理想の自己を追い求める「私恥」概念に関する基礎的研究...

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KurumeUniversity PsychologicalResearch2015、No.14,7-15 理想の自己を追い求める「私恥」概念に関する基礎的研究 上野素直')・藤本学2) 原著 恥は大きく3つに大別することができる。本研究はその中で,理想自己と現実自己の乗離によって 生じる感情である“私恥”に注目する。研究1では,はじめに,人がどのような点に目を向けて自己 評価しているのかを,自由記述アンケートによって同定した。つぎに,得られた結果を元に,自己評 価傾向を4つの側面から測定する尺度を開発した。この尺度は各側面のポジティブとネガティブの両 極を測定することから,両価的自己評価尺度(ASES)と命名された。さいごに,ASESの内的整合 性と基準関連妥当性を確認した。続いて私恥を感じている人の特性および状態を明らかにするために, 研究2でははじめに,ASESを用いて自己評価の4側面について理想と現実を調査し,それらの差を 求めた。つぎに,これらの高低の組み合わせから,調査参加者を4群に分類した。群間比較の結果, 私恥が高い者は自尊感情,自己効力感,自己愛が低い一方で,自己嫌悪感が高いことが明らかになっ た。 キーワード:私恥,自己評価,理想自己,現実自己 問題と目的 Benedict(1946)の「日本は恥の文化だ」という指 摘以来,“恥(Shame)'’は日本の文化を象徴する感 情とされてきた。Benedictは恥を人前で噸笑される ことから生じる感情と述べている。これに対して,作 田(1967)はこのような恥は“公恥'’とでも呼ぶべき 感情であると反論し,もう1つの恥の形として“私恥” という概念を提唱している。井上(1977)も,恥の意 識の1つとして私恥を挙げている。私恥は理想の自分 と比べて現実の自分が劣位であると認知されたときに 生じる感情と定義されている。すなわち,私恥は理想 自己と現実自己の差によって数量化することができ る。 評価が基準を下回った時に生じる不満を恥じ入りと いう。私恥は評価の対象と基準が自己で完結した自分 自身について恥じ入る感情である。私恥について検討 するためには.評価の対象、すなわち人が自己のどの 1)久留米大学大学院心理学研究科 2)久留米大学文学部心理学科 -7- ような側面について評価を行うのかについても明確に しておく必要がある。 Moretti&Higgins(1990)は,従来の研究が個人 の評価対象を重視していなかったことを指摘した上 で,個人が記述した理想自己と現実自己の特徴の差を 算出するという個性記述的方法を開発している。この 個性記述的方法を用いて検討した結果,私恥は従来の 方法よりも自尊感情との関連が強いことが明らかに なっている。 山本。松井・山成(1982)は,大学生が自己のどの 領域を評価しているのかについて調査している。その 結果,社交,知性,優しさ,容貌,生き方,経済力, 趣味や特技,まじめさへの自己評価が自尊感情に影響 を与えていることを明らかにしている。遠藤(1992)も, より強く「なりたい」と思う自己の側面の方が自尊感 情と強く関連することを明らかにしている。 これらの研究から,現実の自分と理想の自分をどの ように捉えるかの評価基準は人によって異なることは

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Page 1: 理想の自己を追い求める「私恥」概念に関する基礎的研究 ...上野素直')・藤本学2) 妄 約 原著 恥は大きく3つに大別することができる。本研究はその中で,理想自己と現実自己の乗離によって

KurumeUniversityPsychologicalResearch2015、No.14,7-15

理想の自己を追い求める「私恥」概念に関する基礎的研究

上野素直')・藤本学2)

妄 約

原著

恥は大きく3つに大別することができる。本研究はその中で,理想自己と現実自己の乗離によって

生じる感情である“私恥”に注目する。研究1では,はじめに,人がどのような点に目を向けて自己

評価しているのかを,自由記述アンケートによって同定した。つぎに,得られた結果を元に,自己評

価傾向を4つの側面から測定する尺度を開発した。この尺度は各側面のポジティブとネガティブの両

極を測定することから,両価的自己評価尺度(ASES)と命名された。さいごに,ASESの内的整合

性と基準関連妥当性を確認した。続いて私恥を感じている人の特性および状態を明らかにするために,

研究2でははじめに,ASESを用いて自己評価の4側面について理想と現実を調査し,それらの差を

求めた。つぎに,これらの高低の組み合わせから,調査参加者を4群に分類した。群間比較の結果,

私恥が高い者は自尊感情,自己効力感,自己愛が低い一方で,自己嫌悪感が高いことが明らかになっ

た。

キーワード:私恥,自己評価,理想自己,現実自己

問題と目的

Benedict(1946)の「日本は恥の文化だ」という指

摘以来,“恥(Shame)'’は日本の文化を象徴する感

情とされてきた。Benedictは恥を人前で噸笑される

ことから生じる感情と述べている。これに対して,作

田(1967)はこのような恥は“公恥'’とでも呼ぶべき

感情であると反論し,もう1つの恥の形として“私恥”

という概念を提唱している。井上(1977)も,恥の意

識の1つとして私恥を挙げている。私恥は理想の自分

と比べて現実の自分が劣位であると認知されたときに

生じる感情と定義されている。すなわち,私恥は理想

自己と現実自己の差によって数量化することができ

る。

評価が基準を下回った時に生じる不満を恥じ入りと

いう。私恥は評価の対象と基準が自己で完結した自分

自身について恥じ入る感情である。私恥について検討

するためには.評価の対象、すなわち人が自己のどの

1)久留米大学大学院心理学研究科2)久留米大学文学部心理学科

-7-

ような側面について評価を行うのかについても明確に

しておく必要がある。

Moretti&Higgins(1990)は,従来の研究が個人

の評価対象を重視していなかったことを指摘した上

で,個人が記述した理想自己と現実自己の特徴の差を

算出するという個性記述的方法を開発している。この

個性記述的方法を用いて検討した結果,私恥は従来の

方法よりも自尊感情との関連が強いことが明らかに

なっている。

山本。松井・山成(1982)は,大学生が自己のどの

領域を評価しているのかについて調査している。その

結果,社交,知性,優しさ,容貌,生き方,経済力,

趣味や特技,まじめさへの自己評価が自尊感情に影響

を与えていることを明らかにしている。遠藤(1992)も,

より強く「なりたい」と思う自己の側面の方が自尊感

情と強く関連することを明らかにしている。

これらの研究から,現実の自分と理想の自分をどの

ように捉えるかの評価基準は人によって異なることは

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理想の自己を追い求める「私恥」概念に関する基礎的研究

明白である。ただし,遠藤(1992)の研究では,山本

ら(1982)が同定した側面を参考に,大学院生から自

己評価に関する項目を収集し調査を実施するという手

続きを取っており,調査項目を統計的に検討していな

いため,妥当性には疑問が残る。そこで本研究は,多

側面から自己評価を測定できる尺度を開発する必要が

ある。

一般に,理想自己と現実自己に差がある場合は,自

己について否定的な感情が生じる。セルフ・ディスク

レパンシー理論(Higgins,1989)によると,理想自

己と現実自己の不一致は失望や悲しみ,不安感を増大

させる。すなわち,私恥が大きいほど失望や悲しみ,

不安感が増すのである。また,椎野(1966)は大学生

を対象に,自己概念の理想と現実の差と適応との関連

を検討ている。理想自己と現実自己の差が大きい人ほ

ど,抑うつ性,主観性,服従性が高いという結果を得

ている。このように,理想自己と現実自己の差は不適

応的な状態を招くのである。

自己にどのような感情を抱いているかを示す代表的

な指標である自尊感情は,自分をポジティブな存在で

あると認識した際に生じる感情である(遠藤,1992)。

Rosenberg(1965)は,自尊感情の捉え方にはvery

good(とてもよいと思う)とgoodenough(これで

よいと思う)の2種類が存在すると指摘した上で,後

者(goodenough)の観点から尺度を作成している。

そのため,Rosenbergの尺度により測定される自尊

感情は,自己受容に近いものであり,自身をこれでよ

いと思うかという個々人の評価基準に依拠している

と。私恥を感じている人でも,理想に及ばない今の自

分のままでいいと考える人は,自尊感情は低下しない

ことになる。このことは,私恥を経験している人は一

概に不適応な状態ではないことを示唆する。私恥の高

い人がどのような心理状態に侭かれているか明らかに

しなければならない。

以上,本研究は,研究1において人は自己のどのよ

うな側面について評価するのかを測定する尺度を開発

した上で,研究2において私恥を感じている人の特性

と状態を明らかにすることを目的とする。

研究1-1自己評価尺度の作成

目的

研究1-1の目的は,自己の多側面について評価を問

う尺度を開発することである。そのために,はじめに

自由記述アンケートによる予備調査を実施し,人が自

己のどのような側面について評価をしているかについ

-8-

て特定する。つぎに,得られた項目を用いて質問紙調

査を行い,その結果を元に尺度を作成する。

方法

予備調査

調査参加者

大学生71名(男性23名,女性48名)を対象に調査を

行った。平均年齢は20.60歳(SD=1.18)であった。

調査手続き

「あなたは自分のどのような点をどのように評価し

ていますか」という教示を与えた上で,自由記述を求

めた。収集された項目を調査者と研究協力者で整理し

た結果,自己についてのポジティブな評価項目が94項

目と,ネガティブな評価項目が60項目が得られた。

本調査

調査参加者

大学生222名(男82名,女140名)を対象に調査を行っ

た。平均年齢は19.70歳(SD=1.56)であった。

調査手続き

予備調査で得られた154項目について,「人と比べて,

あなたは自分の特徴をどのようにとらえています

か?」という教示を与えた上で,「とてもあてはまる」

から「全くあてはまらない」までの6件法で回答して

もらった。

結果

多側面から自己を評価する尺度にすることを目標

に,最尤法・プロマックス回転による因子分析を行っ

た。はじめにネガティブ項目(N項目)について,“暗

愚",“ネガティブ思考',,“自閉',,“衝動,,の4因子が

得られた。ポジティブ項目(P項目)ににおいて

も4因子が得られた。これらは先のN項目との対応関

係から,‘‘賢明",‘‘ポジティブ思考'',“自制",“社交”

と命名した。

N項目から抽出された因子(N因子)とP項目か

ら抽出された因子(P因子)の内容の対応関係から,

自己評価の対象は4側面あり,各側面がポジティブー

ネガティブの両極によって構成される。すなわち,暗

愚一賢明からなる“知的能力”の側面,ネガティブ思

考一ポジティブ思考からなる“思考傾向',の側面,衝

動一自制からなる“自己統制,,の側面,自閉一社交か

らなる“対人志向”の側面にである。この両極性のた

めに,P因子とN因子が裏表の内容である項目(知

的能力の側面の賢明因子に「理解が早い」と暗愚因子

に「理解が遅い」など)がいくつか確認された。これ

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久留米大学心理学研究第14号2015

らの項目対は同じ質問の繰り返しになるため,N項

目とP項目のうち因子負荷量が小さい方を除外した。

その上で,尺度を使用する際の利便性から,各因子に

おいて因子付加量の上位4項目を採用した。Cron‐

bachのα係数は,社交因子がわずかに.700を下回っ

たものの,8因子に内的一貫性が確認された(Table1,

Table2)。

従来の自己評価尺度は,自己に対するポジティブま

たはネガティブな評価のどちらかを測定するのが一般

的であった。これに対・し,本研究が開発した尺度は,

4つの側面についてポジティブ・ネガティブの両方か

ら自己評価を捉えることができる。そこで,この尺度

を両価的自己評価尺度(AmbivalentSelf-Evaluation

Scale:ASES)と命名した。

TabIelN項目についての因子分析結果

Table2P項目についての因子分析結果

思考傾向

ネガティブ思考

(ポジティブ思考)

知的能力

暗愚

(溌明)

対人志向

自閉

(社交)

自己統制

衝動

(自制)

側面

因子焔

対立因子

知的能力

賢明

(暗愚)

落ち込みやすい

いつまでもひきずる

物事をすぐ悪い方向に考える

考えすぎてしまう

、022

.035

.027

--074

776釦

“皿、⑩

”皿哩挫

123

15

19

25

.859

.707

.707

.689

側而

因子名

対立因子

41頭の回転が遅い

47理解が遅い

81要領が悪い

17鈍感である

,795

.740

.689

.583

-.052

.084

-.lO2

-Ogl

-.024

.091

.148

-.154

皿伽画四

戸』●一

、010

-.119

.039

-096

27初対面の人と仲良くすることができない

35上手に人とコミュニケーションできない

29口数が少ない

73消極的である

”岬却郵

-.020

.072

-.011

-.007

、821

.715

.701

.555

唖幽幽四

句凸

■□』』

叩叫招“

気が短い

自分勝手である

すぐ態度に出る

攻撃的である

、770

.655

.634

-606

唯唖”涯

一&◆●’1

僻岬狸砺

553砧

6531

.071

-.093

-.007

-046

、785

.658

.627

.422

、798 .755α、829 .792

-9-

.719

-.127

.159

.0K16

-055

対人志向

社交

(自閉)

2お0肥

4151

思毒傾向

ポジティブ思考

(ネガティブ思考)

自己統制

自制

(術動)

4穏やかである

22怒りにくい

92おおらかである

24ほかの意見を受け入れられる

α - 7 8 9

論理的である

合理的に考える

冷静である

客観的に物或を考える

、740

、132

-.060

-.161

.044

-.095

.109

.066

-.004

.734

‘671

.610

.466

、807

.737

.641

.586

、05う

-.129

.014

113

楽天的である

きりかえが早い

前向きである

開き直れる

.059

-.044

.“5

-.041

9卯咽4

“畑幻、

吻叩噸四

』●『●ウニ

-.017

.049

.240

--107

152

150

82

120

.694

,720

.675

.519

.462

社交的である

元気のない人に声をかけることができる

よくしゃべる

笑顔を絶やさない

-.023

.117

-.284

.197

6931

3555

1111

句』●■一

.051

.053

-.116

--115

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理想の自己を追い求める「私恥」概念に関する基礎的研究

考察

「自己評価を行う際,自己の相対する性質がうかぶ

時,いずれとも診断しえず自己を一義的に決定づける

ことができない事態がある」と正木(1936)は指摘し

ている。森(1983)はこの指摘を受け,今までの質問

紙では「どちらでもない」に埋もれていた人格の両極

性の測定を試みている。

また,桑原(1986)は人格の二面性を測定する際,

その特’性語自体が「望ましさ」を持っている危険性を

指摘している。人は自己を望ましい存在だと考えるが

ゆえに,単に項目の「望ましさ」に反応してあてはま

ると判定する可能性があるということである。そのた

め,同じ特性を持った望ましくない語を質問紙内に設

定する必要があると指摘している。

4つの側面について,同数のポジティブな項目とネ

ガティブな項目から構成されるASESは,これらの

指摘を克服した尺度である。

研究1-2自己評価尺度の妥当性検証

目的

ASESの各因子が,想定する概念を適切に測定でき

ているかについて検討する。また,ASESは同じ側面

のポジティブな項目とネガティブな項目の両方を高く

評定する両極型の存在を許す。従来の質問紙ではこの

ような回答は想定していないため,自己評価に両価型

が存在するのかについて検討する。

方法

調査参加者

大学生319名(男‘性91名,女性228名)に回答を求め

た。平均年齢は19.40歳(SD=1.44)であった。

調査手続き

調査は質問紙法によって行い,一斉に配布・回収を

行った。

質問紙構成

両価的自己評価尺度(ASES)研究1で開発した

ASESを用いた。この尺度は“賢明'',“暗愚'',“ポジ

ティブ思考",“ネガティブ思考",“自制,',“衝動",“社

交,',“自閉'’の8因子からなる。これらについて各因

子4項目ずつの計32項目について「とてもあてはまる」

から「全くあてはまらない」までの6件法で回答を求

めた。

自己認知に関する質問紙の「自己」の領域外山・

桜井(2001)の自己認知に関する質問紙の中から「自

-10-

己」の領域を用いた。“社交性”に関する5項目,“経

験への開放'性”に関する5項目,“調和性,’に関す

る5項目,“誠実性”に関する5項目,“身体的特徴',

に関する5項目の5因子25項目からなる。これらにつ

いて「とてもあてはまる」から「全くあてはまらない」

までの7件法で回答を求めた。

自尊感情尺度Rosenberg(1965)が作成した尺度

をMimura&Griffiths(2007)が日本語訳したもの

を用いた。“特性的な自尊感情'’に関する10項目につ

いて,「強くそう思う」から「強くそう思わない」ま

での4件法で回答を求めた。

社会的自己制御尺度原田・吉漂・吉田(2008)の

作成した社会的自己制御(SocialSelf-regulation:

SSR)尺度を用いた。“自己主張”に関する13項目,"持

続的対処・根気”に関する7項目,‘‘感情・欲求抑制”

に関する9項目の3因子29項目からなる。これらにつ

いて「よくあてはまる」から「全くあてはまらない」

までの5件法で回答を求めた。

被受容感・被拒絶感尺度杉山・坂本(2006)が作

成した被受容感・被拒絶感尺度を用いた。“被受容感”

に関する8項目,“被拒絶感”に関する8項目の2因

子16項目からなる。これらについて「よくあてはまる」

から「全くあてはまらない」までの5件法で回答を求

めた。

ストレスチェックリスト・ショートフォーム今津・

村上・小林・松野・椎原・石原・城・児玉(2006)が

作成したPublicHealthResearchFoundationスト

レスチェックリスト・ショートフォーム(PHRF)を

用いた。“うっ気分・不全感”に関する6項目,“自律

神経症状”に関する6項目,“疲労・身体反応”に関

する6項目,“不安・不確実感”に関する6項目

の4因子24項目からなる。これらについて「よくある」,

「時々ある」,「ない」の3件法で回答を求めた。

結果

基準関連妥当性の確認

ASES8因子の尺度得:点と関連指標との関係性を確

認するために,相関分析を行った(Table3)。表中の

相関係数はサンプルの多さから,p値が.01以下であっ

た。ASESの8因子が概念的に対応する因子と高い相

関関係にあることが確認された。賢明一暗愚の知的能

力の側面は“経験への開放‘性',との間に,ポジティブ

思考一ネガティブ思考の思考傾向の側面は"自尊感』情”

との間に,自制一衝動の自己統制の側面は“感情・欲

求抑制”との間に,社交一自閉の対人志向の側面は"社

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-.265

-.083

-.185

-375

交性”との間に,それぞれP因子では正の相関関係が,

N因子で負の相関関係が見られた。以上より,ASES

の基準関連妥当性が確認された。

各側面の基準関連妥当性

4側面のP因子とN因子の尺度得点の差である"側

面得点”と関連指標の関係性についても相関分析を

行った(Table4)。その結果,因子別の結果と同様の

傾向が見られた。したがって,対をなすP項目とN項

目は共通の側面について問っていることが確認された。

両価型の確認

ASESの両価型の存在を検討するために,尺度の理

論上の平均値である3.5を基準に,各側面において,P

因子の尺度得点が3.5以上ならばP,3.5未満ならp,

N因子の尺度得点が3.5以上ならN,3.5未満ならnと

した。そして,これらを組み合わせることで調査参加

者を側面ごとに4群に分類した(Table5)。

TabIe3ASESと関連各指標との相関関係

麺峠皿“

知的能力 思考傾向 自己統制 対人志向

.267-.409、430一.467.125-.077.I70一。319自蝉感制

9(3%)7(2%)

贋明暗愚ボジネガ自制術動社交自側

4(1%)

社交性

PI経験への開放性

自己羅知:難身体的特徴

、205

.452

.292

372

.308

-.319

-.458

-.087

-.213

-.293

、442

.372

.323

.053

.361

-.254

-.21C

-.073

.117

-206

、145

.213

.608

‘202

-136

.012

.016

-.370

-.108

,47

、649

.185

.344

.233

今247

15853

価訓錘”墾

再□』■一一一

知的能力思考傾向自己統制対人志向

蝋震熟練、342

.160

」40

-.393

-.090

-.044

975

570

3D2

339

.200

.170

-.416

-.081

-」56

-.267

-.011

--141

.“7

.169

.623

.055

-.194

--590

、333

.566

.221

.352

.373

被受容耀蕊.412

-255

-.306

-276

‘114

.034

-.118

-199

、355

-19s

、243

-J11

-.127

.219

-.172

.269

.460

.150

.107

うっ気分・不全感

ストレス景灘蕊不安・不確実感

,424

.294

‘321

.497

-.336

-.036

-.116

-.098

,404

.154

.145

-139

、010

.156

.042

-.090

.245

.073

.173

.489

久留米大学心理学研究第14号2015

-.169

.017

-.041

-2詞

-11-

、386

--291

pn l8(6%)

、144

-119

、298

-.265

Table4P-Nの側面得点を使用した場合の相関係数

、206

--190

78(24%)

147(46%)

85(27%)

113(35%)

139(44%)

60(19%)

社交性

PI経験への開放性

自己鶴知鯉隙身体的特徴

、394

.329

.222

-.039

.321

、収率、四

■●●●一

うっ気分・不全感

ストレス;鱗欝不安。不確実感

、715

.273

.306

.220

-261

-.421

-.111

-.148

-.135

蝋蒸職瀞、416

.148

-177

-.164

.035

-.097

-.387

、356

.049

.196

-.008

.207

.6R5

-.256

-.018

-.099

-.381

被受容感瀧競

135(42%)

80(25%)

86(27%)

酎腕函

-.395

-.218

-.291

-.499

169(53%)

53(17%)

93(29%)

知的能力思考傾向自己統制対人志向

、430、512.113274自尊感情

Table5自己評価の型分け後人数

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理想の自己を追い求める「私恥」概念に関する基礎的研究

ポジティブ・ネガティブ共に高い評定を行った両価

群は,知的能力の側面で42%,思考傾向の側面で

53%,自己統制の側面で35%,対人志向の側面で24%

と,かなりの割合で存在していた。

考察

ASESの各因子が想定する概念は,既存の尺度の類

似概念と高い正の相関関係が見られた。したがって,

ASESは基準関連妥当性の高い尺度であると考えられ

る。

知的能力の側面と,思考傾向の側面は,ともに“身

体的特徴”や“自己主張”などの指標に対して強い正

の関係性を示した。したがって,知的能力と思考傾向

に対する自己評価は,自己への自信を前提としている

と考えられる。

一方,自己統制の側面は,自己統制に関連した因子

以外では“うっ気分・不全感”に対して,負の相関関

係を示した。これは自己統制の側面が,他の3側面と

は異なる基準で評価されている可能性を示唆してい

る。自己を抑えられず衝動的な人は,自己に対するう

っ気分や不全感を抱きやすいと考えられる。

対人志向の側面は,対人関係に関連した因子以外で

は“不安・不確実感',と負の相関関係を示した。自己

を社交的と捉えている人ほど,良好な心的状態を保っ

ていると考えられる。

ASESを用いた調査の結果によって,人は複数の側

面で自己を両価に捉えていることが明らかになった。

既存の尺度は自己についてポジティブ,またはネガ

ティブの一面的な評定を求めるのが一般的である。し

かしながら,両価型の存在はこのような形式の尺度の

限界を示しているのかもしれない。

一方,無価群はすべての側面で少なかった。この知

見は,人は自身について少なくともポジティブかネガ

ティブかいずれかの評価を下していることを表してい

るということである。

研究2私恥の検証

目的

研究2はASESを用いて,私恥の高い人の個人特

性及び心理状態について検証する。具体的には,理想

自己と現実自己の差である私恥得点と,自尊感情およ

び,自己嫌悪感情との関連’性について検討する。私恥

が大きければ大きいほど自己嫌悪感は高まり,逆に小

さければ小さいほど自尊感情は高まるであろう。

また,他に私恥の生起に関係していると考えられる

-12-

自己効力感および,自己愛との関連性についても検討

する。自己効力感は,個人がある状況において必要な

行動を効果的に遂行できる可能性の認知である(成田・

下仲・中里・川合・佐藤・長田,1995)。私恥におい

ては,理想自己の基準設定や現実自己の高い評価と関

係していると考えられる。前者については,私恥を感

じている人は自己効力感が低下しているであろう。ま

た後者については,青年期における自己愛傾向は,自

分自身への集中と自信や優越感など,自分に対する肯

定的感覚によって特徴づけられている(小塩,1998)。

私恥は理想に現実が及んでいないという否定的な感覚

の結果生じるため,自己愛的な傾向の強い者は私恥を

感じづらいであろう。

方法

調査参加者

大学生137名(男性65名,女性72名)に回答を求めた。

平均年齢は19.32歳(SD=1.30)であった。

調査手続き

質問紙法で一斉配布・回収を行った。

使用尺度

両価的自己評価尺度(ASES)現実自己と理想自

己についてそれぞれ評定を求めた。現実自己について

は「他者と比べて今の自分の特徴をどのようにとらえ

ていますか?」と教示し,理想自己については「今の

自分と比べてこうなりたい理想の自分の特徴はどのよ

うなものですか?」と教示した。ただし,理想の項目

では項目の語尾を「でありたい」に変更した。

自尊感情研究1-2と同じくRosenberg(1965)が

作成した尺度をMimura&Griffiths(2007)が日本

語訳したものを用いた。

自戸蟻悪感尺度水間(1996)が作成した自己嫌悪

感尺度を用いた。“自己嫌悪感”に関する21項目から

なる。これらについて「いつもである」から「全くな

い」までの6件法で回答を求めた。

特性的自己効力感尺度成田ら(1995)の特性自己

効力感尺度を用いた。“特性的な自己効力感”に関す

る23項目からなる。これらについて「そう思う」から

「そう思わない」までの5件法で回答を求めた。

自己愛人格目録(NPl-37)Raskin&Hall(1979)が

作成した自己愛人格目録(NarcissisticPersonality

lnventory;NPI)を小塩(1997,1998)が本邦におい

て分析しなおした自己愛人格目録を用いた。“優越感・

有能感”に関する20項目,“注目・賞賛欲求,,に関す

る8項目,“白戸‘主張性”に関する9項目の3因子37

Page 7: 理想の自己を追い求める「私恥」概念に関する基礎的研究 ...上野素直')・藤本学2) 妄 約 原著 恥は大きく3つに大別することができる。本研究はその中で,理想自己と現実自己の乗離によって

班認函祁皿

LP

LL

Table6各私恥において見られた差

自己嫌悪感特性自己効力感優越感・有能感注目・賞賛欲求自己主張性自尊感情

HHH・H

P陸吟唖吟

6666、b

即即即耳師

私私私私私

体的考制人

全知思統対

L>MH

L>H

L>M,H

L>M,H

L>MH

M<H

n.s、

L,M<H

L<H

nS.

L>M,H

、.s、

、.s、

L>M

L>M,H

久留米大学心理学研究第14号2015

、.s、

L>M

nS.

L>M

nS-

結果

自己評価の各側面について,理想と現実の差を“私

恥得点',とし,4側面の私恥得点を合算したものを“全

体私恥得点”とした。私恥を独立変数とするために,

中央値に1/3SDを加算,および減算した値までを私

恥中群,その範囲よりも上を私恥高群,下を私恥低群

とした。そして,各種指標を従属変数とする1要

因3条件の分散分析を行った。さらに,私恥要因に有

意な主効果が見られた変数についてTukeyのHSD

検定を行った。分析の結果,はじめに全体私恥得点に

ついては,私恥高群は低群に比べ,自尊感情,自己効

力感,優越感・有能感,自己主張性が低く,自己嫌悪

感が高かった。つぎに,側面ごとにみると,側面によっ

て私恥要因の主効果がみられた指標が異なっていた

(Table6)。

考察

全体では,仮説通り私恥が高い人は低い人に比べ,

自尊感情,自己効力感,自己愛が低く,自己嫌悪感が

高いことが明らかになった。

自尊感情は私恥に応じて低下するが,低群と中群の

間に差は見られなかった。自己嫌悪感情も低群と中群

の間にはほぼ差が見られず,中群と高群の間に差が見

られた。これらの知見は,私恥が一定の高さになると

自己に対する負の感情が生起することを示している。

一方,特性自己効力感と,優越感・有能感について

は,低群と中・高群との間に差が見られた。「自分は

できる」,「周囲に比べ自分は優れている」と考える人

は,現実の自己評価が高い反面,理想自己はそれほど

高く設定していないため,理想自己と現実自己間の差

が開かずほとんど私恥を感じていないと考えられる。

自己主張性に対して低群と高群の間に差が見られた

ことから.私恥が高い人は積極的な自己主張が行えな

項目からなる。これらについて「よくあてはまる」か

ら「全くあてはまらない」までの5件法で回答を求め

た。

くないということになる。

個々の側面については,はじめに知的能力の側面で

は全体私恥得点と似た傾向が見受けられたが,知的能

力の側面では理想と現実に差があっても,自己嫌悪感

は高まらなかった点が異なっている。また,知的能力

の側面で私恥を感じていない人は,自己愛的な特性を

持っていた。自己愛傾向が高い人の最大の問題は,無

智なことに無恥であることかもしれない。

つぎに思考傾向の側面では,自己嫌悪感情において,

高群と低・中群の間に顕著な差が見られた。自尊感情

でも同様の傾向が見られたことから,ポジティブ思考

かネガティブ思考かは,自己に対する全体的な肯定一

否定の態度を決定する主要決定因の1つである可能性

が高い。

続いて自己統制の側面では,自己統制に対して私恥

を感じている人は,自己嫌悪感を抱きながらも「自分

はできる」と思っており,さらに自己愛も高いという

アンビバレントな心的状態にあることが明らかになっ

た。

さいごに対人志向の側面では,この側面の私恥が低

ければ低いほど,自己について肯定的な印象を抱いて

いた。これは対人的な側面が,自己についての肯定的

感情と深く関わっていることを示している。

総合考察

ASESの開発を通して,人は自己について多面的,

かつ両価的な評価を行っていることが明らかになっ

た。一定の内的一貫性と基準関連妥当性が確認されて

いる。ASESは,恥じ入り感情を測定する上で有用な

自己評価尺度であるといえる。

このASESを用いた調査によって,私恥は自己に

ついて肯定的な感情を抱いていない人に生起すること

が明らかになった。ただし,自己への単純な卑下から

ではなく,ポジティブな向上心の結果として生じてい

るケースも考えられる。柏木(1983)は,あるべき理

想像を持ち,現実の自己を客観的に見ることから生じ

るズレの増大は.知的成熟のあらわれであり発達の一

-13-

Page 8: 理想の自己を追い求める「私恥」概念に関する基礎的研究 ...上野素直')・藤本学2) 妄 約 原著 恥は大きく3つに大別することができる。本研究はその中で,理想自己と現実自己の乗離によって

理想の自己を追い求める「私恥」概念に関する基礎的研究

段階であると指摘している。

理想と現実との間にギャップがあるからこそ人はそ

れを埋めるために目標を設定し,努力し続けることが

できる。精神的健康や,社会適応において問題のある

感情とされてきた“私恥”も,ポジティブな行動にも

つながる可能性がある。今後はASESを用いて,行

動や心理・社会的状態に対する私恥のポジティブ・ネ

ガティブの両価的な影響について,多面的に検討して

いきたい。

謝辞

論文作成に当たり,多くのご助力をいただいた久留

米大学卒業生の山口貴弘さんにこの場を借りて感謝の

意を申し上げます。

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久留米大学心理学研究第14号2015

PrivateShameResultingfromSelf-evaluation

SuNAoUENo(GraduateScノiooZq/PSyc加Zogy,KurumeUizjuersj妙)

MANABuFuJEvIoTo(Depa7tme"tQ/PSyc加jogy,F〔zcuZ妙Q/Z,肋era”、e,K”umeU>ziUe7郡妙)

Abstract

Shameisdividedintothreecategories、Amongthem,thepresentstudyfocuseson“privateshame",

whichisthefeelingresultingfromthedissociationofanidealselfandarealselflnStudyl,first,what

aspectsofthemselvespeoplepaymoreattentiontoinself-evaluationwasidentifiedthroughasurveyinthe

formoffreedescriptionquestionnaire・Second,basedontheresults,ascalethatmeasuresthetendencyof

self-evaluationfromthefouraspectsofselfwasdeveloped・ThisscalewasnamedAmbivalentSelf-Evaluation

Scale(ASES),sinceitdeterminesboththepositiveandnegativetraitsoneachaspectofself、Finally,

internalconsistencyandcriterion-relatedvalidityofASESwereconfirmedSubsequently,inStudy2,an

idealselfandarealselfofeachaspectofselfwereinvestigatedwithASES,andthedifferencesbetweentheir

averageswerecalculated、Then,theparticipantsweredividedintofourgroupsbythecombinationofhigh

andlowofbothanidealandarealselfineachaspect、Thecomparisonbetweengroupsrevealedthatwhereas

thehighprivateshamegrouphadloweraverageself-esteem,self-efficacy,andnarcissism,theyshowed

higherself-loathingscorethantheothergroups

Keywords:privateshame,self-evaluation,idealself,realself

-15-