kj法のw型問題解決モデルとu理論、それぞれの問題意識
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KJ法のW型問題解決モデルとU理論、それぞれの問題意識
2015-05-11
西尾泰和
この講演の目的
U理論についての理解を促す。
そのために、川喜田二郎がKJ法を考案するベースとなったW型問題解決モデルと
オットー・シャーマーがU理論で語ったU字曲線のモデルとを比較することで
複数の視点を得て多面的な理解を促す。
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この講演の流れ
• 自己紹介
• 「同じ」と「似ている」の違い
• サイクル型モデルと非サイクル型モデル
• W型モデルとU曲線モデルの違い
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自己紹介
西尾泰和(にしおひろかず)
グループウェアのサイボウズ* の
研究部門サイボウズ・ラボ** 在籍
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* あらゆるチームのチームワークを支援する企業でありたい http://cybozu.co.jp/team/
** ミッション: 次世代の製品・サービスの基盤となる技術を中長期視点で研究開発
著書(1/2)
プログラミング言語を「言語設計者は、なぜ、どういう問題を解決したくてこう設計したのか」という視点から解説する
複数の言語の設計判断を比較することで多面的な理解を促す
5
中国語版、韓国語版も発売中
著書(2/2)
単語の意味をベクトルとして扱う機械学習の手法
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実験結果
オライリー・ジャパンの電子書籍300冊を学習し似たカテゴリの単語が近いベクトルに写像された
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京大サマーデザインスクール
去年、一昨年、KJ法のワークショップを開催
100枚以上の付箋から未知の構造を発見するスパルタなアプローチ
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講義資料
http://nhiro.org/kuds2013/
http://nhiro.org/kuds2014/
「続・エンジニアの学び方」連載9
http://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m000927.html
この資料の流れ
• 自己紹介
• 「同じ」と「似ている」の違い
• サイクル型モデルと非サイクル型モデル
• W型モデルとU曲線モデルの違い
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「同じ」と「似ている」の違い
A=B
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「同じ」と「似ている」の違い12
「同じ」と「似ている」の違い13
「同じ」と「似ている」の違い14
この資料の流れ
• 自己紹介
• 「同じ」と「似ている」の違い
• サイクル型モデルと非サイクル型モデル
• W型モデルとU曲線モデルの違い
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サイクル型モデル
• PDCAサイクル
• 実験科学の仮説検証サイクル
• リーンスタートアップ
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PDCAサイクル17
仮説 実験
仮説の修正
実験科学の仮説検証サイクル18
PDCAサイクルと科学的手法
Mass Production
Specification Production Inspection
Scientific Method
Hypothesis Experiment Test of Hypothesis
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Statistical Method from the Viewpoint of Quality Control
Walter Andrew Shewhart, William Edwards Deming (1986)
リーンスタートアップ20
「実践リーンスタートアップ」 p.13 「構築-計測-学習のループ」
リーンスタートアップ
「顧客が存在する」という仮説の検証がスタートアップにとって最優先の課題
仮説の検証を低コスト・高速に行うためにMinimum Viable Productを作る。(最小限の、検証が実行可能な、製品)
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Eric Ries ”The Lean Startup” (2011)
リーンスタートアップ22
「実践リーンスタートアップ」 p.13 「構築-計測-学習のループ」
=仮説
MVPを
サイクル型の問題点
サイクルにどうやって入るのか?
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どうやって入るのか?
川喜田二郎「実験科学の前に野外科学が必要だ」
野中郁次郎「PDCAの前にSが必要だ」*
O・シャーマー「Uの谷をくぐる必要がある」
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* SECIモデルのSocialization=共同化
この資料の流れ
• 自己紹介
• 「同じ」と「似ている」の違い
• サイクル型モデルと非サイクル型モデル
• W型モデルとU曲線モデルの違い
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W型問題解決モデル26
川喜田二郎「発想法」p.22
川喜田二郎の問題意識
実験科学は繰り返し実験できることが前提だが…
”経営学のコンサルタントがある企業、職場を研究する。その職場は、そこだけにしかない”*
繰り返せないものを研究する手法が必要である
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*川喜田二郎(1967)『発想法:創造性開発のために』p.13
野外科学
繰り返せないものを研究する手法= フィールドサイエンス= 場の科学 = 現場の科学= 野外科学
28
W型問題解決モデル29
川喜田二郎「発想法」p.22
P
D
C
W型問題解決の方法=KJ法
1: データ集め、ラベル作り
2: ボトムアップでグループ編成
3: 別のフォーマットへ変換
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川喜田二郎 “「知」の探検学” p.18
データ集め、ラベルづくり
探検・観察:自分の脳内や書籍からの情報収集フィールドワークでの情報収集
収集した情報をラベル(カード)にする
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判断せずにまず書く
「関係ある/ない」の判断の前にまずは書く
“問題に「関係のある」情報だけを集めたのではいけない…「関係のありそうな」情報までを含めねばならない。”*
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* 川喜田二郎(1967)『発想法:創造性開発のために』p.32
書いたものを広げる
人間の作業記憶は7個程度
100個のデータを頭の中で操作するのは困難
書いて机に広げれば限界を超えられる
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ボトムアップのグループ編成
小チームから
大チームへ
34
“発想法” p.77
ボトムアップのグループ編成
データをまとめる際に「分類」をしてはいけない
“大分けから小分けにもっていくのはまったく邪道である。かならず小分けから大分けに進まなければならない”
“できあいのワクの中に…はめこんでいるにすぎないのである。これでは KJ法の発想的意義はまったく死んでしまう。”
35
川喜田二郎(1967)『発想法:創造性開発のために』p76,78
発想集めたデータの中から未知の関係性・構造を見出すこと
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それを繰り返すことで発想が育っていく
“発想法” p.107
W型問題解決モデル37
川喜田二郎「発想法」p.22
U曲線モデル38
オットー・シャーマー“U理論”の図を西尾が再構成
O・シャーマーの問題意識
過去に起こったことから学ぶのでは過去の延長線上のことしかできないのでは?
複雑に絡み合った問題に対して、従来の科学の要素還元的アプローチはうまくいかないでは?
どうすれば複雑な問題の抜本的解決「変革」を起こすことができるか?
39
U曲線モデル40
PDCA
PDCA
PDCA
4つのステップ/意識状態41
4つのステップ/意識状態42
4つのステップ/意識状態43
4つのステップ/意識状態44
共通点
「繰り返せる」や「要素還元ができる」を前提とした考え方に対する懸念
「判断の保留」の重視
「未知のもの」を作り出すことの重視
45
違い:目的
KJ法の目的は「未知の構造を発見すること」→目的は理解や知識、学び
U理論も学びを重視はしているが、それは目的ではなく社会を良くするための手段
46
違い:「方法論」に対する態度
川喜田二郎は「W型問題解決モデル」ではなくその具体的な実践法「KJ法」の普及に注力した
O・シャーマーは具体的な方法論より実践者の意識状態モデルに重点を置いている。
行動の源にフォーカスすることが大事と主張
47
“U理論” p.38
西尾の解釈
人間組織は機械のようにチューニングできない。問題志向のアプローチ自体が問題を生む。
感情が原因。自衛のための反発。改善への抵抗。
モチベーションによって生産性が大違い。モチベーションを高めるには、具体的にどうすればよいのか?
48
4つのステップ/意識状態49
違い:組織に関する態度
複数人からなる組織に関して:
KJ法は「ボトムアップのグループ編成は複数人での知識創造でも同じだろう」という考え
野中郁次郎のS-PDCAモデルは暗黙知の共有のために共同作業のフェーズを設ける
U理論の「ソーシャルフィールド」の概念は独特
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4つのステップ/意識状態51
まとめ
「同じ」と考えること=ダウンローディング
違いに注目することが重要
サイクル型モデル:サイクルにどう入るのか?
非サイクル型モデル:W型問題解決モデルとU曲線モデル
違い:目的、方法論、組織
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質疑応答53