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n engl j med 353;13 www.nejm.org september 29, 2005 1374 The writing committee consisted of the following: John H. Beigel, M.D., National Institute of Allergy and Infectious Diseas- es, National Institutes of Health, Bethesda, Md.; Jeremy Farrar, D.Phil., Hospital for Tropical Diseases, Ho Chi Minh City, Viet- nam; Aye Maung Han, M.B., B.S., Depart- ment of Child Health, Institute of Medi- cine, Yangon, Myanmar; Frederick G. Hayden, M.D. (rapporteur), University of Virginia, Charlottesville; Randy Hyer, M.D., World Health Organization, Geneva; Men- no D. de Jong, M.D., Ph.D., Hospital for Tropical Diseases, Ho Chi Minh City, Viet- nam; Sorasak Lochindarat, M.D., Queen Sirikit National Institute of Child Health, Bangkok, Thailand; Nguyen Thi Kim Tien, M.D., Ph.D., Pasteur Institute, Ho Chi Minh City, Vietnam; Nguyen Tran Hien, M.D., Ph.D., National Institute of Hygiene and Epidemiology, Hanoi; Tran Tinh Hien, M.D., Ph.D., Hospital for Tropical Diseas- es, Ho Chi Minh City, Vietnam; Angus Nicoll, M.Sc., Health Protection Agency, London; Sok Touch, M.D., Ministry of Health, Phnom Penh, Cambodia; and Kwok-Yung Yuen, M.D., University of Hong Kong, Hong Kong SAR, China. Ad- dress reprint requests to Dr. Hayden at the Department of Internal Medicine, P.O. Box 800473, University of Virginia Health Sciences Center, Charlottesville, VA 22908, or at [email protected]. N Engl J Med 2005;353:1374-85. Copyright © 2005 Massachusetts Medical Society. Avian Influenza A (H5N1) Infection in Humans The Writing Committee of the World Health Organization (WHO) Consultation on Human Influenza A/H5 強い病原性をもつ,新型の動物間流行性 A H5N1)型トリインフルエンザウイルス avian influenza virus)が,アジアで種を超えてヒトに感染し,多数の死亡者が出て いるため,世界的に大流行する脅威が増大している.本論文ではヒトにおける A H5N1)型インフルエンザ感染症の特徴を述べ,2005 5 10 日~12 日にハノ イで開かれた「A/H5 型ヒトインフルエンザの症例管理および研究に関する世界保 健機関(WHO)会議(WHO Meeting on Case Management and Research on Human Influenza A/H5)」で,一部として発表された予防と治療に関する勧告 1 を概説する. 多くの重大な疑問が未解決の状態であるため,これらの勧告は今後も修正される可 能性がある. 東南アジアにおける A H5N1)型ヒトインフルエンザの発生(表 1)は,A H5N1)型 トリインフルエンザの大規模な発生と並行して起っているが,2004 年と 2005 年の 鳥類での流行が,ヒトに感染して発症した例はごく少数であった.感染例がもっと も多く発生しているのはベトナムで,とくに現在も続いている第 3 波(2004 12 月~)での症例数が多く,インドネシアではヒトで初の死亡例が報告された(2005 7 月).ヒトでの感染頻度はまだ明らかにされていないが,抗体保有率の調査が 早急に必要である.最近は,A H5N1)型トリインフルエンザの感染例がカザフス タン,モンゴル,ロシアでも報告されており,こうした地理的分布の拡大は,より 多くの人口集団がリスクにさらされていることを示している 23 ヒトインフルエンザは,感染性の飛沫や飛沫核の吸入,直接接触,そしておそらく は(媒介物を介しての)間接接触によって,上気道や結膜粘膜にウイルスが自己接 種される 45 .各感染経路間で相対的な感染効率がどの程度異なるのかは明らかに されていない.現時点での A H5N1)型ヒトインフルエンザ感染に関するエビデン スは一貫して,トリからヒトへの感染,環境からヒトへの感染の可能性,そして数 が少なく長期的には確立していないものの,ヒトからヒトへの感染があることを示 している. 動物からヒトへの感染 1997 年,ヒトにおいて,発症 1 週間前に生きた家禽へ接触したことが原因と考え られるトリインフルエンザの感染例が報告されたが,家禽肉製品の摂取や下処理, A H5N1)型インフルエンザ感染者との接触による感染リスクの有意な上昇は認め られなかった 6 .病気の家禽に接触した者や鶏肉解体作業者では,A H5N1)型イン フルエンザ抗体陽性が確認されている 7 (表 2).最近のデータをみると,A H5N1ヒトにおける A H5N1)型トリインフルエンザ感染 感染例の発生 伝播様式 current concepts The new england journal of medicine

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  • n engl j med 353;13 www.nejm.org september 29, 20051374

    The writing committee consisted of thefollowing: John H. Beigel, M.D., NationalInstitute of Allergy and Infectious Diseas-es, National Institutes of Health, Bethesda,Md.; Jeremy Farrar, D.Phil., Hospital forTropical Diseases, Ho Chi Minh City, Viet-nam; Aye Maung Han, M.B., B.S., Depart-ment of Child Health, Institute of Medi-cine, Yangon, Myanmar; Frederick G.Hayden, M.D. (rapporteur), University ofVirginia, Charlottesville; Randy Hyer, M.D.,World Health Organization, Geneva; Men-no D. de Jong, M.D., Ph.D., Hospital forTropical Diseases, Ho Chi Minh City, Viet-nam; Sorasak Lochindarat, M.D., QueenSirikit National Institute of Child Health,Bangkok, Thailand; Nguyen Thi Kim Tien,M.D., Ph.D., Pasteur Institute, Ho ChiMinh City, Vietnam; Nguyen Tran Hien,M.D., Ph.D., National Institute of Hygieneand Epidemiology, Hanoi; Tran Tinh Hien,M.D., Ph.D., Hospital for Tropical Diseas-es, Ho Chi Minh City, Vietnam; AngusNicoll, M.Sc., Health Protection Agency,London; Sok Touch, M.D., Ministry ofHealth, Phnom Penh, Cambodia; andKwok-Yung Yuen, M.D., University ofHong Kong, Hong Kong SAR, China. Ad-dress reprint requests to Dr. Hayden atthe Department of Internal Medicine,P.O. Box 800473, University of VirginiaHealth Sciences Center, Charlottesville, VA22908, or at [email protected].

    N Engl J Med 2005;353:1374-85.Copyright © 2005 Massachusetts Medical Society.

    Avian Influenza A (H5N1) Infection in Humans

    The Writing Committee of the World Health Organization (WHO) Consultation on Human Influenza A/H5

    強い病原性をもつ,新型の動物間流行性 A(H5N1)型トリインフルエンザウイルス(avian influenza virus)が,アジアで種を超えてヒトに感染し,多数の死亡者が出ているため,世界的に大流行する脅威が増大している.本論文ではヒトにおけるA(H5N1)型インフルエンザ感染症の特徴を述べ,2005 年 5 月 10 日~12 日にハノイで開かれた「A/H5 型ヒトインフルエンザの症例管理および研究に関する世界保健機関(WHO)会議(WHO Meeting on Case Management and Research on HumanInfluenza A/H5)」で,一部として発表された予防と治療に関する勧告 1 を概説する.多くの重大な疑問が未解決の状態であるため,これらの勧告は今後も修正される可能性がある.

    東南アジアにおける A(H5N1)型ヒトインフルエンザの発生(表 1)は,A(H5N1)型トリインフルエンザの大規模な発生と並行して起っているが,2004 年と 2005 年の鳥類での流行が,ヒトに感染して発症した例はごく少数であった.感染例がもっとも多く発生しているのはベトナムで,とくに現在も続いている第 3 波(2004 年 12月~)での症例数が多く,インドネシアではヒトで初の死亡例が報告された(2005年 7 月).ヒトでの感染頻度はまだ明らかにされていないが,抗体保有率の調査が早急に必要である.最近は,A(H5N1)型トリインフルエンザの感染例がカザフスタン,モンゴル,ロシアでも報告されており,こうした地理的分布の拡大は,より多くの人口集団がリスクにさらされていることを示している 2,3.

    ヒトインフルエンザは,感染性の飛沫や飛沫核の吸入,直接接触,そしておそらくは(媒介物を介しての)間接接触によって,上気道や結膜粘膜にウイルスが自己接種される 4,5.各感染経路間で相対的な感染効率がどの程度異なるのかは明らかにされていない.現時点での A(H5N1)型ヒトインフルエンザ感染に関するエビデンスは一貫して,トリからヒトへの感染,環境からヒトへの感染の可能性,そして数が少なく長期的には確立していないものの,ヒトからヒトへの感染があることを示している.

    動物からヒトへの感染1997 年,ヒトにおいて,発症 1 週間前に生きた家禽へ接触したことが原因と考えられるトリインフルエンザの感染例が報告されたが,家禽肉製品の摂取や下処理,A(H5N1)型インフルエンザ感染者との接触による感染リスクの有意な上昇は認められなかった 6.病気の家禽に接触した者や鶏肉解体作業者では,A(H5N1)型インフルエンザ抗体陽性が確認されている 7(表 2).最近のデータをみると,A(H5N1)

    ヒトにおける A(H5N1)型トリインフルエンザ感染

    感染例の発生

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    型インフルエンザ感染例のほとんどが病気の家禽と直接接触しているが(表 3),いずれも家禽の大量処理に関わった者ではなかった.感染の原因は,病気の家禽を処理したこと;闘鶏を扱ったこと;家禽,とくに無症状の感染したアヒルと遊んだこと;アヒルの血を飲んだり,加熱調理が不十分だったと考えられる家禽の肉を食べたりしたことなどが考えられている.タイの動

    物園では,感染した鶏の生肉を与えたトラやヒョウなど,ネコ科の動物への感染例も報告されている 17,18.実験条件下では,ペットのネコにも感染することが確認されている 19.また,そうした実験条件下ではネコのあいだでの感染も確認されている.一部の感染は,ウイルスが咽頭や消化管から体内に侵入して起ることが考えられる.

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    ヒトからヒトへの感染A(H5N1)型インフルエンザのヒト-ヒト感染が,いくつかの家族内感染例 16 と,1 例の明らかな母児感染例で示唆されている 20(表 3).原因は予防措置なしでの濃厚接触とされており,これまでのところウイルス粒子を含んだエアロゾルを介したヒト-ヒト感染例は確認されていない.1997年の感染例の調査報告によると,社会的接触ではヒト-ヒト感染は発生しないようであり 8,感染者に接触した医療従事者の血清学的検査でも,感染効率はそれほど高くないことが示されてい

    る 9(表 2).ベトナムとタイの感染例における血清学的調査では,接触者に無症候性の感染が存在するという証拠は見つかっていない(表 2).最近,逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)測定法を用いて,感染患者に接触した者に対する監視を強化した結果,軽症の感染例,感染が高齢者でより多いこと,そして北ベトナムでは家族内での発生数がふえ,流行期間が長くなっていることが確認された 21.このことから,これらの地域ではウイルス株がヒトに適応してきた可能性が示唆される.一方で,これらの結果は疫学

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    的・ウイルス学的研究で確認する必要もある.これまでのデータをみる限り,適切な隔離処置がとられていなくても,医療従事者の院内感染リスクは低い 10,11(表 2).しかし,ベトナムでは,感染者に接触した看護師 1 人で重症感染例が報告されている.

    環境からヒトへの感染A(H5N1)型インフルエンザウイルスの環境中での生存期間を考慮に入れると,理論的にはほかにも何種類かの感染様式が可能である.水泳中にウイルス汚染水を飲んだり,汚染水に接しているさいに鼻腔や結膜の粘膜からウイルスが直接侵入したりする例や,感染媒介物で手が汚染し,その後自己接種するといった例が考えられる.家禽の糞を肥料としてそのまま使う地域も多

    いため,そうした行為もまた危険因子となりうる.

    ヒトにおける A(H5N1)型インフルエンザ感染の臨床像は,入院患者の症例記載を基にしている.比較的軽症の症例,臨床症状のない感染例,非典型的な症例(脳症や胃腸炎など)の頻度は明確にされていないが,症例報告 12,21,22 によると,いずれも発生している.ほとんどの患者は,感染前までは健常であった低年齢の小児や成人である(表 3).

    潜伏期間A(H5N1)型トリインフルエンザの潜伏期間は,ほかのヒトインフルエンザに比べ長いようであ

    臨 床 像

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    る.1997 年の症例では,大部分が感染源との接触から 2~4 日以内に発症している 13.また,最近の報告 15,16 でも同様な潜伏期間が示されているが,最長で 8 日という例もあった(表 3).家族内感染の場合,最初の症例から次の症例が発生するまでの間隔は一般に 2~5 日で,もっとも長い例では 8~17 日と報告されているが,これはおそらく,感染した動物や環境中の感染源に気づかないで曝露していたことが原因と考えられる.

    初期症状患者の多くが,高熱(通常 38℃以上)と下気道症状を伴うインフルエンザ様疾患の症状を初期症状として呈する 1(表 3).上気道症状を呈する症例はまれである.A(H7)型トリインフルエンザウイルス患者 23 と異なり,A(H5N1)型トリインフルエンザウイルス患者には結膜炎がほとんど認められない.一部の患者では,感染早期に下痢,嘔吐,腹痛,胸膜痛,鼻血や歯肉からの出血が報告されている 14 - 16,24.非出血性の水様性下痢や炎症性の変化については,ヒトウイルスによるインフルエンザに比べて頻度が高い傾向にあり 25,呼吸器症状の発現より 1 週間も前にこれらの症状が出現する例もある 12.受診時に脳症と下痢を呈しながら,呼吸器症状の認められない 2 例の患者について記述している報告も 1 件ある 22.

    臨床経過下気道症状は疾患の早期に発現し,ほとんどの場合受診時に認められている(表 3).1 件の症例研究によると,発症から中央値で 5 日(範囲 1~16 日)目に呼吸困難が生じている 15.呼吸窮迫,頻呼吸,呼吸時の異常音がよく認められる.痰の産生にはばらつきがあり,ときに血性である.ほぼすべての患者に臨床的に明らかな肺炎があり,X 線像上でびまん性,多発性,斑状の浸潤や間質性浸潤,エアブロンコグラムを伴う肺区域や肺葉の硬化が認められる.X 線所見の異常は,発熱から中央値で 7 日(範囲 3~17 日)目に現れたと報告している研究が 1 件ある 15.ベトナム・ホーチミン市の症例で入院時にもっとも多かった異常所見としては,肺の 2 葉以上で認められる多発性肺硬化巣があげられる.胸水を伴う症例はまれである.わずかな微生物学的研究データからは,この経過は原発性ウイルス性肺炎に一致しており,入院時に細菌による重感染はほとんど認められないことが示されている.呼吸不全に進行した症例では,びまん性のス

    リガラス様陰影が両肺に認められ,急性窮迫性呼吸症候群(ARDS)の臨床症状を呈している.タイの症例 15 では,発症から ARDS に進行するまでの期間は中央値で 6 日(範囲 4~13 日)と報告されている.腎機能障害を伴う多臓器不全を起す頻度が高く,ときに心拡張や上室性頻脈性不整脈など心臓の異常を伴うこともある 14 - 16,24.その他の合併症として,人工呼吸器関連肺炎,肺出血,気胸,汎血球減少症,Reye 症候群,菌血症の所見のない敗血症候群が報告されている.

    死亡率入院した患者の死亡率は高いが(表 3),患者全体ではそれよりはるかに低いと考えられる 21.1997年の症例群では,死亡例が 13 歳より上の患者に集中していたが,最近報告された A(H5N1)型トリインフルエンザ感染例では,乳幼児や低年齢児の死亡率が高い.タイでは,15 歳未満の患児の死亡率は 89%と報告されている.死亡は発症から平均 9~10 日(範囲 6~30 日)目に発生し 15,16,その大多数が進行性の呼吸不全で死亡している.

    臨床検査所見臨床検査の異常所見としては,とくにリンパ球減少の頻度が高く,軽度~中等度の血小板減少,アミノトランスフェラーゼ値のわずかな上昇が報告されている(表 3).また,著明な高血糖(コルチコステロイドの使用に関連するものと考えられる),クレアチニン値上昇も認められる 16.タイの症例 15 では,入院時の白血球,血小板,そしてとくにリンパ球の数値が低い症例で,死亡リスクが高いことが示されている.

    ウイルス学的診断生存時に下された A(H5N1)型インフルエンザの診断は,ウイルスの分離ないし H5 特異的 RNAの検出,あるいはその両方で確定されている.A型ヒトインフルエンザ感染 26 と異なり,A(H5N1)型トリインフルエンザ感染では鼻腔由来の検体よりも咽頭由来の検体のほうがウイルスの検出される頻度が高く,ウイルス RNA 量も高いことが報告されている.ベトナムでは,発症から咽頭拭い液でウイルス RNA が検出されるまでの期間は 2~15 日(中央値 5.5 日)であった.そして,A(H5N1)型インフルエンザ感染者の発症から 4~8 日後の咽頭拭い液中で測定されたウイルス量は,A(H3N2)型,A(H1N1)型のインフルエンザ感染者に比べて 10 倍以上高かった.それ以前に報告された香港での症例でも,鼻咽頭検体中のウイルス量はヒトインフルエンザのほうが少な

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    いというデータが示されている 27.市販されている抗原迅速検査キットは,RT-PCR 法に比べて A(H5N1)型インフルエンザ感染の検出感度が低い 15.タイでは,培養検査で陽性と判定された A(H5N1)型インフルエンザ患者 11 例のうち,発症から 4~18 日目に抗原迅速検査で陽性を示したのは 4 例(36%)であった.

    治療A(H5N1)型トリインフルエンザで入院した患者は,大多数が入院後 48 時間以内に補助呼吸を要し 15,16,多臓器不全や,ときに血圧低下を起して集中治療を受けている.ほとんどの場合,広域スペクトル抗菌薬を用いた経験的治療に加えて,抗ウイルス薬を単独ないしコルチコステロイドと併用で投与する治療が行われているが(表3),それらの効果について厳密な評価はなされていない.発症後しばらくしてからこれらの治療介入を開始しても全死亡率に明らかな低下は認められないが,抗ウイルス薬療法の早期開始は有効と考えられる 1,15,16.生存例ではオセルタミビル(商品名タミフル)の投与開始から 2~3日以内に,培養可能なウイルスがたいてい消失するが,死亡例では,オセルタミビル療法を早期に開始しても症状が進行し,咽頭のウイルス量が十分低下しなかったことが報告されている.

    ウイルスの特性1997 年の患者から分離された A(H5N1)型トリインフルエンザウイルスの研究から,いくつかのことが解明された.病原性因子としては,非常に開裂しやすく複数の細胞内酵素で活性化されるヘマグルチニン(赤血球凝集素),ウイルス増殖能を高めるポリメラーゼ塩基蛋白 2(polymerasebasic protein 2)の一塩基置換(Glu627Lys)28,29,そして,in vitro でインターフェロンおよび腫瘍壊死因子 a(TNF- a)の阻害に対し抵抗性を増強させ,ブタではウイルスの増殖を持続させる非構造蛋白 1(nonstructural protein 1)の一塩基置換(Asp92Glu)30 がある.この変異はさらに,ウイルスに曝露したヒトマクロファージにおいてサイトカイン,とくに TNF- a の産生を亢進させる 31.1997 年以降に実施された A(H5N1)型インフルエンザに関する研究 32 - 34 は,これらのウイルスが進化を続けていることを示している.具体的には,抗原性 35,36 および内在遺伝子配置(internalgene constellation)の変化;鳥類での宿主範囲の拡大 37,38 およびネコ科動物への感染能 17,18;実

    験的に感染させたマウスとフェレットにおける病原性の増強(全身性感染を引き起す)39,40;環境中での安定性の増大があげられる.系統発生解析からは,Z 遺伝子型が優勢となってきたこと 33,そしてウイルスが進化の過程で大きく 2 つの群に分かれてきたことが示されている.第 1 の群は,カンボジア,ラオス,マレーシア,タイ,ベトナムから分離された群で,第 2の群は,中国,インドネシア,日本,韓国から分離された群である 21.最近,これらとは異なる分離株群が北ベトナムとタイで分離された.その分離株では受容体結合部位付近に多様な変化がみられ,ヘマグルチニンの多塩基開裂部位のアルギニンが 1 つ少なくなっている.しかし,これらの遺伝的・生物学的変化が,ヒトの疫学やビルレンス(病原力)においてどれほど重要であるかは不明である.

    ウイルスの増殖様式A(H5N1)型ヒトインフルエンザ感染例のウイルス学的経過についてはまだ十分解明されておらず,入院患者を対象にした研究ではウイルスの増殖期間が長いことが示されている.1997 年の症例では中央値で 6.5 日間(範囲 1~16 日)にわたって鼻咽頭からウイルスが検出されており,タイの症例では,発症から培養検査で最初に陽性となるまでに,3~16 日と幅がある.鼻咽頭での増殖はヒトインフルエンザよりも少なく 27,下気道での増殖について研究する必要がある.便検体の検査ではほとんど(9 例中 7 例)がウイルスRNA 陽性であったのに対し,尿検体ではすべて陰性であった.感染者では下痢が高頻度に認められ,便検体からは RNA が検出され,さらに 1例では感染性ウイルスが検出されたことから 22,このウイルスが消化管で増殖することが示唆される.1 件の剖検でも,この見解を裏付ける所見が示されている 41.高病原性 A(H5N1)型トリインフルエンザウイ

    ルスでは,ヘマグルチニンの開裂部位に多塩基アミノ酸配列がみられるが,鳥類ではこれが内臓浸潤に関与している.哺乳類では浸潤性の感染例が報告され 28,29,39,40,ヒトでは,血清検体 6例中 6 例が,発症から 4~9 日後にウイルス RNA陽性を示した.1 例の患者の血液,脳脊髄液,便から,感染性ウイルスと RNA が検出されている 22.ウイルスが,なんらかの条件下で便や血液を介して感染するのかどうかは不明である.

    宿主免疫反応ヒトでは感染した家禽との接触機会が拡大して

    病   因

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    いるにもかかわらず,A(H5N1)型インフルエンザの発症頻度が比較的低いのは,このトリウイルスの感染に対する種の壁がかなり高いことを示唆している.家族内での感染の発生は,よくある感染源との接触によるものと考えられるが,宿主の疾患感受性に影響する可能性のある遺伝的要因についても研究する必要がある.疾患の病因には,A(H5N1)型インフルエンザ

    に対する自然免疫応答が関与していると考えられる.1997 年の感染発生時には,個々の患者でインターロイキン-6,TNF- a,インターフェロン- g,水溶性インターロイキン-2 受容体の血中濃度の上昇が観察されており 42,2003 年の患者では,発症から 3~8 日目にケモカインインターフェロン誘導性蛋白 10(chemokines interferon-inducible protein 10),単球化学遊走蛋白 1(monocyte chemoattractant protein 1;MCP-1),そしてインターフェロン- g で誘導されるモノカインの血中濃度が上昇したことが報告されている 27.最近のデータによると,炎症性メディエータ(インターロイキン-6,インターロイキン-8,インターロイキン-1 b,MCP-1)の血漿中濃度は,生存例に比べて死亡例のほうが高く(Simmons Cからの私信),A 型トリインフルエンザ死亡例の血漿中インターフェロン- a の平均濃度は,健常者よりも約 3 倍高かった.このような免疫応答は,多くの患者にみられる敗血症候群,ARDS,多臓器不全に一部関与している可能性がある.生存例では,発症後 10~14 日目に,マイクロ

    中和試験で A(H5N1)型インフルエンザウイルスに対する特異的な液性免疫応答が検出される.これらの反応は,コルチコステロイド療法によって遅延ないし減弱させることができるかもしれない.

    病理学的所見症例数は限られているが,剖検でびまん性肺胞損傷による組織病理学的変化を伴う重度肺損傷 27,41,42 が報告されている.これは,ヒトインフルエンザウイルスによる肺炎に関する他の報告の所見 43 と一致する.組織病理学的変化としては,線維性浸出液と赤血球を伴う肺胞腔の充満,肺硝子膜の形成,うっ血,間質層内へのリンパ球浸潤,そして反応性線維芽細胞の増殖が認められている.II 型肺胞上皮細胞への感染も確認されている 41,42.生前の生検で採取された骨髄検体では,血球貪食を伴う活動性組織球が数例で確認されており,剖検時には,脾臓とリンパ組織でリンパ球の減少と非定型リンパ球の産生が認められている 13,15,27,42.小葉中心性肝硬

    変と急性腎尿細管壊死も,数例で認められている.

    動物で A(H5N1)型インフルエンザ感染がみられる国や地域では,重症急性呼吸器疾患患者全例,とくに家禽接触歴のある患者について A(H5N1)型インフルエンザの可能性を考慮すべきである(表 4).しかしながら,ヒトでの感染例が発生してようやく,家禽での集団発生が確認された事例もいくつかある.初期の臨床症状が非特異的であり,また他の原因による急性呼吸器疾患の発症率がもともと高いことから,症例を早期の段階で見分けるのは容易ではない.そのため,ヒトあるいは動物で A(H5N1)型インフルエンザの活動が確認されている地域では,原因不明の重症疾患(脳症や下痢など)で患者が受診した場合,A(H5N1)型インフルエンザの可能性を念頭におくべきである.検査用検体の種類やウイルス検査法が異なっ

    た場合に,診断精度がどの程度異なるのかはまだ明確にされていない.ヒトインフルエンザ感染と比較して,咽頭から採取した検体のほうが,鼻腔から採取した検体よりも検査の診断精度が高いと考えられる.抗原迅速検査は A 型インフルエンザ感染の診断に役立つことはあるが,A(H5N1)型インフルエンザ感染に対しては陰性適中率が低く,特異度が十分ではない.呼吸器系検体におけるウイルス RNA の検出は,症例の早期発見にもっとも感度の高い方法と考えられるが,その感度は使用するプライマーと測定法によって大きく異なる.A(H5N1)型インフルエンザを臨床検査で確定するには,以下の4つの基準;ウイルス培養検査陽性,PCR 法による A(H5N1)型インフルエンザウイルス RNA の検出,H5 に対するモノクローナル抗体を用いた免疫蛍光検査陽性,一対の血清検体で H5 特異抗体の力価が 4 倍以上上昇 44 のうち,1 つ以上満たしている必要がある.

    入院A(H5N1)型インフルエンザが疑われる患者および診断が確定した患者は,罹患者数が少なく可能な場合には隔離入院させ,臨床的なモニタリングや適切な診断検査,抗ウイルス療法を行うべきである.患者が早期に退院する場合には,患者本人および家族に個人衛生と感染予防対策についての教育を行わなくてはならない(表 5).患者管理の基本は,酸素補給および補助呼吸に

    症例の同定と治療

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    よる支持療法である 1.ネブライザーと高流量式酸素マスクは,重症急性呼吸器症候群(SARS)の院内感染との関連が指摘されているため,空気感染に対する十分な予防措置をとったうえでの使用に限定すべきである.

    抗ウイルス薬A(H5N1)型インフルエンザが疑われる患者には,臨床検査の診断結果が出るまでは,ノイラミニダーゼ阻害薬をすぐに投与すべきである.ノイラミニダーゼ阻害薬の至適用量および至適投与期間ははっきりしていないが,現在承認されているレジメンはおそらく必要最低限のものと考えられる.これらのウイルスは,in vitro でオセルタミビルとザナミビル(商品名リレンザ)に感受性を示す 46,47.オセルタミビルの経口投与 46

    とザナミビルの局所投与は,A(H5N1)型インフルエンザ感染動物モデルで有効である 48,49.マウスを用いた最近の研究では,オセルタミビルの投与により,2004 年に分離された A(H5N1)型インフルエンザウイルス株で 1997 年の分離株と同程度の抗ウイルス作用と生存率を得るには,より高用量で長い期間(8 日)の投与が必要であることが示されている 50.ザナミビル吸入薬の有効性は,ヒトの A(H5N1)型インフルエンザ症例ではまだ検討されていない.治療を早期に実施すればもっとも高い臨床効

    果が得られるであろうが 15,治療はウイルスの増殖が進行している可能性のあるときに行うほうが妥当である.オセルタミビルの経口投与 51,52

    とザナミビル吸入 53 を,現在承認されている用量とその 2 倍の用量とで比較したプラセボ対照試験によると,2 用量とも忍容性に関してはほぼ同等であったが,合併症のない成人のヒトインフルエンザ感染患者では,臨床効果と抗ウイルス作用に一貫した差は認められなかった.早期かつ軽症の A(H5N1)型インフルエンザの治療に対しては,承認されているオセルタミビルの用量(成人は 75 mg,1 日 2 回,5 日間;1 歳未満児は体重で調整した用量とし,体重 15 kg 以下の場合は 30 mg,15 kg 超~23 kg の場合は 45 mg,23 kg 超~40 kg の場合は 60 mg,40 kg 超の場合は 75 mg をそれぞれ 1 日 2 回,5 日間)で十分であるが,重症例の治療には高用量(成人で 150mg,1 日 2 回)ならびに 7~10 日間の投与を検討すべきである.しかし,前向き試験での裏付けが必要とされる.オセルタミビルに対する高度の抗ウイルス薬

    耐性は,N1 ノイラミニダーゼのアミノ酸 1 個の置換(His274Tyr)によって生じる.このような変異株は,オセルタミビルを服用した A(H1N1)型ヒトインフルエンザ感染小児の最大 16%で検出されている 54.最近,この耐性変異株が,オセルタミビルで治療を受けた A(H5N1)型インフルエン

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    ザ感染者数人からも検出されたことは 21,驚くべきことではない.細胞培養系や実験動物では,オセルタミビル耐性 H1N1 変異株は感受性のある親株に比べ感染性は弱いが 55,フェレットでは感染する 56.このような変異株では,ザナミビルに対する感受性は in vitro において十分に維持されており,また,試験中のノイラミニダーゼ阻

    害薬ペラミビル(peramivir)に対しても,感受性は部分的に維持されている 57,58.

    1997 年の集団発生時の分離株と比較して,最近分離された A(H5N1)型インフルエンザウイルス株は,M2 阻害薬のアマンタジンとリマンタジンに高度耐性を示している.したがってこれらの薬剤には,もはや治療で果たす役割はない.

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    治療に向けた臨床研究で関心が寄せられている薬剤には,ザナミビル,ペラミビル,長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害外用薬,リバビリン 59,60,そしておそらく,インターフェロン- a 61 がある.

    免疫調整薬A(H5N1)型インフルエンザ患者の治療ではコルチコステロイドが頻用されているが,その効果は不明である.1997 年にコルチコステロイドを投与された患者 5 例では,ARDS の線維増殖期に治療を受けた 2 例が助かっている.ベトナムで実施された無作為試験では,デキサメタゾンを投与された患者 4 例は全員死亡している.インターフェロン- a は抗ウイルス活性と免疫調節作用の 2 つの作用を有するが,ルーチンな使用を推奨する前に,免疫調整薬による介入について適切な対照群を設定した臨床試験での評価が必要である.

    ワクチン接種ヒト用の A(H5)型インフルエンザワクチンは,現時点では市販されていない.従来の H5 ワクチンは免疫原性が弱く,中和抗体反応を惹起するにはヘマグルチニン抗原を高濃度に含んだワクチンを 2 回接種するか 62,MF59 アジュバントの添加 63 が必要であった.アジュバントを併用した 1997 年 H5 ワクチンの 3 回の接種では,ばらつきはあるものの 2004 年の分離株に交差反応する抗体が誘導された 64.逆遺伝学の解析手法を利用して,最近分離された A(H5)型インフルエンザウイルス株からワクチン用の非病原性ウイルスが短期間で作製されており 65,66,現在数種類の候補ワクチンが試験中である.その 1 つである 2004 年ヒト H5N1 型分離株を用いた不活化ワクチンは,高いヘマグルチニン抗原量において免疫原性を有することが報告されている 67.アルミニウム塩のような,すでに承認されているアジュバントを用いる研究を早急に実施する必要がある.感冒向けの経鼻投与型弱毒生ワクチンも開発中である.これらのワクチンは,低年齢児において単回接種でヒトインフルエンザに予防効果を示す 68.

    院内感染対策インフルエンザウイルスは,院内感染しやすい病原体としてよく知られている 4,5.最新の勧告は,感染が拡大していない状況下での医療従事者および他の染患者への感染を抑制する取り組み,

    ならびに SARS の封じ込めに採用された介入法を基にまとめられたものである 1(表 5).外科用マスクは,多層構造の製品 69 であっても,N-95 マスクに比べれば防御効果はかなり低い.しかし,N-95 マスクを利用できない場合に使用することは可能である.防護措置をとらずに感染源に曝露した可能性のある人には,化学予防としてオセルタミビル(75 mg,1 日 1 回,7~10 日間)の投与が推奨される 70,71.曝露前の化学予防についても,A(H5N1)型インフルエンザウイルス株が高い頻度でヒトからヒトへ感染するという証拠が示された場合や,曝露リスクの可能性が高い場合(エアロゾルを発生させる処置など)に検討すべきである.

    家族内の濃厚接触A(H5N1)型インフルエンザの確定症例に接触した家族には,上述したような曝露後化学予防を行うべきである.ウイルス感染が確認されている患者,あるいは疑われる患者と接触した者に対しては,体温と症状を観察する必要がある(表5).現在のところ,二次感染のリスクは低いようであるが,感染者と最後に接触した日から 1週間は自主的な隔離が望ましい.ヒト-ヒト感染が起りうることを示す証拠が提示された場合には,接触者に対する検疫を強化しなくてはならない.感染者に接触した人や,A(H5N1)型インフルエンザの伝播に関与している可能性のある環境中の感染源(家禽など)に感染防護手段をとらずに曝露した人に対しては,上述したような曝露後化学予防が必要と考えられる.

    インフルエンザウイルスに感染した鳥類が,アジアでヒトに発生している A(H5N1)型インフルエンザの主な感染源である.現時点ではヒトからヒトへの感染はきわめて少ないものの,ヒトを宿主とするように適応したウイルス株がふえていないか,継続的に監視する必要がある.ヒトでの A(H5N1)型トリインフルエンザウイルスによる感染は,多くの点でヒトウイルスのインフルエンザと異なる.たとえば,感染経路,疾患重症度,病因,そしておそらく治療反応性にも違いがみられる.疾患の初期症状がこの疾患に特異的なものではなく,症例の発見が容易ではないため,詳細な接触歴や旅行歴,家禽におけるウイルスの活動性に関する情報が不可欠である.市販の抗原迅速検査キットは感度が低いため,診断の確定には分析機器の整った検査施

    予   防

    結   論

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    設の協力が必要である.A(H5N1)型トリインフルエンザはヒトインフルエンザと異なり,ウイルス量が鼻腔より咽頭で高い可能性が示されているため,咽頭拭い液や下気道から採取した検体の分析が,診断方法としてより感度が高いと考えられる.最近ヒトから分離されたウイルス株は,M2 阻害薬に完全に耐性化しているため,重症症例の治療には経口オセルタミビルの高用量投与が適当と考えられる.A(H5N1)型インフルエンザに関する研究は最近かなりすすんできたものの,ヒトでの疫学,自然史,治療についての

    知識は依然不十分である.A(H5N1)型インフルエンザ感染者の発生国の研究機関と世界各国は,より緊密な連携をとりながら,臨床研究ならびに疫学研究を実施していくことが急務である.

    本稿で示した見解は,必ずしも WHO の見解や会議を支援した他の組織の見解を反映したものではない.本稿の執筆に当り,WHO 会議で協力していただいた米国立アレル

    ギー・感染症研究所(NIAID)と Wellcome Trust;Dr. Klaus Stohr,Dr.Alice Croisier(WHO ジュネーブ本部,世界インフルエンザ計画);WHO専門家委員会の組織および原稿作成に協力していただいた Dr. PeterHorby,Dr. Monica Guardo,ならびに WHO ベトナム事務局の職員;原稿作成に助力していただいた Diane Ramm に謝意を表する.

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