simulation engineering solution’s · 2016-06-07 ·...

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S S i i m mu u l l a at t i i o o n n E E n n g g i i n n e e e e r r i i n n g g S S o o l l u u t t i i o o n ns s N N o o . . Jun 2015 N NS S P Pl l a an nt t D De es si i g gn ni i n ng g C Co or r p po or ra at t i i o on n 地盤解析小特集 【技術論文】 個別要素法による回転圧入鋼管杭の施工支持力一貫解析 【技術レポート】 1.地盤専用 FEM プログラム「PLAXIS」での支持力解析 2.DEM‐FEM 連成解析技術開発の紹介 3.遺伝的アルゴリズムを用いた構造最適化技術の紹介 4. 繰り返し載荷シミュレーションにおける材料構成則 5.大規模構造解析への取組みについて(その 1) 6.大規模データ分析技術への取組みについて

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NNSSププラランントト設設計計株株式式会会社社

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地盤解析小特集 【技術論文】○個別要素法による回転圧入鋼管杭の施工~支持力一貫解析【技術レポート】 1.地盤専用FEMプログラム「PLAXIS」での支持力解析2.DEM‐FEM連成解析技術開発の紹介 3.遺伝的アルゴリズムを用いた構造最適化技術の紹介 4. 繰り返し載荷シミュレーションにおける材料構成則5.大規模構造解析への取組みについて(その 1) 6.大規模データ分析技術への取組みについて

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目次

数値解析技報第 11 号発刊のご挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

【技術論文】

○個別要素法による回転圧入鋼管杭の施工~支持力一貫解析・・・・・・・・・・2~7

【技術レポート】

1.地盤専用 FEM プログラム「PLAX IS」での支持力解析 ・・・・・・8~9

2.DEM-FEM 連成解析技術開発の紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10~11

3.遺伝的アルゴリズムを用いた構造最適化技術の紹介・・・・・・・・・・・・12~13

4. 繰り返し載荷シミュレーションにおける材料構成則・・・・・・・・・・・・・・14~15

5.大規模構造解析への取組みについて(その1)・・・・・・・・・・・・・・・・・16~17

6.大規模データ分析技術への取組みについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18~19

【サービス、製品、紹介】

1.NS プラント設計の解析サービス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20~23

2.Ma r c2 0 14の新機能トピックス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24

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1 数値解析技報 第 11 号,2015

数値解析技報第11号発刊のご挨拶 2015 年6月

技報 11 号の発刊にあたり、ご挨拶を申し上げます。

近年、数値解析技術の発達には目を瞠るものがあります。たとえば、マルチスケール問題に代表される大

規模問題や、津波や土石流などの自然災害に対する構造物の安全性の検討など連成解析を駆使した事例が

みられ、計算環境の大幅な向上によって数値解析の活躍の場が増えてきております。当社でも日々新たな

解析技術に取り組み、かつクラスターを導入して、皆様の様々な技術課題に対応できるようにしてまいり

ました。

このNPD数値解析11号では、なかなか予測精度を高めることが難しいと言われている地盤と構造物

の振る舞いについて、当社がこれまで構築してきました解析技術を「地盤解析小特集」として組むことと

いたしました。技術論文として「個別要素法による回転圧入鋼管杭の施工~支持力一貫解析」を掲載、ま

た地盤専用FEMプログラム「PLAXIS」を使用した例として支持力解析を紹介しております。地盤解析以

外にも最適化、材料構成則、大規模構造解析、大規模データ分析への取組み等の技術トピックスを掲載し

ておりますので皆様の技術の一助となればと考えております。

さて、NSプラント設計㈱ シミュレーションエンジニアリング・ソリューション部(以降、SiES’S

部と記す)は、新日鉄住金エンジニアリング株式会社殿、新日鐵住金株式会社殿向け研究開発、設計

支援を中心に社外案件も含め 30 年間で 1 万件のシミュレーションの実績を積み上げてきました。構

造解析、流体解析、電磁場解析、システム開発の4本柱とともに、互いの場を連成させた連成解析も

行ってきております。また、数値解析に関係するシステム開発やプラント設備の操業可視化などにも

取り組んでおります。組織の陣容は約 50名を擁し、博士取得者4名、日本機械学会計算力学技術者 認

定資格 上級アナリスト 5名、固体力学 1級と流体力学 1級認定者合わせて 15名を抱え、部員一同 皆

様のご愛顧に応えるために、数値解析、システム開発に関する技術を更に高度化しております。部の

組織としては構造解析をソリューション第一チーム、流体解析をソリューション第二チーム、システ

ム開発をソリューション第三チームとし活動を進めております。また、東京の新日鉄住金エンジニア

リング本社15階に東京分室を設け、皆様への営業を担当させております。弊社の解析サービスを

20~24 ページに掲載しておりますので合わせてご覧になってください。

対外活動として、数値解析技術の発展に貢献したいと考え、以降に示しますように、長年 九州地

区の数値解析に関する啓発活動、若手技術者の育成活動を進めてまいりました。今後とも、微力なが

ら皆様のお役に立ちたいと考えております。

1)CAE活用事例セミナー開催

2)九州デジタル・エンジニアリング研究会(KDK)活動(副会長、事務局)

3)NPD数値解析技報の発刊

ご一読いただき、ご質問・ご意見などありましたら、以下にメール送信いただければ幸いです。

メールアドレス:[email protected]

シミュレーションエンジニアリング・ソリューション部リーダー 湯本 淳

日本機械学会認定 計算力学技術者 上級アナリスト

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2数値解析技報 第 11 号,2015

技術論文 「個別要素法による回転圧入鋼管杭の施工~支持力一貫解析」

NS エコパイル等の回転圧入鋼管杭は杭先端の羽根上の地盤を反力とする杭先端の推進力に

より地中に施工される工法であり、支持力に対する施工の影響については定量的に評価するのが

現状でも難しいとされている。一方、地盤など不連続挙動を追跡する数値解析手法として個別要

素法の活用が進んでおり、回転施工から支持力解析まで一貫して行えれば施工の影響を考慮し

たより精密な支持力評価が可能になると考える。今回、回転圧入工法による施工から支持力まで

の一貫解析に個別要素法を適用した解析手法を開発したので、以下に報告する。

今道 功治 岩松 浩一日本機械学会認定 日本機械学会認定

計算力学技術者 計算力学技術者

1級 上級アナリスト

1.はじめに

近年、泥水・残土などの産業廃棄物や、騒音・振動

など環境的、社会的問題を解決すると共に、高支持

力、高耐震性、低コスト、短工期を実現する杭工法と

して、NS エコパイル等の回転圧入工法が広く用いら

れるようになってきた。しかしながら、回転圧入工法は

施工法の特徴から、施工による地盤状態の変化が支

持力に対しどのように影響しているかについて、定量

的に十分解明できているとは言い難い。一方、地盤な

ど不連続挙動を追跡する数値解析手法として個別要

素法の活用が進んでいる。個別要素法を用いて、回

転施工から支持力解析まで一貫して行えれば、施工

の影響まで考慮した支持力評価が可能になると考え

る。本稿では、個別要素法を用いた回転圧入鋼管杭

に関する解析手法を開発し、模型試験シミュレーショ

ンに適用した結果について報告する。

2.回転圧入鋼管杭の施工法と特徴

回転圧入鋼管杭とは、図 2-1 に示すように鋼管の

先端にらせん状の羽根を取り付けたものであり、施工

法としては、全旋回機等で回転トルクを与えることで、

羽根のくさび効果を推進力として杭を貫入させる工法

である。施工時の回転貫入トルクは羽根先端の地盤

の N 値と良い対応を示し(図 2-2)、施工トルクを管理

することで支持層への打ち止めが確実に行え、また羽

根の拡底効果により高い支持力を発揮するとともに引

き抜きに対しても高い抵抗力を発揮するのが特徴で

ある。

図 2-1 NS エコパイル

(新日鉄住金エンジニアリング株式会社殿ホームページより)

図 2-2 地盤 N値と施工トルクの例

( 文献 1)より引用 )

3.解析手法

3-1 個別要素法

個別要素法(DEM:Discrete Element Method)とは

1971 年に Peter A.Cundall.によって提唱された解析

手法であり、岩盤等を円形等の剛体要素の集まりと考

え、その挙動を質点の運動方程式で表し、また接触し

た剛体要素間にはバネを設定し力の相互作用を考慮

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3数値解析技報 第 11 号,2015

する。そして各要素の運動方程式を解いて時間軸上

で数値積分することにより、その挙動を解析するという

手法である。個別要素法(以下DEMと称す)の計算ア

ルゴリズムを図3-1に、剛体要素の接触に関する力学

モデルの概念図を図 3-2 に示す。

図 3-1 計算アルゴリズム

図 3-2 力学モデル

本論文では DEM 解析にオープンソースである

LIGGGHTS3)を用いた。粒子間力は下式で示される。

F � � k�δn�� � γ�vn�� � k� δt�� � γ� vt�� �ここに

k� :法線方向バネ定数

k� :接線方向バネ定数

δ� :法線方向オーバーラップ量

δ� :接線方向オーバーラップ量

γ� :法線方向粘性定数

γ� :接線方向粘性定数

vn�� :法線方向相対速度

vt�� :接線方向相対速度

バネ定数と粘性定数には以下に示す Hertz モデル

を使用する。

k� � �Y∗�R∗δ�

γ� � �2�56β�S�m

∗ � 0

k� � G∗�R∗δ�

γ� � �2�56β�S�m

∗ � 0

S� � 2Y∗�R∗δ�S� � 8G∗�R∗δ�

β �lne�

�ln�e�π�

1Y∗ �

�1 ���

Y��1 �ν�

��

Y�1G∗ �

2�2 ��1 ��Y�

2�2 ��1 ��

Y�1R∗ �

1R�1R�

1m∗ �

1m�

1m�

ここに

Y:ヤング率 G:横弾性係数 ν:ポアソン比 e:反発係数 R:粒子半径 m:質量

3-2 地盤物性値と DEMデータ

DEM の主な入力データは粒子径、ヤング率、ポア

ソン比、質量密度、摩擦係数である。粒子径は実際の

粒子径を用いるのが理想であるが、通常は計算負荷

の関係で実際よりかなり粗い粒子径を設定することと

なる。ヤング率、ポアソン比、質量密度は土質試験の

結果があればそれらを使用するが、実地盤を対象と

する場合は N 値のみが分かっている場合がほとんど

であり、この場合は設計で使用される各種換算式を利

用するなどして決める必要がある。摩擦係数について

は合わせ込みパラメータとし、図 3-3 に示す一面せん

断試験を模擬したDEM解析により内部摩擦角φに一

致するように摩擦係数を同定する。

粒子の位置の更新

Newtonの第2法則(a=F/m)

すべての粒子について

接触力-変位の関係(F=ku)

すべての接触点について

接触力

A

B

no extension

diveder

springdash-pot

mass

mass

A

B

slider

spring

dash-pot

mass

mass

(a) 法線方向 n (b) 接線方向 t

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4数値解析技報 第 11 号,2015

図 3-3 一面せん断試験機の概略

図 3-4 一面せん断試験の結果

4.室内模型試験シミュレーション

4-1 模型試験概要

図4-1に試験装置全体図を示す。表4-1に砂地盤

タンク・模型杭の概要を示す。試験は加圧砂地盤タン

クの中に杭を深さ500mmまで回転貫入させ、その後、

引き続いて単純載荷試験を実施する。このとき施工は

羽根ピッチ通りとなるように実施する。使用する模型杭

の杭径は 40mm、羽根径は 80mm、羽根ピッチは

20mm である。充填する砂は硅砂 6 号(内部摩擦角

35.9°、粘着力 5.7kN/m2、60%粒径 0.32mm、最大粒

径 0.85mm、密度 2.64g/cm3)である。上載圧および側

圧はそれぞれ 0.2MPa と 0.1MPa である。

表 4-1 砂地盤タンク・模型杭の概要

図 4-1 試験装置全体図

図 4-2 模型杭形状(3D-CAD)

4-2 一面せん断解析による摩擦係数の同定

DEM 解析用の摩擦係数μを、一面せん断試験を

模擬した解析により同定する。図4-3に一面せん断解

析モデルを示す。粒子径は室内試験解析に用いる粒

子径 4mm とした。ヤング率は土質試験結果より

150MN/m2とした。φ算出のための垂直応力は3水準

とした。図 4-4 にせん断応力とせん断変位の関係の

一例を示す。これより各垂直応力に対するせん断強さ

を求め、せん断強さと垂直応力の関係をプロットし(図

4-5)、直線近似して内部摩擦角を求める(図 4-6)。

今回対象はφが 35.9°のため摩擦係数μは 0.85 と

決定した。

供試体

τ

σ

固定箱

可動箱

支圧板

c

φ

せん断強さ(τf)

垂直応力(σ)

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5数値解析技報 第 11 号,2015

図 4-3 DEMによる一面せん断解析

(色は速度を示す。赤:ゼロ、青:最大)

図 4-4 荷重変位関係(μ=0.8 の例)

図 4-5 垂直応力とせん断強度の関係(μ=0.8 の例)

図 4-6 DEM摩擦係数と内部摩擦角の関係

4-3 室内模型試験再現解析

(1)解析モデル

解析領域および粒子径は計算時間を考慮して解

析領域は300mm×300mm、杭の貫入量は150mm、粒

子径は羽根板厚と同じサイズとした。粒子数は約 36

万である。解析ステップは図 4-7 に示す通りである。

上載圧と側圧は使用ソフトの制約上、側面の水平方

向変位を拘束し上面から鉛直下向きの強制変位を与

える方法で考慮した。側圧は今回上載圧の半分であ

るためポアソン比を 0.33 として土圧係数 0.5 の状態を

模擬した。

Step1:上載圧、側圧載荷

Step2:回転施工(150mm貫入時)

Step3:鉛直載荷

図 4-7 解析ステップ

0.0.E+00

2.0.E+04

4.0.E+04

6.0.E+04

8.0.E+04

1.0.E+05

1.2.E+05

1.4.E+05

1.6.E+05

0 50 100 150 200 250

せん断応力

[N/m

2]

せん断変位[cm]

μ=0.8

σv=0.031MPa

σv=0.095MPa

σv=0.17MPa

y = 0.67x + 0.0341

0.0E+00

2.0E-02

4.0E-02

6.0E-02

8.0E-02

1.0E-01

1.2E-01

1.4E-01

1.6E-01

0.0.E+00 5.0.E-02 1.0.E-01 1.5.E-01 2.0.E-01

せん断強さ[M

Pa]

垂直応力[MPa]

μ=0.8

2022242628303234363840

0.6 0.7 0.8 0.9 1

内部摩擦角

φ[度

]

摩擦係数μ

DEM

土質試験結果

300mm

300m

m

0.2MPa

0.1MP 0.1MP

0.2MPa

150m

m

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6数値解析技報 第 11 号,2015

(2)回転施工

試験では貫入量が羽根ピッチと同じになるよう杭の

上載荷重を調整しているため、解析も同様とした。図

4-8 に貫入量と施工トルクの関係を示す。解析は実験

に比べトルクの変動が大きいが、これは DEM が羽根

の厚さと同じ粒子サイズで試験に用いた砂の径よりか

なり大きくまた均一粒子であるため、接触状態の変化

の影響が大きく現れたものと思われる。DEM 解析のト

ルクを平均的にみると試験とよく一致している。図 4-9

に施工完了後の地盤内の応力状態を示す。羽根より

下方の圧縮応力は若干増加し、逆に上方の圧縮応

力は若干減少している。これは羽根が回転することに

より発生する推進力だけでは貫入量が1ピッチに足り

ず、杭への上載荷重が必要なことを示している。

図 4-8 貫入量とトルクの関係

(3)鉛直支持力

施工シミュレーションに続けて、杭頭に鉛直下向き

の強制変位を杭に与え、支持力解析を行った。図

4-10 に荷重変位関係を、図 4-11 に地盤内応力状態

を示す。荷重変位関係は解析と試験は一次勾配、耐

力ともに2倍近い差が生じている。これは今回粒子径

を均一とした影響が大きいものと考えられる。そこで、

均一粒子の場合と不均一粒子の場合で地盤としての

剛性がどの程度異なるのか調査するため、上載圧と

沈下量の関係を比較した(図4-12)。不均一の場合の

初期剛性が大きいことがわかる。また、羽根より下は

鉛直方向の応力が上昇するのに伴ってポアソン効果

により水平方向の応力(拘束圧)も大きくなるが、均一

粒子の地盤は拘束圧の上昇割合が小さいため、支持

力が試験結果より小さくなったものと考えられる。

図 4-9 回転施工完了時の地盤内応力状態

図 4-10 先端荷重と杭頭変位の関係

0

50

100

150

200

250

300

0 50 100 150 200

貫入量(mm)

トルク(N・m)

試験

DEM

鉛直方向

(施工完了時)

赤: 0MPa

青:-0.25MPa

水平方向

(施工完了時)

赤: 0MPa

青:-0.2MPa

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

0 2 4 6 8 10

先端荷重(kN)

杭頭変位(mm)

試験

DEM

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7数値解析技報 第 11 号,2015

図 4-11 押込み量 10mm時の地盤内応力状態

図 4-12 荷重変位関係(均一粒子と

不均一粒子の比較)

5.まとめ

本論文の成果をまとめると以下のようになる。

1)回転圧入鋼管杭の回転施工から鉛直載荷試験ま

で一貫した解析が可能な DEM 解析手法を構築し

た。

2)模型試験に対しては DEM 解析により、施工時のト

ルクは見積可能と考える。

3)支持力については、砂の粒子径分布の影響が大き

いことが判明したため、逆に粒子径分布を精度良

く考慮すれば実現象を再現できる可能性がある。

4)今回の一貫解析には Xeon 3.07GHz の 12 コアを

用いて10日を要した。高速化は今後の課題である

が、計算ロジックの改良や並列処理をより拡充する

ことで解決できると考えている。

謝辞

新日鉄住金エンジニアリング株式会社の和田昌敏

シニアマネジャにはタンク模型試験の情報をご提供い

ただいた他、本解析を進めるうえで多くのご助言をい

ただきました。ここに謹んで感謝の意を申し上げま

す。

参考文献

1) 佐伯英一郎、大木仁.回転圧入鋼管杭に関する研究-施工試験及

び載荷試験結果と貫入のメカニズム-.新日鉄技報.1999, 第 372 号,

p.40-48.

2) 永田誠、大木仁他.NS エコパイル工法.新日鉄エンジニアリング技

報.2010, 第 1 号,p.78-83.

3) DCS Computing GmbH.“LIGGGHTS(R)-PUBLIC

Documentation”. CFDEM.

http://www.cfdem.com/media/DEM/docu/Manual.html(参

照2013-02-27)

4) 加納伸也、天野昌春他.個別要素法によるテラメカシミ

ュレーション,KOMATSU TECHNICAL REPORT ,2003,① VOL.

49 NO.151,p.13-19.

5) 前田健一.個別要素法セミナー(2007/11/26)テキスト.土木学会.

鉛直方向

(鉛直載荷後)

赤: 0MPa

青:-0.25MPa

MAX:-0.6MPa

水平方向

(鉛直載荷後)

赤: 0MPa

青:-0.2MPa

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

0 5 10 15

圧力

P[MPa)

押込み量(mm)

粒子径:4mm+2mm

粒子径:4mm

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概要

地盤解析のニーズに対応すべく、地盤専用

の向上に取り組んでいることを前号にて報告した。前号では

析および浸透流解析の簡単な例題を紹介し

持力算定に着目した解析事例を紹介する。

1.はじめに

PLAXIS を用いて支持力を算定する

を以下に述べるが、今回は汎用構造解析プログラム

「ABAQUS」を用いた計算も行い、比較検討

2.解析対象と解析要領

(1) 対象モデル

本検討では、均質な粘性土地盤に設置した半径1

mの円形コンクリート版の鉛直支持力

モデルとした。対称性を考慮した軸対称モデルと

し、解析領域は半径10m、深さ10mと設定した。

図-1 モデル図(PLAXIS

地盤材料の構成則には「モール・クーロン則

適用し、コンクリート版は弾性とした。各パラメー

タを表-1に示す。

表-1 材料パラメータ

コ ン ク

リート

ヤング率 E 24 x 10

ポアソン比 ν 0.2

地盤

単位重量 γ 18

ヤング率 E 84 x 10

ポアソン比 ν 0.3

内部摩擦角 φ 0°

粘着力 c 50 kN/m

<モデル上の差異>

本検討では PLAXIS と ABAQUS対象を解析するが、解析に使用できる要素には差異

技術レポート No. 1

地盤専用FEMプログラム

~地盤解析への取り組み(その

対称軸

高さ:

半径:10m 地盤

鉛直荷重載荷

8

地盤解析のニーズに対応すべく、地盤専用 FEM プログラム「PLAXIS」を導入して、地盤解析技術

の向上に取り組んでいることを前号にて報告した。前号では PLAXIS の概要説明、斜面安定の安定性解

析および浸透流解析の簡単な例題を紹介したが、本稿では地盤に関する解析ニーズとして想定される支

に着目した解析事例を紹介する。

を用いて支持力を算定する簡単な事例

汎用構造解析プログラム

、比較検討する。

に設置した半径1

mの円形コンクリート版の鉛直支持力を計算する

モデルとした。対称性を考慮した軸対称モデルと

解析領域は半径10m、深さ10mと設定した。

PLAXIS)

クーロン則」を

適用し、コンクリート版は弾性とした。各パラメー

パラメータ

24 x 106 kN/m2

kN/m3

84 x 103 kN/m2

50 kN/m2

ABAQUS を用いて同じ

対象を解析するが、解析に使用できる要素には差異

があるため記述しておく(

表-2 使用可能要素

ABAQUS汎用プログラムとして、様々な要素

タイプが使用可能

PLAXIS 三角形 15 節点(もしくは

素のみ

(2) 解析条件

本検討においても、コンクリート版と地盤が接す

るが、解析上の接触条件の設定方法

と ABAQUS とで差異がある。

PLAXIS:インターフェース要素(

ABAQUS:接触条件(摩擦係数

<インターフェース要素とは>

PLAXIS では構造物と地盤の境界面などに接触

条件は設定できないため、インターフェース要素を

用いる。インターフェース要素は

な2つの要素を接続する仮想的な要素で、その物性

値や仮想厚さを指定できる。

図-2 インターフェース要素(マニュアルより)

インターフェース要素の物性値は接続される地

盤要素の物性値を適用し、

タを用いて、剛性および強度を低減させることが多

い。今回は Rinter=0.67 としており、境界面には剛

性や強度を地盤の 0.67 に低減した要素を設定して

いる。つまり圧縮に対しては低減された剛性なりに

食い込みが生じ、せん断に対しては低減された強度

以上の力が作用すると大きな

プログラム「PLAXIS」での支持力解析

その2)~ ソリューション第一チーム

日本機械学会認定計算力学技術者

岡本

地盤要素

インターフェース要素

高さ:10m

コンクリート版

(半径:1m)

数値解析技報 第 11 号, 2015

」を導入して、地盤解析技術

の概要説明、斜面安定の安定性解

本稿では地盤に関する解析ニーズとして想定される支

(表-2)。

使用可能要素

汎用プログラムとして、様々な要素

タイプが使用可能

節点(もしくは 6 節点)要

、コンクリート版と地盤が接す

の設定方法には PLAXISとで差異がある。

:インターフェース要素(Rinter=0.67)

:接触条件(摩擦係数 0.6 と仮定)

<インターフェース要素とは>1)

では構造物と地盤の境界面などに接触

条件は設定できないため、インターフェース要素を

用いる。インターフェース要素は図-2に示すよう

な2つの要素を接続する仮想的な要素で、その物性

値や仮想厚さを指定できる。

インターフェース要素(マニュアルより)

インターフェース要素の物性値は接続される地

Rinter というパラメー

タを用いて、剛性および強度を低減させることが多

としており、境界面には剛

に低減した要素を設定して

いる。つまり圧縮に対しては低減された剛性なりに

食い込みが生じ、せん断に対しては低減された強度

大きな塑性変形を生じる。

ソリューション第一チーム

日本機械学会認定計算力学技術者 2級

岡本 有造

地盤要素

インターフェース要素

構造要素

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数値解析技報 第 11 号, 2015 9

今回の例では接触条件との差異は小さいが杭の

支持力問題で周面摩擦が支配的な場合などは接触

条件とインターフェース要素の違いが顕著となる

可能性があり注意が必要である。

(3)初期状態の生成方法

地盤解析の一般的な課題として初期応力状態の

生成がある。これは原地盤の応力状態を把握するこ

とが困難であることから、何かしらの仮定に基づき

設定するしかない。PLAXIS では静止土圧係数 K0

と土被り圧から設定する機能と、自重による応力解

析を行い設定する機能を有している。ABAQUS で

は K0 というパラメータは使用しないものの、相当

する係数を与えることで同様の手法(地圧解析と呼

ぶ)で初期状態の設定ができる。

今回は K0=0.5 として初期状態を生成した。

3.解析結果

(1) 地盤の塑性化の状況

解析結果から荷重 150kN/m2(後述する降伏荷

重)近傍および 300kN/m2(極限支持力)近傍での

地盤の破壊(塑性)状況を図-3に示す。

図-3 地盤の破壊状況(左:PLAXIS 右:ABAQUS)

PLAXIS および ABAQUS ともに、載荷板下面に

半円周状に塑性域が広がることで降伏荷重を迎え、

その後荷重の上昇とともに塑性域が広がり、極限支

持力レベルでは塑性すべり状態となっている。塑性

化の進展状況から両者とも支持力メカニズムを表

現できていることが確認できた。

(2) 荷重-沈下量関係

次に、コンクリート版に作用させた荷重と沈下量

の関係を図-4に示す。

妥当性検証のために(式1)2)で算定される地盤

の降伏荷重 pAと極限支持力 pCも合せて示す。

p� � π � c � 157kNp� � 5.71 � c � 286kN

図-4 荷重-沈下量関係

荷重変位関係は PLAXIS および ABAQUS とも

降伏荷重程度まで直線関係で、その後横ばいとなる

傾向を示したが、PLAXIS では 310kN/m2(式1と

の差異 8%)でピークを示しており妥当な支持力を

推定できるが、ABAQUS では荷重が上昇し続け、

明確な支持力を推定できなかった。

4.今後の展開

今回の検討では、単純な例題ではあるが支持力な

どを算定する際には、地盤専用のプログラムである

PLAXIS を使用した方が望ましいと言える結果と

なった。しかし一方で、PLAXIS では複雑な構造物

の形状をモデル化することは難しく形状ディテー

ルの検討には汎用プログラムである ABAQUS が

優位である。例えば、杭の設計において杭本数や配

置による支持力を算定するには PLAXIS、支持力向

上の杭形状の検討には ABAQUS を用いる。あるい

はその両者を組み合わせるなど、解析ニーズ(目的)

に合せた最適な選択ができるよう各プログラムの

長短所を把握していく必要がある。

5.おわりに

前号に引き続き、当部の地盤解析に対する取り組

み事例を紹介した。昨年度から今まで以上に力を入

れて取り組んでいるテーマであり、今後も継続的に

地盤解析技術の向上に努めていく所存である。

参考文献

1) PLAXIS 2D マニュアル 2014, Part 2 Reference Manual,5.6.6 INTERFACES 2)石原研而:土質力学,丸善㈱,1994,p.255-271

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0 20 40 60 80 100

載荷荷重(kN

/m/m)

沈下量(mm)

荷重-沈下量関係

PLAXIS

ABAQUS

降伏荷重=3.14cu

極限支持力=5.71cu

・・・(式1)

降伏荷重時

極限支持力時

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10 数値解析技報 第 11号,2015

概要

現状、弊社使用の DEM(離散要素法:Discrete Element Method)で対応できていない構造物の挙動に着目した解析

や構造物が大きく変形する場合に対応できるよう DEM と FEMの連成解析システムの基盤となる仕組みを構築した。

1.はじめに

弊社で利用している DEM(LIGGGHTS1))は、構造

物を剛体として取り扱うため、砂防ダムの崩壊シミュレ

ーション等構造物の挙動に着目した解析や構造物の

変形が大きく無視できない問題には適用できない。そ

こで、このようなニーズに対応できるよう DEMと FEMの

連成解析システムの基盤となる仕組みを構築した。

2.解析フロー

DEMプログラムには LIGGGHTS、FEMプログラム

には Marcを用いて、連成解析システムの基盤とな

る仕組みを構築した。以下に解析フローを示す(図

2参照)。

① DEM を実行しΔt秒後の状態を解析する。

② DEM 解析結果から構造物(剛体)に作用して

いる圧力を抽出し、FEM の荷重データを作成

する。

③ FEM を実行し、構造物(変形体)の弾塑性・大

変形解析を行う。

④ FEM 解析結果から変形後形状を抽出し、DEM

の剛体形状を変形後形状に置き換える。

以下、①~④を繰返す。

このとき、DEM と FEM では計算時間間隔が異なるた

め、時間間隔が短いDEM計算1000STEPにつきFEM

計算を1STEP 計算するようにして、データ受け渡しの

効率化を図った。 また、DEM 計算、FEM 計算ともにリ

スタート機能を用いることにより、各計算の時系列的な

連続性を保った。

図 1 DEM-FEM 連成イメージ

コントロー

ルデータ

形状

粒子データ

DEM実行

結果

圧力MARCデータ作成プログラム実行

DEM圧力↓

MARC荷重条件

MARCデータ

MARC実行

結果

変形 DEMデータ作成プログラム実行

MARC変形↓

DEM形状

更新

図 2 DEM-FEM連成解析フロー

3.例題の実施

(1)解析モデル

斜面に設けられた地滑り防止杭を想定し、その 1 部分

を切り出した解析モデルとする(図3)。左から右へ土砂

が滑り流れるように左端の壁を押込み、これによる土砂

技術レポート No. 2

DEM-FEM 連成解析技術開発の紹介

~DEM と FEM の連成解析~

ソリューション第一チーム

日本機械学会認定計算力学技術者1級

今道 功治

ソリューション第二チーム

日本機械学会認定計算力学技術者1級

大下 伸浩

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11 数値解析技報 第 11 号,2015

と杭の挙動を解析する。土砂の挙動は DEM 解析、杭

の挙動は FEM解析により求める。

地滑り防止杭

図 3 解析モデル

MARC解析モデル(杭:弾塑性体)

DEM解析モデル(杭:剛体)

図 4 解析モデル(杭1スパン 1/2 モデル)

(2)解析結果

図5に杭に作用している水平方向荷重と杭頭の水平

変位の関係を示す。荷重が約6kN付近で杭が降伏し

変形が急激に大きくなっている。また、これに対応して

図6に示すように杭付近の土砂の速度も B 点では早く

なっていることがわかる。

4.おわりに

今回、構造物の変形に着目した DEM 解析を行う

ため、DEMと FEMの連成解析システムの基盤とな

る仕組みを構築し、地滑り防止杭を例に解析を行っ

た。その結果、DEMから FEMへの力の受け渡し、

FEMからDEMへの構造物の変形形状の受け渡しが

問題なくできていることを確認した。今後は、解析

システムの機能を向上させ実用的なエンジニアリ

ングへの適用を目指したい。

0

1

2

3

4

5

6

7

0 5 10 15 20

荷重

[kN]

変位[mm]

杭の荷重-変位関係

図 5 杭の荷重変位関係

A点

B点

大(青)

↑速度

↓小(赤)

図 6 地盤の速度分布コンタ

変位コンタ 塑性ひずみコンタ

図 7 杭の変形および応力分布

参考文献

1) DCS Computing GmbH.“LIGGGHTS(R)-PUBLIC

Documentation”. CFDEM.

http://www.cfdem.com/media/DEM/docu/Manual.html(参

照2013-02-27)

A 点

B 点

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数値解析技報 第 11 号,2015 12

概要

遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm、以下 GA と略す)とは、生物が遺伝・進化しながら環境に適応し

ていく過程をモデル化した最適解探索手法であるが、この手法を工学的分野に適用する事例が近年多く見られ

ている 1)。本稿では GA について簡単に説明し、構造解析と GA を連成し構造最適化に適用した例を紹介する。

1.はじめに

構造物や機械設備への高性能化、高信頼性、コス

ト低減等の要求に伴い、最適化問題を構造設計に取

り込んだ「構造最適化」が実施されている。代表的

な構造最適化を図 1に示す。

図 1 代表的な構造最適化

①寸法最適化とは、フレームの断面寸法やプレー

トの厚さなど特定の寸法を最適化する方法であり、

既存設計案の改善に適している。 ②形状最適化は

構造物の表面形状を最適化する方法であり、設計案

の抜本的な変更が可能である。 ③位相最適化は空

間上の位相を設計変数とする最適化手法であり、例

えば剛性に影響度が高い部分にのみ部材を残し、効

率よく剛性の高い形状を求めることが可能である。

上記の構造最適化に対し、線形計画法や非線形計

画法などが従来用いられるが、これらは設計変数と

して離散値が取り扱えない、あるいは局所最適解が

多い問題では最適化探索が困難などの問題点があ

る。一方、GA は探索空間の構造や目的関数の微分

可能性を必要としないため、線形あるいは非線形計

画法が適用できない問題に適用できる、設計値とし

て離散値を取り扱うことができる、局所最適解に陥

りにくいなどの特徴を持っている。次章より GA の

概要および GA を構造最適化に適用した例を紹介す

る。

2.GA(遺伝的アルゴリズム)の概要

GA とは生物の進化の法則に基づく確率的探索手

法であり、1975 年にミシガン大学の J.H.Holland

の論文において提唱された比較的新しい最適化手

法である。図 2 に GA を用いた最適化探索フローの

例を示す。

初期集団

適応度評価

遺伝的操作・交叉・突然変異・エリート保存

開始

終了

終了判定

世代交代

11101 00110 01011

Yes

No

7点 3点 1点

(初期集団は乱数により決定)

11101 00110

11110 00101

11101

エリート保存

11010 00101

突然変異

交叉

ルーレット選択

図 2 GA 最適化探索フローの例

図 2 に示す通り GA は、遺伝子(0,1)を持つ個体

(11101 等)の集団を設定し、その個体が環境に適

応しているがどうかを表す「適応度」を用いて、そ

の個体の遺伝子配列を次世代に残すか否かを決定

し世代交代を繰り返すことで、より環境に適応した

個体を探索する手法である。また実際の生物の繁殖

で見られる遺伝子の交叉や突然変異を行うことで、

より適応度の高い個体を生み出すことができると

いう特徴がある。

技術レポート No. 3

遺伝的アルゴリズムを用いた構造最適化技術の紹介

~構造解析と連成した GA最適化~ ソリューション第一チーム

日本機械学会認定計算力学技術者 1 級

溝上 敬介

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13 数値解析技報 第 11 号,2015

3.骨組構造位相最適化への適用

グランドストラクチャー2)で構成された接合部を

剛接とした骨組構造の位相最適化である。図 3に最

適化対象とする解析モデルを示す。106 本の部材の

有無を設計変数とし、最大変位が制限値以下となる

制約条件下において、構造物の総重量を最小化する

最適化問題である。

5×6 = 30

5 ×4=20

F=100

部材断面:断面積1の中実円

ヤング率:10000ポアソン比:0.3配置候補数:106設計変数:56

(上下対称配置とする)

図 3 解析モデル

GA の評価指標となる適応度は下式に示す通り、

総重量最小化と最大変位制約を同時に考慮した関

数とする。

なお最大変位の算出には汎用構造解析ソルバー

Marc を使用した。また GA のパラメータは表 1の通

りである。

表 1 GA パラメータ

遺伝子長 56(設計部材56本の有無)

集団の個体数 30

選択方法 ルーレット選択

エリート数 2

交叉方法 一様交叉

突然変異率 0.01

変位制限値を変更しながら最適化検討を実施し

た結果を図 4、図 5に示す。図 4より、最大変位が

大きくなるにつれ総重量が小さくなる結果が得ら

れており、概ねどの場合でも最適解が得られている

と考えられる。また図 5 に最適化により得られた部

材配置を示すが、不要な部材も見られず適切に最終

解が得られていると考えられる。

100

150

200

250

300

350

1 1.5 2 2.5

総重量

最大変位

(A)

(B)(C)

(D)(E) (F)

図 4 解析結果(最大変位と総重量の関係)

(A)

(C)

(E)

(B)

(D)

(F)

図 5 得られた部材配置

4.おわりに

骨組構造の位相最適化問題に GA を適用し、GAが構造最適化に対して十分活用できることを示し

た。GA は確率的手法であるため多くの計算が必要

であり、計算負荷が高いという課題もあるが、従来

の手法では困難であった最適化問題に対しても適

用できる可能性がある。今後も様々な事例へ適用し

その有効性を確認しながら、GA の活用を進めてい

きたい。

参考文献

1)大森博司,鬼頭伸彰.遺伝的アルゴリズムを用いたト

ラス構造物の形態創出.日本建築学会構造系論文集.

1999,no.520,p.85~92.

2)清水信孝,半谷公司,高田豊文.面外力(曲げ・ねじ

り)を受ける平面骨組の最適部材配置設計.コロキウム

構造形態の解析と創生 2014.2014,p.51~56.

11 BW

V 適応度

p

dddd

ddB

00

0

1の時   

の時  1≦

W:総重量、d:最大変位、d0:変位制限値

B:ペナルティ関数、p:ペナルティ乗数

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数値解析技報 第 11 号,2015

概要

鋼材が負荷と除荷を繰り返し受ける場合の挙動については実験とのキャリブレーション等を通じて様々

な構成則が提案されている。その中でも汎用

できる Chaboche の構成則が実装されている。

本稿では、一般的に利用されている材料構成則と

用されるパラメータについて紹介する。

1.はじめに

金属に代表される連続体固体を数値解析で表

現するためには力と変形との関係

力と歪との関係)が必要である。これは材料の性

質を表現するものでもあり材料構成則と呼ばれ

る。金属は力が加えられると結晶面で滑り

生じる(塑性変形)。さらに力が繰り返し加えられ

ると転位密度が高まり、次第に蓄積されて滑り面

に対する抵抗が徐々に増していく。これが加工硬

化である。この加工硬化を数値解析シミュレーシ

ョンで考慮するにあたっては、加工硬化を考慮し

た材料構成則が必要であり、さらにはバウシンガ

ー効果など繰り返し加工に起因する材料挙動も

同時に考慮する必要がある。

以下より加工硬化則の特徴を述べる。

2.加工硬化則について

(1)等方硬化則

ある負荷を受け、そこから除荷される

形部分が弾性係数の傾きで戻り再降伏を起こす。

等方硬化ではこの再降伏の応力値は、除荷を開始

した応力値の大きさに等しくなる[等方硬化では、繰り返し荷重(載荷~除荷)を

加えていくと降伏曲面は膨張していく。

(2)移動硬化則

ある負荷を受け、そこから除荷される

化と同様に再降伏するが、再降伏を起こす点が等

方硬化よりも低い応力[図 1 右:σ4-

これをバウシンガー効果という。

移動硬化では、繰返し荷重(負荷

ていくと降伏曲面は応力空間上を移動

なお、負荷・除荷を繰り返す材料においては、移

動硬化則は等方硬化則に比べ、よりよく現象を表

すと言われているが、繰返し硬化の再現には不十

技術レポート No.4

繰り返し載荷シミュレーション

~Chaboche モデルのパラメータについて

14

鋼材が負荷と除荷を繰り返し受ける場合の挙動については実験とのキャリブレーション等を通じて様々

な構成則が提案されている。その中でも汎用 FEM 解析ソフト Marc では除荷時のバウシンガー効果を考慮

の構成則が実装されている。

では、一般的に利用されている材料構成則と Chaboche の構成則に触れ、Chaboche用されるパラメータについて紹介する。

金属に代表される連続体固体を数値解析で表

現するためには力と変形との関係(一般的には応

が必要である。これは材料の性

質を表現するものでもあり材料構成則と呼ばれ

力が加えられると結晶面で滑り転位を

力が繰り返し加えられ

ると転位密度が高まり、次第に蓄積されて滑り面

に対する抵抗が徐々に増していく。これが加工硬

この加工硬化を数値解析シミュレーシ

ョンで考慮するにあたっては、加工硬化を考慮し

た材料構成則が必要であり、さらにはバウシンガ

ー効果など繰り返し加工に起因する材料挙動も

加工硬化則の特徴を述べる。

されると弾性変

形部分が弾性係数の傾きで戻り再降伏を起こす。

等方硬化ではこの再降伏の応力値は、除荷を開始

[図 1 左:-σ4]。返し荷重(載荷~除荷)を

加えていくと降伏曲面は膨張していく。

されると等方硬

、再降伏を起こす点が等

-2σy]となる。

負荷~除荷)を加え

応力空間上を移動していく。

なお、負荷・除荷を繰り返す材料においては、移

動硬化則は等方硬化則に比べ、よりよく現象を表

すと言われているが、繰返し硬化の再現には不十

分で、大きな変形ひずみを受けた後の再現には適

さない。

(3)混合硬化則

加工硬化の非線形性が強い材料では、初期の硬

化は等方硬化とみなされるが、塑性がある程

んでくると移動硬化の性質が強くなってくる。そ

こでそれぞれの硬化則をある比率で重ねあわせ

たものが混合硬化則である。

等方硬化則および移動硬化則の両方の特性を

兼ね揃えたものとはなるが、パラメータとしては

それぞれの効果比率のみとなるため、細かい調整

には限界がある。

(4)Chaboche の構成則 1)

Chaboche の構成則は等方硬化と移動硬化を考

慮できる混合硬化則のひとつであり、汎用

解析ソフト Marc で利用可能である。

Chaboche 構成則の式は下記

①式の第2項は等方硬化則に関するものでパラ

メータ B によって特徴付けられる。

シミュレーションにおける材料構成則

モデルのパラメータについて~ シミュレーションエンジニアリング・ソリューション部

日本機械学会認定計算力学技術者1級

加来

BRRR exp10inf0

図 1.等方硬化(左

鋼材が負荷と除荷を繰り返し受ける場合の挙動については実験とのキャリブレーション等を通じて様々

では除荷時のバウシンガー効果を考慮

Chaboche の構成則で使

、大きな変形ひずみを受けた後の再現には適

加工硬化の非線形性が強い材料では、初期の硬

化は等方硬化とみなされるが、塑性がある程度進

んでくると移動硬化の性質が強くなってくる。そ

それぞれの硬化則をある比率で重ねあわせ

たものが混合硬化則である。

等方硬化則および移動硬化則の両方の特性を

兼ね揃えたものとはなるが、パラメータとしては

それぞれの効果比率のみとなるため、細かい調整

の構成則は等方硬化と移動硬化を考

慮できる混合硬化則のひとつであり、汎用 FEMで利用可能である。

構成則の式は下記で表される。

項は等方硬化則に関するものでパラ

によって特徴付けられる。R0 および

シミュレーションエンジニアリング・ソリューション部

日本機械学会認定計算力学技術者1級

加来 貴之

① pp

C

exp1

左)と移動硬化(右) 1)

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15 数値解析技報 第 11 号、2015

Rinf は等方硬化則範囲での初期降伏応力および

最大降伏応力を表している。

第3項は移動硬化則に関するものでパラメータ

C およびγによって調整する。等方硬化則の最大

降伏応力 Rinf に C/γの数値が足され最大引張

応力が定義されることとなる。

これらのパラメータの特徴についてサンプル

データを使用して検証を行った。次項にそれぞれ

のパラメータの特徴を紹介する。

3.Chaboche パラメータ (B, C,γ)の特徴

繰り返し載荷の実験で得られたデータをベー

スにサンプルデータを作成し、それに対して合わ

せこみを行った Chaboche のパラメータ B、C、

γを変化させた時にどのような変化を示すかを

確認した。テストデータとして、負荷と除荷を±

0.4%、±1.0%、±1.5%、±2.0%のひずみとなる

ような強制変位を 2 回ずつ繰り返すモデルを使

用する。基準となるパラメータ値は下記表の数値

とする。

等方硬化則範囲 移動硬化則範囲

R0 Rinf B 値 C 値 γ値

235MPa 300MPa 20 15000 150 このモデルについて応力-ひずみ関係での差異

を確認する。

(1)パラメータ B B=20 を基準として、B=2 および B=200 と変化

させた時の応力-ひずみ関係を図 2 に示す。

B 値を大きくすると、繰り返し載荷初期のひず

みが小さい範囲ではより大きな応力値を示すこ

とがわかる。ひずみが大きくなってくるとグラフ

の経路はほぼ一致しており、今回のモデルではひ

ずみ 1.5%を超える範囲では等方硬化の影響が小

さくなることが確認できる。

(2)パラメータ C C=15000 を基準として、C=1500 および

C=7500とした時の応力-ひずみ関係を図3に示

す。C 値はγ値とともに最大引張応力を決定する

パラメータとなる。①式より最大引張応力は

Rinf+(C/γ)にほぼ等しくなる。それぞれのケ

ースでの最大応力は、C=15000 時:400MPa、C=7500 時:350MPa、C=1500 時:310MPa と

なっている。

(3)パラメータγ

γ=150 を基準として、γ=75 およびγ=1500とした時の応力-ひずみ関係を図 4 に示す。

γ値は小さくするほど最大引張応力が大きく

なる。移動効果の傾きを調整する。

4.おわりに

繰り返し載荷のシミュレーションでは、除荷時

のバウシンガー効果を考慮できる移動硬化則も

しくは混合硬化則が有効であり、その中でも実現

象の再現のために比較的少ないパラメータであ

り な が ら 細 か く 材 料 特 性 を 調 整 で き る

Chaboche の構成則の有効性について紹介した。

なお、今回ベースとなるパラメータ値はすでに

調整済みのものを掲載しているが、パラメータを

決定するためには上記の特徴を踏まえた上で試

行錯誤が必要であることは否めない。今後パラメ

ータ同定を容易に実現できるような Excel ツー

ルの作成に取り組む予定である。

参考文献

1) Marc2014 マニュアル A 編

Chapter.7 Material Library, Work or Strain Hardening 492-498 Time-independent Cyclic Plasticity 502-504

図 2.パラメータ B

図 3.パラメータ C

図 4.パラメータγ

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数値解析技報 第 11 号、2015 16

概要

当社では、構造物の振動問題、および振動に付随した音響問題に対して、従来に比べて大規模な解析

モデルを用いて、精度よく状態量を予測することを目指している。その理由は、動的問題において振動

特性を高周波領域まで広げると、自ずと構造モデルおよび空間モデルのメッシュサイズを細かくする必

要があり、結果的に解法する自由度数が多大な大規模モデルを取り扱う必要があるためである。

1.はじめに

振動・音響問題に対して、従来はワーク・ステーションを用いて汎用ソルバー(Nastran, Marc 等)

を適用することが多かったが、大規模解析モデルになると計算時間が多大になるため、解析範囲を狭く

して自由度数を絞り込むなどの工夫を行ってきた。したがって、ある程度の計算誤差を許容してきたこ

とになる。一方で、計算機が高速化し、当社でもクラスター環境1)を利用できるようになり、どこまで

高周波領域の解析精度をあげることができるか注目している。

今回使用するのは並列処理に実績のあるアドバンスソフト社の国産の解析ソルバー

Advance/FrontSTR、Advance/FrontNoise2)である。ここでは、その手始めとして ①線形解析(船体構

造の部分モデル)、②振動固有値解析(車両モデル)、③音響解析(車両の周波数応答問題)について検

討した結果を述べる。

2. 解析対象と解析結果について

船の断面寸法は、テスト用に作成した擬似モデルである。(図1) また、車両(ホワイトボディー)は

公開されているデータ、および車内空間モデルはホワイトボディーモデル3)を参照してテスト用に作成し

たものである。(図2、図3) 解析モデルの自由度数は、①および②で約 700~800 万自由度である。

今回は、都合により1コアのみによる検討を行ったが、計算の所要時間は、①の分布荷重に対する静解

析で 22 秒、②の振動固有値 10 個を計算するのに約 15 分、③の音響周波数応答解析では周波数 100Hz(自

由度数 約 16 万、約 90 万メッシュ)約 15 分、周波数 1000Hz(自由度数 約 125 万、約 700 万メッシュ)

約 1.7 時間であった。なお、音響解析では周波数に応じて、その波長の 1/10 程度にメッシュサイズを細か

くする必要があるため、計算時間に影響を与えているのがわかる。結果として、1コアの検討であっても

ソルバーの計算速度は比較的高速であり、さらに並列処理を行えば より高速化が達成できるものと考え

ている。なお、ポスト処理についてはオープンソース ParaView を使用している。

技術レポート No. 5

大規模構造解析への取り組みについて(その1)

シミュレーションエンジニアリング・ソリューション部

博士(工学),

日本機械学会認定計算力学技術者上級アナリスト

大神 勝城

ソリューション第一チーム 日本機械学会認定計算力学技術者1級

原 一真

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17 数値解析技報 第 11 号、2015

3. 今後の取り組みについて

今後は、振動問題、音響問題に関する実用的な課題に対して、並列化を含め検討を継続していき、それら

の成果については技報次号に掲載予定である。また、構造解析ソルバーFrontSTR による非線形解析機能

についても併せて調査予定である。

<参考>

1)当社の計算環境:HP 製 ProLiant SL6500/SL390s G7/Xeon X6575 3.06 GHz /120 コア

2)アドバンスソフト㈱開発のソルバー:Advance/FrontSTR(構造解析)、Advance/FrontNoise(音響解析)

3)The National Crash Analysis Center Ford Taurus,Modified model(http://www.ncac.gwu.edu/vml/

models.html)

9.89Hz

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数値解析技報 第 11 号,2015

概要

過去数年にわたる膨大な蓄積データを元に、設備の状態を診断或いは予測する技術の確立に向

けての取組を紹介する。

1.はじめに

近年、日々蓄積される膨大なデータを有効利用

しようとする取り組みが活発化しており、製造

業・食品業・サービス業等の生産計画・販売計画・

顧客分析・新商品開発等においてニーズが高まっ

いる。いくつかの分析ツール(エンジン)も販売

され始めているが、生産や操業現場を抱える顧客

の大半はそれを駆使する力がないため、ノウハウ

を持つシステムベンダーを頼っているケースが

ほとんどあると考えられる。

そこで、当部のシステム開発部門において、こ

れら大規模データを使った設備の状態診断(予

測)技術の獲得に向けた取組を開始し、今後増加

するであろう分析ニーズへの対応力強化を進め

ている。

2.主な分析手法の概要

分析手法には様々なものが存在しており、これ

らは利用目的によって、使い分けが必要である。

以下に、よく利用されている代表的な分析手法1)

を紹介する。

(1)回帰分析

説明変数と目的変数の関係を回帰式で表し、目

的変数が説明変数によってどの程度説明できる

かを定量的に分析する手法で、予測と要因分析に

適している。

(2)クラスター分析

データ間の類似度を定義し、その類似度の近い

ものから順にまとめていく方法で、分類に適して

いる。

(3)実験計画法

最適な実験の構成方法を考えその実験で得ら

れたデータに対し、最適な分析方法を採用するも

のであり、予測と要因分析に適している。

(4)主成分分析

多くの特性を持つ多変量のデータを互いに相

関の無い少ない特性値(主成分)にまとめる手法

で、データの縮約に適している。

(5)MT 法

パターン認識における代表的な手法でありマ

ハラノビスの距離という指標により対象物の状

態を判別(良 or 不良又は正常 or 異常)するもの

である。

(6)T法

MT 法が進化した手法であり、予測に適した手

法である。当部では、まずこの手法を用いた予測

技術の獲得に向けた取組をはじめた。

T 法については、後述にその概要を記載する。

3.ステップワイズ法によるデータの選別

大規模データを扱う際には、予測或いは診断す

る変数と関連性の強い変数をいかにして抽出す

るかが、その後の分析結果の精度を左右する重要

な位置付にある。

その抽出手法の一つとしてステップワイズ法2)

がある。 ステップワイズ法は変数増加法と変数

減少法とを交互に行いつつ、目的変数に関連の深

い変数を抽出するものであり、目的変数への影響

度を F 値という指標を用いて判断する。

ここで、

一般的に F 値が

の場合に変数を採用する。

技術レポート No.6

大規模データ分析技術への取組みについて

~T法を用いた予測技術への取組~ ソリューション第三チーム

長嶋 満也

18

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数値解析技報 第 11 号,2015

4.T 法による分析手順

T 法 3)は予測に適した手法であり、SN比を用い

た総合推定式を用いて、目的変数値を予測するも

のである。

最初にデータ群を単位空間と信号空間というグ

ループに分ける。 単位空間とは予測の基準とな

るデータ群で、設備の操業データで例えれば操業

が安定している状態のデータを言い、それ以外の

予測に使用するデータ群を信号空間という。

又、目的変数以外を説明変数と定義する。

単位空間 信号空間

次に、単位空間データの変数毎の平均値を求め、

信号空間データを校正する。

そして、すべての説明変数について信号データと

校正後のデータの関係より、比例定数β及びSN

比ηを計算する。

最後に、得られたk通りの比例定数βとSN比η

を用いて、以下の総合推定式を得る。

ここで、yiが目的変数の予測値を表す。

5.T法による予測事例

以下は、ある設備の操業データにて目的変数A

を説明変数231個を使用して、T法にて以下の

2ケースで予測を実施した事例である。

ケース 1:ステップワイズ法にて説明変数を絞っ

て予測した場合

ケース 2:説明変数をすべて使用して予測した場合

分析の結果を図1に示す。

図 1 目的変数Aの予測結果

図1は予測値と実測値の散布図を表しており、ス

テップワイズ法にて説明変数を絞って予測した

ケース1が精度が高いものとなったが、どちらの

ケースも概ね誤差15%以内で予測できており、

T法による予測が有用である事がわかった。

6.データ分析技術獲得に向けた取組

大規模データ利用技術については、当部におい

てもこれまでは未知の分野であったが、昨年から

設備の性能予測システムの一部開発も行ってお

り、少しづつではあるが着実に技術力を高めてい

る。今年度からは、先に述べたステップワイズ法

やT法といった分析手法を用いて設備の状態診

断業務の実プロ化に向けて、研究開発を通して本

格的な取組を開始し、今年度を目途に何らかの成

果が得られるよう鋭意実行中である。

7.さいごに

今回は、取組を開始したばかりということで、

手法の紹介がメインとなったが、次号にはもっと

具体的な内容が掲載できるよう努力していくの

で、期待して頂きたい。尚、手持ちのデータを使

用して具体的な分析を行ってみたいと思われて

いる方でデータが提供可能であれば是非、当部に

ご相談頂ければ幸いである。

参考文献1) ハロー!データマイニング.分析手法一覧

http://www.datamining.jp/vocabular/fmethods.htm

(2014.11.25 参照)

2)小川雅俊.大規模非線形プロセスの予測手法とその応

用.2008/2.P30-P32.https://dspace.wul.waseda.ac.jp/

dspace/bitstream/2065/37486/3/Honbun-4796.pdf(2014

.2.15 参照)

3) 鈴木真人.試して究める!品質工学 MT システム解析法入

門.日刊工業新聞,2012,p113-117

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NSプラント設計のシミュレーションエンジニアリング&ソリューション

未来価値の実現を弊社が全力でサポートします。

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Be with you for the future value

地盤解析

構造解析 熱流体解析 システム開発

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シミュレーションでは、物理現象をアニメーション・ベクトル図・コンター図を用いて、視覚的にわかりやすく表現します。 実験や測定などで得られる膨大なデータに対しては、適切な処理で分析・可視化などを行うソフトウェアの開発も行います。

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■原因・メカニズムの解明 ■性能・現象の予測 ■現象・データの視覚化

数値解析技報 第 11号、2015 20

サービス紹介:NSプラント設計の解析サービス

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引合 お客様の

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クラスタ計算機

○利用ソフトウェア

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30 年以上、約一万件の数値解析実績があります。 基礎理論に基づく知見、工学的見地により、多角的にシミュレーション結果の評価と考察を行います。設計や操業現場の改善に有効に繋がるよう、お客様とともに意見交換や検討を行い、提案をします。

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■ Fluent ■ OpenFOAM ■ Liggghts

■ Marc ■ SolidWorks Simulation ■ NASTRAN

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受託サービスのフロー < 数値解析 >

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提案

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解析 モデル作成

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設計・製作

システム設計

プログラム実装

納品 インストール

動作確認

マニュアル納品

21 数値解析技報 第 11号、2015

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数値解析技報 第 11号、2015

電磁場解析

振動・音響解析

【 杭の打設効果 】杭なし

杭あり

円弧すべり

杭(赤線)

すべり領域大幅縮小

■ 段階施工解析■ 圧密解析 ■ 安全性解析 ■ 動的解析 ■ 非定常飽和・

不飽和浸透流

■ 誘導加熱■ リニアモータ

■ 固有値問題■ 周波数応答 ■ 時刻歴応答 ■ 応答スペクトル ■ 音響解析

【 車体の固有値解析 】

一次モード

二次モード

【 音響解析 】

■ 弾性・弾塑性・クリープ■ 伝熱・熱応力■ 接触 ■ 亀裂・破壊■ 機構解析 ■ 衝突 ■ プレス成形 ■ 形状最適化

【 接触・変形問題 】

変形後 変形前

【 プレス成型 】

減肉

増肉

免震部材

【 強度・剛性検討 】

鉄皮構造物

ユニバーサルジョイント

【片持梁の形状最適化】初期形状 最終形状

バルク状態の鋼材

制約条件付与

【 降雨の浸透水解析 】

初期状態

降雨24Hr

地下水位上昇

降雨 48Hr飽和

地盤解析

構造解析

進行方向

電流

発熱

温度

【 誘導加熱 】

温度分布

【 熱応力解析 】

応力分布

【 流体‐振動連成 】

バルブ変位

タンク応力

22

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数値解析技報 第 11号、2015

【 粒子挙動の解析 】

回転方向

【 粒子分裂 】 ■ 粒子衝突■ 粒子成長・分裂■ 流体との連成

■ 操業データ可視化■ 解析システム構築 ■ シミュレータ開発 ■ 光ファイバー センシング ■ 大規模データ分析

【 操業シミュレータ 】 設備レイアウト表示

稼働状況

タイムチャート

入力画面【 解析データ自動作成システム 】

解析結果表示

■ 流動■ 混合・燃焼・反応 ■ 混相流(気体/固体/液体)

■ 粒子挙動■ 電磁流体

高温

低温ガス

高温ガス

低温

速度大速度小

ダスト軌跡

侵食速度

【 配管の浸食予測 】

【 流体の自由表面挙動 】 【 電磁流体 】

磁場なし 磁場あり

流速低下

【 炉内反応 】

流速 温度

【 バーナー燃焼 】

温度分布

流体解析

粉流体解析

システム開発

【 DEM-流体連成 】

流速小 流速大

【 気泡塔 気液混合比 】

空気

23

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数値解析技報 第 11 号、2015

※注 1・・・長さ単位はモデルスケールを変更できますが各種物理量は自動変換されません。

弊弊社社取取扱扱製製品品弊社では構造解析、流体解析などの受託解析に加え、

Marc、Mentat、Nastran、Patran など CAE

<お問合せ先>ソフトウェア契約担当窓口

製品紹介 : 汎汎汎用用用有有有限限限Marc2014 の新機能 トピックス

Marcの新バージョン2014では、CAD

形状エンジンがParasolidとなり、これまで以上に形状修正やメッシングの精度が向上しています。

◆ CAD アクセス機能の強化

Mentat の形状エンジンが 2013.1これにより形状の修正や自動メッシュが高速になり、

◆ セグメント-セグメント接触

セグメント-セグメント接触は従来バージョンでは節点-セグメント接触よりも大きな計算コストを必要としていました。

最新バージョンでは収束性を改善するためにデフォルト値の調整が行われ、計算コストが大幅に改善されています。

またセグメント-セグメント接触がグル―接触の破断に対応しました。

穴フィーチャー削除

自己接触の一例

セグメント-セグメント接触の収束性改善

モデルの長さ単位の導入

圧力キャビティ機能の強化

CADアクセス機能の強化

対応 CAD フォーマット:

24

・・・長さ単位はモデルスケールを変更できますが各種物理量は自動変換されません。

弊社では構造解析、流体解析などの受託解析に加え、エムエスシーソフトウェア株式会社の代理店として、

CAE ソフトウェアの販売を行っております。

ソフトウェア契約担当窓口 TEL: 093-588-7233 / E-mail:[email protected]

限限限要要要素素素解解解析析析ソソソフフフトトト MMMaaaトピックス

CAD関連の機能強化が行われました。

となり、これまで以上に形状修正やメッシングの精度が向上しています。

※ 記載の製品名等の固有名詞は各社の商標または登録商標です。

※有償オプション

2013.1 より従来の ACIS から Parasolid に変更されました。これにより形状の修正や自動メッシュが高速になり、2次要素の精度も向上しています。

セグメント-セグメント接触は従来バージョンでは節点-セグメント接触よりも大きな計算コストを必要としていました。

最新バージョンでは収束性を改善するためにデフォルト値の調整が行われ、計算コストが大幅に改善されています。

またセグメント-セグメント接触がグル―接触の破断に対応しました。

穴フィーチャー削除 自動メッシュ

<セグメント-セグメント接触>

<節点

貫通発生

貫通発生なし

収束性改善

導入

強化

これまでのセグメント-セグメントよりも

行われるようになりました。

Mentat で長さ単位を持てるようになりました

単位を変更することで簡単にスケール

理想気体だけではなくほぼ非圧縮性の

拡張されました。

強化 自動メッシュ生成やCADクリーンアップ

フォーマット:Parasolid, ACIS, STEP, IGES, CATIA, SolidWorks

自己接触

・・・長さ単位はモデルスケールを変更できますが各種物理量は自動変換されません。

エムエスシーソフトウェア株式会社の代理店として、

[email protected]

aaarrrccc222000111444

となり、これまで以上に形状修正やメッシングの精度が向上しています。

記載の製品名等の固有名詞は各社の商標または登録商標です。

セグメント-セグメント接触は従来バージョンでは節点-セグメント接触よりも大きな計算コストを必要としていました。

最新バージョンでは収束性を改善するためにデフォルト値の調整が行われ、計算コストが大幅に改善されています。

節点-セグメント接触>

貫通発生

セグメントよりも高速に接触判定が

てるようになりました。

にスケール変換が可能です。 ※注1

の液体もサポートするように

クリーンアップ機能が強化されました。

Parasolid, ACIS, STEP, IGES, CATIA, SolidWorks

自己接触

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NPD数値解析技報 第 11 号 2015 年 6月 発行発 行 NSプラント設計株式会社 本 社 : 〒804‐0002 福岡県北九州市戸畑区中原46 番地の 59 東京分室 : 〒141‐0032 東京都品川区大崎1丁目 5番 1号 大崎センタービル 15階 発行責任者 シミュレーションエンジニアリング・ソリューション部 【SiES’S 部】 湯本 淳

http://www.npd.nsc‐eng.co.jp/ TEL: 093‐588‐7236 FAX:093‐882‐7655

※本誌掲載の写真・図版・記事などの無断使用・転載・複製を禁じます

本社地図 東京分室地図

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