混相流 vol.35 no - jst

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特集号論文推薦原稿 * 2020.11.2 受付 ** 大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻 〒560-8531 大阪府豊中市待兼山町 1-3 TEL: (06)6850-6167 FAX: (06)6850-6167 E-mail: [email protected] *** 理化学研究所光量子工学研究センター 351-0198 埼玉県和光市広沢 2-1 回転体に駆動される気液二相流のトルクと流動様式 * Torque and Flow Pattern of Gas-Liquid Two-Phase Flow Driven by a Rotating Body 木 南 直 之 **,*** 渡 村 友 昭 **,*** 杉 山 和 靖 **,*** KINAMI Naoyuki WATAMURA Tomoaki SUGIYAMA Kazuyasu Abstract Torque and flow pattern of gas-liquid two-phase flow driven by a rotating body are numerically studied. Two-dimensional direct numerical simulations are performed using a fixed mesh approach based on Volume Of Fluid (VOF) and Boundary Data Immersion (BDI) methods. We investigate the influence of rotational speed Ω, fluid properties, and rotating body shape. The interplay between the centrifugal and gravitational forces gives rise to transition of the flow pattern with Ω, that is qualitatively similar for all the body shapes chosen in the present study. The rotational speed of the transition to the annular flow in the non-axisymmetric system is found to be lower than that in the axisymmetric system. The flow structure is classified into four patterns with respect to the torque and the contact ratio of liquid phase at the rigid body interface. The torque and the contact ratio are found to be scaled by the Froude number. Keywords: Numerical simulation, Torque, Volume of fluid, Boundary data immersion 1. 緒 言 トランスミッション内の回転機構は、それらが 接触し、かみ合うことで動力を伝達する。接触や かみ合いによって生じる摩擦を抑制するために、 機構内は潤滑油-空気系の気液二相状態となる。 潤滑油は攪拌やせん断により動力損失を増加さ せ、例えば、高速で回転するギア周りでは、潤滑 油が飛散し、動力損失が増加することが知られて いる [1]。加えて、潤滑油の物性値や攪拌条件に より、潤滑油が発熱部へ行き届かない場合、機器 の破損に繋がる可能性がある [2]。流体損失低減、 攪拌効率向上、機器の安全保証の三つを同時に実 現するためには、気液の空間分布、すなわち流動 状態の評価が必要となる。本論文が対象とする上 述の系は、回転体と静止壁間の気液二相流であり、 気液界面は大きく変形するため、現象は複雑であ る。そのため、様々な幾何形状にも対応した数値 計算手法と、統一的な流動状態の評価が必要と言 える。 回転体に駆動される流れの流体抵抗に関する 研究は多数ある。丹らは、液浸されたギアを対象 とし、円筒座標系において生成された格子上で数 値計算を行い、歯車形状が攪拌抵抗の発生メカニ ズムに与える影響を調査した [3] 。また、 Seethraman Kahraman は、攪拌損失が油の動粘 度に比例することを報告した [4]。しかし、低粘 度の流体を用いた場合の攪拌損失は、高粘度の流 体を用いた場合の攪拌損失と比較して大きくな ることがある [5]。回転体に駆動される相分布に 着目した研究も多数ある [69]Peixinho らは、 内円筒表面に形成される液膜厚さを実験的に調 査し、液膜厚さがキャピラリ数で整理できること を示した [6]。著者らは、二次元同軸円筒間を対 象とし、流動様式を分類する統一的な説明方法を 提案した [10]。しかし、対象は軸対称な円盤に限 定され、回転体形状が流動様式に与える影響は調 査されていない。実際のトランスミッション内に は、ギア等の非軸対称な部品が多用される。工学 混相流 35 巻 1号(2021) 109

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Page 1: 混相流 Vol.35 No - JST

特集号論文推薦原稿

* 2020.11.2 受付

** 大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻 〒560-8531 大阪府豊中市待兼山町 1-3

TEL: (06)6850-6167 FAX: (06)6850-6167 E-mail: [email protected]

*** 理化学研究所光量子工学研究センター 〒351-0198 埼玉県和光市広沢 2-1

論 文

回転体に駆動される気液二相流のトルクと流動様式 *

Torque and Flow Pattern of Gas-Liquid Two-Phase Flow Driven by a Rotating Body

木 南 直 之**,*** 渡 村 友 昭**,*** 杉 山 和 靖**,***

KINAMI Naoyuki WATAMURA Tomoaki SUGIYAMA Kazuyasu

Abstract Torque and flow pattern of gas-liquid two-phase flow driven by a rotating body are numerically studied. Two-dimensional direct numerical simulations are performed using a fixed mesh approach based on Volume Of Fluid (VOF) and Boundary Data Immersion (BDI) methods. We investigate the influence of rotational speed Ω, fluid properties, and rotating body shape. The

interplay between the centrifugal and gravitational forces gives rise to transition of the flow pattern with

Ω, that is qualitatively similar for all the body shapes chosen in the present study. The rotational speed of the transition to the annular flow in the non-axisymmetric system is found to be lower than that in the axisymmetric system. The flow structure is classified into four patterns with respect to the torque and the contact ratio of liquid phase at the rigid body interface. The torque and the contact ratio are found to be scaled by the Froude number. Keywords: Numerical simulation, Torque, Volume of fluid, Boundary data immersion

1. 緒 言

トランスミッション内の回転機構は、それらが

接触し、かみ合うことで動力を伝達する。接触や

かみ合いによって生じる摩擦を抑制するために、

機構内は潤滑油-空気系の気液二相状態となる。

潤滑油は攪拌やせん断により動力損失を増加さ

せ、例えば、高速で回転するギア周りでは、潤滑

油が飛散し、動力損失が増加することが知られて

いる [1]。加えて、潤滑油の物性値や攪拌条件に

より、潤滑油が発熱部へ行き届かない場合、機器

の破損に繋がる可能性がある [2]。流体損失低減、

攪拌効率向上、機器の安全保証の三つを同時に実

現するためには、気液の空間分布、すなわち流動

状態の評価が必要となる。本論文が対象とする上

述の系は、回転体と静止壁間の気液二相流であり、

気液界面は大きく変形するため、現象は複雑であ

る。そのため、様々な幾何形状にも対応した数値

計算手法と、統一的な流動状態の評価が必要と言

える。

回転体に駆動される流れの流体抵抗に関する

研究は多数ある。丹らは、液浸されたギアを対象

とし、円筒座標系において生成された格子上で数

値計算を行い、歯車形状が攪拌抵抗の発生メカニ

ズムに与える影響を調査した [3]。また、

Seethraman と Kahraman は、攪拌損失が油の動粘

度に比例することを報告した [4]。しかし、低粘

度の流体を用いた場合の攪拌損失は、高粘度の流

体を用いた場合の攪拌損失と比較して大きくな

ることがある [5]。回転体に駆動される相分布に

着目した研究も多数ある [6–9]。Peixinho らは、

内円筒表面に形成される液膜厚さを実験的に調

査し、液膜厚さがキャピラリ数で整理できること

を示した [6]。著者らは、二次元同軸円筒間を対

象とし、流動様式を分類する統一的な説明方法を

提案した [10]。しかし、対象は軸対称な円盤に限

定され、回転体形状が流動様式に与える影響は調

査されていない。実際のトランスミッション内に

は、ギア等の非軸対称な部品が多用される。工学

- 4 -

的にも実用的な評価法を構築するために、非軸対

称形にも対応した流動様式分類の提案が期待さ

れている。

トルクと流動構造を結び付けた研究として、著

者らは、回転体により駆動される二相流れを対象

とした三次元の数値計算を行い、回転速度に対す

るトルク変化が鈍化し、トルクが一定値で飽和す

る機構を議論した [11]。しかし、トルクの定量評

価に関しては、実験計測と有意な差があり、その

原因については明らかになっていない。また、著

者らは、回転速度や粘度を変化させた実験を行い、

トルクと流動構造の関連性を議論した [12]。しか

し、円盤形状はトルクが摩擦抵抗のみに支配され

るため、ギアのように、トルクに対して圧力抵抗

も作用する回転体に駆動される気液二相流にお

けるトルクと流動様式の関連性については、理解

が不十分である。

本研究では、二次元を仮定した空気-オイル二

相流れと流体-剛体間の連成を固定直交格子を

用いて数値的に扱い、気液分布とトルクを予測す

る。気液分布、トルクを実験、解析解と比較し、

数値計算の妥当性を検証する。また、非軸対称形

においても統一的に説明ができる流動様式分類

を提案し、回転速度、回転体、流体物性値がトル

ク、流動様式に与える影響を調査する。

2. 計算手法

2.1 計算モデル

Fig. 1 に計算領域の概略図と座標系、計算領域

と計算格子の関係を模式的に示す。二次元を仮定

した x – y 平面を考える。計算領域は静止壁と回

転速度 Ω で回転する回転体から構成されており、

流体は回転体によって駆動される。回転体初期位

置からの回転角 θ (0 ≤ θ < 2π) を Fig. 1 (a) に示す

ように定義する。回転軸を原点にとり、x 軸を水

Fig. 1 Schematic of (a) analysis domain and (b)

calculation grid.

平方向右向きに、y 軸を鉛直方向上向きにとる。

重力は鉛直下向きに働く。二相状態は、底面から

の初期液高さを h とする。Fig. 2 に本研究で用い

る回転体を示す。回転体の形状効果を調査するた

めに、トルクに対して、(a) 摩擦抵抗が支配的と

なる円盤、(b) 圧力抵抗が支配的となる長板、(c)

摩擦抵抗、圧力抵抗の双方が働くアスタリスク型

の三つの回転体を用いる。

2.2 計算条件の設定

計算格子として二次元直交正方格子を配置す

る。気液両相は非圧縮性ニュートン流体であり、

各相の物性値は一定とする。また、気相-液相間

の相変化はなく、気液は不混和とする。

2.3 支配方程式

計算領域として、Fig. 1 (a) に示すように液相

DL、気相 DG、回転体 Drot、静止壁 Drest から構成

される二次元領域 D を考える。以後、下付き L

は液相、G は気相、R は剛体、rot は回転体、rest

は静止壁である。質量保存式は全領域で成り立つ。

各相に体積率 を定義し、気相の体積率を移流さ

せる Volume Of Fluid 法 [13](以後、VOF 法)、剛

体部分の運動を加味するため Boundary Data

Immersion 法 [14](以後、BDI 法)を適用する。

流体部分の動力学は、密度・粘度の非一様性と表

面張力 [15] の影響を一方程式で記述する

Navier-Stokes 方程式、Gの移流方程式(MTHINC

法 [16])に従う。速度場と圧力場は SMAC 法 [17]

により更新する。また、剛体壁における気液の接

触を考慮し、接触角を 90°とする [10]。トルク T

は、全計算領域におけるエネルギー散逸率 ε の体

積積分を用い次式の様に記述する。

. DdVTΩ (1)

計算スキームの詳細は文献 [10, 11]を参照された

い。

Fig. 2 Schematic of rotating body; (a) disk, (b)

board and (c) asterisk.

混相流 35 巻 1号(2021) 109

Page 2: 混相流 Vol.35 No - JST

特集号論文推薦原稿

* 2020.11.2 受付

** 大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻 〒560-8531 大阪府豊中市待兼山町 1-3

TEL: (06)6850-6167 FAX: (06)6850-6167 E-mail: [email protected]

*** 理化学研究所光量子工学研究センター 〒351-0198 埼玉県和光市広沢 2-1

論 文

回転体に駆動される気液二相流のトルクと流動様式 *

Torque and Flow Pattern of Gas-Liquid Two-Phase Flow Driven by a Rotating Body

木 南 直 之**,*** 渡 村 友 昭**,*** 杉 山 和 靖**,***

KINAMI Naoyuki WATAMURA Tomoaki SUGIYAMA Kazuyasu

Abstract Torque and flow pattern of gas-liquid two-phase flow driven by a rotating body are numerically studied. Two-dimensional direct numerical simulations are performed using a fixed mesh approach based on Volume Of Fluid (VOF) and Boundary Data Immersion (BDI) methods. We investigate the influence of rotational speed Ω, fluid properties, and rotating body shape. The

interplay between the centrifugal and gravitational forces gives rise to transition of the flow pattern with

Ω, that is qualitatively similar for all the body shapes chosen in the present study. The rotational speed of the transition to the annular flow in the non-axisymmetric system is found to be lower than that in the axisymmetric system. The flow structure is classified into four patterns with respect to the torque and the contact ratio of liquid phase at the rigid body interface. The torque and the contact ratio are found to be scaled by the Froude number. Keywords: Numerical simulation, Torque, Volume of fluid, Boundary data immersion

1. 緒 言

トランスミッション内の回転機構は、それらが

接触し、かみ合うことで動力を伝達する。接触や

かみ合いによって生じる摩擦を抑制するために、

機構内は潤滑油-空気系の気液二相状態となる。

潤滑油は攪拌やせん断により動力損失を増加さ

せ、例えば、高速で回転するギア周りでは、潤滑

油が飛散し、動力損失が増加することが知られて

いる [1]。加えて、潤滑油の物性値や攪拌条件に

より、潤滑油が発熱部へ行き届かない場合、機器

の破損に繋がる可能性がある [2]。流体損失低減、

攪拌効率向上、機器の安全保証の三つを同時に実

現するためには、気液の空間分布、すなわち流動

状態の評価が必要となる。本論文が対象とする上

述の系は、回転体と静止壁間の気液二相流であり、

気液界面は大きく変形するため、現象は複雑であ

る。そのため、様々な幾何形状にも対応した数値

計算手法と、統一的な流動状態の評価が必要と言

える。

回転体に駆動される流れの流体抵抗に関する

研究は多数ある。丹らは、液浸されたギアを対象

とし、円筒座標系において生成された格子上で数

値計算を行い、歯車形状が攪拌抵抗の発生メカニ

ズムに与える影響を調査した [3]。また、

Seethraman と Kahraman は、攪拌損失が油の動粘

度に比例することを報告した [4]。しかし、低粘

度の流体を用いた場合の攪拌損失は、高粘度の流

体を用いた場合の攪拌損失と比較して大きくな

ることがある [5]。回転体に駆動される相分布に

着目した研究も多数ある [6–9]。Peixinho らは、

内円筒表面に形成される液膜厚さを実験的に調

査し、液膜厚さがキャピラリ数で整理できること

を示した [6]。著者らは、二次元同軸円筒間を対

象とし、流動様式を分類する統一的な説明方法を

提案した [10]。しかし、対象は軸対称な円盤に限

定され、回転体形状が流動様式に与える影響は調

査されていない。実際のトランスミッション内に

は、ギア等の非軸対称な部品が多用される。工学

的にも実用的な評価法を構築するために、非軸対

称形にも対応した流動様式分類の提案が期待さ

れている。

トルクと流動構造を結び付けた研究として、著

者らは、回転体により駆動される二相流れを対象

とした三次元の数値計算を行い、回転速度に対す

るトルク変化が鈍化し、トルクが一定値で飽和す

る機構を議論した [11]。しかし、トルクの定量評

価に関しては、実験計測と有意な差があり、その

原因については明らかになっていない。また、著

者らは、回転速度や粘度を変化させた実験を行い、

トルクと流動構造の関連性を議論した [12]。しか

し、円盤形状はトルクが摩擦抵抗のみに支配され

るため、ギアのように、トルクに対して圧力抵抗

も作用する回転体に駆動される気液二相流にお

けるトルクと流動様式の関連性については、理解

が不十分である。

本研究では、二次元を仮定した空気-オイル二

相流れと流体-剛体間の連成を固定直交格子を

用いて数値的に扱い、気液分布とトルクを予測す

る。気液分布、トルクを実験、解析解と比較し、

数値計算の妥当性を検証する。また、非軸対称形

においても統一的に説明ができる流動様式分類

を提案し、回転速度、回転体、流体物性値がトル

ク、流動様式に与える影響を調査する。

2. 計算手法

2.1 計算モデル

Fig. 1 に計算領域の概略図と座標系、計算領域

と計算格子の関係を模式的に示す。二次元を仮定

した x – y 平面を考える。計算領域は静止壁と回

転速度 Ω で回転する回転体から構成されており、

流体は回転体によって駆動される。回転体初期位

置からの回転角 θ (0 ≤ θ < 2π) を Fig. 1 (a) に示す

ように定義する。回転軸を原点にとり、x 軸を水

Fig. 1 Schematic of (a) analysis domain and (b)

calculation grid.

平方向右向きに、y 軸を鉛直方向上向きにとる。

重力は鉛直下向きに働く。二相状態は、底面から

の初期液高さを h とする。Fig. 2 に本研究で用い

る回転体を示す。回転体の形状効果を調査するた

めに、トルクに対して、(a) 摩擦抵抗が支配的と

なる円盤、(b) 圧力抵抗が支配的となる長板、(c)

摩擦抵抗、圧力抵抗の双方が働くアスタリスク型

の三つの回転体を用いる。

2.2 計算条件の設定

計算格子として二次元直交正方格子を配置す

る。気液両相は非圧縮性ニュートン流体であり、

各相の物性値は一定とする。また、気相-液相間

の相変化はなく、気液は不混和とする。

2.3 支配方程式

計算領域として、Fig. 1 (a) に示すように液相

DL、気相 DG、回転体 Drot、静止壁 Drest から構成

される二次元領域 D を考える。以後、下付き L

は液相、G は気相、R は剛体、rot は回転体、rest

は静止壁である。質量保存式は全領域で成り立つ。

各相に体積率 を定義し、気相の体積率を移流さ

せる Volume Of Fluid 法 [13](以後、VOF 法)、剛

体部分の運動を加味するため Boundary Data

Immersion 法 [14](以後、BDI 法)を適用する。

流体部分の動力学は、密度・粘度の非一様性と表

面張力 [15] の影響を一方程式で記述する

Navier-Stokes 方程式、Gの移流方程式(MTHINC

法 [16])に従う。速度場と圧力場は SMAC 法 [17]

により更新する。また、剛体壁における気液の接

触を考慮し、接触角を 90°とする [10]。トルク T

は、全計算領域におけるエネルギー散逸率 ε の体

積積分を用い次式の様に記述する。

. DdVTΩ (1)

計算スキームの詳細は文献 [10, 11]を参照された

い。

Fig. 2 Schematic of rotating body; (a) disk, (b)

board and (c) asterisk.

Japanese J. Multiphase Flow Vol. 35 No. 1(2021)110

Page 3: 混相流 Vol.35 No - JST

3. 計算手法の検証

3.1 単相流

実験や解析解より得られるトルクを比較する

ことで数値計算の検証を行う。回転体は円盤とし、

作動流体は高粘度の機械油を想定し、計算条件を

Table 1 に示す値に設定する。実験には、二次元

性を保つことができる十分に長い二重円筒を用

いる。トルクの計測装置は東川ら [12]と同様とし、

円筒側面に働くトルクは計測されたトルクから

機械損失を引くことで評価する。トルクは実験開

始から十分に時間が経過した流れにおけるトル

クを回転体 10 回転分計測し、時間平均した値で

ある。半径方向隙間流れのレイノルズ数 Re を以

下のように定義する。

,

dΩRRe i (2)

ここで、d ( = Ro − Ri) は半径方向隙間、ν は液相動

粘度である。半径方向隙間流れでは、Re が臨界

レイノルズ数 Rec以上になると、テイラー渦が発

生し、トルクが変化するため、トルクは以下の相

関式により決定する [18]。

,1

45.1

11

4

2

75.1

5.1

2

2

c

c

ReReLRe

ReReLRe

T

(3)

ここで、η ( = Ri / Ro) は半径比を表す。η = 0.5 の場

合 Rec ≈ 70、η = 0.8 の場合 Rec ≈ 96 である [19]。

Fig. 3 に単相流における半径方向隙間に働くトル

ク係数 Cf ( = T/(πρΩ2Ri4L)) と Re の関係を示す。実

験による点はアンサンブル平均を、誤差棒はその

標準偏差を示す。なお、計測には動粘度の異なる

複数の作動流体を用いた。図より、数値計算結果

は、臨界レイノルズ数以下(Re ≤ Rec)の場合、

Table 1 Numerical condition used for comparison.

静止壁半径 Ro [mm] 25

回転体半径 Ri [mm] 12.5, 20

回転体長さ L [m] 0.9

液相密度 ρL [kg/m3] 1000

気相密度 ρG [kg/m3] ρL ×10−2

液相粘度 μL [Pa·s] 0.3

気相粘度 μG [Pa·s] μL×10−2

表面張力 γ [mN/m] 20

格子数 Nx, Ny [−] 512

実験、解析解と良好に一致することがわかる。た

だし、臨界レイノルズ数以上(Re > Rec)の場合、

数値計算結果は実験と一致しない。これは、本数

値計算は軸方向の流れを考慮していない二次元

計算であり、テイラー渦が生じないためである。

なお、実験によるトルクは、どの半径比を用いた

場合も解析解と比較してわずかに大きくなる。こ

れは、回転体と静止容器間に存在する両端 1 mm

の軸方向隙間に働くトルクのためである。

3.2 二相流

Fig. 4に η = 0.8における各回転速度と気液分布

の関係を示す。体積充填率は 50 %とする。ここ

で扱う最大の回転速度は Re ≈ 14 に相応する。臨

界レイノルズ数は Rec ≈ 96 であるため、単相時の

流れは二次元的である。図より、本数値計算は概

ね実験の気液分布を捉えられていることが分か

る。Fig. 5 に回転速度とトルクの関係を示す。二

相流の場合、現象の支配的パラメータは様々であ

り、無次元数による統一的な整理が難しい。その

ため、有次元数により整理を行う。図より、Ω <

100 rpm の場合、トルクは実験と定量的に一致す

ることが分かる。これは、数値計算において、系

の気液分布を正確に捉えられているためと考え

られる。また、Ω = 150 rpm 付近でトルクが減少

する機構を、実験と同様に捉えることができてい

る。このトルクの減少は、回転体の駆動により気

泡が巻き込まれるためである。実験の場合 Ω ≈

100 rpm,数値計算の場合 Ω ≈ 125 rpm において気

Fig. 3 Relationship between torque coefficient Cf

and Reynolds number Re for single phase.

Fig. 4 Comparison of interface distribution at various rotational speed Ω ; (a) experiment and (b) simulation.

泡の巻き込みが始まる。流動様式の三次元性と回

転速度依存性を Fig. 6 に示す。実験装置は端部の

影響を少なくするため、軸長 900 mm であるが、

その中央付近を示している。実現象では気泡の形

状は三次元的であるが、本数値計算では二次元的

な形状しか仮定できない。そのため、気泡が発生

する回転速度では実験と数値計算結果に差異が

生じてしまう。また、高回転速度領域となると、

トルクの差は大きくなる。実験の場合、回転速度

の増加に対して、回転体下部に気泡が混入するこ

Fig. 5 Comparison of torque T between simulation

eand experiment at various rotational speed

eΩ.

とで、一度トルクが減少するが、回転速度の増加

と供にトルクは再び増加する。このトルクの増加

は、実験における流動様式が Fig. 6 に示すように

三次元性を伴うことに加え、流動様式の非定常性

に起因すると考えられる。一方、数値計算の場合、

回転速度の増加に対して、一度トルクが減少する

が、回転速度の増加と供にトルクはある一定値で

飽和する。高回転速度の場合、液相が半径方向外

Fig. 6 Right side view of interface distribution at

various rotational speed Ω ; (a) 20 rpm, (b)

125 rpm, (c) 200 rpm and (d) 400 rpm.

混相流 35 巻 1号(2021) 111

Page 4: 混相流 Vol.35 No - JST

3. 計算手法の検証

3.1 単相流

実験や解析解より得られるトルクを比較する

ことで数値計算の検証を行う。回転体は円盤とし、

作動流体は高粘度の機械油を想定し、計算条件を

Table 1 に示す値に設定する。実験には、二次元

性を保つことができる十分に長い二重円筒を用

いる。トルクの計測装置は東川ら [12]と同様とし、

円筒側面に働くトルクは計測されたトルクから

機械損失を引くことで評価する。トルクは実験開

始から十分に時間が経過した流れにおけるトル

クを回転体 10 回転分計測し、時間平均した値で

ある。半径方向隙間流れのレイノルズ数 Re を以

下のように定義する。

,

dΩRRe i (2)

ここで、d ( = Ro − Ri) は半径方向隙間、ν は液相動

粘度である。半径方向隙間流れでは、Re が臨界

レイノルズ数 Rec以上になると、テイラー渦が発

生し、トルクが変化するため、トルクは以下の相

関式により決定する [18]。

,1

45.1

11

4

2

75.1

5.1

2

2

c

c

ReReLRe

ReReLRe

T

(3)

ここで、η ( = Ri / Ro) は半径比を表す。η = 0.5 の場

合 Rec ≈ 70、η = 0.8 の場合 Rec ≈ 96 である [19]。

Fig. 3 に単相流における半径方向隙間に働くトル

ク係数 Cf ( = T/(πρΩ2Ri4L)) と Re の関係を示す。実

験による点はアンサンブル平均を、誤差棒はその

標準偏差を示す。なお、計測には動粘度の異なる

複数の作動流体を用いた。図より、数値計算結果

は、臨界レイノルズ数以下(Re ≤ Rec)の場合、

Table 1 Numerical condition used for comparison.

静止壁半径 Ro [mm] 25

回転体半径 Ri [mm] 12.5, 20

回転体長さ L [m] 0.9

液相密度 ρL [kg/m3] 1000

気相密度 ρG [kg/m3] ρL ×10−2

液相粘度 μL [Pa·s] 0.3

気相粘度 μG [Pa·s] μL×10−2

表面張力 γ [mN/m] 20

格子数 Nx, Ny [−] 512

実験、解析解と良好に一致することがわかる。た

だし、臨界レイノルズ数以上(Re > Rec)の場合、

数値計算結果は実験と一致しない。これは、本数

値計算は軸方向の流れを考慮していない二次元

計算であり、テイラー渦が生じないためである。

なお、実験によるトルクは、どの半径比を用いた

場合も解析解と比較してわずかに大きくなる。こ

れは、回転体と静止容器間に存在する両端 1 mm

の軸方向隙間に働くトルクのためである。

3.2 二相流

Fig. 4に η = 0.8における各回転速度と気液分布

の関係を示す。体積充填率は 50 %とする。ここ

で扱う最大の回転速度は Re ≈ 14 に相応する。臨

界レイノルズ数は Rec ≈ 96 であるため、単相時の

流れは二次元的である。図より、本数値計算は概

ね実験の気液分布を捉えられていることが分か

る。Fig. 5 に回転速度とトルクの関係を示す。二

相流の場合、現象の支配的パラメータは様々であ

り、無次元数による統一的な整理が難しい。その

ため、有次元数により整理を行う。図より、Ω <

100 rpm の場合、トルクは実験と定量的に一致す

ることが分かる。これは、数値計算において、系

の気液分布を正確に捉えられているためと考え

られる。また、Ω = 150 rpm 付近でトルクが減少

する機構を、実験と同様に捉えることができてい

る。このトルクの減少は、回転体の駆動により気

泡が巻き込まれるためである。実験の場合 Ω ≈

100 rpm,数値計算の場合 Ω ≈ 125 rpm において気

Fig. 3 Relationship between torque coefficient Cf

and Reynolds number Re for single phase.

Fig. 4 Comparison of interface distribution at various rotational speed Ω ; (a) experiment and (b) simulation.

泡の巻き込みが始まる。流動様式の三次元性と回

転速度依存性を Fig. 6 に示す。実験装置は端部の

影響を少なくするため、軸長 900 mm であるが、

その中央付近を示している。実現象では気泡の形

状は三次元的であるが、本数値計算では二次元的

な形状しか仮定できない。そのため、気泡が発生

する回転速度では実験と数値計算結果に差異が

生じてしまう。また、高回転速度領域となると、

トルクの差は大きくなる。実験の場合、回転速度

の増加に対して、回転体下部に気泡が混入するこ

Fig. 5 Comparison of torque T between simulation

eand experiment at various rotational speed

eΩ.

とで、一度トルクが減少するが、回転速度の増加

と供にトルクは再び増加する。このトルクの増加

は、実験における流動様式が Fig. 6 に示すように

三次元性を伴うことに加え、流動様式の非定常性

に起因すると考えられる。一方、数値計算の場合、

回転速度の増加に対して、一度トルクが減少する

が、回転速度の増加と供にトルクはある一定値で

飽和する。高回転速度の場合、液相が半径方向外

Fig. 6 Right side view of interface distribution at

various rotational speed Ω ; (a) 20 rpm, (b)

125 rpm, (c) 200 rpm and (d) 400 rpm.

Japanese J. Multiphase Flow Vol. 35 No. 1(2021)112

Page 5: 混相流 Vol.35 No - JST

側に張り付いた状態となり、流動状態は時間変化

しない。本数値計算は実験による流動様式を厳密

に捉えられていないこと、加えて、回転体への液

相の影響が小さいことから、数値計算によるトル

クは実験値と異なり、一定の値で飽和すると考え

られる。しかし、回転速度の増加に対し、二相流

のトルクが単相流のトルクよりも小さくなる機

構 [11]は捉えられており、本数値計算は概ね妥当

であると言える。

4 トルクと流動様式

4.1 回転体形状の影響

各回転体における流動様式とトルクを調査す

るために、回転速度を変化させて計算を行う。計

算条件を Table 2 に示す。形状は、著者らの研究

グループにある実験系と同様とし、作動流体とし

ては機械油を想定する。また、流動構造、トルク

を議論する上で、十分な解像度の計算格子を設定

Fig. 7 Flow pattern at various rotational speed Ω;

(a) disk, (b) board and (c) asterisk.

Table 2 Container size, fluid and bubble properties

and mesh details.

静止壁半径 Ro [mm] 110

回転体半径 Ri [mm] 100

液相密度 ρL [kg/m3] 1000

気相密度 ρG [kg/m3] ρL ×10−1

液相粘度 μL [Pa·s] 0.3

気相粘度 μG [Pa·s] μL×10−1

表面張力 γ [mN/m] 20

格子数 Nx, Ny [−] 256

している。計算を安定に実行する都合上、気相の

密度、粘度は実際よりも大きな値に設定する。た

だし、トルクには有意な差が生じないことを確認

している。初期液面高さは h = 110 mm(体積充填

率 50 %)を対象とした。Fig. 7 に各回転体におい

て、回転速度を変化させた場合の流動様式を示す。

回転角により変化する気液分布を、同じ条件で比

較するため、θ ≈ π/4 とする。図より、回転速度に

対する流動様式変化は、定性的に四つに分類され

る。低回転速度の場合、気液が上下二層に分離し、

その境界面が滑らかな層状流となる。回転速度を

Ω = 40 rpm にすると、回転体が液相を持ち上げ、

気泡が巻き込まれることで、液相中に多数の気泡

が存在した状態となる。この状態を本論文では気

泡流とする。回転速度を Ω = 80 rpm にすると、気

泡が巻き込まれるだけでなく、液滴が半径方向外

側に飛散することで、気液界面が激しく振動し、

気体と液体が混合しあうフロス流となる。さらに

回転速度を Ω = 300 rpm に増加させると、液相が

半径方向外側に張り付いた環状流となる。これら

の定量的な定義は次節で述べる。なお、回転速度

を増加させることで環状流に至る様子は、先行研

究 [10]で調査した小さな半径比の場合には現れ

ない流動様式である。

4.2 流動様式の定義

回転体形状や半径比を変化させて計算を行っ

た結果、気液が上下二層に分離した層状流や、液

相を持ち上げ気泡が巻き込まれる気泡流 [10]だ

けでなく、回転体が気泡を大きく巻きこみ、液滴

が飛散するフロス流や、液相が半径方向外側に張

り付く環状流が観察された。これらの流動様式を

非軸対称形にも適応した形式で、統一的に分類す

るための定量的な指標として、トルク T と以下に

示す静止壁、回転体に接触する液相割合 F を用い

る。

,dSdSF

dSdSF

rotrot

restrest

SGL

SLrot

SGL

SLrest

(4)

ここで、S は静止壁の液相割合 Frestを求める場合

には、静止壁体積率restが 0.01 を超える計算格子

面積、回転体の液相割合 Frot を求める場合には、

回転体体積率rotが 0.01を超える計算格子面積で

ある。Fig. 8 に、各回転体の、回転速度に対する

時間平均トルク T と時間平均液相割合 F を示す。

図より、どの回転体を用いた場合も、回転速度の

増加に対するトルクの傾向は、極大値を一つ持つ

右肩上がりを示すことが分かる。また、トルクに

対して圧力抵抗が働く長板とアスタリスク型の

トルクは、同回転速度における円盤のトルクと比

較して大きくなる。

回転速度に対する F の遷移は各回転体におい

て同様となる。F の遷移から長板の流動様式を分

類した結果を図の点線で示している。流動様式は、

(Ⅰ) 層状流、(Ⅱ) 気泡流、(Ⅲ) フロス流、(Ⅳ) 環

状流に対応する。回転速度に対して低回転速度の

場合、重力が支配的であり、界面変形が少ないた

め、(Ⅰ) Frest、Frotは 0.5 となる。回転速度が増加し、

液相が持ち上がると、回転体は液相により多く接

触するため、(Ⅱ) Frest、Frotは増加する。更に回転

速度を増加させると、気泡が巻き込まれ、液滴が

半径方向外側へ飛散するため、(Ⅲ) Frestは増加し、

Frotは減少する。高回転速度の場合、(Ⅳ) Frest ≈ 1、

Frot は一定の値に収束した環状流となる。本稿で

は Frest > 0.95、時間変動の二乗平均平方根 Frest_RMS

< 10−2の状態を環状流と定義する。また、環状流

に移行する回転速度は円盤と比較して、長板、ア

スタリスク型の方が小さい。これは、液相の駆動

力が関係している。環状流となる回転速度におい

て、液相の周方向平均速度は、長板、アスタリス

Fig. 8 Relationship between (a) torque T versus

rotational speed Ω and (b) Frest and Frot

versus Ω for various rotating bodies.

ク型の場合、回転速度の 0.6 倍であるのに対し、

円盤の場合 0.15 倍である。以上より、トルク T

と剛体に接触する液相割合 F を用いることで、非

軸対称形の場合にも流動様式を分類することが

できる。

4.3 物性値の影響

トルクはどの回転体を用いた場合も、極大値を

一つ持つ右肩上がりの分布となる。ここで、アス

タリスク型を用い、重力加速度 g、液相動粘度 ν

がトルクに与える影響を調査する。なお、本研究

では、実現象の再現よりも、気液分布やトルクと

回転速度の関係を決める力学的機構の解明を重

視しているため、ここでは、非現実的な値となる

ものの、重力加速度をパラメータに選んでいる。

Fig. 9 (a) に、Ω = 60 rpm において重力加速度 g

を変化させた場合の気液分布への影響を示す。図

より、重力により、異なる流動様式が現れること

が分かる。これは、重力の影響により同回転速度

において液相を持ち上げる量が変化するためで

ある。Fig. 9 (b) に、トルクの回転速度依存性に

対する重力の影響を示す。図より、トルクは極大

値を一つ持つ右肩上がりの分布となるが、トルク

の極大値は差異があることが分かる。これは、ト

ルクが液相の流動様式と関係しており、重力を変

Fig. 9 Influence of gravity on (a) interface

distribution at Ω = 60 rpm and (b) torque

T versus rotational speed Ω.

混相流 35 巻 1号(2021) 113

Page 6: 混相流 Vol.35 No - JST

側に張り付いた状態となり、流動状態は時間変化

しない。本数値計算は実験による流動様式を厳密

に捉えられていないこと、加えて、回転体への液

相の影響が小さいことから、数値計算によるトル

クは実験値と異なり、一定の値で飽和すると考え

られる。しかし、回転速度の増加に対し、二相流

のトルクが単相流のトルクよりも小さくなる機

構 [11]は捉えられており、本数値計算は概ね妥当

であると言える。

4 トルクと流動様式

4.1 回転体形状の影響

各回転体における流動様式とトルクを調査す

るために、回転速度を変化させて計算を行う。計

算条件を Table 2 に示す。形状は、著者らの研究

グループにある実験系と同様とし、作動流体とし

ては機械油を想定する。また、流動構造、トルク

を議論する上で、十分な解像度の計算格子を設定

Fig. 7 Flow pattern at various rotational speed Ω;

(a) disk, (b) board and (c) asterisk.

Table 2 Container size, fluid and bubble properties

and mesh details.

静止壁半径 Ro [mm] 110

回転体半径 Ri [mm] 100

液相密度 ρL [kg/m3] 1000

気相密度 ρG [kg/m3] ρL ×10−1

液相粘度 μL [Pa·s] 0.3

気相粘度 μG [Pa·s] μL×10−1

表面張力 γ [mN/m] 20

格子数 Nx, Ny [−] 256

している。計算を安定に実行する都合上、気相の

密度、粘度は実際よりも大きな値に設定する。た

だし、トルクには有意な差が生じないことを確認

している。初期液面高さは h = 110 mm(体積充填

率 50 %)を対象とした。Fig. 7 に各回転体におい

て、回転速度を変化させた場合の流動様式を示す。

回転角により変化する気液分布を、同じ条件で比

較するため、θ ≈ π/4 とする。図より、回転速度に

対する流動様式変化は、定性的に四つに分類され

る。低回転速度の場合、気液が上下二層に分離し、

その境界面が滑らかな層状流となる。回転速度を

Ω = 40 rpm にすると、回転体が液相を持ち上げ、

気泡が巻き込まれることで、液相中に多数の気泡

が存在した状態となる。この状態を本論文では気

泡流とする。回転速度を Ω = 80 rpm にすると、気

泡が巻き込まれるだけでなく、液滴が半径方向外

側に飛散することで、気液界面が激しく振動し、

気体と液体が混合しあうフロス流となる。さらに

回転速度を Ω = 300 rpm に増加させると、液相が

半径方向外側に張り付いた環状流となる。これら

の定量的な定義は次節で述べる。なお、回転速度

を増加させることで環状流に至る様子は、先行研

究 [10]で調査した小さな半径比の場合には現れ

ない流動様式である。

4.2 流動様式の定義

回転体形状や半径比を変化させて計算を行っ

た結果、気液が上下二層に分離した層状流や、液

相を持ち上げ気泡が巻き込まれる気泡流 [10]だ

けでなく、回転体が気泡を大きく巻きこみ、液滴

が飛散するフロス流や、液相が半径方向外側に張

り付く環状流が観察された。これらの流動様式を

非軸対称形にも適応した形式で、統一的に分類す

るための定量的な指標として、トルク T と以下に

示す静止壁、回転体に接触する液相割合 F を用い

る。

,dSdSF

dSdSF

rotrot

restrest

SGL

SLrot

SGL

SLrest

(4)

ここで、S は静止壁の液相割合 Frestを求める場合

には、静止壁体積率restが 0.01 を超える計算格子

面積、回転体の液相割合 Frot を求める場合には、

回転体体積率rotが 0.01を超える計算格子面積で

ある。Fig. 8 に、各回転体の、回転速度に対する

時間平均トルク T と時間平均液相割合 F を示す。

図より、どの回転体を用いた場合も、回転速度の

増加に対するトルクの傾向は、極大値を一つ持つ

右肩上がりを示すことが分かる。また、トルクに

対して圧力抵抗が働く長板とアスタリスク型の

トルクは、同回転速度における円盤のトルクと比

較して大きくなる。

回転速度に対する F の遷移は各回転体におい

て同様となる。F の遷移から長板の流動様式を分

類した結果を図の点線で示している。流動様式は、

(Ⅰ) 層状流、(Ⅱ) 気泡流、(Ⅲ) フロス流、(Ⅳ) 環

状流に対応する。回転速度に対して低回転速度の

場合、重力が支配的であり、界面変形が少ないた

め、(Ⅰ) Frest、Frotは 0.5 となる。回転速度が増加し、

液相が持ち上がると、回転体は液相により多く接

触するため、(Ⅱ) Frest、Frotは増加する。更に回転

速度を増加させると、気泡が巻き込まれ、液滴が

半径方向外側へ飛散するため、(Ⅲ) Frestは増加し、

Frotは減少する。高回転速度の場合、(Ⅳ) Frest ≈ 1、

Frot は一定の値に収束した環状流となる。本稿で

は Frest > 0.95、時間変動の二乗平均平方根 Frest_RMS

< 10−2の状態を環状流と定義する。また、環状流

に移行する回転速度は円盤と比較して、長板、ア

スタリスク型の方が小さい。これは、液相の駆動

力が関係している。環状流となる回転速度におい

て、液相の周方向平均速度は、長板、アスタリス

Fig. 8 Relationship between (a) torque T versus

rotational speed Ω and (b) Frest and Frot

versus Ω for various rotating bodies.

ク型の場合、回転速度の 0.6 倍であるのに対し、

円盤の場合 0.15 倍である。以上より、トルク T

と剛体に接触する液相割合 F を用いることで、非

軸対称形の場合にも流動様式を分類することが

できる。

4.3 物性値の影響

トルクはどの回転体を用いた場合も、極大値を

一つ持つ右肩上がりの分布となる。ここで、アス

タリスク型を用い、重力加速度 g、液相動粘度 ν

がトルクに与える影響を調査する。なお、本研究

では、実現象の再現よりも、気液分布やトルクと

回転速度の関係を決める力学的機構の解明を重

視しているため、ここでは、非現実的な値となる

ものの、重力加速度をパラメータに選んでいる。

Fig. 9 (a) に、Ω = 60 rpm において重力加速度 g

を変化させた場合の気液分布への影響を示す。図

より、重力により、異なる流動様式が現れること

が分かる。これは、重力の影響により同回転速度

において液相を持ち上げる量が変化するためで

ある。Fig. 9 (b) に、トルクの回転速度依存性に

対する重力の影響を示す。図より、トルクは極大

値を一つ持つ右肩上がりの分布となるが、トルク

の極大値は差異があることが分かる。これは、ト

ルクが液相の流動様式と関係しており、重力を変

Fig. 9 Influence of gravity on (a) interface

distribution at Ω = 60 rpm and (b) torque

T versus rotational speed Ω.

Japanese J. Multiphase Flow Vol. 35 No. 1(2021)114

Page 7: 混相流 Vol.35 No - JST

化させた場合、同回転速度における流動様式が異

なるためである。また、流動様式が層状流となる

低回転速度、流動様式が環状流となる高回転速度

の場合、重力の変化に対するトルクの差異は小さ

い。

Fig. 10 (a) に、Ω = 60 rpm において液相動粘度

ν を変化させた場合の界面分布への影響を示す。

図より、動粘度によって流動様式は変化しないこ

とが分かる。Fig. 10 (b) に、トルクの回転速度依

存性に対する動粘度の影響を示す。図より、低回

転速度においては、トルクに差異が生じるが、中

回転速度以降においては、トルクに差異は生じな

いことが分かる。また、トルクが極大値を示す回

転速度は変化しない。これは、アスタリスク型の

場合、トルクが圧力抵抗の影響により決まるため

であり、今回調査した範囲では、液相動粘度がト

ルクに与える影響は小さい。

4.4 無次元数による整理

以上より、回転速度に対するトルク、流動様式

変化は、重力の影響が大きいことが分かる。従っ

て、無次元トルク G (= T / ρν2Ri)、Frest、Frotを、横

軸にフルード数 Fr ( ghΩRi ) [20]を用いて整

理する 。Fig. 11 に結果を示す。計算条件は Table

Fig. 10 Influence of kinematic viscosity on (a)

interface distribution at Ω = 60 rpm and (b)

torque T versus rotational speed Ω.

3 に示す。図より、トルクは極大値を一つ持つ右

肩上がりの分布であり、回転速度に対するトルク

の変化や、Frest、Frotの変化は Fr を用いて整理で

きることが分かる。トルクが極小値を示す Fr は

およそ 1 であり、その前後で Frest、Frotが急崚に

変化する。トルクの変化を Fr により整理した先

行研究 [21]では、トルクが極小値を示す Fr はお

よそ 50 であり、両者の間において、トルクが極

大値や極小値を示す Fr は異なる。これは、系の

幾何学形状が異なるためと考えられる。本数値計

算で用いたアスタリスク型は液相を駆動する力

が大きいため、トルクが極大値、極小値を示す

Fr は先行研究と比較して小さくなる。なお、円

盤、長板に対してもパラメータ調査を行った結果、

トルク、Frest、Frotが Fr で整理できることを確認

していることから、Fr により系内の流動状態が

決定すると言える。また、トルクの Fr による整

理は、三次元形状においても実験、数値計算双方

で成立することを一部確認している。

Fig. 11 Scaled (a) dimensionless torque G versus

dimensionless number Fr, (b) Frest versus

Fr and (c) Frot versus Fr.

Table 3 Various numerical conditions.

Case g

[m/s2]

γ

[mN/m]

ν

[cS]

h

[mm]

1 9.8 20 300 110

2 3.0 20 300 110

3 100 20 300 110

4 9.8 1 300 110

5 9.8 100 300 110

6 9.8 20 50 110

7 9.8 20 100 110

8 9.8 20 300 80

9 9.8 20 300 140

5. 結 言

回転体に駆動される流体を対象とし、回転体形

状、流体物性値が流動様式、トルクに与える影響

を調査するために、二次元直交格子座標系におい

て、VOF 法と BDI 法を用いた直接数値計算を行

った。実験と解析解を用いて、気液分布、トルク

を比較することで、数値計算の妥当性を検証した。

また、回転速度、回転体形状、流体物性値を変化

させ、トルクと流動様式に与える影響を調査した。

その結果以下の知見を得た。

高い半径比の回転体を用いた場合、高回転速度

において、半径方向外側に液相が張り付いた状態

となる環状流が現れる。トルクと回転体、静止壁

に接触する液相割合を用いることで、非軸対称な

形状に対し定量的に流動様式を分類した。その結

果、トルクの回転速度に対する変化は極大値を一

つ持つ右肩上がりとなる。また、非軸対称な形状

を用いた場合、軸対称な形状と同様な流動様式の

遷移が確認できる。また、駆動力が働く形状ほど、

低い回転速度において環状流が現れる。

トルクに対して摩擦抵抗と圧力抵抗の双方が

働くアスタリスク型形状を用いた場合、トルクと

流動様式は回転速度に対し重力の影響を大きく

受ける。これは、トルクが液相を持ち上げる量や

気液分布に関係するためである。また、本研究で

調査した条件の場合、トルク、流動様式の動粘度

依存性は小さく、圧力抵抗の影響によってトルク

が決まることが分かる。以上より、Fr により系

内の流動状態が決定することが分かった。

謝 辞

本論文の計算結果は、理化学研究所情報システ

ム部の HOKUSAI BigWaterfall により得た。本研

究の一部は、2019 年度の自動車用動力伝達技術

研究組合(TRAMI)の委託研究により実施した

ものです。

Nomenclature

d : radial clearance [m]

Re : Reynolds number [-]

T : torque [N·m]

Cf : torque coefficient [-]

h : initial liquid height from the bottom [m]

F : contact ratio of liquid phase [-]

Fr : Froude number [-]

Greek letters

ϕ : volume fraction [-]

η : radius ratio [-]

ν : kinematic viscosity [cS]

Ω : rotational speed [rpm]

γ : surface tension [N/m]

Subscripts

rest : resting part

rot : rotating part

G : gas phase

L : liquid phase

R : rigid phase

参考文献 [1] Arisawa, H., Nishimura, M., Imai, H., Tanaka, K.

and Goi, T., CFD Simulations and Experiments for Reduction of Oil Churning Loss and Windage Loss on Aeroengine Transmission Gears, The Japan Society of Mechanical Engineers, Series C, Vol. 79(800), 317-329 (2013).

[2] Saegusa, D. and Kawai, S., Technique for Prediction of Automotive Transmission Lubrication Performance, Honda R&D Technical Review, Vol. 25(2), 125-130 (2013).

[3] Tan, N., Aoki, T., Inoue, K. and Yoshitani, K., Numerical Simulation of Two-Phase Flow Driven by Rotating Object, The Japan Society of Mechanical Engineers, Series B, Vol. 77(781), 11-26 (2011).

[4] Seetharaman, S. and Kahraman, A., Load-Independent Spin Power Losses of a Spur Gear Pair: Model Formulation, Journal of Tribology, Vol. 131(2), 022201 (2009).

[5] Laruelle, S., Fossier, C., Changenet, C., Ville, F. and Koechlin, S., Experimental Investigations and Analysis on Churning Losses of Splash Lubricated Spiral Bevel Gears, Mechanics and Industry, Vol. 18(4), 412 (2017).

混相流 35 巻 1号(2021) 115

Page 8: 混相流 Vol.35 No - JST

化させた場合、同回転速度における流動様式が異

なるためである。また、流動様式が層状流となる

低回転速度、流動様式が環状流となる高回転速度

の場合、重力の変化に対するトルクの差異は小さ

い。

Fig. 10 (a) に、Ω = 60 rpm において液相動粘度

ν を変化させた場合の界面分布への影響を示す。

図より、動粘度によって流動様式は変化しないこ

とが分かる。Fig. 10 (b) に、トルクの回転速度依

存性に対する動粘度の影響を示す。図より、低回

転速度においては、トルクに差異が生じるが、中

回転速度以降においては、トルクに差異は生じな

いことが分かる。また、トルクが極大値を示す回

転速度は変化しない。これは、アスタリスク型の

場合、トルクが圧力抵抗の影響により決まるため

であり、今回調査した範囲では、液相動粘度がト

ルクに与える影響は小さい。

4.4 無次元数による整理

以上より、回転速度に対するトルク、流動様式

変化は、重力の影響が大きいことが分かる。従っ

て、無次元トルク G (= T / ρν2Ri)、Frest、Frotを、横

軸にフルード数 Fr ( ghΩRi ) [20]を用いて整

理する 。Fig. 11 に結果を示す。計算条件は Table

Fig. 10 Influence of kinematic viscosity on (a)

interface distribution at Ω = 60 rpm and (b)

torque T versus rotational speed Ω.

3 に示す。図より、トルクは極大値を一つ持つ右

肩上がりの分布であり、回転速度に対するトルク

の変化や、Frest、Frotの変化は Fr を用いて整理で

きることが分かる。トルクが極小値を示す Fr は

およそ 1 であり、その前後で Frest、Frotが急崚に

変化する。トルクの変化を Fr により整理した先

行研究 [21]では、トルクが極小値を示す Fr はお

よそ 50 であり、両者の間において、トルクが極

大値や極小値を示す Fr は異なる。これは、系の

幾何学形状が異なるためと考えられる。本数値計

算で用いたアスタリスク型は液相を駆動する力

が大きいため、トルクが極大値、極小値を示す

Fr は先行研究と比較して小さくなる。なお、円

盤、長板に対してもパラメータ調査を行った結果、

トルク、Frest、Frotが Fr で整理できることを確認

していることから、Fr により系内の流動状態が

決定すると言える。また、トルクの Fr による整

理は、三次元形状においても実験、数値計算双方

で成立することを一部確認している。

Fig. 11 Scaled (a) dimensionless torque G versus

dimensionless number Fr, (b) Frest versus

Fr and (c) Frot versus Fr.

Table 3 Various numerical conditions.

Case g

[m/s2]

γ

[mN/m]

ν

[cS]

h

[mm]

1 9.8 20 300 110

2 3.0 20 300 110

3 100 20 300 110

4 9.8 1 300 110

5 9.8 100 300 110

6 9.8 20 50 110

7 9.8 20 100 110

8 9.8 20 300 80

9 9.8 20 300 140

5. 結 言

回転体に駆動される流体を対象とし、回転体形

状、流体物性値が流動様式、トルクに与える影響

を調査するために、二次元直交格子座標系におい

て、VOF 法と BDI 法を用いた直接数値計算を行

った。実験と解析解を用いて、気液分布、トルク

を比較することで、数値計算の妥当性を検証した。

また、回転速度、回転体形状、流体物性値を変化

させ、トルクと流動様式に与える影響を調査した。

その結果以下の知見を得た。

高い半径比の回転体を用いた場合、高回転速度

において、半径方向外側に液相が張り付いた状態

となる環状流が現れる。トルクと回転体、静止壁

に接触する液相割合を用いることで、非軸対称な

形状に対し定量的に流動様式を分類した。その結

果、トルクの回転速度に対する変化は極大値を一

つ持つ右肩上がりとなる。また、非軸対称な形状

を用いた場合、軸対称な形状と同様な流動様式の

遷移が確認できる。また、駆動力が働く形状ほど、

低い回転速度において環状流が現れる。

トルクに対して摩擦抵抗と圧力抵抗の双方が

働くアスタリスク型形状を用いた場合、トルクと

流動様式は回転速度に対し重力の影響を大きく

受ける。これは、トルクが液相を持ち上げる量や

気液分布に関係するためである。また、本研究で

調査した条件の場合、トルク、流動様式の動粘度

依存性は小さく、圧力抵抗の影響によってトルク

が決まることが分かる。以上より、Fr により系

内の流動状態が決定することが分かった。

謝 辞

本論文の計算結果は、理化学研究所情報システ

ム部の HOKUSAI BigWaterfall により得た。本研

究の一部は、2019 年度の自動車用動力伝達技術

研究組合(TRAMI)の委託研究により実施した

ものです。

Nomenclature

d : radial clearance [m]

Re : Reynolds number [-]

T : torque [N·m]

Cf : torque coefficient [-]

h : initial liquid height from the bottom [m]

F : contact ratio of liquid phase [-]

Fr : Froude number [-]

Greek letters

ϕ : volume fraction [-]

η : radius ratio [-]

ν : kinematic viscosity [cS]

Ω : rotational speed [rpm]

γ : surface tension [N/m]

Subscripts

rest : resting part

rot : rotating part

G : gas phase

L : liquid phase

R : rigid phase

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¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾¾ * 2020.11.2 受付 ** 法政大学 生命科学部 環境応用化学科 〒184-8584 東京都小金井市梶野町 3-7-2 TEL: (042) 387-6172 E-mail: [email protected] *** 東京都立大学大学院 理学研究科 物理学専攻

論 文

粉体系および液体系における重力不安定性現象の共通性*

Common Properties of Gravitational Instability in Liquid Systems and Granular Materials

小 林 和 也

**,*** 栗 田 玲

*** KOBAYASHI Kazuya KURITA Rei

Abstract Gravitational instability, which is a typical example of hydrodynamic instabilities, occurs due to density difference. When a heavy fluid lies over a light fluid in a constant gravitational field, fluctuations at the interface gradually increase and then macroscopic flows occur. The gravitational instability can be found not only in liquid-liquid interface but also in the gravitational settling of granular materials. However, the gravitational instability of liquid systems and granular systems have been discussed individually in most cases. We quantitatively find a close relationship of the gravitational instability between the physical gel and granular systems. We also find that those behaviors are determined by the thickness of the fluidization region. Keywords: Gravitational instability, Rayleigh-taylor instability, Physical gel, Granular material

1. 緒 言

粉体とは粒径が数マイクロ〜数ミリ程度の大

きさを持った粒子群を指し、化粧品や塗料、医薬

品といった我々にとって身近な工業的製品に応

用されているだけでなく、地震や液状化現象、粉

塵爆発といった災害等にも関わる大変重要な系

であり、その理学的・工学的重要性から、これま

でに様々な研究が行われている[1–3]。 近年、粉体系と液体系との類似性に関する研究

結果が多く発表されている。例えば、粉体系にお

ける固体−液体転移として知られるジャミング転

移とガラス転移との関係[4, 5]、流体力学的不安定

性現象と粉体系における類似現象の発見[6, 7]、複雑流体のような流動挙動の発見[8, 9]など、近年も

盛んに研究活動が進められ、この関係性が粉体の

ダイナミクスを理解するための糸口になるので

はないかと期待されている。本研究では、粉体系

の重力下における気体や液体への沈降挙動に着

目して、液体系との類似性について検討する。 重力下において軽い流体の上に重たい流体を

層化(密度逆転状態)すると、不安定状態を解消

するために、次第に両者の界面が凹凸になり、上

下方向に流れが生じることで両者が入れ替わる。

このような現象は Rayleigh-Taylor 不安定性また

は重力不安定性現象と呼ばれる。近年、この重力

不安定性現象について、粉体系に関連した興味深

い研究がなされている。例えば、粒子をシリコン

オイル中に懸濁させた溶液と同じシリコンオイ

ルを用いて 2 層状態を実現し、粒子の重力不安定

性現象を調べた研究がある[10, 11]。この研究では、

懸濁させる粒子のサイズと濃度によって、集団的

な不安定化挙動(液体系で見られるパターンに類

混相流 35 巻 1号(2021) 117