Title 小児尿路結石症に対する体外衝撃波砕石術4例の治療経験

Author(s) 福島, 修司; 森山, 正敏; 宮本, 浩

Citation 泌尿器科紀要 (1993), 39(6): 507-509

Issue Date 1993-06

URL http://hdl.handle.net/2433/117870

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

泌尿 紀要39:507-509,1993 507

小児尿路結石症に対する体外衝撃波砕石術4例 の治療経験

横浜市立市民病院泌尿器科(部 長:福 島修司)

福 島 修 司,森 山正 敏,宮 本 浩

EXPERIENCE WITH EXTRACORPOREAL SHOCK

WAVE LITHOTRIPSY IN CHILDREN

Shuji Fukushima, Masatoshi Moriyama and Hiroshi MiyamotoFrom the Department of Urology, Yokohama Municipal Citizens Hospital

Extracorporeal shock wave lithotripsy treatment for calculi of the upper urinary tract was per-formed on 4 children between 6 and 13 years old. The patients were treated under general anesthesia with Lithostar. Good fragmentation was achieved in all cases. No undue side effects or complications were encountered in the cases.

We conclude that extracorporeal shock wave lithotripsy is a safe and effective method of trea-ting renal and ureteral calculi in children.

(Acta Urol. Jpn. 39: 507-509, 1993)

Key words: ESWL, Children, Renal and ureteral calculi

緒 言

体 外 衝 撃 波 に よ る結 石 砕石 術(extracorporeaI

shockwavelithotripsy,以 下ESWLと 略 す)は

1980年2月 にChaussyら に より臨床応用が始め られ,

本邦 で も1984年9月 には開始 され,優 れた治療成績が

発表 され尿路結石症 の新 しい治療法 として普 及 して き

た.そ の後機種 も増 え,設 置 された施設 も増 え,今 で

は尿路結石症の治療法 として一般化 している.

尿路結石症は小児 の発生は少な く,諸 家の報告では

尿路結石症全体 の0.8～1.6%i)と いわれている.こ の

小児の尿路結石症に対 しESWLは 当初はい くつか の

難点 があ り適応では ない といわれ ていた.し か し,そ

の後治療に際 し工夫を加え,あ るいは機種に よっては

注意深 い操作で治療を行 って,小 児でもESWLに よ

る治療報告が散見され るよ うになった,

今 回,私 どもも4例 なが ら小児例 をESWLに て治

療 したので ここに経験例を報告す る.

対 象 と 方 法

横浜市立市民病院 では1988年7月 よりシーメンス社

製 リソスターを用いてESWLを 開始 し,1992年6月

までの4年 間に909名,1,583回 の治療を行 ってい る.

この間,1990年2月 に初めて小児例 を経験 し,そ の後

も小児例を治療 した.1992年6月 までに4例 を治療 し

ている.

この4例 の年 齢,性 別な らびに結石 の大 きさ,部 位

な どについてはTablelに 示 した.

治療に さい しては基礎麻酔 として硫酸 ア トロピンを

投与 し,破 砕治療台上にて全身麻 酔をかけている。患

児はそ のままの姿勢 で位置決めを し,肺 野に対 して も

防護 具を置かずに治療 を実施 した.

結 果

4例 の うちの1例 が破砕不十分 で3ヵ 月後に尿管下

部に結石が移動 した ところで再度治療を行 っていて,

合計5回 のESWLを 行 った.

各症例 の治療に要 した時間,シ ョノト数,入 院期間

な どについてはTable2に 示 した.

麻 酔時間は最短1時 間20分 か ら最長2時 間とな った

が,実 際の治療時間 としては41分 か ら1時 間18分 を要

し,平 均 時 間 は56分 であ った.与 えた シ ョッ ト数 も

3,000か ら5,000発 であった.治 療 している間に結石の

位置あるいは破砕状況の確認 のためにX線 透視 を して

いるが通箪時間は0.7分 か ら5.1分 まであって,平 均す

ると2.2分 となってい る.

治療翌 日のX線 検査 で 結石 の 状態を確認 してい る

が,3例 は結石 が消失 または破砕片 として認 め られ る

のみ となっていて,破 砕効果 は明らかであ った.1例

はご くわず かに結石 の縮小をみたが破砕は不十分であ

508 泌尿紀要39巻6号1993年

Table1.Patients

No.AgeSexHeightWeight(cm)(kg)

Slnmptoms' No.ofStonesizeStOne(mm)

Stonelocation

17M123.423.2hematu㎡a

26Fl17.322.2pollaciSuria

312F且59.251.0{lanlcpain

hematuria

413M141.143.8hematuriaabdominalpain

2

1

1

1

1

15×10

9×6

8×5

15×6

9×6

5×4

rt.renalpelVis

rしpr・ximalu鷲ter

rしproximalu麗ter

rt.dis囲ureter

rしproximalu爬 ¢er

Table2.Treatmentandresults

ShockNo.AnestlesiatimeNo.shot

　　ソ　

(h:m)(KV)

TreatmentFluoroscopictimetime(h:m)(min)

Hospita・3-month

lizatio皿 『esUlt

(days)

且

2

3

4

genera置

genera且

genera置loca置

general

2:00

1:30

1:20

1:45

500018,且

300017.8

500019.0

400016.0

400018.且

1:18

0:52

1=050:41

0:46

2.8

5,1

1.l

l.4

0.7

5

6

4

7

4

dear

dear

lfragment

dear

dear

歌

A

鱒

"T.x

B

縫.影'

讐 』

亀.雪

蕩

吻γ

駕 。・あ

耀.

Fig.A:Preliminary丘lmofI2-year-01dgirL

B:15-m玉nuteIVPbeforethesecondtreat-

ment,3-monthfollowingthe丘rsttreat-

ment.Thestoneplacedindistalureter.

った.こ の例は3ヵ 月後に尿管の上部か ら下部へ と結

石は下降 し,こ の位置で再度治療 した.結 果 としてそ

の翌 日のX線 像には結石陰影は見当た らず排出 した も

の と判断 された.

ESWL終 了後に体温が37.4℃ まで 上昇 し,1例

は翌 日37.8℃ まで上昇 したが,い ずれ も特に処置す

ることもな く元気で過 ごしている.

考 察

尿路結石症 の治療の一 手段 と してESWLが 登場 し

て早 くも10年 を経過 しよ うとしている.当 初は種 々の

制限があ り,小 児例は難 しい とされ ていた.し か し,

その後治療方法の工夫 と各種の機 器が出現 し使用 され

るようにな って小児例で もESWLが 行われ るよ うに

な った2-6).

最 も心配 された小児例での難点 は身長 の小 さい こと

に よ り衝 撃波が肺野に当た る可能性 が あ る こ とで あ

る.肺 と腎 との距離が短 い こ とか らKramolowsky

ら3)は身長135cm以 下 では肺を保護 して治療すべ き

としてpolystyreneplastic板 を使用 し肺を衝撃波か

ら防護 している.同 じような考 えか ら飯盛 ら7)は ポ リ

ウ レタン製 の防護 具を,若 林 ら8)は スポンジ様 の含有

樹脂を背板 に使用 し,ま た細川 ら9)も発泡スチ ロール

材を用いて肺の保護を している.私 どもは特 に防護具

を用意せず に実施 したが幸いにも肺野には障害 も発生

す ることな く経過 した.

ESWLに 際 しては麻酔下に行 っている報告が多 く,

自験例 も全身麻酔下に実 施 した.し か し,1例 の再施

行時には前処置 もせず,麻 酔もせずに開始 した が,や

は り途中か ら疹痛を訴えた ので,shockheadが 密着

す る部位にキシ ロカイ ンスプ レーを散布 し,電 圧 も低

くして治療 を終わ って い る.幸 い に も破砕 されて い

る.小 川 ら10)は8歳 男児に無麻酔で ウル フ社製pie・

zolithを 使用 して2回 の治療を し,ま た 中原 ら11)も

同 じ機種で6歳 女児に無麻酔で外来通院 とし2度 にわ

た り治療を行っている.こ の他Ketoprofen坐 剤の使

用や硬膜外 麻酔の報告 もあ り,ま た飯盛 ら7)はhigh

福島,

frequencyventilationを 応用 した麻 酔を使用 し結石

の呼吸性移動をほぼ消減 させて衝 撃波を確実に結石に

集中させた としている.確 かに機種に よっては麻 酔を

せずに治療が可能の ようであ るが,体 動 もな く安全 で

確実に行 うには麻酔下 に実施 した方が 良いのではない

か と考える.

小児におけ るESWLは 腸管内のガスが多 く結石 の

位置決めに苦労する ことがあ るが,結 石は破砕 され易

く,排 出 も早 いようで,自 験例で も1例 が再施行 して

いるが,結 果 は破砕 され全例結石は消失 してい る.残

念なが ら自験例 では破砕片 の採取ができず結石の成 分

がわか らないが,Newmanら2),Kramolowskyら3)

の報告では シュウ酸 カル シュウムが多 く,燐 酸 カル シ

ュウムなどもあって成人 と比べて も小児が特に破砕 さ

れ易 い成分ではない と思われ る,Newmanら2)は 小

児例では恐 ら く組織 でのimpedenceが 小 さく,結 石

の介在期間 も短いことな どがあって破砕 され易い ので

はないか と述べ良好 な治療成 績を報告 している.

結 語

6,7,12,13歳 の4例 の 尿路結石症に対 しES-

WLを 実施 し,良 好な 結果 を えた.治 療に際 し注意

深い配慮に よ り小児でも安全に行 える治療法 であると

考える,

ほか:小 児,

本論文の要旨は第42回神奈川県泌尿器科医会において発表

した.

なお,各 症例を御紹介下さった施設の先生方に深謝いたし

ます.

文 献

1)片 山孔一,梅 川 徹,石 川泰章,ほ か:小 児尿路

ESWL509

結 石 症32例 の 臨 床 的 検 討.日 泌 尿 会 誌81:1379-

1383,1990

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240,1986

3)KramolowskyEV,WilloughbyBLandLoe-

n三ngSA:ExtracorpQrealshockwaveIitho-

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1987

4)FrickJ,KoehleRandKunitG:Experience

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ESWL(EDAPLT-Ol)inchildren.JI)nJ

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thotripsyusingEDAPLT-Ollithotriptorin

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7)飯 盛 宏 記,田 中 重 人,池 内 博 和,ほ か:8歳 女 児

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8)若 林 昭,松 田 久 雄,植 村 匡 志,ほ か ・8歳 と5

歳 の 小 児 結 石 患 者 に お け るESWLの 経 験 日泌

尿 会 誌7811670,1987

9)細 川 尚 三,久 保 雅 弘,善 本 哲 郎,ほ か1小 児 の 全

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10)小 川 毅 彦,福 岡 洋,武 田 光 正,ほ か:圧 電 式 砕

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(ReceivedonNovemberI3,1992AcceptedollFebruaryI6,1993)