減収した場合がある
810
a)「まれ」ではあるが大きく減収した場合がある
頻度 4
6
68
量(t
/ ha
トウモロコシ収量
頻
-60 -40 -20 0 20
02
1980 1985 1990 1995 2000 2005
46
収量
年 -60 -40 -20 0 201980 1985 1990 1995 2000 2005 年
収量の増減 (%)
3.0 10
ha)
8
2.5
収量
(t / h
46
頻度
ダイズ収量
1980 1985 1990 1995 2000 2005
2.0
年
収
-40 -30 -20 -10 0 10 20
02
収量変動の特徴収量変動の特徴
ズ
アメリカ全体
トウモロコシ ダイズ0
120
100
150
頻度
80頻度
2 1 0 1 2
050
頻
040頻
-2 -1 0 1 2
歪度 +−-2 -1 0 1 2
歪度 +−
「まれ」ではあるが負に歪んでいる
「まれ」ではあるが、大きく減収する可能性がある
国間の収量変動国間の収量変動
アメリカ(1980年~2006年)
中国(1980年~2005年)
ブラジル(1990年~2007年)
国間の収量変動:アメリカと中国国間の収量変動:アメリカと中国
1961年~1983年 1984年~2007年
横軸はアメリカ、縦軸は中国の累積確率密度を示す。色の明度が高いところほど同時確率が高い。
方が減収ならもう 方は増収というような補完的関係が一方が減収ならもう一方は増収というような補完的関係が、近年になって消失している
国間の収量変動国間の収量変動
3国(アメリカ ブラジル 中国)の収量変動3国(アメリカ・ブラジル・中国)の収量変動
トウモロコシ3
の数
2
った国の
1
収」になっ
1960 1970 1980 1990 2000 2010
0「減収
年1960 1970 1980 1990 2000 2010
「減収」年:その年の収量がトレンドの値より小さい場合
まとめと今後の課題まとめと今後の課題
長期的 平均的変化に対する応答(気候変化)2~3℃の気温上昇では、全国平均のコメ収量は現状維持かやや増加する
長期的・平均的変化に対する応答(気候変化)
やや増加する。
今後は適応策(品種改良や栽培管理など)の検討が重要。
短期的・年々変動に対する応答(気象変動)
「まれ」な現象だが起きると危険性が高い。
適応的な短期予測シ ムが必要
短期的・年々変動に対する応答(気象変動)
適応的な短期予測システムが必要。
ご清聴ありがとうございましたご清聴ありがとうございました
謝 辞謝 辞
本研究内容は、飯泉仁之直、櫻井 玄博士らとの本研究内容は、飯泉仁之直、櫻井 玄博士らとの共同研究に基づくものです。
環境省 地球環境研究総合推進費 (S4) ならびに環境省・地球環境研究総合推進費 (S4) ならびに文部科学省・21世紀気候変動予測革新プログラムの支援を 部受け 実施しました支援を一部受けて実施しました。