takotsubo ⼼筋症cardiomyopathy 神経疾患に続発 する 筋症 今回は「たこつぼ...
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Takotsubo⼼筋症
2016/10/18荻原薫
<左室造影所⾒>2012/10/09
ICU勉強会より
このような左室の形態が、⽇本の伝統的なたこ捕獲⽤のツボに似ていることから、「たこつぼ⼼筋症」と呼ばれるようになった
たこつぼ⼼筋症とは…
冠動脈疾患を認めない⼀時的な⼼筋障害がストレス下で⾼頻度に発症左室⼼尖部に無収縮領域が認められ、左室機能不全となる
収縮期にも⼼尖部がほとんど収縮していない
HISTORY(歴史)
1990年 ⽇本で報告多枝 spasmにより特異な左室造影像「ツボ型」を⽰した stunnedmyocardium佐藤光、⽴⽯博信、内⽥俊明、⼟⼿慶五、⽯原正治
臨床からみた⼼筋障害 1990;56-64
< 3例の症例報告>
1991年 英語論⽂を発表Myocardialstunningduetosimultaneousmultivessel
coronaryspasms:areviewof5casesDoteK,SatoH,Tateishi H,UchidaT,IshiharaM.
JCardiol.1991;21:203-214
< 5例の症例報告>
初期のたこつぼ⼼筋症の定義では、頭部外傷、頭蓋内出⾎、褐⾊細胞腫は除外項⽬としていた
2003年〜
脳死患者やくも膜下出⾎後などの神経疾患患者で同様の症状を報告Circulation.2003;108:e158;authorreplye158
たこつぼ⼼筋症と神経障害患者における⼼筋症が同⼀の疾患である可能性が⾔われ始めた
JNeurosurg.2006;105:264-270
AnnInternMed.2004;141:858-865
⾔葉の定義
Stress-InducedCardiomypathyTakotsubo Cardiomyopathy (広義)
TransientLeftVentricularDysfunctionSyndromeApicalBallooningSyndromeBrokenHeartSyndrome
Takotsubo Cardiomyopathy(狭義)
神経疾患患者を除外
NeurogenicStunnedCardiomyopathy
神経疾患に続発する⼼筋症
今回は「たこつぼ⼼筋症(広義)」で統⼀
EPIDEMIOLOGY(疫学)
患者の⼤多数(80-90%)は⼥性で、特に閉経後の⼥性に多いNEJM2015;373:929-938
AnnInternMed2004;141:858-865
約70%の患者は精神的、もしくは⾁体的ストレス環境下にあるJAMA2011;306:277-286
重度の神経障害がある患者では発症頻度が⾼いStroke2004;35:548-551
Chest2005;128:296-302
⽬的:ICU⼊室患者におけるたこつぼ⼼筋症の特徴を調査
⽅法:単施設、前向き観察研究2003年3⽉〜5⽉ICU⼊室した⼼疾患既往のない患者の⼼機能をエコーで評価(⼊室3,7⽇⽬)
結果:N=92
たこつぼ⼼筋症⇒ EF<50%で⼼基部を除く左室にHypokinesisまたはAkinesis(+)
重症患者における疫学
<結果>26/92⼈(28%)にたこつぼ⼼筋症を認めた敗⾎症患者、⼊院時に低⾎圧を認めた患者で有意に多い
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
⽬的:たこつぼ⼼筋症の特徴について調査
⽅法:後ろ向き観察研究Systematicreview
MEDLINE(1980-2005/8)EMBASE(1980-2005/8)
結果:14⽂献が該当(患者総数:286⼈)
EuropeanHeartJournal2006;27:1523-1529
胸痛185/273⼈ (67.8%)95%CI:62.0-73.0%Range:20-94.7%
呼吸苦40/225⼈ (17.8%)95%CI:13.3-23.3%Range:4.5-55.5%
⼼原性ショック(4.2%)95%CI:2.4-7.4%
VF(1.5%)95%CI:0.65-3.9%
他、失神胸痛、呼吸苦が主な症状
⽬的:たこつぼ⼼筋症の特徴と予後について検討
⽅法:多施設、後ろ向き観察研究1998年〜2014年InternationalTakotsubo Registryのデータを検討(ヨーロッパ、アメリカの26施設が参加)
結果:N=1750
NEJM2015;373:929-938
ACSと⽐較し呼吸苦の訴えが多かった
たこつぼ心筋症 ACS Pvalue
TotalCohortN=1750
Matched CohortN=455
MatchedCohortN=455
胸痛 1229(75.9%) 322(73.5%) 361 (89.6%) <0.001
呼吸苦 760(46.9%) 208 (47.4%) 128(35.3%) 0.001
失神 124(7.7%) 31(7.1%) 34(7.8%) 0.68
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
ST上昇・低下、陰性T波、QTc延⻑など、幅広い⼼電図異常がみられるたこつぼ⼼筋症に特異的な所⾒はない
EuropeanHeartJournal2006;27:1523-1529
⽬的:急性期⼼電図所⾒でたこつぼ⼼筋症と急性前壁梗塞の鑑別ができないかを検討
⽅法:単施設、後ろ向き観察研究発症6時間以内の⼼電図を⽐較
結果:N=375(たこつぼ 33⼈,急性前壁梗塞 342⼈)
J AmColl Cardiol 2010;55:2514-2516
たこつぼ⼼筋症??急性前壁梗塞??
急性前壁梗塞
たこつぼ⼼筋症
たこつぼ⼼筋症??急性前壁梗塞??
*:p<0.05 **:p<0.01 vs急性前壁梗塞
たこつぼ⼼筋症と急性前壁梗塞ではST上昇の分布が異なる
急性前壁梗塞
たこつぼ⼼筋症
感度 特異度 正の予測率 負の予測率
異常Q波(-) 42%* 74%* 14%* 93%*下壁誘導のST低下(-) 94% 49%* 15%* 99%
aVRのST低下 97% 75%* 27%* 99%
V1のST上昇(-) 94% 71%* 24%* 99%aVRのST低下V1のST上昇(-) 91% 96% 67% 99%
はp<0.01vsaVRのST低下かつV1のST上昇
たこつぼ⼼筋症の⼼電図異常
① 異常Q波を認めない例が⾼率(42%vs26%,p=0.048)② 下壁誘導のST低下を認めない例が⾼率(94%vs51%,p<0.001)③ 最⼤QTc間隔は延⻑(567+81vs489+61ms,p<0.001)④ 最⼤ST上昇度は軽度(5+5vs7+3mm,p<0.001)⑤ ST上昇を認める誘導数が多い(8+2vs6+2,p=0.001)
*
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
Systematicreview• たこつぼ⼼筋症の特徴について調査
多くの症例で、CK-MBもしくはトロポニンの上昇が認められる
EuropeanHeartJournal2006;27:1523-1529
AmericanJournalofCardiology2004;94:343-346
⇒トロポニン、CK-MBとも初期にピークを迎えることが多い
⽬的:たこつぼ⼼筋症の臨床的特徴を調査急性期の⼼臓カテーテルにおけるTIMIframecountを調査
⽅法:Mayo Clinicたこつぼ⼼筋症を発症した患者2002年1⽉〜2003年3⽉N=16
⽬的:SAH患者において、cardiacTroponinI(cTnI)、CK-MBの上昇が⼼筋障害を予測できるか検討
⽅法:単施設、前向き観察研究1998年4⽉〜1999年4⽉
結果:N=39
JAmColl Cardiol 2000;36:21328-1335
cTnIに関して• 8/39⼈でcTnIが上昇• EF中央値
cTnI正常群:72%cTnI上昇群:53% (P=0.02)
⇒有意差あり
cTnI上昇群cTnI正常群CK-MB上昇群CK-MB正常群
CK-MBに関して• 4/39⼈でCK-MBが上昇• EFの中央値
CK-MB正常群/上昇群⇒有意差なし
< cTnI/CK-MB正常群/上昇群におけるEFの差>
⽬的:SAH患者において、トロポニンのピーク値からたこつぼ⼼筋症と⼼筋梗塞の鑑別ができるか検討
⽅法:単施設、後ろ向き観察研究1995-2000年
結果:N=350
JNeurosurg 2003;98:524-528
• 10/350⼈がたこつぼ⼼筋症と診断• ⼼筋梗塞患者と⽐較して…1)CK-MB:有意差なし(たこ 18.11±4.85ng/ml[10patients];MIcontrol>7.5ng/ml)2)cTn:有意差あり(たこ 0.22±0.25ng/ml[7patients];MIcontrol,>2.8ng/ml)3)その他明らかな相関なし
cTnの数値は鑑別の補助となりうる
⽬的:SAH患者において、たこつぼ⼼筋症の予測因⼦を調査
⽅法:単施設、前向き観察研究2000年1⽉〜2002年3⽉
結果:N=223
Stroke 2004;35:548-551
• SAH発症からの⽇数とトロポニンIの数値の関係
• 発症⽇時が経過する程、トロポニンI値は低下する
• HuntHessScoreとトロポニン上昇の割合
• HuntHessScoreが⾼い程、トロポニンIの上昇割合は⾼くなる
トロポニンIは初期値がピーク
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
• 左室造影
AnnalsofInternalMedicine2004;141:858-865
収縮期 拡張期
• Apical(81.7%)
• Midventricular(14.6%)
• Basal(2.2%)
• Focal(1.5%)
NEJM2015;373:929-938
収縮期 拡張期
<亜型の存在>
Systematicreview• たこつぼ⼼筋症の特徴について調査
• CAGでは冠動脈に異常所⾒がない場合が多い
EuropeanHeartJournal2006;27:1523-1529
AmericanJournalofCardiology2004;94:343-346
⽬的:たこつぼ⼼筋症の臨床的特徴を調査急性期の⼼臓カテーテルにおけるTIMIframecountを調査
⽅法:単施設、前向き観察研究2002年1⽉〜2003年3⽉
結果:N=16
TIMIframecountとは…造影開始から冠動脈末梢まで造影されるのに要するフレーム数⾎流速を表し、数値が⼤きい程⾎流速度が遅い(正常値:15〜30)
たこつぼ患者において、TIMI framecountが30以上に上昇している割合冠動脈1枝:100%
2枝:約80%3枝:約60%
TIMIframecountたこつぼ患者とControl群との⽐較
⇓
冠動脈3枝どこにおいても有意に上昇
たこつぼ⼼筋症が微⼩⾎管障害によるものである可能性を⽰唆
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
たこつぼ⼼筋症の器質的基礎疾患
これらの基礎疾患でたこつぼ⼼筋症の合併が報告されている
• くも膜下出⾎• てんかん• ギランバレー症候群• 急性脊髄炎• 脳腫瘍• 可逆性後頭葉⽩質脳症• 硬膜外⾎腫• 外傷性脳損傷(TBI)• 脳炎• ⽔頭症• 悪性症候群• 脳梗塞
神経疾患
• 褐⾊細胞腫• 敗⾎症• 甲状腺中毒• 肝移植後• 糖尿病性ケトアシドーシス• ⿇薬離脱症状• 破傷⾵
その他疾患
CongestHeartFail2011;17:127-132SAfr MedJ1974;48:1285-1289Int JCardiol 2009;133:272-275QJM2014;107:301-302Eur HeartJAcuteCardiovascularCare2013;2:81-87
HeartVessels2013;28:255-263SAfr MedJ1974;48:1285-1289AmHeartJ1969;78:145-148Thyroid2014;24:383-389TransplantProc2012;44:2497-2500BMJCaseRep2013;pii:bcr2012008143
たこつぼ⼼筋症患者(1750⼈)
精神的ストレス:36.0%⾝体的ストレス:27.7%両⽅:7.8%不明:28.5%
NEJM2015;373:929-938
⾝体的/精神的ストレスの関与
happyな出来事もたこつぼ⼼筋症の原因となり得る
Brokenheartsyndrome⇕
Happyheartsyndrome
⽬的:Happyheartsyndromeの特徴を分析し、Brokenheart syndromeとの⽐較をする
⽅法:多施設、後ろ向き観察研究2011年〜2014年
結果:N=1750(検討対象 Happy20⼈ vsBroken465⼈)
European Heart Journal 2016;pii:ehv757
< Happyeventの内容>
< Brokenheartの⽐較>
年齢が⾼齢(71.4±11.2vs65.0±12.5;p=0.026)
⾼⾎圧既往歴が少ない(35.0vs62.4;p=0.014)
Midventricular型が多い(35.0%vs16.3%;p=0.030)
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
たこつぼ⼼筋症で典型的なエコー所⾒• ⼼尖部、⼼室中隔の無収縮領域
EuropeanHeartJournal2006;27:1523-1529
拡張期 収縮期
4chamberview
2chamberview
⽬的:SAH+たこつぼ⼼筋症(10⼈)特徴を調査
⽅法:単施設、後ろ向き観察研究1995-2000年
結果:N=350
JNeurosurg 2003;98:524-528
<⼼エコー所⾒>・globalhypokinesis・lat wallhypokinesis・ant/septal/apicalhypokinesis …
Systematicreview• たこつぼ⼼筋症の特徴について調査
• 発症初期のLVEFは低下していることが多い
• f/uエコーでのLVEFは、ほとんどが正常化(f/u⽇ :7-53⽇⽬)
EuropeanHeartJournal2006;27:1523-1529
たこつぼ⼼筋症ではACSと⽐較しlowEFであることが多い60⽇のfollowupでLVEFはほぼ改善
たこつぼ⼼筋症 ACS Pvalue
Total Cohort(N=1750)
Matched Cohort(N=455)
Matched Cohort(N=455)
LVEF(%) 41.1±11.8 40.7±11.2 51.5±12.3 <0.001
NEJM2015;373:929-938
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
<鑑別すべき疾患>ACS、⼼筋炎、神経原性肺⽔腫、既存の⾮虚⾎性⼼筋障害
⼼電図の経時的変化と⼼エコー所⾒の変化では鑑別は難しいCirc J2004;68:77-81
⼼筋炎の鑑別には⼼内膜⽣検が有⽤最近ではCMRIの有⽤性も注⽬されている
RevPortCardiol 2012;31:609-613
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
⽬的:たこつぼ⼼筋症のMRI所⾒の特徴について検討
⽅法:多施設、前向き観察研究2005年1⽉〜2010年10⽉1ヵ⽉、6ヵ⽉時点で⼼臓MRIを評価
結果:N=256
JAMA2011;306:277-286
CMRI
A:Apical82% B:Midventricular 17%
壁運動異常は4つのパターンに分類される(A〜D)
CMRI
C:Basal1% D:Biventricular34%
壁運動異常は4つのパターンに分類される(A〜D)
⼼筋の浮腫性変化は81%で認められたFollowupのCMRIでは全例で消失
EF、壁運動異常パターン、⼼筋の浮腫性変化粗⼤な壊死や線維化の存在、⼼筋の炎症などCMRIは多くの情報を与え得る
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
MayoClinic診断基準2004年発表2008年改訂
AnnInternMed.2004;141:858-865
① ⼼⾎管⽀配領域を超えた範囲の壁運動異常を伴う、左室⼼尖部・中隔の⼀過性のAkinesis/Dyskinesis
② 冠動脈閉塞所⾒がない、または⾎管造影にて閉塞を認めない③ 新規の⼼電図異常(ST上昇、陰性T波)④ 頭部外傷、頭蓋内出⾎、褐⾊細胞腫、冠動脈閉塞性疾患、⼼筋炎、拡張型⼼筋症が否定されること⇒上記の4つを全て満たすもの
世界初のたこつぼ⼼筋症診断基準
MayoClinic診断基準2004年発表2008年改訂
① 左室中壁±⼼尖部の⼀過性のHypokinesis/Akinesis/Dyskinesis⼼⾎管⽀配領域を超えた範囲の壁運動異常StressTriggerは認めることが多い
② 冠動脈閉塞所⾒がないまたは⾎管造影にて閉塞を認めない③ 新規の⼼電図異常(ST上昇、陰性T波)またはトロポニンの中等度上昇
④ 褐⾊細胞腫、⼼筋炎が否定されること⇒上記の4つを全て満たすもの
Am Heart J. 2008;155(3):408
改訂版
⽇本の診断基準2007年 Kawaiらが提唱
Circ.J2007;71:990-992
① 急性⼼筋梗塞に類似した胸痛と⼼電図変化を有する
② それに伴う左⼼室の壁運動異常が⼀つの冠動脈の⽀配領域を越えて広く存在し、左室造影にて収縮期にあたかも「たこつぼ」を思わせる形態を呈する
③ 冠動脈に有意狭窄なし
④ 急性期に⾒られた壁運動異常が数⽇で回復し、数週間後にほとんど正常化する
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
⽬的:SAH患者においてプロプラノロールとフェントラミンが全体の死亡率、⼼筋壊死に寄与しているのか調査
⽅法:単施設、⼆重盲検化⽐較試験1976年11⽉〜1978年4⽉死亡後、病理解剖で⼼筋壊死の有無を評価
結果:N=90
プロプラノロール80mg8st+フェントラミン30mg 3st:3週間経⼝群vs
プラセボ群
BrMedJ1978;2:990-992
結果:全体で12⼈の死亡(死亡原因:SAH再発(8⼈)、spasm(3⼈)、PE(1⼈))
・ β遮断薬内服群で⼼筋壊死所⾒が認められた者はいなかった・プラセボ群では6⼈全てに⼼筋壊死所⾒が認められた
結論:β遮断薬は⼼筋壊死を抑制するSAH患者における死亡率改善には寄与しない
β遮断薬内服群 プラセボ群
• β遮断薬の使⽤は⼼機能の改善、予後の改善、再発の予防には寄与しなかった
Clin Cardiol 2012;35:478-481TheNEJM2015;373:929-938
• 治療戦略は交感神経抑制と対症療法であるCrit Care Med2015;43:686-693
• ⼼原性ショックの治療にミルリノン投与が有効であったHeartLung2014;43:331-333
• カテコラミンの治療量投与でたこつぼ⼼筋症の発⽣が認められており、治療にはカテコラミンは回避した⽅がよい
Clin ResCardiol 2009;98:457-462HeartVessels2013;28:255-263
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
Systematicreview• たこつぼ⼼筋症の特徴について調査
• ほとんどの症例がfullrecovery
• 寛解までの期間は約1週間〜1ヶ⽉
EuropeanHeartJournal2006;27:1523-1529
Herz 2010;35:240-243
たこつぼ⼼筋症既往患者の⽣存率
⼀般⽣存率 たこつぼ⼼筋症既往患者の⽣存率
vs⼀般⽣存率
(年齢、性別matched)⇓
有意差なし
age- andsex-matchedcohorts(N=455each)たこつぼ群 vsACS群
ショック、死亡を含む重度院内合併症の発⽣率は両群で同程度(P=0.93)
NEJM2015;373:929-938
⽬的:急性期たこつぼ⼼筋症のAPACHEⅡスコア、CAG、エコー、⼼筋逸脱酵素と死亡率の関係を調査
⽅法:単施設、前向き観察研究2006年6⽉〜2010年3⽉
結果:N=37
JKoreanMedSci 2012;27:52-57
APACHEⅡscore>20vs≦20
Kaplan-Meier⽣存曲線
Kaplan-Meier主要有害⼼イベント・脳⾎管イベントの発⽣率:9.9%/1患者年
死亡率:5.6%/患者年
NEJM2015;373:929-938
Majoradversecardiacandcerebrovascularevent(MACCE)
ACE阻害薬、ARB内服は1年後の⽣存率を改善したが、β遮断薬は⽣存率の改善に寄与しなかった
NEJM2015;373:929-938
Crit CareMed2015;43:686-693
たこつぼ⼼筋症management
①症状②⼼電図③⼼筋逸脱酵素
⑥⼼エコー
⑦鑑別疾患⑧CMRI
⑩治療⑪予後⑫再発予防
⑤病歴
④⼼カテ
⑨確定診断
• たこつぼ⼼筋症は5〜10%に再発を認め、初回エピソードから3週間〜4年以内であることが多い
Criculation Journal2014;78:2119-2128
• ACE阻害薬、ARBはたこつぼ⼼筋症の再発を抑制するが、β遮断薬は再発率と関係性を⽰さなかった
TheInternationalJofCardiol 2014;174:696-701
まとめ
• 特に⾼齢⼥性• 何らかの⾝体・精神的ストレスがある• ⼼電図でaVRのST低下を認め、V1のST上昇を認めない• トロポニン軽度上昇• ⼼エコーで冠動脈の⽀配領域を超えた壁運動異常、EF<50%
(特に⼼尖部無収縮+⼼基部過収縮)
上記を認めたとき、「たこつぼ⼼筋症」を強く疑うことができる
• ⼼臓カテーテル検査やCMRIは確定診断をつけるのに有⽤であるが、侵襲の⼤きい検査であり、ICU患者などには適応でない場合が多い
私⾒
• たこつぼ⼼筋症は明らかになっていない部分が多く、診断においても病歴、各検査所⾒から疑うことしかできない
• 病歴や各検査所⾒の特徴を理解し、他の疾患を除外、たこつぼ⼼筋症の可能性を⾼めていくことが重要である
• ICU患者はストレス下にある場合がほとんどであり、たこつぼ⼼筋症の発⽣頻度は⾼い
• しかし、⾃覚症状を訴えることのできない患者も多く、⼼電図変化に特に注意をすべきである
• ⼀般的に⾃然寛解する疾患と考えられていたが、最近では予後が悪いとの報告もあり、迅速な診断と初期対応が重要と考えられる