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Title 大学生の自我同一性に関する研究 (3) : アンデンティティ ・ ステイタスについて Author(s) 返田, 健; 大井, 修三; 鈴木, 壮 Citation [岐阜大学教養部研究報告] vol.[27] p.[1]-[18] Issue Date 1991 Rights Version 岐阜大学教養部心理学研究室 (Faculty of General Education, Gifu University) / 岐阜大学教養部心理学研究室 (Faculty of General Education, Gifu University) / 岐阜大学教育学部体育学 科 (Faculty of General Education, Gifu University) URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/47685 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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Page 1: Title 大学生の自我同一性に関する研究 (3) : アンデンティティ ... · この研究の大きな流れのひとつにマーシャ(Marcia,J.E.)が発展させたアイデンティ

Title 大学生の自我同一性に関する研究 (3) : アンデンティティ ・ステイタスについて

Author(s) 返田, 健; 大井, 修三; 鈴木, 壮

Citation [岐阜大学教養部研究報告] vol.[27] p.[1]-[18]

Issue Date 1991

Rights

Version

岐阜大学教養部心理学研究室 (Faculty of General Education,Gifu University) / 岐阜大学教養部心理学研究室 (Faculty ofGeneral Education, Gifu University) / 岐阜大学教育学部体育学科 (Faculty of General Education, Gifu University)

URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/47685

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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大学生の自我同一性に関する研究 ( 3)

1岐阜大学教養部研究報告第27号 (1991)

心理学研究室

(1991年10月14日受理)

返田 健 ・大井修三 ・鈴木 壮*

ア イ デ y テ ィ テ ィ ・ ス テ イ タ スについて

* 教 育 学 部 体 育 学 科

¬ An Analysis of the Ego ldentity Status of Gifu Uniyersity Students -

On TheStudy of CollegeStudents’ Ego ldentity (3)

は じ め に ¥

人が人間として成熟してい くために取 り組まなければならない課題と して, エ リク ソン

(Erikson, E. H.) はアイデンティティ (ldentity) とい う概念を提唱した。 その後このテー

マに多大な関心がよせられ, 多くの研究者によってさまざまな角度から研究がすすめられて

きている (鍍ほか, 1984参照)。

この研究の大きな流れのひとつにマーシャ (Marcia, J. E.) が発展させたアイデンティ

テ ィ ・ ステイタス (ldentity Status) とい う立場からのものがある。

本研究者たちもこのテーマに関心を持ち, 青年期のアイデンティテ ィについて調査研究を

すすめてきた。

最初, 我々はエ リク ソンが明らかにしているように, 青年期, 特に, その典型を生きてい

る大学生においては, 「自分とは何か」 「自分はいかに生きるか, 生きるべきか」 などについ

て思い悩むアイデンテ ィ テ ィの拡散が見られ, その中からそれぞれのアイデンテ ィ テ ィを形

成し, 確立をしていく ものと考えた。 そして, そのような考え方に基づいて, 大学生のアイ

デンティテ ィについて, 「アイデンティ テ ィの拡散一達成」という一次元的なアプローチから

調査研究を進めてきた (大井ほか, 1986 ; 返田ほか, 1986) 。

その結果から, 対象となった大学生のかなりの部分は, エ リク ソンが指摘したような, 青

年期に危機に直面し, 拡散の状態のなかからこの危機を克服して, アイデンティティ を達成

してい く とい う経過をた どらないよ うに思われた。

このような結果になった原因の一つは, 一次元的な質問紙法によるアプローチの問題を反

Takeshi SORITA , Shuzo OH l and M asashi SUZUK I *

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2 返 田 健 ・ 大井修三 ・ 鈴 木 壮

映していることが考えられる。 つまり, アイデンティ テ ィ という概念は青年 (人間) の人格

の形成を考える上で, 有用な概念であるが, 本来臨床的な総合活動の中で明らかにされてき

た概念であるため, 単純な一次元的なアプローチではアイデンテ ィテ ィの形成を捉えるこ と

が困難であるとい う こ とである。

このよ うなことから, 現在の学生 (青年) のアイデンティテ ィの問題へのアプローチは,

マーシャの提唱したアイデンティテ ィ ・ ステイタスの立場から考察するこ とがよ り妥当では

ないかと考えられる。

以上のこ とから, 本研究では現在の大学生のアイデンテ ィテ ィの問題を, アイデンテ ィ

テ ィ ・ ステイタスとい う立場から考察し, 研究を進めた。

I . 研 究 の 目 的

本研究では本学の学生のアイデンテ ィ テ ィ について, アイデンテ ィ テ ィ ・ ステイ タスとい

う観点から, 明らかにしよ うとするものである。 まず, 本学学生のアイデンテ ィテ ィ ・ ステ

イタスの形成の傾向について検討を行ない, 学生たちがどのステイタスに分類されるかを見

る。日常, 学生たちに接し, 観察している印象から, 現存の学生にはフォク ロジャー(Foredo-

sure= 権威受容型 or早期完了型) の学生が圧倒的に多く , 同一性達成 (Achievement) 型

の学生はかなり少ないであろ う という仮説がたて られた。

本研究はこの仮説を検討するとともに, この調査で明らかにされるアイデンティテ ィの各ステ

イタスの特徴とそのアイデンティティ形成の異同について明らかにしようとするものである。

II 方 法

1 調査用紙

本研究で用いられた調査用紙 (質問紙) は加藤によって作られた 「同一性地位判定尺度」

(加藤, 1983) と 「同一性次元尺度」 (加藤, 1986) に, 本研究者たちによって作成された「ア

イデンテ ィ テ ィ拡散調査」 (返田ほか, 1986) を加えたものである (註 1) 。

この質問紙はおおまかに次の4つの部分から構成されている。

① 「同一性地位尺度」 アイデンティティ ・ ステイタスを判定する項目 (問 1 12の12項目)

② 「同一性次元尺度」 アイデンティティの拡散を測定する項目 (問13 26の14項目)

③ 「危機の程度」 現在及び過去に, 考えた り, 迷った りしたことがあるか否かを問う と 「生

きがい努力の対象についての領域」 についてり質問 (問27 71の44項目)

④ 「アイデンティティ拡散調査」 エ リクソンが明らかにしたアイデンティティの8領域につ

いて拡散の側からの質問57項目。 その他 1項目。 十

本研究ではマーシャ以来行なわれている半構造化された面接法を取らなかった。 この方法

は面接法が一人に長時間を要するため, 多人数を対象にすることが困難であり, どうして屯

片寄った対象になってしまいやすいこと (例えば, 無藤, 1979) 。 それに, 高橋 (1984) が指

摘しているよ うに, 被面接者との間にラホールを形成することの難しさ, ステイタスの判定

註 1 加藤作成の分心ついては参考 と して文末に掲げる。 我々の作成した 「アイデンテ ィ テ ィ拡散調査」 につ

いては, 本紀要第21号 (1986年2月) を参照されたい。

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表は付表 として後ろに掲載する)

5. 04 . 0

大学生の自我同一性に関する研究(3) 3

に主観が入 りやすいなどの問題を含んでいる。

以上のよ うな理由から, 本研究は質問紙法で行なわれた。

2 調査 の実施 時 期 と対 象

1989年 4月に本学教育学部の2年生330名を対象としてこ0質問紙を実施し√有効回答324

名 (男性98名 女性226名) を得た。

なお, 対象を教育学部 2年生にしたのは, 彼らに前年 「アイデンテ ィ テ ィ拡散調査」 を実

施してお り, さ らに 3年生時にも継続して実施する計画であった こ とによる。

卜 I I I 調 査 の 結 果

1 全体 的 な傾 向 と 男女 の差

ここではまず本学の学生のアイデンテ ィ テ ィ形成の傾向を明らかにするために, 彼らの質

問項 目への反応の傾向から見てい く。

(なお本文には見やす くするため主な図のみを示し,

0 0 . 5 3 . 5

全体男性女性差

01 日標 を な し

02* 特に打込む03 自分 が ど ん な人 間 か

04* こんな こ とが

05* 自分で重大な決断を06 自分 が ど ん な

07* 人の期待に08 生 き方 に 自信 を

降* 打込めるものを探し10* 何をするこ と11 ど う ゆ う 人 間 か

12* 人生で意味の

第1図 同一性地位測定項目 (項目別平均 男女差)

註 * は逆転項 目を示す

十 pく 。05 廿 く p< 。01

まず, アイデンテ ィ テ ィ ・ステイ タ スを判定するための 「同一性地位尺度」 (全 く そのとお

りだ= 6点から, 全然そ うでない= 1点までの6段階に回答させる) の12の質問についての

反応の全体的な傾向と, 男女の差について見たものが第1図である。

12の質問とも肯定と否定の中間である3.5を上回り肯定の側に反応している。 (※は逆転集

計項目で全て逆転して集計している) 項目1 4までの [現在の自己投入の水準] を見る項

目で は 「※02 特 に うち込む ものはない」 で の反応の肯定の程度 が高 く , 「03 自分が どんな

人間でなにを望み行なお うと しているか知っている」 が相対的には低い。

現在 うち込むものはあるのだが, それが自己のアイデンティ ティ に根ざしているとの確信

はない。 アイデンティ テ ィを見いだしてはいないものが多いと見られる。

この4項目では男女間に有意な差はみられない。

[過去の危機 (考えたり, 迷ったりした) の水準] についての項目05 08について見ると,

「08 以前 自分のそれ まで の生 き方 に 自信が もて な く な った こ とがあ る」 が相対的に肯定度

が低い。 生き方に自信を必ずし も持って生きてきた とはいえない傾向が うかがわれる。 男女

間の差についてみる と「※05 これまで 自分について 自主的に重大な決断を した こ とがない」

で ( t = 2. 70 P < 0. 01) と有意差がみ られる。 女性のほうが自分で こ とを決めない傾向が

4. 5

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0. 5 3. 0 4 . 00

4 返田 健 ・大井修三 ・鈴木 壮

あることがうかがえる。 なおこの尺度のなかではこの項目だけが唯一男女間で有意差がみら

れる。 アイデンティ テ ィ形成において, 現在の学生では男女の間でほとんど違いがみられな

いといえ よ う。

項目09 12の [将来の自己投入の希求Dこついては, 「11 自分がどういう人間であり, な

にをしよ う としているか, いくつかの可能性を比較しながら真剣に考えている」 が相対的に

低い。 アイデンティティを積極的に探究しよ うとする姿勢が弱いことを感じさせる。

これらの傾向から見る限り全体的には本学の学生は, 彼らの意識のなかではアイデンテ ィ

テ ィへの形成への模索をかな り行なっていると考えているこ とになろ う。

ただ, 彼らが相対的に低い反応(ち ょ うど肯定と否定の中間= どちらともいえないぐらい)

を している項目はアイデンティ テ ィの中核を しめるよ うな質問であると思える。

次に, [同一性次元尺度] (同一性の達成一拡散の程度を測定する) への応答の結果を示し

たのが第 2図である。

3. 5

← 全体ロー一男性O-・女性一差

23* 自分と回りの人の見る自分とが25 人や社会 の役 に立つ よ う な

第2図 同一性次元尺度

この測定尺度においても全体の反応としては, 肯定と否定の中間より肯定の側に反応して

いる。 「※14 これまで身につけて きた こ と は無意味な こ とばか りで ある」 「※19 あま りに

多くのことが変わり続けているので自分が誰なのか分からない」「※24 人と話していると自

分が分からなく なる」 などの項目での反応が特に肯定的である。 これらのことから学生全体

の傾向と しては, あま り拡散の状態は経験しておらず, 確立の方向にあるといえよ う。

ただ これに対 して「25 まわ りの人や社会の役に立つよ うな生きがいを もっている」 「※23

自分にとっての私とまわりの人の見る私とがずれている」 それに女性で 「※20 やらなけれ

ばならないこと, や りたいこと, 出来ることが自分のなかでまとまらない」 の3項目が否定

の方向に反応している。 なお, これら 3項目はいずれも他者や社会的なこ とに関連している

項目である。 社会や他人に対して閉じているといわれる現代の青年の一端がうかがえよ う。

この尺度での男女の差は 「※20やらなければならないこと, や りたいこと, できることが

自分の中でまとまらない」 ( t = 2.48 P< 0.01) , 「26」 ( t = 2.21 P< 0.05) の項目で女

性のほうが有意に低い。

本研究者たちが作成した [アイデンティティ拡散調査] に対する反応を見よう。 なおこの

調査では同一性確立の領域 ( カテゴ リー) も加え, 全部で 9領域について測定を している。

結果は次の第 3図のようである。

(57項目の質問を 5段階評定で回答を求め, 「同一性確立の程度」 以外は拡散の側から質問

X

- -

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3. 02. 5

し , そ の と お り = 5 全 く ち が う = 1 と し た。 そ の う えで , 領域 ご と の合計点を , 領域別

の項 目数で割 って領域別の得点を出した。 なお 「同一性の確立の程度」 は確立の側からみて

いる。 今回は57の項 目別の検討は省略する)

第 3図に見 られるよ うに 「同一性確立の程度」 では確立と拡散の中間である3. 0を上回る3.

25で, 確立の方向に反応している。拡散のカテゴ リーは8つ と も3. 0よ り低 く拡散の傾向はあ

まり示されていない。 ただ相対的に拡散の高い領域と低い領域がみられる。

特に理想, 両性的拡散のカテゴリーが拡散の程度が低い。相対的に拡散の程度が高いのが, 時間

的展望, 役割実験, それに勤勉感のカテゴリーである。現在の学生の悩みの傾向がうかがえよう。

5大学生の自我同一性に関する研究(3)

2. 0

同一性確立の程度

同一性拡散度

時間的展望の拡散

自己確信の拡散

役割実践の拡散

勤勉感の拡散

両性的拡散

権威の拡散

理想の拡散

第3図 同一性拡散のカテゴ リー別平均 男女差

註 同一性確立度については確立の程度を 5段階尺度で点数化。他のカテゴ リーは拡散の程度を 5段階尺度で示している

男女差は 「両性的拡散」 で女性のほうが拡散の傾向が強い ( t = 3.50 P< 0. 01) 。 女性の

時代などといわれているが, いまの時代で も女性の性役割, あるいは性アイデンテ ィ テ ィの

形成のほうが困難を伴っているらしい。 一方, 「役割実験の拡散」では男性のほうが拡散の傾

向が強い ( t = 2. 08 P < 0. 05) 。

2 ア イ デ ン テ ィ テ ィ ・ ス テ イ タ ス につ い て

マーシャは同一性形成を規定する要因として,

① 危機 (crisis) の有無

② 自己投入 (commitment) の有無

の2つの変数の組み合わせから 4つのステイタスを導きだした。加藤(1983) はこれに加え,

③ 将来の自己投入の希求 ノ

の変数を加え, これら 3つの変数の組み合わせからアイデンティテ ィ ・ ステイ タスを分類し

ている。 そ して, これらの組み合わせから 4つではな く , 6つの同一性のステイ タ スを定義

している。 すなわちマーシャのそれに比べて同一性達成一権威受容の中間地位 (A- F中間

地位) と同一性拡散―積極的モラ ト リアムの中間地位 ( D一M中間地位) が加えられた。

全て青年がマーシャの4つのステイ タスにはっ き りと分類できないこ とが経験的に把握で

きる。 また中間的な立場のものを設定するこ とで 4つのステイタスがよ り純粋にな り得ると

も考えられ る。 本研究で も この立場を継承する こ とにした。

「同一地位測定尺度」で測定した 3領域についての, 本学の学生の得点の分布は第4図のよ

う にな る。 3領域 と も否定 と肯定の中間点( 14) よ り , 高いほ うへ片寄 って い る。 つ ま り過去

に危機を経験し, 現在, 将来に対しても自己投入を行なっていることを示している。なお図でも

均平の体性性

全男女差

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「現在の 20以上

匯 丁の値 19以下

「過去の 20以上一同一性達成地位

_[]白Kダプ:|]1915-A-F中間地位20以上 の値 14以下一権威受容地位

第4図 過去の危機, 現在の自己投入, 将来への自己投入の程度

加藤による同一性地位の分類の規準は次の第5図のようになっている。

「将来の自己投入の希

「現在の自己投入」の値が12以下ヵ つゝ

「将来の自己投入の希求」 の値が14以下

19以下1

O以上一積極的モラ ト リアム地位

22以上24まで

20以上22。未満

- - - S ■ 一 二 ・ ■ - - - - - - - - -

← 現在の自己投入

…………. . . .ノ う・●- [ l 一 将 来 の 自 己 投 入

0

5

Q

N

6 返 田 健 ・ 大井修三 ・ 鈴木 壮

分かるように過去 (M = 16.92) , 将来 (M= 16. 99) のそれにく らべ現在の自己投入 (M = 15.

87) の得点が有意に低い( F = 10.25P < 0.01)。下位検定の結果有意な差が現在の自己投入と,

他の2つとの間にみられた。現在に対しては過去, 未来ほど投入していないということになる。

20

15

18以上20未満

16以上18未満

14以上16未満

12以上14未満

10以上12未満

8以上10未満

6以上8未満

4以上6未満

10

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百勿規.5訟 勿EEEF3. 9EEョ|勿 8.6j辿包j

5

囲回

第6図 各ステイタス別分布の割合

同一性達成

権威受容

A- F中間

積極的モラ ト リアム

同一性拡散

D- M中間

加藤調査舛

岐大生 X

10

および加藤による 2つの

第 5図 各同丿

この規準によって分類を した, 本学の学生の同一性地位の分布,

国立大学の学生のそれの分布を示したのが第 6図である。

あては- D- M中間地位まらなχ, 。ヽ

あては一同一性拡散地位まる

20 50 55 60150 65

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9

1 8

2 8

3 4

3 1

2 0 1

5

1 2.

1 7

2 7

1 8

1 4 4

大学生の自我同一性に関する研究(3) 7

この結果から明らかなこ とは2つの対象ともD- M中間地位の学生が50パーセン ト以上を

占め, 権威受容地位のものが3 4パーセン トしかいないことである。「現在の大学生には権

威受容ステイタスの学生が多いだろ う」 とい う仮説は支持されない。

日常学生たちに接し, 観察している印象からみると権威受容地位とD一M中間地位の割合

が反対のよ うに感じる。 すなわち, 現在の学生は外から見る限 り親や教師, それに社会の暗

黙の要請をそのまま受け入れ, その線にそって生きているものが多いように思える。

しかし, 本研究の結果から判断すると, 少な く とも彼らの意識のなかでは, 自分や社会,

人生, 進路などについて考え迷いながら生活してきていると思っている学生が多いこ とにな

る。 そして, 親や社会の敷いた既定の線路に乗っかって走ってきたと考えているものはごく

わずかである。

また, この両調査結果からみて大学生での同一性地位達成者は1割前後と推定される。

次に, 両調査間の同一性地位の分布の異同について検討する。

両者には対象となった被験者に違いがあるため単純には比べられない。 加藤 (1983) 調査

では1年生から 4年生までが含まれ, 女性よ り男性の人数が多い。 これに対し, 本調査では

学年は2年生だけであり, 男性より女性が多く なっている。

本学の学生の方に同一性拡散地位, D- M中間地位のものが多く , 他のステイタスに属す

るものの割合は加藤の調査対象の方が多い。 これは加藤の対象者に 3, 4年生が含まれてい

ることが関係しているためであろ う。 大学でも低学年のうちはまだ考え込むこ と, 迷 うこと

も多く , 方向性も定まらないが, 学年が進むにつれ, さまざまな経験を積み, 徐々に方向性

を獲得していく のであろ う。

3アイデンティ テ ィ ・ ステイタス間の比較検討

この研究での同一性地位の分類は, マーシャ以来行なわれている職業, 政治, 宗教, 理想

などの領域での危機の有無, 自己投入の有無によって判定されたのでな く , 領域を特定しな

い3つの変数の水準によって行なわれている。 したがって, 具体的な青年の生活空間での各

領域での危機の有無, 自己投入の程度については明らかにされない。 それゆえそれらについ

て 1 1領域にわたる別の質問によって測定している。

なお, この研究ではステイタスを 6つの地位に分類しているが, ここではA一F , D- M

の2つの中間的ステイタスを除いて, 典型的な 4つのステイタス間の異同について考察する。

このため一元配置法による分散分析で差の検定を行なった。

表 1 各ステイタス別対象者数

男性 女性 計

1 3

5 7

1) 同一性次元尺度の各項についての比較

「同一性次元尺度」 の各項目における, 4つのステイタス間の差をみたのが第 7図である。

4

{hU

1

7

1

権威受容

同一性達成

同一性拡散

モ ラ ト リ ア ム

A- F中間

D- M中間

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2 . 0 2 . 5 3 . 0 3 . 5 4 . 0 4 . 5 5 . 0 5 . 5 6 . 0

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返田 健 ・大井修三 ・鈴木 壮8

第 7図 同一性地位タイプ間の比較 (同一性次元尺度について)

この図から分かるよ うに 4 ステイ タ ス (以下 権威受容群= F群 同一性達成群= A群

同一性拡散群= D群 積極的モラ ト リアム群= M群, とする, 以後この群間の比較について

述べる ときにはこの略号をつかう) 間には, 2項目を除いて有意な差がみられる。 有意差の

みられない 2項目はいずれも Bourne, E. ( 1978) のいうアイデンティ テ ィの構造的側面 (例

えば, 「自分は誰であるか」 といったよ うな) に関係する項目である。 また, ただ 1つで有意

差がみられる 「項 目19」 も構造的な性格のものである ( F = 3. 07P < 0. 05) 。 これらの項 目以

外にも構造的側面に関係する項目が4項 目あ り, これらは1% レベルでの有意差がみられる

ので, 大学生ではアイデンテ ィ テ ィの構造的な側面については, 各ステイタス間にあま り大

きな差はみられないのかも知れない。

次に, 権威受容群は, ただ 1つ 「項目22」 を除いて他の全ての項 目で最も高い得点を示し

ている。 権威受容ステイタスのものは自己のアイデンテ ィ テ ィ に対して非常に高い得点を示

している。 権威受容ステイタスのものは自己のアイデンティティ に対して非常に肯定的であ

る○ ㎜

同一性拡散群は当然のこ とながら, 項目23を除く全部の項目で最低の得点を示し, アイデ

ンテ ィ テ ィの全般的な領域で, 他のステイ タ スにく らべ拡散の傾向がみられる。

同一性達成群と積極的モラ ト リアム群とは非常に似ている。 有意な差がみられるのは項目

18, 20, 26の 3項目だけである。

権威受容群 と同一性達成群とは外見的にもよ く似ていると一般には考えられているが, こ

の調査の結果でみる限り権威受容群の方が自己のアイデンティ ティに対してはるかに肯定的

である。 項目13, 17, 18, 22, 24の5項 目では, 両群間に有意な差はみられないが権威受容

群が相対的に高い。

この図には, 項目27 「これからの生活についてどんな心境ですか」 という質問に, 積極的

から消極的まで, 5段階で回答を求めた結果を示している。 全体的には1% レベルで有意差

がみられるが, F群 とA群 A群 とM群の間には有意差はない。

2) アイデンテ ィ テ ィ拡散調査の各領域についての比較

本研究者たちが作成した 「アイデンテ ィ テ ィ拡散調査」 は先に述べたよ うに, エ リク ソン

が明らかにしたアイデンティ テ ィ拡散の8領域についての質問から構成されている。 そのた

y

o

y

廿

廿

廿

14* 身に付けてきたこ とは無意味

19* 自分が誰なのか分らない

13* た く さんの大切なこ とを学び

17* 行ないを決めるよ りどころが

24* 人 と話を していると自分が21 現 実 の社 会 の な か で 生 き が い を

15 末 来 に 向 っ て し っ か り と

20* や ら なければな ら ない こ とが

18 自分 が ど ん な人 間 かが分 っ て

26* 人や社会にどう働きかけるか25 人 や社 会 の役 に立 つ よ う な ‘

16* 身に付けてきた今の生きかた

22* 理想の自分が幾つも有って

23* 自分と回りの人の見る自分とが

27これからの生活に

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4. 03. 00

ミ ミ

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二 =

∽ ∽

一 一

- -

- -

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2 、0

9大学生の自我同一性に関する研究(3)

め内容的には前に検討した 「同一性次元尺度」 とかな り似た性質を持っている。

3. 51. 5

く4 廿

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-- , 廿

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卜乙 , 4 ぶ - ’ ’

- - -

← 権威受容性ロー一同一性達成+ ・・・拡散地位。。積極的モラ ト リアム

1. 0 1. 5 2. 0 2. 5 3. 0 3. 5

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第 9図 同一性地位各タイプの比較 (過去に経験した危機)

4つの典型的なステイ タ スについて過去 (中, 高校時代から半年 ぐらい前まで) に, どの

よ うな領域で, どの程度考えた り, 迷った りしたかとい う危機の体験について検討する。

この結果からみると同一性達成群と積極的モラ ト リアム群はかなり同じような傾向を示し

て い る。

「勉強」 の領域では4群間に有意差がみられた ( F = 10. 59 P< 0.01) 。 ( d f = 3/ 85 以

下全て同じ) 下位検定の結果, F群とD群以外で有意差があった。

「めざすべき生き方, 価値」 は有意差がみられ ( F = 8.29 P< 0.01) , 下位検定ではF群

とD群, F群とM群以外で有意差があった。

「将来の仕事」 も有意差がみられた ( F = 4.83 P< 0. 01) 。 下位検定ではF群とA群, F

群とM群以外で有意差があった。

勉強

目指すべき生きがい、 価値

同性の友人との関係

将来の仕事異性の友人との関係

自分と家族との関係

自分にふさわしい趣味

男らしい、 女らしい生き方

社会に対する態度

政治に対する態度

宗教に対する態度

0

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廿

廿

権威受容同一性達成同一性拡散モ ラ ト リ ア ム

第 8図 同一性各地位間の比較 ( アイデソテ ィ テ ィ の領域について)

第 8図にみられるよ うに全部の領域で有意な差がみられる。 「同一性確立」 「時間的展望の

拡散」 「権威の拡散」 の3領域では, 4つのステイ タ ス全ての間に有意差がみられた。

ここで も権威受容群が他にく らべ確立の傾向は最も高 く , 拡散の傾向は最も低い傾向がみ

られ る。

3) 過去の体験についての比較

アイデンティ テ ィの形成には過去の体験が大きな影響を与えていると考えられるが事実で

あろ うか。 まず過去に経験した危機からみていく。

① 過去に経験した危機についての比較

同一性確立の程度

同一性拡散度

時間的展望の拡散

自己確信の拡散

役割実験の拡散

勤勉感の拡散

両性的拡散

権威の拡散

理想の拡散

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2 . 0 2. 51. 0

10 返 田 健 ・ 大井修三 ・ 鈴木 壮

「異性の友人との関係」 で も有意差がみられ ( F = 3. 36 P < 0. 05) , 下位検定ではF群と

D群, A群とD群, A群とM群の間に有意な差があった。

これらの領域で, 特に同一性達成群との積極的モラ ト リアム群は, 悩んだ り, 迷づた り危

機を経験していた。 特に達成群でよ りその傾向が強い。

「同性の友人との関係」 は4群ともそろってある程度の危機を経験している。

権威受容群, 同一性拡散群は多少の違いがあるが全体としてはよ く似ている。 両者ともあ

まり危機は経験していない。 と く に拡散群は全ての領域で, 〈考え/ 迷っている= 3〉 く少し

考え/ 迷っている= 2〉の中間の値である2.5以下である。 同性の友人との関係で他の領域に

比べ, 多少迷った り悩んだ りしたがそれでも2.5以下である。

同一性拡散ステイタスは迷い, 考えあぐねその結果として拡散の状態にあると思われたが,

そ うではな く消極的にしか関わってこなかったものと見える。

② 過去に生きがい, 努力の対象であった領域についての比較

1.5 3. 0

極的モラ ト リアム

第10図 同一性地位タイプ間の比較 (過去の生きがい努力の対象)

第10図は過去に生きがい, 努力の対象であった領域についてのものである。 ここで有意差

が見られないのは 「自分と家族との関係」 「政治的活動」 「宗教的活動」 の3領域だけである。

分散分析で比較的大きな差がみられたのは, 「望ましい生き方, 価値の追求」 である ( F =

10 . 48 P < 0. 01) 。 下位検定 で は F 群 と A 群 , F 群 とM 群以外有意差があ っ た 。

次いで 「個人的趣味」 ( F = 6. 31) 「同性の友人との関係」 ( F = 4. 25) ( Pく 0. 01) で, こ

の2つの領域も有意差がみられる。 他の5領域では5% レベルの危険率で差がみられる。

この結果から見ると同一性達成ステイタスを除いた, 他の3ステイタスでは 「同性の友人

との関係」 の領域を相対的に最も強く生きがい, 努力の対象としている。

同一性達成群は 「望ましい生き方, 価値の追求」 「将来の仕事」 「勉強」 「個人的趣味」 の領

域を高く位置付けていると ころに特色があった。

権威受容群は 「家族との関係」 「異性との関係」 「男らしさ, 女らしさ」 の3領域が, 他の

群に比べ高く位置付けられている。 「同性の友人との関係」 ( これは積極的モラ ト リアムも高

い) の領域での得点が高いとい うこ とを合わせて考えると, 人間関係ないしは対人関係的な

ことを生きがい努力の対象にしてきた と見られる。

同一性拡散タイプはほとんどの領域で生きがい, 努力の対象となった程度が低かった。「同

性の友人との関係」 が多少関心の対象であったといえよ う。

過去の生活体験を検討してみて, 危機の体験よりはそれぞれのことにどれだけ打ち込んで

同同積

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望ましい生き方、 価値

同性の友人との関係

勉強

将来の仕事

個人的趣味

自分と家族 との関係

異性の友人との関係

男、 女らしい自分

社会的活動

政治的活動

宗教的活動

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1. 0 3. 01. 5 2 . 0

大学生の自我同一性に関する研究(3) 11

きたか, あるいは, どれだけ積極的に関わって来たのかの違いのように思える。

4) 現在のアイデンテ ィ テ ィ形成への模索の比較

① 現在の危機について

まず現在迷った り考えた りしている 「現在の危機」 の程度についてまとめたものが次の第

11図である。

2. 5

第11図 同一性地位タ イプ別比較 (現在の危機)

過去の危機と以かよった傾向にあった。 ただ過去の危機ほど 4ステイタス間の差が大きく

はな く , 有意差のある領域も少なかった。

「自分がめざすべき生き方, 価値」 で 1% レベルの有意差がみられる ( F = 7.68 P < 0.

01) 。 下位検定ではF群とD群, A群とM群以外で有意差があった。

このほか 「将来の仕事」 ( F = 3. 16) 「勉強」 ( F = 2.95) でいずれも ( P < 0. 05) で有意差

がみ られた。

全般の傾向としては 「将来の仕事」 「自分がめざすべき生き方, 価値」 「異性の友人との関

係」 などの領域での危機の程度が高い。 なおこれらの危機の程度が高い領域で, 同一性達成

群と積極的モラ ト リアム群が高い危機を経験しているのに対して, 権威受容群と同一性拡散

群は相対的に危機を経験している程度が低い傾向が見られた。

「「宗教」 「政治」 「社会」 に対する自分の態度」 「自分にふさわしい趣味」 「男らしい, 女ら

しい生き方」 などの領域ではあまり危機を経験していなかった。 これらはいまの学生たちを

見ていて大体予想されることである。

以上現在と過去における迷った り考えた りした 「危機」 の領域と程度について見てきたが,

同一性達成群と積極的モラ ト リアム群とは比較的よく似ていた。 このことはモラ ト リアム群

はいずれは同一性達成を成し遂げてい く こ とを予想させる。

同一性拡散群は一部の領域を除いて, 権威受容群よりも危機を経験していなかった。

② 現在の生きがい, 努力の対象について

最後に現在の生きがい努力の対象について検討する。 (第12図)

将来の仕事

目指すべき生き方、 価値

異性の友人との関係

勉強

同性の友人との関係

男らしい、 女らしい自分

自分にふさわしい趣味

自分と家族との関係

社会に対する照度

政治に対する照度

宗教に対する照度

3. 5

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..。謡心;

O一権威受容増位ロー一同一性達成十・。 同一性拡散。。積極的モラ ト リアム

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3. 51. 5 2. 0

12 返田 健 ・大井修三 ・鈴木 壮

3. 02. 5

将来の仕事

望ましい生き方、 価値

同性の友人との関係

個人的趣味

自分と家族 との関係

異性の友人との関係

男、 女らしい自分

勉強

社会的活動

政治的活動

宗教的活動

第12図 同一性地位タイプ別比較 (現在の生きがい努力の対象)

1 1領域のうち 「異性の友人との関係」 「宗教的活動」 の2つの領域で, 分散分析による有

意差が見られなかった。 他の領域では4つのステイタスの間で有意な差が見られた。 ただこ

の差は図で見る限り, 同一性拡散群と他の3つのステイタスとの間の差と見られる。

「望ましい生き方, 価値の追究」 ( F = 19.81) 「将来の仕事」 ( F = 9. 70) 「個人的趣味( F =

7. 39) などの領域で特に大きな差があった (いずれもP< 0.01) 。

同一性拡散群を除く 3つのステイタスは, 権威受容の 「異性の友人との関係」 が少し他の

タイプより重要な生きがい, 努力の対象である点を除いて, ほぼ同様の傾向を示した。 3つ

のステイタ スでは「将来の仕事」 「望ましい生き方, 価値の追求」 「同性の友人との関係」 「個

人的趣味」 などが関心事と見られる。

同一性拡散タイプでは全ての領域で生きがい, 努力の対象となっている程度が低かった。

「同性の友人との関係」 「異性の友人との関係」 それに 「将来の仕事」 が多少の関心事になっ

ている とみ える。

ま と め

本研究は本学学生のアイデンテ ィ テ ィ形成について, アイデンテ ィ テ ィ ・ ステイタスとい

う点から考察した。

「同一性地位判定尺度」 「同一性次元尺度」 と 「過去・現在に経験した危機の程度」 「過去・

現在の生きがい, 努力の対象」 に関する質問 (以上加藤作成) , 及び, 本研究者たちで作成し

た 「アイデンテ ィテ ィ拡散調査」 から構成された質問紙を用いて行なわれた。

研究の対象は本学教育学部 2年生324名 (男性98名 女性226名) で調査は1989年 4月に行

なわれた。

主な結果は以下の通 りである。

1. 4つり主な尺度等に対する学生の反応の全体的な傾向は, 自己のアイデンティティを肯

定する方向に反応していた。 また, これら尺度等でみる限 り, 2 3を除いて男女間に有

意な差は認められなかった。

2. 「同一性地位尺度」 で判定された学生のアイデンテ ィテ ィ ・ステイタスは, アイデソテ ィ

テ ィ拡散と積極的モラ ト リアムの中間に位置付けられる 「D- M中間」 ステイタスが60%

で最も多く , 権威受容ステイタスは約 3% と最も少な く , 仮説とは逆の結果になった。 学生

たちの意識の中では考え込んだ り, 悩んだ りする危機を経験しているとみられる。

1. 0

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O一 権 威 受 容

O一 同一性達成+ ・・ 同一性拡散S・ 積極的モラ ト リアム

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大学生の自我同一性に関する研究(3) 13

3 . 「A - F 中間」 「D- M中間」 の2つのステイ タスを除いた 4つのステイ タス間の異同を

検討した。 二

① 「同一性次元尺度」 「アイデンティティ拡散調査」 などアイデンティティの達成一拡散をみ

る尺度で, 権威受容ステイタス群は他のステイタスに比べ有意に高い得点を示した。 自己

のアイデンティテ ィに対してかなり肯定的である。

②過去に経験した危機については, 勉強, めざすべき生きがい, 価値, 将来の仕事それに異

性との友人関係の4領域で 4群間に有意差がみられた。 異性関係を除いた 3つの領域への

関わり方がステイタスと関係があるよ うであった。 特に同一性達成群がこれらの領域で危

機を強く体験していた。

③生きがい努力の対象についても, 危機の場合と同じような領域が対象となっており, 達成

群は, 望ましい生き方, 価値の追究, 将来の仕事, 勉強, 個人的な趣味を高く位置付け,

権威受容群は, 人間関係ないしは, 対人的なことがらに生きがい, 努力を傾注する傾向に

あった。 また, 達成群を除く 3群は友人関係を相対的に重 くみている。

④現在の生活体験については, 危機の体験の仕方で目指すべき生き方, 価値での差が大きく ,

その他, 将来の仕事, 勉強で差がみられた。 達成群とモラ ト リアム群対権威受容群と拡散

群とい う対比がみられた。

⑤現在の生きがい, 努力の対象に関してみると, 異性, 宗教を除いた全ての領域で有意差が

みられたが, これはほとんどが, 拡散群と他の3群との間の差であった。 各ステイタス間

の比較を してみると, 生きがい価値の追求, 将来の仕事, 勉強の3つの領域に積極的に取

り組むか, 否かが, ステイタス間の最も大きな差であるよ うに思えた。 あえて言うなら,

同一性達成とモラ ト リアムの2つのステイタスは上にあげたような領域に積極的に取 り組

み, 危機を経験し, 生きがい努力の対象にもしていた。 この2群の間の差は達成群はほぼ

方向性を見いだしているのに対し, モラ ト リアム群はまだ結論を出すに至っていないとい

う と ころであた。

拡散群は全てのことに積極的になれず, いわゆる, 「オ リテイル」 状態とみられた。

権威受容群もそれほど積極的に関わっている訳ではないが, 拡散群のように自己の現状。

現在のアイデンティテ ィに対して否定的ではな く , むしろ, 非常に肯定的であった。

参 考 文 献

1 Boum e, E . 1978 T he status of research on ego identity : a review and appraisal part l & PartI I 。

Joumal of YouthandAdolescence, 7,223-251 & 371-392.

2 Erikson, E . H . 1950 Childhood and society. N ew Y ork : N orton.

3 Erikson, E . H . 1959 1dentity and the life cyde. Psychological lssues, 1-171

4 加藤 厚 , 1983 大 学生 に お け る 同一 性 の諸相 と そ の構造 教 育心理学研究 , 31- 4, 20- 30

5 加藤 厚 , 1986 同一 性測定 にお け る 2 ア プ l=・ - チ の比較検討 , 心理学研究 , 56- 6, 357- 360

6 加藤 厚 ほか , 1984 帰国高校生 にお け る ldentity の特徴 , 筑波大学心理学研究 , 第 6 号57- 66

7 M arcia, J. E . 1966 Development and validation of ego-identity status. Joum al of Personality and

SociaI Psycholgy, 3,551-558.

8 無藤清子 , 1979 「 自我 同一性地位面接 」 の検討 と大学 生 の 自我 同一性 , 教 育心理学研 究 , 27, 28- 37.

9 大井修 二 返 田 健 鈴木 壮 , 1985. 大学生 の 自我 同一性 に関す る研究(1)一 自我 同一性の確立 に関連

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I 以下のそれぞれの文を読み, その内容があなたの生き方や

気持ちにどのく らいあてはまるかを, 選択肢の番号を( ) に

記入して答えて ください。

まった く そのとお りだ……………… 6

かな りそ うだ………………………… 5

どち らか といえばそ うだ…………… 4

どち らか といえばそ うではなX, ‥ヽ…・3

そ うではない‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2

全然そ うでない‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1

) 1

) 2

) 3

1 私 は今 , 自分 の 目標 を な し と げ る た め に努 力 し て い る 。

1

返田 健 ・大井修三 ・鈴木 壮14

する生活史の要因一岐阜大学教養部研究報告第21号1- 29.

10 返 田 健 大井修三 鈴木 壮 , 1985. 大 学 生の 自我 同一性 に関す る研究 (2)一大学新 入生の 自我同一性 の

自我同一性- 岐阜大学教養部研究報告第21号31- 45.

11 高橋裕行 , 1984. 自我 同一性 と M arcia の 同一 性地位面接 , 教 育心理学研 究 , 32, 320- 328

12 鎗 幹八 郎 ほか , 1984. 自我 同一 性研究 の 展望 , ナ カ ニ シ ヤ 出版 .

(調 査 用紙)付

(

(

(

16

17

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2 私 に は, 特 に う ち こ む も の は な

(

) 11

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) 15

(

3 私 は, 自分が どんな人間で 何を 望みお こ な お う と し て い る のかを 知

4 私 は, 「 こ ん な こ と が し た い 」 と い う確 か な イ メ ー ジ を 持 っ て い な い ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●( ) 4

5 私 は これ まで , 自分 につ いて 自主的 に重大 な決断を し た こ と はな しヽ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ( ) 5

6 私 は, 自分が どん な人間 なのか, 何 を し た い のか と い う こ と を かつ て真剣 に迷 い考 えた こ と があ る

真剣に考えている ………………………………………………………………………………………

7 私 は, 親 や まわ り の人 の期待 にそ っ た 生 き 方 を す る こ と に疑 問 を 感 じ た こ と は な tヽ ・… ……… ( ) 7

8 私 は以前 , 自分のそ れ ま で の生 き方 に 自信 が持て な く な っ た こ と があ る ……………………… ( ) 8

9 私 は, 一生懸命 に う ち こめ る も のを積極的 に探 し求めて い る ・・…………………………………… ( ) 9

10 私 は, 環 境 に応 じ て , 何 を す る こ と に な っ て も特 にか まわ な い ………………………………… ( づ 10

11 私 は, 自分 が ど う い う人間で あ り , 何 を し よ う と し て い る のかを , 今 い く つ かの可能 な選択 を 比べ なが ら

12 私 には, 自分が こ の人生 で何 か意味あ る こ と がで き る と は思 え な χ, ヽ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (

13 私 は これ まで , た く さ ん の大切 な こ と を学 び身 につ けて きた …………………………………… (

14 こ れ ま で 身 につ け て き た こ と は, 無 意味 な こ と ばか り だ …………………………… …………… (

17 自分の行 いを 決め る よ り ど こ ろ が

15 私 は, 未来 にむか っ て し っ か り と 歩 いて き て

16 子供 の こ ろ か ら身 につ け て きた こ と を , 今 の生 き方 に ど う役 だ て た ら い いのかわ か ら な い … (

18 私 には, 自分が どん な人間な のか よ く わ か

23 自分 に と っ て の 「私 」 が , まわ りの人 の見 る 「私 」 と ズ レて い る …………………

19 あ ま り に多 く の こ と が変わ り続 けて い る の で , 自分がだ れ な のかわか ら な χXヽ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (

20 や ら な けれ ばな ら な い こ と , や りた い こ と , で き る こ と が , 自分の中で ま と ま ら な い ……… (

21 私 は, 現実 の社会 の中に生 きがいを 見つ け 出す こ と がで き るだ ろ う …………………………… (

22 私 に は 「理 想 の 自分」 が い く つ も あ っ て , ど れ が本 当の 「な り た い 自分」 な のかわ か ら な い (

26 私 は, まわ りの人や社会 に ど う働 きか けた ら い い のかわ か ら な

● ● ● ● ●

24 人 と話 し て い る と 自分がわか ら な く な る … ………………………………………………………… (

25 私 は, まわ りの人や社会 の役 にた つ よ う な 生 きが いを 持 っ て い る ……………………………… (

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かなり考え/ 迷って かなり重要な生きがい/ かなり努力している, ……………3

方の点を記入して く ださい。 例えば, かな り重要

( 3) だがほとんど努力していない ( 1) 場合には

( 3) とt うヽよ うに)

過去 現在

A. 迷った り考えた りしている程度 : I B. 生きがいあるいは努力の対照となっている程度 :

非常に考え/ 迷っている ………………………4 1 非常に重要な生きがい/ たいへん努力をしている …4

大学生の自我同一性に関する研究(3) 15

II A . 以下 の左 に示 さ れて い る こ と につ いて , 過去 ( 中学 ・高校生時代 か ら半年 ぐ ら い前 まで の期間 ) あ な

たはどの程度迷った り考えた りした こ とがあ りましたか。 現在はいかがですか。

B. また, 右に示されているこ とは, 過去のあなたにとってどれだけ重要な生きがい, あるいは努力の対象

になっていましたか, 現在はいかがですか。 あてはまる程度を以下の選択肢から選んで, 数字を ( ) に

記入して く ださい。

)

)

)

)

)

)

)

)

1

2

3

)

e。 勉強 ( ) (

-

a. 自分と家族との関係………………… ( ) ( ) i a-. 自分と家族との関係………………… ( ) (

b。 同性の友人との関係………………… ( ) ( ) l b. 同性と友人との関係………………… ( ) (

C. 異性の友人との関係………………… ( ) ( ) l C. 異性の友人々の関係………‥………… ( ) (

d. 男らしい ・女らしい生き方………… ( ) ( ) i d. 男らしい自分 : 女らしい自分……… ( ) (

すこし考え/ 迷っている ………………………2 1 やや重要な生きがい/ 少しは努力している……………………2

特に迷いも考えもしない………………………11 特に重要ではなく努力もしていなUヽ・・…………………………li (重要さ と努力の程度とが一致しない場合には, 高い

過去 現在 |

( ) ( ) l e

● ● ● ● ● ●

丿 ● ● ● ● ●

g。 自分にふさわしい趣味……………… (

h. 政治に対する自分の態度…………… (

● ● ● ● ● ●

i 。 社全問題に対する自分の態度……… ( ) ( ) 0 . 社会的活動…………………………… ( ) ( )

j . 宗教に対する自分の態度…………… ( ) ( ) l j . 宗教的活動…………………………… ( ) ( )

) ( ) り . 個人的趣味…………………………… ( ) (

) レパ h. 政治的活動……………………………( ) (

: ” `

f . 将来の仕事…………………………… ( ) ( ) l f . .将来の仕事…………………………… ( ) (

IV これか らの生活につ いて どんな心境です か。

( 5. 積極的 4. やや積極的 3. やや消極的 2. 消極的 1. わからない)

III 半年 ま えのあ な た と比べ て , 現在 のあ なた は どん な と こ ろ がかお り ま し た か。 また そ の変化 の原因は何で

し ょ うか, 重要と思う変化について, できるだけ詳し く記入して ください。

重要な変化 原因と思われるこ と

k。 自分がめざすべき生き方や価値…… ( ) ( ) l k. 望ましい生き方や価値の追求……… ( ) (

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全 体 男 性 S D 女 性 S D 差 t

Q 1 目標

Q 2 ※特記Q 3 自分Q 4 ※ こ んQ 5 ※ 自分Q 6 自分

Q 7 ※人 のQ 8 生 きQ 9 打 込 め

Q 10※何 をQ 11 ど うQ 12※人生

3. 79 3 . 90 1. 20 3 . 74 1. n 0 . 16 1. 15

4. 41 4 . 64 1. 38 4 . 31 1. 28 0. 32 2 . 01

3. 62 3. 54 1. 28 3 . 62 1. 17 - 0. 08 0. 56

4. 05 3 . 94 1 . 50 4 . 10 1. 32 - 0. 16 0 . 96

4 . 23 4 . 54 1. 45 4 . 08 1. 39 0 . 46 2 . 7叶

4. 42 4 . 28 1. 49 4 . 50 1. 26 - 0. 21 1. 32

4 . 50 4 . 53 1. 28 4 . 47 1. 21 0 . 06 0 . 40

3. 76 3 . 63 1. 57 3 . 81 1. 40 - 0 . 18 1. 05

4. 22 4. 24 1. 39 4 . 22 1. 17 0. 02 0. 10

4 . 41 4 . 40 1. 30 4 . 44 1. 17 - 0 . 04 0 . 29

3. 74 3. 61 1. 21 3. 78 1. 23 - 0. 16 1. 10

4. 62 4 . 69 1. 22 4 . 60 1. 14 0. 08 0. 61

付表 2 同一性次天尺度の項目別平均男女差

16 返田 健 ・大井修三 ・鈴木 壮

付表 1 同一性地位判定尺度項目別平均男女差 (十P< . 05 廿P< . 01以下全て同じ)

全体の平 男 子 S D 女 性 S D 差 t

Q 13 た くQ 14 ※身 にQ 15 未来Q 16※身 にQ 12※行 なQ 18 自分

Q 19※ 自分Q 20※や ら

Q 21 現 実Q 22 ※理 想

Q 23※ 自分Q 24※人 と

Q 25 人 やQ 26※人 や

4. 23 4. 17 1. 19 4 . 22 0 . 97 - 0. 04 0 . 37

4. 97 4 . 86 1. 12 5 . 00 0. 91 - 0. 14 1. 21

3. 84 3 . 88 1. 24 3 . 81 1. 01 0 . 06 0 . 52

4 . 06 4 . n 1. 22 4 . 05 1. 05 0 . 06 0 . 45

4. 09 4 . 11 1. 47 4 . 07 1. 14 0. 04 0. 28

3. 83 3. 80 1. 35 3. 83 L 11 - 0. 03 0. 25

4 . 71 4 . 76 1 . 19 4 . 69 0 . 99 0 . 06 0 . 54

3. 60 3. 88 1. 47 3. 47 し1. 32 0. 41 2. 48廿

4. 15 4 . 11 1. 28 4 . 15 0. 98 - 0. 04 0. 32

3. 88 3 . 82 1. 33 3 . 88 1. 25 - 0 . 06 0 . 42

3. 38 3 . 32 1. 26 3. 40 1. 13 - 0. 08 0. 56

4. 41 4 . 54 1. 16 4 . 34 1. 13 0 . 19 1. 37

3. 04 3 . 16 1. 30 2 . 96 0. 99 0. 19 1. 48

3. 63 3. 84 1. 32 3. 52 1. 08 0. 31 2. 21十

付表 4 アイデンテ ィ テ ィ ・ ステイタスの分布

加藤調査(人) ( % ) 岐阜大(人) ( % )

同 一 性 達権 威 受 容A - F 中

積 極 的 モ同 一 性 拡D - M 中

36 11. 6 18 5 . 6

12 3 . 9 9 2 . 6

38 12. 3 33 10. 2

47 15 . 2 34 10 . 5

12 3 . 9 28 8 . 6

165 53 . 2 202 62 . 3

付表 3 アイデソティ ィ拡散領域別平均男女差

全体の平 S D 男 性 S D 女 性 S D 男女差 t

同 一 性 確

同 一 性 拡

時 間 的 展自 己 確 信

役 割 の実験勤 勉 感 の両 性 的 拡権 威 の 拡理 想 の 拡

3. 24 0. 58 3. 29 0. 62 3. 22 0. 55 0 . 06 0. 97

2 . 50 0 . 62 2 . 39 0 . 73 2 . 54 0 . 56 - O、14 L 96

2 . 89 0. 54 2. 85 0 . 62 2 . 91 0 . 50 - 0 . 06 0 . 98

2 . 64 0 . 58 2 . 57 0. 66 2 . 68 0. 53 - 0 . 10 1. 49

2 . 88 0 . 60 2 . 77 0 . 64 2 . 92 0 . 59 - 0 . 15 2 . 08十

2. 79 0 . 75 2 . 86 0. 85 2 . 76 0 . 71 0 . 09 1. 03

2. 29 0. 55 2. 13 0. 53 2. 36 0. 54 - 0 . 23 3. 50廿

2. 53 0. 52 2 . 56 0. 50 2 . 51 0. 53 0 . 04 0 . 74

2 . 08 0 . 62 2 . 04 0, 70 2 . 09 0 . 59 - 0 . 05 0 . 73

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権威受容 同一性達成 同一性拡散 モラ ト リアム Fの値

Q 13 た くQ 14 ※身 に

Q 15 末来Q 16 ※身 にQ 17※行 なQ 18 自分

Q 19 ※ 自分Q 20※や らQ21 現 実Q22 ※理想Q 23 ※ 自分Q 24 ※人 とQ 25 人 やQ26 ※人や

5. 20 4 . 80 3 . 50 4 . 50 9 . 24-

6. 00 5 . 10 4 . 10 5 . 30 9 . 76-

5. 30 4 . 20 2 . 90 4 . 20 17. 29-

5. 00 4 . 20 3 . 50 4 . 40 5 . 43-

5. 20 4 . 70 3 . 10 4 . 40 13 . 25-

4. 80 4 . 60 3 . 20 3 . 90 7 . 55-

5. 60 4 . 90 4 . 30 4 . 60 3 . 07-

5. 40 4 . 30 2 . 90 3 . 50 10 . 95-

5. 40 4. 10 3. 30 4 . 40 9 . 03-

4. 10 4 . 40 3 . 60 3 . 80 1. 56

4 . 20 2 . 80 3 . 00 3 . 60 4 . 12-

5. 00 4 . 40 4 . 10 4 . 20 1 . 42

4 . 90 3 . 60 2 . 10 3 . 40 19 . 1F

5. 10 4 . 30 2 . 90 3. 80 12 . 1t

-

=

=

|-

=

-

-

=

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

17大学生の自我同一性に関する研究(3)

付表 5 同一性次元尺度の項目別比較

付表 6 アイデンティ テ ィ拡散の領域別比較

権威受容 同一性達成 同一性拡散 モラ ト リアム Fの値

勉 強目 指 す べ同 性 の 友将 来 の 仕異 性 の 友自 分 と 家自 分 に ふ男 ら し い社 会 に 対政 治 に 対宗 教 に 対

2. 11 3 . 38 1. 92 2 . 85 10 . 59廿

2. 22 3 . 11 1. 78 2 . 58 8 . 29廿

2. 55 2 . 94 2 . 39 2 . 82 1. 34

2. 55 3 . 00 1. 85 2 . 58 4 . 83廿

2. 55 2 . 83 1. 96 2 . 17 3 . 36十

1. 66 2 . 61 L 96 2 . 17 1. 84

1. 66 1. 94 1. 53 1. 79 0. 91

1. 88 1. 61 1. 57 1. 85 0 . 64

1. 55 1. 77 1. 35 1. 52 1 . 14

1. 55 1 . 61 1. 21 1. 38 1. 36

1. 22 1. 50 1. 07 1. 14 2 . 36

付表 7 過去の危機

権威受容 同一性達成 同一性拡散 モラ ト リアム Fの値

同 一 性 確

同 一 性 拡時 間 的 展自 己 確 信

役 割 実 験勤 勉 感 の両 性 的 拡権 威 の 拡理 想 の 拡

4. 10 3 . 60 2 . 70 3 . 30 26 . 89-

1. 60 2 . 50 2 . 90 2 . 40 11. 79-

2. 00 3 . 00 3 . 30 2 . 80 21. 04-

1. 80 2 . 50 3 . 00 2 . 60 16 . 15-

2 . 30 3 . 10 3 . 10 2 . 80 4 . 92-

2. 20 2 . 80 3 . 40 2 . 50 13 . 13-

1. 70 2 . 30 2 . 40 2 . 20 3 . 45-

1. 90 2 . 60 2 . 90 2 . 30 14 . 22-

1. 40 1. 60 2 . 80 1. 80 27 . 07-

-

-

-

-

-

-

-

-

Page 19: Title 大学生の自我同一性に関する研究 (3) : アンデンティティ ... · この研究の大きな流れのひとつにマーシャ(Marcia,J.E.)が発展させたアイデンティ

権威受容 同一性達成 同一性拡散 モラ ト リアム Fの値

同 性 の 友望 ま し い

将 来 の 仕勉 強個 人 的 趣

自 分 と 家異 性 の 友男, 女 ら社 会 的 活

政 治 的 活宗 教 的 活

3. 00 2 . 55 2. 25 3 . 00 4 . 25廿

2. 77 3 . 05 1. 60 2 . 64 10. 48廿

2. 66 2 . 88 1. 96 2 . 47 3 . 72十

2 . 44 2 . 88 2 . 03 2 . 55 2 . 94十

2. 66 2 . 83 1. 75 2 . 02 6 . 31廿

2. 77 2 . 27 1. 89 2 . 47 2 . 57

2. 88 2 . 22 1. 78 2 . 29 3 . 79十

2. 77 1. 61 1. 71 1. 91 3 . 56十

1. 77 1. 55 1. 14 1. 29 2 . 88十

1. 66 1. 27 1. 14 1. 17 2 . 09

1. 11 1. 33 1. 03 1. 08 2 . 36

18 返田 健 ・大井修三 ・鈴木 壮

付表 8 過去の生きがい ・努力の対象

付表 9 現在の危機

権威受容 同一性達成 同一性拡散 モラ ト リアム Fの値

将 来 の 仕望 ま し い

同 性 の 友個 人 的 趣

自 分 と 家異 性 の 友

男, 女 ら勉 強社’会 的 活

政 治 的 活宗 教 的 活

3. 33 3. 44 2. 25 3. 08 9 . 70廿

3. 00 3 . 38 1. 85 3 . 29 19 . 81廿

3. 22 3 . 00 2 . 53 3 . 32 4 . 44廿

3. 00 3. 11 1. 92 2 . 64 7 . 39廿

2. 66 2 . 77 1. 85 2 . 76 6 . 22廿

3. 33 2. 66 2. 39 2. 79 2 . 11

2. 88 2 . 22 1. 89 2 . 41 2 . 78十

2. 00 2. 72 1. 89 2. 61 5 . 97廿

2. 22 1. 55 1. 28 1. 82 4 . 59廿

1. 88 1. 33 1. 14 1. 61 3 . 72十

1. 11 1. 33 1 . 07 1. 14 0 . 96

付表10 現在の生きがい ・努力の対象

権威受容 同一性達成 同一性拡散 モラ ト リアム Fの値

将 来 の 仕目 指 す べ

異 性 の 友勉 強同 性 の 友男 ら し い自 分 に ふ自 分 と 家社 会 に 対

政 治 に 対

宗 教 に 対

3. 00 3. 38 2 . 53 3 . 08 3 . 16十

2. 33 3. 16 2 . 17 3. 17 7. 68廿

2. 44 2 . 88 2 . 21 2 . 44 1. 71

1. 77 2 . 61 2 . 21 2 . 70 2 . 95十

2. 11 2 . 16 2 . 14 2 . 58 1. 37

2. 00 2 . 00 1. 82 2 . 23 0 . 83

1. 66 1. 77 1. 82 2 . 20 1. 23

1. 33 2. 27 1. 78 2. 05 2. 30

2. 11 1. 94 1. 60 2 . 14 2 . 32

1. 77 1. 94 1. 50 1. 97 1. 95

1. 22 1. 38 1. 14 1. 41 0 . 89