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42559 2005 日本血管造影・ IVR 学会「技術教育セミナー」:貞岡俊一 子宮動脈塞栓術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2005 日本血管造影・ IVR 学会総会「技術教育セミナー」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 連載 1 東京慈恵会医科大学 放射線医学教室 貞岡俊一 疫学 子宮筋腫は子宮壁の筋層内に発症し発育方向で分類 されている。基本的には粘膜下(Submucosal myoma) , 筋層内(Intramural myoma) , 漿膜下(Subserosal myoma) に分類されている。組織像は多彩で硝子化, 粘液様変 性, 嚢胞変性, 石灰沈着, 出血, 壊死を伴うとされる。 子宮筋腫は成人女性の 4 人中 1 人に存在していると推測 されている。文献上は原爆被爆者の20%(238/1190) 1) , 妊娠合併女性の1.4%(93/6706) 2) , 子宮摘出術者の 26.9 % 3) と報告されている。また, 25 ~ 44 歳の閉経前 女性 95061 人のコホート調査では 1 年間の発生率は 1000 人あたり 12.8 人といわれており, 25~29歳では4.3人, 30~34歳は9.0人, 35~39歳は14.7人, 40~44歳は 22.5 人と加齢に伴い増加する。また人種間で差が見ら れ, 黒人 37.9 人, スペイン人 14.5 人, 白人 12.5 人でアジ ア人は 10.4 人と頻度は低い 4) 危険因子 子宮筋腫発生の危険因子としてはオッズ比で分娩回 数が 0 回は 1 回以上に対し 2 倍, 閉経前が後に対し 10 倍 5) , 不妊症ありがなしに対し 2 倍 6) と報告されており, 初経 年齢, 初回・最終分娩年齢, 流産, 経口避妊薬投与の有 無には関連はない 6) 症状 症状は月経期間延長や不整出血等の月経異常それに 伴う貧血, 月経困難症等の月経時障害, 下腹部腫瘤感, 下腹部圧迫による頻尿・排尿困難・便秘・下痢等の膀 胱直腸に対する症状, 腰痛, 下肢浮腫, 静脈瘤がある。 また筋腫分娩では急激な下腹部痛を生じる場合がある。 更に妊孕性の問題がある。妊孕性の低下の原因として, 粘膜下・筋層内筋腫では着床障害, 精子輸送障害, 漿膜 下筋腫では卵の pick up 障害が考えられる。実際, 粘膜 下や筋層内などによる子宮内腔の変形での妊娠率低下 の EBM はある。漿膜下筋腫においては不明であるが筋 腫以外に不妊原因がない場合には筋腫核出後に妊娠す る頻度は経験的に高く 7) , 核出術後で 57 %, 開腹で 58 %の妊娠率と報告されている 8) 治療法 子宮筋腫に対する治療法には, 1)経過観察および対 症療法, 2)薬物療法, 3)全摘術や子宮温存の必要性の ある症例に対する筋腫核出術などの手術療法, 4)UAE や凍結療法などの IVR, 5)集束超音波(FUS)などがあ る。この項では多く用いられている薬物療法, 手術療法 と主題である UAE について解説する。 1. 薬物療法 子宮筋腫に対する薬物療法は現在主に, GnRHa (gonadotropin-releasing hormon agonist)が用いられて いる。これは子宮筋腫がエストロゲン依存性腫瘍とい う前提での偽閉経療法であり, 投与後 12 ~ 16 週までに 縮小効果, 月経随伴症状の改善が見られる。しかし, 塩減少や更年期症状の副作用により長期投与は困難で ある。その縮小効果にも個人差があり投与終了後の再 増大もみられる。また GnRHa は下垂体の脱感作を利用 したもので投与初期に一過性ゴナドトロピン上昇 (flare up現象)があるため粘膜下筋腫では多量の出血の 可能性がある。そのため現在 GnRH antagonist の開発が 進められている。その他の薬剤としてテストステロン 誘導体であるダナゾールも使用されている。この使用 により月経は停止する。子宮内膜症合併の症例に有効 で, 造血作用もあり貧血にも有効であるが, 肝機能障害 や血栓形成傾向の副作用がある。また他に漢方薬も使 用されている。 2. 手術療法 a)子宮全摘術 子宮筋腫に対する手術療法として, 最も広く行われて いるのが子宮全摘術である。その術式には, 1)腹式 (TAH : total abdominal hysterectomy) , 2)腟式(TVH : total vaginal hysterectomy) , 3)腹腔鏡下腟式(LAVH : laparoscopy-assisted VH ) , 4)全腹腔鏡下(TLH : total laparoscopic hysterectomy)がある。TAHはTVHや LAVH の適応とならない症例に施行され, LAVH は腹腔 鏡下に主に子宮上部の円靱帯や卵巣固有靱帯や卵管と 卵巣動静脈の切断, 膀胱腹膜の切開剥離後, TVH を行う 術式である。全摘により当然再発リスクや月経症状は 全くなくなるが, 重大な合併症は 3 %, 軽度の合併症は 14 %, 死亡率は 0.1 ~ 0.2 %といわれている。また妊娠 希望の若年者には行ないにくい。 b)筋腫核出術 術式には, 1)開腹下, 2)腹腔鏡下(TLM : total laparo- scopic myomectomy) , 3)腹腔鏡補助下(LAM : laparo- scopy-assisted myomectomy) , 4)経腟的 TCR(trans-

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(425)59

2005日本血管造影・IVR学会「技術教育セミナー」:貞岡俊一

子宮動脈塞栓術

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2005日本血管造影・IVR学会総会「技術教育セミナー」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・連載 1

東京慈恵会医科大学 放射線医学教室

貞岡俊一

疫学

子宮筋腫は子宮壁の筋層内に発症し発育方向で分類されている。基本的には粘膜下(Submucosal myoma),筋層内(Intramural myoma), 漿膜下(Subserosal myoma)に分類されている。組織像は多彩で硝子化, 粘液様変性, 嚢胞変性, 石灰沈着, 出血, 壊死を伴うとされる。子宮筋腫は成人女性の4人中1人に存在していると推測されている。文献上は原爆被爆者の20%(238/1190)1),妊娠合併女性の1.4%(93/6706)2), 子宮摘出術者の26.9%3)と報告されている。また, 25~44歳の閉経前女性95061人のコホート調査では1年間の発生率は1000人あたり12.8人といわれており, 25~29歳では4.3人,30~34歳は9.0人, 35~39歳は14.7人, 40~44歳は22.5人と加齢に伴い増加する。また人種間で差が見られ, 黒人37.9人, スペイン人14.5人, 白人12.5人でアジア人は10.4人と頻度は低い4)。

危険因子

子宮筋腫発生の危険因子としてはオッズ比で分娩回数が0回は1回以上に対し2倍, 閉経前が後に対し10倍5),不妊症ありがなしに対し2倍6)と報告されており, 初経年齢, 初回・最終分娩年齢, 流産, 経口避妊薬投与の有無には関連はない6)。

症状

症状は月経期間延長や不整出血等の月経異常それに伴う貧血, 月経困難症等の月経時障害, 下腹部腫瘤感,下腹部圧迫による頻尿・排尿困難・便秘・下痢等の膀胱直腸に対する症状, 腰痛, 下肢浮腫, 静脈瘤がある。また筋腫分娩では急激な下腹部痛を生じる場合がある。更に妊孕性の問題がある。妊孕性の低下の原因として,粘膜下・筋層内筋腫では着床障害, 精子輸送障害, 漿膜下筋腫では卵のpick up障害が考えられる。実際, 粘膜下や筋層内などによる子宮内腔の変形での妊娠率低下のEBMはある。漿膜下筋腫においては不明であるが筋腫以外に不妊原因がない場合には筋腫核出後に妊娠する頻度は経験的に高く 7), 核出術後で 57 %, 開腹で58%の妊娠率と報告されている8)。

治療法

子宮筋腫に対する治療法には, 1)経過観察および対

症療法, 2)薬物療法, 3)全摘術や子宮温存の必要性のある症例に対する筋腫核出術などの手術療法, 4)UAEや凍結療法などのIVR, 5)集束超音波(FUS)などがある。この項では多く用いられている薬物療法, 手術療法と主題であるUAEについて解説する。1. 薬物療法

子宮筋腫に対する薬物療法は現在主に, GnRHa(gonadotropin-releasing hormon agonist)が用いられている。これは子宮筋腫がエストロゲン依存性腫瘍という前提での偽閉経療法であり, 投与後12~16週までに縮小効果, 月経随伴症状の改善が見られる。しかし, 骨塩減少や更年期症状の副作用により長期投与は困難である。その縮小効果にも個人差があり投与終了後の再増大もみられる。またGnRHaは下垂体の脱感作を利用したもので投与初期に一過性ゴナドトロピン上昇

(flare up現象)があるため粘膜下筋腫では多量の出血の可能性がある。そのため現在GnRH antagonistの開発が進められている。その他の薬剤としてテストステロン誘導体であるダナゾールも使用されている。この使用により月経は停止する。子宮内膜症合併の症例に有効で, 造血作用もあり貧血にも有効であるが, 肝機能障害や血栓形成傾向の副作用がある。また他に漢方薬も使用されている。2. 手術療法a)子宮全摘術

子宮筋腫に対する手術療法として, 最も広く行われているのが子宮全摘術である。その術式には, 1)腹式

(TAH : total abdominal hysterectomy), 2)腟式(TVH :total vaginal hysterectomy), 3)腹腔鏡下腟式(LAVH :laparoscopy-assisted VH ), 4)全腹腔鏡下(TLH : totallaparoscopic hysterectomy)がある。TAHはTVHやLAVHの適応とならない症例に施行され, LAVHは腹腔鏡下に主に子宮上部の円靱帯や卵巣固有靱帯や卵管と卵巣動静脈の切断, 膀胱腹膜の切開剥離後, TVHを行う術式である。全摘により当然再発リスクや月経症状は全くなくなるが, 重大な合併症は3%, 軽度の合併症は14%, 死亡率は0.1~0.2%といわれている。また妊娠希望の若年者には行ないにくい。b)筋腫核出術

術式には, 1)開腹下, 2)腹腔鏡下(TLM : total laparo-scopic myomectomy), 3)腹腔鏡補助下(LAM : laparo-scopy-assisted myomectomy), 4)経腟的TCR(trans-

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cervical resectoscopy), 5)子宮鏡下がある。手術適応としては粘膜下筋腫, 過多月経による強度の貧血や圧迫症状等の臨床症状を呈するもの, 多発性筋腫, 妊孕性温存希望者が挙げられる。その術式選択には多少の議論はあるが, 主に筋腫分娩・粘膜下筋腫・子宮内腔に突出する筋層内筋腫は経腟的アプローチで, 筋腫分娩は直視下子宮筋腫捻除術, 有茎性の粘膜下筋腫・子宮内腔に突出する筋層内筋腫は軟性鏡観察後に子宮筋腫捻除術, 広基性の粘膜下筋腫・子宮内腔に突出する筋層内筋腫ではTCRによる子宮筋腫摘出術, 漿膜下筋腫・筋層内筋腫では経腹的アプローチ, 頸部筋腫・多発性筋腫・巨大筋腫・癒着例等腹腔鏡手術困難例は腹式子宮筋腫核出術が施行され, 上記以外は腹腔鏡を筋腫核出や回収筋層縫合まで全過程で使用するTLMまたは主要な過程は用手的に行うLAMが施行される。腹腔鏡下筋腫核出術の適応としてはTLMは直径8~10b程度, 数は2個以下程度で, 筋層の修復に高度の技術が必要で出血量や時間が制限因子で部位や深さは因子とならないとされ,LAMは筋腫直径合計20b, 最大径15b, 筋腫核数5個程度。尚, 変性筋腫は10b以下といわれている9)。

筋腫核出術は全摘に比べ手技が様々で全体的な予後ははっきりしていない。しかし文献上, 全体で81%に月経関連や腫瘤関連の症状改善が得られる。しかし, 20~25%においては出血, 手術時間, 疼痛, 入院期間の増加が全摘より多く, 追加治療が必要とされ, 再発の頻度は4~47%と様々で3年3%, 5年10%, 10年で27%などと報告されている。また腹腔鏡下手術が開腹に変更になる割合は2~8%といわれている。全摘では術後癒着が最も問題で98%ともいわれ妊孕性, 骨盤痛, 子宮外妊娠, 腸閉塞の原因となりうるが, 腹腔鏡下では41.3%である。妊娠子宮破裂の報告はあるがその頻度ははっきりしない。3. 子宮筋腫塞栓療法(UAE : Uterine artery embolizationtheraphy)UAEは骨盤外傷や出産後等の婦人科的な骨盤出血に

対する塞栓術が基本となっている。1994~5年Ravinaらが初めて報告し以後10,000例以上のUAEが全世界で行われている10, 11)。UAEの目的は子宮の永久的な傷害を避けながら筋腫に対し回復不能な虚血性傷害を生じさせるように子宮動脈の閉塞もしくは動脈レベルでの血流の著明な低下を目標として塞栓物質を両側の子宮動脈に入れることである12)。尚, CIRSE guidelineでは

口語体との理由でfibroidは用いていない12)。①UAEの禁忌

絶対禁忌は妊娠中, 活動性骨盤内感染症, 悪性腫瘍の可能性の場合, IVRの相対禁忌のCoagulopathy, Severecontrast material allergy や renal impairmentなどの造影剤及び血管撮影の相対禁忌症例, immnunocompromise,previous pelvic irradiation or surgery, chronic endometritisなどの骨盤塞栓術の相対禁忌が挙げられる12)。

相対禁忌の一つにはGnRHaの同時使用で子宮動脈狭小化及び塞栓効果も不十分のため8週以上あけるとされる。また径の細い有茎漿膜下筋腫も禁忌とされるが12),2b以上は適応ではないかとの報告もある13)。他には積極的な挙児希望が挙げられる。尚, UAE後の妊娠については自然流産が一般妊娠 10 ~ 15 %に対し 32 %

(11/34), 早産が5~10%に対し22%(5/23), 帝王切開が22%に対し63%(15/23), 胎盤異常が5%に対し22%

(5/23), 産褥出血が4~6%に対し9%(2/23)と異常妊娠が一般妊娠に対して高いが, 低体重児は10%に対して9%(2/22)と差はなかったと報告されている14)(表1)。②適応

UAEの適応は筋腫による不正出血や過多月経・過長月経による貧血, 腹部腫瘤感・頻尿等の腹部圧迫症状が存在する場合, 手術の非適応や禁忌, 手術拒否の場合,薬物治療が無効な場合が挙げられる12)。③効果

UAEの効果についてはSIRでは両側子宮動脈塞栓の手技的成功率96%, 予測される腫瘍縮小率50~60%,子宮縮小率40~50%, 腫瘤感の低減88~92%, 不正出血の消失90%以上, 症状の消失率85%を許容限界としており, 大抵の場合は目立った容積の縮小は数週から始まり3~12週にわたって続くとされている12)。④合併症

合併症とその発生率は一過性の無月経5~10%, 永久無月経は45歳未満で0~3%, 45歳以上で7~14%, 筋腫分娩0~3%, 非感染性子宮内膜炎1~2%, 子宮内膜や子宮感染1~2%, 深部静脈血栓症と肺塞栓症, 子宮梗塞, 標的外塞栓は1%以下と報告されている12)。⑤他治療との比較

UAEと子宮全摘についての比較では全摘術が12ヵ月後の骨盤痛が少なかった1)以外はUAEの方が合併症は少なく15), 入院期間が短く16), 大きな合併症がなかった16)

と報告されている。

自然流産 早産 帝王切開 SFD児 胎位異常 産辱出血筋腫UAE 32% 22% 63% 9% 22% 9%

11/34 5/23 15/23 2/22 5/23 2/23筋腫以外UAE 22% 28% 58% 7% 17% 13%

11/49 9/32 18/31 2/29 5/29 4/31一般妊娠 10~15% 5~10% 22% 10% 5% 4~6%

*文献14より改変

表1 UAEと妊娠

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一方, 核出術との比較はUAEのほうが高齢で行われ,以前に外科的処置が行なわれていることが多い17)こと,核出術は妊孕性を得る目的で行われるものが多くその目的がやや異なることから比較が困難であり, 核出術の手技もさまざまであり比較は現実的には不可能である。報告として, UAEは追加の治療が必要であった(29%vs 3%)17), 追加治療の必要でなかった例での症状改善率や患者満足度はUAEがやや高いが有意でない17), 妊娠に対してUAEはオッズ比で早産6.1, 胎位異常4.3と高い18)などがされている。

骨盤の血管解剖

子宮動脈(図1)は内腸骨動脈の臓側枝として前外側に分岐するが, 分岐には変異が多く, 左右でも異なることが多い。その走行は特有であり, 膀胱動脈と走行が類似する場合があるため注意が必要である。膀胱動脈や閉鎖動脈と共通幹や近接分岐の時は閉鎖動脈が最前方で上下膀胱動脈, 子宮動脈の順に分岐することが多い。UAEのための子宮動脈分岐の分類も報告されている20)

(図2)。子宮動脈以外に最も問題となる動脈は卵巣動脈

図1 子宮の血管解剖

図2 子宮動脈の分岐形式

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であり, その分岐は第2~3腰椎の高さの場合が多く,腎動脈と下腸間膜動脈の間で分岐する。腎動脈からの分岐が6~12%にあるがその際は右が多いといわれている。また文献的に卵巣は卵巣動脈のみからの栄養が40%, 子宮動脈卵巣枝のみから4%, 両側からが56%といわれている21)。

UAEにおいて子宮動脈の塞栓により卵巣枝まで塞栓されたと思われる卵巣機能不全になる症例があること,UAEで症状改善が得られない症例の一部に卵巣動脈の関与があることから卵巣動脈・子宮動脈交通が問題となる。子宮動脈と卵巣動脈との吻合について分類した文献も報告されている22)が, しかしどのような解剖学的変異に生じるか, どのような塞栓物質が良いか, どのような塞栓が妥当か, 卵巣動脈の塞栓は必要かなどについてはまだcontroversialである。

【文献】1)Kawamura S, Kasagi F, Kodama K, et al : Prevalence

of uterine myoma detected by ultrasound examina-tion in the atomic bomb survivors. Radiat Res 147 :753 - 758, 1997.

2)Rice JP, Kay HH, Mahony BS : The clinical signifi-cance of uterine leiomyomas in pregnancy. Am Jobstet Gynecol 160 : 1212 - 1216, 1989.

3)Pokras R, Hufnagel VG : Hysterectomy in the UnitedStates, 1965 - 84. Am J Public Health 78 : 852 - 854,1988.

4)Marshall LM, Spiegelman D, Barbieri RL, et al :Variation in the incidence of uterine leiomyomaamong premenoposal woman by age and race.Obstet Gynecol 90 : 967 - 972, 1997.

5)Parazzini F, Negri E, La Vecchia C, et al : Reproduc-tive factors and risk of uterine fibroids. Epidemiology7 : 440 - 442, 1996.

6)Parazzini F, La Vecchia C, Negri E. et al : Epidemio-logic characteristics of women with uterine fibroids :a case control study. Obstet Gynecol 72 : 853 - 857,1988.

7)Hart R, Khalaf Y, Yeong CT, et al : A prspective con-trolled study of the effect of intramural uterinefibroids on the outcome of assisted conception. HumReprid, 16 : 2411 - 2417, 2001.

8) Dubussion JB, Chapron C, Fauconnier A, et al :Laparoscopic myomectomy fertility results. Ann N YAcad Sci 943 : 269 - 275, 2001.

9)明楽重夫, 西 弥生, 竹下俊行:腹腔鏡下筋腫摘出術の適応と限界 産婦人科の実際 53 : 1595 - 1601,2004.

10)Ravina JH, Merland JJ, Herbreteau D, et al : Emboli-sation pre-operatoire des fibromes uterins. PressMed 23 : 154, 1994.

11)Ravina JH, Herbreteau D, Ciraru-Vigneron N, et al :Arterial embolisation to treat uterine myomata.Lancet 346 : 671 - 672, 1995.

12)Hovsepian DM, Siskin GP, Bonn J, et al : QualityImprovement Guidelines for Uterine Artery Emboliza-tion for Symptomatic Leiomyomata. Cardiovasc Inter-vent Radiol 27 : 307 - 313, 2004.

13)Katsumori T, Akazawa K, Mihara T : Uterine arteryembolization for pedunculated subserosak fibroids.AJR Am J Roentgenol 184 : 399 - 402, 2005.

14)Goldberg J : Pregnancy After Uterine ArteryEmbolization. Obstet & Gynecol 100 : 869 - 872, 2002.

15)Spies JB, Cooper JM, Worthington-Kirsch R, et al :Outcome of uterine embolization and hysterectomyfor leiomyomas : Results of a multicenter study. Am JObstet Gynecol 191 : 22 - 31, 2004.

16)Pinto I, Chimeno P, Romo A P, et al : Uterine fibroids :Uterine artery embolization versus abdominal hysterec-tomy for treatment? A prospective, randomized, andcontrolled clinical trial. Radiology 226 : 425 - 431, 2003.

17)Border MS, Goodwin S, Chen G, et al : Comparison oflong term outcomes of myomectomy and uterine arteryembolization. Ostet Gynecol 100 : 864 - 868, 2002.

18)Gordburg J, Pereira L, Berghella V, et al : Pregnan-cy outcomes after treatment for fibromyomata : Uter-ine artery embolization versus laparoscopic myomec-tomy. Am J Obstet Gynecol 191 : 18 - 21, 2004.

19)平松京一編:腹部血管のX線解剖図譜. 医学書院,東京, p224, 1996.

20)Gomez-Jorge J, Keyoung A, Levy EB, et al : UterineArtery Anatomy Relevant to Uterine LeiomyomataEmbolization. Cardiovasc Inrevent Radiol 26 : 522 -527, 2003.

21)田口鐵男監修: 臨床医に必要な動脈分岐様式. 癌と化学療法社, 東京, p58 - 59, 1988.

22)Razavi MK, Wolanske KA, Hwang GL, et al : Angio-graphic Classification of Ovarian Artery-to-UterineArtery Anastomoses : Initial Observations in UterineFibroid Embolization. Radiology 224 : 707 - 712, 2002.