294 論文 - jst

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Assessment Standard for Externally Corroded Pressure EquipmentIbaraki FFS rule大学 鴻巣 眞二Shinji KonosuGeneral components such as pressure vesselspipingstorage tanks and so on for chemical and petroleum-related-plants and town gas facilities are designed in accor- dance with the construction codes based on the assumption that there are no flaws in such componentsThere arehowevernumerous instances in which in-service flaws local thin areasdue to external corrosionetc., are found in equipment designed according to these con- struction codesIt is strongly desirable that repairing or replacement work should be restricted to equipment with malignant flaws judged by a reasonable and quantitative assessmentbecause repairing tends to result in ruining the integrity of the equipment concernedThe construction codes fall short of our expectations in judging whether in -service flaws are acceptable or notThereforethe establishment of a FFS rule capa- ble of judging these flaws has been awaited for a long timeIt is necessary to establish suitablereasonable standards in fields ranging from construction to maintenanceThe FFS rule would be an excellent complement to the construction codesThe assessment standard Ibaraki FFS rulefor externally corroded pressure equipment is based on the newly developed p-M methodwhich can readily assess equipment with external flaws subjected to combined internal pressure and external bending momentKey words : Fitness for Service FFS), Collapse LimitLocal Thin Areap-M MethodPressureExternal BendingBuckling Stress 1.はじめに ガス に対して いこ って されて いる。しかし, される が多く, がきわめて っている。 をむ みに するこ ,かえって安 が多いため, えて 替え うこ ましい。 における 圧ガス に対する 1) について める を変 した。これによれ に対する -茨 FFS 格- 19.4.27 294 32 第45巻第5

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Page 1: 294 論文 - JST

論 文

Assessment Standard for Externally CorrodedPressure Equipment(Ibaraki FFS rule)

茨城大学工学部鴻巣 眞二(Shinji Konosu)

General components such as pressure vessels,piping,storage tanks and so on forchemical and petroleum−related−plants and town gas facilities are designed in accor-dance with the construction codes based on the assumption that there are no flaws insuch components.

There are,however,numerous instances in which in−service flaws(local thin areas)due to external corrosion,etc.,are found in equipment designed according to these con-struction codes.It is strongly desirable that repairing or replacement work should berestricted to equipment with malignant flaws judged by a reasonable and quantitativeassessment,because repairing tends to result in ruining the integrity of the equipmentconcerned.The construction codes fall short of our expectations in judging whether in−service flaws are acceptable or not.Therefore,the establishment of a FFS rule capa-ble of judging these flaws has been awaited for a long time.It is necessary to establishsuitable,reasonable standards in fields ranging from construction to maintenance.TheFFS rule would be an excellent complement to the construction codes.The assessmentstandard(Ibaraki FFS rule)for externally corroded pressure equipment is based on thenewly developed p−M method,which can readily assess equipment with external flawssubjected to combined internal pressure and external bending moment.

Key words : Fitness for Service(FFS),Collapse Limit,Local Thin Area,p−M Method,Pressure,External Bending,Buckling Stress

1.はじめに

化学工業,石油産業や都市ガスなどの一般産業

用圧力容器,配管,貯槽に対しては,設計時に欠

陥がないことが建前となって強度設計がなされて

いる。しかし,供用期間中に外面腐食などの減肉

欠陥が供用期間中の検査で検出される場合が多く,

その評価がきわめて重要となっている。無害な減

肉欠陥をむやみに補修することは,かえって安全

性を損なう場合が多いため,合理的で定量的な評

価が行えて有害な減肉欠陥のみ補修や取替え等を

行うことが望ましい。

我が国における高圧ガス設備に対する保安検査

の方法 1)については,国が省令別表で検査方法

を定める従来の制度を変更した。これによれば,

圧力機器の外面腐食に対する評価規格-茨城 FFS規格-

原稿受付日 19.4.27

294

32 圧力技術 第45巻第5号

Page 2: 294 論文 - JST

学協会等民間機関から提案される各種民間規格を

検討・評価した上で,検査方法として活用するこ

とができるようにして,これまでの設備の使用環

境によらず全ての設備に一律に保安検査方法を適

用することを改め,技術等の進歩・対象設備の状

況等に応じた実効性のある望ましい保安検査の方

法を採用できるようにしたものである。

欠陥を有する容器を補修や取替えをせずに継続

使用が可能かどうかの判断基準としては,高圧ガ

ス保安法コンビ則第5条第1項第19号で以下の

ように与えている。

「常用の圧力又は常用の温度において発生する

最大の応力に対し,当該設備の形状,寸法,常用

の圧力若しくは常用の温度における材料の許容応

力,溶接継手の効率等に応じ,十分な強度を有す

る」

具体的な仕様や満たすべき特定の数値を細かく

規定するのではなく,安全といった要求される機

能や具備すべき性能に対して規定をし,要求され

る性能を満たしていれば継続使用を認めるもので

ある(性能規定化)。しかし,供用期間中に生じ

た欠陥が許容されるかどうかを判断する方法・手

順については設計・製作規格では示されていない

ため,供用期間中に検出された欠陥に対して,今

後の使用に耐えるかを判断して合理的な維持管理

の遂行に役立つ維持規格(FFS規格:供用適性

評価規格)の必要性が特に認識されてきている。

設計・製作から維持管理までに対して合理的な基

準の整備が必要であり,この意味で,維持規格は

従来の設計・製作規格とは相互に補完し合う規格

として位置づけられる。国外ではアメリカ,ヨー

ロッパを中心に維持規格の整備がなされてきてお

り,日本においても国際競争力を保つために維持

規格の整備が重要となっている。

国外では,1960年代後半からパイプラインを

主な対象として局部減肉評価方法の検討が行われ,

その成果が ASME B31.G2)に取り入れられ,そ

の後,RSTENG3),modified B31G3),DNV4),BS

79105),API5796),FITNET7)などに引き継がれ

ているが未だ十分に確立しているわけではない。

これらの理論的な裏付けは,円筒が内圧を受ける

ときの円筒軸方向の貫通割れ欠陥に対するバルジ

ング効果 8)の評価式に基づいている。

外面腐食欠陥に対する評価規格(以下,茨城

FFS規格と称する)は,検査実施者である茨城

県が,現行法の範囲内で「十分な強度を有し安全

である」か否かを主体的に判断するための技術基

準を与えるものである。その理論的な骨子は,内

圧を受ける欠陥を有する容器が地震等の外部曲げ

モーメントを同時に受けたときに十分な強度を有

し安全であるかを簡便に評価できる p-M 法9)�12)と呼ばれる新たに開発された手法に基づいて

いる。

2.圧力機器の外面腐食に対する評価方法

概要茨城 FFS規格“圧力機器の外面腐食に対する

評価規格”で対象としているのは,一般産業用設

備の圧力機器(圧力容器,配管,貯槽など)であ

る。この規格は Table2.1で示すように,本体(6

章からなる),附属書(6編)と解説で構成され

ている。検査結果に基づいてモデル化された欠陥

Table2.1 Composition of Ibaraki FFS rule

295圧 力 技 術

JHPI Vol.45 No.52007 33

Page 3: 294 論文 - JST

寸法と,設計内圧 p と地震等によって想定され

る曲げ外部モーメント M を p-M 線図上にプ

ロットして判定される。そこで供用不適とされた

欠陥に対しては,再定格あるいは欠陥補修または

取替えが要求される。

2.1 適用対象設備

この規格は,以下に示す規格により設計・製作

された塔槽類・配管に適用する。

設計製作規格

JIS B8243(旧)圧力容器の構造

JIS B8249 多管円筒形熱交換器

JIS B8250(旧)圧力容器の構造(特定規格)

JIS B8265 圧力容器の構造― 一般事項

JIS B8270 圧力容器(基盤規格)

JIS B8501 鋼製石油貯槽の構造

JPI−7S−77 石油工業用プラントの配管規格

その他同等と判断される規格,基準など

2.2 適用期間

この規格の適用期間は,運転開始後における設

備の供用期間中とする。

2.3 評価対象欠陥

この規格の評価対象欠陥は,塔,配管,貯槽な

どに対して運転後に外面腐食を原因として生じて

製作時の最小肉厚を下回る減肉欠陥とする。なお,

保安検査基準(コンビナート等保安規則関係)で

は,外面腐食が生じる温度領域として-4℃~

150℃程度 10)と規定していることからこの温度

範囲で運転されている設備を対象としているが,

脆性破壊やクリープ損傷を生じない温度域であれ

ば同じ取り扱いが可能である。また,内面腐食欠

陥に対しても,内面欠陥に対する欠陥パラメータ

を用いれば,ここでの外面腐食欠陥と同じ取り扱

いで評価が可能である 11)。

2.4 記 号

この規格で用いる主な記号の意味は以下による。

a:腐食減肉欠陥深さ

Abo=

2

2cos�b �ysin�cL:腐食減肉欠陥の軸方向長さの半分

c�:腐食減肉欠陥の周方向長さの半分E:設計温度での縦弾性係数(MPa)

M:地震等によって生じる曲げモーメント

MS=Mt a( )

Mt a( )�y 1�Mt a( )� �Mt a( )= 1�0�317�a

2&

P:設計圧力(MPa)

Ro=Do/2:円筒の外半径(mm)

Ri=Di /2:円筒の内半径(mm)

t:肉厚(mm)

tlg=t �a:リガメント肉厚(残余肉厚)(mm)

t�= 1�cos�sin���� �y !・t

:座屈評価での局部減肉における相当肉厚

(mm)

y=a

t�=aeff

t=

�ac L

t �c L �4t( )�a=1�428cL

Ri a

2�:周方向外面欠陥の角度(ラジアン)=��c�2Ro�uts�T

min :設計温度における規定最小引張強さ

MPa( )�ysmin:常温における規定最小降伏強さ MPa( )

�= t

Ro(��0.1)

�b=y�2

圧力機器の外面腐食に対する評価規格-茨城 FFS規格-296

34 圧力技術 第45巻第5号

Page 4: 294 論文 - JST

�b �b ����2� ��b= �-�

2�b ����2� �

2.5 評価手順

段階評価手順は Fig.2.1に示されるが,その

評価方法を以下に示す。

a)欠陥の検出

腐食欠陥の検出は,対象部位に応じて目視検査

(VT)等の適切な方法にて実施する。評価対象

とする欠陥近傍に割れ状欠陥やブローホール等の

欠陥が存在しないことを超音波探傷試験(UT)

等により確認する。対象とする腐食欠陥は,局所

の凹凸での肉厚方向の先端曲率半径�(mm)が

以下の式を満たす場合とする。ただし,この条件

を満たさない欠陥に対しては以下の式を満たすよ

うにスムーズアップを実施して,その欠陥を評価

対象欠陥とする。��max a�10mm� �この規定は,評価対象としている欠陥の先端で過

大な局部応力が生じないようにするために設定さ

れている。

b)装置の形状,設計条件および履歴の把握

評価に必要な主なデータとして以下のものが挙

げられる(附属書1)。

1)製造時の設計データ

2)運転経歴および保全履歴

3)予想される将来の条件(運転条件等)

4)減肉欠陥の位置,形状および寸法

5)減肉欠陥箇所での応力状態

6)減肉欠陥を内在する部材の材質

7)その他,各評価方法の中で必要とされる特

定のデータ

c)材質劣化する使用環境かの判断

構成材料が,供用期間中に材質劣化(靭性低下

や強度変化)や応力腐食割れを生じていると判断

される場合は適用を除外する(附属書2)。

d)欠陥位置,形状・寸法の把握とモデル化,近

接欠陥の扱い

腐食欠陥の形状・寸法を把握する前に,非破壊

検査の実施者注1)は,評価すべき箇所で肉厚内部に

欠陥(割れ状欠陥あるいは溶け込み不良などの欠

陥)が存在していないことを超音波探傷試験等に

よって確認する注2)必要がある。腐食欠陥はその位

置(塔頂+配管頭部からの距離,欠陥方向)と形

状(軸方向および周方向の欠陥寸法)を定量的に

決定しなければならない。ただし,測定には,非

破壊検査の実施者注1)がデプスゲージあるいは超音

波肉厚測定器と Rゲージを用いて以下の測定条

件で行なわなければならない。

1)欠陥深さの測定はデプスゲージ(JIS B

7518)あるいは超音波肉厚測定器を用いて実

施する。欠陥の曲率半径は Rゲージを用い

て実施する。なお,測定者の寸法測定誤差を

示した技術的な裏付けデータを示すこと

2)超音波肉厚測定においては,スキン温度の

適正な補正を実施すること。ただし,その温

度補正の妥当性を示した技術的な裏付けデー

タを示すこと

注1)�日本非破壊検査協会やアメリカ非破壊協会(ASNT)などの第3者機関

が認定する資格(超音波探傷試験(UT),

浸透探傷試験(PT),磁粉探傷試験

(MT),放射線透過試験(RT))を有

している検査員

注2)「特定設備検査規則の機能性基準の

運用について 経済産業省原子力安全

・保安院通達(平成13.12.27 原院

第5号)」の第63条で定める合格基準

を満たす場合をいう。すなわち,JIS

Z3060(2002)の附属書7(規定)試

験結果の分類方法で定める分類1類お

よび2類以下の場合

腐食減肉欠陥において最大減肉位置を決定して,

そこを原点として周方向を X軸,軸方向を Y軸

とする基準線を Fig.2.2に示すように定める。

さらに,周方向および軸方向のそれぞれに対して

次式から求まるグリッド間隔以下の間隔を用いて

�����

297圧 力 技 術

JHPI Vol.45 No.52007 35

Page 5: 294 論文 - JST

その基準線に対して平行に引いたグリッド線の交

点によって肉厚測定位置を決定する。

g�=min 2c��5�2t� �

:周方向グリッド間隔

gL=min 2c L �5�2t� �

:軸方向グリッド間隔

欠陥が複数個あって互いに接近している場合,接

近している欠陥は,Fig.2.3に示す合体条件に

従い評価する。合体条件を満足する場合には,合

体後の形状(軸方向及び周方向の欠陥深さ分布)

を求める。合体条件を満足しない場合には,それ

Fig.2.1 Flowchart of external corroded flaw in Ibaraki FFS rule

圧力機器の外面腐食に対する評価規格-茨城 FFS規格-298

36 圧力技術 第45巻第5号

Page 6: 294 論文 - JST

Fig.2.2 Method for determining the thickness profile of LTA

Fig.2.3 Condition in which several LTAs in proximity to each other can be considered as a single LTA

299圧 力 技 術

JHPI Vol.45 No.52007 37

Page 7: 294 論文 - JST

ぞれ単独の欠陥として評価する。

e)応力集中箇所から離れているかの判断

評価すべき欠陥が構造不連続部などの応力集中

箇所から2.5 Ri �t以上離れている場合に適用さ

れる。この条件が満たされない場合には適用外で

ある。

f)地震等による曲げモーメントの算定 13)

地震等による外部曲げモーメント M を附属書

4に従って算出する。ただし,この方法は,安全

側にかつ簡易的に地震モーメントを評価する方法

であるため,外部曲げモーメント M が大きく

なって危険側と評価されてしまう場合には耐震告

示の手法 14)にしたがって算定すること。

1)地表面における地震動

地表面における第1設計地震動の水平震度

KH は,高圧ガス設備等耐震設計指針 14)に基づ

き次のように算定される。

KH=0.15�k 1 2 3

ここで,�k:地震動のレベルに基づく係数で,レ

ベル1地震動で1.0,レベル2地震動

で2.0 1:耐震設計構造物の重要度に基づく係数

(1.0~0.5)

(例 重要度Ⅱ: 1=0.65) 2:地域に基づく係数(1.0~0.4)

(例 茨城県の地域係数 A地区: 2

=0.8) 3:表層地盤増幅係数であり,地盤種別に

より異なる(2.0~1.4)

(例 第2種地盤: 3=2.0)

2)1次固有周期 T1

次式により塔槽類の1次固有周期を求める。

T1=2� H�� �2WT

EIHg

'2� H

1�875

� �28W T

E�D m3

tm Hg

'ここで,

I=�64

Do4 1� 1��( )

4$ %�

8Dm

3tm

�=1.875(1次)Do=Di+2tm:塔槽類平均外径(m)

Dm=Di+tm:塔槽類平均直径(m)

tm:塔槽類平均肉厚(m)

�=2t m

Do:外径厚さ比

3)曲げモーメント算定

1次固有周期が0.9秒未満のときには静的震

度法を,0.9秒以上のときには修正震度法の考

え方を使った簡易評価法により,次式により塔

頂から評価位置 x�における地震による曲げモーメント M を求める。全重量に占めるス

カート重量の割合は小さいと考えられるので,

安全サイドの評価を行うためにスカート部を除

いた塔槽長さ h に留意して次式により曲げ

モーメントを求める。

M= �K H

2h・WT・x 2+

1

5Mmax

Mmax= �K H

2・WT h

4 : T1 �0�9(sec ) = 5 : T1 �0�9(sec )

ただし, �K H<0.2のときは �K H=0.2

とする 14)

4:静的震度法適用時の水平方向の応答倍

率であり,地表面からの高さ Hに応

じた値をとる(2.0~3.14) 5:修正震度法適用時の水平方向の応答倍

率であり,地域区分・地盤種別と固有

周期に応じた値をとる

WT:塔槽類の自重と内容物重量の和による

全重量(N)

h :塔槽類長さ(m)

���

圧力機器の外面腐食に対する評価規格-茨城 FFS規格-300

38 圧力技術 第45巻第5号

Page 8: 294 論文 - JST

L :スカート長さ(m)

H =h+L:塔槽類全長(m)

g)p �M 線図による安全性評価 9)�12)

欠陥位置でのリガメント肉厚(残余肉厚)tlg

と肉厚 t との比を示すリガメント肉厚比が tlg/t

>0.3,tlg�1mm であることが要求される。さら

に,欠陥位置で塑性崩壊する限界圧力 P L および

地震等の外部曲げモーメントによる塑性崩壊限界

曲げモーメント M L を算出する。P L および M L

を�くときに使用する流動応力�f は,対象機器

が設計される際に用いた設計製作規格(または法

規)の規定最小強度に基づいて決定される。

Fig.2.4 Plastic collapse criterion based on p−M diagram12)

301圧 力 技 術

JHPI Vol.45 No.52007 39

Page 9: 294 論文 - JST

モデル化された欠陥が,tlg/t>0.3,tlg�1mm の

条件を満たし,かつ,Fig.2.4の p �M 線図の

安全基準 12)を満足しており,欠陥がその後の供

用期間中に進展しないことが保証される場合には

欠陥をそのままにしても安全であると判定される。

ただし,供用期間中に超音波肉厚測定器,デプス

ゲージ等によるモニタリングを適宜実施して,腐

食欠陥が進展しないことを確かめるものとする。

また,腐食欠陥から割れ状欠陥が進展しないこと

を適切な検査手法を用いて確かめるものとする。

なお,tlg/t>0.3,tlg�1mm の条件および p �M

線図の安全基準を満たさない場合には,補修また

は再定格の規定に従う。

tlg/t>0.3,tlg�1mm の条件および p �M 線図

の安全基準を満足した欠陥に対しては今後の供用

期間での進展量を適切な腐食進展速度から推定す

ることが求められる(附属書5)。この得られた

欠陥寸法を用いて tlg/t>0.3,tlg�1mm の条件お

よび p �M 線図の安全基準を満たす次回点検時

期を決定する。なお,腐食減肉欠陥から割れ状欠

陥が進展する可能性がある場合は適用外とする。

h)継続使用ができないと判断された場合

外面腐食減肉欠陥を評価した結果,tlg/t>0.3,

tlg�1mm の条件および p �M 線図の安全基準の

条件を満足せず,供用不適とされた欠陥に対して

は,継続運転をするためには,再定格を行うか,

補修を行って安全基準を満たすことが要求される。

1)補修

供用不適と判断された欠陥を補修すること

で設備を供用できる状態にすることが可能で

ある。欠陥の補修に当たっては,各種の規定

を参照することが要求される。溶接補修を行

う場合は,設備の関連法規に適合した補修方

法を採用することが必要であるが,溶接補修

に関する基準としては,補修溶接施工法15)�16),API510,API570,API653等がある。

2)再定格

再定格(Rerating)とは,設計時に定め

た機器の設計温度あるいは設計圧力を変更す

ることをいう。例えば,設計圧力を常用圧力

に変更することや,設計温度を常用温度に変

更するなどの処置によって p �M 線図の安

全域に位置させることによって継続使用がで

きるようになる場合がある。

3.供用適性検査員および供用適性評価者

1)供用適性検査員

供用適性検査員は,圧力設備等の安全性,信

頼性に関する検査,診断の実施および管理なら

びに検査記録書等を作成できる日本高圧力技術

協会の圧力設備診断技術者レベル1の資格また

はこれと同等な資格を有していなければならな

い。

2)供用適性評価者

供用適性評価者は,圧力設備等の安全性,信

頼性に関する全般的な検査,診断の計画ならび

に総合判定等ができる日本高圧力技術協会の圧

力設備診断技術者レベル2の資格またはこれと

同等な資格を有していなければならない。

4.供用適性評価結果の承認

茨城県保安等専門委員会が,供用適性評価者に

よる報告を受けて承認を与える。

提出すべき書類としては,以下の項目を少なくと

も含むものとする。

1)2.5b)項に記載の関連書類

2)本基準に基づく検討結果と評価に用いた書

類(評価者の署名を有する)

3)防錆処理を行った場合は,その要領書,検

査記録

4)モニタリング要領書,計画書

5)再定格を行った場合には,その再定格によ

る変更事項を示した書類

6)補修を行う場合には,補修要領書,検査記

5.例 題

例題として,外表面に腐食欠陥が塔において発

圧力機器の外面腐食に対する評価規格-茨城 FFS規格-302

40 圧力技術 第45巻第5号

Page 10: 294 論文 - JST

見された場合を取り上げて考える。機器の使用条

件と検査結果を下記に示す。圧力容器は JIS B

8265(安全率4.0)で製作されたものである。検

出された腐食欠陥の健全性を評価する。

機器仕様:評価する塔の設計条件は以下である。

鋼種:SM400B

設計温度:95℃(-4~150℃の適用範囲内で

ある)

常用温度:75℃

常温における規定最小降伏応力�ysmin:245(MPa)

設計温度における規定最小降伏応力�ys�Tmin :223(MPa)

(JIS B8265「圧力容器の構造・一般

事項」附表5-1による)

設計許容引張応力:Sm=100(MPa)

(JIS B8265「圧力容器の構造・一般

事項」附表2.1.1による)

常温における規定最小引張強さ�utsmin:400(MPa)

設計温度における規定最小引張強さ�uts�Tmin :400(MPa)

設計圧力:1.128MPa

常用圧力:0.981MPa

外径 Do:1626mm

内径 Di:1600mm

肉厚 t:13mm

塔槽長さ h:22.63(m)

スカート長さ L:5.8(m)

塔槽全長 H=h+L:28.43(m)

塔槽類の自重と内容物重量の和による全重量

WT(N)=5.16×105

建設年から欠陥検出までの使用年数:12.5年

内部環境:腐食や材質劣化が生じる環境ではな

いが,安全サイドに考えて全面腐食で

0.1mm/yearの速度で減肉すると仮

定している。ただし,過去の適正な測

定により信頼できる腐食速度(0.1mm

/year以下)がある場合には,その値

を使用しても良い。

非破壊検査結果:腐食欠陥近傍に超音波探傷試

験を実施して,割れやブローホールな

どは認められない。

欠陥形状:欠陥のモデル化を行った結果(附属書

3),以下の寸法を得た。

単独の外面腐食欠陥(凹凸の肉厚方向の曲率

半径は,aと10mmの大きい値である10mm

以上である)

欠陥位置:塔頂から19.2mの周継手部で構

造不連続部などの応力集中箇所から十分離れ

ている

周方向欠陥長さ 2c�:150mm

軸方向欠陥長さ 2c L:100mm

欠陥深さ a:6.5mm

リガメント(残余)厚さ tlg(=t-a)=6.5

mm

設計・製作法規に基づく欠陥位置での最小肉

厚は9.2mmであり現在のリガメント厚さは

その値を下回っている。

地震による曲げモーメントの推定:評価位置での

地震による曲げモーメントを算出した(附属書4)。

WT=5.16×105(N)

H=28.43(m)

h=22.63(m)

L=5.8(m)

Do(T)=1.626(m)

Do(B)=1.626(m)

Do(T)/Do(B)=1<1.63

Dm=1.613(m)

tm=0.013(m) 1=0.5 2=0.8 3=2.0 4=2.7458 5=1.714547�k=1.0

KH=0.12

303圧 力 技 術

JHPI Vol.45 No.52007 41

Page 11: 294 論文 - JST

KSH= 4・KH=0.329496

KMH= 5・KH=0.205746

T1=0.964

T1=0.964�0.9であることにより,修正震度法の考え方を採用して = 5 とする。し

たがって,塔槽の頂上から評価位置までの距

離 x=19.2(m)における地震による曲げモー

メントは次式によって求められる。

M= 5KH

2hWT・x 2+

1

5Mmax

=KMH

2hWT・x 21

5・

KMH

2WT・h

=0�205746

2�22�63・5.16×105・ 19�2( )

2+

1

5

・0�205746

2・5.16×105・22.63

=0.87×106+0.24×106=1.11×106

(N �m)p-M線図による評価ならびにリガメント厚さ tlg

と肉厚 t との比(tlg/t)の評価:肉厚 t が13mm

であり,欠陥深さ a が6.5mmであるので,tlg/t

=6.5/13=0.5>0.3,tlg>1m m である。

�= t

Ro=

13

813=0.016

y=a

t=

6�513=0.5

�= �ac L

t �c L �4t( )=0.38

外半径:Ro=Do

2=

1626

2=813m m

内半径:Ri=Di

2=

1600

2=800m m

�a=1�428cL

Ri a =0.99

Mt(a)= 1�0�317�a2

&=1.14

MS=Mt a( )

Mt a( )�y 1�Mt a( )� �=1.07

P L=2�

2�3�1��Ms

�fP=1.42(MPa)

ここで,�f=min �fmin�1�5��f�T

min�1�5$ %�f

min=�ysmin,�f�T

min=�ys�Tmin�f=min �ys

min�1�5��ys�Tmin �1�5$ %

=�ys�Tmin /1.5=223/1.5=148.7(MPa)

設計圧力 p=1.128MPa より

p

p L=1�128

1�42=0.79

�= �c�2 2�y�� �

Ro=

��75

2 2�0�5�0�016( )�813

=0.073rad

�b=y�2

2�y�2��=0�5�0�073

2

×2�0�5�0�016

2�0�016=0.018rad

Abo=

2 1��( )

2 1��( )cos�b �y 1�y�� �sin�=1.02

t�= 1�cos�sin���� �y 2�3y�� �2�3� !

・t=12.7

E=198.300MPa at95℃

FS=2.0

1.2Et�

S�= =203.9(MPa)

FS・Do 1�0�004E�ys�Tmin

" #Mr

cutoff=S�/�f=203.9/148.7=1.37

M L=�R o

3�2�3�( )

2A bo �f

M=3.85×106(N �m)したがって,

M

M L=1�11�10

6

3�85�106=0.29

圧力機器の外面腐食に対する評価規格-茨城 FFS規格-304

42 圧力技術 第45巻第5号

Page 12: 294 論文 - JST

評価結果:p-M線図による評価は Fig.5.1の

■印で示される。

M

M L �p

p L

� �=(0.29,0.79)

安全域に評価点(■印)があることより,設計

・製作法規に基づく最小肉厚を割っているにもか

かわらず本欠陥は合格である。

これより,欠陥を放置したままで継続運転がで

きる。ただし,欠陥箇所を定期的にモニタリング

することが要求される。

推定腐食速度による次回点検時における欠陥寸法

の推定:

ケース1(過去の腐食速度が保持されると仮定し

た場合):腐食発生までの潜伏期間を無視し,こ

れまでの供用期間 tm prt(年)として減肉速度が

今後も保たれると仮定すると以下になる。実際に

は欠陥箇所は防錆処理を施せば,これまでのよう

な減肉速度で進行するとは考えられないが,防錆

処理後の腐食速度を合理的に推定できない場合に

は,安全サイドの評価としてこれまでの腐食速度

が継続されるとした検討を行う。なお,内面から

は全面腐食で均一に0.1mm/yearの速度で減肉

すると仮定する。ただし,適切に測定された過去

の記録により内面での減肉速度が0.1mm/year

以下であることが保証される場合には,その値を

使用しても良い。

周方向減肉速度

CR�=2c�/tm prt=150/12.5=12mm/year

軸方向減肉速度

CR L=2c L /tm prt=100/12.5=8.0mm/year

深さ方向減肉速度

CR d=a/tm prt=6.5/12.5=0.52mm/year

推定腐食速度を用いて推定される2.5年後の

欠陥寸法は以下である。

周方向欠陥長さ

2c�=150+2.5CR�=180mm

軸方向欠陥長さ

2c L=100+2.5CR L=120mm

欠陥深さ

a=6.5+2.5CR d=7.8mm

また,推定肉厚 t=13-2.5(0.1)=12.75mm

tlg/t=0.39>0.3,tlg=5.0mm>1.0mm

(ここで,tlg=t-a:リガメント肉厚)

これより,

M

M L �p

p L

� �=(0.30,1.00)

この評価点を p-M線図にプロットすると,

Fig.5.1に◇印で示されるように p-M線上に

ほぼ位置することより,これまでの減肉速度が保

たれると仮定すると現在から2.5年後で危険域に

位置する。

以上より,本評価対象とした欠陥は,現時点で

は安全であると評価される。しかし,2.5年後に

は危険と評価される。したがって,次回検査期間

を評価期間の半分にとれば2.5/2=1.25年となる。

この次回検査期間は短いこともあり,次回検査期

間以内で補修または取替えを実施するなどの対策

が要求される。なお,次回検査期間以内であって

も適宜モニタリングを実施するものとする。

ケース2(防錆処理の効果を取り入れた推定腐食

Fig.5.1 Example of assessment as per p−M dia-gram(X=2.5years in this case)

305圧 力 技 術

JHPI Vol.45 No.52007 43

Page 13: 294 論文 - JST

速度を仮定した場合):適切な防錆処理を行うこ

とにより今後の腐食速度が全ての方向に対して,

同一の腐食速度 ECR=ECR�=ECR L=ECR d=

0.03mm/year(附属書5参照)であると仮定し

た場合には,以下の寸法となる。ただし,腐食速

度に対して安全率を2にとっている。なお,内面

からは全面腐食で均一に0.1mm/yearの速度で

減肉すると仮定する。ただし,適切に測定された

過去の記録により内面での減肉速度が0.1mm/

year以下であることが保証される場合には,そ

の値を使用しても良い。

推定腐食速度を用いて推定される10年後の欠陥

寸法は以下である。

周方向欠陥長さ

2c�=150+2(0.03)×10=151mm

軸方向欠陥長さ

2c L=100+2(0.03)×10=101mm

欠陥深さ

a=6.5+2(0.03)×10=7.1mm

また,推定肉厚

t=13-10(0.1)=12.0mm

tlg/t=0.41>0.3,tlg=4.9mm>1mm

(ここで,tlg=t-a:リガメント肉厚)

これより,

M

M L �p

p L

� �=(0.31,1.00)であり,Fig.5.2

の◇印で示されるように10年後では p−M線上

にほぼ位置する。

以上より,本評価対象の欠陥は,防錆処理の効

果を取り入れた推定腐食速度に基づけば10年後

には危険と評価される。したがって,評価期間は

10年となり,次回検査期間をその半分とすれば5

年後となる。しかし,次回検査期間以内にあって

も適宜モニタリングを実施して,この防錆処理の

効果を確認するものとする。評価期間後の検査結

果により防錆処理の効果による腐食速度を明らか

にして,再度上述の検討を行って評価期間の設定

および次回検査期間の設定をし直しても良い。

供用適性評価者によって作成された供用適性評価

結果に対しては,茨城県保安等専門委員会の承認

を得ることが要求される。

6.おわりに

新たに開発された p �M 法に基づく茨城 FFS

規格による外面腐食欠陥の評価方法について概説

した。日本は地震国であるため,内圧に耐えられ

るかどうかの検討だけでは不十分であり,内圧を

受けた状態で供用期間中に起きると想定される地

震に耐えられるかどうかの検討が簡便にできるこ

とが必要である。すなわち,塔槽などで生じる欠

陥は,その発生位置によって地震曲げモーメント

は大きく異なるので,同一形状の欠陥であったと

しても許容されるかどうかの判定は異なる。機器

の安全といった要求される機能や具備すべき性能

に対して規定をし,要求される性能を満たしてい

れば継続使用を認める性能規定化が今後広く適用

されていくものと考えられるので,本論文で概説

したような評価方法が広く利用されることが望ま

しい。

謝辞

著者は,茨城県保安等専門委員会ならびに茨城県

FFS評価規格策定WGの関係各位に謝意を表すFig.5.2 Example of assessment as per p−M diagram

(X=10years in this case)

圧力機器の外面腐食に対する評価規格-茨城 FFS規格-306

44 圧力技術 第45巻第5号

Page 14: 294 論文 - JST

る。

参考文献

1)高圧ガス保安協会「保安検査基準」KHK S0850-1,-2,-3,-4,-5,-6,(2005).

2)Manual for determining the remaining strength ofcorroded pipelines.In : A Supplement to ASME B31 code for pressure piping,ASME B31G−1991(Revision of ANSI/ASME B31G−1984),New York,USA : The American Society of Mechanical Engi-neers;(1991).

3)Kiefner JF,Vieth PH.,“A modified criterion forevaluating the strength of corroded pipe”,Final Re-port for Project PR 3-805 to the Pipeline Super-visory Committee of the American Gas Association,Battelle(OH),(1989).

4)Recommended Practice DNV−RP−F101,“CorrodedPipelines”,Det Norske Veritas,(2004).

5)BS 7910,Guide on methods for assessing the ac-ceptability of flaws in fusion welded structures,

(1990).6)API,“Recommended Practice for Fitness−for−

Service”,API 579,American Petroleum Institute,Washington,D.C.,(2000).

7)FITNET,“Fitness for service procedure”,(2005).8)E.S.Folias,“The Stresses in a Cylindrical Shell

Containing an Axial Crack”,ARL64-174,Aero-space Reserch Laboratories,Octorber,(1964).

9)S.Konosu and N.Mukaimachi,“Plastic CollapseAssessment Procedure for Vessel with Local ThinArea Simultaneously Subjected to Internal Pres-sure and External Bending Moment”,Proceedingsof ASME PVP2006-93496,(2006);ASME J.Pres-sure Vessel Technol.,Feb.(2008),to be published.

10)保安検査基準(コンビナート等保安規則関係),KHKS0850-3-2005,高圧ガス保安協会

11)S.Konosu and K.Oyamada,“Development ofSimplified Plastic Collapse Assessment Procedurefor Vessel with Internal Surface Flaw”,Proceedingsof PVP2007-26437,(2007)

12)S.Konosu et al.,“Plastic Collapse Load for Ves-sel with External Flaw Simultaneously Subjectedto Internal Pressure and External Bending Mo-ment -Experimental and FEA Results-”,Pro-ceedings of ASME PVP2007-26410,(2007);ASMEJ.Pressure Vessel Technol.,to be published.

13)鴻巣,迎町;”塔槽類に生じる地震モーメントの簡易算定方法”,圧力技術,45-1,pp.28-38,(2007).

14)通商産業省告示第143号,高圧ガス設備等耐震設計基準,平成9年3月;高圧ガス保安協会,高圧ガス設備等耐震設計指針,レベル1耐震性能評価(耐震設計設備・基礎)編,KHK E 012-1-1997,(1997).

15) 石油学会,JPI-8R-16-2003,“溶接補修”(2003).

16)日本溶接協会,“補修溶接施工法指針”(1993).

307圧 力 技 術

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